JP3559131B2 - シートの樹脂フレームおよび樹脂フレーム製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、合成樹脂製のフレーム本体の所定箇所に一体的に配置、固定された取り付け具を介して取り付けられるシートの樹脂フレームおよび樹脂フレーム製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、自動車等のリヤシートのシートバックとして、前方または後方への倒し込みの可能な可倒式の構成が知られている。そして、このような可倒式シートバックのフレーム(シートバックフレーム)として、たとえば、合成樹脂材料から所定の形状に成形された合成樹脂製のシートフレーム(樹脂フレーム)が提供されている。
【0003】
このような、シートバックに用いられる樹脂フレームは、通常、合成樹脂材料のブロー成形(吹込み成形)によって中空形状に成形されたフレーム本体と、このフレーム本体の下端の左右に一体成形によって配置、固定された取り付け具、たとえば板金ブラケットとしてなる取り付け金具との組み合わせから形成されている。そして、たとえば自動車のボディに、ヒンジユニットがブラケットとして設けられ、このヒンジユニットへの取り付け金具(取り付け具)の連結によって、樹脂フレーム、ひいてはシートバックが、ボディに対して回動可能に取り付けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、公知の構成においては、通常、板金ブラケットとしてなる取り付け金具が部分的な爪部を有する形状に左右個別に形成され、フレーム本体の表面上での爪部の埋設を伴う一体成形によって、取り付け金具はフレーム本体に固定されている。
【0005】
ここで、取り付け金具は、通常、フレーム本体の下端の左右サイドにそれぞれ設けられるため、埋設される爪部は、フレーム本体の内方に位置するように、たとえば、取り付け金具を四角形とした場合の上辺とフレーム本体の中央寄りに位置する左右のいずれかの辺との、隣接した2辺に設けられている。そして、フレーム本体からの剥離に抗する強度(剥離強度)を取り付け金具に得るために、公知の構成においては、通常、取り付け金具の爪部を長く延ばすことが考えられている。
【0006】
しかしながら、一体成形によってフレーム本体に埋設された取り付け金具の爪部を覆う部分、つまり、剥離方向への荷重の作用のもとで爪部の引っ掛かるフレーム本体の部分の肉厚は比較的薄く、取り付け金具の爪部を長く延ばすと、この肉薄部分が広範囲となるため、爪部の延長はフレーム本体の剛性の低下を伴う虞れがあり、好ましくない。そして、フレーム本体が肉薄部分を有すると、ブロー成形の際に、フレーム本体がその肉薄部分でパンクする虞れもあるため、取り付け金具の爪部の延長は、成形作業の確実性の低下を伴うことも否定できない。
【0007】
この発明は、フレーム本体の剛性の低下を招くことなくフレーム本体からの取り付け具の剥離を防止可能とするシートの樹脂フレーム、および、その製造に適した樹脂フレーム製造方法の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明のシートの樹脂フレームによれば、所定の取り付け具が、フレーム本体の合成樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を持つ合成樹脂材料からなる樹脂ブロックに、少なくとも部分的な埋設のもとで固定されている。そして、この樹脂ブロックとフレーム本体との一体成形によって、取り付け具がフレーム本体の所定箇所に配置、固定されている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1、図2に示すように、この発明に係るシートの樹脂フレーム10においては、所定の取り付け具12が、中空形状のフレーム本体14の所定位置に、一体成形によって配置、固定されている。
【0011】
この種の樹脂フレーム10として、たとえば、自動車のリヤシートのシートバックのフレームを図1に例示する。そして、この樹脂フレーム10においては、取り付け具12がフレーム本体14の下端の左右サイドにそれぞれ配設されている。
【0012】
取り付け具12として、たとえば、板金ブラケットとしてなる取り付け金具が例示できる。図2に加えて図3(a) を見るとわかるように、取り付け金具(取り付け具)12は、基部12a の周端に断面略J 形状の係合片12b を一体に有する略台形状に、たとえば、板金の打ち出し加工によって形成されている。そして、図1、図2に示すように、取り付け金具の基部12a は、たとえば、固着ナット16を裏面に一体的に有して形成され、基部の挿通孔18を介した固着ナットへのボルト20の螺着によって、フレーム本体、ひいては樹脂フレーム10が、自動車等のボディサイドのブラケット22に取り付け金具12を介して固定可能となっている(図1参照)。
【0013】
なお、図1に示すように、ブラケット22は、たとえば、ベースブラケット22−1と、ヒンジピン22−2を介してベースブラケットに回動自在に連結された回動アーム22−3との組み合わせからなるヒンジユニットとして形成されている。
【0014】
ここで、図1、図2に示すように、この発明においては、取り付け金具12が樹脂ブロック24に一体的に固定され、この樹脂ブロックとフレーム本体14との一体成形のもとで、取り付け金具はフレーム本体に固定可能となっている。そして、この発明の樹脂フレーム製造方法においては、図3(a) 〜(c) に示すように、取り付け金具12のインサート成形によって、取り付け金具の固定された樹脂ブロック24を予め成形し、この樹脂ブロックとフレーム本体14との一体成形によって、取り付け金具をフレーム本体に一体的に固定可能としている。
【0015】
樹脂ブロック24は、取り付け金具12の配置された金型(図示しない)による射出成形によって、たとえば、図2、図3(b) に示す、フランジ状の係合片を周面に有する形状に予めインサート成形される。そして、この発明において、樹脂ブロック24は、フレーム本体14の合成樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を持つ合成樹脂材料、たとえば同一の合成樹脂材料によって成形される。
【0016】
このように成形された樹脂ブロック24は、図4に示すように、フレーム本体14のブロー成形型26の所定位置に配置される。そして、押し出し機28による合成樹脂材料の押し出しによって、パリソン(チューブ形状)30を成形する。
【0017】
次に、ブロー成形型26でこのパリソン30を挟み、空気吹き込み口32からパリソンの内部に適当に空気を送り込んで、金型のキャビティ34に相当する中空形状のフレーム本体14を成形するとともに、これによる樹脂ブロック24とフレーム本体との一体成形によって、樹脂フレーム10を形成する(図2参照)。
【0018】
このように、この発明の樹脂フレーム製造方法においては、取り付け金具12の固定された樹脂ブロック24をフレーム本体14に一体成形すれば足りるため、取り付け金具の形状はフレーム本体の成形に直接的に影響しない。つまり、取り付け金具12の形状、ひいては係合片12b の形状が樹脂ブロック24から容易に剥離、離脱しない形状に選定できるとともに、射出成形による樹脂ブロックの成形では、係合片の形状の影響を受けることなく適切な成形が可能であるため、取り付け金具のインサート成形によれば、樹脂ブロックに対する取り付け金具の固定が十分に強固に得られる。
【0019】
また、この樹脂ブロック24は、フレーム本体14の合成樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を有する合成樹脂材料から成形されるため、フレーム本体との一体成形時における熱等によって、フレーム本体との接触面が溶融する。そして、この表面の溶融状態において、パリソン30の内部に適当な空気圧がかかるため、樹脂ブロック24の表面とフレーム本体14の接触面との間が適当な圧力のもとで溶着される。
【0020】
このように、取り付け金具12が樹脂ブロック24に、樹脂ブロックがフレーム本体14に、それぞれ強固に固定されることから、フレーム本体、取り付け金具間の固定が強固となり、フレーム本体からの取り付け金具の剥離が確実に防止できる。
【0021】
従って、フレーム本体14への荷重の作用時における剥離強度の十分な強化により、樹脂フレーム10の安全性が一層向上する。
【0022】
そして、樹脂ブロック24の表面がフレーム本体14の接触面に対して溶着されるため、長い爪部等をフレーム本体に埋設させることなく、フレーム本体からの樹脂ブロック、ひいては取り付け金具12の剥離が防止できる。そのため、フレーム本体14に肉薄部が形成されず、フレーム本体のブロー成形の際の、いわゆるパンク等の発生が確実に防止できる。従って、フレーム本体14の成形作業、ひいては樹脂フレーム10の製造作業の確実性が向上する。
【0023】
また、この発明の樹脂フレーム製造方法によれば、上述したように、フレーム本体14に対する取り付け金具12の剥離強度の向上された樹脂フレーム10が容易に確保できる。そして、インサート成形によって取り付け金具12の一体化された樹脂ブロック24をフレーム本体14との一体成形によって配置、固定すれば足りるため、製造工程の複雑化を伴うことがない。
【0024】
更に、フレーム本体14の成形時に、樹脂ブロック24の背面側を適度に圧縮すれば、フレーム本体に対する樹脂ブロックの溶着強度の増加が容易に可能であるため、作業工程の煩雑化を伴うことなく、取り付け金具の強固な固定が容易に得られる。
【0025】
ここで、この発明の実施の形態においては、取り付け金具12が、基部12a の周端に係合片12b を一体的に有する形状として具体化されているが、樹脂ブラケット24から剥離、離脱し難い形状であれば足りるため、図示の断面略J 形状の係合片を有する形状に限定されず、他の形状の係合片を有する形状、たとえば断面略L 形状の係合片を有する形状等に、取り付け金具を形成してもよい。
【0026】
しかしながら、この実施の形態のように、断面略J 形状の係合片12b を周端に有する形状に取り付け金具12を形成すれば、樹脂ブロック24に対する取り付け金具の強固な固定が容易に確保できるため、この点からも作業の確実性が向上する。
【0027】
また、この実施の形態においては、樹脂ブロック24がフランジ状の係合片24a を有する形状に成形されているが、この発明によれば、樹脂ブロックの表面がフレーム本体14の接触面に溶着されるため、係合片を省略した形状に樹脂ブロックを成形しても、剥離に抗する強度は十分に確保できる。
【0028】
しかしながら、この実施の形態のように、フランジ状の係合片24a を一体に有する形状に樹脂ブロック24を成形すれば、フレーム本体14に対する係合片24a の係合が得られるため、フレーム本体からの樹脂ブロックの離脱、剥離が一層確実に防止できる。
【0029】
更に、この実施の形態においては、フレーム本体14の下端の左右に同一形状の取り付け金具12を設ける構成を図1において図示しているが、取り付け金具を樹脂ブロック24へのインサート成形によって一体化し、この樹脂ブロックをフレーム本体と一体成形によってフレーム本体に対して固定すれば足りるため、異なる形状の取り付け金具をフレーム本体の下端左右に設ける構成としてもよい。
【0030】
また、板金ブラケットとしてなる取り付け金具12を取り付け具として具体化しているが、金具に限定されず、他の素材、たとえば、セラミックや木材および硬質の合成樹脂等から取り付け具を形成してもよい。
【0031】
なお、この発明の実施の形態においては、樹脂フレームとして自動車のリヤシートの可倒式のシートバックに用いられる構成を例示しているが、可倒式に限定されず、固定式のシートバックの樹脂フレームに、この発明を応用してもよい。また、シートバックに限定されず、シートクッションのフレームに、この発明の思想を応用してもよい。
【0032】
更に、自動車のシートに限定されず、たとえば、バス等に装着されるシートや、電車、飛行機、船舶等のシートや、車両以外の映画館、集会所、ホール、待合室等のシートに、この発明を応用してもよい。
【0033】
上述した発明の実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るシートの樹脂フレームによれば、取り付け具の固定された樹脂ブロックを、フレーム本体との一体成形によって所定箇所に配置、固定すれば足りるため、フレーム本体への荷重の作用時における剥離強度が十分に強く確保できる。従って、フレーム本体からの取り付け具の剥離が確実に防止でき、樹脂フレームの安全性が一層向上する。
【0035】
また、樹脂フレームがフレーム本体の合成樹脂材料の溶融点と同等以下の合成樹脂材料から成形されるため、フレーム本体の成形の際における樹脂ブロックの表面の溶融のもとでの溶着が得られる。従って、フレーム本体、樹脂ブロック間の強固な固着により、フレーム本体からの樹脂ブロックの離脱、剥離が確実に防止できる。
【0036】
そして、この発明のシートの樹脂フレーム製造方法によれば、上記の樹脂フレームが、工程の煩雑化を招くことなく適切、容易に製造できる。
【0037】
更に、係合片を一体に有する形状に取り付け具、樹脂ブロックをそれぞれ形成すれば、樹脂ブロックに対する取り付け具の強固な固定、および、フレーム本体に対する樹脂ブロックの強固な固定がそれぞれ得られるため、フレーム本体からの樹脂ブロック、ひいては取り付け具の離脱、剥離が一層確実に防止できる。
【0038】
そして、樹脂ブロックをフレーム本体と同一の合成樹脂材料から成形すれば、一体成形時における樹脂ブロックが過剰に溶融することもなく、樹脂ブロック表面の適切な溶融が得られるため、作業の確実性は一層向上される。また、同一の合成樹脂材料であれば、製造コストの低減化、および、外観品質の向上がいずれも容易に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施に係るシートの樹脂フレームの概略斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿ったシートの樹脂フレームの断面図である。
【図3】この発明に係るシートの樹脂フレーム製造方向での製造の流れを概略的に示す、段階的な製造品の各概略斜視図である。
【図4】シートの樹脂フレーム製造方法の一工程を示す、一部破断の概略正面図である。
【符号の説明】
10 シートの樹脂フレーム
12 取り付け具
12a 基部
12b 係合片
14 フレーム本体
24 樹脂ブロック
26 ブロー成形型
28 押し出し機
30 パリソン
Claims (6)
- 合成樹脂製のフレーム本体の一部に、所定の取り付け具を一体成形によって配置、固定したシートの樹脂フレームにおいて、
所定形状の取り付け具が、上記フレーム本体の樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を持つ合成樹脂材料からなる樹脂ブロックに、少なくとも部分的な埋設のもとで一体的に固定され、この樹脂ブロックとフレーム本体との一体成形によって、取り付け具がフレーム本体の所定箇所に配置、固定されたことを特徴とするシートの樹脂フレーム。 - 合成樹脂製のフレーム本体の一部に、所定の取り付け具を一体成形によって配置、固定したシートの樹脂フレームにおいて、
所定形状の取り付け具が、上記フレーム本体の樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を持つ合成樹脂材料からなる樹脂ブロックに、インサート成形によって一体的に設けられ、この樹脂ブロックとフレーム本体との一体成形によって、取り付け具がフレーム本体の所定箇所に配置、固定されたことを特徴とするシートの樹脂フレーム。 - フレーム本体と樹脂ブロックとが同一の合成樹脂材料によって成形された請求項1または2記載のシートの樹脂フレーム。
- 中空形状のフレーム本体のブロー成形の際の一体成形によって、取り付け具をフレーム本体の所定箇所に配置、固定するシートの樹脂フレーム製造方法において、
上記フレーム本体の樹脂材料の溶融点と同等以下の溶融点を持つ合成樹脂材料によるインサート成形によって、取り付け具を一体的に有する樹脂ブロックを予め成形し、
この樹脂ブロックをフレーム本体のブロー成形型の所定箇所に配置するとともに、樹脂ブロックと同一の合成樹脂材料の押し出しによって成形されたパリソンを上記ブロー成形型で挟み、パリソン内部への空気の送り込みを伴うフレーム本体と樹脂ブロックとの一体成形によって、取り付け具をフレーム本体の所定箇所に一体的に固定することを特徴としたシートの樹脂フレーム製造方法。 - 取り付け具が、基部の周端に断面略J 形状の係合片を一体的に有する略台形状に形成され、少なくとも係合片の埋設を伴って樹脂ブロックにインサート成形されるとともに、
樹脂ブロックが、略フランジ状の係合片を少なくとも部分的に有して成形された請求項4記載のシートの樹脂フレーム製造方法。 - フレーム本体と樹脂ブロックとを同一の合成樹脂材料によって成形する請求項4または5記載のシートの樹脂フレーム製造方法。
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