JP3556776B2 - 地下貯水槽用の積上げ部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下貯水槽の水溜め空間に並べて配備されかつ上下に段積みされる積上げ部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
特公平4−26648号公報にこの種の積上げ部材についての記載がある。この公報に記載されている積上げ部材は、多数の通水口が開設された複数の側壁を有する平面視多角形をなす中空の多角筒状体でなり、その複数の側壁は上窄まりまたは下窄まりに傾斜している。そして、この積上げ部材は、地中に凹入状に形成された上記水溜め空間の地表面での開口部を覆って配設されている透水層を下から支えることにより、その透水層に加わる荷重を受け止めることを役割の1つとして担っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載されている積上げ部材を積み上げたときには、それぞれの積上げ部材の側壁が傾斜した状態になるので、上記透水層に加わる垂直な下向き荷重が個々の積上げ部材の傾斜した側壁によって支えられることになるので、その荷重の大きさによってはその側壁が座屈を生じやすく、しかも仮に1つの側壁が座屈を生じるとその影響が他の側壁にも及んで他の側壁の座屈を招来しやすくなる。このような状況は、側壁の厚さを厚くすることによって多少は改善されるけれども、本質的な解決策とはなり得ない。
【0004】
また、上記公報に記載されている積上げ部材のように中空の多角筒状体を積上げ部材として用いると、1つの積上げ部材の嵩が大きいので工場から地下貯水槽の施工現場に搬送するための費用が高くつくばかりでなく、工場や施工現場での保管スペースとして広いスペースが必要になるので経済性に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、積み上げたときに側壁が垂直になって垂直な下向き荷重に対して大きな対抗力を発揮させることができるのみならず、施工現場で多角筒状体に組み立てることができ、嵩張らない形にして搬送したり保管したりすることのできる地下貯水槽用の積上げ部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る地下貯水槽用の積上げ部材は、地中に凹入状に形成された水溜め空間に並べて配備されかつ上下に段積みされる積上げ部材であって、多数の通水口が開設された複数の側壁を有しかつ向き合わせて突き合わせることによって複数の垂直な側壁を有しかつ平面視多角形をなす中空の多角筒状体を形成する対称形状の一対の合成樹脂製の分割体でなり、個々の分割体における分割箇所に相応する一方の端縁と他方の端縁とに振り分けて、互いに連結可能な形状の係合部と被係合部とが設けられており、上記多角筒状体の軸線方向での個々の上記分割体の一端側の辺部および他端側の辺部のそれぞれの全長部分に亘って支持面が具備され、上下に段積みされる2つの上記分割体の相互間では、下段側の分割体の他端側の辺部に具備された上記支持面に、上段側の分割体の一端側の辺部に具備された上記支持面が重なり合うように形成されている、というものである。
【0007】
この積上げ部材においては、一対の分割体のそれぞれに設けられている係合部と被係合部とを利用してその一対の分割体を連結することができる。そして、一対の分割体を連結することにより構成された積上げ部材の一端側の辺部と他端側の辺部のそれぞれには、一対の上記分割体のそれぞれの一端側の辺部と他端側の辺部とに設けられている支持面が位置するので、それらの支持面を利用して多数の積上げ部材を上下に段積みすることができる。そして、一対の上記分割体は、向き合わせて突き合わせることによって複数の垂直な側壁を有しかつ平面視多角形をなす中空の多角筒状体を形成するものであるので、その一対の分割体を連結して形成した積上げ部材の段積みすると、個々の積上げ部材の側壁のそれぞれは垂直になる。このため、透水層を介して積上げ部材に加わる垂直な下向き荷重に対して大きな対抗力を発揮する。
【0008】
また、個々の分割体は多数のものを同じ向きにして嵌合状に重ねることができる。
【0009】
本発明に係る積上げ部材においては、上記分割体が、互いに直交する2つの側壁を有するものであっても、あるいは、90度よりも大きい開き角度で連設された3つの側壁を有するものであってもよい。これらの積上げ部材においても上述したものと同じ作用が発揮される。
【0010】
本発明においては、上記係合部が、上記分割体の一方の端縁の全長部分に亘って設けられた係合溝部でなり、上記被係合部が、上記分割体の他方の端縁の全長部分に亘って設けられて上記係合溝部に上記多角筒状体の軸線方向にスライドさせることによってのみ嵌合可能な被係合突起でなるという構成を採用することができる。この積上げ部材によっても、上述したものと同じ作用が発揮される。
【0011】
本発明においては、複数の側壁のそれぞれに上記多角筒状体の軸線方向に延びるリブが設けられ、上記分割体の一端側の辺部および他端側の辺部のそれぞれの全長部分に具備された支持面が、それらの辺部のそれぞれに設けられたフランジ部の表面によって形成されていると共に、上記リブの一端部が上記分割体の一端側の辺部に設けられたフランジ部に連設され、上記リブの他端部が上記分割体の他端側の辺部に設けられたフランジ部に連設されている、という構成を採用することが望ましい。このようにしておけば、上記リブが下向き荷重に対する強度を高めることに役立つ。
【0012】
本発明においては、上記分割体の一端側の辺部に、その分割体が積み上げられる他の分割体の他端側の辺部に内嵌合される位置決め片が突設されている、という構成を採用することが望ましい。
【0013】
このようにしておけば、一対の分割体を連結することによって形成される当該積上げ部材を上下に段積みするときに、上記位置決め片を下段側の積上げ部材を構成している分割体の他端側の片部に内嵌合するだけで下段側の積上げ部材の上に積み上げた積上げ部材がその下段側の積上げ部材に対して位置決めされるので施工性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態である積上げ部材4を用いて施工した地下貯水槽Aを概略的に示した一部省略縦断面図、図2は地下貯水槽Aを概略的に示した平面構成図、図3は地下貯水槽Aの一部を示す説明図、図4は地下貯水槽Aの他の一部を示す説明図、図5は分割体40を斜め上方から見た斜視図、図6は分割体40を斜め下方から見た斜視図、図7は積上げ部材4を斜め上方から見た斜視図、図8は積上げ部材4を斜め下方から見た斜視図、図9は係合部45と被係合部46とを示す部分平面図、図10は位置決め片55の作用を説明するための断面図、図11は分割体40を嵌合状に重ねた状態の説明図である。
【0015】
図1に示した地下貯水槽Aは、地面を掘り下げることによって地中に凹入状に形成された水溜め空間1を有する。この水溜め空間1において、その周囲壁面11はその地層を形成している土砂の安息角を勘案して可能な限り小さな仰角を持つように上開き状に傾斜している。この水溜め空間1の底壁面12とその底壁面12に連続する上記周囲壁面11とは通水性を持たない遮水シート2で被覆されており、その遮水シート2の上に不織布21が配備されている。上記者水シート2には塩化ビニル樹脂シート、ゴムシート、ポケットエチレン樹脂シートなどのシートを用いることができる。
【0016】
上記水溜め空間1の底壁面12に、上記遮水シート2と上記不織布21とを介して集合体3が装填されている。この集合体3は、水平に並べられかつ上下に段積みされた多数の積上げ部材4でなる。これらの積上げ部材4は、合成樹脂製の骨格構造体でなり、個々の積上げ部材4自体が水溜め用の空隙を有し、それらの空隙が互いに連通して全体として1つの大きな空間を形成している。
【0017】
上記集合体3の周囲に、垂直に立ち上げられたコンクリート製の仕切壁5が設けられている。この仕切壁5には多数の通水孔51が貫通状に形成されていて、この通水孔51によって上記仕切壁5に通水性が付与されている。図例では、上記水溜め空間1の中央部の2箇所にも垂直に立ち上げられた仕切壁5,5が設けられていて、この仕切壁5,5によって上記集合体3が左右に2分割されている。そして、上記仕切壁5と上記周囲壁面11との間の空間や、中央部の2箇所の仕切壁5,5の間の空間に小形固形物の集合でなる通水層6…が配備されている。通水層6は、砕石を上記空間に装填することによって形成されている。この通水層6を砂利や玉石などの小石で形成することも可能である。さらに、上記集合体3と上記通水層6との上に透水層7が配設されている。この透水層7は土砂を敷き詰めることによって形成されており、その透水層7を利用して芝生が植生されている。透水層7の上に自動車の駐車場を形成することも可能である。なお、上記仕切壁5をポーラスコンクリート製にしてその仕切壁5に通水性を付与しておいてもよい。また、仕切壁5の厚さは、上記集合体3に加わる荷重や通水層6に加わる荷重など総合的に勘案してそれらに耐え得る強度を持つような厚さにしておく。また、上記仕切壁5をFRPなどのプラスチック製にすることも可能であり、そうすることによって仕切壁の軽量化が達成され、運搬、施工が容易になるという利点がある。
【0018】
この地下貯水槽Aにおいて、図2のように仕切壁5を矩形に作る場合、複数の平板状のコンクリートパネルを直角に突き合わせたり、あるいは平板状に突き合わせたりして作ることができ、そのようにすることによって、仕切壁5の施工性が改善される。仕切壁5同士を直角に突き合わせてそれらを結合するときには、図3のように仕切壁5の突合せ箇所をその表裏両面側から一対のコーナ連結具101,102で挾み付け、それらを仕切壁5に挿通されたボルト・ナットなどの止具100で締め付けておけばよい。また、仕切壁5を平板状に突き合わせてそれを結合するときには、図4のようにその突合せ箇所をその表裏両面側から一対の平板状の連結具103,104で挾み付け、それらを仕切壁5に挿通されたボルト・ナットなどの止具100で締め付けておけばよい。
【0019】
上記積上げ部材4によって形成されている上記水溜め用の空隙に上記遮水シート2と上記通水層6とを貫通して延びる地表水導入路8の終部が配置されている。この地表水導入路8は、図示していない都市公園の歩道脇に設けられた側溝で集められた雨水やテニスコートなどから出る雨水を上記水溜め用の空隙に導入するために設けられている。さらに、上記水溜め空間1の底部に、上記水溜め用の空隙に溜まった水を排水するための排水溝91が設けられており、この排水溝91に、排水路9の始部が接続されている。なお、排水路9は合成樹脂管を埋設することによって形成することができ、その排水路9の途中に調節弁92が介在されている。
【0020】
以上説明した地下貯水槽Aにおいて、水溜め空間1を取り囲んでいる壁13は必ずしも必要ではない。しかし、地盤の強化や安定化が必要な場合には、その壁13を所定の厚さの捨てコンクリート層で形成しておくとよい。
【0021】
上記積上げ部材4は、図5および図6に示した分割体40を一対(2つ)用意し、それら対称形状の一対の分割体40,40を向き合わせて突き合わせることによって、複数の垂直な側壁を有しかつ平面視方形をなす中空の多角筒状体を形成すると共に、それらを互いに連結することによって構成されている。分割体40は、ポリプロピレン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂で一体成形されており、一対の分割体40を連結することによって構成される上記積上げ部材4は合成樹脂製の骨格構造体になる。
【0022】
図5および図6に示した分割体40は、多数の通水口42…が開設されていて互いに直交する「く字形」に連設された2つの側壁41,41を有する。また、この分割体40における分割箇所に相応する一方の端縁43と他方の端縁44とに振り分けて、互いに連結可能な形状の係合部45と被係合部46とが設けられている。また、一対の分割体40によって形成される上記多角筒状体の軸線方向での分割体40の一端側の辺部47および他端側の辺部48のそれぞれの全長部分に亘ってフランジ部49,49,52,52が設けられ、それらのフランジ部49,49,52,52の表面によって支持面53,54が形成されている。そして、上下に段積みされる2つの上記分割体40,40の相互間では、下段側の分割体40の他端側の辺部48に具備された上記支持面54に、上段側の分割体40の一端側の辺部47に具備された上記支持面53が重なり合うようになっている。
【0023】
上記係合部45は、上記一方の端縁43の全長部分に亘って設けられた係合溝部でなり、上記被係合部46は、上記他方の端縁44の全長部分に亘って設けられて上記係合溝部にスライドさせて嵌合可能な被係合突起でなる。すなわち、図9に示したように、上記係合部45は、突出部45aとこの突出部45aに対して直角に突き出た突片部45bとを有しているのに対し、上記被係合部46は、上記突片部45bが嵌合可能な幅広溝部46bと上記突出部45aが嵌合可能な幅狭溝部46aとを有している。
【0024】
分割体40の一端側の辺部47に位置決め片55が突設されている。この位置決め片55は、下段側の分割体40の他端側の辺部48,48に内嵌合される。
【0025】
また、分割体40の2つの側壁41,41のそれぞれに上記多角筒状体の軸線方向に延びるリブ56が複数条に亘って設けられている。これらのリブ56は、その一端部と他端部とが、上記フランジ部49,52にそれぞれ連設されている。
【0026】
一対の分割体40,40のそれぞれに設けられている係合部45,45と被係合部46,46とを相互に嵌合させてその一対の分割体40,40を連結すると、図7や図8に示した積上げ部材4が組み立てられる。
【0027】
上記積上げ部材4が上下に段積みされている形態が図10に示されている。同図で判るように、下段側の積上げ部材4に備わっている支持面54に上段側の積上げ部材4に備わっている支持面53が重なり合っていると共に、上段側の積上げ部材4に備わっている位置決め片55が下段側の積上げ部材4に内嵌合している。このため、上段側の積上げ部材4が下段側の積上げ部材4に対して正確に位置決めされる。また、個々の積上げ部材4の側壁41のそれぞれは垂直になり、リブ56や位置決め片55も垂直になる。このため、透水層7を介して積上げ部材4に加わる垂直な下向き荷重に対して大きな対抗力を発揮し、側壁41が通常時に受ける下向き荷重によって座屈を生じることはない。
【0028】
なお、最上段の個々の積上げ部材4…に蓋体が取り付けられ、その蓋体によって積上げ部材4の通水口42が塞がれている。上記透水層7はこの蓋体の上に形成される。
【0029】
上記した分割体40は、図11に示したように多数のものを同じ向きにして嵌合状に重ねることができる。このようにすると、多数の分割体40…が嵩張らないので、工場や地下貯水槽Aの施工現場で多数の分割体40を保管する場合にそれほど広いスペースが必要にならず、また、トラックで分割体40を搬送するときの分割体1個当りの搬送コストが安くつく。また、上記分割体40は、その側壁41にリブ56が設けられているので、このリブ56が下向き荷重に対する強度を高めることに役立つ。
【0030】
図12は本発明の他の実施形態である積上げ部材4とその積上げ部材4を並べた状態を示す部分平面図、図13は図12の積上げ部材4を形成するための分割体40を嵌合状に重ねた状態の説明図である。
【0031】
図12の積上げ部材4は、90度よりも大きい開き角度で連設された3つの側壁41,41,41を有する一対の分割体40,40を向き合わせて突き合わせ、それぞれの分割体40,40に設けられている係合部45と被係合部46とを連結することにより構成されたものの事例である。この事例では、積上げ部材4が平面視正六角形の多角筒状体によって形成されている。
【0032】
これ以外の分割体40ないし積上げ部材4の構成、たとえば、分割体40の3つの側壁41…に多数の通水口42…が開設されている点、上記係合部45や被係合部46が、分割体40における分割箇所に相応する一方の端縁と他方の端縁とに振り分けて設けられている点、分割体40の一端側の辺部および他端側の辺部のそれぞれの全長部分に亘ってフランジ部が設けられ、それらのフランジ部の表面によって支持面が形成されている点、分割体40の一端側の辺部に位置決め片が突設されている点、上記した3つの側壁41…のそれぞれにリブ56が設けられている点など、については、図5〜図10で説明した分割体40ないし積上げ部材4の構成と同様である。
【0033】
この分割体40によっても、図13に示したように多数のものを同じ向きにして嵌合状に重ねることができ、そのようにしても多数の分割体40…が嵩張らないので、工場や地下貯水槽Aの施工現場で多数の分割体40を保管する場合にそれほど広いスペースが必要にならず、また、トラックで分割体40を搬送するときの分割体1個当りの搬送コストが安くつく。
【0034】
図1や図2で説明した地下貯水槽Aにおいて、上記水溜め空間1の周囲壁面11は上開き状に傾斜しているので、その周囲壁面11が垂直に形成されている場合に比べてその周囲壁面11自体が安定している。それに加えて、上記仕切壁5と上記周囲壁面11との間の通水層6の荷重が上記周囲壁面11を締め固める方向に加わるのでその周囲壁面11はいっそう安定する。また、上記通水層6と上記集合体3との間には、その集合体3の周囲で垂直に立ち上げられた仕切壁5が設けられているので、その仕切壁5によって、上記通水層6を形成している砕石などの小形固形物が上記集合体3の内部の水溜め用の空隙に入ってその空隙を塞ぐことが阻止され、同時に、上記透水層7の上を人が歩いたり自動車が走行したりしたときにその透水層7を介して上記集合体3に加わる水平方向の荷重が上記仕切壁5によって分散されて受け止められるので、上記集合体3がその側方へ崩れ落ちるといった事態が起こらない。
【0035】
この地下貯水槽Aにおいては、地表に降った雨水が、上記透水層7を経て上記集合体3に備わっている水溜め用の空隙や上記通水層6に導入され、その通水層6に浸入した雨水は、上記仕切壁5に具備されている通水孔51によって上記空隙に導入されて貯留される。また、側溝などに集まった雨水などの地表水は上記地表水導入路8を経て上記空隙に直接に導入される。しかしながら、地表水の中に枯葉や土砂などの固形物が含まれている場合には、この地下貯水槽Aの前に固形物分離槽や濾過槽、沈殿槽などを設けてそれらの固形物を分離できるようにしておくことが望ましい。こうしておけば、固形物の混ざっていないきれいな水が上記水溜め用の空隙に溜まる。水溜め用の空隙に溜まった水は必要に応じて排水路9を経て排水することができる。
【0036】
このような地下貯水槽Aは、集中豪雨などに見舞われたときに都市河川の水位が急激に上昇して氾濫を起こすといった事態を回避することに利用することができる。たとえば、集中豪雨の警報によってあらかじめ水溜め空間1を空にしておき、河川の水位がその集中豪雨によって上昇している間は、地表を流れて河川に流れ込もうとする雨水の一部をこの水溜め空間1に流入させて一時貯留しておき、集中豪雨が治まって河川の水位が下がったときにその水溜め空間1の貯留水を河川に放流するようにすると、河川の水位の急激な上昇による氾濫を回避することができる。また、火災などの緊急を要する場合には、水溜め空間1の貯留水を汲み上げ、防火用水などに用いることもできる。通常は、水溜め空間1の水を植物の潅水などに使用することができるのであり、そのためには、別途、水汲み口を水溜め空間1から導き出しておくことが好ましい。
【0037】
また、上記した地下貯水槽Aのように、上記集合体3を左右に2分割し、その左右の集合体3,3の間の仕切壁5,5で挟まれた空間に砕石などの小形固形物の集合でなる通水層6を形成しておくと、1箇所の集合体3の規模が適切な規模に小さく抑えられるので、仕切壁5により積上げ部材4を位置ずれしないように固定する作用が確実に発揮されるようになるだけでなく、積上げ部材4の施工性も向上する。また、水が左側の集合体3の水溜め用の空隙から仕切壁5,5の相互間の上記通水層6を通過して右側の集合体3の水溜め用の空隙に移動するときに、その通水層6がフィルターとして水の浄化作用を発揮する。このため、その通水層6を炭や特殊な鉱物で形成しておくと、右側の集合体3の水溜め用の空隙から取り出す水を、その浄化の度合に応じて有効に活用することが可能になる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、積み上げた個々の積上げ部材の側壁のそれぞれが垂直になるので、積上げ部材に加わる垂直な下向き荷重に対して大きな対抗力を発揮する。このため、地中に凹入状に形成された水溜め空間の地表面での開口部を覆って配設されている透水層を下から支え得るだけの十分に大きな強度を確保することが容易な地下貯水槽用の積上げ部材を提供することが可能になる。また、施工現場で多角筒状体に組み立てることができ、嵩張らない形にして搬送したり保管したりすることのできる地下貯水槽用の積上げ部材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である積上げ部材を用いて施工した地下貯水槽を概略的に示した一部省略縦断面図である。
【図2】地下貯水槽を概略的に示した平面構成図である。
【図3】地下貯水槽の一部を示す説明図である。
【図4】地下貯水槽の他の一部を示す説明図である。
【図5】分割体を斜め上方から見た斜視図である。
【図6】分割体を斜め下方から見た斜視図である。
【図7】積上げ部材を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】積上げ部材を斜め下方から見た斜視図である。
【図9】係合部と被係合部とを示す部分平面図である。
【図10】位置決め片の作用を説明するための断面図である。
【図11】分割体を嵌合状に重ねた状態の説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態である積上げ部材とその積上げ部材を並べた状態を示す部分平面図である。
【図13】図12の積上げ部材を形成するための分割体を嵌合状に重ねた状態の説明図である。
【符号の説明】A 地下貯水槽用1 水溜め空間4 積上げ部材42 通水口41 側壁40 分割体43 一方の端縁44 他方の端縁45 係合部46 被係合部47 一端側の辺部48 他端側の辺部53,54 支持面56 リブ55 位置決め片
Claims (6)
- 地中に凹入状に形成された水溜め空間に並べて配備されかつ上下に段積みされる積上げ部材であって、
多数の通水口が開設された複数の側壁を有しかつ向き合わせて突き合わせることによって複数の垂直な側壁を有しかつ平面視多角形をなす中空の多角筒状体を形成する対称形状の一対の合成樹脂製の分割体でなり、個々の分割体における分割箇所に相応する一方の端縁と他方の端縁とに振り分けて、互いに連結可能な形状の係合部と被係合部とが設けられており、上記多角筒状体の軸線方向での個々の上記分割体の一端側の辺部および他端側の辺部のそれぞれの全長部分に亘って支持面が具備され、上下に段積みされる2つの上記分割体の相互間では、下段側の分割体の他端側の辺部に具備された上記支持面に、上段側の分割体の一端側の辺部に具備された上記支持面が重なり合うように形成されていることを特徴とする地下貯水槽用の積上げ部材。 - 上記分割体が、互いに直交する2つの側壁を有する請求項1に記載した地下貯水槽用の積上げ部材。
- 上記分割体が、90度よりも大きい開き角度で連設された3つの側壁を有する請求項1に記載した地下貯水槽用の積上げ部材。
- 上記係合部が、上記分割体の一方の端縁の全長部分に亘って設けられた係合溝部でなり、上記被係合部が、上記分割体の他方の端縁の全長部分に亘って設けられて上記係合溝部に上記多角筒状体の軸線方向にスライドさせることによってのみ嵌合可能な被係合突起でなる請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載した地下貯水槽用の積上げ部材。
- 複数の側壁のそれぞれに上記多角筒状体の軸線方向に延びるリブが設けられ、上記分割体の一端側の辺部および他端側の辺部のそれぞれの全長部分に具備された支持面が、それらの辺部のそれぞれに設けられたフランジ部の表面によって形成されていると共に、上記リブの一端部が上記分割体の一端側の辺部に設けられたフランジ部に連設され、上記リブの他端部が上記分割体の他端側の辺部に設けられたフランジ部に連設されている請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載した地下貯水槽用の積上げ部材。
- 上記分割体の一端側の辺部に、その分割体が積み上げられる他の分割体の他端側の辺部に内嵌合される位置決め片が突設されている請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載した地下貯水槽用の積上げ部材。
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Cited By (2)
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