JP3559787B2 - 農薬用展着剤組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は展着剤組成物に関し、更に詳しくは、農薬の効力を増強させる目的でもって散布液に配合して使用される展着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物の葉、茎及び昆虫などの表皮面は液体のぬれを反撥する成分又は構造をもっている。このため散布した農薬も十分効果をあげることができない。そこで散布した農薬に湿潤、浸透、拡展、固着などの諸性質を強めて薬効を増加せしめるために展着剤が使用される。
【0003】
従来この種展着剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジナフチルメタンスルホン酸アルカリ塩等の陰イオン性界面活性剤、その他の界面活性を有する物質が展着剤として利用されている。
【0004】
ところがこれ等展着剤を使用すると、湿潤、ぬれ性等の性質は向上するが、反面対象物に対する散布液の付着量や農薬成分の固着性が低下する傾向を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の展着剤の上記難点を解消しうる展着剤組成物を提供することである。
【0006】
【発明の作用】
本発明の基体とする技術は、HLB価の低い(6.7以下好ましくは1.8〜4.3)ソルビタンオレイン酸エステルと、エチレンオキシド付加モル数10以下の炭素数14〜19の第2級アルコール誘導体、及びHLB13以下好ましくは10以下であり粘度[(25℃)CS]が20000以下であるポリエーテル変性シリコーンという特定な3種の化合物を配合した組成物を、展着剤として使用することである。
【0007】
本発明の展着剤組成物を特徴づけるため、以下に構成成分の特性について説明する。
【0008】
成分1:ソルビタンオレイン酸エステル
本発明において使用されるソルビタンオレイン酸エステルとしては、HLB価が好ましくは6.7以下、特に好ましくは1.8〜4.3のものが使用される。これ等エステルとしては、モノ、セスキ、ジ、トリ−エステルの形態で使用される。
【0009】
更に詳しくはソルビタンモノ・オレエート(HLB4.3)、ソルビタンセスキ・オレエート(HLB3.7)、ソルビタントリ・オレエート(HLB1.8)等が特に好ましく使用される。
【0010】
成分2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜14の第2級アルコール)エーテルが好ましく使用され、一般式で示せば下記の通りである。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、m+n=9〜11,x=3〜9)
更に具体的には、表1に例示するノニオン性界面活性剤が使用される。
【0013】
【表1】
(但し、EOはエチレンオキシドを意味する。)
【0014】
成分3:ポリエーテル変性シリコーン
本発明においては側鎖変性型ポリエステル変性シリコーン及び直鎖繰り返し型ポリエステル変性シリコーンの2種類が使用される。この際、側鎖変性型ポリエーテル変性シリコーン(以下側鎖型変性シリコーンと略記する)は、これ単独で使用できるが、直鎖繰り返し型ポリエーテル変性シリコーン(以下直鎖型変性シリコーンと略記する)は、上記側鎖型変性シリコーンと必ず併用され、その使用割合は、側鎖型変性シリコーンに対し30重量%以下、好ましくは28重量%以下である。
【0015】
この直鎖型変性シリコーンは分子量が大きく、粘性も高く、水に不溶であるが、側鎖型変性シリコーンと上記配合割合で併用すれば、水に溶解又は自己乳化性となる。この直鎖型変性シリコーンは側鎖型変性シリコーンに比べて農薬散布液の表面張力を下げる効果は劣るが、表面粘性効果と水を包含する効果への寄与が大きく働くので、本発明の展着剤組成物の一成分として配合することにより、作物上への薬液付着量の増加や薬剤固着性の向上に効果を発揮する。
側鎖変性シリコーンとしては下記一般式で表される化合物が使用される。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、m+n=10〜100,a+b=5〜60)
好ましい具体例として表2で示された各種のシリコーン系界面活性剤が例示できる。
【0018】
【表2】
【0019】
但し表中:
NUCシリコーンL−品番:日本ユニカ(株)製
信越シリコーンKF−品番:信越化学工業(株)製
東芝シリコーンTSF−品番:東芝シリコーン(株)製
【0020】
また直鎖型変性シリコーンとしては下記一般式で示される化合物が好ましく使用される。
【0021】
【化3】
【0022】
(但し、m+n=300〜1200、a+bは上記に同じ)
好ましい具体例は日本ユニカ(株)製、商品名NUCシリコーンL−2222[粘度(25℃)20000CS・HLB6]が例示できる。
【0023】
本発明展着剤組成物に於いては、成分1、成分2及び成分3の配合割合は、成分1(ソルビタンオレイン酸エステル)100重量部に対し、成分2(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5.0〜66重量部好ましくは5.6〜65.3重量部、成分3(ポリエーテル変性シリコーン)1.0〜6.0重量部好ましくは1.3〜5.6重量部である。
【0024】
この際、成分2が5.0重量部未満では展着剤組成物が水溶性または、非分散性となり、また66重量部より多くなると併用した農薬の作物表面への固着性が弱くなる。成分3が1.0重量部未満では水にぬれにくい作物上への散布液の湿展性が劣るようになり、6.0重量部を越えると散布液の表面張力低下能は大きくなるが、農薬の付着性が悪くなり、一旦付着した農薬も耐雨性が劣化する。
【0025】
本発明の展着剤組成物を調製する手段自体は何等特定されず、要は上記成分1〜3が所定の割合で混合されて組成物となる手段であれば良い。
【0026】
本発明展着剤組成物の使用方法は従来のこの種展着剤の使用方法と何等変わりはなく、農薬と併用して使用される。例えば水に希釈して適宜の手段、例えばスプレー等の手段で散布すれば良い。この際の希釈倍率としても対象作物、農薬の種類等に合わせて適宜に決定される。最も代表的な使用方法は、本発明の展着剤組成物を所定の希釈倍数となるように水でうすめ、この中へ殺菌剤や殺虫剤などの使用農薬の所定量を混合し、よく撹拌して散布液を調製する方法である。
【0027】
【実験例】
本発明の内容をより理解できるように実験を通して説明する。以下で行う各実験において表中の「ぬれ性」と「付着性」の性能評価は次の方法によった。
【0028】
<ぬれ性試験>
試験方法は所定の展着剤を含む農薬(注1)を疎水性の表面を有するポリエチレン製フィルム(注2)の表面にスプレーしたときの状態を目視により測定した。その評価は下記の基準によった。
○:スプレーしたとき、フィルム表面が液によくぬれ、乾燥中にも表面に付着している水分がはじかれることなく凝集(収縮)しない状態。
△:スプレー中は良くぬれる様に見えるが、スプレー後の乾燥中に付着液が部分的にはじかれ、液の収縮減少が見られる状態。
×:スプレー中に液がはじかれ、ぬれが悪い状態。
注1:殺ダニ剤(日産化学工業(株)製、商品名サンマイト水和剤)、以下「農薬」とあるのは断りのない限りサンマイト水和剤を意味する。
注2:低エネルギー表面(31〜31.2エルグ/cm2)をもつ高密度ポリエチレン製フィルム(厚み1mm、大きさ10cm×15cm)。表面はアセトンで拭き清浄にしておく。
【0029】
<付着性試験>
▲1▼表3(薬剤付着量判定標準試料)に従って農薬を計量する。この計量された農薬を上記ポリエチレンフィルム上に「湿展剤」(注3)0.4mlを用いて均一に拡展させ、乾燥する。
フィルム上の農薬付着量(白色の着色度合)に応じ表3に示すA〜Fまで6 段階にランクを付けて、付着量の比較測定用標準試料とする。
(注3)湿展剤:(株)日本触媒製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤(商品名ソフタノール30)を用いて表面張力が29〜29.5ダイン/cm(20℃)となるように調製された水溶液。
【0030】
▲2▼所定の希釈倍率で調製された展着剤(各表中の夫々の組成物)水溶液を湿展剤(0.4ml)として0.016gの農薬をフィルム上に均一に拡展し、乾燥する。このようにして各展着剤を用い0.016gの農薬をフィルム上に拡展付着させた一連の試料を作る。
【0031】
▲3▼上記▲2▼で製作した各試料を12〜15時間室温で放置後、薬剤の付着面を上側にして45°の角度で固定し、100cmの高さから一定の条件下で水(20〜22℃)を10分間噴霧する。乾燥後フィルム上に付着残存している農薬量を上記▲1▼で作成した標準試料と対比して評価する。
【0032】
【表3】
薬剤付着量判定標準試料
【0033】
[実験1]
本発明の展着剤の一成分として使用するソルビタンオレイン酸エステル(ソルビタンモノ−オレエート)の最適配合率を調べた。結果を表4に示す。
表4から組成物中のソルビタンモノ・オレエートの含有量は60〜80重量%(溶剤を除いた計算)が最も良いものであった。
【0034】
【表4】
【0035】
表中 注1):水に希釈したとき油性浮遊物が生ずる
注2):水に不溶
注3):水に不溶
【0036】
[実験2]
ポリエーテル変性シリコーン(本実験では信越シリコーンKF−905を使用)の最適配合割合を調べた。結果は表5に示した。
【0037】
ポリエーテル変性シリコーンの含有率については、0.8〜3.0重量%好ましくは1〜2.5重量%(溶剤を除いた計算)が良好な結果を示した。ポリエーテル変性シリコーンの含有量が多い程ぬれ性は良くなるが付着性は悪くなる。
【0038】
【表5】
【0039】
[実験3]
ポリオキシエチレン誘導体の品種の違いによる展着効果を調べた。結果を表6に示した。
【0040】
エチレンオキシド付加モル数9以下、HLB12以下のポリオキシエチレン誘導体のノニオン性界面活性剤が良結果であった。
【0041】
【表6】
【0042】
表中 注1):希釈液は分離する。
【0043】
[実験4]
ポリエーテル変性シリコーン品種の違いによる展着効果を調べた。結果を表7に示した。
【0044】
【表7】
【0045】
表中 注1):組成物は水に不溶か、分散しても経時的に油状物が分離する。
【0046】
表7よりポリエーテル変性シリコーンにおいてはHLBが約7〜13、粘度(25℃,CS)が300〜700程度のものが本発明の展着剤成分として適合する。なお、後記実施例就中表10にも示す通り、低粘度のシリコーンと高分子量のシリコーンとを組み合わせることにより、本発明に有効に使用することができる。
【0047】
[実験5]
ソルビタン脂肪酸エステル型界面活性剤の品種の違いによる展着効果を調べた。別に比較のためグリセロール脂肪酸エステル型界面活性剤についての効果も併記した。
【0048】
ソルビタンモノ・オレエート、ソルビタンセスキ・オレエート、ソルビタントリ・オレエート、ソルビタンモノ・パルミテート、ソルビタンモノ・ステアレート等が本発明のソルビタン脂肪酸エステル型界面活性剤として有効に使用できる。
【0049】
【表8】
【0050】
[実験6]
本発明の展着剤と市販展着剤との「ぬれ性」、「付着性」の比較試験を行った。結果を表9に示した。
【0051】
【表9】
【0052】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明を具体的に説明する。
【0053】
【実施例1】
農薬散布液に各種の展着剤を加用した場合のカンキツ類葉面上への薬剤付着量に関する例。
【0054】
カンキツ類のように水にぬれ易い作物に農薬を散布する場合、表面張力を低下させる展着剤を加用すると薬液付着量が減少し、その分薬効も減弱する傾向を示す。
【0055】
通常水にぬれ易い植物に対しては、表面張力の低い薬液を散布すると、その表面は良くぬれるが、液の付着量そのものは低下する。これとは反対に薬液にぬれ難い表皮面をもつ寄生昆虫やダニ類に対しては、表面張力の低い薬液の方が付着性や浸透性を向上させることができる。
【0056】
このように農薬散布においては上記したように二律背反の関係が生ずる。従って表面張力低下能もあり、且つ作物への薬剤付着量の低下作用も小さい展着剤が望ましい。
【0057】
表10に従い調製された薬液を、カンキツ類である温州ミカン(15年生)に散布し、葉面積500cm2当たりの付着液量を調べた。表10から判るように、農薬単用散布に比べ、展着剤加用散布は表面張力低下による付着液量の減少が見られる。しかし乍ら本発明の展着剤加用散布は従来の展着剤に比べ薬剤付着量の低下率が小さい。
【0058】
【表10】
【0059】
但し、表中
注1):所定の希釈倍率
注2):表11参照、但し表11は本発明の展着剤組成物の配合組成(重量 部)を示す。
注3):表12参照、但し表12は市販展着剤の成分を示す。
注4):島津製作所製DUNOUY表面張力計使用
注5):付着液量
▲1▼農薬散布液(希釈倍数2000倍)に各種展着剤を所定の使用濃度(希釈倍数)となるように添加して調製された混合液を、小型噴霧器で飽和散布量に達するまで散布する。
▲2▼散布後葉上の液が滴り落ちなくなった時点で、葉(10〜12枚)重量既知のポリ袋に注意して採集する。
▲3▼葉の入ったポリ袋の重さを量り、次に袋より葉を取り出し葉面上の液を吸収紙で除去した後、葉の重さを量り、付着液量を計算する。葉の面積を測り(林電工製 面積計AMM−8型使用)、葉面(表+裏)100cm2当た りに換算した付着液量を求める。
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
【発明が属する技術分野】
本発明は展着剤組成物に関し、更に詳しくは、農薬の効力を増強させる目的でもって散布液に配合して使用される展着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物の葉、茎及び昆虫などの表皮面は液体のぬれを反撥する成分又は構造をもっている。このため散布した農薬も十分効果をあげることができない。そこで散布した農薬に湿潤、浸透、拡展、固着などの諸性質を強めて薬効を増加せしめるために展着剤が使用される。
【0003】
従来この種展着剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、ジナフチルメタンスルホン酸アルカリ塩等の陰イオン性界面活性剤、その他の界面活性を有する物質が展着剤として利用されている。
【0004】
ところがこれ等展着剤を使用すると、湿潤、ぬれ性等の性質は向上するが、反面対象物に対する散布液の付着量や農薬成分の固着性が低下する傾向を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の展着剤の上記難点を解消しうる展着剤組成物を提供することである。
【0006】
【発明の作用】
本発明の基体とする技術は、HLB価の低い(6.7以下好ましくは1.8〜4.3)ソルビタンオレイン酸エステルと、エチレンオキシド付加モル数10以下の炭素数14〜19の第2級アルコール誘導体、及びHLB13以下好ましくは10以下であり粘度[(25℃)CS]が20000以下であるポリエーテル変性シリコーンという特定な3種の化合物を配合した組成物を、展着剤として使用することである。
【0007】
本発明の展着剤組成物を特徴づけるため、以下に構成成分の特性について説明する。
【0008】
成分1:ソルビタンオレイン酸エステル
本発明において使用されるソルビタンオレイン酸エステルとしては、HLB価が好ましくは6.7以下、特に好ましくは1.8〜4.3のものが使用される。これ等エステルとしては、モノ、セスキ、ジ、トリ−エステルの形態で使用される。
【0009】
更に詳しくはソルビタンモノ・オレエート(HLB4.3)、ソルビタンセスキ・オレエート(HLB3.7)、ソルビタントリ・オレエート(HLB1.8)等が特に好ましく使用される。
【0010】
成分2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜14の第2級アルコール)エーテルが好ましく使用され、一般式で示せば下記の通りである。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、m+n=9〜11,x=3〜9)
更に具体的には、表1に例示するノニオン性界面活性剤が使用される。
【0013】
【表1】
(但し、EOはエチレンオキシドを意味する。)
【0014】
成分3:ポリエーテル変性シリコーン
本発明においては側鎖変性型ポリエステル変性シリコーン及び直鎖繰り返し型ポリエステル変性シリコーンの2種類が使用される。この際、側鎖変性型ポリエーテル変性シリコーン(以下側鎖型変性シリコーンと略記する)は、これ単独で使用できるが、直鎖繰り返し型ポリエーテル変性シリコーン(以下直鎖型変性シリコーンと略記する)は、上記側鎖型変性シリコーンと必ず併用され、その使用割合は、側鎖型変性シリコーンに対し30重量%以下、好ましくは28重量%以下である。
【0015】
この直鎖型変性シリコーンは分子量が大きく、粘性も高く、水に不溶であるが、側鎖型変性シリコーンと上記配合割合で併用すれば、水に溶解又は自己乳化性となる。この直鎖型変性シリコーンは側鎖型変性シリコーンに比べて農薬散布液の表面張力を下げる効果は劣るが、表面粘性効果と水を包含する効果への寄与が大きく働くので、本発明の展着剤組成物の一成分として配合することにより、作物上への薬液付着量の増加や薬剤固着性の向上に効果を発揮する。
側鎖変性シリコーンとしては下記一般式で表される化合物が使用される。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、m+n=10〜100,a+b=5〜60)
好ましい具体例として表2で示された各種のシリコーン系界面活性剤が例示できる。
【0018】
【表2】
【0019】
但し表中:
NUCシリコーンL−品番:日本ユニカ(株)製
信越シリコーンKF−品番:信越化学工業(株)製
東芝シリコーンTSF−品番:東芝シリコーン(株)製
【0020】
また直鎖型変性シリコーンとしては下記一般式で示される化合物が好ましく使用される。
【0021】
【化3】
【0022】
(但し、m+n=300〜1200、a+bは上記に同じ)
好ましい具体例は日本ユニカ(株)製、商品名NUCシリコーンL−2222[粘度(25℃)20000CS・HLB6]が例示できる。
【0023】
本発明展着剤組成物に於いては、成分1、成分2及び成分3の配合割合は、成分1(ソルビタンオレイン酸エステル)100重量部に対し、成分2(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5.0〜66重量部好ましくは5.6〜65.3重量部、成分3(ポリエーテル変性シリコーン)1.0〜6.0重量部好ましくは1.3〜5.6重量部である。
【0024】
この際、成分2が5.0重量部未満では展着剤組成物が水溶性または、非分散性となり、また66重量部より多くなると併用した農薬の作物表面への固着性が弱くなる。成分3が1.0重量部未満では水にぬれにくい作物上への散布液の湿展性が劣るようになり、6.0重量部を越えると散布液の表面張力低下能は大きくなるが、農薬の付着性が悪くなり、一旦付着した農薬も耐雨性が劣化する。
【0025】
本発明の展着剤組成物を調製する手段自体は何等特定されず、要は上記成分1〜3が所定の割合で混合されて組成物となる手段であれば良い。
【0026】
本発明展着剤組成物の使用方法は従来のこの種展着剤の使用方法と何等変わりはなく、農薬と併用して使用される。例えば水に希釈して適宜の手段、例えばスプレー等の手段で散布すれば良い。この際の希釈倍率としても対象作物、農薬の種類等に合わせて適宜に決定される。最も代表的な使用方法は、本発明の展着剤組成物を所定の希釈倍数となるように水でうすめ、この中へ殺菌剤や殺虫剤などの使用農薬の所定量を混合し、よく撹拌して散布液を調製する方法である。
【0027】
【実験例】
本発明の内容をより理解できるように実験を通して説明する。以下で行う各実験において表中の「ぬれ性」と「付着性」の性能評価は次の方法によった。
【0028】
<ぬれ性試験>
試験方法は所定の展着剤を含む農薬(注1)を疎水性の表面を有するポリエチレン製フィルム(注2)の表面にスプレーしたときの状態を目視により測定した。その評価は下記の基準によった。
○:スプレーしたとき、フィルム表面が液によくぬれ、乾燥中にも表面に付着している水分がはじかれることなく凝集(収縮)しない状態。
△:スプレー中は良くぬれる様に見えるが、スプレー後の乾燥中に付着液が部分的にはじかれ、液の収縮減少が見られる状態。
×:スプレー中に液がはじかれ、ぬれが悪い状態。
注1:殺ダニ剤(日産化学工業(株)製、商品名サンマイト水和剤)、以下「農薬」とあるのは断りのない限りサンマイト水和剤を意味する。
注2:低エネルギー表面(31〜31.2エルグ/cm2)をもつ高密度ポリエチレン製フィルム(厚み1mm、大きさ10cm×15cm)。表面はアセトンで拭き清浄にしておく。
【0029】
<付着性試験>
▲1▼表3(薬剤付着量判定標準試料)に従って農薬を計量する。この計量された農薬を上記ポリエチレンフィルム上に「湿展剤」(注3)0.4mlを用いて均一に拡展させ、乾燥する。
フィルム上の農薬付着量(白色の着色度合)に応じ表3に示すA〜Fまで6 段階にランクを付けて、付着量の比較測定用標準試料とする。
(注3)湿展剤:(株)日本触媒製のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤(商品名ソフタノール30)を用いて表面張力が29〜29.5ダイン/cm(20℃)となるように調製された水溶液。
【0030】
▲2▼所定の希釈倍率で調製された展着剤(各表中の夫々の組成物)水溶液を湿展剤(0.4ml)として0.016gの農薬をフィルム上に均一に拡展し、乾燥する。このようにして各展着剤を用い0.016gの農薬をフィルム上に拡展付着させた一連の試料を作る。
【0031】
▲3▼上記▲2▼で製作した各試料を12〜15時間室温で放置後、薬剤の付着面を上側にして45°の角度で固定し、100cmの高さから一定の条件下で水(20〜22℃)を10分間噴霧する。乾燥後フィルム上に付着残存している農薬量を上記▲1▼で作成した標準試料と対比して評価する。
【0032】
【表3】
薬剤付着量判定標準試料
【0033】
[実験1]
本発明の展着剤の一成分として使用するソルビタンオレイン酸エステル(ソルビタンモノ−オレエート)の最適配合率を調べた。結果を表4に示す。
表4から組成物中のソルビタンモノ・オレエートの含有量は60〜80重量%(溶剤を除いた計算)が最も良いものであった。
【0034】
【表4】
【0035】
表中 注1):水に希釈したとき油性浮遊物が生ずる
注2):水に不溶
注3):水に不溶
【0036】
[実験2]
ポリエーテル変性シリコーン(本実験では信越シリコーンKF−905を使用)の最適配合割合を調べた。結果は表5に示した。
【0037】
ポリエーテル変性シリコーンの含有率については、0.8〜3.0重量%好ましくは1〜2.5重量%(溶剤を除いた計算)が良好な結果を示した。ポリエーテル変性シリコーンの含有量が多い程ぬれ性は良くなるが付着性は悪くなる。
【0038】
【表5】
【0039】
[実験3]
ポリオキシエチレン誘導体の品種の違いによる展着効果を調べた。結果を表6に示した。
【0040】
エチレンオキシド付加モル数9以下、HLB12以下のポリオキシエチレン誘導体のノニオン性界面活性剤が良結果であった。
【0041】
【表6】
【0042】
表中 注1):希釈液は分離する。
【0043】
[実験4]
ポリエーテル変性シリコーン品種の違いによる展着効果を調べた。結果を表7に示した。
【0044】
【表7】
【0045】
表中 注1):組成物は水に不溶か、分散しても経時的に油状物が分離する。
【0046】
表7よりポリエーテル変性シリコーンにおいてはHLBが約7〜13、粘度(25℃,CS)が300〜700程度のものが本発明の展着剤成分として適合する。なお、後記実施例就中表10にも示す通り、低粘度のシリコーンと高分子量のシリコーンとを組み合わせることにより、本発明に有効に使用することができる。
【0047】
[実験5]
ソルビタン脂肪酸エステル型界面活性剤の品種の違いによる展着効果を調べた。別に比較のためグリセロール脂肪酸エステル型界面活性剤についての効果も併記した。
【0048】
ソルビタンモノ・オレエート、ソルビタンセスキ・オレエート、ソルビタントリ・オレエート、ソルビタンモノ・パルミテート、ソルビタンモノ・ステアレート等が本発明のソルビタン脂肪酸エステル型界面活性剤として有効に使用できる。
【0049】
【表8】
【0050】
[実験6]
本発明の展着剤と市販展着剤との「ぬれ性」、「付着性」の比較試験を行った。結果を表9に示した。
【0051】
【表9】
【0052】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明を具体的に説明する。
【0053】
【実施例1】
農薬散布液に各種の展着剤を加用した場合のカンキツ類葉面上への薬剤付着量に関する例。
【0054】
カンキツ類のように水にぬれ易い作物に農薬を散布する場合、表面張力を低下させる展着剤を加用すると薬液付着量が減少し、その分薬効も減弱する傾向を示す。
【0055】
通常水にぬれ易い植物に対しては、表面張力の低い薬液を散布すると、その表面は良くぬれるが、液の付着量そのものは低下する。これとは反対に薬液にぬれ難い表皮面をもつ寄生昆虫やダニ類に対しては、表面張力の低い薬液の方が付着性や浸透性を向上させることができる。
【0056】
このように農薬散布においては上記したように二律背反の関係が生ずる。従って表面張力低下能もあり、且つ作物への薬剤付着量の低下作用も小さい展着剤が望ましい。
【0057】
表10に従い調製された薬液を、カンキツ類である温州ミカン(15年生)に散布し、葉面積500cm2当たりの付着液量を調べた。表10から判るように、農薬単用散布に比べ、展着剤加用散布は表面張力低下による付着液量の減少が見られる。しかし乍ら本発明の展着剤加用散布は従来の展着剤に比べ薬剤付着量の低下率が小さい。
【0058】
【表10】
【0059】
但し、表中
注1):所定の希釈倍率
注2):表11参照、但し表11は本発明の展着剤組成物の配合組成(重量 部)を示す。
注3):表12参照、但し表12は市販展着剤の成分を示す。
注4):島津製作所製DUNOUY表面張力計使用
注5):付着液量
▲1▼農薬散布液(希釈倍数2000倍)に各種展着剤を所定の使用濃度(希釈倍数)となるように添加して調製された混合液を、小型噴霧器で飽和散布量に達するまで散布する。
▲2▼散布後葉上の液が滴り落ちなくなった時点で、葉(10〜12枚)重量既知のポリ袋に注意して採集する。
▲3▼葉の入ったポリ袋の重さを量り、次に袋より葉を取り出し葉面上の液を吸収紙で除去した後、葉の重さを量り、付着液量を計算する。葉の面積を測り(林電工製 面積計AMM−8型使用)、葉面(表+裏)100cm2当た りに換算した付着液量を求める。
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
Claims (5)
- ソルビタンオレイン酸エステル100重量部に対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル5.0〜66.0重量部、ポリエーテル変性シリコーン1.0〜6.0重量部を含有して成ることを特徴とする展着剤組成物。
- ソルビタンオレイン酸エステル100重量部に対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが5.6〜65.3重量部、ポリエーテル変性シリコーンが1.2〜5.6重量部である請求項1に記載の展着剤組成物。
- ソルビタンオレイン酸エステルにおいて、該エステルがオレイン酸のモノー、セスキー、ジ−或いはトリエステルである請求項1に記載の展着剤組成物。
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