JP3558703B2 - 乗員保護装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コンテナキャリア等の車幅より車高の方が大きく、運転室が上方に設けられている車両の乗員保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンテナキャリア等の車幅より車高の方が大きく、運転室が上方に設けられている車両では、衝突、スピード過多、急ハンドルを切った等により横転する場合がある。従来、このような車両の乗員保護装置として、シートベルトが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような背が高い車両が横転した場合、乗員がシートベルトを装着していない場合は、乗員はステアリングにしがみついて、転倒時に体が飛ばされないようにするしかなく、乗員を適切に保護することができないという問題点を有していた。
【0004】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車幅より車高の方が大きく、運転室が上方に設けられている車両において、横転時に乗員を適切に保護することができる乗員保護装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明における乗員保護装置は、車幅より車高の方が大きく、運転室が上方に設けられている車両が横転した時の乗員保護装置において、前記車両の傾きの程度を検出する角度センサと、前記運転室の壁面又は装備等と乗員との間に展開して乗員のクッションとなるエアバッグと、前記角度センサSで検出された車両の傾きの程度に基づき横転の不可避を判断し、横転不可避を検知すると前記エアバッグのうち、少なくとも乗員の横転方向前方に位置するエアバッグをトリガして展開させる判断回路と、車両全体の重心位置を入力する入力手段とを設けたものである。
前記判断回路は、角度センサSから角度信号が入力されると、該角度信号に基づき車両 の傾きの角度を予め設定されたしきい値と比較し、該角度がこのしきい値を超えると " 横転 " と判断する。
前記しきい値は、前記入力手段によって入力された車両全体の重心位置に応じて設定される。
【0006】
また、前記判断回路は、乗員の横転方向後方に位置するエアバッグをもトリガして展開させるものとすることができる。
【0007】
また、前記エアバッグは通気孔を有しないものとすることができる。
【0008】
また、前記運転室の内圧を逃がす手段を設けたものとすることができる。
【0009】
【作用】
車幅に比べ車高の大きい車両では重心が高いため横転しやすく、かつこの横転は車両がある限界を超えて傾くと発生し、また該限界の傾きは運搬荷物の有無による重心の移動等により変化する。上記構成によれば、この車両の傾きの程度を角度センサで検出し、この角度センサで検出された車両の傾きの程度に基づき横転の程度を判断して横転不可避を検知するので、横転か否かの判断を適切かつ早期に判断することができる。そして、横転不可避を検知すると、乗員の横転方向前方に位置するエアバッグをトリガして運転室の壁面又は装備等と乗員との間に展開させて乗員のクッションとなし、乗員を適切に保護する。また、角度センサは、これらの横転可能性のある車両に通常装備され、カーブ時の速度制限のためのアラームに用いられており、前記乗員保護装置用角度センサをこれらの角度センサに兼用することができる。
【0010】
また、判断回路は、乗員の横転方向後方に位置するエアバッグをもトリガして展開させるものとすると、上記車両は車高が大きいことから横転時の衝撃が大きく、この横転時の衝撃衝撃により、乗員の前方に位置するエアバッグで乗員が後方に撥ね飛ばされることがあるが、この撥ね飛ばされた乗員を横転方向後方に位置するエアバッグで受け止めて適切に保護することができる。
【0011】
また、エアバッグは通気孔を有しないものとすると、上記車両は、車高が大きいことから、通常の背の低い車両に比べゆっくり倒れ、エアバッグ始動から横転により実際に衝撃が乗員に加わるまでの時間が相対的に長いが、この間エアバッグの圧力を所望の値に保持し、クッション性を保持する。
【0012】
また、前記運転室の内圧を逃がす手段を設けたものとすると、上記エアバッグが複数設けられ、展開後の総容量が大容量となる場合において、運転室が空調のために密閉状態にあるときでもエアバッグの展開による運転室の内圧上昇を防ぐことができる。この結果、例えば運転室内圧上昇による鼓膜破裂等の乗員への悪影響を防止することができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の乗員保護装置が適用されるコンテナキャリアを模式的に表した上面図及び該上面図のA矢視図、図2はエアバッグの配置状態を示す図1のB矢視図及び該B矢視図のC矢視図、図3は乗員保護装置の制御回路を示すブロック図、図4は本発明の乗員保護装置が適用される他のタイプのコンテナキャリアを模式的に表した上面図である。
【0014】
まず、図1により本発明の乗員保護装置が適用されるコンテナキャリアの具体例を説明し、ついで図2により本発明の乗員保護装置のエアバッグの配置を説明する。図1(a)及び図1(b)において、コンテナキャリア21は、門型フレーム23の下端に車輪24が設けられ、一方の端部の上方に運転室1が設置され、該フレーム23の内側にコンテナを保持して運送するようになっている。運転室1は通常、図示するように、乗員3が車両の横方向を向いて運転するようになっている。12はステアリングである。このように、車両の車幅に比べ車高が大きく、かつ細長いので、衝突や急ハンドルを切った場合に横転しやすい。
【0015】
図2(a)及び図2(b)は、エアバッグの展開位置を示しており、図2(a)において、運転室1内には、乗員3の両側方、及び中央上方に各エアバッグ5〜8が、さらに図2(b)において、乗員3の後方、前方(ステアリング12)、腹部前方に各エアバッグ9、10、11がそれぞれ展開するように配置されており、乗員3の体全体を包むような配置となっている。運転室1は、乗員3が全方角を見渡せるように、全面がガラスで覆われ、かつ空調を行うため密閉構造となっている。前記のエアバッグ4〜11はエアバッグ収納装置13(エアバッグ4についてのみ例示し、他は省略する)に収納されて、運転室1のガラス壁の枠や天井に取り付けられている。エアバッグ4〜11には、乗用車用のエアバッグに通常設けられる通気孔(ベントホール)は設けられていない。これは、乗用車等の背の低い車両に比べ、コンテナキャリア等の背の高い車両はゆっくり倒れるので、エアバッグ始動から横転により実際に衝撃が乗員に加わるまでの時間が相対的に長い。そこで、この間エアバッグ4〜11の圧力を所望の値に保持してそのクッション性を保持するものである。そして、該運転室1の例えば天井に運転室の内圧を逃がす手段35である電磁弁35を有する通気孔が設けられている。
【0016】
つぎに、上述のエアバッグ4〜11及び電磁弁35の制御回路を説明する。図3において、制御回路40は、車載バッテリ32にイグニッションスイッチIgを介して定電圧回路33が接続されている。一方、各エアバッグ4〜11は図示されないガス発生器に接続されており、各ガス発生器はスクイブQ1〜Q8をそれぞれ内蔵している。そして、各スクイブQ1〜Q8と半導体スイッチSW1〜SW8とからなる直列回路が前記定電圧回路33に並列に接続されている。各半導体スイッチSW1〜SW8のゲートは判断回路34に接続されており、該半導体スイッチSW1〜SW8は常時遮断であるが、該判断回路34からの作動信号が入力されると導通するようになっている。判断回路34は、CPUからなる演算器であって、入力側が角度センサSと接続されており、また出力側が前記半導体SW1〜SW8の他、図2の運転室通気孔の電磁弁35と接続されている。
【0017】
角度センサSは、車両の適所に配置され、車両の傾きの程度(角度)を検出するものである。この種の角度センサは、車両が急スピードでハンドルを切った場合等の横転の危険を検知してアラームを鳴らす目的で車両に通常装備されており、上記制御回路40の角度センサSをこのアラーム用に共用することができる。ただし、上記角度センサSは、この通常装備のアラーム用のものに比べ、横転不可避までの角度を検知する必要があることから、より広範囲な角度を検出でき、且つ横転か否かのシビアな判断を行うことからより高精度なものであることが要求される。
【0018】
判断回路34は、角度センサSから角度信号が入力されると、該角度信号に基づき車両の傾きの角度を予め設定されたしきい値と比較し、該角度がこのしきい値を超えると"横転"と判断する。横転は車両がある限界角度を超えて傾くと発生する。そして、この限界となる傾き角度は車両全体の重心の位置により決まり、この重心は運搬荷物の量や位置等により変化する。そこで、車両全体の重心位置を図示されない手段により別途入力し、この入力に応じて上記しきい値角度を設定するようになっている。例えば、運搬荷物のない場合は、車両のみの重心位置に応じた所定のしきい値となり、一方、車両の上方に荷物を1個積載した場合は、重心が高くなって小さなしきい値となり、逆に車両の下方に荷物を1個積載した場合は、重心が低くなって大きなしきい値となる。また、しきい値角度をこのように車両全体の重心位置に応じて変化させず、安全を見込んで所定の小さなしきい値角度に設定することもできる。そして、"横転"と判断すると作動信号を前記半導体スイッチSW1〜SW8、及び電磁弁35に出力するようになっている。電磁弁35は常時は閉じており、前記作動信号を入力されると開くようになっている。
【0019】
つぎに、このような構成の乗員保護装置の作動を図1乃至図3に基づき説明する。図1において、いま車両21がi方向に傾いたとする。そして、その傾きが限度を超えて横転すると、図3において、角度センサSからの角度信号に基づき判断回路34が横転を検知し、作動信号を半導体スイッチSW1〜SW8、電磁弁35に出力する。すると、半導体スイッチSW1〜SW8が導通し、定電圧回路33から電流が各スクイブQ1〜Q8に供給されて(Igはオンされている)各ガス発生器が作動し、図2において、該ガス発生器からガスを供給されてエアバッグ4〜11が図示するように展開する。これにより、乗員3はこれらのエアバッグ4〜11に囲まれて体を保持され、該エアバッグ4〜11がクッションとなって横転時の衝撃から保護される。一方、電磁弁35が開いて運転室1が外部と連通し、各エアバッグ4〜11の展開により運転室1の内圧が上昇するのが防止され、該内圧上昇により例えば鼓膜破裂等、乗員3へ悪影響を与えるのが防止される。つぎに、車両21が傾いたが、所定のしきい値を超えず元の状態に復帰した場合は、判断回路34は作動信号を出力しない。このように、角度センサSを用いて車両21の傾きの程度に基づき横転の程度を判断すると、横転か否かの判断を適切かつ早期に判断することができる。
【0020】
ここで、運転室1は乗員の前方(ii方向)に向かって倒れるが、乗員3の後方に位置するエバッグ9をも展開させている。横転時の衝撃により、乗員3の前方に位置するエアバッグ10、11で乗員3が後方に撥ね飛ばされることがあるので、この撥ね飛ばされた乗員3をエアバッグ9で受け止めるため、このように、乗員3の横転方向の後方に位置するエアバッグ9も展開させるのが好ましい。なお、簡略化する場合は、乗員3の前方に位置するエアバッグ10、11のみを展開させることとしてもよい。また、本実施例では車両21の横転により全エアバッグ4〜11が展開するので、車両が上記と反対方向に横転する場合も、上記と同様に作動する。
【0021】
つぎに、変形例について説明する。前述のように、乗員3の横転方向前方に位置するエアバッグのみを展開させる場合は、判断回路34が角度センサSからの角度信号の正負の符号により横転方向を判断し、乗員3の横転方向後方に位置するエアバッグには作動信号を出力しないようにする。このようにすると、展開するエバッグを節約することができる。また、上述の場合に、乗員3の横転方向の後方に位置するエアバッグ(横転方向が ii方向の場合はエアバッグ9、i方向の場合はエアバッグ10、11)を他のエアバッグより少し遅れて展開するようにすることもできる。この場合には、図3において判断回路34は、横転方向を判断し、該横転方向により、半導体スイッチSW6又は7、8への作動信号を他の半導体スイッチSWへの作動信号より所定時間遅れて出力するようにする。このように構成することにより、前方に位置するエアバッグで撥ね飛ばされた乗員を、後方に位置するエアバッグ9で、より適切なタイミングで受け止めることができる。このように必要に応じて車両の横転方向を判断することで、よりきめ細かなエアバッグの展開を行うことができる。
【0022】
また、図4に示すように、コンテナキャリア31には、運転室1の乗員3が図1と異なり車両の前方を向いて着座するタイプのものがある。この場合も、図2に示す如く乗員3を包むようにエアバッグ4〜11を配置することにより本発明を上述の場合と同様に適用することができ、同様の効果が得られる。また、運転室の内圧を逃がす手段として、図2の通気孔と電磁弁35による構成に代えて、判断回路34からの作動信号に基づきピン等のアクチュエータを作動させてガラス壁を割るような構成としてもよい。
【0023】
なお、上述の実施例では、本発明の乗員保護装置をコンテナキャリアに適用した場合を説明したが、本発明の乗員保護装置は、これに限定されず、転倒又は衝突による衝撃を受ける迄に時間的余裕がある場合、高所作業用の構造物(車両を含む)に適用することができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の乗員保護装置は上述のように、車両の傾きの程度を検出する角度センサと、運転室の壁面等と乗員との間に展開して乗員のクッションとなるエアバッグと、角度センサで検出された車両の傾きの程度に基づき横転不可避を判断し、横転不可避を検知すると前記エアバッグのうち、少なくとも乗員の横転方向前方に位置するエアバッグをトリガして展開させる判断回路とを設けたものであるため、車幅より車高の方が大きく、運転室が上方に設けられている車両が横転した時であっても、横転か否かの判断を適切かつ早期に判断することができ、かつ横転を検知すると、乗員の横転方向前方に位置するエアバッグを運転室の壁面又は装備等と乗員との間に展開させて乗員のクッションとなし、乗員を適切に保護することができる。
【0025】
また、上記判断回路は、乗員の横転方向後方に位置するエアバッグをもトリガして展開させるものとすると、車高が大きいことから横転時の衝撃衝撃により、乗員の横転方向前方に位置するエアバッグで撥ね飛ばされる乗員を該横転方向後方に位置するエアバッグで受け止めて適切に保護することができる。
【0026】
また、上記エアバッグは通気孔を有しないものとすると、通常の背の低い車両に比べゆっくり倒れる上記車高の大きい車両において、エアバッグ始動から横転により実際に衝撃が乗員に加わるまでの相対的に長い時間中、エアバッグの圧力を所望の値に保持することができる。
【0027】
また、前記運転室の内圧を逃がす手段を設けたものとすると、運転室が密閉状態にあるときでもエアバッグの展開による運転室の内圧上昇を防ぐことができ、この内圧上昇による乗員への悪影響を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乗員保護装置が適用されるコンテナキャリアを模式的に表した上面図及び該上面図のA矢視図である。
【図2】エアバッグの配置状態を示す図1のB矢視図及び該B矢視図のC矢視図である。
【図3】乗員保護装置の制御回路を示すブロック図である。
【図4】本発明の乗員保護装置が適用される他のタイプのコンテナキャリアを模式的に表した上面図である。
【符号の説明】
S 角度センサ
1 運転室
3 乗員
4〜11 エアバッグ
21、31 コンテナキャリア(車両)
34 判断回路
35 電磁弁(内圧を逃がす手段)
Claims (4)
- 車幅より車高の方が大きく、運転室1が上方に設けられている車両21が横転した時の乗員保護装置において、
前記車両21の傾きの程度を検出する角度センサSと、
前記運転室1の壁面又は装備等と乗員3との間に展開して乗員3のクッションとなるエアバッグ4〜11と、
前記角度センサSで検出された車両21の傾きの程度に基づき横転の不可避を判断し、横転不可避を検知すると前記エアバッグ4〜11のうち、少なくとも乗員3の横転方向前方に位置するエアバッグをトリガして展開させる判断回路34と、
車両全体の重心位置を入力する入力手段とを備え、
前記判断回路34は、角度センサSから角度信号が入力されると、該角度信号に基づき車両の傾きの角度を予め設定されたしきい値と比較し、該角度がこのしきい値を超えると " 横転 " と判断し、
前記しきい値は、前記入力手段によって入力された車両全体の重心位置に応じて設定されることを特徴とする乗員保護装置。 - 前記判断回路34は、乗員3の横転方向後方に位置するエアバッグをもトリガして展開させることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
- 前記エアバッグ4〜11は通気孔を有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗員保護装置。
- 前記運転室の内圧を逃がす手段35を設けたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の乗員保護装置。
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