JP3560154B2 - イオンビーム照射装置の運転方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばイオン注入装置のようなイオンビーム照射装置の運転方法およびそれを実施するイオンビーム照射装置に関し、より具体的には、イオン注入装置において低エネルギーイオン注入を行う際に、効率よくイオンビームを輸送する手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来のイオン注入装置の一般例を示す概略図である。
【0003】
このイオン注入装置は、基本的にはイオン源1から引き出したイオンビームは第1質量分析電磁石2で質量分離され、所望のイオンビームだけが加減速管3で加減速され、最終エネルギーに到達する。加減速管3を出たイオンビームは主に加減速管3で生じたエネルギーコンタミネーションを除去すべく再度第2質量分析電磁石4で質量分離され、スキャンマグネット5で水平方向に走査され、コリメータマグネット6で曲げ戻してパラレルビームとし、エンドステーション7のプラテン8に保持された基板9に注入される。イオン注入装置の場合、基板9は通常シリコンウエハである。このようにして、イオンビームは水平方向に走査され、プラテンは機械的に垂直方向に動くので、基板9の全面に亘って均一にイオンビームを照射することができる。
【0004】
イオン注入装置の上述した各部は、イオンビームを通過させるものなので高真空に真空排気されている。高真空に排気するのは、イオンビームが残留ガス分子と衝突して損失したり、中性粒子を発生したり、あるいは2価のイオンが1価のイオンになり所望のイオンと異なるイオンが発生するのを防止するためである。これらはビーム電流量の減少やエネルギーコンタミネーションの原因となる。
【0005】
そこで高真空に排気するために、イオン注入装置には多くの真空ポンプが設けられている。まず、荒引きを行うために、図示されていないドライポンプが設けられている。これは、大気圧から例えば1Paまで真空排気するために用いる。さらなる高真空に排気するために、以下の高真空ポンプが設けられている。本明細書において高真空ポンプとは、荒引きを行った後さらなる高真空へ排気するための真空ポンプをいう。第1質量分析電磁石2には第1のターボ分子ポンプ10と第2のターボ分子ポンプ11の二つのターボ分子ポンプが設けられており、第2質量分析電磁石4には第三のターボ分子ポンプ12が設けられている。また、コリメータマグネット6には第1のクライオポンプ13、エンドステーション7には第2のクライオポンプ14がそれぞれ設けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなイオン注入装置においては、高真空に保たれたビームライン中をイオンビームが進む。通常のイオンビームは、若干の電子を含むが、大半は正に帯電したイオンの集合である。このため、イオンビームは正電荷同士の反発により、発散する傾向にあり、これを空間電荷効果という。この空間電荷効果が大きいと、イオンビームの輸送過程でイオンビームは散失し、イオンビームの輸送効率が低下するという問題がある。
【0007】
これを解決するために特開平3−138849号公報には、イオン源1から第1質量分析電磁石までのビーム輸送ラインにガス導入ポートを設けて不活性ガス等を導入し、導入されたガス分子とイオンビームを衝突させることにより電子を放出させ、その結果イオンビーム中の電子の量が増え、空間電荷効果を小さくできると記載されている。また、ガスを導入するので中性粒子が発生するが、ガスを導入する(ガス導入ポート)場所が第1質量分析電磁石2の上流側なので、発生した中性粒子は第1質量分析電磁石2で除去することができ、さらに、イオンビームの収束点のずれは、第1質量分析電磁石2の上流側でのイオンビームの発散に大きく影響されるが、この部分でのイオンビームの発散を抑制するので、イオンビームの収束点のずれを効果的に抑制することができると記載されている。
【0008】
従来のイオン注入は、数十keV〜数百keV以上の中エネルギー、高エネルギーでイオン注入することが多く、この場合は加減速管の下流側での空間電荷効果が比較的小さく、これが問題となることは少なかった。
【0009】
しかし、近年のデバイスの微細化の要求により、低エネルギー領域、例えば10keV以下でイオン注入されることが多くなってきた。この場合は、加減速管の下流側での空間電荷効果が大きくなり、イオンビームの輸送効率が低下するという問題が生じてきた。従来数十keV以上のエネルギーでイオン注入する場合には加減速管の下流側での空間電荷効果が問題とならなかったのに、低エネルギーでイオン注入する場合になぜ問題となるのか、その理由は後ほど詳述する。
【0010】
また、特開平3−138849号公報に記載のように意図的にガスを供給し、その流入量を適当に制御するには、それ専用のガス供給設備を設ける必要があり、必然的に装置価格が高くなるという問題がある。
【0011】
さらに、イオン注入装置は、大地電位に保持した基板に、正に帯電したイオンを打ち込むため、イオン源から分析電磁石までのビーム輸送ラインは高電圧となっている。従って、前記のような高電圧のビーム輸送ラインにガス導入ポートを設けて、これにガスを供給するには、高電圧部にガスボンベを設置する必要がある。しかし、ガスボンベは有限の大きさなので適宜交換する必要があり、その都度イオン注入装置の運転を停止しなければならないという問題がある。
【0012】
そこでこの発明は、ガス供給設備を新たに設けることなく、特に低エネルギーイオン注入における空間電荷効果によるイオンビームの輸送効率低下を抑制する手段、すなわち、イオンビームの高い輸送効率を実現する手段を提供することを主たる目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るイオンビーム照射装置の運転方法は、イオンビームを発生するイオン源と、前記イオン源から発生したイオンビームを質量分離する第1質量分析電磁石と、前記第1質量分析電磁石で質量分離されたイオンビームを加減速する加減速管と、前記加減速管で加減速されたイオンビームを照射する基板を設置したエンドステーションと、前記加減速管と前記エンドステーションの間に設けられた高真空ポンプからなるイオンビーム照射装置において、1価の単原子イオンを低エネルギーでイオン注入する場合には、前記高真空ポンプの排気性能を低下させることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、低エネルギーでイオン注入をする場合には加減速管とエンドステーションの間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させるので、加減速管より下流側での真空度が悪化する。その結果、加減速管より下流側での残留ガス分子とイオンビームの衝突により電子を放出し、イオンビーム中の電子の量が増え、空間電荷効果が小さくなるので、加減速管より下流側でのイオンビームの輸送効率を向上することができる。すなわち、低エネルギーでイオン注入する場合、加減速管の上流側に比べて、下流側の空間電荷効果が極めて大きくなることに着目し、従来行われていたような加減速管の上流側の空間電荷効果を緩和するのではなく、下流側の空間電荷効果を緩和するものである。
【0015】
本願の発明は、特に低エネルギーイオン注入に関するものである。数十keV以上の中エネルギー若しくは高エネルギーでイオン注入する場合には、加減速管の下流側での空間電荷効果が問題とならないのに、低エネルギーでイオン注入する場合には、加減速管の下流側での空間電荷効果が問題となる理由を詳細に説明する。なぜそれを説明するのか、それは何度もいうが、本願発明は、低エネルギーイオン注入を行う際の独特の問題であることを説明するためである。
【0016】
まず、はじめに図3のイオン注入装置の各部位のポテンシャル変化の概念を図2に示す。図には、2つのパターンのイオン注入過程を示した。1つは、従来からよく行われている中エネルギー(200keV)でイオン注入する場合で、もう一つは、低エネルギー(3keV)でイオン注入する場合である。
【0017】
200keVのエネルギーでイオン注入する場合のイオンビームの電位の変化について説明する。大地電位に載置された基板9に対し最終的に200keVでイオン注入しようとすると、1価イオンを用いる場合、イオン源1の電位は大地電位に対し+200kVとなる。なぜなら、最初(イオン源1)と最後(基板9)の電位差で、基板9に打ち込まれるエネルギーが決まるからである。+200kVのイオン源1から30kVでイオンビームを引出し、第1質量分析電磁石2を経て、加減速管3へ輸送される。これを加減速管3で170kV加速し、第2質量分析電磁石4、スキャンマグネット5、コリメータマグネット6を経て基板9に最終的に200kVの電位差で打ち込まれる。
【0018】
次に同様に、3keVの低エネルギーでイオン注入する場合のイオンビームの電位の変化について説明する。イオン源2の電位が+3kVになるのは、先ほどと同じ理由による。+3kVのイオン源から30kVでイオンビームを引出し、第1質量分析電磁石を経て、加減速管3へ輸送される。これを加減速管3で27kV減速し(加減速管は、減速管としても使用できる)、第2質量分析電磁石4、スキャンマグネット5、コリメータマグネット6を経て基板9に最終的に3kVの電位差で打ち込まれる。
【0019】
これらのイオンビームの輸送過程における各部位でのイオンビームのポテンシャルを説明する。イオンビームのポテンシャルは、イオン源の電位を基準電位として考える。200keVでイオン注入する場合、引出電極から第1質量分析電磁石2、加減速管3へ入るまでのイオンビームポテンシャルは30kVであり(図2中a)、加減速管3を出てから第2質量分析電磁石4、スキャンマグネット5、コリメータマグネット6を経て基板9へ注入されるまでのイオンビームポテンシャルは200kVである(図2中b)。次に、3keVでイオン注入する場合、引出電極から第1質量分析電磁石2、加減速管3へ入るまでのイオンビームポテンシャルは30kVであり(図2中c)、加減速管3(ここでは減速管として作用)を出てから第2質量分析電磁石4、スキャンマグネット5、コリメータマグネット6を経て基板9へ注入されるまでのイオンビームポテンシャルは3kVである(図2中d)。
【0020】
すなわち、200keVでイオン注入する場合は、加減速管3の下流側のイオンビームポテンシャルは、上流側のそれより大きくなる(30kVが200kVになる)のに対し、3keVでイオン注入する場合は、加減速管3の下流側のイオンビームポテンシャルは、上流側のそれより小さくなる(30kVが3kVになる)。200keVでイオン注入する場合と3keVでイオン注入する場合は全く異なった動きをすることが分かる。
【0021】
次に、イオンビームの空間電荷効果の強さについて説明する。イオンビームの空間電荷効果の強さSは、比例定数をA、イオンビーム電流をI、イオンビーム中に存在する電子の比率(イオンビーム中の電子の電荷/イオンビーム中のイオンの電荷)をp、イオンの質量をm、イオンの価数をq、イオンビームのポテンシャル(基準電位に対する電位差)をVとしたとき、次の式で表される。
【0022】
【数1】
S=A*I*(1−p)*√(m/qV3) (1)
【0023】
この式から、イオンビーム電流が大きく、イオンビーム中に存在する電子の比率が小さく、イオンの質量が大きいほど、イオンビームの空間電荷効果は強く、イオンビームの発散する度合いが強く、結果としてイオンビームの輸送効率が低下することがわかる。また、イオンの価数が大きく、イオンビームのポテンシャルが大きいほどイオンビームの空間電荷効果は弱く、イオンビームの発散する度合いは弱く、結果としてイオンビームの輸送効率は高くなることがわかる。一言でいえば、イオンビームの輸送効率の観点から空間電荷効果の強さSは、小さいほど好ましい。
【0024】
ここで、イオンビームのポテンシャルについて考えると、イオンビームのポテンシャルが大きいほど、空間電荷効果が小さい(輸送効率が高い)と分かる。すなわち、イオンビームの輸送過程において、下流側のイオンビームポテンシャルが上流側より大きくなる場合は、少なくとも下流側において空間電荷効果が問題となることはない。
【0025】
ここで、前述した200keVでイオン注入する場合と3keVでイオン注入する場合において、加減速管の下流側での空間電荷効果が問題となるか、正確には加減速管の上流側より下流側で空間電荷効果が問題となるか否かを検討する。200keVでイオン注入する場合は、前記したように加減速管上流側のイオンビームポテンシャルは30kV、下流側のそれは200kVなので、空間電荷効果の強さは下流側の方が小さい。〔数1〕から下流側での空間電荷効果の強さは、上流側の約1/17となる。下流側での空間電荷効果が全く問題とならないことが分かる。
【0026】
次に3keVでイオン注入する場合、前記したように加減速管上流側のイオンビームポテンシャルは30kV、下流側のそれは3kVなので、空間電荷効果の強さは下流側の方が大きい。〔数1〕から下流側での空間電荷効果の強さは、上流側の約31倍となり、加減速管の上流側に比べて、下流側の空間電荷効果が極めて大きくなる。これでは上流側での空間電荷効果が問題とならない場合でも、下流側では問題となることが分かる。
【0027】
すなわち、数十keV以上の中エネルギー若しくは高エネルギーでイオン注入する場合には、加減速管の下流側での空間電荷効果が問題とならないのに、低エネルギー領域でイオン注入する場合には、加減速管の下流側での空間電荷効果が問題となる。本願は、低エネルギーでイオン注入する場合の加減速管の下流側での空間電荷効果増大によるイオンビームの輸送効率低下という独特の問題に関するものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一例を示す概念図である。図3の従来例と同一または相当する部分には同一の符号を付し、以下において当該従来例との相違点を主に説明する。
【0029】
このイオンビーム照射装置は、低エネルギーでイオン注入する場合は、加減速管3の下流である加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させる。ここで、低エネルギーイオン注入とは、10keV以下のエネルギーでイオン注入する場合をいう。高真空ポンプとは、大気圧から荒引き(例えば、1Pa)を行った後のさらなる高真空(例えば、10−4Pa)へ真空排気を行うための真空ポンプをいう。また、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプとは、第3のターボ分子ポンプ12、第1のクライオポンプ13あるいは、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた他の高真空ポンプがあればその高真空ポンプをいう。
【0030】
加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させるには以下の手法がある。当該高真空ポンプの運転を停止させてもよく、また、当該高真空ポンプの運転を定格より下げた状態で運転(例えば、通常3万回転/分で回転するターボ分子ポンプの回転数を1万回/分に下げて運転すればよい)してもよく、さらに、当該高真空ポンプと各機器の間に真空バルブが設けられていれば当該真空バルブの開閉状態を変えてもよく、これらの手段を適宜組み合わせてもよい。
【0031】
図1のように、加減速管3とエンドステーション7の間に複数の高真空ポンプが設けられている場合は、加減速管3の下流側で最も加減速管3に近い第3のターボ分子ポンプ12の運転を停止するのが効果的である。ここでは、第3のターボ分子ポンプ12に意味があるのではなく、加減速管3の下流側で最も加減速管3に近い高真空ポンプに意味がある。なぜなら、前記したように低エネルギーでイオン注入する場合、イオンビームは加減速管3を出ると空間電荷効果が極端に大きくなり、イオンビームが散失するので、加減速管3を出たところでこれを防止するのが最も効果的だからである。また、若干効果は落ちるが、第3のターボ分子ポンプ12は定格で運転しコリメータマグネット6に設けられた第1のクライオポンプ13を停止してもよい。さらに、第3のターボ分子ポンプ12と第1のクライオポンプ13の両方の運転を停止してもよい。
【0032】
要するに、低エネルギーイオン注入する場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を何らかの手段を用いて低下させて、この間の真空度を低下させればよい。真空度が低下することにより、イオンビームと残留ガスとの衝突が増加、電子が発生し、その結果、空間電荷効果が小さくなり、結果としてイオンビームの輸送効率を向上することができる。
【0033】
しかしながら、上述したようにイオン注入装置は、イオンビームの輸送過程でイオンビームが残留ガス分子と衝突すると輸送効率が低下する。従って、従来例がそうであったように、イオン注入装置は高真空に排気されているのが大原則である。しかし、真空度を下げると残留ガス分子とイオンビームの衝突により電子が放出され、空間電荷効果の低下による輸送効率の向上が期待できる。では、どんな場合にあえて真空度を下げて、加減速管3の下流側の空間電荷効果を小さくし、輸送効率を向上することができるのであろうか。
【0034】
そこで、本願の発明者は種々実験を重ねた結果、イオンビーム電流をI〔μA〕、イオンの質量をm〔amu〕、イオンの価数をq〔無次元数〕、イオンビームのポテンシャル(基準電位に対する電位差)をV〔kV〕としたとき、次の式で表される判定値S’を求め、判定値S’が5以上の場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下すれば、イオンビームの輸送効率を改善できることを見いだした。判定値S’が10以上の場合には特に顕著な効果を生じる。
【0035】
【数2】
S’=I*√(m/qV3) (2)
【0036】判定値S’が5以上の場合は、イオンビーム電流の損失というデメリットよりも空間電荷効果が小さくなるというメリットの方が顕著に現われ、イオンビームの輸送効率が向上する。この場合は元々の空間電荷効果が大きいので、衝突による空間電荷効果が小さくなるという効果が顕著に現れたためである。従ってこの場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させて運転する。
【0037】
これに対し、判定値S’が5より小さい場合は、真空度を低下させて残留ガスとの衝突を増やし空間電荷効果を小さくしても、元々の空間電荷効果が小さいので前述のメリットはほとんど現れず、逆にイオンビーム電流の損失というデメッリトの方が優勢に現れ、イオンビームの輸送効率が若干低下する。従って、この場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能は通常通り定格で運転する。
【0038】では、判定値S’が5以上の場合であれば如何なる場合でも加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させていいのであろうか。そこで次に、打ち込むイオン種との関係について説明する。
【0039】
判定値がS’が5以上の場合であっても、所望のイオンがB2+、P2+のような多価イオンやP2+、BF2+のような分子イオンでは、イオンビームと残留ガス分子との衝突によるイオンの価数の変化(例えば、2価のイオンから1価のイオン)や分子自体の分解(例えば分子イオンが原子イオン)によりエネルギーコンタミネーションが発生し、結果として所望のイオンビームの輸送効率は低下する。多価イオンや分子イオンは単分子の1価イオンに比べて、不安定であるため、残留ガス分子との衝突によりイオンビームの損失というデメリットの方が現れやすいためである。ゆえにこの場合は、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能は通常通り定格で運転する方が好ましい。
【0040】
従って、所望のイオンがB+、P+、As+のような1価の単原子イオンで、かつ、判定値がS’が5以上の場合は、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下して運転することにより、空間電荷効果が小さくなり、加減速管より下流側でのイオンビームの輸送効率を向上することができる。
【0041】
以上をまとめると、高真空ポンプの排気性能を低下させるか否かは、次のように判断することができる。
【0042】
まず、所望のイオン種が1価の単原子イオンか、分子イオンか、多価イオンかを判断する。分子イオンまたは多価イオンの場合は、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能は通常通り定格で運転する。1価の単原子イオンの場合は〔数2〕により判定値S’を求め、S’が5以上のときは加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下し、S’が5より小さいときは、高真空ポンプの排気性能は通常通り定格で運転する。ここで、判定値S’は前述した10としてもよい。
【0043】
以上のような手法で、イオン種(1価の単原子イオン、分子イオン、多価イオン)と判定値S’から加減速管とエンドステーションの間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させるか否かを判断することにより、当該高真空ポンプの排気性能を最適に制御することができ、イオンビームの輸送効率の高いイオン注入が可能となる。さらに、中エネルギーや高エネルギーでイオン注入する場合や、分子イオンや多価イオンを低エネルギーイオン注入する場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させないので、イオンビームの輸送効率が低下することもないというメリットもある。
【0044】
また、イオン種と判定値S’の両方から判断させる場合より若干判断の最適性は落ちるが、イオン種若しくは判定値S’のいずれか一つから当該判断を行わせてもよい。
【0045】
ここで、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能の制御は制御装置20で行う。
【0046】
制御装置は、1価の単原子イオンを低エネルギーでイオン注入する場合には、加減速管と前記エンドステーションの間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させる制御を行う。高真空ポンプの排気性能を低下させる手段は前述のとおりである。
【0047】
イオン注入装置にこの様な制御装置20を設けることにより、1価の単原子イオンを低エネルギーでイオン注入する場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させるので、空間電荷効果が小さくなり、輸送効率の高いイオン注入装置の実現することができ、さらにイオン注入装置の運転の省力化を図ることができる。
【0048】
高真空ポンプの排気性能を低下させるか否かは、前述した判断手法を用いて判断することができる。当該判断は、制御装置20自身で行ってもよく、あるいは、イオン注入装置の中央制御装置等で行わせてもよい。制御装置20自身で当該判断を行った場合は、当該判断の結果により制御装置20が高真空ポンプの排気性能を制御し、また、制御装置20以外の例えばイオン注入装置の中央制御装置等が当該判断を行った場合は、そこからの信号(命令)を下に制御装置20が高真空ポンプの排気性能を制御すればよい。
【0049】
当該判断手法を用いることにより、打ち込むエネルギー(低エネルギー、中エネルギー、高エネルギー)やイオン種(分子イオン、多価イオン、1価の単原子イオン)が変化した場合でも、最適なイオン注入装置の運転状態を選択することができる。さらに、この様な判断を自動的に行うようにすれば、さらなるイオン注入装置の運転の省力化を図ることができる。
【0050】
なお、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下、具体的には高真空ポンプの運転を停止または通常の回転数より下げて運転した際に、種々のイオンビームの輸送効率がどうなるか事前に実測し、最適条件を決めておくのが好ましい。このデータを制御装置20に与えて、注入条件に応じて加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプを制御するようにしてもよい。
【0051】
【実施例】
判定値S’が5以上の例を示す。全ての真空ポンプを定格運転した状態において、B+を3keVのエネルギーでイオン注入した場合の基板部でのイオンビーム電流は10μAであった。ここで、判定値S’を〔数2〕で計算してみると約12となる。判定値S’が5以上なので加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させた方が輸送効率が向上すると考えられる。そこで、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプである第三のターボ分子ポンプ12を停止したところ、基板部でのイオンビーム電流が20〜30%増加した。
【0052】
判定値S’が5より小さい例を示す。全ての真空ポンプを定格運転した状態において、B+を200keVのエネルギーでイオン注入した場合の基板部でのイオンビーム電流は200μAであった。ここで、判定値S’を〔数2〕で計算してみると約0.2となる。判定値S’が5より小さいので加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を通常通り定格で運転しても輸送効率は向上しない考えられる。しかしここではあえて、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプである第三のターボ分子ポンプ12を停止したところ、予想通りイオンビームの輸送効率は向上せず、基板部でのイオンビーム電流が1%減少した。
【0053】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を生じる。
【0054】
請求項1記載の発明によれば、1価の単原子イオンを低エネルギーでイオン注入を行う場合には、加減速管3とエンドステーション7の間に設けられた高真空ポンプの排気性能を低下させるので、加減速管3とエンドステーション7間の真空度が低下し、残留ガス分子が増加する。その結果、残留ガス分子とイオンビームの衝突による電子の放出が増加し、イオンビーム中の電子の量が増えるので、空間電荷効果が小さくなり、ひいてはイオンビームの輸送効率を向上することができる。また、既存の高真空ポンプの運転を制御するだけなので、特開平3−138849号公報に記載されているようなガス供給設備を新たに設ける必要もなく、従って、ガスボンベ交換のためにイオン注入装置を停止させる必要もない。
【0055】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の前記効果と同様の効果を奏すると共に、イオンビーム照射装置運転の省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射装置の一例を示す概念図である。
【図2】この発明に係るイオンビーム照射装置の各部位のポテンシャル変化を示す概念図である。
【図3】従来のイオン注入装置の一般例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 イオン源
2 第1質量分析電磁石
3 加減速管
4 第2質量分析電磁石
7 エンドステーション
12 第3のターボ分子ポンプ12
20 制御装置

Claims (1)

  1. イオンビームを発生するイオン源と、前記イオン源から発生したイオンビームを質量分離する第1質量分析電磁石と、前記第1質量分析電磁石で質量分離されたイオンビームを加減速する加減速管と、前記加減速管で加減速されたイオンビームを照射する基板を設置したエンドステーションと、前記加減速管と前記エンドステーションの間に設けられた高真空ポンプからなるイオンビーム照射装置において、1価の単原子イオンを10keV以下のエネルギーでイオン注入する場合には、前記高真空ポンプを停止させることを特徴とするイオンビーム照射装置の運転方法。
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