JP3557647B2 - 電子楽器およびネットワーク演奏システム - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、複数の発音装置または発音手段(音源)を備え、発音する楽音の音色に基づいて最適な音源を選択して該楽音を発音する電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在種々の音源が実用化されている。たとえば、FM音源などの基本波合成系の音源、波形メモリ再生型の音源、物理シミュレーション音源などである。これらの音源はそれぞれ以下のような特徴を有している。FM音源では、パラメータ設定により種々の音色の楽音を発音することができ自然楽器にはない合成的音色が得意であるが、自然楽器に対する忠実度の高い楽音を合成することが困難である。波形メモリ再生型の音源では、手軽に高品質の楽音を得ることができるが、反面音色の変更の幅が小さいので自分の所望の音色を得ることができない場合がある。また、物理シミューレーション音源では、自然楽器の発音原理をシミュレートしているため高品質の楽音を得ることができ、且つ、パラメータの変更によって音色の加工も可能であるが、高速で複雑な演算が必要となるため高価であり、発音チャンネル数を多くとることができない。また現在、物理的にシミュレートできる楽器が管楽器系など特定のものに限られるため、発音できる音色の種類が多くない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、各音源は様々な特徴を有しているため、同じ音色名(ピアノなど)の楽音でもその音色がそれぞれ異なっている。また、同じ種類の音源であってもその仕様により音色が異なる。
【0004】
このため、例えば同じ「ピアノ」の音色であっても演奏する音楽のジャンル(クラシック,ジャズ,ポピュラー等)によってそれぞれ異なる音源が好ましい場合があり、また、アンサンブルやジャムセッションの演奏など、複数パートの音色を同時に発音する場合には、各パートの音色に好ましい音源がそれぞれ異なる場合がある。
【0005】
そこで、複数の音源を接続し、音色によって音源を指定して発音させる方式が考えられる。しかし、シーケンサなどの演奏データ(MIDIメッセージ)出力装置に複数の音源を単純に接続したのみでは、全ての音源が全ての演奏データに反応してしまい個別の指定ができない。特定の音源のみに楽音を発音させようとする場合、従来は、音源のMIDI受信チャンネルを限定し、シーケンサがそのMIDIチャンネルを用いて演奏データを送信することによってこれを実現していた。例えば、シーケンサが出力する演奏データを用いてピアノ系の楽音と管楽器系の楽音を異なる音源で発音させる場合、ピアノ系の楽音を発音させる音源のMIDI受信チャンネルを1チャンネルに設定し、管楽器系の楽音を発音させる音源のMIDI受信チャンネルを2チャンネルに設定し、さらに、ピアノ系の楽音のパート(トラック)の演奏データをMIDIの1チャンネルで出力し、管楽器系の楽音のパートの演奏データをMIDIの2チャンネルで出力するように設定することによって実現することができる。
【0006】
しかしながら、シーケンサが再生する全ての曲において各パートに同一音色が割り当てられているとは限らない。パートの音色が異なる場合に、曲毎にシーケンサまたは音源のMIDIチャンネル設定を変更することは極めて面倒である。また、曲中でパート(トラック)の音色が切り換えられる場合もあるが、曲の進行中にMIDIチャンネル設定を変更することは殆ど不可能であった。
【0007】
この発明は、楽音の音色により発音するべき音源を選択することができる電子楽器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の請求項1の発明は、複数音色の楽音の発音が可能な発音手段と、外部より発音情報が入力される発音情報入力手段と、前記複数音色のそれぞれについて発音すべきか否かを個別に指定する発音音色指定手段と、前記発音情報入力手段から入力された発音情報の音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていたとき、該発音情報を前記発音手段に入力して発音処理を行うとともに、当該音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていないとき、該発音情報に基づく発音処理を行わないよう制御する発音制御手段と、前記発音情報入力手段から入力された全ての発音情報を再度外部出力する発音情報出力手段と、を備えたことを特徴とする。
この出願の請求項2の発明は、複数音色の楽音の発音が可能な発音手段と、外部より発音情報が入力される発音情報入力手段と、前記複数音色のそれぞれについて発音すべきか否かを個別に指定する発音音色指定手段と、前記発音音色指定手段による音色の指定を有効または無効に設定する設定手段と、前記発音情報入力手段から入力された発音情報の音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていたとき、または、前記設定手段によって音色の指定が無効に設定されていたとき、前記発音情報入力手段から入力された発音情報を前記発音手段に入力して発音処理を行うとともに、前記設定手段によって音色の指定が有効に設定されており且つ当該音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていないとき、該発音情報に基づく発音処理を行わないよう制御する発音制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この出願の請求項の発明は、複数の発音装置と割当装置とからなり、該割当装置に、前記複数の発音装置が発音可能な音色のうちそれぞれの発音装置が発音すべき音色を指定する発音音色指定手段と、外部より音情報入力される発音情報入力手段と、該発音情報入力手段から入力された発音情報音色および前記発音音色指定手段が指定する音色に基づきその発音情報をどの発音装置に割り当てるべきかを指定する発音装置指定手段と、発音装置指定手段が指定した発音装置に該発音情報を送信する手段とを備えたことを特徴とする。
請求項4の発明は、演奏情報を発生する演奏情報発生装置と、それぞれ複数の音色の楽音を発生可能な複数の発音ユニットと、前記演奏情報発生装置が発生した演奏情報を前記複数の発音ユニットの何れかに割り当てるアサイナと、をネットワークで接続したネットワーク演奏システムであって、
前記アサイナは、各発音ユニットが発音可能な複数の音色のうち発音すべき音色を各発音ユニット毎に指定する発音音色指定手段と、前記演奏情報発生装置が演奏情報を発生したとき、この演奏情報の音色が発音すべき音色として指定されている発音ユニットにこの演奏情報を割り当てる割り当て手段と、を備え、
各発音ユニットは、それぞれ自分に割り当てられた演奏情報に基づいて楽音を発生することを特徴とする。
請求項5の発明は、前記発音音色指定手段は、各発音ユニットが発音可能な複数の各音色について、当該音色を発音しない第1の状態、当該音色を発音する第2の状態、あるいは、他の発音ユニットでの発音が不可能な場合に発音する第3の状態、のいずれかの状態を設定する手段であり、
前記割り当て手段は、前記演奏情報の音色について第2の状態が設定されている発音ユニットを検索し、該当する発音ユニットが検索され且つその発音ユニットが前記演奏情報を処理可能であれば当該発音ユニットに演奏情報を割り当て、該当する発音ユニットがない場合または該当する発音ユニットが前記演奏情報を処理可能でない場合には、前記演奏情報の音色について第3の状態が設定されている発音ユニットを検索し、検索された発音ユニットに前記演奏情報を割り当てる手段であることを特徴とする。
【0010】
【作用】
請求項1の発明では、発音手段が発音可能な複数音色のそれぞれについて発音すべきか否かを個別に発音音色指定手段が指定する。発音情報入力手段が外部より入力した発音情報から音色指定情報を読み出し、該音色指定情報が指定する音色が発音すべき音色か否かを前記発音音色設定手段に基づいて判断する。これにより発音すべきと判断された発音情報が前記発音手段に入力され発音処理が実行される。このように自己が発音すべき音色を設定しておくことにより、全ての発音情報(MIDIメッセージ)が入力されても、そのなかから発音すべき音色の発音情報のみを選択して処理を実行することができる。このような電子楽器をシーケンサに複数接続し、それぞれの発音音色指定手段の指定を異ならせておくことにより、シーケンサが出力する発音情報をその音色によってそれぞれ異なる電子楽器(音源)に発音させることができる。また請求項2の発明では、設定手段によって発音音色指定手段による音色の指定を無効にすることができ、発音音色指定手段の設定をくずさずに全ての音色の発音をさせることができる。
【0011】
請求項の電子楽器は複数の発音装置と割当装置とからなっている。このうち、割当装置は、前記複数の発音装置が発音可能な音色を知っており、そのうち各発音装置が発音すべき音色をそれぞれ指定する(発音音色指定手段)。外部より音色指定情報を含む発音情報を入力されたとき、この発音情報の音色指定情報が指定する音色を用いて前記発音音色指定手段を参照し、該発音情報をどの発音装置に割り当てるべきかを指定する。指定された発音装置に該発音情報を送信することにより、発音処理を実行する。これにより、発音装置は受信した発音情報を全て処理するという一般的な設定のままでも割当装置が発音装置を選択して発音情報を割り当てるため、音色に基づいて的確な発音装置に楽音を発音させることができる。
【0012】
【実施例】
図1〜図6は請求項1の実施例である自動演奏システムを説明する図である。図1は同自動演奏システムの構成を示す図である。演奏データをシーケンシャルに記憶・出力するシーケンサ4には、発音ユニットとして用いられる3台の電子楽器1,2,3が直列に接続されている。すなわち、シーケンサ4のMIDIOUT端子に電子楽器1のMIDIIN端子が接続され、電子楽器1のMIDITHRU端子に電子楽器2のMIDIIN端子が接続され、電子楽器2のMIDITHRU端子に電子楽器3のMIDIIN端子が接続されている。シーケンサ4は、複数パート(音色)の演奏データを読出クロックに基づいて読み出し、各パート毎に個別の(ch1〜ch16の)MIDIチャンネルを割り当ててMIDIメッセージとして出力する。電子楽器1,2,3の受信チャンネル設定は、最も一般的なモードである「OMNI_ON,POLYモード」に設定されている。このOMNI_ON,POLYモードは、全MIDIチャンネルのMIDIメッセージを受け付けて処理するモードである。ただし、後述の発音受付テーブルRCVの設定内容に基づき、音色によっては受け付けたMIDIメッセージの処理をスキップするようにしている。一方、これら電子楽器1,2,3に内蔵されている音源モジュールは、それぞれ音色番号1〜128の128音色を発音することができるが、その音色の配列はGM(General MIDI)規格により同一である。また、各音源モジュールは、FM音源,波形メモリ音源などそれぞれ異なる構成のものであり、電子楽器1,2,3の音源モジュールは、それぞれピアノ系,管楽器および打楽器系の音色の楽音を高品質に発音可能であり、電子楽器1,2,3は、それぞれピアノ系,管楽器および打楽器系の音色の楽音の発音を担当する。この割り当ては前記発音受付テーブルRCVに設定されている。電子楽器1,2,3の楽音信号出力端子はそれぞれミキサ5に接続されている。ミキサ5は各電子楽器1,2,3から入力される楽音信号をミキシングしてステレオのオーディオ信号としてPA装置等に出力する。
【0013】
図2は各電子楽器に設けられている操作パネルおよび発音受付テーブルを示す図である。これらは複数音色のうち発音すべき音色を指定するのに使用される。同図(A)は、操作パネルのディスプレイの一部および設定キー群を示している。ディスプレイ10には受付音色設定モード時の表示がなされており、音色番号1〜128の音色名と、この音色の演奏データを発音するか否か(YES(発音),NO(非発音))が一覧表示されている。利用者は、テンキーやカーソルキーを用いて設定を変更する音色の表示欄にカーソルを移動する。そこで、YESキーまたはNOキーをオンすると、そのキーオンに合わせて表示が変更される。また、ディスプレイ10の上端には全音色発音モード(ALL_TC)設定部が設けられている。この欄を選択して、YESキーまたはNOキーをオンすると、そのキー操作に合わせてこのモードがON/OFFする。この全音色発音モードがオンすると、そのときの音色番号1〜128のYES/NOの設定に拘らず、シーケンサ4によって指定された全ての音色を発音するようになる。この全音色発音モードは、本実施例のような複数の電子楽器(音源ユニット)で発音を分担するシステム構成から一時的に1台の電子楽器で全楽音を発音するシステム構成になったときに臨時にONされるものであり、それまでの設定をくずさずに臨時に全楽音を発音できるようにするものである。
【0014】
また、同図(B)は電子楽器の内部メモリに設定される発音受付テーブルおよび全音色発音フラグALL_TCを示す図である。発音受付テーブルは音色番号TC=1〜128の各音色に対応する発音受付フラグRCV(TC)の集合からなっている。このテーブルの書き換え、すなわち、RCV(TC)のセット/リセットはYESキー/NOキーのオンによって行われる。また、前記全音色発音モードがセットされるとALL_TCがセットされる。
【0015】
図3〜図6は、前記電子楽器の動作を示すフローチャートである。電子楽器1,2,3がそれぞれ独自にこの動作を実行する。
【0016】
図3はメインルーチンである。電子楽器の電源がオンされると、まず初期設定動作を実行する(n1)。初期設定動作とは、各種レジスタの初期化や楽音合成回路の初期化などの動作である。次に、パネル処理(n2)、鍵盤処理(n3)、MIDI処理(n4)、発音処理(n5)を繰り返し実行する。パネル処理は、上記受付音色テーブルRCVの設定動作を含み、パネル操作のスキャンや表示変更などの処理を行う。鍵盤処理は、該電子楽器に付属の鍵盤の鍵イベントを検出する動作である。検出された鍵イベントは発音バッファに書き込まれ、発音処理動作で処理される。なお、鍵盤のない電子楽器の場合にはこの動作は不要である。MIDI処理は、シーケンサ4から送られてくるMIDIメッセージを受信する処理である。発音処理は、発音バッファに書き込まれているイベントデータを処理して音源モジュールを制御する動作である。パネル処理動作(n2),MIDI処理動作(n4),発音処理動作(n5)について以下詳細に説明する。
【0017】
図4はパネル処理動作の一部である受付音色設定処理動作を示すフローチャートである。受付音色設定動作は、MODEキーをオンして受付音色設定モードになったとき上記メインルーチンのn2で実行される動作である。まず、操作パネルのキースキャンを行う(n10)。キースキャンの結果キー操作が何も行われていなければそのままリターンする(n11)。キー操作が行われていれば、どのキーが操作されたかをn12〜n15で判断する。音色番号の選択が行われた場合にはn12からn16に進む。音色番号の選択はテンキーおよびENTERキーを用いて音色番号を直接入力する方式やカーソルキーを用いて所望の音色番号の表示欄を選択する方式がある。n16では、選択された音色番号をTCにセットし、ALL_TC欄が選択されていることを示すフラグATCをリセットする。こののち、カーソルの表示を該表示欄に移動する(n17)。一方、ALL_TC欄が選択された場合には(n13)、ATCをセットするとともに(n18)、カーソルの表示をALL_TC欄に移動する(n19)。
【0018】
また、YESキーがオンされた場合には(n14)、ATCを判断する(n20)。ATC=0の場合には1〜128の何れかの音色番号TCが選択されているため、その音色番号に対応する発音受付フラグRCV(TC)をセットするとともに(n21)、ディスプレイのその音色番号のReceive欄にYESを表示する(n22)。ATC=1の場合にはALL_TC欄が選択されているため、全音色発音フラグALL_TCをセットするとともに(n23)、該表示欄にONを表示する(n24)。また、NOキーがオンされた場合も(n15)、まずATCを判断する(n25)。ATC=0の場合には選択されている音色番号のRCV(TC)をリセットするとともに(n26)、その音色番号のReceive欄にNOを表示する(n27)。ATC=1の場合にはALL_TCをリセットするとともに(n28)、該表示欄にOFFを表示する(n29)。
【0019】
図5(A)はMIDI処理を示すフローチャートである。また、同図(B)にMIDIメッセージのフォーマットの例としてノートオンイベントメッセージ,プログラムチェンジメッセージののフォーマットを示す。MIDIメッセージは1バイトのステータスバイト(第1バイト)および1〜数バイト(第2バイト以後)のデータバイトからなっており、ステータスバイトは該MIDIメッセージが何のためのメッセージであるか(ノートオン,プログラムチェンジ等)を示すバイトである。ステータスバイトは第1ビット(MSB)が必ず“1”であることに基づいて識別され、プログラムチェンジメッセージのステータスバイトはCnであり、ノートオンイベントメッセージのステータスバイトは9nである。nは該プログラムチェンジを行うMIDIチャンネル番号を示している。また、データバイトは、MSBが必ず0であることに基づいて識別され、プログラムチェンジのデータバイトは1バイトでありその数値で128種類(0〜127)の音色を指定する。さらに、ノートオンイベントメッセージのデータバイトは2バイトであり、1バイト目が音高を示すキーナンバデータであり、2バイト目がノートオンの強さを示すベロシティデータである。
【0020】
MIDIインタフェースには、MIDIケーブルを介して発音情報であるMIDIメッセージが入力されバッファに記憶される。このMIDIメッセージには音色指定情報であるMIDIチャンネル情報が含まれている。入力されたMIDIメッセージはバッファに記憶される。そこで、MIDIインタフェースのバッファをスキャンする(n30)。MIDIインタフェースのバッファにデータ(MIDIメッセージ)がある場合には、そのメッセージに含まれるMIDIチャンネル番号をMCHに記憶する(n32)。つぎに、このMIDIメッセージのステータスバイトに基づいてそのメッセージの内容を判断する(n33,n34)。プログラムチェンジ(PC)すなわち音色変更イベントの場合にはn33からn35に進む。n35以下では、MIDIメッセージの第2バイトに書き込まれている音色番号(PC番号)をPCNに記憶し(n35)、この音色番号に対応する発音受付フラグRCV(PCN)をこのMIDIチャンネルの発音可否フラグMCR(MCH)にセットする(n36)。RCV(PCN)は図2の動作において利用者が設定しているため、その設定に基づいてMIDIチャンネルの受付可否を設定する。このMIDIチャンネルの演奏データを受信したときこのMCR(MCH)に基づいて発音可否が判断される。つぎに、この音色番号PCNを音色番号レジスタTC(MCH)にセットする(n37)。あるMIDIチャンネルに音色番号PCNがセットされると、このチャンネルについては次にプログラムチェンジメッセージが送信されてくるまで、この音色番号PCNが維持される。一方、受信したMIDIメッセージがノートオンイベントデータであった場合には、そのMIDIメッセージが指定するMIDIチャンネルの発音可否フラグMCR(MCH)または全音色発音フラグALL_TCのいずれかが1であるかを判断する(n40)。すなわち、発音情報として入力されるMIDIメッセージに含まれているMIDIチャンネル番号MCHが、そのMIDIチャンネルにセットされている音色を指定する音色指定情報となっており、このMIDIチャンネル番号MCHに基づいて発音音色指定手段であるMCR(MCH)を参照し、発音すべきか否かを判断する。MCR(MCH)=1またはALL_TC=1であれば、このノートオンイベントデータの内容を対応するレジスタに取り込む(n41)。すなわち、KON情報をKEVに取り込み、キーコード情報(第1データバイト)をKCに取り込み、押鍵速度情報(第2データバイト)をVELに取り込む。次にこのMIDIチャンネルの音色番号TC(MCH)をTCレジスタに転記して(n42)、発音バッファにKEV,VEL,KC,TCを書き込む(n43)。後述の発音処理においてこのデータに基づく発音チャンネルの割り当てが行われる。受信したMIDIメッセージがプログラムチェンジイベントでもノートオンイベントでもない場合には対応するイベント処理を実行する(n38)。
【0021】
図6は、発音処理を示すフローチャートである。まず発音バッファをスキャンする(n50)。発音バッファにデータがある場合には、そのデータに対する発音チャンネルの割り当てを行う(n52)。割り当てられた発音チャンネルのチャンネル番号をACHにセットする。この発音チャンネルACHに対してKEV,VEL,KC,TCのデータを書き込む(n53)。この書き込みにより、発音チャンネルACHは楽音信号合成動作を開始する。こののち、n51にもどって、発音バッファにデータが残っているかを判断する。データが無くなるまでn52,n53のデータを実行する。データが無くなればn51の判断でリターンする。
【0022】
なお、図5のn38で処理されるその他イベントデータは、主として現在発音されている(ノートオンイベントデータが送られてきた)楽音に対するエフェクトやピッチベンドに関するイベントデータであるが、これらのイベントデータについてもMCR(MCH)=1またはALL_TC=1の場合のみそのデータを音源モジュールに送信するようにすればよい。
【0023】
図7〜図8は請求項2の実施例である自動演奏システムを説明する図である。図7は同自動演奏システムの構成を示す図である。この自動演奏システムでは、シーケンサ20,アサイナ21,発音ユニット22,23,24がネットワークを介して接続されている。各装置は通信モジュールを内蔵し、ネットワークを介して他の装置とデータの送受信をすることができる。シーケンサ20は自動演奏を実行するとき、演奏データを順次読み出し、読み出した全ての演奏データをネットワークを介してアサイナ21に送信する。この送信時のデータフォーマットは、必ずしもMIDI規格に準拠する必要はない。アサイナ21はシーケンサ20から受信した演奏データの内容を判断し、この演奏データに含まれる音色情報TCに基づいて処理を担当する発音ユニットを決定してその発音ユニットに対して該メッセージデータを送信する。すなわち、シーケンサ20が出力する演奏データ(ノートオンデータ)には必ず音色情報TCが含まれているものとする。各発音ユニット22,23,24は上記第1の実施例のような判断機能を持たず、ネットワークを介して受信した演奏データの内容を全て処理する。発音ユニット22,23,24は、第1の実施例と同様にそれぞれ異なる構成の音源モジュールを内蔵しており、このうち発音ユニット22の音源モジュールはピアノ系の音色で高品質の楽音信号を形成することができ、発音ユニット23の音源モジュールは管楽器系の音色で高品質の楽音信号を形成することができ、発音ユニット24の音源モジュールは打楽器系の音色で高品質の楽音信号を形成することができるものとする。発音ユニット22,23,24の楽音信号出力端子はそれぞれミキサ25に接続されている。ミキサ25は入力される楽音信号をミキシングしてステレオのオーディオ信号としてPA装置等に出力する。
【0024】
ここで、アサイナ21は、各発音ユニットに対応する発音受付テーブルRCVを別々に有している。この発音受付テーブルRCVが発音音色指定手段に対応する。アサイナ21は演奏データを受信するとその演奏データに含まれる音色情報TCを読み出し、この音色情報に基づいて発音受付テーブルRCVを検索して最適の発音ユニットを決定する。この発音ユニットに対して受信したメッセージデータを送信する。ここで、このアサイナ21に設定されている発音受付テーブルRCVは、第1の実施例と同様、128個の発音受付フラグRCV(TC)の集合からなっているが、本実施例のRCV(TC)は2値(1/0)のフラグではなく、0/1/2の値をとる3ステートフラグとなっている。RCV(TC)=0ならば、この音色TCは該発音ユニットでは絶対に発音しないことを意味する。RCV(TC)=1ならば、この音色TCは該発音ユニットで高品質な楽音信号を発音可能であることを意味する。また、RCV(TC)=2ならば、他のRCV(TC)=1の発音ユニットの発音チャンネルがふさがっている場合には、次善の策としてこの発音ユニットで発音可能であることを意味する。このフラグ設定は使用に先立ってユーザが行う。この実施例では、発音ユニット22,23,24に対応する発音受付テーブルRCVにおいては、それぞれピアノ系の音色,管楽器系の音色および打楽器系の音色の発音受付フラグRCV(TC)がセットされているものとする。
【0025】
なお、この実施例ではシーケンサ20−アサイナ21間の通信およびアサイナ21−発音ユニット22,23,24間の通信のデータフォーマットとしてMIDI規格と異なるデータフォーマットを採用している。これは、シーケンサ20は毎回音色データTCを送信するからであり、アサイナ21は発音ユニットに対して発音チャンネルを指定してデータを送信するためである。
【0026】
図8は前記アサイナ21のアサイン処理を示すフローチャートである。この動作は、シーケンサ20から演奏データとしてノートオンデータを受信したとき実行される動作である。まず、演奏データを入力して発音ユニット割当要求を受け付ける(n60)。演奏データの内容をそれぞれ対応するレジスタに記憶する(n61)。音色情報をTCに記憶し、キーコード情報をKCに記憶し、押鍵速度情報をVELに記憶し、KON情報をKEVに記憶する。こののち、この音色TCを高品質で発音可能な発音ユニットすなわちRCV(TC)=1の発音ユニットを検索し、さらに、その発音ユニットに空きチャンネルがあるか否かを判断する(n62)。すなわち、音色指定情報TCおよび発音音色指定手段RCVに基づいて発音ユニットを割り当てる処理を行う。該当の発音ユニットに空きチャンネルがある場合にはその情報を持ってn67にジャンプする(n63)。n62で空きチャンネルがない場合には、この音色TCを発音するにつき次善の発音ユニットすなわちRCV(TC)=2の発音ユニットを検索し、さらに、その発音ユニットに空きチャンネルがあるか否かを判断する(n64)。その発音ユニットに空きチャンネルがある場合にはそれらの情報を持ってn67にジャンプする(n65)。n64でも空きチャンネルを発見できなかった場合には、n66に進んで、RCV(TC)=1の発音ユニットの1つの発音チャンネルにトランケートをかけて空きチャンネルを作成し、その発音チャンネルに今回の発音を割り当てる。n67では発音を割り当てられた発音ユニットにチャンネル番号および上記n61で記憶された情報を送信して発音を開始させる。
【0027】
なお、この実施例では、アサイナ21が発音ユニットの発音チャンネルの割り当てを行い、割り当てられた発音チャンネル番号を発音ユニットに送信するようにしているが、アサイナ21−発音ユニット間のデータ送受信をMIDIフォーマットで行う場合には、この発音チャンネルの割り当てを先にシステムイクスクルーシブメッセージとして送信しておき、そののち、ノートオンメッセージを送信するようにすればよい。ネットワークを介した高速通信であるため、このような通信も可能である。
【0028】
また、トランケート処理は、そのとき最も発音レベルの低い発音チャンネルを強制的に消去してそのチャンネルに新たな発音データを割り当てる処理であるが、対象となっている発音ユニットにおいてどの発音チャンネルが一番低レベルであるかは、通信機能を用いてアサイナ21が音源ユニット側に問い合わせるようにすればよい。また、その発音ユニットの各発音チャンネルが現在発音中の音色と発音開始タイミングに基づいてどの発音チャンネルが最低レベルであるかをアサイナ21が推定するようにしてもよい。また、単純に後着優先で処理するようにしてもよい。
【0029】
このようにアサイナ21が受信した演奏データの転送先を判断し、特定の発音ユニットのみにその演奏データを送信するため、発音ユニット22,23,24は受信したデータを全て処理するという最も単純な設定でよい。
【0030】
なお、発音受付テーブルRCVを各電子楽器毎または各発音ユニット毎に複数ずつ設けてもよい。複数の発音受付テーブルをそれぞれ音楽のジャンル(例えば、クラシック,ジャズ等)に対応するように設定しておけば、テーブルの切り換えのみで種々のジャンルの音楽に対応することができる。
【0031】
また、本実施例では、発音しない場合には発音チャンネルを割り当てないようにしているが、発音チャンネルを割り当ててその音量を絞る方式や発音しない波形をわざと割り当てるなどの手法をとってもよい。
【0032】
第1の実施例では、同一の音色について複数の電子楽器のRCV(TC)をオンすることにより、この音色が複数の電子楽器から発音され重奏音効果を得ることができる。
【0033】
また、発音/非発音を各音色単位で設定するのに加えて、グループ(ピアノ,木管,金管など)などの大きな単位で設定できるようにしてもよい。この場合、音色単位の指定とグループの指定のいずれが優先するかを設定できるようにすることにより、音色単位の設定を優先する場合には個別の細かい設定が可能となり、グループの設定を優先する場合には素早い設定が可能となる。
【0034】
また、受付音色設定モード時以外にも、発音を音色を受け付けない音色名をディスプレイに異なる態様で表示し、受け付けないことを演奏者に明示するようにしてもよい。
【0035】
このように複数の電子楽器(発音ユニット)を組み合わせて使用することにより、他の電子楽器よりも少ない音色セットしか備えない電子楽器でも、その音色セットだけ発音するように設定して有効に利用することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、自己が発音すべき音色を発音音色指定手段によって指定されているため、全ての発音情報が入力されてもそれを発音すべきか否かを判断することができる。したがって、この発明の電子楽器を複数台接続してそれぞれ異なる発音音色設定をしておくことにより、これらに発音情報を入力するのみでふさわしい音色を自ら選択して発音することができる。また、どのようなパート割りをしている発音情報に対しても音色に基づいて判断するため、一旦設定すれば変更する必要がない。
【0037】
また、請求項2の発明では、割当装置が全ての発音情報を入力して、その発音情報の音色を発音するのに相応しい発音装置のみにその発音情報を出力するため、この割当装置でシステムを統一的に管理することができ、発音装置には何らの設定をする必要が無くなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の実施例である自動演奏システムの構成図
【図2】同自動演奏システムに用いられる電子楽器の操作パネル,発音受付テーブルを示す図
【図3】同電子楽器の動作を示すフローチャート(メインルーチン)
【図4】同電子楽器の動作を示すフローチャート(受付音色設定処理)
【図5】同電子楽器の動作を示すフローチャート(MIDI処理)
【図6】同電子楽器の動作を示すフローチャート(発音処理)
【図7】請求項2の実施例である自動演奏システムの構成図
【図8】同自動演奏システムに用いられるアサイナの動作を示すフローチャート(MIDI処理)
【符号の説明】
1,2,3−電子楽器
4,20−シーケンサ
21−アサイナ
22,23,24−発音ユニット

Claims (5)

  1. 複数音色の楽音の発音が可能な発音手段と、
    外部より発音情報が入力される発音情報入力手段と、
    前記複数音色のそれぞれについて発音すべきか否かを個別に指定する発音音色指定手段と、
    前記発音情報入力手段から入力された発音情報の音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていたとき、該発音情報を前記発音手段に入力して発音処理を行うとともに、当該音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていないとき、該発音情報に基づく発音処理を行わないよう制御する発音制御手段と、
    前記発音情報入力手段から入力された全ての発音情報を再度外部出力する発音情報出力手段と、
    を備えた電子楽器。
  2. 複数音色の楽音の発音が可能な発音手段と、
    外部より発音情報が入力される発音情報入力手段と、
    前記複数音色のそれぞれについて発音すべきか否かを個別に指定する発音音色指定手段と、
    前記発音音色指定手段による音色の指定を有効または無効に設定する設定手段と、
    前記発音情報入力手段から入力された発音情報の音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていたとき、または、前記設定手段によって音色の指定が無効に設定されていたとき、前記発音情報入力手段から入力された発音情報を前記発音手段に入力して発音処理を行うとともに、前記設定手段によって音色の指定が有効に設定されており且つ当該音色が前記発音音色指定手段によって発音すべき音色に指定されていないとき、該発音情報に基づく発音処理を行わないよう制御する発音制御手段と、
    を備えた電子楽器。
  3. 複数の発音装置と割当装置とからなり、
    該割当装置に、前記複数の発音装置が発音可能な音色のうちそれぞれの発音装置が発音すべき音色を指定する発音音色指定手段と、外部より発音情報が入力される発音情報入力手段と、該発音情報入力手段から入力された発音情報の音色および前記発音音色指定手段が指定する音色に基づきその発音情報をどの発音装置に割り当てるべきかを指定する発音装置指定手段と、発音装置指定手段が指定した発音装置に該発音情報を送信する手段とを備えたことを特徴とする電子楽器。
  4. 演奏情報を発生する演奏情報発生装置と、それぞれ複数の音色の楽音を発生可能な複数の発音ユニットと、前記演奏情報発生装置が発生した演奏情報を前記複数の発音ユニットの何れかに割り当てるアサイナと、をネットワークで接続したネットワーク演奏システムであって、
    前記アサイナは、
    各発音ユニットが発音可能な複数の音色のうち発音すべき音色を各発音ユニット毎に指定する発音音色指定手段と、
    前記演奏情報発生装置が演奏情報を発生したとき、この演奏情報の音色が、発音すべき音色として指定されている発音ユニットに、この演奏情報を割り当てる割り当て手段と、を備え、
    各発音ユニットは、それぞれ自分に割り当てられた演奏情報に基づいて楽音を発生するネットワーク演奏システム。
  5. 前記発音音色指定手段は、各発音ユニットが発音可能な複数の各音色について、当該音色を発音しない第1の状態、当該音色を発音する第2の状態、あるいは、他の発音ユニットでの発音が不可能な場合に発音する第3の状態、のいずれかの状態を設定する手段であり、
    前記割り当て手段は、前記演奏情報の音色について第2の状態が設定されている発音ユニットを検索し、該当する発音ユニットが検索され且つその発音ユニットが前記演奏情報を処理可能であれば当該発音ユニットに演奏情報を割り当て、該当する発音ユニットがない場合または該当する発音ユニットが前記演奏情報を処理可能でない場合には、前記演奏情報の音色について第3の状態が設定されている発音ユニットを検索し、検索された発音ユニットに前記演奏情報を割り当てる手段である
    請求項4に記載のネットワーク演奏システム。
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