JP3559859B2 - 分離給紙装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、スキャナ装置等において原稿等の用紙の束から1枚ずつ用紙を分離し、搬送する分離給紙装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来の分離給紙装置が適用された複写機の構成を示す側面断面図であり、1は画像を読み取るための原稿が装填される原稿装填部であり、原稿の幅方向で移動可能なガイド板2が配置されている。3は揺動可能に支持された加圧レバーであり、捩じりコイルバネ等の弾性部材(図示省略)により原稿装填部1の上面に圧接している。4は加圧レバー3の下方に配置されたピックアップローラ、5はピックアップローラ4の搬送方向下流側の分離位置に配置されたフィードローラであり、ピックアップローラ4は、フィードローラ5の回転軸を中心として揺動可能に支持されたローラフレーム6により軸支されている。このローラフレーム6は、ピックアップローラ4及びフィードローラ5の回転に連動してピックアップローラ4を上方に移動させるように揺動し、このことにより、搬送回転方向に回転(正回転)するピックアップローラ4が原稿装填部1に装填された原稿に圧接する。7は、後端部がフィードローラ5に対して上流側の上方位置で、フレーム部8に固定された摩擦分離パッドであり、その先端部付近をフィードローラ5に圧接させている。この摩擦分離パッド7は、フィードローラ5との圧接部においてフィードローラ5と共に分離給紙部を構成している。また、9は、後端部が摩擦分離パッド7と共通の位置で固定された板ばね部材であり、その先端部付近が分離給紙部の直上に支持されている。
【0003】
10はフィードローラ5の下流側の読取位置に配置されたプラテンローラ、11はプラテンローラ10に対向配置された読取ユニットであり、CCD(電荷結合素子)等からなるラインイメージセンサ(図示省略)を内蔵している。12及び13は、それぞれ読取位置の上流側及び下流側に配置された搬送ローラ対及び排紙ローラ対、14は排紙ローラ対13により機外に排紙された原稿が積載される排紙トレーである。
【0004】
また、15は記録紙が収納される給紙カセット、16は給紙カセット15に収納された記録紙から1枚の記録紙を分離して紙搬送路に送り出す給紙コロ、17は紙搬送路内の記録紙を搬送する搬送ローラ対、18は光書込みユニット、19はプロセスカートリッジであり、光書込みユニット18により感光体ドラム20に形成された静電潜像を電子写真プロセスに基づいてトナー像に現像する。21は転写位置において感光体ドラム20に当接した転写ローラであり、転写位置に搬送された記録紙には、転写ローラ21による静電的な力によって感光体ドラム20に形成されたトナー像が転写される。22は加熱ローラ23及び加圧ローラ24により構成された定着器であり、記録紙に転写されたトナー像を加熱定着する。25は定着器22の下流側に配置された排紙ローラ対、26は排紙ローラ対25により機外に排紙された記録紙が積載される排紙トレーである。27及び28はそれぞれ駆動モータであり、駆動モータ27は原稿に対する搬送系を駆動し、また、駆動モータ28は記録紙に対する搬送系及びプロセスカートリッジ19等の作像系を駆動する。
【0005】
図4及び図5は、それぞれ図3に示す複写機における従来の分離給紙装置の構成を示す側面断面図であり、図3乃至図5に基づいて従来の分離給紙装置における原稿Dに対する分離給紙動作について説明する。原稿装填部1に装填される原稿Dの束は、原稿装填部1の上面に沿って加圧レバー3と原稿装填部1との間に挿入される。この原稿Dの束は、図5に示すように、図示を省略したストッパあるいはストッパとしての機能を有するフィードローラ5に突き当たる装填位置に位置決めされることにより、原稿装填部1への装填が完了して原稿Dを1枚ずつ分離給紙することが可能となる。このとき、加圧レバー3は、原稿Dの束を原稿装填部1上に圧接し、原稿Dに対して一定の移動抵抗を付与する。
【0006】
原稿Dに対する分離給紙を開始する際には、1回の分離給紙動作でピックアップローラ4が所定量だけ正回転するように駆動モータ27からのトルクがクラッチ機構(図示省略)を介して伝達される。この際、ピックアップローラ4に同期してフィードローラ5も正回転し、これに連動してローラフレーム6が反時計方向に揺動してピックアップローラ4を原稿装填部1上の原稿Dの下面に圧接させる。正回転するピックアップローラ4が原稿Dの下面に圧接することにより、原稿装填部1において最下部の原稿Dには、ピックアップローラ4により搬送方向の力が直接作用するとともに、最下部の原稿Dの上に積載された原稿Dにも、原稿D間に生じている摩擦力により搬送方向の力が伝達される。ピックアップローラ4から伝達される搬送方向の力によって原稿装填部1に載置された原稿Dの束から最下部のものを含む1枚乃至複数枚の原稿Dが搬送方向に押し出され、フィードローラ5と摩擦分離パッド7との分離給紙部(圧接部)に挿入される。
【0007】
ここで、摩擦分離パッド7は、原稿Dが分離給紙部に挿入されていない状態では、自重によりフィードローラ5に圧接している。一方、1枚以上の原稿Dが分離給紙部に挿入された状態では、摩擦分離パッド7は、原稿Dにより押し上げられることにより、板ばね部材9に圧接して板ばね部材9を撓ませる。このことにより、摩擦分離パッド7は、自重に加えて板ばね部材9の撓み量に応じた弾性力によりフィードローラ5に圧接する。
【0008】
従って、ピックアップローラ4により1枚の原稿Dのみが分離給紙部に挿入され、板ばね部材9の撓み量が小さい場合には、摩擦分離パッド7が、原稿Dに対して相対的に小さな摩擦力を作用させることにより、この1枚の原稿Dは、摩擦分離パッド7との摩擦力に抗してフィードローラ5によって下流側に搬送される。また、ピックアップローラ4により複数枚の原稿Dが分離給紙部に挿入され、原稿Dの枚数に応じて板ばね部材9の撓み量が大きくなる場合には、摩擦分離パッド7が、原稿Dに対して相対的に大きな摩擦力を作用させることにより、フィードローラ5に接する最下部の1枚の原稿Dのみが、他の原稿Dとの摩擦力に抗してフィードローラ5によって下流側に搬送され、この最下部の原稿Dが分離給紙部から完全に脱するまで、残りの原稿Dが摩擦分離パッド7との摩擦力及び原稿D間の摩擦力により分離給紙部に保持される。
【0009】
上記の分離給紙動作によれば、ピックアップローラ4が所定量だけ正回転する間に、原稿装填部1に装填された原稿Dの束からは、最下部の1枚の原稿Dのみが分離給紙部から下流側に搬送され、この1枚の原稿Dは搬送ローラ対12により読取位置に搬送される。ここで、原稿装填部1上の原稿Dの有無は図示を省略したセンサにより検知されており、このセンサが原稿Dの無を検知するまで分離給紙動作が繰り返される。
【0010】
搬送ローラ対12及び読取位置の下流側に配置された排紙ローラ対13は、読取位置において原稿Dが一定の読取速度で移動するように原稿Dを搬送する。読取位置では、読取ユニット11が、主走査方向における読取ピッチに対応する周期で原稿Dをラインイメージセンサにより走査して走査線上での画像に対応するライン信号を出力する。読取位置を通過した原稿Dは、排紙ローラ対13により排紙トレー14上に排紙される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
1回の分離給紙動作でピックアップローラ4により押し出される原稿Dの枚数は、原稿D間の摩擦力の大きさ、原稿装填部1に装填されている原稿Dの枚数などの影響により変化する。この際、一定枚数以上の原稿Dがピックアップローラ4により押し出された場合には、板ばね部材9には、摩擦分離パッド7が原稿Dにより押し上げられて生じる加圧力に加え、図5に示すように摩擦分離パッド7を介して原稿Dから搬送方向の加圧力Fが作用する。このような場合、板ばね部材9は、原稿Dを搬送方向とは逆の方向(逆搬送方向)に押し戻すような反発力を発生させてピックアップローラ4により押し出されるすべての原稿Dが、一時に分離給紙部に挿入されることを防止する。
【0012】
板ばね部材9による加圧力Fに対する反発力は、板ばね部材9が発生する弾性的な復元力の一部、すなわち板ばね部材9の傾斜角度に応じた分力であることから、搬送方向に対する傾斜角度が小さいときには十分大きくすることが困難である。一定枚数以上の原稿Dがピックアップローラ4により押し出された場合に加圧力Fに対する反発力が不足すると、板ばね部材9の加圧力Fにより撓んで予め想定されている枚数以上の原稿Dが分離給紙部に挿入されてしまう。このような場合には、板ばね部材9からの摩擦分離パッド7への付勢力が過大になることにより、最下部の原稿Dをフィードローラ5の所定回転によって次の搬送ローラ対12に達するまで搬送できなくなったり、最下部の原稿Dとの摩擦力によって他の原稿Dも分離給紙部から下流側に移動してしまい、後の分離給紙が行えなくなったりすることがある。このような問題を防止するため、加圧力Fに対する反発力を大きくしようとする場合には、板ばね部材9の搬送方向に対する傾斜角度を大きくして分力の比率を増加させるか、板ばね部材9としてばね定数が大きいものを用いて弾性力の絶対値を大きくする必要がある。
【0013】
しかしながら、板ばね部材9の搬送方向に対する傾斜角度を大きくすると、板ばね部材9の可撓範囲が狭くなることから、分離給紙部に挿入される原稿Dの枚数変化に対応できる範囲が狭くなり、結果として分離給紙動作が不安定になる原因になる。また、板ばね部材9のばね定数を大きくすると、板ばね部材9により摩擦分離パッド7には常に大きな付勢力が作用するので、加圧位置での摩擦分離パッド7の偏摩耗により摩擦分離パッド7が短期間で使用できなくなったり、分離給紙部への挿入抵抗が大きくなり、こしの弱い原稿Dが座屈しやすくなるという問題が生じる。
【0014】
本発明の目的は、分離給紙部に挿入される原稿枚数の変動により分離給紙動作が不安定になることが防止されるとともに、摩擦分離パッドが摩耗等により早期に使用不能になることがない分離給紙装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1記載の分離給紙装置は、用紙装填部に装填された用紙の束から1枚乃至複数枚の用紙を搬送方向に送り出すピックアップローラと、このピックアップローラ下流側の分離位置に配置され、ピックアップローラによる紙送り動作に連動して搬送回転方向に回転するフィードローラと、柔軟性を有したシート状材料により形成され、前記フィードローラに圧接してフィードローラと共に分離給紙部を構成する摩擦分離パッドとを備え、前記ピックアップローラにより1枚の用紙が前記分離給紙部に挿入された場合には、この1枚の用紙を前記フィードローラにより下流側に搬送し、前記ピックアップローラにより複数枚の用紙が前記分離給紙部に挿入された場合には、前記フィードローラに接する1枚の用紙のみをフィードローラにより下流側に搬送するとともに、残りの用紙を、前記1枚の用紙が分離給紙部から脱するまで前記摩擦分離パッドの摩擦力により分離給紙部に保持する自動用紙搬送装置において、前記分離位置より上流側に固定端部を有するとともに、この固定端部からそれぞれ下流側に延在し、前記摩擦分離パッドを前記フィードローラに圧接させる第1の板ばね部材及び第2の板ばね部材を備え、前記第1の板ばね部材が、前記ピックアップローラに送り出された用紙の先端と摩擦分離パッドとの接触点より下流側の第1の加圧位置で前記摩擦分離パッドに圧接し、前記第2の板ばね部材が、前記第1の加圧位置より下流側で、かつ前記フィードローラ及び該フィードローラより下流側に配置された搬送ローラ対に張り渡された用紙のフィードローラからの離間点より上流側の第2の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接し、前記第2の板ばね部材の可撓範囲内に規制部材を配置し、前記第2の板ばね部材が前記摩擦分離パッドからの加圧力により一定量撓んだ場合に、前記第2の板ばね部材が、前記規制部材に当接して撓み変形が制限されることを特徴とする。
【0016】
そして、上記請求項1記載の分離給紙装置によれば、分離給紙部において第1の板ばね部材及び第2の板ばね部材により第1の加圧位置及び第2の加圧位置を構成し、ピックアップローラにより送り出された用紙に対してそれぞれの位置で一次分離及び二次分離を行うことにより、一次分離によって用紙が確実に一定枚数以下に減少し、二次分離によって1枚の用紙のみが下流側に搬送されることから、単一の板ばね部材により摩擦分離パッドを付勢する場合と比較して、板ばね部材の付勢力及び、この付勢力による摩擦分離パッドの加圧力を2位置に分散することが可能になるとともに、分離給紙部に挿入される用紙の増加の影響を緩和することが可能になる。さらに、第1の板ばね部材が、ピックアップローラに送り出された用紙の先端と摩擦分離パッドとの接触点より下流側の第1の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接し、第2の板ばね部材が、第1の加圧位置より下流側で、かつフィードローラ及び該フィードローラより下流側に配置された搬送ローラ対に張り渡された用紙のフィードローラからの離間点より上流側の第2の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接することにより、ピックアップローラにより送り出された用紙による加圧力が摩擦分離パッドに作用したときにも、この加圧力により第1の加圧位置での摩擦分離パッドに対する加圧力が変化することが抑制され、かつフィードローラ及び搬送ローラ対との間に張り渡された用紙による張力が摩擦分離パッドに作用したときにも、この張力により第2の加圧位置での加圧力が変化することが抑制される。
さらに、上記請求項1記載の分離給紙装置によれば、規定枚数以上の用紙が摩擦分離パッドとフィードローラとの間に挿入されても、規制部材によって摩擦分離パッドの上昇量が制限され、規定枚数以上の用紙が第2の加圧位置を通過することが規制される。
【0017】
また、請求項2記載の分離給紙装置は、前記第1の板ばね部材が前記摩擦分離パッドに作用させる付勢力を、前記第2の板ばね部材が前記摩擦分離パッドに作用させる付勢力より大きくしたことを特徴とする。
【0018】
そして、上記請求項2記載の分離給紙装置によれば、第2の加圧位置では、第1の加圧位置における強い加圧力による分離後であることから確実に用紙が一定枚数以下に減少する。
【0019】
また、請求項3記載の分離給紙装置は、前記第1の板ばね部材の可撓部分の先端側に前記フィードローラの方向に屈曲した屈曲部を設け、前記摩擦分離パッドに対して用紙により搬送方向の力が作用した場合に、前記屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることを特徴とする。
【0020】
そして、上記請求項3記載の分離給紙装置によれば、摩擦分離パッドの第1の加圧位置付近に対して用紙により搬送方向の力が作用した場合には、第1板ばね部材全体からの分力によらず、屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることにより、用紙からの搬送方向の押圧力により第1板ばね部材が摩擦分離パッドから離間する方向に過剰に撓むことを防止できる。
【0021】
また、請求項4記載の分離給紙装置は、前記第2の板ばね部材の可撓部分の先端側に前記フィードローラの方向に屈曲した屈曲部を設け、前記摩擦分離パッドに対して用紙により搬送方向の力が作用した場合に、前記屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることを特徴とする。
【0022】
そして、上記請求項4記載の分離給紙装置によれば、摩擦分離パッドの第2の加圧位置付近に対して用紙により搬送方向の力が作用した場合に、第2板ばね部材全体からの分力によらず、屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることにより、用紙からの搬送方向の押圧力により第2板ばね部材が摩擦分離パッドから離間する方向に過剰に撓むことを防止できる。
【0023】
また、請求項5記載の分離給紙装置は、前記第1の板ばね部材が、前記摩擦分離パッドからの加圧力により一定量以上撓んだ場合に、その固定端部付近を前記第2の板ばね部材に圧接させ、第1の板ばね部材による反発力に加えて第2の板ばね部材からの反発力を摩擦分離パッドに対して作用させることを特徴とする。
【0024】
そして、上記請求項5記載の分離給紙装置によれば、第1板ばね部材が摩擦分離パッドからの加圧力により一定量以上撓んだ場合には、第1板ばね部材の固定端部付近が第2板ばね部材の固定端部付近を圧接し、摩擦分離パッドには、第1の加圧位置において第1板ばね部材による加圧力に加えて、第1板ばね部材を介して第2板ばね部材からの加圧力が作用することにより、規定枚数以上の用紙が摩擦分離パッドとフィードローラとの間に挿入され、摩擦分離パッドの上昇量が通常より大きくなったときには、第1の加圧位置の手前で摩擦分離パッドが通常より大きな加圧力を用紙に作用させる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は本発明の実施の形態による分離給紙装置の要部を示す側面断面図であり、図3乃至図5に基づいて説明した部材に対応する部材については同一符号を付し、その説明を省略する。尚、図1及び図2に示す分離給紙装置は、図3に示す複写機に図4及び図5に示す従来の分離給紙装置に代えて適用し得るものである。31及び32は、それぞれの後端部がフィードローラ5に対して上流側の上方位置でフレーム部8に固定され、固定位置から搬送方向の下流側に延在した第1板ばね部材及び第2板ばね部材であり、板ばね部材31,32は、それぞれ異なる位置で摩擦分離パッド7に圧接することにより、摩擦分離パッド7をフィードローラ5の方向に付勢している。また、33はフレーム部8において第2板ばね部材32の上面に対向する位置に配置された規制部材であり、第2板ばね部材32が摩擦分離パッド7からの加圧力により上方に一定量撓んだ場合に、第2板ばね部材32が規制部材33に当接してそれ以上撓み変形することが制限される。
【0028】
板ばね部材31,32は、可撓部分の先端側に原稿Dの搬送方向に対してフィードローラ5の方向に屈曲した屈曲部31a,32aをそれぞれ備え、全体として略L字状に形成されており、これらの屈曲部31a,32aの下端部分により摩擦分離パッド7を加圧している。また、板ばね部材31,32により付勢された摩擦分離パッド7は、その先端部をフィードローラ5のローラ面に圧接させ、その圧接部においてフィードローラ5と共に分離給紙部を構成する。この分離給紙部での摩擦分離パッド7の圧力分布は、摩擦分離パッド7が柔軟性を有するシート状材料からなることから、板ばね部材31,32のそれぞれの加圧位置の直下付近の2つの領域で、平準化された他の領域と比較してそれぞれ大きなピーク値を示す。
【0029】
ここで、ピックアップローラ4に送り出された最下部の原稿Dの先端と摩擦分離パッド7との接触点をP(図2)とすると、第1板ばね部材31は、接触点Pより下流側の第1の加圧位置で屈曲部31aを摩擦分離パッド7に圧接させ、第2板ばね部材32は、前記第1の加圧位置より下流側で、かつフィードローラ5及び搬送ローラ対12との間に張力を付与された状態で張り渡された原稿Dのフィードローラ5からの離間点(図2に示す点P)より上流側の第2の加圧位置で屈曲部32aを摩擦分離パッド7に圧接させている。また、第1板ばね部材31と第2板ばね部材32としては、互いにばね定数又はその板厚等が異なるものを用いることにより、第1板ばね部材31が摩擦分離パッド7に作用させる付勢力を、第2板ばね部材32が摩擦分離パッド7に作用させる付勢力より大きくしている。
【0030】
次に、上記のように構成された分離給紙装置による分離給紙動作を説明する。原稿Dに対する分離給紙を開始する際には、1回の分離給紙動作でピックアップローラ4が所定量だけ正回転するように駆動モータ27からのトルクがクラッチ機構(図示省略)を介して伝達される。この際、ピックアップローラ4に同期してフィードローラ5も正回転を開始し、これに連動してローラフレーム6が反時計方向に揺動してピックアップローラ4を原稿装填部1上の原稿Dの下面に圧接させる。正回転するピックアップローラ4が原稿Dの下面に圧接することにより、原稿装填部1において最下部の原稿Dには、ピックアップローラ4により搬送方向の力が直接作用するとともに、最下部の原稿Dの上に積載された原稿Dにも、原稿D間に生じている摩擦力により搬送方向の力が伝達される。ピックアップローラ4から伝達される搬送方向の力によって原稿装填部1に載置された原稿Dの束から最下部のものを含む1枚乃至複数枚の原稿Dが搬送方向に押し出され、フィードローラ5と摩擦分離パッド7との分離給紙部(圧接部)に挿入される。
【0031】
ここで、摩擦分離パッド7は、第1及び第2の加圧位置でそれぞれ板ばね部材31,32により付勢されてフィードローラ5に圧接している。これらの板ばね部材31,32がそれぞれ摩擦分離パッド7に作用させる付勢力は、従来の単一の板ばね部材による付勢力より小さくなるように設定されている。このことにより、単一の板ばね部材を用いた場合と比較し、摩擦分離パッド7のフィードローラ5又は原稿Dに対する加圧力の最大値を低下させることができるので、摩擦分離パッド7の偏摩耗が抑制されて摩擦分離パッド7が短期間で使用不能になることが防止される。
【0032】
先ず、複数枚の原稿Dが分離給紙部に挿入される場合、分離給紙部の上流部分において摩擦分離パッド7が原稿Dにより押し上げられることにより、第1板ばね部材31に圧接して第1板ばね部材31を撓ませる。このことにより、摩擦分離パッド7は、第1の加圧位置において第1板ばね部材31の撓み量に応じた弾性力により原稿Dに圧接する。この際、フィードローラ5に接する最下部の原稿Dが、他の原稿Dとの摩擦力に抗してフィードローラ5によって第1の加圧位置から下流側に搬送され、残りの原稿Dが摩擦分離パッド7との摩擦力及び原稿D間の摩擦力により下方の原稿Dほど下流側に押し出されるようにスロープ状に整列されて分離給紙部に保持される。
【0033】
分離給紙部における第1の加圧位置で分離(以下、これを一次分離という)された原稿Dが1枚のみの場合には、この1枚の原稿Dは、摩擦分離パッド7の摩擦力に抗してフィードローラ5により下流側に搬送され、第2の加圧位置を通過して分離給紙部から搬送ローラ対12に到達する。また、分離給紙部における第1の加圧位置で一次分離された原稿Dが複数枚の場合には、これらの原稿Dが第2の加圧位置に挿入されることにより、第1の加圧位置での場合と同様な動作で分離(以下、これを二次分離という)され、フィードローラ5に接する最下部の原稿Dのみが第2の加圧位置から下流側に搬送され、残りの原稿Dが摩擦分離パッド7との摩擦力及び原稿D間の摩擦力によりスロープ状に整列されて分離給紙部に保持される。この二次分離では、第1の加圧位置における強い加圧力による一次分離後であることから、一次分離により確実に原稿Dが一定枚数以下に減少しているので、第2の加圧位置では分離のために強い加圧力を必要とせず、第2の加圧位置での原稿Dに対する分離給紙を不確実にすることなく、板ばね部材31,32による付勢力の総和を減少させることが可能になる。
【0034】
また、第1板ばね部材31が接触点Pより下流側の第1の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接していることにより、ピックアップローラ4により送り出された原稿Dによる加圧力が摩擦分離パッド7に作用したときにも、この加圧力により第1の加圧位置での摩擦分離パッド7に対する加圧力が変化することが抑制され、また第2板ばね部材32が離間点Pより上流側の第2の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接していることにより、フィードローラ5及び搬送ローラ対12との間に張り渡された原稿Dによる張力が摩擦分離パッド7に作用したときにも、この張力により第2の加圧位置での加圧力が変化することが抑制される。このことにより、一次分離及び二次分離が行われる際に、第1及び第2の加圧位置での摩擦分離パッド7の加圧力が変化することを防止し、摩擦分離パッド7の加圧力の変化によって原稿Dに対する分離給紙が不確実になることを防止できる。
【0035】
次に、上記したような分離給紙動作において、原稿Dの紙質等の要因により予め規定された許容枚数以上の原稿Dが分離給紙部に挿入されようとした場合、及び板ばね部材31,32に摩擦分離パッド7を介して原稿Dから搬送方向の加圧力が作用した場合について説明する。
【0036】
本実施形態の分離給紙装置では、第1板ばね部材31が摩擦分離パッド7からの加圧力により一定量以上撓んだ場合には、第1板ばね部材31の固定端部付近が第2板ばね部材32の固定端部付近を圧接し、摩擦分離パッド7には、第1の加圧位置において第1板ばね部材31による加圧力に加えて、第1板ばね部材31を介して第2板ばね部材32からの加圧力が作用する。また、第2板ばね部材32が摩擦分離パッド7からの加圧力により一定量撓んだ場合には、第2板ばね部材32がフレーム部8に設けられた規制部材33に当接して撓み変形が制限される。従って、規定枚数以上の原稿Dが摩擦分離パッド7とフィードローラ5との間に挿入され、摩擦分離パッド7の上昇量が通常より大きくなったときには、摩擦分離パッド7が通常より大きな加圧力を原稿Dに作用させることにより、規定枚数以上の原稿Dであっても第1の加圧位置の手前で原稿Dをスロープ状に整列させ、第1の加圧位置に挿入される原稿Dの枚数が増加することを防止できるので、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。さらに、規定枚数以上の原稿Dが第2の加圧位置に挿入されても、規制部材33によって摩擦分離パッド7の上昇量が制限され、規定枚数以上の原稿Dが第2の加圧位置を通過することが規制されることにより、規定枚数以上の原稿Dであっても第2の加圧位置の手前で原稿Dをスロープ状に整列させ、第2の加圧位置を通過する原稿Dの枚数を確実に1枚のみにすることができる。
【0037】
また、本実施形態の分離給紙装置では、第1板ばね部材31の可撓部分の先端側に、原稿Dの搬送方向に対してフィードローラ5の方向に屈曲した屈曲部31aを設け、摩擦分離パッド7の第1の加圧位置付近に対して原稿Dにより搬送方向の力が作用した場合には、第1板ばね部材31全体からの分力によらず、屈曲部31aが、摩擦分離パッド7を介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることにより、原稿Dからの搬送方向の押圧力により第1板ばね部材31が摩擦分離パッド7から離間する方向に過剰に撓むことを防止できるので、第1の加圧位置を通過する原稿Dの枚数が増加することを防止でき、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。さらに、第2板ばね部材32の可撓部分の先端側に、原稿Dの搬送方向に対してフィードローラ5の方向に屈曲した屈曲部32aを設け、摩擦分離パッド7の第1の加圧位置付近に対して原稿Dにより搬送方向の力が作用した場合に、第2板ばね部材32全体からの分力によらず、屈曲部32aが、摩擦分離パッド7を介して原稿Dに対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることにより、原稿Dからの搬送方向の押圧力により第2板ばね部材32が摩擦分離パッド7から離間する方向に過剰に撓むことを防止できるので、原稿Dからの搬送方向の押圧力を受けた場合でも、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載された分離給紙装置によれば、一次分離によって用紙が確実に一定枚数以下に減少し、二次分離によって1枚の用紙のみが下流側に搬送されることから、単一の板ばね部材により摩擦分離パッドを付勢する場合と比較して、板ばね部材の付勢力及び摩擦分離パッドの加圧力を2位置に分散することが可能になるとともに、分離給紙部に挿入される用紙の増加の影響を緩和することが可能になり、さらにピックアップローラにより送り出された用紙による加圧力が摩擦分離パッドに作用したときにも、この加圧力により第1の加圧位置での摩擦分離パッドに対する加圧力が変化することが抑制され、かつフィードローラ及び搬送ローラ対との間に張り渡された用紙による張力が摩擦分離パッドに作用したときにも、この張力により第2の加圧位置での加圧力が変化することが抑制される。以上の結果、分離給紙動作の信頼性を大幅に向上させることができ、摩擦分離パッドの偏摩耗等が防止されて摩擦分離パッドの寿命を延長することが可能になる。
また、請求項1記載の分離給紙装置によれば、規定枚数以上の用紙が第2の加圧位置に挿入されても、規制部材によって摩擦分離パッドの上昇量が制限され、規定枚数以上の用紙が第2の加圧位置に挿入されることが防止されるので、規定枚数以上の用紙であっても第2の加圧位置の手前で用紙をスロープ状に整列させ、第2の加圧位置を通過する用紙の枚数を確実に1枚のみにすることができる。
【0039】
また、請求項2記載の分離給紙装置によれば、第2の加圧位置では、第1の加圧位置における強い加圧力による分離後であることから確実に用紙が一定枚数以下に減少するので、第2の加圧位置では分離のために強い加圧力を必要とせず、第2の加圧位置での用紙に対する分離給紙を不確実にすることなく、第1の板ばね部材及び第2の板ばね部材による付勢力の総和を減少させことが可能になる。
【0040】
また、請求項3記載の分離給紙装置によれば、用紙からの搬送方向の押圧力により第1板ばね部材が摩擦分離パッドから離間する方向に過剰に撓むことを防止できるので、第1の加圧位置に挿入される用紙の枚数が増加することを防止でき、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。
【0041】
また、請求項4記載の分離給紙装置によれば、用紙からの搬送方向の押圧力により第2板ばね部材が摩擦分離パッドから離間する方向に過剰に撓むことを防止できるので、用紙からの搬送方向の押圧力を受けた場合でも、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。
【0042】
また、請求項5記載の分離給紙装置によれば、規定枚数以上の用紙が摩擦分離パッドとフィードローラとの間に挿入され、摩擦分離パッドの上昇量が通常より大きくなったときには、第1の加圧位置の手前で摩擦分離パッドが通常より大きな加圧力を用紙に作用させるので、規定枚数以上の用紙であっても第1の加圧位置の手前で用紙をスロープ状に整列させ、第1の加圧位置に挿入される用紙の枚数が増加することを防止でき、分離給紙動作の確実性が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による分離給紙装置の要部を示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による分離給紙装置の要部を示す側面断面図である。
【図3】従来の分離給紙装置が適用された複写機の構成を示す側面断面図である。
【図4】図3に示す複写機における従来の分離給紙装置の構成を示す側面断面図である。
【図5】図3に示す複写機における従来の分離給紙装置の構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1…原稿装填部、 3…加圧レバー、 4…ピックアップローラ、 5…フィードローラ、 6…ローラフレーム、 7…摩擦分離パッド、 8…フレーム部、12…搬送ローラ対、 31…第1板ばね部材、 31a,32a…屈曲部、 32…第2板ばね部材、 33…規制部材、 D…原稿。

Claims (5)

  1. 用紙装填部に装填された用紙の束から1枚乃至複数枚の用紙を搬送方向に送り出すピックアップローラと、このピックアップローラ下流側の分離位置に配置され、ピックアップローラによる紙送り動作に連動して搬送回転方向に回転するフィードローラと、柔軟性を有したシート状材料により形成され、前記フィードローラに圧接してフィードローラと共に分離給紙部を構成する摩擦分離パッドとを備え、
    前記ピックアップローラにより1枚の用紙が前記分離給紙部に挿入された場合には、前記1枚の用紙を前記フィードローラにより下流側に搬送し、
    前記ピックアップローラにより複数枚の用紙が前記分離給紙部に挿入された場合には、前記フィードローラに接する1枚の用紙のみをフィードローラにより下流側に搬送するとともに、残りの用紙を、前記1枚の用紙が分離給紙部から脱するまで前記摩擦分離パッドの摩擦力により分離給紙部に保持する自動用紙搬送装置において、
    前記分離位置より上流側に固定端部を有するとともに、この固定端部からそれぞれ下流側に延在し、前記摩擦分離パッドを前記フィードローラに圧接させる第1の板ばね部材及び第2の板ばね部材を備え、
    前記第1の板ばね部材が、前記ピックアップローラに送り出された用紙の先端と摩擦分離パッドとの接触点より下流側の第1の加圧位置で前記摩擦分離パッドに圧接し、
    前記第2の板ばね部材が、前記第1の加圧位置より下流側で、かつ前記フィードローラ及び該フィードローラより下流側に配置された搬送ローラ対に張り渡された用紙のフィードローラからの離間点より上流側の第2の加圧位置で摩擦分離パッドに圧接し、前記第2の板ばね部材の可撓範囲内に規制部材を配置し、前記第2の板ばね部材が前記摩擦分離パッドからの加圧力により一定量撓んだ場合に、前記第2の板ばね部材が、前記規制部材に当接して撓み変形が制限されることを特徴とする分離給紙装置。
  2. 前記第1の板ばね部材が前記摩擦分離パッドに作用させる付勢力を、前記第2の板ばね部材が前記摩擦分離パッドに作用させる付勢力より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の分離給紙装置。
  3. 前記第1の板ばね部材の可撓部分の先端側に前記フィードローラの方向に屈曲した屈曲部を設け、
    前記摩擦分離パッドに対して用紙により搬送方向の力が作用した場合に、前記屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることを特徴とする請求項1又は2記載の分離給紙装置。
  4. 前記第2の板ばね部材の可撓部分の先端側に前記フィードローラの方向に屈曲した屈曲部を設け、
    前記摩擦分離パッドに対して用紙により搬送方向の力が作用した場合に、前記屈曲部が、摩擦分離パッドを介して用紙に対して搬送方向とは逆方向の弾性力を作用させることを特徴とする請求項3記載の分離給紙装置。
  5. 前記第1の板ばね部材が、前記摩擦分離パッドからの加圧力により一定量以上撓んだ場合に、第1の板ばね部材の固定端部付近を前記第2の板ばね部材に圧接させ、第1の板ばね部材による反発力に加えて第2の板ばね部材からの反発力を摩擦分離パッドに対して作用させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の分離給紙装置。
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