JP3561294B2 - 結像型x線顕微鏡 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、X線透過像を拡大して観測するための結像型X線顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の結像型X線顕微鏡に関連する技術としては、特開平3−134943号や特公平5−4778号に開示されたものがある。これらは、X線源から放射されたX線を試料に透過させ、その試料の画像情報を有する透過X線(以下、透過X線の像と呼ぶ)を真空容器内に設けられたX線拡大部で拡大すると共に透過型X線電子光電変換面で光電子(以下、透過X線の像に対応して光電子の像と呼ぶ)とに変換し、更にこの光電子の像を加速させて電子増倍部で増幅した後、蛍光面にて可視光像に変換してCCDカメラ等で観測する構成となっている。
【0003】
ここで、上記の透過型X線電子光電変換面は、上記の透過X線の像の入射方向と同じ方向へ上記の光電子の像を出射するので、X線源と真空容器及びCCDカメラが、直列に配置されている。
【0004】
又、文献「ADV in E.E physics vol.64.B 」に記載されているような反射型X線電子光電変換面を適用し、透過X線の像の入射に対応して発生する光電子の像を、その透過X線の像の入射してきた方向とは逆の方向へ所定傾斜角をもって出射・加速させるものも知られている。この文献に開示されている反射型X線電子光電変換面を適用すると、透過X線の像の入射方向と光電子の像の出射方向が同一方向でないので、X線源と真空容器及びCCDカメラが直列に配置されず、その結果、長手方向に短いコンパクトな結像型X線顕微鏡を実現することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前者の技術(特開平3−134943号や特公平5−4778号に開示された技術)にあっては、前述したように、X線源と真空容器及びCCDカメラが、ほぼ直列に配置されるので構造上長手方向に長い顕微鏡となり、実質的に大型且つ操作性が悪い等の問題があった。
【0006】
更に、前者の技術に適用される透過型X線電子光電変換面は、図7の部分断面図に示す如く、約100nm程度の厚さから成る高分子薄膜1を下地とし、この高分子薄膜1の表面に、光電変換材料である約30nm程度のAu層2と、約100nm程度のCsI層3とが蒸着により積層された構造となっている。更に、かかる透過型X線電子光電変換面は、図8の平面図に示すような光電面支持メッシュ電極4の表面上に積層(高分子薄膜aから積層)されることにより、平面性が確保されている。しかし、かかる透過型X線電子光電変換面にあっては、入射する透過X線が、Au層2とCsI層3との機械的構造強度を保つための高分子薄膜1により吸収されるために、光電変換量子効率の減少若しくはそのX線波長による制限を受けるという問題がある。
【0007】
更に又、前者の技術にあっては、透過型X線電子光電変換面を真空容器内に収容して、その真空容器内を強制排気することにより真空雰囲気を実現している。しかし、透過型X線電子光電変換面の一方の面(透過X線の入射する側面)に掛かる排気抵抗P1と透過型X線電子光電変換面の他方の面(光電子の出射する側面)に掛かる排気抵抗P2とを一様にすることが困難であるため、透過型X線電子光電変換面の機械的強度を超えた排気抵抗差|P1−P2|が生じることによって、透過型X線電子光電変換面が損傷を受けるという問題があった。更に、このような排気抵抗の影響を受け易いことから、排気又は真空リーク速度に制限を受けると共に、作業中に透過型X線電子光電変換面を損傷し易いという問題があった。
【0008】
後者の技術(前記文献による技術)にあっては、反射型X線電子光電変換面に対して直角に透過X線の像が入射し、その入射方向より所定の傾斜角度で傾けて配置された加速電極により、光電子の像をその傾斜角方向へ加速させる構成となっている。即ち、この加速電極と反射型X線電子光電変換面の光電子放出面との間に掛かる高電界により光電子の像を所定の傾斜角方向へ加速させる。しかし、光電子放出面と加速電極は相互に所定の傾斜角度に設置されているので、この高電界の制御が極めて困難であり、光電子放出面に生じる光電子の全てが所定の傾斜方向へ一様に加速されず、画像歪みを招来するという問題があった。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みて成されたものであり、機械的強度が高く、光電変換量子効率が優れ、画像歪みを改善し、装置の小形化を図ることができる結像型X線顕微鏡を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために本発明は、X線光軸に沿って試料を透過した透過X線の像を拡大して所定の位置に結像させるX線拡大部と、前記X線光軸に対して直角となるように前記所定の位置に配置され前記X線拡大部で拡大された結像を垂直入射する反射型X線電子光電変換面と、前記反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を前記結像の入射方向と逆方向となる法線方向へ加速放出させる加速電極と、前記加速電極により加速された光電子の像を所定方向へ偏向させる偏向部と、前記偏向部により偏向された光電子の像を可視光像に変換して撮像する撮像部とを備え、前記X線拡大部と反射型X線電子光電変換面と加速電極を真空容器内に設ける構成とした。
【0011】
【作用】
かかる構成を有する本発明の結像型X線顕微鏡によれば、試料を透過した透過X線の像がX線拡大部によりX線拡大像となり、反射型X線電子光電変換面に垂直入射される。反射型X線電子光電変換面にはこのX線拡大像の垂直入射に対応して光電子の像が発生し、この光電子の像は加速電極により上記垂直入射方向に対して逆の方向へ加速・放出される。そして、このように加速・放出された光電子の像は、偏向部によって発生される磁界の影響を受けて、途中から所定の方向へ偏向され、その偏向方向に設けられている撮像部により撮像される。
【0012】
このように、反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を一旦法線方向(即ち、上記垂直入射方向に対して逆の方向)へ加速・放出させた後に、偏向させることにより、画像歪みの発生を大幅に低減することができる。また、透過X線の入射方向と光電子の放射方向が逆方向となるので、真空容器の長さが短くなり実質的に装置の小形化を実現する。反射型X線電子光電変換面を適用することにより、機械的強度の向上と、光電変換量子効率の向上が図られている。
【0013】
【実施例】
以下、本発明による結像型X線顕微鏡の一実施例を図面と共に説明する。まず、図1に基づいてこの結像型X線顕微鏡の全体構造を説明すると、X線を発生するX線発生部Aと、このX線発生部Aから放射されたX線を集光して試料に照射しその試料を透過した透過X線による像(以下、透過X線の像と呼ぶ)を拡大する光学ミラー室Bと、光学ミラー室Bで拡大された透過X線を所定位置に結像させ、内蔵されている反射型X線電子光電変換面により光電子の像に変換して加速・放出させると共に、その加速された光電子の像から試料像の映像信号を形成する反射型X線ズーミング管部Cと、顕微鏡全体の動作を制御するマイクロコンピュータシステム等を内蔵する制御部(図示せず)を備えている。
【0014】
X線発生部A、光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cは、図示長手方向に延設された真空容器E内に構成され、X線発生部Aと光学ミラー室B及び光学ミラー室Bと反射型X線ズーミング管部Cの夫々の接続部分が、真空ゲートバルブ5,6を介して接続されている。
【0015】
真空容器Eの内、X線発生部Aが構成される部分は、ターボ分子ポンプ7aとロータリーポンプ7bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ8によって真空引きが行われ、光学ミラー室Bが構成される部分は、ターボ分子ポンプ9aとロータリーポンプ9bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ10によって真空引きが行われ、反射型X線ズーミング管部Cが構成される部分は、ターボ分子ポンプ11aとロータリーポンプ11bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ12によって真空引きの駆動制御が行われる。よって、真空容器E内は、X線発生部Aと光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cの各部分毎に、独自の真空引きと、独自の真空リークが可能となっている。
【0016】
測定すべき試料は光学ミラー室B内に設けられる。かかる試料の設置又は他の試料の交換を行うには、まず、真空ゲートバルブ5,6を締めた状態で、光学ミラー室Bの真空容器部分のみの真空リークを行い、次に、光学ミラー室Bの所定位置に試料を設置し、再びターボ分子ポンプ9aとロータリーポンプ9bによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ10によって真空引きを行うことにより、交換操作が実現される。このように、簡素な作業で試料の設置を行うことができるので、作業時間の短縮化が可能である。
【0017】
更に、真空容器Eの内、光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cの部分が、防振ステージ13上に載置されることにより、分割振動による観察分解能の劣化を防止している。
【0018】
次に、各部分の構造を詳述する。このX線発生部Aには、X線発生制御部14により制御されるガスパフ型X線源が用いられ、例えば、使用ガスとしてN2 ガスが用いられる。X線発生ユニット15内には一対の放電電極が内蔵されており、その上側にはガス導入バルブ16、その下側には放電電極にスイッチング電圧を印加するためのスイッチング装置17と、スイッチング装置17に高圧電力を供給するための大容量コンデンサ装置18と、大容量コンデンサ装置18を蓄電させるための高電圧電源装置19a,19bが設けられている。
【0019】
N2 ガスはガス導入バルブ16を介して真空雰囲気中の上記放電電極にパルス的に導入され、かかる放電電極間に柱状のガス塊が形成される。そのガス塊のガス密度がX線発生効率の高い密度となったときに、スイッチング装置17が放電電極に大容量コンデンサ装置18の高圧電力を供給することにより、放電を励起させ、この放電によりN2 ガスをプラズマ化させる。そして、このプラズマを流れる電流によりプラズマ粒子は放電電極の軸中心方向へ加速され、高温高密度のプラズマ(ピンチプラズマ)となってX線が放出される。尚、N2 ガスを使用することにより、2nm〜3nmの波長のX線が発生する。
【0020】
X線発生部AのX線放出側の真空容器E内には、図2の部分断面図に示すように、約0.1μmの厚さのTi薄膜19が設けられており、上記の放電電極においてX線が発生するのと同時に生じる紫外線と可視光線及び飛沫の通過を遮断して、上記波長のX線のみを光学ミラー室Bへ透過させる。尚、このTi薄膜19の外周部分には適宜の貫通穴が形成されているので、真空排気時の排気差動圧力によってこのTi薄膜19が破損することを防止している。
【0021】
次に光学ミラー室Bの構成を図2の部分拡大図に基づいて説明する。真空容器E内に、所定の間隔をおいてX線集光ミラー20とX線拡大ミラー21が配置され、X線集光ミラー20によるX線集光位置に、試料22を配置するための試料ホルダー23が設けられている。尚、X線集光ミラー20とX線拡大ミラー21は共にウォルター型斜入射ミラーが用いられると共に、いずれも同一の光学的NAを有し、試料22を透過した透過X線の像から最大効率の拡大結像を得ることができるようになっている。
【0022】
更に、試験者が多軸マニュピレータ24を操作することによって試料ホルダー23の位置や向き等を微調整することができ、多軸マニュピレータ25を操作することによってX線集光ミラー20の位置や向き等を微調整することができ、多軸マニュピレータ26を操作することによってX線拡大ミラー21の位置や向き等を微調整することができるようになっている。即ち、試料ホルダー23とX線集光ミラー20及びX線拡大ミラー21の位置関係を適宜に微調整することにより、X線発生部Aから放出されたX線を集光して目的の試料22へ照射させ、試料22を透過した透過X線の像を拡大して、後述する所定の結像面に鮮明結像させることができる。
【0023】
更に、試料22の試料ホルダー23への装着は、図3及び図4に示す試料セル27を装着することによって行われるようになっている。尚、図3は試料セル27の平面図、図4は図3のX−X線矢視断面を示す。即ち、試料セル27は、大径でドーナッツ状の第1のスペーサー28aと、第1のスペーサ−28aの貫通穴にOリング29を介在させて嵌装される小径且つドーナッツ状の第2のスペーサ28bを有しており、いずれのスペーサー28a,28bもステンレス製で約1mmの厚さに形成されている。又、スペーサー28aは、外径が約30mmであり、且つ、周側端には後述する複数のネジ30を螺合させるための複数の雌ネジ部が形成されている。第2のスペーサー28bの中央部分に形成された貫通穴の内径が約3mm程度であり、この貫通穴が試料22を収容するための試料室31として使用される。
【0024】
そして、これら第1,第2のスペーサー28a,28bとOリング29を組み合わせて試料室31に所定の試料22を収容した状態で、第1,第2のスペーサー28a,28bとOリング29の両側に、約250μmの厚さの円形状の窒化珪素薄膜32,33を重ね、更にステンレス製の円板状支持金具34,35を重ねて複数個のボルト30で一体化する構造となっている。そして、一体化されたときの全体の厚さは約5.5mm程度となる。尚、支持金具34,35の中央領域Wには最大直径約5mm程度の円錐状貫通穴が穿設されると共に、上記複数のボルト30を螺合するための雌ネジ部が予め形成されており、更に、窒化珪素薄膜32,33には、中央領域Wより若干狭い領域について予めエッチングされることにより約100nmの厚さの試料窓36,37が形成されている。そして、この試料セル27を試料ホルダー23に装着すると、X線集光ミラー22により集光されたX線が中央領域Wないし試料窓36(又は37)を介して試料22に入射し、試料22を透過した透過X線の像が試料窓37(又は36)ないし反対側の中央領域Wを介してX線拡大ミラー21へ伝搬する。
【0025】
例えば、ヘラ細胞(HeLa細胞)等の生物細胞を試料22とする場合には、試料室31内に生理的食塩水と共に試料22を密封する。又、Oリング29の作用により、生理的食塩水の外部への漏れが防止されると共に、試料室31内部が1気圧に保たれることから、試料22を生きた状態で観察することができる。更に、試料22に入射するウォーターウィンドウ領域のX線は、炭素を含む有機物の存在部分で選択的に吸収されるので、透過X線は、生物細胞の微細な構造に関する明瞭な像の情報を有することとなる。そして、かかる情報を有する透過X線の像は、X線拡大ミラー21で所定倍率に拡大され、後述する反射型X線ズーミング管部C内の所定の結像位置に結像される。
【0026】
次に反射型X線ズーミング管部Cの構造を図5に基づいて説明する。尚、図5は、拡大部分断面図である。X線拡大ミラー21からの透過X線の結像面には、透過X線の入射に伴って光電子を発生する反射型X線電子光電変換面38が設けられ、反射型X線電子光電変換面38の前方にはグランド電位に設定されたアパーチャ電極39が固定されている。この反射型X線電子光電変換面38は、Cuで形成された光電面電極40の先端部(透過X線の入射方向に対向する端部)に嵌着され且つ表面粗さが100nm以下に研磨された約1mmの厚さのAu板と、そのAu板の表面に約100nmの厚さで蒸着されたCsI層で構成され、Au板の表面とCsI層の表面は、透過X線の入射方向に対して直角となっている。
【0027】
そして、光電面電極40には、高圧電源装置41により約−8kVないし−10kVの範囲の電圧が印加され、アパーチャ電極39にはグランド電位が印加され、反射型X線電子光電変換面38が透過X線の入射に対して発生した光電子を、反射型X線電子光電変換面38とアパーチャ電極39との間に発生する強電界によって、透過X線の入射方向とは逆の方向(即ち、反射型X線電子光電変換面38の光放出面の法線方向)へ放出して加速させる。
【0028】
更に、反射型X線ズーミング管部Cには、反射型X線電子光電変換面38の前方横側に、第1の電磁レンズ42と第2の電磁レンズ43、及び偏向コイル44が連設されている。第1,第2の電磁レンズ42,43は、反射型X線電子光電変換面38から出力されてアパーチャ電極39により加速された光電子を、拡大磁場により拡大させ且つ所定の収束距離で収束させる。この拡大率は第1の電磁レンズ42と第2の電磁レンズ43に流す電流を変化させて真空容器E内に発生する磁力の比率を変えることで、収束距離を変化させなくとも約10倍ないし200倍の範囲で連続的に変化させることができるようになっている。尚、この実施例では、収束距離は、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面から70cmに設定されている。
【0029】
偏向コイル44は、真空容器E内に偏向磁場を発生させ、第1,第2の電磁レンズ42,43の拡大磁場の磁力線に沿って走行してきた光電子を、所定の偏向角で偏向させることにより、2枚タンデムのマイクロチャンネルプレート45の方向へ走行させる。この実施例では、光電子の偏向角が透過X線の入射光軸に対して9°に設定され、偏向コイル44による偏向磁場の中心から反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面までの距離W1と、この偏向磁場の中心からマイクロチャンネルプレート45の光電子入射面までの距離W2の合計距離が70cmに設定されており、更にこの合計距離が、第1,第2の電磁レンズ35,36の拡大収束距離となっている。したがって、反射型X線電子光電変換面38上に結像された透過X線の像に対応して発生する光電子の像は、その透過X線の入射を妨げることなく、上記拡大磁場で拡大され且つ所定の偏向角で偏向されて、マイクロチャンネルプレート45の光電子入射面に投影結像される。
【0030】
尚、第1,第2の電磁レンズ42,43と偏向コイル44への電力供給は、不図示の駆動用電源から行うようになっている。
【0031】
マイクロチャンネルプレート45は、約500Vないし約2000Vの範囲内の電圧が掛けられることにより、最大で105 倍の電子増倍率が設定され、更に、電子増倍された電子は3000Vの印加電圧による電界により加速されてマイクロチャンネルプレート45の後方に設けられた蛍光面46に入射し、可視光像に変換される。
【0032】
蛍光面46の後方には、リレーレンズを内蔵する光学系47が設けられ、更に、光学系47の結像面に設けられたCCDカメラ48によって、可視像を撮像するようになっている。そして、CCDカメラ48から出力される映像信号は画像処理装置に伝送され、テレビジョンモニタ等に静止画表示される。
【0033】
図6は、以上に説明した結像型X線顕微鏡の構造及び機能を概略的に示している。そして、同図中、2点鎖線で示すX線光軸Qに沿って試料22を透過した透過X線の像が反射型X線電子光電変換面38に入射することにより発生する光電子の像を、その透過X線の入射方向とは逆の方向へアパーチャ電極39により加速・出射させた後、偏向コイル44によって所定の方向へ偏向させるので、反射型X線電子光電変換面38に生じる光電子が加速電界に従って一様に出射した後に偏向されることとなる。したがって、前述した従来の技術(文献「ADV in E.Ephysics vol.64.B 」)では、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面に対して予め加速電界が傾斜して掛かるように設定することで、光電子の走行方向を決める場合には、この光電子放出面に対する電界分布が一様でないために、光電子の放出方向が一様でなくなり画像歪みを招くことと成るのに対し、この実施例では、光電子放出面に対して法線方向へ光電子を放出させるように電界が掛けられているので、光電子は一様に放出され、その後に所定の方向へ偏向させてCCDカメラ48等で撮像するので、画像歪みが大幅に低減されることとなる。
【0034】
更に、反射型X線電子光電変換面38は、透過型X線電子光電変換面とは異なり、支持メッシュ電極と高分子薄膜(図8参照)を有しないので、光電変換量子効率が優れ、又、光電変換量子効率を向上させるために設けられるAu層の厚さに制限がないことから、軟X線から硬X線の範囲において光電変換量子効率の向上を図ることができる。更に又、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面に対して光電面電極から法線方向へ電荷を供給することができるので、光電面面抵抗が下がり、大電流を流すことができる。又、反射型X線電子光電変換面38は、透過型X線電子光電変換面と比べて機械的強度が高いので、真空容器E内の真空引き等によって生じる差圧の影響で損傷等を受けない。又、この実施例では、反射型X線ズーミング管Cの真空容器部分に反射型X線電子光電変換面38を設けることにより、真空引き等によって生じる差圧の発生を予め防止しているので、機械的強度の向上が図られている。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を一旦法線方向(即ち、透過X線の像の入射方向に対して逆の方向)へ加速・放出させた後に偏向させ、その偏向方向に設けられた撮像部により撮像するようにしたので、画像歪みの発生を大幅に低減することができる。また、透過X線の入射方向と光電子の放射方向が逆方向となるので、真空容器の長さが短くなり実質的に装置の小形化を実現する。反射型X線電子光電変換面を適用することにより、光電変換量子効率の向上と、機械的強度の向上が図られる等の優れた効果を有する結像型X線顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による結像型X線顕微鏡の一実施例の全体構成を示す平面図である。
【図2】光学ミラー室の構造を示す部分断面図である。
【図3】試料セルの構造を示す平面図である。
【図4】試料セルの構造を示す断面図である。
【図5】反射型X線ズーミング管部の構造を示す部分断面図である。
【図6】結像型X線顕微鏡の全体構造を概念的に示す断面図である。
【図7】透過型X線電子光電変換面の構造を示す部分断面図である。
【図8】透過型X線電子光電変換面に使用される光電面支持メッシュ電極の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
20…X線集光ミラー、21…X線拡大ミラー、22…試料、23…試料ホルダー、38…反射型X線電子光電変換面、39…アパーチャ電極、42,43…電磁レンズ、44…偏向コイル、45…マイクロチャンネルプレート、46…蛍光面、47…光学系、48…CCDカメラ。
【産業上の利用分野】
本発明は、X線透過像を拡大して観測するための結像型X線顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の結像型X線顕微鏡に関連する技術としては、特開平3−134943号や特公平5−4778号に開示されたものがある。これらは、X線源から放射されたX線を試料に透過させ、その試料の画像情報を有する透過X線(以下、透過X線の像と呼ぶ)を真空容器内に設けられたX線拡大部で拡大すると共に透過型X線電子光電変換面で光電子(以下、透過X線の像に対応して光電子の像と呼ぶ)とに変換し、更にこの光電子の像を加速させて電子増倍部で増幅した後、蛍光面にて可視光像に変換してCCDカメラ等で観測する構成となっている。
【0003】
ここで、上記の透過型X線電子光電変換面は、上記の透過X線の像の入射方向と同じ方向へ上記の光電子の像を出射するので、X線源と真空容器及びCCDカメラが、直列に配置されている。
【0004】
又、文献「ADV in E.E physics vol.64.B 」に記載されているような反射型X線電子光電変換面を適用し、透過X線の像の入射に対応して発生する光電子の像を、その透過X線の像の入射してきた方向とは逆の方向へ所定傾斜角をもって出射・加速させるものも知られている。この文献に開示されている反射型X線電子光電変換面を適用すると、透過X線の像の入射方向と光電子の像の出射方向が同一方向でないので、X線源と真空容器及びCCDカメラが直列に配置されず、その結果、長手方向に短いコンパクトな結像型X線顕微鏡を実現することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前者の技術(特開平3−134943号や特公平5−4778号に開示された技術)にあっては、前述したように、X線源と真空容器及びCCDカメラが、ほぼ直列に配置されるので構造上長手方向に長い顕微鏡となり、実質的に大型且つ操作性が悪い等の問題があった。
【0006】
更に、前者の技術に適用される透過型X線電子光電変換面は、図7の部分断面図に示す如く、約100nm程度の厚さから成る高分子薄膜1を下地とし、この高分子薄膜1の表面に、光電変換材料である約30nm程度のAu層2と、約100nm程度のCsI層3とが蒸着により積層された構造となっている。更に、かかる透過型X線電子光電変換面は、図8の平面図に示すような光電面支持メッシュ電極4の表面上に積層(高分子薄膜aから積層)されることにより、平面性が確保されている。しかし、かかる透過型X線電子光電変換面にあっては、入射する透過X線が、Au層2とCsI層3との機械的構造強度を保つための高分子薄膜1により吸収されるために、光電変換量子効率の減少若しくはそのX線波長による制限を受けるという問題がある。
【0007】
更に又、前者の技術にあっては、透過型X線電子光電変換面を真空容器内に収容して、その真空容器内を強制排気することにより真空雰囲気を実現している。しかし、透過型X線電子光電変換面の一方の面(透過X線の入射する側面)に掛かる排気抵抗P1と透過型X線電子光電変換面の他方の面(光電子の出射する側面)に掛かる排気抵抗P2とを一様にすることが困難であるため、透過型X線電子光電変換面の機械的強度を超えた排気抵抗差|P1−P2|が生じることによって、透過型X線電子光電変換面が損傷を受けるという問題があった。更に、このような排気抵抗の影響を受け易いことから、排気又は真空リーク速度に制限を受けると共に、作業中に透過型X線電子光電変換面を損傷し易いという問題があった。
【0008】
後者の技術(前記文献による技術)にあっては、反射型X線電子光電変換面に対して直角に透過X線の像が入射し、その入射方向より所定の傾斜角度で傾けて配置された加速電極により、光電子の像をその傾斜角方向へ加速させる構成となっている。即ち、この加速電極と反射型X線電子光電変換面の光電子放出面との間に掛かる高電界により光電子の像を所定の傾斜角方向へ加速させる。しかし、光電子放出面と加速電極は相互に所定の傾斜角度に設置されているので、この高電界の制御が極めて困難であり、光電子放出面に生じる光電子の全てが所定の傾斜方向へ一様に加速されず、画像歪みを招来するという問題があった。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みて成されたものであり、機械的強度が高く、光電変換量子効率が優れ、画像歪みを改善し、装置の小形化を図ることができる結像型X線顕微鏡を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために本発明は、X線光軸に沿って試料を透過した透過X線の像を拡大して所定の位置に結像させるX線拡大部と、前記X線光軸に対して直角となるように前記所定の位置に配置され前記X線拡大部で拡大された結像を垂直入射する反射型X線電子光電変換面と、前記反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を前記結像の入射方向と逆方向となる法線方向へ加速放出させる加速電極と、前記加速電極により加速された光電子の像を所定方向へ偏向させる偏向部と、前記偏向部により偏向された光電子の像を可視光像に変換して撮像する撮像部とを備え、前記X線拡大部と反射型X線電子光電変換面と加速電極を真空容器内に設ける構成とした。
【0011】
【作用】
かかる構成を有する本発明の結像型X線顕微鏡によれば、試料を透過した透過X線の像がX線拡大部によりX線拡大像となり、反射型X線電子光電変換面に垂直入射される。反射型X線電子光電変換面にはこのX線拡大像の垂直入射に対応して光電子の像が発生し、この光電子の像は加速電極により上記垂直入射方向に対して逆の方向へ加速・放出される。そして、このように加速・放出された光電子の像は、偏向部によって発生される磁界の影響を受けて、途中から所定の方向へ偏向され、その偏向方向に設けられている撮像部により撮像される。
【0012】
このように、反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を一旦法線方向(即ち、上記垂直入射方向に対して逆の方向)へ加速・放出させた後に、偏向させることにより、画像歪みの発生を大幅に低減することができる。また、透過X線の入射方向と光電子の放射方向が逆方向となるので、真空容器の長さが短くなり実質的に装置の小形化を実現する。反射型X線電子光電変換面を適用することにより、機械的強度の向上と、光電変換量子効率の向上が図られている。
【0013】
【実施例】
以下、本発明による結像型X線顕微鏡の一実施例を図面と共に説明する。まず、図1に基づいてこの結像型X線顕微鏡の全体構造を説明すると、X線を発生するX線発生部Aと、このX線発生部Aから放射されたX線を集光して試料に照射しその試料を透過した透過X線による像(以下、透過X線の像と呼ぶ)を拡大する光学ミラー室Bと、光学ミラー室Bで拡大された透過X線を所定位置に結像させ、内蔵されている反射型X線電子光電変換面により光電子の像に変換して加速・放出させると共に、その加速された光電子の像から試料像の映像信号を形成する反射型X線ズーミング管部Cと、顕微鏡全体の動作を制御するマイクロコンピュータシステム等を内蔵する制御部(図示せず)を備えている。
【0014】
X線発生部A、光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cは、図示長手方向に延設された真空容器E内に構成され、X線発生部Aと光学ミラー室B及び光学ミラー室Bと反射型X線ズーミング管部Cの夫々の接続部分が、真空ゲートバルブ5,6を介して接続されている。
【0015】
真空容器Eの内、X線発生部Aが構成される部分は、ターボ分子ポンプ7aとロータリーポンプ7bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ8によって真空引きが行われ、光学ミラー室Bが構成される部分は、ターボ分子ポンプ9aとロータリーポンプ9bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ10によって真空引きが行われ、反射型X線ズーミング管部Cが構成される部分は、ターボ分子ポンプ11aとロータリーポンプ11bとによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ12によって真空引きの駆動制御が行われる。よって、真空容器E内は、X線発生部Aと光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cの各部分毎に、独自の真空引きと、独自の真空リークが可能となっている。
【0016】
測定すべき試料は光学ミラー室B内に設けられる。かかる試料の設置又は他の試料の交換を行うには、まず、真空ゲートバルブ5,6を締めた状態で、光学ミラー室Bの真空容器部分のみの真空リークを行い、次に、光学ミラー室Bの所定位置に試料を設置し、再びターボ分子ポンプ9aとロータリーポンプ9bによる真空排気ポンプと真空度測定用ゲージ10によって真空引きを行うことにより、交換操作が実現される。このように、簡素な作業で試料の設置を行うことができるので、作業時間の短縮化が可能である。
【0017】
更に、真空容器Eの内、光学ミラー室B及び反射型X線ズーミング管部Cの部分が、防振ステージ13上に載置されることにより、分割振動による観察分解能の劣化を防止している。
【0018】
次に、各部分の構造を詳述する。このX線発生部Aには、X線発生制御部14により制御されるガスパフ型X線源が用いられ、例えば、使用ガスとしてN2 ガスが用いられる。X線発生ユニット15内には一対の放電電極が内蔵されており、その上側にはガス導入バルブ16、その下側には放電電極にスイッチング電圧を印加するためのスイッチング装置17と、スイッチング装置17に高圧電力を供給するための大容量コンデンサ装置18と、大容量コンデンサ装置18を蓄電させるための高電圧電源装置19a,19bが設けられている。
【0019】
N2 ガスはガス導入バルブ16を介して真空雰囲気中の上記放電電極にパルス的に導入され、かかる放電電極間に柱状のガス塊が形成される。そのガス塊のガス密度がX線発生効率の高い密度となったときに、スイッチング装置17が放電電極に大容量コンデンサ装置18の高圧電力を供給することにより、放電を励起させ、この放電によりN2 ガスをプラズマ化させる。そして、このプラズマを流れる電流によりプラズマ粒子は放電電極の軸中心方向へ加速され、高温高密度のプラズマ(ピンチプラズマ)となってX線が放出される。尚、N2 ガスを使用することにより、2nm〜3nmの波長のX線が発生する。
【0020】
X線発生部AのX線放出側の真空容器E内には、図2の部分断面図に示すように、約0.1μmの厚さのTi薄膜19が設けられており、上記の放電電極においてX線が発生するのと同時に生じる紫外線と可視光線及び飛沫の通過を遮断して、上記波長のX線のみを光学ミラー室Bへ透過させる。尚、このTi薄膜19の外周部分には適宜の貫通穴が形成されているので、真空排気時の排気差動圧力によってこのTi薄膜19が破損することを防止している。
【0021】
次に光学ミラー室Bの構成を図2の部分拡大図に基づいて説明する。真空容器E内に、所定の間隔をおいてX線集光ミラー20とX線拡大ミラー21が配置され、X線集光ミラー20によるX線集光位置に、試料22を配置するための試料ホルダー23が設けられている。尚、X線集光ミラー20とX線拡大ミラー21は共にウォルター型斜入射ミラーが用いられると共に、いずれも同一の光学的NAを有し、試料22を透過した透過X線の像から最大効率の拡大結像を得ることができるようになっている。
【0022】
更に、試験者が多軸マニュピレータ24を操作することによって試料ホルダー23の位置や向き等を微調整することができ、多軸マニュピレータ25を操作することによってX線集光ミラー20の位置や向き等を微調整することができ、多軸マニュピレータ26を操作することによってX線拡大ミラー21の位置や向き等を微調整することができるようになっている。即ち、試料ホルダー23とX線集光ミラー20及びX線拡大ミラー21の位置関係を適宜に微調整することにより、X線発生部Aから放出されたX線を集光して目的の試料22へ照射させ、試料22を透過した透過X線の像を拡大して、後述する所定の結像面に鮮明結像させることができる。
【0023】
更に、試料22の試料ホルダー23への装着は、図3及び図4に示す試料セル27を装着することによって行われるようになっている。尚、図3は試料セル27の平面図、図4は図3のX−X線矢視断面を示す。即ち、試料セル27は、大径でドーナッツ状の第1のスペーサー28aと、第1のスペーサ−28aの貫通穴にOリング29を介在させて嵌装される小径且つドーナッツ状の第2のスペーサ28bを有しており、いずれのスペーサー28a,28bもステンレス製で約1mmの厚さに形成されている。又、スペーサー28aは、外径が約30mmであり、且つ、周側端には後述する複数のネジ30を螺合させるための複数の雌ネジ部が形成されている。第2のスペーサー28bの中央部分に形成された貫通穴の内径が約3mm程度であり、この貫通穴が試料22を収容するための試料室31として使用される。
【0024】
そして、これら第1,第2のスペーサー28a,28bとOリング29を組み合わせて試料室31に所定の試料22を収容した状態で、第1,第2のスペーサー28a,28bとOリング29の両側に、約250μmの厚さの円形状の窒化珪素薄膜32,33を重ね、更にステンレス製の円板状支持金具34,35を重ねて複数個のボルト30で一体化する構造となっている。そして、一体化されたときの全体の厚さは約5.5mm程度となる。尚、支持金具34,35の中央領域Wには最大直径約5mm程度の円錐状貫通穴が穿設されると共に、上記複数のボルト30を螺合するための雌ネジ部が予め形成されており、更に、窒化珪素薄膜32,33には、中央領域Wより若干狭い領域について予めエッチングされることにより約100nmの厚さの試料窓36,37が形成されている。そして、この試料セル27を試料ホルダー23に装着すると、X線集光ミラー22により集光されたX線が中央領域Wないし試料窓36(又は37)を介して試料22に入射し、試料22を透過した透過X線の像が試料窓37(又は36)ないし反対側の中央領域Wを介してX線拡大ミラー21へ伝搬する。
【0025】
例えば、ヘラ細胞(HeLa細胞)等の生物細胞を試料22とする場合には、試料室31内に生理的食塩水と共に試料22を密封する。又、Oリング29の作用により、生理的食塩水の外部への漏れが防止されると共に、試料室31内部が1気圧に保たれることから、試料22を生きた状態で観察することができる。更に、試料22に入射するウォーターウィンドウ領域のX線は、炭素を含む有機物の存在部分で選択的に吸収されるので、透過X線は、生物細胞の微細な構造に関する明瞭な像の情報を有することとなる。そして、かかる情報を有する透過X線の像は、X線拡大ミラー21で所定倍率に拡大され、後述する反射型X線ズーミング管部C内の所定の結像位置に結像される。
【0026】
次に反射型X線ズーミング管部Cの構造を図5に基づいて説明する。尚、図5は、拡大部分断面図である。X線拡大ミラー21からの透過X線の結像面には、透過X線の入射に伴って光電子を発生する反射型X線電子光電変換面38が設けられ、反射型X線電子光電変換面38の前方にはグランド電位に設定されたアパーチャ電極39が固定されている。この反射型X線電子光電変換面38は、Cuで形成された光電面電極40の先端部(透過X線の入射方向に対向する端部)に嵌着され且つ表面粗さが100nm以下に研磨された約1mmの厚さのAu板と、そのAu板の表面に約100nmの厚さで蒸着されたCsI層で構成され、Au板の表面とCsI層の表面は、透過X線の入射方向に対して直角となっている。
【0027】
そして、光電面電極40には、高圧電源装置41により約−8kVないし−10kVの範囲の電圧が印加され、アパーチャ電極39にはグランド電位が印加され、反射型X線電子光電変換面38が透過X線の入射に対して発生した光電子を、反射型X線電子光電変換面38とアパーチャ電極39との間に発生する強電界によって、透過X線の入射方向とは逆の方向(即ち、反射型X線電子光電変換面38の光放出面の法線方向)へ放出して加速させる。
【0028】
更に、反射型X線ズーミング管部Cには、反射型X線電子光電変換面38の前方横側に、第1の電磁レンズ42と第2の電磁レンズ43、及び偏向コイル44が連設されている。第1,第2の電磁レンズ42,43は、反射型X線電子光電変換面38から出力されてアパーチャ電極39により加速された光電子を、拡大磁場により拡大させ且つ所定の収束距離で収束させる。この拡大率は第1の電磁レンズ42と第2の電磁レンズ43に流す電流を変化させて真空容器E内に発生する磁力の比率を変えることで、収束距離を変化させなくとも約10倍ないし200倍の範囲で連続的に変化させることができるようになっている。尚、この実施例では、収束距離は、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面から70cmに設定されている。
【0029】
偏向コイル44は、真空容器E内に偏向磁場を発生させ、第1,第2の電磁レンズ42,43の拡大磁場の磁力線に沿って走行してきた光電子を、所定の偏向角で偏向させることにより、2枚タンデムのマイクロチャンネルプレート45の方向へ走行させる。この実施例では、光電子の偏向角が透過X線の入射光軸に対して9°に設定され、偏向コイル44による偏向磁場の中心から反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面までの距離W1と、この偏向磁場の中心からマイクロチャンネルプレート45の光電子入射面までの距離W2の合計距離が70cmに設定されており、更にこの合計距離が、第1,第2の電磁レンズ35,36の拡大収束距離となっている。したがって、反射型X線電子光電変換面38上に結像された透過X線の像に対応して発生する光電子の像は、その透過X線の入射を妨げることなく、上記拡大磁場で拡大され且つ所定の偏向角で偏向されて、マイクロチャンネルプレート45の光電子入射面に投影結像される。
【0030】
尚、第1,第2の電磁レンズ42,43と偏向コイル44への電力供給は、不図示の駆動用電源から行うようになっている。
【0031】
マイクロチャンネルプレート45は、約500Vないし約2000Vの範囲内の電圧が掛けられることにより、最大で105 倍の電子増倍率が設定され、更に、電子増倍された電子は3000Vの印加電圧による電界により加速されてマイクロチャンネルプレート45の後方に設けられた蛍光面46に入射し、可視光像に変換される。
【0032】
蛍光面46の後方には、リレーレンズを内蔵する光学系47が設けられ、更に、光学系47の結像面に設けられたCCDカメラ48によって、可視像を撮像するようになっている。そして、CCDカメラ48から出力される映像信号は画像処理装置に伝送され、テレビジョンモニタ等に静止画表示される。
【0033】
図6は、以上に説明した結像型X線顕微鏡の構造及び機能を概略的に示している。そして、同図中、2点鎖線で示すX線光軸Qに沿って試料22を透過した透過X線の像が反射型X線電子光電変換面38に入射することにより発生する光電子の像を、その透過X線の入射方向とは逆の方向へアパーチャ電極39により加速・出射させた後、偏向コイル44によって所定の方向へ偏向させるので、反射型X線電子光電変換面38に生じる光電子が加速電界に従って一様に出射した後に偏向されることとなる。したがって、前述した従来の技術(文献「ADV in E.Ephysics vol.64.B 」)では、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面に対して予め加速電界が傾斜して掛かるように設定することで、光電子の走行方向を決める場合には、この光電子放出面に対する電界分布が一様でないために、光電子の放出方向が一様でなくなり画像歪みを招くことと成るのに対し、この実施例では、光電子放出面に対して法線方向へ光電子を放出させるように電界が掛けられているので、光電子は一様に放出され、その後に所定の方向へ偏向させてCCDカメラ48等で撮像するので、画像歪みが大幅に低減されることとなる。
【0034】
更に、反射型X線電子光電変換面38は、透過型X線電子光電変換面とは異なり、支持メッシュ電極と高分子薄膜(図8参照)を有しないので、光電変換量子効率が優れ、又、光電変換量子効率を向上させるために設けられるAu層の厚さに制限がないことから、軟X線から硬X線の範囲において光電変換量子効率の向上を図ることができる。更に又、反射型X線電子光電変換面38の光電子放出面に対して光電面電極から法線方向へ電荷を供給することができるので、光電面面抵抗が下がり、大電流を流すことができる。又、反射型X線電子光電変換面38は、透過型X線電子光電変換面と比べて機械的強度が高いので、真空容器E内の真空引き等によって生じる差圧の影響で損傷等を受けない。又、この実施例では、反射型X線ズーミング管Cの真空容器部分に反射型X線電子光電変換面38を設けることにより、真空引き等によって生じる差圧の発生を予め防止しているので、機械的強度の向上が図られている。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を一旦法線方向(即ち、透過X線の像の入射方向に対して逆の方向)へ加速・放出させた後に偏向させ、その偏向方向に設けられた撮像部により撮像するようにしたので、画像歪みの発生を大幅に低減することができる。また、透過X線の入射方向と光電子の放射方向が逆方向となるので、真空容器の長さが短くなり実質的に装置の小形化を実現する。反射型X線電子光電変換面を適用することにより、光電変換量子効率の向上と、機械的強度の向上が図られる等の優れた効果を有する結像型X線顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による結像型X線顕微鏡の一実施例の全体構成を示す平面図である。
【図2】光学ミラー室の構造を示す部分断面図である。
【図3】試料セルの構造を示す平面図である。
【図4】試料セルの構造を示す断面図である。
【図5】反射型X線ズーミング管部の構造を示す部分断面図である。
【図6】結像型X線顕微鏡の全体構造を概念的に示す断面図である。
【図7】透過型X線電子光電変換面の構造を示す部分断面図である。
【図8】透過型X線電子光電変換面に使用される光電面支持メッシュ電極の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
20…X線集光ミラー、21…X線拡大ミラー、22…試料、23…試料ホルダー、38…反射型X線電子光電変換面、39…アパーチャ電極、42,43…電磁レンズ、44…偏向コイル、45…マイクロチャンネルプレート、46…蛍光面、47…光学系、48…CCDカメラ。
Claims (1)
- 真空容器内に設けられると共に、X線光軸に沿って試料を透過した透過X線の像を拡大して前記真空容器内の所定の位置に結像させるX線拡大部と、
真空容器内に設けられると共に、前記X線光軸に対して直角となるように前記所定の位置に配置され、前記X線拡大部で拡大された結像を垂直入射する反射型X線電子光電変換面と、
真空容器内に設けられると共に、前記反射型X線電子光電変換面に発生する光電子の像を前記結像の入射方向と逆方向となる法線方向へ加速放出させる加速電極と、
前記加速電極により加速された光電子の像を所定方向へ偏向させる偏向部と、
前記偏向部により偏向された光電子の像を可視光像に変換して撮像する撮像部と、
を備えたことを特徴とする結像型X線顕微鏡。
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