JP3558837B2 - 走査結像光学系および光走査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は走査結像光学系および光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光走査装置は、光源側からの光束を光偏向器により偏向させ、走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させて光走査を行う装置であって、デジタル複写機や光プリンタ等の「画像形成装置」に関連して広く知られている。
走査結像光学系の1種として、fθミラー等として知られる「結像ミラー」を用いるものが知られている。結像ミラーは、プラスチック成形により所望の鏡面形状のものを容易に製造でき、結像機能が光束の波長に影響されないので、光源として用いられる半導体レーザの「温度変化による発光波長変化」の影響をうけない等の利点がある。しかしながら反面、結像ミラーにより反射される光束が光偏向器側へ戻らないように、結像ミラーを「傾けたりシフトさせたり」する必要があり、このようにすると、光スポットの走査する走査線が直線にならず、所謂「走査線曲がり」が不可避的に発生する。走査線曲がりを補正する方法として、結像ミラーの傾き角やシフト量を調整する方法があるが、走査線曲がりを完全に補正することはできない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、走査結像光学系が結像ミラーを含むことにより不可避的に発生する光走査装置固有の走査線曲がりを、原理的に補正することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の走査結像光学系は「光源側からの光束を光偏向器により偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、上記被走査面を光走査する光走査装置における走査結像光学系」であって、結像ミラーとレンズ系とを有する(請求項1)。
「結像ミラー」は、結像機能を有し、偏向光束を被走査面側へ反射する。
【0005】
「レンズ系」は、結像ミラーと被走査面との間に配備され、結像ミラーと共働して、偏向光束を被走査面上に光スポットとして集光させる。
このレンズ系における1面以上が「走査線曲がりを補正する補正屈折面」として形成される。「補正屈折面」は、補正屈折面への偏向光束の入射位置における副走査断面内の固有傾きが、光走査装置固有の走査線曲がりを補正するように、入射位置に応じて定められている。
【0006】
光走査装置の装置空間内において、光源から被走査面に至る光路上で主走査方向と対応する方向を「主走査対応方向」と呼び、上記光路上で副走査対応方向に対応する方向を「副走査対応方向」と呼ぶ。
上記「副走査断面」は補正屈折面の近傍において「主走査対応方向に直交する平断面」を言う。
「光走査装置固有の走査線曲がり」は、走査結像光学系に補正屈折面による走査線曲がり補正効果がないものとしたときに、光走査装置の設計に応じて生じる走査線曲がりをいう。このように、光走査装置固有の走査線曲がりは「光走査装置の設計に応じて生じる光走査装置に固有のもの」であり、従って、これを補正屈折面により設計的に補正することができるのである。
【0007】
結像ミラーと被走査面との間に配備されるレンズ系は「単一のレンズ」により構成することができる(請求項2)。勿論、レンズ系を構成するレンズは2枚以上でもよい。補正屈折面は、1面で構成しても良いが、補正屈折面を2面以上形成し、各補正屈折面による補正機能が合成的に作用して走査線曲がりを補正するようにすることもできる。
上記請求項1または2記載の走査結像光学系において「最も被走査面側に位置するレンズ面を補正屈折面とする」ことができる(請求項3)。このようにすると補正屈折面の設計が容易である。
【0008】
請求項1または2または3記載の走査結像光学系は「等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能」を有することができる(請求項4)。 請求項1または2または3または4記載の走査結像光学系は「光偏向器による偏向の起点近傍と被走査面位置とを、副走査対応方向において幾何光学的に略共役関係とする機能」を有することができる(請求項5)。このようにすると、回転多面鏡等の光偏向器における「面倒れ」を補正することができる。
上記請求項5記載の走査結像光学系において、結像ミラーに「等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能」を付与し、レンズ系を「単一の長尺トロイダルレンズ」とし、その被走査面側のレンズ面を補正屈折面とすることができる(請求項6)。このような走査結像光学系は、構成が単純で安価に実現できる。
【0009】
この発明の光走査装置は「光源側からの光束を光偏向器により偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、光走査を行う光走査装置」であって、走査結像光学系として、上記請求項1〜6の任意の1に記載の走査結像光学系を用いることを特徴とする(請求項7)。
この場合において、光偏向器による光束の偏向を「等角速度的」とすることができ、その場合には走査結像光学系として上記請求項4記載の走査結像光学系を用いることができる(請求項8)。
また、この発明の光走査装置は、光源からの光束を光偏向器である回転多面鏡の偏向反射面近傍に主走査対応方向に長い線像として結像させるとともに、回転多面鏡により等角速度的に偏向させ、偏向光束を被走査面上に光スポットとして集光させ、光走査を行う光走査装置として構成でき、その場合には、上記請求項5記載の走査結像光学系で、等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能を有するものを用いることができる(請求項9)。勿論、請求項5記載の走査結像光学系の1形態として、請求項6記載の走査結像光学系が含まれることは言うまでもない。
上記請求項9記載の光走査装置においては、回転多面鏡によるサグの影響を補正するために、走査結像光学系の副走査対応方向のパワーを、サグに応じて、主走査方向において非対称とすることができる(請求項10)。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1において、「半導体レーザ」である光源10からの光束は、カップリングレンズ15により以後の光学系にカップリングされ、平行光束または弱い集束性もしくは弱い発散性の光束となり、アパーチュア20を通過することにより光束周辺部分を遮断されて適当な光束断面形状に「ビーム整形」される。ビーム整形された光束はシリンドリカルレンズ25により副走査対応方向に集束され、「回転多面鏡」である光偏向器30の偏向反射面近傍に主走査対応方向に長い線像として結像する。光偏向器30による反射光束は、光偏向器30により「等角速度的」に偏向され、結像ミラー41に入射して反射され、長尺トロイダルレンズ45を介して、被走査面(実体的には光導電性の感光体50の周面)上に光スポットとして集光し、被走査面を光走査する。
即ち、図1の光走査装置は、光源10側からの光束を光偏向器30により偏向させ、偏向光束を走査結像光学系41,45により被走査面上に光スポットとして集光させ、走査を行う光走査装置(請求項7)であり、光源10側からの光束は光偏向器30により等角速度的に偏向され(請求項8)、また、光源10側からの光束は、光偏向器30である回転多面鏡の偏向反射面近傍に主走査対応方向に長い線像として結像される(請求項9)。
【0011】
図1に示す実施の形態において、結像ミラー41と長尺トロイダルレンズ45とは「走査結像光学系」を構成し、長尺トロイダルレンズ45の被走査面側のレンズ面が補正屈折面となっている。
即ち、走査結像光学系を構成する結像ミラー41と長尺トロイダルレンズ45のうち、結像ミラー41は結像機能を有し、偏向光束を被走査面50側へ反射するものであり、長尺トロイダルレンズ45は、結像ミラー41と被走査面50との間に配備され、結像ミラー41と共働して偏向光束を被走査面50上に光スポットとして集光させるレンズ系を構成し、長尺トロイダルレンズ45の1面が走査線曲がりを補正する「補正屈折面」として形成されている(請求項1)。
即ち、図1の実施の形態の走査結像光学系は、結像ミラー41と被走査面50との間に配備されるレンズ系が、単一のレンズ45により構成され(請求項2)、最も被走査面側に位置するレンズ面が補正屈折面である(請求項3)。
【0012】
図1に示した走査結像光学系はまた、等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能を有し(請求項4)、また、光偏向器30による偏向の起点近傍と被走査面位置とを、副走査対応方向において幾何光学的に略共役関係とする機能を有する(請求項5)。そして、上記「等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能」は、結像ミラー41が有する(請求項6)。
【0013】
ここで、長尺トロイダルレンズ45の有する補正屈折面を説明する。
図2(a)において、長尺トロイダルレンズ45を、主走査対応方向に直交する平断面である副走査断面FD1,FD2,FD3で仮想的に切断したときの断面を図2(b)示すように、断面fd1,fd2,fd3とする。長尺トロイダルレンズ45は、その被走査面側のレンズ面が補正屈折面であるので、これを図2(b)に符号HKで示す。符号Bは、結像ミラーにより反射されて長尺トロイダルレンズ45に入射する偏向光束(の主光線)を示している。長尺トロイダルレンズ45に入射する偏向光束Bは、結像ミラーによる反射光束であるため、一般に、長尺トロイダルレンズ45に入射する位置は偏向角に応じて、副走査対応方向に変化する。補正屈折面HKに入射する偏向光束の入射位置を、各断面fd1,fd2,fd3において、図の如くP1,P2,P3とし、これら入射位置P1,P2,P3における補正屈折面の(副走査断面内の)接線を、図の如くT1,T2,T3とすると、これら接線T1,T2,T3の傾きが「光走査装置固有の走査線曲がりを補正する」ように入射位置P1,P2,P3に応じて定められているのである。
【0014】
即ち、例えば、入射位置P1,P2,P3に入射する偏向光束は、補正屈折面HKによる補正効果が無ければ、破線のように進んで、光走査装置固有の走査線曲がりを発生させるので、補正屈折面HKにおける入射位置P1,P2,P3におけるレンズ面の(副走査断面内の)傾きを与えて、レンズ面の屈折効果により、偏向光束を実線のように曲げ、光走査装置固有の走査線曲がりを補正するのである。図2(c)は、上記接線T1,T2,T3等が、主走査対応方向の全体でどのように変化しているかを説明的に示す図である。
【0015】
【実施例】
図1に示した実施の形態を以下の如く具体的な実施例として実施した。 図3は該実施例の「光学配置」を説明するための図であり、便宜上、光源10から結像ミラー41に入射する光束の光路を直線的に展開した状態を示し、この状態において、装置空間の座標を「X,Y,Z」とする。Y方向は「主走査対応方向(被走査面上では主走査方向)」で、副走査断面は「XZ面に平行な面」になる。また、回転多面鏡である光偏向器30により理想的に偏向された偏向光束の主光線は「XY面」で偏向する。
結像ミラー41および長尺トロイダルレンズ45に関しては、これらに固定された「固有座標系」を考え、これらについては、それぞれの固有座標系を用いて形状を特定する。結像ミラー41に固定した固有座標系を「x’,y’,z’」とし、長尺トロイダルレンズに固定した固有座標系を「x,y,z」とする。
結像ミラー41は、図3に示すように、光走査装置の装置空間内の座標:X,Y,Zにおける「XY面に平行な面」内において、Y方向にシフト:Y41(図3(a)で上方を正とする)を与えられ、且つ、ティルト:α41(同図で反時計回りを正とする)を与えられ、また「XZ面」内においては、Z方向へのシフト:Z41(図3(b)で上方を正とする)とティルト:β41(同図で時計回りを正とする)を与えられている。
長尺トロイダルレンズ45は、「XY面」内でシフト:Y45(図3(a)で上方を正とする)を与えられ、「XZ面」内で、シフト:Z45(図3(b)で上方を正とする)と、ティルト:β45(同図で時計回りを正とする)を与えられている。
【0016】
光源10から光偏向器30に至る光路上の光学系を「第1光学系」と称し、光偏向器30から被走査面50に至る光路上の光学系を「第2光学系」と称する。
光源から被走査面に至る光路上の光学系の面(レンズ面・反射面)の曲率半径を主・副走査対応方向に就いてそれぞれ「Rm(mm)」および「Rs(mm)」、面間隔を「X(mm)」、レンズの材質の屈折率を「N」で表す。
「光偏向器」として用いられる回転多面鏡30は、偏向反射面数:6、内接円半径:12mmのものであり、反射光束が図3のX軸と合致するときの該反射光束の主光線と光源側からの入射光束の主光線となす角は60度である。
【0017】
カップリングレンズ15は「平凸の共軸球面レンズ」で、カップリングされた光束は「平行光束」となる。また「X=57.8mm」は、シリンドリカルレンズ25の射出側面から光偏向器の偏向反射面に至る面間隔である。
【0018】
第2光学系は、前述の如く光偏向器から被走査面に至る光路上に配備される光学系である。このうち、結像ミラー41の反射面および長尺トロイダルレンズ45のレンズ面に関しては、曲率半径:Rm,Rsは、固有座標系において定義される値である。また、上記反射面・レンズ面において「x’y’面」内、「xy面」内の形状が「非円弧形状」であるものについては、Rmは、y’=0,y=0の近傍の「近軸曲率半径」を言うものとする。
【0019】
「X=132,28」は、回転多面鏡30の偏向反射面と結像ミラー41の反射面との間の(図3のX軸上の)面間隔(図3(b)に記号:dPMで示す)であり、「X=−140.00」は、結像ミラー41と長尺トロイダルレンズ45の間の面間隔(図3(b)に記号:dMLで示す)であり、負号は反射により光路の方向が反転することを意味する。また、X=123.42は、長尺トロイダルレンズ45と被走査面50との間の面間隔(図3(b)に記号:dLSで示す)である。
図3に示した、各シフト(単位:mm)・ティルト(単位:度)は次のとおりである。
結像ミラー41のシフトおよびティルト
Y41=−1.2、α41=−0.46、Z41=2.5、β41=3.1
長尺トロイダルレンズ45のシフトおよびティルト
Y45=0.32、Z45=15.8、β45=3.8 。
【0020】
結像ミラー41の反射面形状は共軸非球面で、固有座標系:x’,y’,z’を用いるとき、周知の非球面の式
x’=y’2/[Rm+√{Rm2−(1+K)y’2}]+A・y’4+B・y’6+C・y’8+D・y’10...において、
Rm=−402.2,K=−1.36,A=−1.64E−10,
B=−4.04E−14,C= 7.34E−19,D=−2.56E−23(E−10等は10 ̄10等を表す)とした形状である。
【0021】
長尺トロイダルレンズ45の結像ミラー41側の面は、固有座標系:x,y,zを用いるとき、xy面内の形状は、周知の非球面の式
x=y2/[Rm+√{Rm2−(1+K)y2}]+A・y4+B・y6+C・y8+D・y10...において、
Rm=700,K=−0.763,A= 1.10E−9,
B= 8.08E−14,C=−1.55E−18,D= 5.50E−23とした形状である。
【0022】
このレンズ面の「xz面」に平行な面内における曲率:Bs(y)を、座標:yの関数として、
Bs(y)=(1/Rs(0))+Σbj・y**j (j=1,2,3,...)と表すと(y**jは、yのj乗を表す)、この式における各定数は、以下の通りである。
【0023】
Rs(0)=85,b1=1.90E−3,b2=1.28E−3
b3=2.14E−7,b4=−8.91E−9,
b5=9.78E−12,b6=−6.81E−13,
b7=−5.89E−16,b8=2.91E−17,
b9=8.02E−21,b10=−6.75E−22
奇数次の項が0でないので、Bs(y)はy方向に非対称である。
【0024】
次に、長尺トロイダルレンズ45の被走査面側のレンズ面の形状を説明する。このレンズ面は前述の通り「補正屈折面」であり、副走査断面内において固有傾きを有するが、まず、固有傾きが無いとした場合の形状を説明する。
【0025】
固有座標系:x,y,zで見ると、「xy面」内の形状は「単純な円弧形状」であり、その曲率半径:Rm=700である。
【0026】
「xz面」に平行な面内における曲率:Cs(y)を、座標:yの関数として、
Cs(y)=(1/Rs(0))+Σcj・y**j (j=1,2,3,...)
と表すと、この式における各定数は、以下の通りである。
【0027】
Rs(0)=34.42,c2=−2.78E−7,c4=−2.57E−12,c6=−1.74E−17
yの奇数次の項の係数はすべて0であり、したがって曲率:Cs(y)はy方向においてx軸に関して対称である。
【0028】
このように「固有傾きがないとすれば、主走査対応法に対称的な形状の面」に補正屈折面としての効果を持たせると、主走査対応方向の光学作用と副走査対応方向の光学作用の相互的な影響を小さく保ったまま、補正屈折面を容易に設計することができる。
【0029】
以上で「補正屈折面の固有傾き」を除き、図1の光走査装置の光学は位置がすべて決定された。この状態を実施例における「基準状態」と称する。この基準状態において生じる走査線曲がりが「光走査装置固有の走査線曲がり」である。上記「基準状態」における、主・副走査方向の像面湾曲と等速特性(カップリングレンズ15によりカップリングされた光束は平行光束であるので「fθ特性」である)の図、および走査線曲がり(「光走査装置固有の走査線曲がり」)の図を図5に示す。主・副走査方向の像面湾曲、fθ特性とも良好であるが、最大で0.1mmに近い走査線曲がりが発生している。補正屈折面における固有傾きは、この走査線曲がりを解消するように設定されるのである。
【0030】
上記の如き「光走査装置固有の走査線曲がり」を補正するため、固有傾きを設定した。この固有傾きを長尺トロイダルレンズ45に固定した固有座標系:x,y,zにおいて、座標:yに対する「固有の傾き:Δβ(y)」として説明する。
【0031】
前述のように「固有傾き」は、光走査装置の装置空間に固定した座標系:X、Y、Z(Y方向が主走査対応方向である)に関するものであるので、長尺トロイダルレンズ45に固有の固有座標系:x,y,zで説明するときは、座標系が異なることを明らかにするために「固有の傾き」という用語を用いる。
【0032】
「固有の傾き」は、固有座標系:x,y,zにおいて、「xz面」に平行な断面内における補正屈折面において、補正屈折面とx軸との交点における補正屈折面の接線がz方向となす角である。
【0033】
勿論、座標:yの全域にわたる固有の傾き:Δβ(y)は、上の数値を滑らかにつなげて得られ、必要とあれば、これを変数:yに関する多項式として解析的に表現することもできる。
【0034】
図4は、固有座標系:x,y,z系で表した補正屈折面HKの形状を示している。曲線20aは、固有の傾き:Δβ(y)が無い場合、即ち、Δβ(y)≡0としたときの補正屈折面HKの「xz面」に平行な面内の曲率中心(このとき、曲率は前述の「曲率:Bs(y)=(1/Rs(0))+Σbj**j」で与えられる)をy方向に連ねた曲線(xy面内にある)である。
補正屈折面HKに、上記「固有の傾き:Δβ(y)」を与えると、上記曲率中心は、曲線20のようになる。曲線20bは、曲線20を、xz面に平行な平面に射影した形状を示している。
このようにして、補正屈折面HKの形状が固有座標系:x,y,zに関して決定されたので、長尺トロイダルレンズ45の形状が完全に決定された訳であり、このように形状の定まった長尺トロイダルレンズ45を、図3に示すように光走査装置の装置空間に組み込めば、所望の光学配置となる。
固有座標系:x,y,zは、光走査装置の装置空間の座標系:X,Y,Zに対し、Y方向には、シフト:Y45だけずれているから、座標系:X,Y,Zにおいて定義される前記「固有傾き」は、これをΔB(Y)と書くと、前記固有の傾き:Δβ(y)を用いて「ΔB(Y)=Δβ(y+Y45)」で与えられる。 従って、上記レンズ面のXZ面内における傾きは「β45+ΔB(Y)」となる。
【0035】
このように長尺トロイダルレンズ45に補正屈折面の補正効果が与えられたときの、像面湾曲・fθ特性・走査線曲がりを、図6に示す。像面湾曲・fθ特性の良好性を保ちつつ、走査線曲がりは完全に補正されている。
【0036】
図4で、補正屈折面の曲率中心をy方向に連ねた曲線20は、その投影形状である曲線20bからも分かるように、y方向に非対称的である。これは「サグ」の影響を考慮したためである。回転多面鏡30は「回転軸が偏向反射面と離れている」ため、回転多面鏡30が回転するにつれ、図7に示すように、光源側からの光束による線像の結像位置:Pと偏向反射面30Aとの間にずれが生じる。この「ずれ」を「サグ」と呼び、図7に「ΔX」で示す。「サグ:ΔX」があると、走査結像光学系の結像の縦倍率により、光スポットの副走査対応方向における結像位置:P’は、被走査面50に対して、図7のようにΔX’だけずれ、光スポットの副走査方向のスポット径が像高に応じて変動することになる。
これを避けるには、走査結像光学系の副走査対応方向のパワーを上記「サグ」の影響を考慮して決定すればよい。「サグ:ΔX」は、図8に示すように、回転多面鏡の回転角:±αに応じ、α=25度の回りに非対称に発生するので、このようなサグの影響を補正するため、この実施例においては、長尺トロイダルレンズ45の結像ミラー41側レンズ面のxz面内の曲率半径:Bs(y)をy方向に非対称とすることにより行っている。
【0037】
また、サグの影響は、走査線曲がりにも影響し、サグの非対称性に伴い、走査線曲がりもY軸の両側で非対称となる(図5の「走査線曲がり」の図を参照)、これを補正するため、固有の傾き:Δβ(y)も非対称としているのであり、その結果、図4で、補正屈折面の曲率中心をy方向に連ねた曲線20がy方向に非対称的となっているのである。
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば新規な走査結像光学系および光走査装置を実現できる。
この発明の走査結像光学系は、結像ミラーが含まれることに起因して設計上発生する「光走査装置固有の走査線曲がり」を、走査結像光学系に含まれる補正屈折面により補正するので走査線曲がりの無い良好な光走査を実現できる。
請求項2記載の発明では、走査結像光学系が結像ミラーと1枚のレンズとにより構成されるので、走査結像光学系の構成が簡素で低コストで実現でき、請求項3記載の発明では、補正屈折面が被走査面にもっとも近いレンズ面であるため補正屈折面の設計が容易である。
請求項4記載の発明の走査結像光学系は、光源における強度変調のタイミングに電気的な補正を加えずに、等速的な光走査による書込みを実現でき、請求項5記載の発明の走査結像光学系は、光偏向器における面倒れを補正することができる。また、請求項6記載の発明の走査結像光学系は、等速化機能を結像ミラーに付与し、走査線曲がり補正効果を長尺トロイダルレンズに付与することにより、各機能を別個に独立に設計でき、設計が容易である。
【0039】
また、この発明の光走査装置は、上記走査結像光学系を用いることにより、光走査装置の設計上不可避的に発生する走査線曲がりを補正して、極めて良好な光走査を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の光走査装置の実施の1形態を説明するための図である。
【図2】図1の実施の形態における補正屈折面を説明するための図である。
【図3】図1の実施の形態に係る実施例における光学配置を説明するための図である。
【図4】補正屈折面の形状を固有座標系:x,y,zで説明するための図である。
【図5】実施例において、補正屈折面による補正効果が無い場合における像面湾曲・走査線曲がり・fθ特性を示す図である。
【図6】実施例に関する像面湾曲・走査線曲がり・fθ特性を示す図である。
【図7】サグとその影響を説明するための図である。
【図8】実施例に関するサグの発生状況を示す図である。
【符号の説明】
10 光源
15 カップリングレンズ
20 ビーム整形用のアパーチュア
25 シリンドリカルレンズ
30 光偏向器
41 結像ミラー
45 長尺トロイダルレンズ
50 被走査面をなす感光体
Claims (10)
- 光源側からの光束を光偏向器により偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、上記被走査面を光走査する光走査装置における走査結像光学系であって、
結像機能を有し、偏向光束を被走査面側へ反射する結像ミラーと、
該結像ミラーと被走査面との間に配備され、上記結像ミラーと共働して、偏向光束を被走査面上に光スポットとして集光させるレンズ系とを有し、
該レンズ系における1面以上が、走査線曲がりを補正する補正屈折面として形成され、
上記補正屈折面は、該補正屈折面への偏向光束の入射位置における副走査断面内の固有傾きが、光走査装置固有の走査線曲がりを補正するように、上記入射位置に応じて定められていることを特徴とする走査結像光学系。 - 請求項1記載の走査結像光学系において、
結像ミラーと被走査面との間に配備されるレンズ系は、単一のレンズにより構成されることを特徴とする走査結像光学系。 - 請求項1または2記載の走査結像光学系において、
最も被走査面側に位置するレンズ面が補正屈折面であることを特徴とする走査結像光学系。 - 請求項1または2または3記載の走査結像光学系において、
等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能を有することを特徴とする走査結像光学系。 - 請求項1または2または3または4記載の走査結像光学系において、
光偏向器による偏向の起点近傍と被走査面位置とを、副走査対応方向において幾何光学的に略共役関係とする機能を有することを特徴とする走査結像光学系。 - 請求項5記載の走査結像光学系において、
結像ミラーが、等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能を有し、
レンズ系が単一の長尺トロイダルレンズであり、その被走査面側のレンズ面が補正屈折面であることを特徴とする走査結像光学系。 - 光源側からの光束を光偏向器により偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、光走査を行う光走査装置であって、走査結像光学系として、請求項1〜6の任意の1に記載の走査結像光学系を用いることを特徴とする光走査装置。
- 光源側からの光束を光偏向器により等角速度的に偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、光走査を行う光走査装置であって、
走査結像光学系として、請求項4記載の走査結像光学系を用いることを特徴とする光走査装置。 - 光源からの光束を光偏向器である回転多面鏡の偏向反射面近傍に主走査対応方向に長い線像として結像させるとともに、上記回転多面鏡により等角速度的に偏向させ、偏向光束を走査結像光学系により被走査面上に光スポットとして集光させ、光走査を行う光走査装置であって、
走査結像光学系として、請求項5記載の走査結像光学系で、等角速度的に偏向する偏向光束による光走査を等速化する機能を有するものを用いることを特徴とする光走査装置。 - 請求項9記載の光走査装置において、
回転多面鏡によるサグの影響を補正するために、走査結像光学系の副走査対応方向のパワーを、上記サグに応じて、主走査方向において非対称としたことを特 徴とする光走査装置。
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