JP3561566B2 - 砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法 - Google Patents

砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチトール粉末は、マルトースを接触水素化し、粉末化することにより製造される糖アルコールであり、甘味質が砂糖に近く、甘味度も他の糖アルコールに比較して砂糖に近く、口内細菌により資化されにくいので虫歯の原因にならず、ヒトの消化酵素では消化されにくいなどの特徴があるため、糖尿病患者、肥満や虫歯を予防したいと考えている人々に広く利用されている。
【0005】
また、マルチトール結晶などに代表されるマルチトール粉末は、非吸湿性、熱などに対する安定性、インシュリン分泌を促さないことや各種ミネラルの吸収に好ましい影響を与えることなど、各種の有用な機能を有することから、前記の特殊な用途に止まらず、一般の食品や医薬品、化粧品の材料等としても広く利用されつつある。
【0006】
一方、砂糖はグラニュー糖や上白糖、黒砂糖など各種の製品形態が知られており、代表的な糖として各種用途に広汎に用いられている。
【0007】
近年、主に経済的な理由から砂糖とソルビトールとの混合粉末組成物が調製され、厳しい経済性を要求される各種用途に用いられているが、用途によってはソルビトールの鋭い甘味質、冷涼感、粘度の低さ、浸透圧の高さ等が敬遠される場合があり、砂糖と同程度の分子量を持ち、且つ粘度、甘味質、浸透圧等が極めて砂糖に近いマルチトールとの混合粉末組成物が望まれていた。
【0008】
更に、そのような混合粉末組成物を調製する際には、砂糖とソルビトールとの混合粉末組成物を用いた際の経験から、各成分を保存、輸送等している間に成分の偏りを無くすることや流動性を改善することも課題とされていた。
【0009】
従って、成分の偏りや流動性などの課題を解決しつつ、砂糖とマルチトールとの混合粉末組成物の経済的に有利な製造方法の開発が望まれていたのである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前述の課題を解決するため、鋭意検討した結果、マルチトールマスキットと砂糖マスキットとを各々調製し、特定の割合で噴霧乾燥機に導入して噴霧乾燥することにより、従来品のような成分の偏りが無く、且つ、経済的に有利な、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末の製造方法を開発することに成功し、更に、マルチトールと砂糖との混合水溶液を高い濃度に濃縮した後、冷却して細かい結晶を発生させ、粘度の低いマスキットを調製して噴霧乾燥することによって、流動性が高く、従来品のような成分の偏りが無い、砂糖とマルチトールとの混合粉末を経済的に有利に製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の課題を解決するための手段は、下記の通りである。
【0013】
第一の本発明は、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を製造する方法において、1)マルチトール純度が85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量5〜50重量%のマルチトールマスキットを、砂糖水溶液から砂糖マスキットを、それぞれ調製する第一工程、2)マルチトールマスキットの導入割合を固形分で10〜21重量%、砂糖マスキットの導入割合を固形分で79〜90重量%の割合に保ち、各々のマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温30〜90℃で噴霧乾燥する第二工程、の2工程を逐次的に経由することを特徴とする、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法である。
【0014】
第二の本発明は、第一工程において、濃度75〜85重量%の砂糖水溶液から砂糖マスキットを調製し、且つマルチトールマスキットの懸濁結晶量が5〜35重量%に調節されたものである、前記第一の発明に記載の砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法である。
【0015】
第三の本発明は、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を製造する方法において、1)純度90〜99.9重量%、更に好ましくは純度95〜99.9重量%のマルチトールを固形分比率で10〜21重量%、純度99%以上の砂糖を固形分比率で79〜90重量%含有する混合水溶液を調製し、固形分濃度80〜87重量%の範囲まで濃縮した後、温度10〜20℃、好ましくは13〜20℃まで撹拌しながら冷却し、必要に応じて種結晶の添加及び希釈をして、更に5〜10時間撹拌し、砂糖とマルチトールとの混合水溶液のマスキットを調製する第一工程、2)第一工程で得られた砂糖とマルチトールとの混合水溶液のマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温30〜90℃で噴霧乾燥する第二工程、の2工程を逐次的に経由することを特徴とする、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法である。
【0016】
また、第四の本発明は、調製後のマスキットに水、砂糖水溶液、マルチトール水溶液の何れか1種または2種以上の混合液を加えることにより、固形分濃度を76〜80%に調整してマスキットの粘度を低下させる、第一〜第三の何れかに記載の砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法である。
【0017】
更に、第五の本発明は、第一工程および第二工程がそれぞれ連続的に実施されるものである前記第一〜第四の何れか一つに記載の発明である。
【0018】
まず、本発明の第一工程について説明する。
【0019】
本発明に用いるマルチトールは、本発明の条件下で良好な状態のマルチトールマスキットを生成する品質が要求されるが、澱粉液化液に通常の糖化条件を施して調製した高純度マルトースを還元して得たマルチトール純度が85〜99.9%で固形分濃度が70〜90%、更に好ましくは73〜80%、最も好ましくは75〜78%の水溶液であれば、おおむね本発明に要求される品質を満足するが、分子量が近いマルトトリイトールやマルトテトライトール等はマルチトールの結晶生成を阻害する傾向があるので、それらの成分が少ないものが好ましい。
【0020】
しかし、本発明の方法において、マルチトールと砂糖との混合水溶液からマスキットを調製する際は、結晶の析出が困難になるなどの理由から更に高い純度のマルチトールが要求され、好ましくは純度90〜99.9%、更に好ましくは純度95〜99.9%のマルチトールが採用されるべきである。
【0021】
また、本発明に用いる砂糖は、本発明実施の際に砂糖マスキットを生成し易い品質の、高純度のものが好ましいが、市販のグラニュー糖、上白糖、粗目糖などは何れも99%以上と純度が極めて高いので、本発明に有利に採用することができる。
【0022】
本発明を実施する際に重要な点の一つは、マルチトールのマスキットと砂糖のマスキットをそれぞれ調製する点であり、特に、本発明を実施する上で有利なマルチトールのマスキットを調製するには、マルチトール水溶液を一度100℃以上に加熱するなどの手段で結晶のエンブリオが残らないように0.8未満の低い飽和度にした後、濃度70〜90%、更に好ましくは76〜79%に調整して、必要に応じて種結晶を加え、冷却しながら撹拌するなどの方法で微細なマルチトール結晶を生成させ、水溶液中に結晶が5〜50%、更に好ましくは5〜35%の範囲になった時にそれ以上結晶が生成、成長しないように温度を調節して飽和度を1.0程度に保持しながら5〜10時間程度撹拌することによって本発明に有利に用いられるマルチトールマスキットが得られる。
【0023】
また、マルチトールマスキットを調製する際に徐冷するなどの影響で結晶が大きくなり過ぎることがあり、その結果結晶量が不足し、噴霧乾燥機の結晶化が進行しにくいことがあるが、それを避けるにはマルチトール水溶液を速く冷却することが肝要である。
【0024】
また、粘度が高くなった場合には、十分に撹拌しながら水又はマルチトール水溶液を加えて固形分濃度を下げることも、マスキットの輸送や品質の優れた噴霧乾燥品を得るうえで有利に採用することができる。
【0025】
また、砂糖のマスキットを調製する際には、砂糖は結晶速度が速く、単結晶が大きくなりがちなので、固形分濃度75〜85%まで濃縮した砂糖水溶液を100℃以上に加熱して飽和度を下げてから、必要に応じて種結晶を加え、冷却しながら撹拌するなどの方法で微細な砂糖結晶を生成させ、水溶液中に懸濁している結晶の量が5〜35%の範囲になった時にそれ以上結晶が生成、成長しないように温度を調節して飽和度を1.0程度に保持しながら5〜10時間程度撹拌することによって本発明に有利に用いられる砂糖マスキットが得られる。
【0026】
次に、砂糖とマルチトールとの混合水溶液からマスキットを調製する方法について説明する。
【0027】
この方法の場合は純度90〜99.9%、更に好ましくは95〜99.9%のマルチトールを採用するが、マルチトールと砂糖との固形分比率が10:90〜21:79の範囲の混合水溶液を調製し、濃度80〜87%まで濃縮し、一度100℃以上に加熱して飽和度を下げてから温度10〜20℃、好ましくは13〜20℃まで急速に冷却し、やや強く撹拌しながら必要に応じて砂糖及び/又はマルチトールの種結晶添加及び希釈をして更に5〜10時間穏やかに撹拌し、微細な結晶を析出させることにより混合液のマスキットを得ることができる。
【0028】
次に、本発明の第二工程について説明する。
【0029】
マルチトールマスキットと砂糖マスキットとを別々に調製してから噴霧乾燥機に導入する場合は、マルチトールマスキットの導入割合を固形分で10〜21重量%、砂糖マスキットの導入割合を固形分で79〜90重量%の割合に保ち、噴霧乾燥機に入る直前に両方のマスキットを混合させるかまたは各々のマスキットを噴霧乾燥機に導入したのちにアトマイザーなどの入口で混合させるが、噴霧乾燥機内の送風温を30〜90℃の範囲に調節し、各成分の固形分比率を前記範囲内に調節することが、比較的吸湿性の低い製品を得ることや、流動性の高い均一な組成などの市場が要求する品質を満足すること等の理由から好ましい。
【0030】
本発明の第一工程で砂糖とマルチトールとの混合水溶液から調製したマスキットを噴霧乾燥する場合は、予め砂糖とマルチトールとの固形分比率が水溶液の段階で適切に調整してあるので、マスキットをそのまま装置に導入し、噴霧乾燥機内の送風温を30〜90℃の範囲に調節しながら操作することによって本発明を実施することができる。
【0031】
また、マスキットを噴霧乾燥機に導入する方式は通常の噴霧乾燥に採用されている方式であれば格別の制約を受けないが、噴霧乾燥機の上部にアトマイザーを備えた方式のものがノズル方式のものよりも条件を調節し易いので好ましく、送風温は30℃未満の場合には乾燥効果が不十分で水分が残り過ぎる場合が多く、90℃を超える温度を採用した場合には、マルチトールと砂糖とのガラス状混溶物を多く形成したり、一度生成した粉末が溶融したりする場合がある。
【0032】
このように本発明の第二工程を実施する際に、乾燥機の底部に落下したときの粉末が水分2〜7%まで乾燥されるが、意外なことに、この水分を残すということがその後の工程を経るときに結晶化を進行させ、品質の安定した製品を得るうえで有効である。
【0033】
更に、品質の安定した本発明に係る製品を得るうえで、噴霧乾燥した後の粉末を温度25〜65℃の範囲に保持して熟成させてから公知の方法で乾燥することも有利に採用することができる。
【0034】
本発明に採用する噴霧乾燥機は、本発明を実施して得られるマスキットの性質が噴霧乾燥困難なものであるという事情や、流動性を高い製品を得るうえから、直径が大きいものが好ましいが、具体的には直径が5メートル以上、更に好ましくは8メートル以上のものが有利に採用できる。
【0035】
以上に説明したように、本発明の製造工程は比較的短時間に終了するもので、機械的に強い加熱やニーダー法のような強い混練をする必要がなく、複雑な構造の特殊な機器も要求されないので経済的に有利な方法であり、本発明の方法を経由することにより得られる製品は、極めて流動性が高く、輸送や保管の間に振動等によって成分の偏りを生じることがなく、従って、各種用途に用いた場合に性質や味、効果などにばらつきが出ないという有利な特徴がある。
【0036】
また、本発明により得られる製品は、従来品に比べて吸湿性が低いので、貯蔵中の固結が生じにくいなどの有利な性質も備えている。
【0037】
【実施例】
【0038】
以下に、実施例、比較例を掲げて更に具体的に本発明に係る方法を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。
【0039】
また、以下の例において、%は特に断らない限り重量%を表わすものとする。
【0040】
(実施例1)
【0041】
<第一工程>
純度99.9%の市販のグラニュー糖を濃度78%に調整し、温度100℃まで加熱した後、撹拌しながら温度15℃まで急激に冷却して微細な結晶を析出させ、そのまま温度を15℃に保持して、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を5時間続け、砂糖マスキットを得た。
【0042】
純度95.0%の食品用マルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標アマルティMR]を濃度75%に調整し、加熱して温度を100℃にした後、撹拌しながら30分間で温度15℃まで急激に冷却して微細な結晶を析出させ、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を10時間続けて懸濁結晶量35%のマルチトールマスキットを得た。
【0043】
<第二工程>
第一工程で得た各々のマスキットをポンプで噴霧乾燥機に送入する際に、砂糖が83、マルチトールが17の固形分比率とし、噴霧乾燥機に入る直前に両者の配管が接続して一本の配管から各マスキットが導入されるよう調整し、送風温度70℃、排風温度40℃、噴霧乾燥機の底部に落下した粉末の温度が40℃で、水分が3%になるように噴霧乾燥して本発明に係る砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を得た。
【0044】
本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の組成を液体クロマトグラフ法により測定したところ、マルチトール16.4%、砂糖83.6%であった。
【0045】
また、本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の約50メッシュの粉末を安息角測定機具(PT−D型)により測定した結果、安息角は31°であり、外観は白色のサラサラした極めて流動性の優れた粉末であった。
【0046】
(実施例2)
【0047】
<第一工程>
実施例1と同様にして砂糖マスキットを得た。
【0048】
純度89%の食品用マルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標アマルティP]の水溶液を濃度84%に濃縮し、加熱して温度を110℃にした後、撹拌しながら20分間で温度15℃まで急激に冷却してマルチトール液の固形分に対して3%の微細なマルチトール粉末[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]を添加して微細な結晶を析出させ、水を加えて全体の濃度を78%に調整し、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を10時間続けて懸濁結晶量26%のマルチトールマスキットを得た。
【0049】
<第二工程>
マスキットの導入比率を砂糖が80、マルチトールが20とした他は、実施例1と同様にして各々のマスキットをポンプで噴霧乾燥機に送入し、同様の条件で噴霧乾燥して本発明に係る砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を得た。
【0050】
本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の組成を液体クロマトグラフ法により測定したところ、マルチトール18.7%、砂糖81.3%であった。
【0051】
また、本実施例により得られた水分0.2%の砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の約50メッシュの粉末を安息角測定機具(PT−D型)により測定した結果、安息角は32°であり、外観は白色のサラサラした極めて流動性の優れた粉末であった。
【0052】
(実施例3)
【0053】
<第一工程>
純度99.0%のマルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]と砂糖の固形分比率が17:83の混合水溶液を濃度85%まで濃縮し、100℃まで加熱した後、撹拌しながら温度15℃まで急速に冷却し、対混合水溶液の固形分0.1%の微粉末状砂糖を種結晶として添加し、7時間撹拌を続けて微細結晶を十分に生成させてから水を加えて固形分濃度を77%にし、更に5時間撹拌して懸濁結晶量33%のマルチトールと砂糖との混合水溶液のマスキットを得た。
【0054】
<第二工程>
第一工程で得たマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温度67℃、排風温度40℃、噴霧乾燥機の底部に落下した粉末の温度が40℃で、水分が4%になるように噴霧乾燥し、更に、得られた粉末を40℃で10時間保持して熟成してから乾燥して本発明に係る砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を得た。
【0055】
本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の約50メッシュの粉末は水分0.4%で、このものを実施例1と同様にして測定した結果、安息角は33°であり、外観は白色のサラサラした極めて流動性の優れた粉末であった。
【0056】
(実施例4)
【0057】
<第一工程>
純度95%のマルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標アマルティMR]と砂糖の固形分比率が17:83の混合水溶液を濃縮して濃度85%に調整し、温度110℃まで加熱した後、撹拌しながら温度15℃まで急速に冷却し、混合水溶液の固形分に対して0.3%の微細な砂糖と0.2%のマルチトール結晶[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]を種結晶として添加し、温度を15℃に保持しながら7時間撹拌した後、濃度60%に調整した前記マルチトールと砂糖との混合水溶液を加えて全体の固形分濃度を78%にし、更に5時間撹拌して懸濁結晶量30%のマルチトールと砂糖との混合水溶液のマスキットを得た。
【0058】
<第二工程>
第一工程で得たマスキットを噴霧乾燥機に導入し、実施例2の第二工程と同じ条件で噴霧乾燥及び熟成した後乾燥して本発明に係る砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を得た。
【0059】
本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の水分は0.2%で、約50メッシュの粉末を実施例1と同様にして測定した結果、安息角は31°であり、外観は白色のサラサラした極めて流動性の優れた粉末であった。
【0060】
(実施例5)
【0061】
<第一工程>
純度98%のマルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]と純度99.9%の砂糖を固形分比率20:80の割合で混合した水溶液を調製し、濃度85%まで濃縮した後、110℃まで加熱してから15℃まで急速に冷却し、混合水溶液の固形分に対して0.5%の微細な砂糖と0.3%のマルチトール結晶[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]を種結晶として添加し、温度を15℃に保持しながらゆるやかに12時間撹拌した後に水を加えて固形分濃度を77%に調整し、更に5時間撹拌して懸濁結晶量32%のマルチトールと砂糖との混合水溶液のマスキットを得た。
【0062】
<第二工程>
第一工程で得たマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温度68℃、排風温度38℃、噴霧乾燥機の底部に落下した粉末の温度が38℃で、水分が4%になるように噴霧乾燥し、更に、得られた粉末を38℃で15時間保持して熟成してから乾燥して本発明に係る砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を得た。
【0063】
本実施例により得られた砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の水分は0.3%で、約50メッシュの粉末を実施例1と同様にして測定した結果、安息角は31°であり、外観は白色のサラサラした極めて流動性の優れた粉末であった。
【0064】
【実施例】
【0065】
(比較例1)
【0066】
純度83%のマルチトールと純度99.9%の砂糖を固形分比率17:83の割合で混合した水溶液を調製し、濃度85%まで濃縮した後、110℃まで加熱してから15℃まで急速に冷却し、混合水溶液の固形分に対して0.5%の微細な砂糖を種結晶として添加し、温度を15℃に保持しながらゆるやかに12時間撹拌した後に水を加えて固形分濃度を78%に調整し、更に5時間撹拌してマルチトールと砂糖との混合水溶液のマスキットを得た。
【0067】
<第二工程>
第一工程で得たマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温度70℃、排風温度40℃の条件で噴霧乾燥した結果、乾燥機のアトマイザーの周囲の壁にガラス状の固形物が付着、堆積してしまい、噴霧乾燥操作を継続することができなかった。
【0068】
また、堆積したガラス状固形物を掻き落としたが、塊状であり、安息角は測定できなかった。
【0069】
(比較例2)
【0070】
<第一工程>
純度99.9%の市販のグラニュー糖を実施例1と同様にして砂糖マスキットを得た。
【0071】
純度98%の食品用マルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]を濃度60%に調整し、加熱して温度を110℃にした後、撹拌しながら温度5℃まで急激に冷却して液固形分に対して0.2%の微細なマルチトール結晶を種結晶として添加し、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を10時間続けて懸濁結晶量3%のマルチトールマスキットを得た。
【0072】
<第二工程>
第一工程で得た各々のマスキットをポンプで噴霧乾燥機に送入する際に、砂糖が83、マルチトールが17の固形分比率とし、噴霧乾燥機に入る直前に両者の配管が接続して一本の配管から各マスキットが導入されるよう調整し、送風温度70℃、排風温度40℃、噴霧乾燥機の底部に落下した粉末の温度が40℃で、水分が3%になるように噴霧乾燥して砂糖とマルチトールとの混合粉末組成物を得た。
【0073】
本比較例により得られた砂糖とマルチトールとの混合粉末組成物の組成を液体クロマトグラフ法により測定したところ、マルチトール16.7%、砂糖83.3%であった。
【0074】
また、本比較例により得られた砂糖とマルチトールとの混合粉末組成物の約50メッシュの粉末を安息角測定機具(PT−D型)により測定しようとしたが、粉末が団結して塊を形成してしまい、安息角は測定不可能であった。
【0075】
(比較例3)
【0076】
<第一工程>
純度99.9%の市販のグラニュー糖を濃度78%に調整し、温度100℃まで加熱した後、撹拌しながら温度15℃まで急激に冷却して微細な結晶を析出させ、そのまま温度を15℃に保持して、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を5時間続け、砂糖マスキットを得た。
【0077】
純度98%の食品用マルチトール[東和化成工業(株)製、登録商標レシス]を濃度84%に調整し、加熱して温度を110℃にした後、撹拌しながら温度15℃まで急激に冷却して結晶を析出させ、毎分20回転のゆっくりとした撹拌を10時間続けた後水を加えて濃度を85%に調節し、更に3時間撹拌を続けて懸濁結晶量44%のマルチトールマスキットを得た。
【0078】
<第二工程>
第一工程で得た各々のマスキットをポンプで噴霧乾燥機に送入しようとしたが、マルチトールマスキットが配管内で固化し、噴霧乾燥操作ができなかった。
【0079】
【発明の効果】
【0080】
本発明は、工程が比較的短い時間で吸湿性の高い組成物を得ることができるので、機械的に強い加熱やニーダー法のような強い混練をする必要がなく、複雑な構造の特殊な機器も要求されないので、経済的に有利であり、成分の偏りなどのない流動性の高い砂糖とマルチトールとの混合粉末組成物を得ることができる。

Claims (3)

  1. 砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を製造する方法において、
    1)マルチトール純度が85〜99.9重量%で固形分濃度が70〜90重量%のマルチトール水溶液から、懸濁結晶量5〜50重量%のマルチトールマスキットを、砂糖水溶液から砂糖マスキットを、それぞれ調製する第一工程、
    2)マルチトールマスキットの導入割合を固形分で10〜21重量%、砂糖マスキットの導入割合を固形分で79〜90重量%の割合に保ち、各々のマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温30〜90℃で噴霧乾燥する第二工程、の2工程を逐次的に経由することを特徴とする、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法。
  2. 第一工程において、濃度75〜85重量%の砂糖水溶液から砂糖マスキットを調製し、且つマルチトールマスキットの懸濁結晶量が5〜35重量%に調節されたものである、請求項1に記載の砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法。
  3. 砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物を製造する方法において、
    1)純度90〜99.9重量%のマルチトールを固形分比率で10〜21重量%、純度99%以上の砂糖を固形分比率で79〜90重量%含有する混合水溶液を調製し、固形分濃度80〜87重量%の範囲まで濃縮した後、温度10〜20℃まで冷却し、必要に応じて種結晶の添加及び希釈をして更に5〜10時間撹拌し、砂糖とマルチトールとの混合水溶液のマスキットを調製する第一工程、
    2)第一工程で得られた砂糖とマルチトールとの混合水溶液のマスキットを噴霧乾燥機に導入し、送風温30〜90℃で噴霧乾燥する第二工程、
    の2工程を逐次的に経由することを特徴とする、砂糖とマルチトールとの流動性の高い混合粉末組成物の製造方法。
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