JP3559184B2 - 偏光板 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、隣接光学シートの傷付きを防止しつつスティッキングを防止できて液晶表示装置の形成などに好適な偏光板に関する。
【0002】
【背景技術】
バックライトの上に例えば拡散シートや集光シートや偏光分離シート等からなる光学シートを介して偏光板と液晶セルを順次配置した液晶表示装置が提案されている。かかる配置構造は、バックライトによる出射光を拡散シートで拡散させたのち集光シートでその光路を制御して偏光分離シートに導入し、前記出射光を偏光に変換して偏光板に導入することにより光の利用効率を向上させて液晶表示装置の輝度を向上させるようにしたものである。しかし、偏光板と隣接の光学シートが密着してスティッキング現象を起し、表示品位が低下する難点があった。
【0003】
前記に鑑みて本発明者らは、偏光板と隣接の光学シートとのスティッキングを防止するため、従来、防眩等を目的に表示装置の視認側に配置されるアンチグレア偏光板として公知の、表面に凹凸構造を有するものを液晶セルの光源側に配置することを試みた。
【0004】
しかしながら、それによりスティッキングは防止されたものの、偏光板のアンチグレア表面の凹凸構造にて隣接の光学シートが傷付き等で損傷される問題点のあることが判明した。特に、前記した偏光分離シートが偏光板に隣接した場合、かかる偏光分離シートは屈折率異方性の多層膜を有する直線偏光分離シートやコレステリック液晶層を有する円偏光分離シート等の如く平滑表面からなってスティッキングを生じやすい反面、軟質膜であるために傷付きやすく、その傷が散乱点等となって光学機能を阻害し表示品位が著しく低下する。
【0005】
【発明の技術的課題】
本発明は、偏光分離シートと隣接配置してもその傷付きを防止でき、かつスティッキングも有効に防止できる偏光板の開発を課題とする。
【0006】
【課題の解決手段】
本発明は、片表面又は両表面に、中心線平均粗さが0.01〜0.1μmであると共に、任意な長さ1mmの直線上に高さ0.5〜1.0μmの凸部が10個以上、かつ高さ1.0μm超の凸部が2個以下であり、表面硬度が鉛筆硬度にてH〜4Hの微細凹凸構造を有することを特徴とする偏光板を提供するものである。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、上記した微細で、適度な表面硬度を有する微細凹凸構造に基づいて、隣接の光学シートとのスティッキングを有効に防止できると共に、その隣接光学シートが偏光分離シート等の軟質膜からなる場合にもその傷付きを防止して、輝度や表示品位等に優れる液晶表示装置を形成できる偏光板を得ることができる。
【0008】
【発明の実施形態】
本発明による偏光板は、片表面又は両表面に、中心線平均粗さが0.01〜0.1μmであると共に、任意な長さ1mmの直線上に高さ0.5〜1.0μmの凸部が10個以上、かつ高さ1.0μm超の凸部が2個以下であり、表面硬度が鉛筆硬度にてH〜4Hの微細凹凸構造を有するものからなる。その例を図1、図2に示した。1が偏光板で、11,15,16が微細凹凸構造面である。
【0009】
表面に微細凹凸構造を付与する対象の偏光板には適宜なものを用いることができ、その種類については特に限定はない。ちなみにその例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等の偏光フィルムなどがあげられる。偏光フィルムの厚さは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0010】
また図例の如く前記した偏光フィルム13の片面又は両面に耐水性等の保護目的で、ポリマーの塗布層やフィルムのラミネート層等からなる透明保護層12,14を設けたものなどもあげられる。透明保護層の形成には、透明ポリマーなどの適宜なものを用いうるが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性などに優れるものが好ましく用いうる。また透明保護層は、位相差等の光学的異方性が少ないほど好ましい場合が多い。透明保護層の厚さは、10〜300μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0011】
ちなみに前記の透明保護層を形成するポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースの如きセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーやポリメチルメタクリレート(PMMA)の如きアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)の如きスチレン系ポリマーなどがあげられる。
【0012】
また、ポリエチレンやポリプロピレン、シクロ系ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィンやエチレン・プロピレン共重合体の如きオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドの如きアミド系ポリマー、イミド系ポリマーやスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマーやポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマーやポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護層を形成するポリマーの例としてあげられる。
【0013】
本発明による偏光板は、図例の如くその片表面又は両表面に微細凹凸構造11,15,16を有し、その微細凹凸構造が中心線平均粗さ0.01〜0.1μmであると共に、任意な長さ1mmの直線上に高さ0.5〜1.0μmの凸部を10個以上有し、かつ高さ1.0μm超の凸部が2個以下であり、鉛筆硬度に基づく表面硬度がH〜4Hのものからなる。
【0014】
前記の微細凹凸構造における中心線平均粗さが0.01μm未満ではスティッキングを防止できず、0.1μmを超えると傷付きが発生する。また微細凹凸構造の表面に任意な長さ1mmの直線を設けた場合に、その線上に位置する高さ0.5〜1.0μmの凸部が10個未満ではスティッキングを防止できず、高さ1.0μm超の凸部が2個を超えると傷付きを発生する。
【0015】
さらに、表面硬度が鉛筆硬度にてH未満では微細凹凸構造側に傷付きが生じやすくなって作業時等の取扱性が低下し、4Hを超えると隣接光学シートに傷付きが生じる。なお図3に例示の如く、前記の高さhは、微細凹凸構造の表面19における凸部18の頂点と、それに隣接の凸部との間の最底部との間の距離に基づく。
【0016】
傷付き防止とスティッキング防止のバランスの点より好ましい微細凹凸構造は、中心線平均粗さが0.02μm以上、就中0.03μm以上、特に0.04〜0.09μm、任意な長さ1mmの直線上における高さ0.5〜1.0μmの凸部の個数が50個以上、就中100個以上、特に150個以上で、高さ1.0μm超の凸部の個数が1個以下、就中0個であり、鉛筆硬度に基づく表面硬度が2H〜3Hのものである。
【0017】
偏光板の表面における微細凹凸構造は、上記した特性を有するものであればよく、適宜な方式で形成されたものであってよい。ちなみにその例としては、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理して表面に微細凹凸構造を付与したもの、金型による転写方式等にて表面に微細凹凸構造を付与したもの、微粒子を分散含有する樹脂層などがあげられる。
【0018】
従って微細凹凸構造は、例えば図1や図2に例示したもの11,16の如く、上記した偏光板における透明保護層の表面に微細凹凸構造を付与してなる透明保護層を兼ねる層などとして形成することができる。
【0019】
また微細凹凸構造は、図2に例示したもの15の如く、偏光板の透明保護層12に対する前記樹脂層の塗工層等からなる付加層や、透明保護層に塗工付加したポリマー層の表面に微細凹凸構造を付与した加工層、あるいは前記の表面に微細凹凸構造を付与した透明保護層の上にポリマーの塗工層を設けたものなどとしても形成することができる。微細凹凸構造は、前記した2種以上の状態のものを複合させた層として形成されていてもよい。
【0020】
前記において、上記した凹凸特性の形成性などの点よりは、偏光板の透明保護層を兼ねる又は透明保護層に代わる層として形成した微粒子含有の樹脂層からなるものが好ましい。その樹脂層は、例えば樹脂溶液に微粒子を分散含有させてそれをドクターブレード法やグラビアロールコータ法等の適宜な方式で偏光板上に塗工して塗工膜を形成する方式や、微粒子含有の樹脂フィルムを予め形成してそれを偏光板上に接着する方式などの適宜な方式にて形成することができる。
【0021】
なお前記の樹脂層を形成する樹脂には、上記した透明保護層にて例示したポリマーなどをその硬度などに応じて適宜に用いうる。好ましく用いうるものは紫外線硬化型樹脂である。これによれば、紫外線照射による塗工層の硬化処理にて必要に応じ微粒子を含有する紫外線硬化樹脂層からなる層を簡単な加工操作にて効率よく形成することができる。また粗面化した透明保護層の表面に紫外線硬化樹脂層を形成してその表面に透明保護層の表面凹凸を反映させることなども容易に行うことができる。
【0022】
前記の紫外線硬化型樹脂としては、例えばポリエステル系やアクリル系、ウレタン系やアミド系、シリコーン系やエポキシ系等の樹脂を形成しうるモノマーやオリゴマーやポリマーに紫外線重合開始剤を配合して、紫外線照射による硬化処理で樹脂層を形成しうるようにしたものなどの適宜なものを用いうる。
【0023】
好ましく用いうる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有する、就中2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマーを成分とするものの如く、付設対象の偏光板表面に対する密着性、透明性やハードコート性、微粒子を含有させる場合にはその分散性、硬化皮膜の上記硬度の満足性などに優れるものである。
【0024】
なお前記の微粒子としては、例えばPMMAやポリウレタン、ポリスチレンやメラミン樹脂等の各種ポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系粒子、シリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化カルシウムや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系粒子などの適宜なものを用いうる。
【0025】
就中、上記した凹凸特性の容易な達成性や鋭角な凸部の形成防止などの点よりは球状粒子、特に硬化前の樹脂に溶解しない有機系粒子が好ましく用いうる。また用いる微粒子は、傷付き防止とスティッキング防止を良好にバランスさせる点などより、その平均粒径が0.5〜5μm、就中1〜4μmのものが好ましい。
【0026】
偏光板には、図2に例示した如く必要に応じて接着層17を設けることもできる。かかる接着層は、偏光板を液晶セル等の他部材と接着することを目的とするものである。接着層は、例えばアクリル系やゴム系、シリコーン系等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの適宜な接着剤にて形成することができ、透明性や耐候性等に優れるものが好ましい。
【0027】
本発明による偏光板は、必要に応じ位相差板と接着した楕円偏光板などとして表示装置などの従来に準じた各種の用途に用いうる。特に液晶表示装置の如く偏光板に隣接して光学シートを配置する場合に、その光学シートの傷付きを防止しつつ、隣接の光学シートとの間でスティッキングすることの予防が必要な用途などに好ましく用いうる。その場合、偏光板はその微細凹凸構造面が隣接の光学シートとの間に位置するように配置される。
【0028】
ちなみに図4に、本発明による偏光板1を配置した液晶表示装置を例示した。これは、バックライト8の光出射面に順次光拡散シート7と集光シート6と偏光分離シート5が載置され、その上に偏光板1が配置されて粘着層3を介し液晶セル4に接着されており、その液晶セルの上に粘着層3を介し偏光板2が接着された形態のものからなる。
【0029】
前記において光拡散シート、集光シート及び偏光分離シートが光学シートであるが、図例では偏光分離シート5が偏光板1に隣接の光学シートとなっている。そのため偏光板1は、その微細凹凸構造を有する面11が偏光分離シート側となるように配置されている。このように液晶表示装置では、接着層なしに載置する光学シートと液晶セルとの間に本発明による偏光板を配置してスティッキングと傷付きを防止する構造が通例である。また図例の如く液晶セルの視認背面側に本発明による偏光板を配置する方式が一般的であるが、液晶セルの視認側に配置することを制限するものではない。
【0030】
なお前記の液晶セルは、内側に透明電極を有するセル基板42の間に液晶層43を封入すると共に、その視認側にカラーフィルタ41を付設したものからなる。またバックライト8は、ホルダ83で包囲した光源82を側面に配置した導光板81の底面に反射層84を設けてなるサイドライト型のものよりなり、その上方の集光シート6は、プリズムシート6a,6bをそれらのプリズム稜線が交差するように配置したものからなる。さらに視認側の偏光板2は、その表面にアンチグレア層21を有するものからなる。
【0031】
前記の液晶表示装置によれば、バックライト8による出射光が光拡散シート7にて拡散されて集光シート6に入射し、それで光路が制御されたのち偏光分離シート5に至って反射光と透過光に分離されると共に偏光に変換され、その透過偏光が偏光板1を吸収ロスの少ない状態で通過して液晶層を透過し、視認側の偏光板2を介して表示光が出射される。その場合、偏光板1による吸収ロスが少ないこと、及び偏光分離シートによる反射偏光が導光板の反射層84で反射反転して偏光分離シートに再入射して透過し、その反射光の利用で光の利用効率が向上することなどにより、液晶表示装置の輝度を向上させることができる。
【0032】
なお前記の図例では、偏光分離シートを偏光板に隣接の光学シートとしたが、本発明にてはそれに限定されず、偏光板に隣接の光学シートは、形成目的の液晶表示装置等の形態に応じた適宜なものであってよい。
【0033】
【実施例】
実施例1
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂100部(重量部、以下同じ)、平均粒径2μmの球状樹脂粒子20部、及び紫外線重合開始剤3部を溶媒を介し混合した固形分50重量%の分散液を、ヨウ素系ポリビニルアルコール型偏光フィルムの両面にポリビニルアルコール系接着層を介し厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを接着した偏光板の片面にバーコータにて塗布し、乾燥後紫外線を介し硬化処理して、表面微細凹凸構造の偏光板を得た。その表面微細凹凸構造における中心線平均粗さは0.08μm、任意な長さ1mmの直線上における高さ0.5〜1.0μmの凸部の個数は240個、高さ1.0μm超の凸部の個数は0個、表面硬度は鉛筆硬度にて2Hであった。
【0034】
次に、前記の微細凹凸構造面が外側となるように偏光板をアクリル系粘着層を介して液晶セルに接着し、その微細凹凸構造面を介し屈折率異方性の多層膜を有する直線偏光分離シート又はコレステリック液晶ポリマー層を有する円偏光分離シートの上に載置した図4に準じた形態のカラー型液晶表示装置を形成したところ、スティッキングは発生せず、表示品位にも優れていた。また装置を分解して確認したところ、いずれの偏光分離シートにも傷付きは生じていなかった。
【0035】
比較例1
平均粒径が10μmの球状樹脂粒子を用いたほかは実施例1に準じて、中心線平均粗さが0.40μm、任意な長さ1mmの直線上における高さ0.5〜1.0μmの凸部の個数が46個、高さ1.0μm超の凸部の個数が12個、表面硬度が鉛筆硬度にて2Hの微細凹凸構造を表面に有する偏光板を得、それを用いてカラー型液晶表示装置を形成したところ、スティッキングは発生しなかったが、見づらい表示であり、装置を分解したところ、いずれの偏光分離シートにも傷付きが発生していた。
【0036】
比較例2
平均粒径が10μmのシリカ粒子0.5部を用いたほかは実施例1に準じて、中心線平均粗さが0.10μm、任意な長さ1mmの直線上における高さ0.5〜1.0μmの凸部の個数が12個、高さ1.0μm超の凸部の個数が1個、表面硬度が鉛筆硬度にて2Hの微細凹凸構造を表面に有する偏光板を得、それを用いてカラー型液晶表示装置を形成したところ、スティッキングは発生しなかったが、見づらい表示であり、装置を分解したところ、いずれの偏光分離シートにも傷付きが発生していた。
【0037】
比較例3
球状樹脂粒子を用いない(無配合)ほかは実施例1に準じて、中心線平均粗さが0.01μm以下、任意な長さ1mmの直線上における高さ0.5〜1.0μmの凸部の個数が0個、高さ1.0μm超の凸部の個数が0個、表面硬度が鉛筆硬度にて2Hの平滑表面を有する偏光板を得、それを用いてカラー型液晶表示装置を形成したところ、スティッキングが発生して見づらい表示であった。なお装置を分解したがいずれの偏光分離シートにも傷付きはなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の断面図
【図2】他の実施例の断面図
【図3】凸部高さの説明図
【図4】適用例の断面図
【符号の説明】
1:偏光板
11,15,16:微細凹凸構造 12,14:透明保護層
13:偏光フィルム 17:接着層
4:液晶セル
5,6,7:光学シート
Claims (3)
- 片表面又は両表面に、中心線平均粗さが0.01〜0.1μmであると共に、任意な長さ1mmの直線上に高さ0.5〜1.0μmの凸部が10個以上、かつ高さ1.0μm超の凸部が2個以下であり、表面硬度が鉛筆硬度にてH〜4Hの微細凹凸構造を有することを特徴とする偏光板。
- 請求項1において、微細凹凸構造が平均粒径0.5〜5μmの球状粒子を含有する紫外線硬化樹脂層からなる偏光板。
- 請求項1又は2において、液晶セルの視認背面側における液晶セルと光学シートの間に配置された状態にある偏光板。
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