JP3557749B2 - 内燃機関用無接点点火装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、三相発電機を内蔵する内燃機関の逆転持続防止及び逆転ケッチン現象を防止する内燃機関用無接点点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関用無接点点火装置に関連する先行技術文献としては、特開昭63−277861号公報にて開示されたものが知られている。このものでは、三相磁石発電機の出力電圧とタイミングセンサ信号との位相関係により逆転検出する技術が示されている。
【0003】
また、特開昭63−280864号公報にて開示されたものが知られている。このものでは、三相磁石発電機出力の2相分を取出して、AND(論理積)をとる範囲を広げることで逆転時の点火を防止する技術が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前者においては、三相磁石発電機に接続される負荷及び回転数によってはその出力における正と負との角度幅に差が生じて正の角度幅が長くなり、更に、タイミングセンサに対向する突起幅が広いと、タイミングセンサ出力と三相磁石発電機出力のANDをとる範囲が非常に狭くなり、逆転失火できなくなるという不具合があった。
【0005】
また、後者のように、三相磁石発電機の2相分の位相を識別して出力端子を接続するものはコスト高となるという不具合があった。
【0006】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、三相発電機出力のうち1相分だけの出力とタイミングセンサ信号とで確実に位相検出でき、逆転時に失火可能な内燃機関用無接点点火装置の提供を課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の内燃機関用無接点点火装置によれば、点火信号発生回路で内燃機関の点火時期に対応して出力される点火信号に基づき点火回路で電源から給電され内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流が点火コイルに供給される。一方、失火制御信号発生回路では内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力が入力され、その交流出力波形に対して積分回路で積分動作が行われ、その積分出力が比較回路で所定の設定値と比較され、交流出力波形の後半または前半を示す制御信号が発生され、その制御信号に基づき点火阻止回路で点火信号発生回路から点火回路に与えられる点火信号が内燃機関の逆転時に失火され阻止される。このため、三相発電機の1相だけの交流出力で適切な角度幅の制御信号を得ることができ、内燃機関の正転時に点火回路に出力される点火信号が、内燃機関の逆転時にあっては阻止されることで確実に失火させることができる。
【0008】
請求項2の内燃機関用無接点点火装置によれば、点火信号発生回路で内燃機関の点火時期に対応して出力される点火信号に基づき点火回路で電源から給電され内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流が点火コイルに供給される。一方、失火制御信号発生回路では内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力が入力され、その交流出力波形が所定値を越える検出信号が信号出力回路から出力され、その検出信号に応答して積分回路で積分動作が行われ、その積分出力が比較回路で所定の設定値と比較され、交流出力波形の後半または前半を示す制御信号が発生され、その制御信号に基づき点火阻止回路で点火信号発生回路から点火回路に与えられる点火信号が内燃機関の逆転時に失火され阻止される。このため、三相発電機の1相だけの交流出力で適切な角度幅の制御信号を得ることができ、内燃機関の正転時に点火回路に出力される点火信号が、内燃機関の逆転時にあっては阻止されることで確実に失火させることができる
【0009】
請求項3の内燃機関用無接点点火装置によれば、点火信号発生回路で内燃機関の点火時期に対応して出力される点火信号に基づき点火回路で電源から給電され内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流が点火コイルに供給される。一方、失火制御信号発生回路では内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力が入力され、その交流出力波形のほぼ中央を示す特徴部分が波形検出回路にて検出され、交流出力波形の後半または前半を示す制御信号が発生され、その制御信号に基づき点火阻止回路で点火信号発生回路から点火回路に与えられる点火信号が内燃機関の逆転時に失火され阻止される。このため、三相発電機の1相だけの交流出力で適切な角度幅の制御信号を得ることができ、内燃機関の正転時に点火回路に出力される点火信号が、内燃機関の逆転時にあっては阻止されることで確実に失火させることができる
【0010】
請求項4の内燃機関用無接点点火装置では、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの点火信号発生回路が内燃機関の所定の回転角度位置を検出して点火信号を出力する固定点火位置回路を備えている。このような出力信号を発生する固定点火位置回路は構成が簡単であって、確実に点火信号を発生させることができる。
【0011】
請求項5の内燃機関用無接点点火装置では、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの失火制御信号発生回路で交流出力波形の正方向出力のほぼ中央から始まる制御信号または最初からほぼ中央までの制御信号が発生される。このように、制御信号の角度幅を交流出力波形の正方向出力のほぼ中央に対して前後で適宜設定できるため、点火回路への点火信号を内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0012】
請求項6の内燃機関用無接点点火装置では、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの比較回路の補正回路で内燃機関の回転数に応じて設定値が補正される。このため、より適切な角度幅の制御信号を得ることができ、点火回路への点火信号を内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0013】
請求項7の内燃機関用無接点点火装置では、請求項6の補正回路で前回の積分回路の積分出力に応じて設定値が補正される。このため、より適切な設定値となり、結果として適切な角度幅の制御信号を得ることができ、点火回路への点火信号を内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0014】
請求項8の内燃機関用無接点点火装置では、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの比較回路における補正回路で交流出力波形に応じて設定値が補正される。このため、より適切な角度幅の制御信号を得ることができ、点火回路への点火信号を内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0015】
請求項9の内燃機関用無接点点火装置では、請求項8の補正回路で前回の積分回路の積分出力に応じて設定値が補正される。このため、より適切な設定値となり、結果として適切な角度幅の制御信号を得ることができ、点火回路への点火信号を内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0016】
請求項10の内燃機関用無接点点火装置では、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの積分回路が内燃機関が最低使用回転数であるときに交流出力波形が所定値を越える時間幅より十分に長い時定数を持つものである。したがって、積分回路からの出力信号はその入力信号である三相発電機の1相だけの交流出力波形における時間幅分をほぼ立上がり時間とすることができ、比較回路で波形整形されたのちの制御信号の角度幅を狭めて後半の方にずらすことができる。更に、積分回路出力のピーク値を回転数に関わらずほぼ一定にできる。このため、比較回路の所定値を一定電圧とすることができ、補正回路を省いた簡単な構成で確実に逆転失火できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
〈実施の形態1〉
図1は本発明の第一の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の全体構成を示す回路図、図2は図1を動作させたときのタイムチャートであり、図2(a)は正転時、図2(b)は逆転時を示す。
【0020】
図1において、1は三相磁石発電機等の三相発電機、1a,1b,1cは三相発電機1の各相の電機子巻線である。三相発電機1の電機子巻線1a,1b,1cの各出力端子a,b,cは整流と定電圧出力のための出力制御回路2を介してバッテリ3及びバッテリ3に並列に接続されたランプ等の電気負荷4と接続される。このうち、三相発電機1の出力端子aは失火制御信号発生回路250を形成する積分回路300と接続される。また、三相発電機1に配設されたタイミングセンサ1fは点火制御回路200と接続されると共に、固定点火位置回路500と接続される。なお、三相発電機1の1相の出力端子aの交流出力波形(電圧信号)Vaとタイミングセンサ1fの電圧信号Vdとの位相関係は、図2に示すように予め設定されている。
【0021】
5は回路電源供給用のダイオードであり、ダイオード5はバッテリ3が逆接続されたときに回路を保護する。なお、本実施の形態では、バッテリ3及び三相発電機1の整流出力を電源としているが、バッテリ3または三相発電機1の整流出力のいずれか一方のみを電源としてもよい。6はDC−DCコンバータであり、DC−DCコンバータ6は点火回路100の点火用コンデンサ8を充電するための電流を出力する。点火回路100は、点火用コンデンサ8の他、後述の点火信号Vfを入力して点火開始するためのサイリスタ7、逆起電力を防止するダイオード9からなり、本実施の形態における点火回路100は容量放電点火回路を形成している。また、10は点火コイルであり、点火コイル10は鉄芯に巻回された1次側コイル11a及び2次側コイル11bからなる。12は点火プラグ、13は回路保護用抵抗、14はa相検出用抵抗である。
【0022】
点火制御回路200は点火時期等を制御し、定電圧Vccの出力端子も内蔵している。積分回路300は三相発電機1の出力端子aの出力信号Vaを抵抗15を介しコンデンサ18に充電し、出力が下がったときに抵抗17とダイオード16との直列回路及び抵抗15を介して放電するように構成されている。充電の時定数は、内燃機関の使用最低回転数における充電時間以上となるように予め設定されており、放電の時定数よりも大きく設定されている。
【0023】
また、失火制御信号発生回路250を形成する比較回路400は点火制御回路200からの定電圧Vcc出力を抵抗21と抵抗22とにより予め設定された分圧値である所定電圧の設定値Vrと積分回路300におけるコンデンサ18の充放電電圧信号Vbとをコンパレータ23にて比較する。20はコンパレータ23の入力保護用の抵抗、19はコンパレータ23の負入力保護用のダイオードである。
【0024】
固定点火位置回路500は抵抗24,25及びトランジスタ26からなり、タイミングセンサ1fからの電圧信号Vdの正方向の出力が所定値Vsに対応した矩形波Veを出力する。点火阻止回路600は抵抗30及びトランジスタ31からなり、比較回路400の制御信号VcがH(高)レベルで固定点火位置回路500の出力信号VeがL(低)レベルのときにダイオード32を介して点火回路100のサイリスタ7のゲートに点火信号Vfを出力する。
【0025】
次に、図2のタイムチャートを参照し、その動作について説明する。
【0026】
〈正転時の動作:図2(a)参照〉
正転時には各出力信号は、図2(a)のような位相関係となる。三相発電機1の出力端子aの出力信号Vaにより抵抗15を介しコンデンサ18が充電され、その出力信号Vaが下がったときは抵抗17とダイオード16との直列回路及び抵抗15を介しコンデンサ18が放電される。このコンデンサ18の電圧信号Vbがコンパレータ23で所定電圧の設定値Vrと比較され、コンパレータ23はコンデンサ18の電圧信号Vbが設定値Vr以下のときLレベル、設定値Vr以上のときHレベルの信号を出力する。
【0027】
一方、三相発電機1の出力に同期した突起1eによるタイミングセンサ1fからの出力信号Vdが抵抗24を介しトランジスタ26のベースに流れるとトランジスタ26はONとなり、タイミングセンサ1fの正方向の電圧幅が所定値Vsに対応したLレベルの矩形波Veが出力される。すると、トランジスタ31はOFFとなりそのコレクタ電圧は比較回路400のコンパレータ23の出力であるHレベルとなる。したがって、正転時には比較回路400の制御信号VcのHレベルと固定点火位置回路500の出力信号VeのLレベルが重なる範囲が存在するため、点火信号Vfが点火回路100に出力され点火動作が行われる。
【0028】
〈逆転時の動作:図2(b)参照〉
逆転時には各出力信号は、図2(b)のような位相関係となる。このときには、比較回路400の制御信号VcのHレベルと固定点火位置回路500の出力信号VeのLレベルとが重なる範囲が存在しないため、点火信号Vfは出力されず失火となる。
【0029】
ここで、上述の実施の形態における積分回路300の効果について、図1から積分回路300をなくした図3の回路図及びその動作状態を示す図4のタイムチャートを参照して説明する。なお、図3は図1の回路図から積分回路をなくした回路図で、図4は図3の回路動作を示すタイムチャートであり、図4(a)は正転時、図4(b)は逆転時を示す。
【0030】
積分回路がない図3の回路においては、点火信号Vfが図4(a)の正転時と同様に、図4(b)に実線で示すように、逆転時においても現出することとなり、逆転時に失火させることができない。積分回路がない図3の回路で逆転失火が成立するのは、図4(b)に破線でタイミングセンサ1fからの出力信号Vdを示すように、比較回路400の制御信号Vcが同じであるとすると、出力信号Vdの負方向出力から正方向出力までの角度幅が狭い、即ち、タイミングセンサ1fに対向する突起1e幅が小さい場合のみである。
【0031】
このように、図2及び図4のタイムチャートの比較から分かるように、図1の回路では積分回路300を用いて三相発電機1の出力信号Vaに対応する比較回路400の制御信号VcのHレベル幅を狭めて後ろの方にずらすことで、タイミングセンサ1fに対向する突起1eの幅が大きい場合でも逆転失火が可能となる。
【0032】
また、本実施の形態の構成では、以下に説明するように比較回路400の制御信号Vcの角度幅のバラツキが抑えられるため良好な逆転失火動作が行われる。
【0033】
三相発電機1の出力端子aの出力信号Vaは回転数に比例して大きくなる。これに対し積分回路300の充電時定数を充分大きく設定すると、そのピーク電圧Vpは回転数nに関わりなくほぼ一定となる(図2の信号Vb参照)。
【0034】
この理由を考えるに、簡単のため、三相発電機1の出力信号Vaに代えて矩形波とする。ここで、三相発電機1の極数を12−18極とすると、1相の電気出力1サイクルは機械角60°で正方向の角度幅は約40°となる。また、三相発電機1の出力電圧は低速においては回転数に比例する。そこで、1000rpmで14Vに達する割合で回転数に比例するとする。回転数n〔rpm〕に比例した電圧v(n) 〔V〕で機械角θ=40〔°〕の間、コンデンサ18を充電したとするとコンデンサ18のピーク電圧Vpは、次式(1)にて求められる。
【0035】
【数1】
Figure 0003557749
【0036】
ここで、v(n) =14n/1000,t=θ/6n=40/6nである。
【0037】
そこで、時定数τ〔s〕をパラメータとしてピーク電圧Vp〔V〕と回転数n〔×1000rpm〕との関係を示すと図5のようになる。
【0038】
図5は本発明の一実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置における時定数τをパラメータとしてピーク電圧Vpと回転数nとの関係を示す特性図である。
【0039】
300rpmで40°回転する時間〔s〕は0.022s、100rpmで40°回転する時間〔s〕は0.067sである。これに対し、図5から分かるように、時定数τを例えば、0.01sにすると、ピーク電圧Vpは回転数によって変わるため、積分回路300による充放電電圧信号Vbは図6に示すように変化する。ここで、所定電圧の設定値Vrを500rpmのときのピーク電圧Vpの1/2に設定し、実線は500rpm、一点鎖線は1000rpmのときの各状態を表している。
【0040】
図6は図5の特性を考慮した図1の回路動作を示すタイムチャートである。
【0041】
図6から、逆転時の1000rpmのときでは比較回路400の制御信号VcのHレベルの幅が広がって、固定点火位置回路500の矩形波VeのLレベルと重なる範囲が現れてくることが分かる。したがって、幅は狭いが点火信号Vfが現れてしまう。通常の点火信号より幅が狭くても、点火用サイリスタのトリガを行うに充分であれば点火してしまう。
【0042】
このように、充電時定数τが充分に大きくない場合には逆転失火動作の自由度が狭くなることがある。つまり、進角幅(タイミングセンサ1fからの出力信号Vdの負方向出力と正方向出力との間の角度に相当)を大きく取りたいときには、上記逆転失火動作を行える回転数範囲が狭くなり、逆にその回転数範囲を広く取りたいときには進角幅を狭くせざるを得なくなることがある。
【0043】
これに対し、時定数τを充分大きく、例えば、0.05sにすると、図5に示すように、300rpm以上ではピーク電圧Vpはほぼ一定となる。ピーク電圧Vpがほぼ一定であれば、比較回路400の所定電圧の設定値Vrを一定電圧としても、比較回路400の制御信号Vcの立上がり位置はほぼ同じとなるため、制御信号Vcの矩形波がなす角度幅を回転数に関わりなく一定とすることができる。したがって、図6において、1000rpmのときでも500rpmと同じく充放電電圧信号Vbは実線のようになり逆転失火動作が可能であることが分かる。
【0044】
また、比較回路400の制御信号Vcの矩形波がなす角度幅が多少変わっても問題がないときには100rpm以上からにも適用可能と考えられる。
【0045】
三相発電機1の出力端子aの出力信号Vaは実際には矩形波ではないが、時定数τの設定値によりピーク電圧Vpが回転数によらずほぼ一定となることは容易に推定できる。なお、積分回路300の時定数を、図2の信号Vbに示すように、充電側よりも放電側を小さくしてある理由は、次回の充電までに放電を終えることで次回の充電に影響を及ぼさないようにするためである。
【0046】
このように、本実施の形態の内燃機関用無接点点火装置は、内燃機関の点火時期に対応して点火信号Vfを出力する点火制御回路200及び固定点火位置回路500からなる点火信号発生回路と、バッテリ3より給電され前記内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流を点火信号Vfに基づき点火コイル10に供給する点火回路100と、前記内燃機関により駆動される三相発電機1の1相だけの交流出力を入力し、その交流出力波形Vaの後半または前半を示す制御信号Vcを発生する失火制御信号発生回路250と、失火制御信号発生回路250からの制御信号Vcに基づき前記点火信号発生回路から点火回路100に与えられる点火信号Vfを阻止する点火阻止回路600とを具備するものである。
【0047】
したがって、点火信号発生回路としての点火制御回路200及び固定点火位置回路500で内燃機関の点火時期に対応して出力される点火信号Vfに基づき点火回路100でバッテリ3から給電され内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流が点火コイル10に供給される。一方、失火制御信号発生回路250では内燃機関により駆動される三相発電機1の1相だけの交流出力が入力され、その交流出力波形Vaの後半または前半を示す制御信号Vcが発生され、その制御信号Vcに基づき点火阻止回路600で点火信号発生回路から点火回路100に与えられる点火信号Vfが内燃機関の逆転時に失火され阻止される。このため、三相発電機1の1相だけの交流出力波形Vaを用いて内燃機関の逆転時には点火信号Vfの点火回路100への出力を阻止して確実に失火させることができる。
【0048】
また、本実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における点火信号発生回路は、タイミングセンサ1fの出力信号Vdに基づき固定点火位置信号Veを出力する固定点火位置回路500を具備するものである。
【0049】
このような三相発電機1の出力に同期した1つの突起1eに対向して設けられるタイミングセンサ1fは構成が簡単であって、確実に出力信号Vdを発生させることができる。
【0050】
そして、本実施の形態の内燃機関用無接点点火装置の失火制御信号発生回路250は、交流出力波形Vaの正方向出力のほぼ中央から始まる制御信号Vcまたは最初からほぼ中央までの制御信号Vcを発生するものである。
【0051】
したがって、制御信号Vcの出力角度幅を交流出力波形Vaの正方向出力のほぼ中央に対して前後で適宜設定できるため、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0052】
加えて、本実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における失火制御信号発生回路250は、交流出力波形Vaが所定値としての0〔V〕を越える期間に対応して積分動作を行う積分回路300と、積分回路300の積分出力信号Vbを所定の設定値Vrと比較して制御信号Vcを出力する比較回路400とを具備するものである。
【0053】
したがって、失火制御信号発生回路250では、積分回路300で交流出力波形Vaが0〔V〕を越える期間に対応して積分動作が行われ、その積分出力信号Vbが比較回路400で所定の設定値Vrと比較され制御信号Vcが出力される。このため、制御信号Vcの角度幅をタイミングセンサ1fからの出力信号Vdに対して適切に設定でき、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0054】
ところで、上記実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における積分回路300は、その前段に図示しないコンパレータ等からなる信号出力回路を設け、三相発電機1の1相だけの交流出力波形Vaをその信号出力回路に入力させ、交流出力波形Vaが信号出力回路の比較電圧である所定値を越えることで検出信号を出力し、その電圧一定の検出信号に応答して定電圧による一定時定数の積分動作をさせることができる。これにより、より適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0055】
また、上記実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における比較回路400は、内燃機関の回転数に応じて設定値Vrを図示しないピークホールド回路等からなる補正回路で補正することで、より適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0056】
更に、上記補正回路は、前回の積分回路300の積分出力信号Vbに応じてそのピーク値の1/2に設定値Vrが補正されることで、より適切な設定値Vrとなり、結果として適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0057】
そして、上記実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における失火制御信号発生回路250は、三相発電機1の1相だけの交流出力波形Vaを積分回路でそのまま積分し、その積分出力信号Vbと設定値Vrとをコンパレータ等からなる比較回路で比較して制御信号Vcを出力するような回路構成とすることで、適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0058】
加えて、上記比較回路は、交流出力波形Vaに応じて設定値Vrをピークホールド回路等からなる補正回路で補正することで、より適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0059】
加えてまた、上記補正回路は、前回の積分回路300の積分出力信号Vbに応じて設定値Vrが補正されることで、より適切な設定値Vrとなり、結果として適切な角度幅の制御信号Vcを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0060】
更に、上記積分回路は、内燃機関が最低使用回転数であるときに交流出力波形Vaが所定値を越える時間幅より十分に長い時定数を持つものである。したがって、積分回路300からの出力信号Vbはその入力信号である三相発電機1の1相だけの交流出力波形Vaにおける時間幅分をほぼ立上がり時間とすることができ、比較回路400で波形整形されたのちの制御信号Vcの角度幅を狭めて後半の方にずらすことができる。更に、積分電圧Vbのピーク値を回転数に関わらずほぼ一定にできる。このため、比較回路の所定値を一定電圧とすることができ、補正回路を省いた簡単な構成で確実に逆転失火できる。
【0061】
次に、本発明の第一の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の変形例を示す図7の回路図に基づいてその相違点について説明する。
【0062】
図7は、図1における固定点火位置回路500と点火阻止回路600との間に微分回路550を配設し接続したものであり、図1と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略する。
【0063】
図7において、微分回路550はコンデンサ27、抵抗28及びダイオード29からなる。なお、ダイオード29は負方向出力を短絡することで点火阻止回路600のトランジスタ31のベースを保護するためのものである。
【0064】
この構成における動作について、図8を参照して説明する。図8は図7の回路動作を示すタイムチャートである。
【0065】
図7及び図8において、タイミングセンサ1fからの出力信号Vdの正方向出力が所定値Vsに対応し、立上がりに同期して微分回路550から幅の短い矩形波からなる出力信号Veが点火阻止回路600に出力される。即ち、微分回路550では、固定点火位置回路500のトランジスタ26がONしたときに微分回路550のコンデンサ27を介して点火阻止回路600のトランジスタ31のベース電位を瞬間的に下げるのみとなる。この出力信号Veは、図8に示すように、Lレベル出力の時間幅が上述の実施の形態よりも短いものである。よって、図7のタイミングセンサ1fに対向する突起1e幅が更に大きい場合においても、図8(b)に示すように、時間的な余裕が生じることで逆転失火が確実に行われる。
【0066】
このように、本変形例は、タイミングセンサ1fからの出力信号Vdが微分回路550で微分された出力信号Veを点火阻止回路600に入力するものである。これにより、出力信号VeにおけるLレベル出力の時間幅が短くされ、逆転時にはその出力信号VeのLレベル範囲と比較回路400からの制御信号VcのHレベル範囲とを確実に重ならないようにできるため逆転時には、より確実に点火信号Vfを発生しないようにでき逆転失火することができる。
【0067】
ところで、比較回路400のコンパレータ23の反転(−)入力端子側に印加される所定電圧の設定値Vrにヒステリシスを設けるようにすると、比較回路400からの出力信号を後ろ側に長く延ばすことが可能となるため、タイミングセンサ1fに対向する突起1e幅が更に広いものであっても対応できることとなる。
【0068】
また、上記実施の形態の点火回路100は、容量放電式としたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、点火コイル10の1次電流を遮断する方式のものであってもよい。このときには、DC−DCコンバータ6は不要となる。
【0069】
更に、上記実施の形態のタイミングセンサ1fは、その出力信号Vdを点火制御回路200と固定点火位置回路500とに並列に入力するものとしたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、固定点火位置回路500のみに入力し、点火阻止回路600で位相論理をとったのちの点火信号Vfを点火制御回路200に入力するようにしてもよい。
【0070】
〈実施の形態2〉
図9は本発明の第二の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の全体構成を示す回路図、図10は図9を動作させたときのタイムチャートであり、図10(a)は正転時、図10(b)は逆転時を示す。なお、図1と同様の構成または相当部分からなるものについては同一符号及び同一記号を付してその詳細な説明を省略する。
【0071】
以下、図1との相違点について説明する。
【0072】
図9において、三相発電機1の1相だけの出力端子aの交流出力波形Vaは、抵抗41,42で分圧されピークホールド回路43、コンパレータ45の反転(−)入力端子及びコンパレータ46の非反転(+)入力端子に入力されている。ピークホールド回路43からの出力信号は分圧回路44を介してコンパレータ45の非反転(+)入力端子に入力されている。また、コンパレータ46の反転(−)入力端子は0〔V〕に接地されている。このコンパレータ45からの出力信号はフリップフロップ回路47のリセット(R)端子に入力され、一方、コンパレータ46からの出力信号はフリップフロップ回路47のセット(S)端子及びNOTゲート48を介してピークホールド回路43のリセット(R)端子に入力されている。そして、フリップフロップ回路47の出力端子(Q)からの出力信号である制御信号QはANDゲート61に入力されている。
【0073】
また、タイミングセンサ1fからの出力信号Vdは、固定点火位置回路500及び微分回路550′を介してANDゲート61に入力され、そのANDゲート61からの出力である点火信号Vfは点火回路100のサイリスタ7のゲートに入力されている。
【0074】
次に、図10のタイムチャートを参照し、その動作について説明する。
【0075】
図10は図9の回路動作を示すタイムチャートである。
【0076】
各出力信号は正転時には図10(a)、また、逆転時には図10(b)のような位相関係となる。図9において、三相発電機1の出力端子aの交流出力波形Vaがピークホールド回路43にてピークホールドされ、分圧回路44で少しだけ下げたところの波形(図10に交流出力波形Vaとして破線にて表示)と元の波形Va(図10に交流出力波形Vaとして実線にて表示)とが比較回路45で比較される。すると、2つの波形が交差する交点が現れるため、この交点を捉えてフリップフロップ回路47がリセットされる。なお、フリップフロップ回路47は交流出力波形Vaの0〔V〕でセットされる。そして、フリップフロップ回路47からの出力波形である制御信号Q(図10に信号Qとして表示)とタイミングセンサ1fからの出力信号Vdが固定点火位置回路500で所定値Vsに対応して波形整形され微分回路550′で微分された短時間の矩形波Ve(図10に信号Veとして表示)とがANDゲート61に入力される。この結果、ANDゲート61から正転時には点火信号Vfが出力され、逆転時には点火信号Vfが出力されないため、内燃機関の逆転時には確実に失火させることができる。
【0077】
このように、本実施の形態の内燃機関用無接点点火装置における失火制御信号発生回路250′は、交流出力波形Vaのほぼ中央を示す特徴部分を検出して制御信号Qを出力するピークホールド回路43、分圧回路44、コンパレータ45,46、フリップフロップ回路47及びNOTゲート48からなる波形検出回路を具備するものである。
【0078】
したがって、失火制御信号発生回路では、波形検出回路で交流出力波形Vaのほぼ中央を示す特徴部分が検出され制御信号Qが出力される。このため、適切な時間幅の制御信号Qを得ることができ、点火回路100への点火信号Vfを内燃機関の逆転時に確実に阻止し失火させることができる。
【0079】
なお、交流出力波形Vaのほぼ中央を示す特徴部分は、上記実施の形態では、交流出力波形Vaの変化方向が正から負へ切換わった部分としたが、交流出力波形Vaの最大値部分等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第一の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の全体構成を示す回路図である。
【図2】図2は図1の回路動作を示すタイムチャートである。
【図3】図3は図1の回路図から積分回路をなくした回路図である。
【図4】図4は図3の回路動作を示すタイムチャートである。
【図5】図5は本発明の一実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置における時定数τをパラメータとしてピーク電圧Vpと回転数nとの関係を示す特性図である。
【図6】図6は図5の特性を考慮した図1の回路動作を示すタイムチャートである。
【図7】図7は本発明の第一の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の変形例を示す回路図である。
【図8】図8は図7の回路動作を示すタイムチャートである。
【図9】図9は本発明の第二の実施の形態にかかる内燃機関用無接点点火装置の全体構成を示す回路図である。
【図10】図10は図9の回路動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 三相発電機
1a,1b,1c 電機子巻線
1f タイミングセンサ
2 出力制御回路
3 バッテリ
4 電気負荷
6 DC−DCコンバータ
10 点火コイル
12 点火プラグ
100 点火回路
200 点火制御回路
250 失火制御信号発生回路
300 積分回路
400 比較回路
500 固定点火位置回路
600 点火阻止回路

Claims (10)

  1. 内燃機関の点火時期に対応して点火信号を出力する点火信号発生回路と、
    電源より給電され前記内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流を前記点火信号に基づき点火コイルに供給する点火回路と、
    前記内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力を入力し、その交流出力波形に対して積分回路を動作させ、その積分回路の積分出力を比較回路にて所定の設定値と比較し、前記交流出力波形の後半または前半を示す制御信号を発生する失火制御信号発生回路と、
    前記失火制御信号発生回路からの制御信号と前記三相発電機に配設されたタイミングセンサからの出力信号とに基づき前記点火信号発生回路から前記点火回路に与えられる前記点火信号を阻止する点火阻止回路と
    を具備することを特徴とする内燃機関用無接点点火装置。
  2. 内燃機関の点火時期に対応して点火信号を出力する点火信号発生回路と、
    電源より給電され前記内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流を前記点火信号に基づき点火コイルに供給する点火回路と、
    前記内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力を入力し、その交流出力波形が所定値を越える検出信号を信号出力回路から出力し、その信号出力回路からの検出信号に応答して積分回路を動作させ、その積分回路の積分出力を比較回路にて所定の設定値と比較し、前記交流出力波形の後半または前半を示す制御信号を発生する失火制御信号発生回路と、
    前記失火制御信号発生回路からの制御信号と前記三相発電機に配設されたタイミングセンサからの出力信号とに基づき前記点火信号発生回路から前記点火回路に与えられる前記点火信号を阻止する点火阻止回路と
    を具備することを特徴とする内燃機関用無接点点火装置。
  3. 内燃機関の点火時期に対応して点火信号を出力する点火信号発生回路と、
    電源より給電され前記内燃機関に供給する点火用高電圧を発生するための1次電流を前記点火信号に基づき点火コイルに供給する点火回路と、
    前記内燃機関により駆動される三相発電機の1相だけの交流出力を入力し、その交流出力波形のほぼ中央を示す特徴部分を波形検出回路にて検出し、前記交流出力波形の後半または前半を示す制御信号を発生する失火制御信号発生回路と、
    前記失火制御信号発生回路からの制御信号と前記三相発電機に配設されたタイミングセンサからの出力信号とに基づき前記点火信号発生回路から前記点火回路に与えられる前記点火信号を阻止する点火阻止回路と
    を具備することを特徴とする内燃機関用無接点点火装置。
  4. 前記点火信号発生回路は、
    前記内燃機関の所定の回転角度位置を検出して点火信号を出力する固定点火位置回路を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関用無接点点火装置。
  5. 前記失火制御信号発生回路は、前記交流出力波形の正方向出力のほぼ中央から始まる制御信号または最初からほぼ中央までの制御信号を発生することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関用無接点点火装置。
  6. 前記比較回路は、
    前記内燃機関の回転数に応じて前記設定値を補正する補正回路を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の内燃機関用無接点点火装置。
  7. 前記補正回路は、前回の前記積分回路の積分出力に応じて前記設定値を補正することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関用無接点点火装置。
  8. 前記比較回路は、
    前記交流出力波形に応じて前記設定値を補正する補正回路を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の内燃機関用無接点点火装置。
  9. 前記補正回路は、前回の前記積分回路の積分出力に応じて前記設定値を補正することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関用無接点点火装置。
  10. 前記積分回路は、前記内燃機関が最低使用回転数であるときに前記交流出力波形が所定値を越える時間幅より十分に長い時定数を持つことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の内燃機関用無接点点火装置。
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