JP3560027B2 - 冷間加工用肌焼鋼及び車両用部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷間鍛造後に焼ならし処理を施すことなく、高温浸炭処理においても整粒を維持できる冷間加工用肌焼鋼、及びそれを用いた車両用部品、例えばギアやシャフト等の車両用部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より冷間鍛造で製造される各種浸炭部品においては、浸炭時の結晶粒粗大化防止のために冷間鍛造後に焼ならし処理を施している。しかしながら、焼ならし処理はコストアップにつながるだけでなく、高温に保持されるため表面形状が劣化しショットブラストなど工程追加が必要となることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、微細析出物による結晶粒成長のピンニング作用に注目し、このピンニング作用を利用することによって結晶粒の成長を抑制するために、Al、Nb等を積極的に添加した材料が冷間鍛造部品には多く供用されている。しかしながら、冷間鍛造後の焼ならし省略までは至っていない。すなわち、Nb、Ti、Ta、Hf等を添加することにより、各々の炭化物もしくは炭窒化物等の析出物を3個/10μm2以上確保することで、焼ならし処理を施すことなく結晶粒の粗大化を抑制するもの(特開平9−59743号公報参照)があるが、この場合では、1000℃以上の高温浸炭処理において安定した結晶粒成長抑制効果が得られていない。また、NbもしくはNbとAlの複合析出物を5個/10μm2以上確保することで、冷間鍛造後の焼ならしを施すことなく結晶粒の粗大化を抑制するもの(特開平9−78184号公報参照)があるが、この場合では、950℃の浸炭処理においても結晶粒の粗大化が認められる。すなわち、Nb添加量を増やすことで結晶粒粗大化温度の上昇は期待できるものの、熱間加工性及び冷間加工性の劣化が否めず、ミッションギアなど苛酷な鍛造形状部品の製造は困難である。
【0004】
近年製造コストの低減及び工期短縮のために高温浸炭処理への要求が高まる中で、冷間鍛造後の焼ならし省略と高温浸炭処理の適用を両立させる材料の開発が必要となっている。
【0005】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、冷間鍛造後に焼ならし処理を施すことなく、高温浸炭処理においても異常粒成長を起こすことなく整粒を維持できる耐粗粒化特性に優れた冷間加工用肌焼鋼及びそれを用いた車両用部品の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで請求項1の冷間加工用肌焼鋼は、質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下のうち1種もしくは2種以上と、Ti:0.10〜0.20%とを含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる肌焼鋼であって、直径10nm以上のTi炭化物もしくはTi炭窒化物の析出物の数が前記肌焼鋼中に40個/μm2以上有するようにして結晶粒の粗大化を防止したことを特徴としている。
【0007】
上記請求項1の冷間加工用肌焼鋼では、鋼中のCと結びついて炭化物を形成して結晶粒の粗大化抑制に寄与するTiを、0.10〜0.20%含有させている。これにより、Ti炭化物及びTi炭窒化物を大量に確保することができ、冷間鍛造後の焼ならし処理を施すことなく、結晶粒の粗大化を抑制することができる。また、この肌焼鋼では、1000℃以上の高温においても、結晶粒の粗大化を抑制することが可能となる。
【0008】
請求項2の冷間加工用肌焼鋼は、B:0.0005〜0.0050%を含有することを特徴としている。
【0009】
上記請求項2の冷間加工用肌焼鋼では、Bにて、粒界に偏析し粒界強度を向上させ、微量で大幅に焼入性を向上させることができる。このため、高価なMoを減少させることが可能となる。また、Bの含有率が、0.0005%未満ではその効果が十分に得られず、0.0050%を超えて添加すると逆に焼入性が低下する。
【0010】
請求項3の冷間加工用肌焼鋼は、1000℃以上の浸炭処理において前記結晶粒の粗大化を防止したことを特徴としている。
【0011】
請求項4の車両用部品の製造方法は、質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下のうち1種もしくは2種以上と、Ti:0.10〜0.20%とを含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼を用いた車両用部品の製造方法であって、前記肌焼鋼を圧延又は鍛造した後に冷間加工を施し、前記圧延又は鍛造後もしくは冷間加工後に、前記肌焼鋼の素地に存在する析出物のうち直径10nm以上のTi炭化物もしくはTi炭窒化物の析出物の数が前記肌焼鋼中に40個/μm2以上析出された肌焼鋼を用い、肌焼鋼の結晶粒の粗大化を防止しながらこの肌焼鋼を焼ならし処理を省略して浸炭処理することを特徴としている。
【0012】
上記請求項4の車両用部品の製造方法では、製造される各種車両用部品は、鋼中のCと結びついて炭化物を形成して結晶粒の粗大化抑制に寄与するTiを、0.10〜0.20%含有させている。これにより、Ti炭化物及びTi炭窒化物を大量に確保することができ、冷間鍛造後の焼ならし処理を施すことなく、結晶粒の粗大化を抑制する効果を有することになる。これにより、疲労強度や靭性に優れた部品となると共に、製造時間の短縮化を図ることができる。
【0013】
請求項5の車両部品の製造方法は、B:0.0005〜0.0050%を含有する焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼を用いることを特徴としている。
【0014】
上記請求項5の車両部品の製造方法では、Bにて、粒界に偏析し粒界強度を向上させ、微量で大幅に焼入性を向上させることができる。このため、高価なMoを減少させることが可能となる。また、Bの含有率が、0.0005%未満ではその効果が十分に得られず、0.0050%を超えて添加すると逆に焼入性が低下する。
【0015】
請求項6の車両用部品の製造方法は、1000℃以上で浸炭処理を行うことを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の肌焼鋼の具体的な実施の形態について詳細に説明する。この肌焼鋼は、質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下のうち1種もしくは2種以上と、Ti:0.10〜0.20%とを含有し、残部はFe及び不可避不純物からなる。なお、%は重量%である。
【0017】
ところで、Cは焼入性を著しく上昇させる元素であり、芯部強度を確保するために必要な元素であるが、0.10%未満では十分な強度が得られない。一方、0.25%を超えると熱間鍛造後の硬度が上昇し被削性が低下するだけでなく、衝撃特性が低下する。そのため、このCの含有量を0.10〜0.25%とした。
【0018】
また、Siはフェライト強化元素であり、添加量の増大とともに硬さが上昇し冷間加工性を劣化させる。0.35%を超えて含有させると圧延もしくは熱間鍛造後の硬度が上昇し、著しく冷間加工性を阻害するため、このSiの含有量を0.35%以下とした。
【0019】
Mnは安価で焼入性を碓保するのに必要な元素であるが、0.2%未満ではその効果が不十分であり、1.00%を超えて含有させると硬度が上昇し、冷間加工性を低下させる。そのため、Mnの含有量を0.20〜1.00%とした。
【0020】
Alは脱酸材として使用される元素であり、0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.05%を超えるとアルミナ系酸化物が増加し、疲労特性、加工性を低下させる。そのため、このAlの含有量を0.005〜0.050%とした。
【0021】
Tiは鋼中のCと結びつき炭化物を形成し結晶粒の粗大化抑制に寄与する元素であるが、0.10%未満の場合その効果は少なく、また0.20%を超えて含有させてもその効果が飽和するばかりでなく、熱間圧延もしくは熱間鍛造後の硬度を上昇させ、冷間加工性を劣化させる。そこで、このTiの含有量を0.10〜0.20%とした。また、後述するBを添加した場合には、Tiは鋼中のfree−Nを固定しBの焼入れ性向上効果を促進させる元素として必要となるが、Tiの含有量を上記のように0.10〜0.20%とすることによってそれらの効果が十分に得られる。
【0022】
Nは0.015%を超えて含有するとTiNが増加し、被削性が低減される。そこで、このNの含有量を0.015%以下とした。しかしながら、疲労強度、寿令の要求される場合においては、TiNが少ない方が好ましいので、特に、0.010%以下が望まれる。
【0023】
Ni、Cr、及びMoは、いずれも焼入性の向上に有効な元素である。そして、これらを含有させる場合、Niは浸炭層、芯部の靭性向上に有効であるが、高価であり、しかも冷間加工性を低下させるため、その含有量を1.0%以下とする。また、Crは浸炭性の向上に有効な元素であるが、多量に添加すると圧延もしくは熱間鍛造後の硬さを上昇させ冷間加工性を劣化させ、しかも1.5%を越えて添加すると浸炭時に炭化物が析出し靭性を劣化させる。そこで、このCrの含有量を1.50%以下とする。さらに、Moも浸炭性の向上と靭性向上に有効な元素であるが、1.0%を越えて添加すると著しく冷間加工性を劣化させる。そこで、このMoの含有量を1.0%以下とした。
【0024】
また、Bは粒界に偏析し粒界強度を向上させ、微量で大幅に焼入性を向上させる元素であるので、含有させるのが好ましいが、0.0005%未満ではその効果が十分に得られず、0.0050%を超えて添加すると逆に焼入性が低下する。そこで、このBの含有させる場合、その含有量を0.0005〜0.0050%とする。すなわち、Bを含有させれば、浸炭性の向上と靭性向上に有効であるが高価なMoの削減することができ、生産コストの低減を図ることが可能となる。
【0025】
ところで、1000℃以上の高温において結晶粒の粗大化を防止するためには、このような温度において微細な第二相粒子が数多く存在する必要がある。そのためには高温においても素地に再固溶し難く、また析出物が成長し難いことが必要となる。発明者はTi、Al、Nb及びC、Nを含む鋼において、圧延もしくは鍛造後の析出物を調査し、AlN、TiN、TiC、NbC、Al−Nbの複合炭窒化物、の5種類の析出物が素地に存在することを確認した。なお、TiCがTiCNの場合や、NbCがNbNまたはNb(CN)の場合がある。
【0026】
これら種々の析出物を有する圧延もしくは鍛造材を1000℃で2時間保持の浸炭処理を施した後の結晶粒状況と析出物状況を調査した結果、微細なTiCもしくはTiCN析出物が数多く確認され、1000℃の高温においてTiの炭化物または炭窒化物が結晶粒の粗大化防止に有効であることを確認した。すなわち、結晶粒の粗大化防止に有効することができることによって、冷間鍛造後の焼きならし処理の省略が可能となる。
【0027】
また浸炭処理前のTi炭化物もしくはTi炭窒化物の数と結晶粒粗大化温度の関係を調査した結果、1000℃において結晶粒の粗大化を抑制するためには、鋼材または鍛造部品中に40個/μm2以上の析出物が必要であることが判明した。すなわち、鍛造部品中に析出物が40個/μm2以上となったときに結晶粒の粗大化を抑制作用が発揮され、特に45〜50個/μm2以上で、粗大化防止が有効に発揮された。
【0028】
このように構成される肌焼鋼は、図1の組織写真で示すように、TiCを確保することができ、結晶粒の粗大化防止を有効に達成することができ、強度的に優れることになる。しかも、冷間鍛造後の焼きならし処理の省略ができ、コストの低減及び製造時間の短縮を図ることが可能となる。
【0029】
上記のように構成される肌焼鋼は、ミッションギア等のギアやシャフト等の車両用部品に使用することができる。この肌焼鋼にて製造された車両用部品は、車両用部品として強度的に優れ、長期にわたって車両用部品としての機能を維持することができる。ここで、車両とは、自動車、自動二輪、各種産業用車両、鉄道等の種々の車両をいい、また、部品には、上記ギアやシャフト以外にも、ロッカアーム等のアーム、テンショナーカム等のカム等の各種車両に使用される部品を含む。
【0030】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示す。実施例及び比較例における鋼組成を表1のNo.1〜16に示す。表において発明鋼とは、本発明における鋼を指し、比較鋼とは比較例のために製造した鋼を指す。発明鋼1〜3はJISに規定するSCR420、発明鋼4はSCM420、発明鋼5はSNCM220の鋼にそれぞれ相当する鋼であり、Tiを単独添加している。発明鋼6、7、8はそれぞれJISに規定するSCR系、SCM系、SNCM系の鋼に対し、Ti及びBを添加した鋼である。
【0031】
比較鋼9、10、11はそれぞれJISに規定するSCR420、SCM420、SNCM220の鋼であり、比較鋼12、13、14はTiを添加しているものの、発明鋼6、7、8に対し、Ti量が低い鋼であり、比較鋼15、16はJISに規定するSCR420に対し、Nbを添加しているものである。
【0032】
表1に示す化学成分組成(質量%、残部は実質上Fe)をもつ鋼材をそれぞれ100kg真空溶解炉にて溶製後、1000℃に加熱後熱間鍛造でφ20へ鍛造した。その後機械加工により直径14mm×高さ21mmの円柱試験片を作製後、端面拘束型圧縮試験機により加工率70%で加工した試験片を作製した。浸炭前の試験片より電子顕微鏡観察用の試料を抽出レブリカにて作製し、析出物の形態及び量を調査した。なお10nm未満の析出物についてはその組成の分析が困難なため、個数のカウントからは除外した。またあわせて70%加工済試験片を900℃〜1050℃に6時間保持した後水焼入れを行いオーステナイト結晶粒粗大化温度を調査した。析出物量及び結晶粒粗大化温度の結果をあわせて表2に示す。発明鋼はいずれもTi炭化物及びTi炭窒化物量が著しく多く、1000℃においても結晶粒の粗大化がおこらない。一方、比較鋼9〜11はTiが未添加であるためTiの炭化物及び窒化物は認められず小量のALNが認められるのみであり、比較鋼12は小量のTiN、比較鋼13及び14はTiNと若干のTi炭化物及びTi炭窒化物が認められる程度であるため1000℃においては結晶粒の粗大化がおこる。また比較鋼15、16はNb炭化物が若干認められるものの、1000℃においては結晶粒の粗大化が起こる。従って、各発明鋼は比較鋼に比べ結晶粒粗大化抑制効果が優れていることがわかる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
また、図2と図3は上記発明鋼6の組織写真を示し、図4と図5は上記比較鋼10の組織写真を示している。この場合、発明鋼6と比較鋼10とをスプライン軸に形成したものであって、図2と図4とは溝部近傍を示し、図3と図5とは軸心部を示している。これらの写真で分かるように、発明鋼においては結晶粒粗大化が防止されている。なお、図2(a)と図3(a)と図4(a)と図5(a)とはそれぞれ25倍であり、図2(b)と図3(b)と図4(b)と図5(b)とはそれぞれ50倍である。
【0036】
次に表1の供試材のうち発明鋼6と比較鋼10の供試材を加工率0%と50%70%で加工して、表3に示すように、925℃、950℃、975℃、及び1000℃にて6時間保持させた後水冷し、その結晶度を透視型顕微鏡で観察した。この表3から分かるように、発明鋼6においては、加工率が70%で、しかも1000℃に保持しても、整細粒状態であった。これに対して、比較鋼10では、加工率が0%であっても、1000℃とすれば、一部混粒が発生し、加工率が50%では、925℃で一部混粒が発生し、975℃で全体が混粒状態となり、加工率が70%では、925℃で一部混粒が発生し、950℃で全体が混粒状態となった。
【0037】
【表3】
【0038】
次に、上記発明鋼と一般のSCM420とを、焼入れ性、冷間加工性、結晶粒度、衝撃値、回転曲げ疲労、ころがり寿命等について比べた。発明鋼は、焼入れ性において、SCM420と同程度を有する。また、冷間加工性において、Si、Mnの低減によってSCM420より低減された。そのため、発明鋼においては、前熱処理の省略(焼鈍、低温焼鈍)あるいはこれらの簡略化が可能となる。また、発明鋼は、結晶粒度においてSCM420より優れた特性を示し、Bを含有する場合、衝撃値において粒界酸化層の低減によってSCM420より優れた特性を有し、回転曲げ疲労においても粒界酸化層の低減によってSCM420より優れた特性を有する。さらに、発明鋼は、ころがり寿命において微細粒子(TiC)による分散強化効果によってSCM420より優れた寿命特性を有する。すなわち、この発明鋼(具体的には、発明鋼6)は、高価なMoを使用することなく、低コストにて、SCM420と同等乃至それ以上の品質を有する肌焼鋼となる。
【0039】
以上にこの発明の肌焼鋼の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。すなわち、各成分の含有率として、表1に示す発明鋼に限るものではなく、C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下、Ti:0.10〜0.20%の範囲内において種々変更可能である。
【0040】
【発明の効果】
請求項1の冷間加工用肌焼鋼によれば、Ti炭化物及びTi炭窒化物を大量に確保することで、冷間鍛造後の焼ならし処理を施すことなく、整粒が維持された肌焼鋼となる。これにより、この肌焼鋼は疲労強度や靭性に優れると共に、生産性の向上とコストの低減を図ることが可能となる。
【0041】
請求項2の冷間加工用肌焼鋼によれば、粒界強度を向上させ、高品質の肌焼鋼となり、しかも、高価なMoの添加を抑えることができ、コストの低減に一層寄与する。
【0042】
請求項3の冷間加工用肌焼鋼によれば、1000℃の高温浸炭においても結晶粒の粗大化を抑制することができる。すなわち、高温浸炭処理においても整粒を維持でき、強度的に優れた肌焼鋼を、低コストにて提供することができる。
【0043】
請求項4〜請求項6の車両用部品の製造方法によれば、製造される各種車両用部品は、耐粗粒化特性に優れ、疲労強度や靭性に優れた部品となり、長期にわたって車両用部品としての機能を維持することができる。しかも、生産性向上と大幅なコストダウンを図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の肌焼鋼の実施形態の金属組織の顕微鏡写真である。
【図2】発明鋼の溝部近傍の金属組織の顕微鏡写真を示し、(a)は25倍の組織写真であり、
(b)は50倍の組織写真である。
【図3】発明鋼の軸心部の金属組織の顕微鏡写真を示し、(a)は25倍の組織写真であり、(
b)は50倍の組織写真である。
【図4】比較鋼の溝部近傍の金属組織の顕微鏡写真を示し、(a)は25倍の組織写真であり、
(b)は50倍の組織写真である。
【図5】比較鋼の軸心部の金属組織の顕微鏡写真を示し、(a)は25倍の組織写真であり、(
b)は50倍の組織写真である。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、
Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下のうち1種もしくは2種以上と、
Ti:0.10〜0.20%とを含有し、
残部はFe及び不可避不純物からなる肌焼鋼であって、
直径10nm以上のTi炭化物もしくはTi炭窒化物の析出物の数が前記肌焼鋼中に40個/μm2以上有するようにして結晶粒の粗大化を防止したことを特徴とする焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼。 - B:0.0005〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1の焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼。
- 1000℃以上の浸炭処理において前記結晶粒の粗大化を防止したことを特徴とする請求項1又は請求項2の焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼。
- 質量%で、
C:0.10〜0.25%、Si:0.35%以下、Mn:0.20〜1.0%、Al:0.005〜0.050%、N:0.015%以下と、
Ni:1.0%以下、Cr:1.50%以下、Mo:1.0%以下のうち1種もしくは2種以上と、
Ti:0.10〜0.20%とを含有し、
残部はFe及び不可避不純物からなる焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼を用いた車両用部品の製造方法であって、
前記肌焼鋼を圧延又は鍛造した後に冷間加工を施し、前記圧延又は鍛造後もしくは冷間加工後に、前記肌焼鋼の素地に存在する析出物のうち直径10nm以上のTi炭化物もしくはTi炭窒化物の析出物の数が前記肌焼鋼中に40個/μm2以上析出された肌焼鋼を用い、肌焼鋼の結晶粒の粗大化を防止しながらこの肌焼鋼を焼ならし処理を省略して浸炭処理することを特徴とする車両用部品の製造方法。 - B:0.0005〜0.0050%を含有する焼ならし処理が省略可能な冷間加工用肌焼鋼を用いることを特徴とする請求項4の車両用部品の製造方法。
- 1000℃以上で浸炭処理を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5の車両用部品の製造方法。
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