JP3558540B2 - 油脂の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帆立貝中腸腺から分離された粗油を精製する油脂製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イワシ、イカ等の魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(以下、EPAと略記する)及びそのグリセリドは、血栓形成の抑制、血中コレステロールを低下させる作用があり、心筋梗塞、動脈硬化等の予防に効果があることが知られている。ところが、前記魚油に含まれるEPAは濃度が低く、熱劣化等を起こすことなく効率よく抽出するためには、予めEPA濃度が特定の範囲になるように調整した魚油を高真空下に蒸留する等の特殊な方法によらなければならないとの問題がある。
【0003】
一方、帆立貝の中腸腺には、イワシ、イカ等の魚油よりも高濃度のEPA及びそのグリセリドが含有されていることが知られている。帆立貝は養殖が可能であるため、近年、市場に大量に供給されているが、通常の食用に供される部分は貝柱の部分だけであり、その他貝殻や、中腸腺(所謂ウロ)、外套膜(所謂ヒモ)等の内臓残渣は廃棄されている。前記廃棄される内臓残渣は、焼却、埋め立て等により処理されているが、焼却する場合にはその経費が帆立貝加工業者に少なからぬ負担となり、埋め立てする場合には前記残渣に含まれる重金属による土壌の汚染、前記残渣の腐敗臭等により環境汚染を生じる虞れがある。
【0004】
そこで、前記帆立貝中腸腺に高濃度で含有されているEPA及びそのグリセリドを抽出して有効利用することが検討されており、かかるEPA及びそのグリセリドの抽出方法として、例えば、本出願人の出願になる特願平9−305683号明細書に記載された方法がある。
【0005】
前記明細書に記載された抽出方法は、帆立貝中腸腺を蒸し焼きにした後、水中で煮取りし、前記煮取り後の液から固形物を除去して分離された液体成分をそのまま、あるいは酸性条件下に遠心分離にかけることによりEPA及びそのグリセリドを含む油脂成分を分離するものである。EPA及びそのグリセリド等の油脂は、帆立貝中腸腺の組織内ではタンパク質と結合していると考えられる。そこで、前記明細書記載の方法では、煮取りを行う前に予め帆立貝中腸腺を蒸し焼きにすることにより、EPA及びそのグリセリド等の油脂と前記タンパク質と結合を切断することができ、前記煮取りにより高収率で前記油脂を抽出することができる。
【0006】
また、前記煮取り後の液に含まれる前記油脂は、該液から前記中腸腺の残渣等の固形物を除去して液体成分を分離したのち、該液体成分を遠心分離にかけることにより水性成分と分離される。前記液体成分はそのまま遠心分離にかけてもよいが、前記煮取りにより抽出された油脂は、前記水性成分と乳化してエマルジョンを形成し、遠心分離にかけても分離されにくい。そこで、前記明細書記載の方法では、前記液体成分を酸性条件下で遠心分離にかけることにより前記乳化を防止して、遠心分離により前記油脂を分離しやすくすることができる。
【0007】
しかしながら、前記明細書に記載された方法により得られたEPA及びそのグリセリドは、帆立貝が主食とする植物性プランクトンに由来するクロロフィルの色素が前記中腸腺に濃縮されるために、前記イワシ、イカ等の魚油から得られるものに比較して濃く着色しており、健康食品、化粧品や薬品に使用する場合、そのままでは製品価値が低いとの不都合がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、帆立貝中腸腺から抽出された油脂の着色を低減し、エイコサペンタエン酸及びそのエステルを高濃度に含有する油脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の油脂の製造方法は、蒸し焼きされた帆立貝中腸腺を水中で煮取りし、前記煮取り後の液から固形物を除去して液体成分を分離し、該液体成分を酸性条件下に遠心分離にかけて分離することにより帆立貝中腸腺から抽出された粗油を中和すると共に、中和された粗油から溶媒抽出により色素成分を除去して脱色する工程と、脱色された粗油をさらに真空蒸留により精製する工程とからなることを特徴とする。
【0010】
本発明の油脂の製造方法において、前記粗油は、蒸し焼きされた帆立貝中腸腺を水中で煮取りし、前記煮取り後の液から固形物を除去して液体成分を分離し、該液体成分を酸性条件下に遠心分離にかけて分離することにより抽出することができる。
本発明の油脂の製造方法では、帆立貝中腸腺から抽出された粗油を原料とする。前記粗油は、EPA及びそのグリセリドを高濃度で含むが、帆立貝が主食とする植物性プランクトンに由来するクロロフィル色素のために濃く着色している。そこで、本発明の油脂の製造方法では、前記のようにして抽出された粗油をまず中和して該粗油が多く含む遊離脂肪酸を除去するとともに、中和された粗油から溶媒抽出により色素を分離する。
前記遠心分離にかける際の酸性条件により残存する酸は、前記遊離脂肪酸の中和操作により同時に中和される。
【0011】
前記のようにして中和された粗油に含まれる前記色素は水性アルコール等の極性の大きい溶媒に溶解しやすく、一方EPA及びそのグリセリド等の油脂成分は極性の小さい溶媒に溶解しやすい。そこで、前記のようにして中和された粗油から、極性の異なる2種の溶媒を用いる溶媒抽出により、前記色素を分離除去することができる。
【0012】
前記色素が除去された粗油は、次いで真空蒸留により精製することにより、前記油脂成分がほぼ炭素数毎に分離され、着色が少なく、EPA及びそのグリセリドを高濃度で含む油脂を得ることができる。
【0014】
本発明の油脂の製造方法において、前記溶媒抽出は、極性値が0〜0.4の範囲にある第1の溶媒に前記粗油中の油脂成分を溶解せしめると共に、極性値が0.6〜0.9の範囲にある有機溶媒と、該有機溶媒の1.5〜4.0重量倍の水との混合溶媒であって、第1の溶媒と相溶性を備える第2の溶媒に前記色素成分を溶解せしめることを特徴とする。前記第1の溶媒は極性値が0.4を超えると、前記色素成分が溶解して前記色素成分と該油脂成分とを十分に分離することができなくなる。他方、前記第2の溶媒は極性値が前記範囲にある有機溶媒を含むと共に、前記第1の溶媒と相溶性を備えることにより、前記油脂成分中に溶解している前記色素成分を抽出することができる。前記第2の溶媒に用いる有機溶媒は、極性値が0.6未満では前記粗油中の油脂成分が溶解して前記色素成分と該油脂成分とを十分に分離することができず、0.9を超えると前記色素成分が溶解しにくくなる。さらに、前記第2の溶媒は、前記有機溶媒と前記範囲の水とが混合されている混合溶媒であることにより、溶媒抽出後に該第2の溶媒と前記第1の溶媒との2層に分離することができる。
【0015】
また、本発明の油脂の製造方法は、前記脱色された粗油中の油脂成分をエステル化した後、前記真空蒸留を行うことを特徴とする。前記油脂成分はエステル化することにより沸点が低下するので、前記真空蒸留をより低温で行うことができ、EPAの熱劣化を防止して、EPA及びそのエステルを高濃度で含む油脂を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態において帆立貝の中腸腺から粗油を抽出する工程を示すフローチャートであり、図2は図1示の工程で抽出された粗油を精製する工程を示すフローチャートであり、図3は図2示の工程に用いる真空蒸留装置の一構成例を示す説明図である。
【0017】
本実施態様の製造方法では、まず、容器に収容された帆立貝中腸腺を図1示の工程に従って蒸し焼きする。前記蒸し焼きは、帆立貝中腸腺が収容された容器を直接75〜125℃の範囲の温度で加熱することにより、容器内の温度が65〜95℃の範囲になるようにして、30〜75分間行う。
【0018】
次に、前記のようにして蒸し焼きにされた帆立貝中腸腺の2〜4重量倍の水を加え、攪拌しながら、90〜98℃の範囲の温度で30〜40分間加熱して煮取りを行う。前記煮取りが終了すると、前記水の液面に、前記帆立貝中腸腺から抽出された油脂が浮上して来る。
【0019】
前記煮取り終了後の固形分及び液体成分は、その全量を竪型円筒形のデカンターに移して、該液体成分を静置し、液面に浮上する前記油脂をデカンテーション(傾瀉分離)により分離回収することにより、煮取り終了時よりも前記油脂を多く含む濃縮液を得る。
【0020】
次に、前記濃縮液を遠心分離にかけ、粗油と水分とを分離する。このとき、該濃縮液のpHを約2〜4に調整して、遠心分離にかけることにより、該濃縮液の乳化を阻止して前記粗油と水分とを容易に分離することができる。前記濃縮液のpH調整は、該濃縮液に無機酸、例えばリン酸、希硫酸等を添加することにより行うことができる。
【0021】
前記濃縮液は前記遠心分離により、廃水を主とする重液と、油脂を含む軽液とに分離され、粗油が得られる。
【0022】
本実施態様の製造方法では、次に、図2に示すように前記粗油を中和し、脱色する。
【0023】
前記中和は、前記粗油を2.0〜10.0重量倍の溶媒に溶解し、該溶媒に水酸化ナトリウム等のアルカリを添加して、混合することにより行う。これにより、前記粗油に含まれる遊離脂肪酸及び遠心分離機による油水分離時に使用した酸が中和される。
【0024】
前記溶媒としては、水と相溶性のない極性値0〜0.4のものが適しており、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、ジエチルエーテル、クロロホルム、トルエン、ベンゼン等を挙げることができる。前記溶媒は、極性値が前記範囲となればよく、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
前記遊離脂肪酸を中和するためのアルカリは、粗油1kg当り、純水酸化ナトリウムとして20〜150gを添加する。
【0026】
次に、前記脱色は、前記中和された溶液に、極性値が0.6〜0.9の範囲にある有機溶媒と、該有機溶媒の1.5〜4.0重量倍の水との混合溶媒であって、前記極性値0〜0.4の溶媒と相溶性のある溶媒を添加、混合する溶媒抽出により行う。前記有機溶媒と水との混合溶媒は、前記粗油の0.5〜3.0重量倍の範囲の量で添加する。
【0027】
前記極性値が0.6〜0.9の範囲にある有機溶媒としては、エタノール、iso−プロパノール、n−プロパノール等を挙げることができる。前記溶媒は極性値が前記範囲となればよく、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
前記粗油を溶解した極性値0〜0.4の溶媒に、さらに前記有機溶媒と水との混合溶媒を加えて混合する溶媒抽出によれば、極性値0〜0.4の溶媒に前記粗油が溶解し、前記有機溶媒と水との混合溶媒に前記色素成分が溶解して、液層が上下2層に分離する。そこで、次に、前記上層から極性値0〜0.4の溶媒を回収することにより、前記粗油が分離される。前記脱色のための溶媒抽出は、回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。例えば、工業的には、攪拌槽に、粗油、極性値0〜0.4の溶媒、アルカリ、有機溶媒と水との混合溶媒を投入して攪拌した後、得られた混合液を遠心分離機にかけて2層の液を分離する等の方法で行うことができる。
【0029】
次に、前記のようにして回収された粗油を蒸留して、前記溶媒を除去することにより、脱色された粗油(処理油)を得る。
【0030】
前記処理油は、30〜35重量%のEPA及びそのグリセリドを含む他、炭素数20の他の油脂及びそのグリセリド、炭素数20前後の他の油脂及びそのグリセリドを含んでいる。そこで、本発明の製造方法では、前記処理油を真空蒸留することにより、EPA及びそのグリセリドを分離する。
【0031】
前記真空蒸留は、EPA及びそのグリセリドの沸点を低下させ、熱劣化を防ぐために、塔頂圧力0.1Torr以下で行う。また、塔底圧力が上昇すると塔底温度液が200℃を超え、EPA及びそのグリセリドが熱劣化を起こす虞がある。そこで、塔底温度を200℃以下、好ましくは190℃以下に抑えることにより、EPA及びそのグリセリドの熱劣化を防ぐことができる。
【0032】
また、前記真空蒸留に先立ってEPAをエステル化しておくと、さらに沸点を低下させることができ、EPA及びそのグリセリドの熱劣化防止に有効である。
【0033】
この結果、主留分として、EPA及びそのエステルを70〜90重量%の高濃度で含み、着色の少ない油脂を得ることができる。次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【0034】
【実施例1】
本実施例では、帆立貝中腸腺10kgを20リットルの容器に収容し、該容器を密閉した状態で75〜80℃の範囲の温度で加熱することにより、容器内温度を65〜70℃の範囲とし、前記範囲の容器内温度で40分間蒸し焼きにした。
【0035】
次に、前記のようにして蒸し焼きにされた帆立貝中腸腺を煮取り槽(ジャケット付き攪拌槽)に移し、3.0重量倍の水道水を加え、攪拌しながら、内部温度90〜98℃で30〜40分間加熱して、煮取りを行った。前記煮取り終了後、煮取り槽の内容物を全て、内径300mm、直胴部高さ600mmで底部が円錐型のオーバーフロー付竪型円筒形のデカンターに移した。
【0036】
次に、この内容物を静置して、下部層を固形分及び水とし、液面に粗油を浮上させ、少量の水を加えて粗油をデカンターの上部からオーバーフローさせて回収した。一方、固形分は水と共にデカンターの底部より抜き出した。抜き出した固形分及び水は、目開き1〜3mmのふるいを通過させて固形物と水とを分離し、分離した水は再度デカンターに戻した。このとき、回収した粗油の5〜10倍の水が同伴したが、回収した粗油は煮取り終了時の状態に較べて3〜5倍濃縮されていた。得られた粗油濃縮液は、リン酸を添加して約pH3に調整し、液温60℃、8000Gの遠心力で遠心分離機に掛けて粗油953gを分離した。前記粗油の油脂成分に関する組成の一例を表1に示す。また、比較のために、植物油としての大豆油、魚油としてのイワシ油の油脂成分に関する組成(松下七郎編「魚油とマイワシ」、p77.、恒星社厚生閣(1991))を併せて表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0003558540
【0038】
表1から、エイコサペンタエン酸(EPA)は、大豆油等の植物油には含まれず、イワシ油等の魚油には含まれるものの、その含有量は帆立貝中腸腺から抽出された粗油が優り、イワシ油の2倍程度であることが明らかである。
【0039】
次に、前記粗油900gをn−ヘキサン4.5リットルに溶解し、8重量%の水酸化ナトリウム水溶液0.9リットルを加えて、20リットルの攪拌槽中で混合して、前記粗油に含まれる遊離脂肪酸を中和した。次に、含水エタノール(エタノール:水=1:2.5)5.6リットルを加え、15秒混合し、15分間静置して、色素成分の溶媒抽出を行った。この結果、前記攪拌槽中の液は、上層(n−ヘキサン)と下層(含水エタノール)に分離し、前記粗油に含まれる色素成分が含水エタノールに溶解されて抽出され、上層のn−ヘキサン中に脱色された処理油が得られた。
【0040】
次に、上層及び下層の液をそれぞれ取出し、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去して、上層の液から脱色された処理油を回収した。また、下層の液からは、前記遊離脂肪酸のケン化物が回収された。
【0041】
次に、前記脱色された処理油100グラムにエタノール500ミリリットルとナトリウムエチラート10グラムとを添加して混合し、65〜70℃で30分間反応させた後、冷却することにより、該処理油に含まれる油脂をエステル化した。そして、エステル化された処理油100グラムを図3示の装置を用いて、真空蒸留した。尚、本実施例で用いた処理油の油脂成分に関する組成は、炭素数19以下の油脂成分56.3%、炭素数20の油脂成分35.2%、炭素数21以上の油脂成分8.5%であった。
【0042】
図3示の装置は、300ミリリットルガラス製蒸留フラスコ1と、蒸留フラスコ1に接続されたガラス製蒸留塔2と、蒸留塔2の塔頂部に接続された真空ポンプ3とからなり、蒸留塔2の塔頂部と真空ポンプ3との間にはガラス製コンデンサ4、ガラス製コールドトラップ5が配設されている。前記コンデンサ4には、留出成分を蒸留塔2の塔頂部に還流し、または分取する還流分配器6が接続され、還流分配器6には、いずれもガラス製で容量は50ミリリットルである初留受けフラスコ7、主留受けフラスコ8、後留受けフラスコ9がそれぞれ接続されている。また、前記蒸留塔2は、内径25mm、高さ270mmであり、直径25mm、高さ50mmのSUS製規則充填物(商品名:スルザーパッキンEX)が5個充填されており、理論段数は5〜8段である。
【0043】
次に、真空ポンプ3を作動させて塔頂圧力を0.01Torr以下にすると共に、前記蒸留フラスコ1を図示しない温度調節器付き伝熱式マントルヒータで加熱して、真空蒸留を行った。蒸留フラスコ1の加熱は熱分解物の生成を防ぐため、195℃以下とした。また、還流比は、初留カット時0.5、主留カット時1.0、後留カット時1.0とした。
【0044】
前記条件で、真空蒸留を行ったところ、主留カット時の塔頂温度は120〜122℃、蒸留フラスコ1内の液温190℃で、油脂成分に関する組成が、炭素数19以下の油脂成分5.4%、炭素数20の油脂成分83.0%、炭素数21以上の油脂成分11.6%であり、ガードナーNo.による色度が2.0の主留を得た。この主留の炭素数20の油脂成分中、EPAは、81.5%であった。
【0045】
本実施例で得られた各留分の油脂成分に関する組成を表2に示す。
【0046】
また、本実施例の原料及び主留の油脂成分に関する組成を表3に再掲すると共に、色度を表4に示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003558540
【0048】
【比較例1】
本比較例では、実施例1で得られた粗油に対して、中和及び溶媒抽出による脱色を行わなかった以外は、図3示の真空蒸留装置を用いて実施例1と同一の条件で真空蒸留を行ったところ、油脂成分については実施例1と同様の組成の主留が得られた。しかし、本比較例で得られた主留のガードナーNo.による色度は10.1で、着色が濃く製品価値の低いものであった。本比較例で得られた主留の色度を表4に示す。
【0049】
【比較例2】
本比較例では、イワシから抽出された粗イワシ油を用いた以外は、図3示の真空蒸留装置を用いて実施例1と同一の条件で真空蒸留を行った。本比較例で原料に用いた前記粗イワシ油の油脂成分に関する組成と、本比較例で得られた主留の油脂成分に関する組成を表3に、色度を表4に示す。
【0050】
【表3】
Figure 0003558540
【0051】
表3から、実施例1のように帆立貝中腸腺から抽出された粗油を真空蒸留により精製することにより、比較例2のように粗イワシ油を真空蒸留により精製する場合よりも、EPAを高濃度で含む油脂が主留として得られることが明らかである。
【0052】
【表4】
Figure 0003558540
【0053】
表4から、抽出後、溶媒抽出による脱色を行う実施例1によれば、該脱色を行わない比較例1に対して、格段に着色が少なく、イワシ油(比較例2)と同等の色度を得ることができることが明らかである。
【0054】
尚、本実施形態では、蒸し焼きされた帆立貝中腸腺から煮取りにより抽出された粗油を原料としているが、帆立貝中腸腺から別法により抽出された油脂を原料としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において帆立貝中腸腺から粗油を抽出する工程を示すフローチャート。
【図2】図1示の工程で抽出された粗油を精製する工程を示すフローチャート。
【図3】図2示の工程に用いる真空蒸留装置の一構成例を示す説明図。
【符号の説明】
1…蒸留フラスコ、 2…蒸留塔、 3…真空ポンプ、 6…還流分配器。

Claims (3)

  1. 蒸し焼きされた帆立貝中腸腺を水中で煮取りし、前記煮取り後の液から固形物を除去して液体成分を分離し、該液体成分を酸性条件下に遠心分離にかけて分離することにより帆立貝中腸腺から抽出された粗油を中和すると共に、中和された粗油から溶媒抽出により色素成分を除去して脱色する工程と、
    脱色された粗油をさらに真空蒸留により精製する工程とからなることを特徴とする油脂の製造方法。
  2. 前記溶媒抽出は、極性値が0〜0.4の範囲にある第1の溶媒に前記粗油中の油脂成分を溶解せしめると共に、極性値が0.6〜0.9の範囲にある有機溶媒と、該有機溶媒の1.5〜4.0重量倍の水との混合溶媒であって、第1の溶媒と相溶性を備える第2の溶媒に前記色素成分を溶解せしめることを特徴とする請求項1記載の油脂の製造方法。
  3. 前記脱色された粗油中の油脂成分をエステル化した後、前記真空蒸留を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の油脂の製造方法。
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