JP3556836B2 - 金属板の格子状連結方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のラジエーターグリル、フェンス、窓面格子等の如く、複数の金属板を格子状に組付けて結合した金属板の格子状連結方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7および図8に示す車両のラジエーターグリルを例にとると、ラジエーターグリル1として、互いに平行に配した複数の帯状の金属板の横バー2を、これと交差する金属板からなるブラケット3により結合し、ブラケット3で車体に取付けた構造としたものがある。
【0003】
この種のラジエーターグリル1では一般に、各横バー2の後縁をブラケットの前縁に形成した嵌合溝30に嵌入し、両者2,3の嵌合連結部を溶接して結合している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、横バー2としては、特にこれを小間隔で多数枚配設した場合には一般に比較的薄いアルミニウム板を用いているので溶接熱による歪みが発生し、ラジエーターグリル1の見栄えを損ねるおそれがある。そこで本発明は、溶接によらずに、金属板を強固かつ作業性良好に格子状に連結する方法を提供することを課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
互いに交差する複数の第1および第2の金属板を嵌合させて格子状に連結するに際して、第1および第2の金属板の少なくとも一方の金属板の端縁には、他方の金属板の端縁に嵌入して他方の金属板をその両面から挟む嵌合溝を形成するとともに、上記他方の金属板の板面には、上記一方の金属板が嵌入されたときにその嵌合溝の開口端に対応する位置に凹所を形成する。そして、上記一方の金属板をその嵌合溝により上記他方の金属板に嵌入して格子状に組付ける。そしてプレス機として、下型ダイスと上型ポンチとからなり、下型ダイスには、スプリングにより上下動可能に支持せしめて上方に付勢した下型ダイス全長にわたる長さの製品払いと、該製品払いに隣接平行に下型ダイスに固定した平板状で先端に鋭利な刃を有するカシメ刃を具備し、下型ダイスの上面には所定の間隔をおいて複数の溝を形成したプレス機を用いて、上記他方の金属板に組付けられた複数の上記一方の金属板の上記端縁を上記下型ダイスの上記溝に差し込んで上記他方の金属板を上記製品払いの上に載置し、上記上型ポンチを下降させ上記格子状に組付けた金属板および上記製品払いを押し下げて、複数の上記一方の金属板の上記嵌合溝の開口端に近接する端縁に上記カシメ刃の先端を圧入し、上記端縁を変形させて上記凹所に喰い込ませ、上記他方の金属板に複数の上記一方の金属板を同時にかしめ結合する(請求項1)。複数の一方の金属板の端縁を他方の金属板の凹所へ同時に喰い込ませ、第1および第2の金属板を機械的に強固に連結することができる。
【0006】
上記凹所は、所定の間隔をおいて上記他方の金属板に嵌合した複数の上記一方の金属板の各々の嵌合溝の開口端に対応する位置に独立に形成する(請求項2)
【0007】
また、上記凹所は、所定の間隔をおいて上記他方の金属板に嵌合した複数の上記一方の金属板の各々の嵌合溝の開口端を横切るように一連に形成し、上記他方の各金属板の端縁を一連に形成した共通の凹所に喰い込ませるようにしてもよい(請求項3)
【0008】
上記嵌合溝の溝面を粗面に形成する(請求項4)。これにより第1および第2の金属板の連結部の摩擦抵抗を大きくする。
【0009】
上記第1および第2の金属板はアルミニウムの板で構成する(請求項5)。カシメ刃の圧入による金属板端縁の変形が容易である。
【0010】
上記第1の金属板は車両のラジエーターグリルの互いに平行に設けた横バーであり、上記第2の金属板は上記第1の金属板に交差して組付けられ第1の金属板を支持する取付ブラケットである(請求項6)。本発明は車両のラジエーターグリルの製作に好適に用いられ得る。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1ないし図4は、車両のラジエーターグリルの横バーとブラケットとの格子状の連結に本発明を適用した実施の形態を示すものである。横バー2Aは、アルミニウム材を引き出し成形した長尺薄肉の板材で、その前端縁21は若干下方に向かって幅広となっている。横バー2Aの前端縁21と平行な後端縁22には、ブラケット3Aと対向する位置に後端縁22と交差する方向に延びる嵌合溝4が形成してある。
【0012】
上記嵌合溝4は、例えばレーザーカットなどで切削して、切断面、即ち対向する溝面を粗面状に形成してある。嵌合溝4の深さ(長さ)は横バー2Aの幅のほぼ1/4の寸法としてあり、溝幅はブラケット3Aの板厚(約3mm)とほぼ同じ寸法ないしはブラケット3Aの板厚よりも若干狭く(0.1mm程度)形成してブラケット3Aを圧入可能としてある。
【0013】
一方、ブラケット3Aは、アルミニウム材をプレス成形した水平断面ほぼL字形の薄肉板材で構成してある。ブラケット3Aの前端縁31には、横バー2Aの嵌合溝4と対向する位置に前端縁31と交差する方向に延びる嵌合溝5が形成してある。嵌合溝5の深さ(長さ)は嵌合溝4の深さとほぼ同じ寸法としてあり、溝幅は横バー2Aの板厚(約2mm)とほぼ同じ寸法ないしは横バー2Aの板厚よりも若干狭く(0.1mm程度)形成して横バー2Aを圧入可能としてある。
【0014】
嵌合溝5を形成したブラケット3Aの一辺の板面32には嵌合溝5の延長線上の後方位置で、横バー2Aとブラケット3Aとを格子状に組付けた時に横バー2Aの嵌合溝4の開口端と対向する位置に浅い円形の凹所6Aが形成してある。凹所6Aの深さは0.1〜0.2mm程度としてあり、その径は横バー2Aの板厚と同じかそれよりも若干大きくしてある。ブラケット3Aの他辺は上記一辺に対してほぼ直角に屈折しており、車体に取付ける取付穴34が形成してある。
【0015】
横バー2Aとブラケット3Aは、両者の嵌合溝4,5同志を噛み合わせるよう互い前後方向に嵌入し、両嵌合溝4,5の溝底を互いに当接せしめて、嵌合溝4の開口端側の溝面でブラケット3Aをその両側から挟み込ませるとともに、嵌合溝5の開口端側の溝面で横バー2Aをその両面から挟み込ませることにより、互いに交差するように格子状に組付ける。このようにして、所定の間隔をおいて互いに平行に配した多数の横バー2Aと、横バー2Aよりも広い間隔で配した複数のブラケット3Aを格子状に組付ける。嵌合溝4,5は密嵌し、かつ、嵌合溝4の溝面を粗面としたので摩擦抵抗は高く、横バー2Aとブラケット3Aの嵌合ははずれない。
【0016】
横バー2Aの後端縁22の嵌合溝4の開口端はブラケット3Aの凹所6Aにかしめ結合してある。横バー2Aとブラケット3Aとは、図2に示すカシメ治具8を備えたプレス機によりかしめ結合する(図はプレス状態の断面を示す)。カシメ治具8は、格子状にブラケット3Aに組付けた複数の横バー2Aを受ける下型ダイス81と、横バー2Aを上から押さえ付ける上型ポンチ82を備えている。下型ダイス81の上端面には互いに平行な複数の横バー2Aの後端縁22を差し込む複数の溝83が所定の間隔をおいて横方向に形成してある(図はそのうちの一つを示す)。また、下型ダイス81の中央には縦方向に貫通溝84が形成してある。また、下型ダイス81の中央には、先端が断面ほぼ逆L字形で上下動可能な製品払い85がダイス全長に設けてあり、製品払い85はスプリング86により上方に付勢され、通常時は上限に位置している。また、製品払い85に隣接平行して、平板状で先端に鋭利な刃を形成したカシメ刃87が下型ダイス81に固定してある。カシメ刃87の先端は溝83の底面より上方に突出している。88は下型ダイス81の台座である。
【0017】
横バー2Aとブラケット3Aは格子状に組付けた状態で下型ダイス81にセットする。複数の横バー2Aを組付けたブラケット3Aを製品払い85の上面に載置し、ブラケット3Aの上記取付穴34に製品払い85の上面に突設したピン851を嵌合してブラケット3Aを位置決めする。また、横バー2Aはその後端縁22を下型ダイス81の溝83内に挿入する。この場合、横バー2Aはブラケット3Aを介して上限位置の製品払い85に支持され、横バー2Aの後端縁22は溝83の底面およびカシメ刃87より上方に位置している。
【0018】
そして、上型ポンチ82を下降させ、横バー2A、ブラケット3Aおよび製品払い85を押し下げる。上型ポンチ82の下降は横バー2Aの後端縁22が溝83の底面に当接するまで行われ、この時、カシメ刃87の先端が横バー2Aの後端縁22の嵌合溝4近接位置に圧入される。カシメ刃87の圧入により後端縁22には割り7Aが形成されて嵌合溝4開口端寄りの部分がブラケット3A方向に変形する。これにより嵌合溝4の一方の溝面がブラケット3Aの板面32に押し付けられ、嵌合溝4の両溝面でブラケット3Aの両板面32,33を挟み付ける。かつ、嵌合溝4の開口端の一方がブラケット3Aの凹所6A(図1)内に喰い込んで横バー2Aとブラケット3Aとは機械的にかしめ結合される。その後、上型ポンチ82が上昇すると、スプリング86の押し上げ力により結合された横バー2Aおよびブラケット3Aはセット位置まで押し上げられる。
【0019】
これによれば、横バー2Aとブラケット3Aとは、嵌合溝4による摩擦抵抗の大きいブラケット3Aの強固な挟み付けと、凹所6A内への嵌合溝4の開口端の喰い込みにより高い結合強度が発揮され、横バー2Aとブラケット3Aは強固に連結することができる。また、1回のプレス工程で一つのブラケット3Aに複数の横バー2Aを一度にかしめ結合できる。
【0020】
また、上述のブラケット3Aは断面L字形としてあるので、横バー2Aの後端縁22へのカシメ刃87の圧入は嵌合溝4の一方の側のみとしてあるが、図3に示すように、平坦なブラケット3Bを連結する場合には、ブラケット3Bの左右の板面32,33それぞれに凹所6Aを形成し、横バー2Aの後端縁22の嵌合溝4の両開口端の近接位置に一対のカシメ刃87を圧入して嵌合溝4の両側に割り7Aを形成して、嵌合溝4の両開口端をそれぞれ両板面32,33の凹所6Aに喰い込ませて強固にかしめ結合することができる。
【0021】
図4に横バー2Aとブラケット3Bをかしめ結合するカシメ治具8Aを示し、カシメ治具8Aの基本構造は先のカシメ治具8のそれとほぼ同一で、同一部材は同一符号で示し、相違点を中心に説明する。下型ダイス81Aの内部中央には、ブラケット3Bとほぼ同一な厚さの平坦な製品払い85Aが設けてあり、また、製品払い85Aの左右位置にカシメ刃87一対が下型ダイス81Aに固定してある。
【0022】
そして、横バー2Aとブラケット3Bを下型ダイス81Aにセットし、上型ポンチ82を下降させ、一対のカシメ刃87の先端をそれぞれ横バー2Aの後端縁22の嵌合溝4の両側位置に圧入する。そして、両開口端を両板面32,33の凹所6Aに喰い込ませることで、より結合剛性の高いかしめ結合となる。この場合、図5に示すように、凹所は貫通穴6A’でもよい。
【0023】
また、横バー2Aおよびブラケット3A,3Bの各々に相手方を嵌入する嵌合溝4,5を設けたが、横バー2Aのみに嵌合溝を設ける構造としてもよい。この場合、上記横バーの後端縁に上記ブラケットを嵌入する嵌合溝を形成し、ブラケットは、横バーに完全に嵌入されたときの横バーの嵌合溝開口端対応位置にかしめ用の凹所を設ける。
【0024】
図6に本発明の他の実施の形態を示し、先の実施の形態との相違点を中心に説明する。横バー2Bの後端縁22と、ブラケット3Cの前端縁31にはそれぞれ相対向する位置に嵌合溝4,5が形成してある。また、横バー2Bの下面24には、ブラケット3Cが嵌め込まれたときのブラケット3Cの嵌合溝5の開口端に対応する位置に、横バー2Bの長手方向に延在する一連の溝状凹所6Bが形成してある。溝状凹所6Bは、深さが0.1〜0.2mm程度としてあり、横バー2Bを引き出し成形する時に同時に形成される。
【0025】
そして、複数の横バー2Bとブラケット3Cとを格子状に組付け、プレス機によるプレス加工で、各ブラケット3Cの前端縁31の嵌合溝5の開口端近接位置に、カシメ刃を圧入して前端縁31に割り7Bを形成し、嵌合溝5の両溝面で各横バー2Bを強固に挟み付けるとともに各嵌合溝5の開口端を横バー2Bの溝状凹所6B内に喰い込ませて横バー2Bとブラケット3Cとを機械的に強固にかしめ結合する。
【0026】
凹所6Bは、横バー2Bの成形時に形成することができるので、凹所成形の作業工程を省くことができる。なお、製作されたラジエーターグリルのブラケット3Cの前端縁には割り7Bが残存するが、横バー2Bの前端縁21よりも奥まった場所にあるので、見栄えを損ねることはない。
【0027】
本実施の形態において、横バーの上下面にそれぞれブラケットの嵌合溝の上下の開口端をそれぞれ喰い込ませる溝状凹所を形成し、ブラケット前縁の嵌合溝に近い上下両側の位置にカシメ刃を圧入してかしめ結合してもよい。また、嵌合溝をブラケットの前端縁のみに形成し、ブラケットの前端の嵌合溝の近接位置にカシメ刃を圧入してかしめ結合してもよい。
【0028】
本発明において、凹所6A,6Bは摩擦抵抗の大きいロ−レット目状および筋目状に形成してもよい。
【0029】
【発明の効果】
本発明の連結方法によれば、互いに交差する金属板同志を機械的に、強固に連結することができ、車両のラジエーターグリル等の製作に好適で、ラジエーターグリルを見栄え良く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連結方法の第1の実施の形態を示すもので、図1(A)は連結前の金属板の斜視図、図1(B)は連結状態の斜視図、図1(C)は図1(B)のIC−IC線に沿う断面図である。
【図2】本発明の連結方法の実施に用いるプレス機のカシメ治具を示す断面図である。
【図3】本発明の連結方法の他の実施の形態を示すもので、図1(C)に対応する断面図である。
【図4】本発明の連結方法の実施に用いる他のプレス機のカシメ治具を示す断面図である。
【図5】本発明の連結方法の更に他の実施の形態を示すもので、図3に対応する断面図である。
【図6】本発明の連結方法の更に他の実施の形態を示すもので、図6(A)は連結前の斜視図、図6(B)は連結状態の斜視図、図6(C)は図6(B)のVIC−VIC線に沿う断面図である。
【図7】車両のラジエーターグリルを示す斜視図である。
【図8】従来のラジエーターグリルを示すもので、図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 ラジエーターグリル
2A,2B 横バー(第1の金属板)
22 端縁(後端縁)
23 板面
3A,3B,3C ブラケット(第2の金属板)
31 端縁(前端縁)
32 板面
4 第1の金属板の嵌合溝
5 第2の金属板の嵌合溝
6A 独立した凹所
6B 一連の凹所
8 カシメ治具
81,81A 下型ダイス
82 上型ポンチ
85,85A 製品払い
86 スプリング
87 カシメ刃

Claims (6)

  1. 互いに交差する複数の第1および第2の金属板を嵌合させて格子状に連結する金属板の格子状連結方法において、
    第1および第2の金属板の少なくとも一方の金属板の端縁には、他方の金属板の端縁に嵌入して他方の金属板をその両面から挟む嵌合溝を形成するとともに、上記他方の金属板の板面には、上記一方の金属板が嵌入されたときにその嵌合溝の開口端と対応する位置に凹所を形成し、複数の上記一方の金属板をその嵌合溝により上記他方の金属板に嵌入して格子状に組付け、
    プレス機として、下型ダイスと上型ポンチとからなり、下型ダイスには、スプリングにより上下動可能に支持せしめて上方に付勢した下型ダイス全長にわたる長さの製品払いと、該製品払いに隣接平行に下型ダイスに固定した平板状で先端に鋭利な刃を有するカシメ刃を具備し、下型ダイスの上面には所定の間隔をおいて複数の溝を形成したプレス機を用いて、
    上記他方の金属板に組付けられた複数の上記一方の金属板の上記端縁を上記下型ダイスの上記溝に差し込んで上記他方の金属板を上記製品払いの上に載置し、
    上記上型ポンチを下降させ上記格子状に組付けた金属板および上記製品払いを押し下げて、複数の上記一方の金属板の上記嵌合溝の開口端に近接する端縁に上記カシメ刃の先端を圧入し、上記端縁を変形させて上記凹所に喰い込ませ、上記他方の金属板に複数の上記一方の金属板を同時にかしめ結合することを特徴とする金属板の格子状連結方法。
  2. 上記凹所を、所定の間隔をおいて上記他方の金属板に嵌合した複数の上記一方の金属板の各々の嵌合溝の開口端に対応する位置に独立に形成した請求項1記載の金属板の格子状連結方法。
  3. 上記凹所を、所定の間隔をおいて上記他方の金属板に嵌合した複数の上記一方の金属板の各々の嵌合溝の開口端を横切るように一連に形成し、上記一方の各金属板の端縁を上記凹所に喰い込ませる請求項1記載の金属板の格子状連結方法。
  4. 上記嵌合溝の溝面を粗面に形成した請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属板の格子状連結方法。
  5. 上記第1および第2の金属板をアルミニウムの板で構成した請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の金属板の格子状連結方法。
  6. 上記第1の金属板は車両のラジエーターグリルの互いに平行に設けた横バーであり、上記第2の金属板は上記第1の金属板に交差して組付けられ第1の金属板を支持する取付ブラケットである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の金属板の格子状連結方法。
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