JP3556316B2 - 電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版の作製方法は既に数多く知られている。例えば、印刷用原版に銀塩フィルムによる原稿を密着し、該原版の感光層に直接紫外線等で露光し、これによって原稿の画像部に対応する硬化部分と、非画像部に対応する非硬化部分を形成し、非硬化部分をアルカリ又は水で洗浄除去し、硬化部分をインキ受理性とする製版方法である。この方法による印刷版がいわゆるPS版と称されるものであり、広く用いられている。
【0003】
一方、コンピュータ画像処理技術及び大容量データのメモリー開発とデータ通信技術等の進歩により、近年では、原稿入力、補正、編集、割付から頁組まで一貫してコンピュータ操作され、高速通信網や衛星通信により即時に遠隔地の末端プロッターに出力出来る電子編集システムが実用化している。特に、即時性の要求される新聞印刷分野等に於て電子編集システムはもちろん、そこからのデータにより印刷版が直接得られる製版システムが実用化されつつある。現在、この様な製版システムに於ては、電子写真プロセスを利用し、レーザー光源(半導体レーザー、He−Neレーザー等)露光によるシステムが種々の面から検討されている。
【0004】
この様なシステムに於ては、後述の様な溶出型の電子写真平版印刷版が、従来から使用されているPS版と同様な印刷条件で印刷する事が可能であるため、有利に使用出来る。その主な製版工程としては電子写真平版印刷版を帯電、露光、トナー現像を行い画像を形成し、トナー粒子が付着しない非画像部を溶出液により溶出除去し、予め親水化処理を施した支持体表面を露出させ印刷版とする。ここでトナー粒子により保護された画像部は親油性であるから、オフセット印刷が出来るのである。
【0005】
電子写真平版印刷版は、アルミニウム等の導電性支持体上に光導電性物質を含有する光導電層が被着された電子写真感光体から作製される。この電子写真感光体の光導電体層を構成する材料としては、有機光導電性化合物・結着樹脂系材料が実用感度、耐刷性等に優れている。
【0006】
電子写真平版印刷版の製版工程に於ては、上記電子写真感光体の光導電体層上に、まず所定の帯電工程が施され、一様な電荷がのせられる。次に露光によって画像に対応する静電潜像が形成される。続いて電子写真用現像剤を用いてのトナー現像そして定着処理が行われ、上記静電潜像に対応したトナー像が形成される。このトナー像以外の非画像部は、アルカリ剤等を含有する溶液により溶出除去され、続いて水洗又は酸性のリンス液による版面表面の見かけ上のpHの調節、又必要に応じて版面保護液(保護ガム液)の塗布等の処理が施されて最終的な刷版が得られる。
【0007】
液体現像剤を用いて静電潜像をトナー像に変換する現像処理を行う現像処理装置(もしくは、現像処理部)は、現像電極、液体現像剤供給口、液体現像剤絞り手段、版搬送手段、液体現像剤循環系等から構成される。現像電極は、静電潜像が形成された電子写真平版印刷版(以後、単に印刷版ともいう)が進入した時に、丁度印刷版の静電潜像の面と間隙を持って向かい合う様に設置してある。一方、液体現像剤は液体現像剤貯液槽に貯液され、液体現像剤貯液槽から現像電極部の液体現像剤供給口まで配管されており、その途中に設置してある循環ポンプの稼動により、液体現像剤が現像電極部に供給される様になっている。現像電極部に供給された液体現像剤は印刷版と現像電極との間隙を充満し、印刷版上の静電潜像のトナー現像がなされる。印刷版は現像電極を通過した後、液体現像剤絞り手段により、印刷版上の余剰の液体現像剤が除去される。除去された液体現像剤は現像電極部下部に設置してある受け皿によって集められ再び液体現像剤貯液槽に回収される。液体現像剤絞り手段としては、一対のゴムロール対による絞液等が用いられる。
【0008】
液体現像剤を用いた湿式現像(電気泳動)法では、液体現像剤中の帯電トナー粒子は被現像面の静電潜像と現像電極間に形成される電場により電気泳動し、静電潜像に付着し可視像化される。この様にして現像されて得られる可視像の画質、特に可視像の画像濃度は、現像を行なって行くにつれ、液体現像剤中の実質的に現像に寄与するトナー粒子の濃度が減少するために低下する。そこで従来、画質を良好に保つために現像剤中のトナー粒子の濃度を種々の濃度検知手段を用いて検知して、トナー粒子の濃度が低下した場合には補充液を補充し、良好な現像画像が得られる濃度範囲(以下、適正濃度範囲という)に戻してやる事が行なわれている。
【0009】
もし、液体現像剤のトナー粒子濃度が適正濃度範囲の高濃度側の閾値を越え濃くなった場合には、非画像部の被りや網点のつまり等が発生する危険があり、又、低濃度側の閾値を越え薄くなった場合には、画像部へのトナー粒子付着不足により、現像処理部の後に続く溶出部に於て溶出液を充分にレジストする事が出来ずに、結果として画像部の濃度不足となってしまう。いずれの場合に於ても、その印刷版によって印刷を行った場合には、印刷物に於て、非画像部の被りや画像部の白抜け等の故障が発生し、印刷品質を著しく低下させてしまう。従って、このような溶出型の電子写真平版印刷版に於ては特に現像処理部の液体現像剤のトナー粒子濃度を適正範囲内に制御する事が重要となる。
【0010】
液体現像剤の濃度検知手段には、対象とする物理量により様々なものがあり、液中の透過光量により濃度を検知する光学的検知方法(例えば特開昭56−167162号公報)、液中の平行平板コンデンサーの静電容量により濃度を検知する方法(特開平5−188785号公報)、液中に比重検出器を設け液の比重により濃度を検知する方法(特開昭55−147650号公報)や電導度を測定してトナー粒子濃度に対応づける方法等がある。
【0011】
光学的検知方法では、液体現像剤中に発光素子と受光素子とを対向して配設し、発光素子からの光を受光素子で受光して、その透過光量とトナー粒子濃度とを対応させる事で液体現像剤中のトナー粒子濃度を検知する。その発光素子としては従来、タングステンランプ、半導体レーザ、及びLED等が、受光素子としてはフォトダイオード、フォトトランジスタ、CdS光導電セル、Siフォトセル等が知られている。光学的検知方法は、簡便にトナー粒子濃度を精度良く検知する事の出来る優れた液体現像剤濃度検知方法である。
【0012】
ところで、上述の様な濃度検知手段は一般に、電源投入直後から安定して通常使用時の適正な出力が得られ無い場合があり、程度の差こそあれ、濃度検知手段自体のウォーミングアップを行う事が望ましい。従って、電源投入後のある一定時間は濃度検知手段による液体現像剤への適正な濃度制御は期待出来ない状態となる可能性がある。又、液体現像剤自体の温度も、電源投入直後とその後の定常製版作業中では、電源投入直後の温度は比較的低い状態にある場合が多く、濃度検知手段の対象となる物理量が温度依存性がある場合や、濃度検知手段の一部又は全部が液の温度によって悪影響を受ける場合には、電源投入直後からしばらくは正常な濃度を検知出来ない状態となる。
【0013】
例えば、濃度検知手段が、ウォーミングアップ完了までの間は、実際の液体現像剤濃度よりも濃く検知してしまうような場合には、電源投入直後、多数枚の製版が行われると、液体現像剤中のトナー粒子の消費が進行し、濃度検知手段の出力は適正濃度範囲内を示していても実際の液体現像剤濃度が適正濃度範囲の低濃度側の閾値を越えてしまう状況が生じ、しばしば、画像濃度不足等による画像品質の低下を招いていた。
【0014】
又、濃度検知手段自体のウォーミングアップ時間が充分短く、問題にならない場合にも、液体現像剤自体の液温が電源投入直後では定常使用時の液温と比較し、低い場合には、液体現像剤自体の現像能力の低下を招く恐れがあった。又、濃度検知手段の液温依存性がある場合には、電源投入直後では、濃度検知手段からの出力が適正濃度範囲内を示していても、実際の液体現像剤の現像能力は低下している場合が多々ある。そのような場合には、上記と同様に、電源投入直後多数枚連続製版が行われた場合には、上記と同様の品質の低下が発生し得る。
【0015】
特に濃度検知手段として、発光素子と受光素子を有する濃度検知手段を用いた場合には、液体現像剤のトナー粒子濃度を精度良く検知し安定な濃度制御を可能にする反面、発光素子、受光素子は通常温度依存性を有しており、電源投入直後の連続製版を行った際には上記の様な画像濃度不足等の品質の低下をしばしば発生させていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法に関し、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法を提供する事である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下のような液体現像剤濃度制御方法によって達成される。即ち、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の、濃度検知手段を用いて液体現像剤濃度を検知し所期設定濃度範囲内に液体現像剤濃度を保つ液体現像剤濃度制御方法に於て、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させた後電源を遮断する事によって達成された。
【0018】
上記方法は、濃度検知手段が発光素子と受光素子を有した光学的検知手段である場合に極めて有効である。
【0019】
【作用】
本発明にあっては、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の、濃度検知手段を用いて液体現像剤濃度を検知し所期設定濃度範囲内に液体現像剤濃度を保つ液体現像剤濃度制御方法に於て、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させた後に電源を遮断する事によって、次に電子写真平版印刷版現像処理装置の電源を投入した際に、電源投入直後から多数枚連続製版を行ったとしても、画像濃度不足等の品質の低下がなく、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる。しかも、温度管理や温度補償等の設備の追加無しに簡便な方法で行う事が出来る。
【0020】
又、上記方法は、濃度検知手段が発光素子と受光素子を有した光学的検知手段である場合に、より効果的に安定に良好な現像状態を維持する事が出来る。
【0021】
さらに詳細に本発明について説明する。まず初めに導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版(以下、単に印刷版ともいう)を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置(以下、単に現像処理部ともいう)について説明する。
【0022】
現像処理部は、液体現像剤を吐出する液体現像剤供給口、印刷版の静電潜像面と所定の間隙をもって対向して配設された一部又は全部が導電性の現像電極、液体現像剤絞り手段、及び液体現像剤貯液槽等からなっている。
【0023】
印刷版は搬送手段により現像電極と所定の間隙をもって通過するが、その際、印刷版と現像電極間の間隙には、液体現像剤が供給され充満される様になっている。液体現像剤は、液体現像剤貯液槽に貯液され、液体現像剤貯液槽と液体現像剤供給口とは配管で連結されており、その配管途中に液体現像剤供給用の循環ポンプが設置されている。製版が開始され、静電潜像を担持した印刷版が現像電極部に進入してくる少し前に、液体現像剤供給用の循環ポンプは稼動し始め、印刷版が現像電極と対向する時には、印刷版と現像電極間の間隙にはトナー現像に十分な量の液体現像剤が供給される様になっている。現像電極にはバイアス電圧が印加出来る様になっており、現像電極の電位と印刷版の静電潜像とが作る電界により、間隙中の液体現像剤中の帯電トナー粒子が印刷版の静電潜像面に静電潜像に従って画像様に付着し、トナー現像が行われる。印刷版上の余剰の液体現像剤は現像電極の直後に配設されている液体現像剤絞り手段によって印刷版上より除去される。
【0024】
液体現像剤は、循環ポンプにより液体現像剤貯液槽から現像電極とこれと対面して通過する印刷版との間隙に供給され、その後液体現像剤絞り手段によって印刷版上より除去され、現像電極部下部に設けられている受け皿で集められ、再び液体現像剤貯液槽に回収される様になっており、一つの循環系をなしている。連続的に製版が行われる場合は液体現像剤供給用の循環ポンプは動作し続け、液体現像剤は循環して使用される。
【0025】
液体現像剤貯液槽内もしくは液体現像剤循環系の配管の途中には、液体現像剤濃度検知手段が設けられ、液体現像剤の濃度が検知出来るようになっており、この検知結果に従って、液体現像剤濃度を良好な現像が行われる適正範囲内に制御する事が可能となる。又、上記位置以外にも、液体現像剤が十分に交換しうる場所であれば、濃度検知手段を設置する事が出来る。
【0026】
以下に本発明に係わる液体現像剤濃度制御方法について説明する。本発明に係わる液体現像剤濃度制御方法は、濃度検知手段を用いて液体現像剤のトナー粒子濃度を検知して、液体現像剤の濃度が低下した場合には液体現像剤に補充液の補充を行って、液体現像剤の濃度を常に適正な濃度範囲内に維持する様にしたものである。
【0027】
本発明に係わる濃度検知手段は液体現像剤のトナー粒子濃度を検知出来る手段であれば何れの手段をも利用する事が出来る。例えば、発光素子と受光素子を有した光学的検知手段や、交流もしくは直流電圧を印加する電導度測定手段もしくは電着を利用した手段等を利用する事が出来る。それぞれの手段に於て、検知の対象となる液体現像剤の物理量はそれぞれ異なり、例えば、光学的検知手段を用いた場合には、それに利用する光の波長を選ぶ事により、トナー粒子濃度(固形分濃度)を検知の対象とする事が出来、電導度測定の場合は、液体現像剤の電気的特性を検知の対象としている。何れの場合でも、検知手段の検知の対象となる物理量が液体現像剤のトナー粒子濃度と相関があれば、その検知手段を利用する事が出来る。トナー粒子濃度は実際の現像能力の程度と良い相関があるため、トナー粒子濃度を適正濃度範囲内に制御する事で実際の現像状態も安定に維持することが出来る。現像能力の程度は、実際にトナー現像を行った際のソリッド画像部(べた部)の画像濃度(光学反射濃度)で見定める事が出来る。特に光学的検知手段はトナー粒子濃度を精度良く検知する事が出来るため、好適に用いられる。
【0028】
濃度検知手段による濃度検知を行って濃度制御を行うために、予め、トナー現像を適正に行うための適正濃度範囲を見極めておく。その適正濃度範囲を基にして高濃度側の閾値(高濃度側の設定閾値)と低濃度側の閾値(低濃度側の設定閾値)を定めて、その両設定閾値間に液体現像剤濃度を維持する濃度制御範囲(所期設定濃度範囲)を設定する。液体現像剤の濃度が、所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下に低下した場合には、液体現像剤に補充液を補充して、所期設定濃度範囲内に戻す。補充液には、液体現像剤の濃縮液や、液体現像剤の構成成分比を変化させた液が用いられる。又、複数の濃度検知手段を用いて、複数の補充液を補充させる事も出来る。
【0029】
補充液の補充方法は、濃度検知を連続的もしくは間欠的に行いながら補充を行って、高濃度側の設定閾値に達するまで補充を行う方法を用いる事が出来る。この際、補充液が補充されてから、その補充液による液体現像剤濃度の上昇を濃度検知手段が検知するまでに時間がかかる場合には、補充液補充を間欠的に行ったり、攪はんや送液によって液体現像剤濃度の均一化を促進させる事も出来る。
【0030】
又、補充液補充を、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値を利用せずに時間によって制御する事も出来る。即ち、濃度検知を行った結果、液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値にまで低下した場合には、補充液補充を一定時間連続的もしくは間欠的に補充するものである。この場合に於ても、補充液補充時間は、その補充の結果液体現像剤濃度が適正濃度範囲内におさまるように設定すれば、その補充終了時の液体現像剤の濃度が本発明に於ける所期濃度設定範囲の高濃度側の設定閾値に該当する。
【0031】
製版処理中に於ける現像処理部の液体現像剤濃度制御は上記の様に行われるが、製版処理が終了し、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時には、以下の様な濃度制御が行われる。即ち、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作を行った場合には、すぐには、電源断が行われずに、液体現像剤に補充液補充を行って、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値にまで液体現像剤濃度を上昇させた後に電源の遮断が行われる。この補充液補充は、電源断動作時に、濃度検知を行って、所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下でなくても、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度であれば、行われる。
【0032】
本発明に係わるトナー現像は、正現像、反転現像どちらであっても良いが、特に、反転現像の場合には、次の様な理由から、液体現像剤の濃度制御がより重要となるため、本発明は反転現像の場合に特に有効である。即ち、反転現像によりトナー現像を行う場合には、トナー粒子の電荷と同極性で且つ印刷版の非画像部の帯電電位(表面電位)よりも通常絶対値として低い値のバイアス電圧が現像電極に印加されるが、ソリッド画像部の現像を行う場合には、表面電位約0Vの印刷版表面にバイアス電圧印加によって形成された電界の力で帯電トナー粒子が印刷版に向かって移動し付着する事となる。反転現像によれば、適正なバイアス電圧を選ぶ事により、高品質な画像を短い現像時間で得る事が出来る。この際、現像速度もしくは現像後のソリッド画像部の画像濃度は、液体現像剤の濃度、特にトナー粒子濃度に大きく依存する。即ち、トナー粒子濃度が低くなると、ある決まった現像時間内に印刷版表面に到達、付着するトナー粒子数が減少するため、ソリッド画像部の画像濃度は低下する。一方、正現像でソリッド画像部の現像を行った場合には、正現像によりソリッド画像部は印刷版表面に電荷を保持して表面電位を実質的に有している部分であるので、反対極性のトナー粒子が印刷版表面の電荷を中和する形で現像が進行するため、液体現像剤中のトナー粒子濃度が少々変化しても、中和するのに必要なトナー粒子数は変化しないため、上記の反転現像ほどトナー粒子濃度の影響を強く受けない場合が多い。従って、特に反転現像の場合には、液体現像剤の濃度制御がより重要となる。
【0033】
以下に本発明に係わる液体現像剤について説明する。本発明に係わる液体現像剤は、高絶縁性炭化水素媒体中に実質的に現像画像となり電荷を有するトナー粒子を分散させてなる。トナー粒子を分散させる高絶縁性炭化水素媒体は、低誘電率で高電気絶縁性の有機溶媒であり、例えばn−パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系脂肪族炭化水素及びシリコーンオイル類等が挙げられるが、イソパラフィン系炭化水素が好適に用いられる。イソパラフィン系炭化水素であっても留分等で特性が多少異なるが、例えばシェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーG、アイソパーH、及びアイソパーL(以上、エクソン化学製)、IPソルベント1620(出光石油製)等が好適に使用される。
【0034】
本発明に係わる液体現像剤に於けるトナー粒子は、少なくとも電子写真平版印刷版光導電層に対して熱及び/又は光により良好な定着性を有し、更に非画像部の光導電層を除去する溶出液に対してレジスト性を有する樹脂成分で構成されている事が好ましい。樹脂成分としては、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらのエステル等からなるアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとエチレン又は塩化ビニル等との共重合体、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、スチレンとアクリル樹脂、メタクリル酸エステル等との共重合体、ポリエチレン、ポリプリピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、その他ワックス等が挙げられる。
【0035】
次に、本発明に係わる電子写真平版印刷版及びそのトナー現像以降の処理方法について説明する。本発明に係わる電子写真平版印刷版は、支持体上に光導電層を設けてなり、支持体は所望の表面性を光導電層を設ける支持体面に形成させるため、金属支持体であれば公知の方法で砂目立てや陽極酸化しても良い。砂目立て処理に先立って、所望により界面活性剤又はアルカリ水溶液により脱脂処理しても良い。
【0036】
この様にして得られた支持体上に所望の電子写真光導電層を設けて、電子写真平版印刷版が得られる。電子写真光導電層は、有機又は無機の光導電性化合物を、又、所望によりこれらの2種類以上を混合して用いる事が出来るが、本発明に用いる電子写真平版印刷版光導電層に於ては有機光導電性化合物が好ましく、中でも光導電性を有する無金属或は金属フタロシアニン系顔料が有利に用いられる。光導電層用結着樹脂としては、最終的に画像部以外の光導電層を溶出除去する印刷版の場合には、溶出液に可溶あるいは分散可能な高分子化合物が好ましい。
【0037】
電子写真平版印刷版は既に述べた様な電子写真法により、静電潜像を液体現像剤を用いてトナー現像及び定着を行いトナー像に変換した後、溶出部に於てアルカリ性溶出液により非画像部光導電層を溶出して除去する。次に版面をリンスして版上に残存する可溶化光導電層成分を洗浄除去し、その後、版面の耐傷強度の向上及び非画像部不感脂化等の目的で、保護ガム処理され、平版印刷版が出来あがる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明の範囲がこれにより限定されるものではない。
【0039】
まず始めに本実施例に使用した電子写真平版印刷版現像処理装置を含む製版機について説明する。使用した製版機は、給版部、帯電・露光部、現像処理部(現像処理装置)、溶出部、排版部からなり、電子写真平版印刷版を給版部に複数枚重ねてセットし、一枚ずつ次の帯電・露光部に送り込む様になっている。帯電・露光部では、電子写真平版印刷版表面にコロナ帯電を行い、約220Vの表面電位を形成した後、半導体レーザを用いて画像露光が行われる。画像露光されて静電潜像が形成された電子写真平版印刷版は次の現像処理部へ送られトナー現像が施され、その後溶出部で非画像部が溶出除去され、平版印刷版となって排版部に排出されるという様に一連の処理が連続して行われる様になっている。
【0040】
次に本実施例に使用した製版機の現像処理装置(現像処理部)を図1を用いて説明する。現像処理部には、現像電極14a、下部ガイド板14bから構成される現像電極部14、液体現像剤絞り手段13、液体現像剤吐出口80、液体現像剤貯液槽12、補充液貯液槽16が設置され、液体現像剤貯液槽12は液体現像剤吐出口80と配管74で連結され、配管途中に液体現像剤供給用ポンプ72が設置され液体現像剤貯液槽12中に貯液されている液体現像剤2を液体現像剤吐出口80を通って、現像電極14aと下部ガイド板14b間(現像電極部14)に供給するようになっている。又、補充液貯液槽16は、液体現像剤貯液槽12と配管75で連結され、その途中に補充液貯液槽16中の補充液3を液体現像剤貯液槽12中に送液する補充液供給用ポンプ71が設置されている。
【0041】
現像処理部の下部には受け皿17があり、受け皿で集められた液は受け皿17下部の配管76を伝って液体現像剤貯液槽12に流れる様になっている。この様に、液体現像剤供給用ポンプ72の稼働により、液体現像剤貯液槽12と現像電極部14の間を循環して使用される。
【0042】
液体現像剤貯液槽12内には、光学的液体現像剤濃度検知手段20が配設されている。光学的液体現像剤濃度検知手段20には発光素子20aと受光素子20bがあり、発光素子20aからの光が液体現像剤2中を透過し、受光素子20bで受光される。受光素子20bでは透過光量に対応した光電流が発生し、光学的液体現像剤濃度検知手段20からは光電流出力がコンパレータ30に送られる。コンパレータ30では予め定められた適正濃度範囲に対応する設定閾値と比較される様になっている。光学的液体現像剤濃度検知手段20により得られた光電流出力は、液体現像剤2の濃度が薄くなるにつれ透過光量が増すため上昇する。従って、例えば、液体現像剤の適正濃度範囲の低濃度側の設定閾値は光電流出力では上限値となる。
【0043】
コンパレータ30に於ては、検知された光電流出力値が予め定めておいた適正濃度範囲の設定閾値に対応する光電流出力値の上限値及び下限値と比較される様になっている。そして、検知された光電流出力値が上限値以上(即ち液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下)の場合には、ポンプ駆動回路31を作動させ補充液供給用ポンプ71を稼動させて補充液3を液体現像剤貯液槽12に供給する様になっている。又、測定された光電流出力がコンパレータ30により比較され下限値以下(即ち液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値以上)の場合には、ポンプ駆動回路31の制御により補充液供給用ポンプ71が停止する様になっている。
【0044】
製版機稼動中は、液体現像剤貯液槽12には受け皿17からトナー現像に使用された比較的濃度の低下した液体現像剤が流れ込む。補充液供給用ポンプ71が稼動している場合には、高濃度の補充液が供給されるので、液体現像剤2の濃度の均一化を図りかつ常に均一化された液体現像剤濃度を濃度検知手段20が検知出来るようにするため、液循環用ポンプ73を設けてあり、その動作により、液体現像剤貯液槽12内の液体現像剤2の攪はんを行う様になっている。
【0045】
帯電及び露光された電子写真平版印刷版1は矢印の方向に一定速度で版を搬送する搬送手段(図示せず)により、現像電極部14内に搬送される。印刷版1が現像処理部14に進入する以前に液体現像剤供給用の循環ポンプ72は稼動し始め、液体現像剤2を現像電極部14に供給する様になっている。液体現像剤は印刷版1と現像電極14a間の間隙を満たし、トナー現像が行われる。その後印刷版1上の余剰の液体現像剤が液体現像剤絞り手段13によって絞液され、その後印刷版1は乾燥、定着を経て、次の溶出部(図示せず)へと送られ、そこでトナー付着部以外の非画像部が溶出除去され、それに続くリンス、保護ガム処理を経て平版印刷版が出来上がる。
【0046】
実施例
電子写真平版印刷版1として、ODP・ND−300(三菱製紙(株)製OPC版、0.3mm厚、398mm×1110mm)を用いて、上記の製版機により製版を行った。現像処理部の液体現像剤2として、正帯電性の液体現像剤ODP−TW(三菱製紙(株)製)を使用した。又、補充液3として、同補充液ODP−TR(三菱製紙(株)製)を使用した。現像処理部での現像電極14aに印加するバイアス電圧は180Vに設定した。
【0047】
製版中、液体現像剤貯液槽12内の液体現像剤2は液体現像剤供給用循環ポンプ72により現像処理部14に供給され、現像に供された後、液体現像剤絞り手段13により版面上から除去され受け皿17で回収され再び液体現像剤貯液槽12に戻り、製版中は常に循環して使用された。
【0048】
上記の様にして、200版製版を行った。
【0049】
200版の製版の後、製版機電源断動作を行い、12時間製版機を停止(停機)した。12時間停機させた後、電源を投入し、上記と同様にして200版製版した。その後同様にして、製版機電源断動作を行い12時間停機した後上記の様に200版製版という繰り返し10回行い、合計2000版製版を行った。
【0050】
製版機の電源断動作を行う際には、電源断になる前に、濃度検知手段20により濃度検知を行い、コンパレータ30により、光電流出力値と液体現像剤濃度の所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値に対応する光電流出力の下限値と比較し、もし、光電流出力値が下限値よりも大きかった場合には、ポンプ駆動回路31の制御により補充液供給用ポンプ71を稼働させ、補充液3の液体現像剤2への供給を開始させるようにした。その後、濃度検知手段20からの光電流出力値が液体現像剤2の所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値に対応する光電流出力の下限値に達した時に、補充液供給用ポンプ71を停止させ、その後、製版機の電源の遮断を行うようにした。
【0051】
2000版製版した結果、2000版全てに於て問題なく良好な製版が行われた。製版画像の画質、画線の線幅及び画像濃度も、電源投入直後に連続製版を行った場合でもほとんど変わりなく、安定に製版が行われた。
【0052】
比較例
実施例に於て、電源断動作時に、濃度制御(補充液補充)を全く行わない様にした他は実施例と同様にして200版の製版を12時間の停機を挟んで10回行い2000版製版を行った。
【0053】
その結果、1回目の200版製版後12時間の停機を行った後の電源投入直後、連続製版処理を行った際に、連続製版処理開始後30版目あたりから画像濃度不足の製版物が現れ出した。その間、補充液供給用ポンプの稼動状態を観察した結果、全く稼動していなかった。その後製版を継続すると、さらに数版製版後に補充液供給用ポンプが稼動し始め、製版物の画像濃度も正常な状態に復帰した。その後電源断するまで、良好な製版が行われた。
【0054】
その後、製版を継続すると、2000版製版する間に上記の様な電源投入後の連続製版時の画像濃度低下が更に数回発生した。その際の電源投入直後の液体現像剤のトナー粒子濃度を電着してその重量を測る事により測定すると、適正濃度範囲の低濃度側の設定閾値に対応するトナー粒子濃度よりも僅かに低濃度の状態であった。
【0055】
従って、本発明の電源断動作時の濃度制御を行わないと、電源投入直後連続製版を行った場合に製版物の画像濃度低下が発生する場合があり、良好な製版を安定に継続する事が出来なかった。
【0056】
【発明の効果】
以上の通り、電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させる事によって、次に電子写真平版印刷版現像処理装置の電源を投入した際に、電源投入直後から多数枚連続製版を行ったとしても、画像濃度不足等の品質の低下がなく、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる。温度管理や温度補償等の設備の追加無しに簡便な方法で行う事が出来る。
【0057】
又、濃度検知手段として、トナー粒子濃度を安定に計測する事の出来る発光素子と受光素子を有した光学的検知手段を用いる場合に上記方法を行う事により、より効果的かつ安定に良好な現像状態を維持する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた電子写真平版印刷版現像処理装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 電子写真平版印刷用原版
2 液体現像剤
3 補充液
13 液体現像剤絞り手段
14 現像電極部
20 液体現像剤濃度検知手段
20a 発光素子
20b 受光素子
31 ポンプ駆動回路
71 補充液供給用ポンプ
72 液体現像剤供給用ポンプ
73 液循環用ポンプ
【産業上の利用分野】
本発明は、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷版の作製方法は既に数多く知られている。例えば、印刷用原版に銀塩フィルムによる原稿を密着し、該原版の感光層に直接紫外線等で露光し、これによって原稿の画像部に対応する硬化部分と、非画像部に対応する非硬化部分を形成し、非硬化部分をアルカリ又は水で洗浄除去し、硬化部分をインキ受理性とする製版方法である。この方法による印刷版がいわゆるPS版と称されるものであり、広く用いられている。
【0003】
一方、コンピュータ画像処理技術及び大容量データのメモリー開発とデータ通信技術等の進歩により、近年では、原稿入力、補正、編集、割付から頁組まで一貫してコンピュータ操作され、高速通信網や衛星通信により即時に遠隔地の末端プロッターに出力出来る電子編集システムが実用化している。特に、即時性の要求される新聞印刷分野等に於て電子編集システムはもちろん、そこからのデータにより印刷版が直接得られる製版システムが実用化されつつある。現在、この様な製版システムに於ては、電子写真プロセスを利用し、レーザー光源(半導体レーザー、He−Neレーザー等)露光によるシステムが種々の面から検討されている。
【0004】
この様なシステムに於ては、後述の様な溶出型の電子写真平版印刷版が、従来から使用されているPS版と同様な印刷条件で印刷する事が可能であるため、有利に使用出来る。その主な製版工程としては電子写真平版印刷版を帯電、露光、トナー現像を行い画像を形成し、トナー粒子が付着しない非画像部を溶出液により溶出除去し、予め親水化処理を施した支持体表面を露出させ印刷版とする。ここでトナー粒子により保護された画像部は親油性であるから、オフセット印刷が出来るのである。
【0005】
電子写真平版印刷版は、アルミニウム等の導電性支持体上に光導電性物質を含有する光導電層が被着された電子写真感光体から作製される。この電子写真感光体の光導電体層を構成する材料としては、有機光導電性化合物・結着樹脂系材料が実用感度、耐刷性等に優れている。
【0006】
電子写真平版印刷版の製版工程に於ては、上記電子写真感光体の光導電体層上に、まず所定の帯電工程が施され、一様な電荷がのせられる。次に露光によって画像に対応する静電潜像が形成される。続いて電子写真用現像剤を用いてのトナー現像そして定着処理が行われ、上記静電潜像に対応したトナー像が形成される。このトナー像以外の非画像部は、アルカリ剤等を含有する溶液により溶出除去され、続いて水洗又は酸性のリンス液による版面表面の見かけ上のpHの調節、又必要に応じて版面保護液(保護ガム液)の塗布等の処理が施されて最終的な刷版が得られる。
【0007】
液体現像剤を用いて静電潜像をトナー像に変換する現像処理を行う現像処理装置(もしくは、現像処理部)は、現像電極、液体現像剤供給口、液体現像剤絞り手段、版搬送手段、液体現像剤循環系等から構成される。現像電極は、静電潜像が形成された電子写真平版印刷版(以後、単に印刷版ともいう)が進入した時に、丁度印刷版の静電潜像の面と間隙を持って向かい合う様に設置してある。一方、液体現像剤は液体現像剤貯液槽に貯液され、液体現像剤貯液槽から現像電極部の液体現像剤供給口まで配管されており、その途中に設置してある循環ポンプの稼動により、液体現像剤が現像電極部に供給される様になっている。現像電極部に供給された液体現像剤は印刷版と現像電極との間隙を充満し、印刷版上の静電潜像のトナー現像がなされる。印刷版は現像電極を通過した後、液体現像剤絞り手段により、印刷版上の余剰の液体現像剤が除去される。除去された液体現像剤は現像電極部下部に設置してある受け皿によって集められ再び液体現像剤貯液槽に回収される。液体現像剤絞り手段としては、一対のゴムロール対による絞液等が用いられる。
【0008】
液体現像剤を用いた湿式現像(電気泳動)法では、液体現像剤中の帯電トナー粒子は被現像面の静電潜像と現像電極間に形成される電場により電気泳動し、静電潜像に付着し可視像化される。この様にして現像されて得られる可視像の画質、特に可視像の画像濃度は、現像を行なって行くにつれ、液体現像剤中の実質的に現像に寄与するトナー粒子の濃度が減少するために低下する。そこで従来、画質を良好に保つために現像剤中のトナー粒子の濃度を種々の濃度検知手段を用いて検知して、トナー粒子の濃度が低下した場合には補充液を補充し、良好な現像画像が得られる濃度範囲(以下、適正濃度範囲という)に戻してやる事が行なわれている。
【0009】
もし、液体現像剤のトナー粒子濃度が適正濃度範囲の高濃度側の閾値を越え濃くなった場合には、非画像部の被りや網点のつまり等が発生する危険があり、又、低濃度側の閾値を越え薄くなった場合には、画像部へのトナー粒子付着不足により、現像処理部の後に続く溶出部に於て溶出液を充分にレジストする事が出来ずに、結果として画像部の濃度不足となってしまう。いずれの場合に於ても、その印刷版によって印刷を行った場合には、印刷物に於て、非画像部の被りや画像部の白抜け等の故障が発生し、印刷品質を著しく低下させてしまう。従って、このような溶出型の電子写真平版印刷版に於ては特に現像処理部の液体現像剤のトナー粒子濃度を適正範囲内に制御する事が重要となる。
【0010】
液体現像剤の濃度検知手段には、対象とする物理量により様々なものがあり、液中の透過光量により濃度を検知する光学的検知方法(例えば特開昭56−167162号公報)、液中の平行平板コンデンサーの静電容量により濃度を検知する方法(特開平5−188785号公報)、液中に比重検出器を設け液の比重により濃度を検知する方法(特開昭55−147650号公報)や電導度を測定してトナー粒子濃度に対応づける方法等がある。
【0011】
光学的検知方法では、液体現像剤中に発光素子と受光素子とを対向して配設し、発光素子からの光を受光素子で受光して、その透過光量とトナー粒子濃度とを対応させる事で液体現像剤中のトナー粒子濃度を検知する。その発光素子としては従来、タングステンランプ、半導体レーザ、及びLED等が、受光素子としてはフォトダイオード、フォトトランジスタ、CdS光導電セル、Siフォトセル等が知られている。光学的検知方法は、簡便にトナー粒子濃度を精度良く検知する事の出来る優れた液体現像剤濃度検知方法である。
【0012】
ところで、上述の様な濃度検知手段は一般に、電源投入直後から安定して通常使用時の適正な出力が得られ無い場合があり、程度の差こそあれ、濃度検知手段自体のウォーミングアップを行う事が望ましい。従って、電源投入後のある一定時間は濃度検知手段による液体現像剤への適正な濃度制御は期待出来ない状態となる可能性がある。又、液体現像剤自体の温度も、電源投入直後とその後の定常製版作業中では、電源投入直後の温度は比較的低い状態にある場合が多く、濃度検知手段の対象となる物理量が温度依存性がある場合や、濃度検知手段の一部又は全部が液の温度によって悪影響を受ける場合には、電源投入直後からしばらくは正常な濃度を検知出来ない状態となる。
【0013】
例えば、濃度検知手段が、ウォーミングアップ完了までの間は、実際の液体現像剤濃度よりも濃く検知してしまうような場合には、電源投入直後、多数枚の製版が行われると、液体現像剤中のトナー粒子の消費が進行し、濃度検知手段の出力は適正濃度範囲内を示していても実際の液体現像剤濃度が適正濃度範囲の低濃度側の閾値を越えてしまう状況が生じ、しばしば、画像濃度不足等による画像品質の低下を招いていた。
【0014】
又、濃度検知手段自体のウォーミングアップ時間が充分短く、問題にならない場合にも、液体現像剤自体の液温が電源投入直後では定常使用時の液温と比較し、低い場合には、液体現像剤自体の現像能力の低下を招く恐れがあった。又、濃度検知手段の液温依存性がある場合には、電源投入直後では、濃度検知手段からの出力が適正濃度範囲内を示していても、実際の液体現像剤の現像能力は低下している場合が多々ある。そのような場合には、上記と同様に、電源投入直後多数枚連続製版が行われた場合には、上記と同様の品質の低下が発生し得る。
【0015】
特に濃度検知手段として、発光素子と受光素子を有する濃度検知手段を用いた場合には、液体現像剤のトナー粒子濃度を精度良く検知し安定な濃度制御を可能にする反面、発光素子、受光素子は通常温度依存性を有しており、電源投入直後の連続製版を行った際には上記の様な画像濃度不足等の品質の低下をしばしば発生させていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法に関し、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法を提供する事である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下のような液体現像剤濃度制御方法によって達成される。即ち、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の、濃度検知手段を用いて液体現像剤濃度を検知し所期設定濃度範囲内に液体現像剤濃度を保つ液体現像剤濃度制御方法に於て、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させた後電源を遮断する事によって達成された。
【0018】
上記方法は、濃度検知手段が発光素子と受光素子を有した光学的検知手段である場合に極めて有効である。
【0019】
【作用】
本発明にあっては、導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の、濃度検知手段を用いて液体現像剤濃度を検知し所期設定濃度範囲内に液体現像剤濃度を保つ液体現像剤濃度制御方法に於て、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させた後に電源を遮断する事によって、次に電子写真平版印刷版現像処理装置の電源を投入した際に、電源投入直後から多数枚連続製版を行ったとしても、画像濃度不足等の品質の低下がなく、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる。しかも、温度管理や温度補償等の設備の追加無しに簡便な方法で行う事が出来る。
【0020】
又、上記方法は、濃度検知手段が発光素子と受光素子を有した光学的検知手段である場合に、より効果的に安定に良好な現像状態を維持する事が出来る。
【0021】
さらに詳細に本発明について説明する。まず初めに導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版(以下、単に印刷版ともいう)を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置(以下、単に現像処理部ともいう)について説明する。
【0022】
現像処理部は、液体現像剤を吐出する液体現像剤供給口、印刷版の静電潜像面と所定の間隙をもって対向して配設された一部又は全部が導電性の現像電極、液体現像剤絞り手段、及び液体現像剤貯液槽等からなっている。
【0023】
印刷版は搬送手段により現像電極と所定の間隙をもって通過するが、その際、印刷版と現像電極間の間隙には、液体現像剤が供給され充満される様になっている。液体現像剤は、液体現像剤貯液槽に貯液され、液体現像剤貯液槽と液体現像剤供給口とは配管で連結されており、その配管途中に液体現像剤供給用の循環ポンプが設置されている。製版が開始され、静電潜像を担持した印刷版が現像電極部に進入してくる少し前に、液体現像剤供給用の循環ポンプは稼動し始め、印刷版が現像電極と対向する時には、印刷版と現像電極間の間隙にはトナー現像に十分な量の液体現像剤が供給される様になっている。現像電極にはバイアス電圧が印加出来る様になっており、現像電極の電位と印刷版の静電潜像とが作る電界により、間隙中の液体現像剤中の帯電トナー粒子が印刷版の静電潜像面に静電潜像に従って画像様に付着し、トナー現像が行われる。印刷版上の余剰の液体現像剤は現像電極の直後に配設されている液体現像剤絞り手段によって印刷版上より除去される。
【0024】
液体現像剤は、循環ポンプにより液体現像剤貯液槽から現像電極とこれと対面して通過する印刷版との間隙に供給され、その後液体現像剤絞り手段によって印刷版上より除去され、現像電極部下部に設けられている受け皿で集められ、再び液体現像剤貯液槽に回収される様になっており、一つの循環系をなしている。連続的に製版が行われる場合は液体現像剤供給用の循環ポンプは動作し続け、液体現像剤は循環して使用される。
【0025】
液体現像剤貯液槽内もしくは液体現像剤循環系の配管の途中には、液体現像剤濃度検知手段が設けられ、液体現像剤の濃度が検知出来るようになっており、この検知結果に従って、液体現像剤濃度を良好な現像が行われる適正範囲内に制御する事が可能となる。又、上記位置以外にも、液体現像剤が十分に交換しうる場所であれば、濃度検知手段を設置する事が出来る。
【0026】
以下に本発明に係わる液体現像剤濃度制御方法について説明する。本発明に係わる液体現像剤濃度制御方法は、濃度検知手段を用いて液体現像剤のトナー粒子濃度を検知して、液体現像剤の濃度が低下した場合には液体現像剤に補充液の補充を行って、液体現像剤の濃度を常に適正な濃度範囲内に維持する様にしたものである。
【0027】
本発明に係わる濃度検知手段は液体現像剤のトナー粒子濃度を検知出来る手段であれば何れの手段をも利用する事が出来る。例えば、発光素子と受光素子を有した光学的検知手段や、交流もしくは直流電圧を印加する電導度測定手段もしくは電着を利用した手段等を利用する事が出来る。それぞれの手段に於て、検知の対象となる液体現像剤の物理量はそれぞれ異なり、例えば、光学的検知手段を用いた場合には、それに利用する光の波長を選ぶ事により、トナー粒子濃度(固形分濃度)を検知の対象とする事が出来、電導度測定の場合は、液体現像剤の電気的特性を検知の対象としている。何れの場合でも、検知手段の検知の対象となる物理量が液体現像剤のトナー粒子濃度と相関があれば、その検知手段を利用する事が出来る。トナー粒子濃度は実際の現像能力の程度と良い相関があるため、トナー粒子濃度を適正濃度範囲内に制御する事で実際の現像状態も安定に維持することが出来る。現像能力の程度は、実際にトナー現像を行った際のソリッド画像部(べた部)の画像濃度(光学反射濃度)で見定める事が出来る。特に光学的検知手段はトナー粒子濃度を精度良く検知する事が出来るため、好適に用いられる。
【0028】
濃度検知手段による濃度検知を行って濃度制御を行うために、予め、トナー現像を適正に行うための適正濃度範囲を見極めておく。その適正濃度範囲を基にして高濃度側の閾値(高濃度側の設定閾値)と低濃度側の閾値(低濃度側の設定閾値)を定めて、その両設定閾値間に液体現像剤濃度を維持する濃度制御範囲(所期設定濃度範囲)を設定する。液体現像剤の濃度が、所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下に低下した場合には、液体現像剤に補充液を補充して、所期設定濃度範囲内に戻す。補充液には、液体現像剤の濃縮液や、液体現像剤の構成成分比を変化させた液が用いられる。又、複数の濃度検知手段を用いて、複数の補充液を補充させる事も出来る。
【0029】
補充液の補充方法は、濃度検知を連続的もしくは間欠的に行いながら補充を行って、高濃度側の設定閾値に達するまで補充を行う方法を用いる事が出来る。この際、補充液が補充されてから、その補充液による液体現像剤濃度の上昇を濃度検知手段が検知するまでに時間がかかる場合には、補充液補充を間欠的に行ったり、攪はんや送液によって液体現像剤濃度の均一化を促進させる事も出来る。
【0030】
又、補充液補充を、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値を利用せずに時間によって制御する事も出来る。即ち、濃度検知を行った結果、液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値にまで低下した場合には、補充液補充を一定時間連続的もしくは間欠的に補充するものである。この場合に於ても、補充液補充時間は、その補充の結果液体現像剤濃度が適正濃度範囲内におさまるように設定すれば、その補充終了時の液体現像剤の濃度が本発明に於ける所期濃度設定範囲の高濃度側の設定閾値に該当する。
【0031】
製版処理中に於ける現像処理部の液体現像剤濃度制御は上記の様に行われるが、製版処理が終了し、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時には、以下の様な濃度制御が行われる。即ち、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作を行った場合には、すぐには、電源断が行われずに、液体現像剤に補充液補充を行って、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値にまで液体現像剤濃度を上昇させた後に電源の遮断が行われる。この補充液補充は、電源断動作時に、濃度検知を行って、所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下でなくても、所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度であれば、行われる。
【0032】
本発明に係わるトナー現像は、正現像、反転現像どちらであっても良いが、特に、反転現像の場合には、次の様な理由から、液体現像剤の濃度制御がより重要となるため、本発明は反転現像の場合に特に有効である。即ち、反転現像によりトナー現像を行う場合には、トナー粒子の電荷と同極性で且つ印刷版の非画像部の帯電電位(表面電位)よりも通常絶対値として低い値のバイアス電圧が現像電極に印加されるが、ソリッド画像部の現像を行う場合には、表面電位約0Vの印刷版表面にバイアス電圧印加によって形成された電界の力で帯電トナー粒子が印刷版に向かって移動し付着する事となる。反転現像によれば、適正なバイアス電圧を選ぶ事により、高品質な画像を短い現像時間で得る事が出来る。この際、現像速度もしくは現像後のソリッド画像部の画像濃度は、液体現像剤の濃度、特にトナー粒子濃度に大きく依存する。即ち、トナー粒子濃度が低くなると、ある決まった現像時間内に印刷版表面に到達、付着するトナー粒子数が減少するため、ソリッド画像部の画像濃度は低下する。一方、正現像でソリッド画像部の現像を行った場合には、正現像によりソリッド画像部は印刷版表面に電荷を保持して表面電位を実質的に有している部分であるので、反対極性のトナー粒子が印刷版表面の電荷を中和する形で現像が進行するため、液体現像剤中のトナー粒子濃度が少々変化しても、中和するのに必要なトナー粒子数は変化しないため、上記の反転現像ほどトナー粒子濃度の影響を強く受けない場合が多い。従って、特に反転現像の場合には、液体現像剤の濃度制御がより重要となる。
【0033】
以下に本発明に係わる液体現像剤について説明する。本発明に係わる液体現像剤は、高絶縁性炭化水素媒体中に実質的に現像画像となり電荷を有するトナー粒子を分散させてなる。トナー粒子を分散させる高絶縁性炭化水素媒体は、低誘電率で高電気絶縁性の有機溶媒であり、例えばn−パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系脂肪族炭化水素及びシリコーンオイル類等が挙げられるが、イソパラフィン系炭化水素が好適に用いられる。イソパラフィン系炭化水素であっても留分等で特性が多少異なるが、例えばシェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーG、アイソパーH、及びアイソパーL(以上、エクソン化学製)、IPソルベント1620(出光石油製)等が好適に使用される。
【0034】
本発明に係わる液体現像剤に於けるトナー粒子は、少なくとも電子写真平版印刷版光導電層に対して熱及び/又は光により良好な定着性を有し、更に非画像部の光導電層を除去する溶出液に対してレジスト性を有する樹脂成分で構成されている事が好ましい。樹脂成分としては、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらのエステル等からなるアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとエチレン又は塩化ビニル等との共重合体、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、スチレンとアクリル樹脂、メタクリル酸エステル等との共重合体、ポリエチレン、ポリプリピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、その他ワックス等が挙げられる。
【0035】
次に、本発明に係わる電子写真平版印刷版及びそのトナー現像以降の処理方法について説明する。本発明に係わる電子写真平版印刷版は、支持体上に光導電層を設けてなり、支持体は所望の表面性を光導電層を設ける支持体面に形成させるため、金属支持体であれば公知の方法で砂目立てや陽極酸化しても良い。砂目立て処理に先立って、所望により界面活性剤又はアルカリ水溶液により脱脂処理しても良い。
【0036】
この様にして得られた支持体上に所望の電子写真光導電層を設けて、電子写真平版印刷版が得られる。電子写真光導電層は、有機又は無機の光導電性化合物を、又、所望によりこれらの2種類以上を混合して用いる事が出来るが、本発明に用いる電子写真平版印刷版光導電層に於ては有機光導電性化合物が好ましく、中でも光導電性を有する無金属或は金属フタロシアニン系顔料が有利に用いられる。光導電層用結着樹脂としては、最終的に画像部以外の光導電層を溶出除去する印刷版の場合には、溶出液に可溶あるいは分散可能な高分子化合物が好ましい。
【0037】
電子写真平版印刷版は既に述べた様な電子写真法により、静電潜像を液体現像剤を用いてトナー現像及び定着を行いトナー像に変換した後、溶出部に於てアルカリ性溶出液により非画像部光導電層を溶出して除去する。次に版面をリンスして版上に残存する可溶化光導電層成分を洗浄除去し、その後、版面の耐傷強度の向上及び非画像部不感脂化等の目的で、保護ガム処理され、平版印刷版が出来あがる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例によって更に詳しく説明するが、本発明の範囲がこれにより限定されるものではない。
【0039】
まず始めに本実施例に使用した電子写真平版印刷版現像処理装置を含む製版機について説明する。使用した製版機は、給版部、帯電・露光部、現像処理部(現像処理装置)、溶出部、排版部からなり、電子写真平版印刷版を給版部に複数枚重ねてセットし、一枚ずつ次の帯電・露光部に送り込む様になっている。帯電・露光部では、電子写真平版印刷版表面にコロナ帯電を行い、約220Vの表面電位を形成した後、半導体レーザを用いて画像露光が行われる。画像露光されて静電潜像が形成された電子写真平版印刷版は次の現像処理部へ送られトナー現像が施され、その後溶出部で非画像部が溶出除去され、平版印刷版となって排版部に排出されるという様に一連の処理が連続して行われる様になっている。
【0040】
次に本実施例に使用した製版機の現像処理装置(現像処理部)を図1を用いて説明する。現像処理部には、現像電極14a、下部ガイド板14bから構成される現像電極部14、液体現像剤絞り手段13、液体現像剤吐出口80、液体現像剤貯液槽12、補充液貯液槽16が設置され、液体現像剤貯液槽12は液体現像剤吐出口80と配管74で連結され、配管途中に液体現像剤供給用ポンプ72が設置され液体現像剤貯液槽12中に貯液されている液体現像剤2を液体現像剤吐出口80を通って、現像電極14aと下部ガイド板14b間(現像電極部14)に供給するようになっている。又、補充液貯液槽16は、液体現像剤貯液槽12と配管75で連結され、その途中に補充液貯液槽16中の補充液3を液体現像剤貯液槽12中に送液する補充液供給用ポンプ71が設置されている。
【0041】
現像処理部の下部には受け皿17があり、受け皿で集められた液は受け皿17下部の配管76を伝って液体現像剤貯液槽12に流れる様になっている。この様に、液体現像剤供給用ポンプ72の稼働により、液体現像剤貯液槽12と現像電極部14の間を循環して使用される。
【0042】
液体現像剤貯液槽12内には、光学的液体現像剤濃度検知手段20が配設されている。光学的液体現像剤濃度検知手段20には発光素子20aと受光素子20bがあり、発光素子20aからの光が液体現像剤2中を透過し、受光素子20bで受光される。受光素子20bでは透過光量に対応した光電流が発生し、光学的液体現像剤濃度検知手段20からは光電流出力がコンパレータ30に送られる。コンパレータ30では予め定められた適正濃度範囲に対応する設定閾値と比較される様になっている。光学的液体現像剤濃度検知手段20により得られた光電流出力は、液体現像剤2の濃度が薄くなるにつれ透過光量が増すため上昇する。従って、例えば、液体現像剤の適正濃度範囲の低濃度側の設定閾値は光電流出力では上限値となる。
【0043】
コンパレータ30に於ては、検知された光電流出力値が予め定めておいた適正濃度範囲の設定閾値に対応する光電流出力値の上限値及び下限値と比較される様になっている。そして、検知された光電流出力値が上限値以上(即ち液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の低濃度側の設定閾値以下)の場合には、ポンプ駆動回路31を作動させ補充液供給用ポンプ71を稼動させて補充液3を液体現像剤貯液槽12に供給する様になっている。又、測定された光電流出力がコンパレータ30により比較され下限値以下(即ち液体現像剤濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値以上)の場合には、ポンプ駆動回路31の制御により補充液供給用ポンプ71が停止する様になっている。
【0044】
製版機稼動中は、液体現像剤貯液槽12には受け皿17からトナー現像に使用された比較的濃度の低下した液体現像剤が流れ込む。補充液供給用ポンプ71が稼動している場合には、高濃度の補充液が供給されるので、液体現像剤2の濃度の均一化を図りかつ常に均一化された液体現像剤濃度を濃度検知手段20が検知出来るようにするため、液循環用ポンプ73を設けてあり、その動作により、液体現像剤貯液槽12内の液体現像剤2の攪はんを行う様になっている。
【0045】
帯電及び露光された電子写真平版印刷版1は矢印の方向に一定速度で版を搬送する搬送手段(図示せず)により、現像電極部14内に搬送される。印刷版1が現像処理部14に進入する以前に液体現像剤供給用の循環ポンプ72は稼動し始め、液体現像剤2を現像電極部14に供給する様になっている。液体現像剤は印刷版1と現像電極14a間の間隙を満たし、トナー現像が行われる。その後印刷版1上の余剰の液体現像剤が液体現像剤絞り手段13によって絞液され、その後印刷版1は乾燥、定着を経て、次の溶出部(図示せず)へと送られ、そこでトナー付着部以外の非画像部が溶出除去され、それに続くリンス、保護ガム処理を経て平版印刷版が出来上がる。
【0046】
実施例
電子写真平版印刷版1として、ODP・ND−300(三菱製紙(株)製OPC版、0.3mm厚、398mm×1110mm)を用いて、上記の製版機により製版を行った。現像処理部の液体現像剤2として、正帯電性の液体現像剤ODP−TW(三菱製紙(株)製)を使用した。又、補充液3として、同補充液ODP−TR(三菱製紙(株)製)を使用した。現像処理部での現像電極14aに印加するバイアス電圧は180Vに設定した。
【0047】
製版中、液体現像剤貯液槽12内の液体現像剤2は液体現像剤供給用循環ポンプ72により現像処理部14に供給され、現像に供された後、液体現像剤絞り手段13により版面上から除去され受け皿17で回収され再び液体現像剤貯液槽12に戻り、製版中は常に循環して使用された。
【0048】
上記の様にして、200版製版を行った。
【0049】
200版の製版の後、製版機電源断動作を行い、12時間製版機を停止(停機)した。12時間停機させた後、電源を投入し、上記と同様にして200版製版した。その後同様にして、製版機電源断動作を行い12時間停機した後上記の様に200版製版という繰り返し10回行い、合計2000版製版を行った。
【0050】
製版機の電源断動作を行う際には、電源断になる前に、濃度検知手段20により濃度検知を行い、コンパレータ30により、光電流出力値と液体現像剤濃度の所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値に対応する光電流出力の下限値と比較し、もし、光電流出力値が下限値よりも大きかった場合には、ポンプ駆動回路31の制御により補充液供給用ポンプ71を稼働させ、補充液3の液体現像剤2への供給を開始させるようにした。その後、濃度検知手段20からの光電流出力値が液体現像剤2の所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値に対応する光電流出力の下限値に達した時に、補充液供給用ポンプ71を停止させ、その後、製版機の電源の遮断を行うようにした。
【0051】
2000版製版した結果、2000版全てに於て問題なく良好な製版が行われた。製版画像の画質、画線の線幅及び画像濃度も、電源投入直後に連続製版を行った場合でもほとんど変わりなく、安定に製版が行われた。
【0052】
比較例
実施例に於て、電源断動作時に、濃度制御(補充液補充)を全く行わない様にした他は実施例と同様にして200版の製版を12時間の停機を挟んで10回行い2000版製版を行った。
【0053】
その結果、1回目の200版製版後12時間の停機を行った後の電源投入直後、連続製版処理を行った際に、連続製版処理開始後30版目あたりから画像濃度不足の製版物が現れ出した。その間、補充液供給用ポンプの稼動状態を観察した結果、全く稼動していなかった。その後製版を継続すると、さらに数版製版後に補充液供給用ポンプが稼動し始め、製版物の画像濃度も正常な状態に復帰した。その後電源断するまで、良好な製版が行われた。
【0054】
その後、製版を継続すると、2000版製版する間に上記の様な電源投入後の連続製版時の画像濃度低下が更に数回発生した。その際の電源投入直後の液体現像剤のトナー粒子濃度を電着してその重量を測る事により測定すると、適正濃度範囲の低濃度側の設定閾値に対応するトナー粒子濃度よりも僅かに低濃度の状態であった。
【0055】
従って、本発明の電源断動作時の濃度制御を行わないと、電源投入直後連続製版を行った場合に製版物の画像濃度低下が発生する場合があり、良好な製版を安定に継続する事が出来なかった。
【0056】
【発明の効果】
以上の通り、電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させる事によって、次に電子写真平版印刷版現像処理装置の電源を投入した際に、電源投入直後から多数枚連続製版を行ったとしても、画像濃度不足等の品質の低下がなく、電源投入直後から常に良好な現像状態が得られる。温度管理や温度補償等の設備の追加無しに簡便な方法で行う事が出来る。
【0057】
又、濃度検知手段として、トナー粒子濃度を安定に計測する事の出来る発光素子と受光素子を有した光学的検知手段を用いる場合に上記方法を行う事により、より効果的かつ安定に良好な現像状態を維持する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いた電子写真平版印刷版現像処理装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 電子写真平版印刷用原版
2 液体現像剤
3 補充液
13 液体現像剤絞り手段
14 現像電極部
20 液体現像剤濃度検知手段
20a 発光素子
20b 受光素子
31 ポンプ駆動回路
71 補充液供給用ポンプ
72 液体現像剤供給用ポンプ
73 液循環用ポンプ
Claims (2)
- 導電性支持体上に光導電層を設けた電子写真平版印刷版を帯電及び露光した後に液体現像剤により印刷版光導電層上の静電潜像をトナー像に変換する電子写真平版印刷版現像処理装置の、濃度検知手段を用いて液体現像剤濃度を検知し所期設定濃度範囲内に液体現像剤濃度を保つ液体現像剤濃度制御方法に於て、電子写真平版印刷版現像処理装置の電源断動作時に、液体現像剤の濃度検知を行い、液体現像剤の濃度が所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値よりも低濃度である場合には、液体現像剤濃度を所期設定濃度範囲の高濃度側の設定閾値まで上昇させた後電源を遮断する事を特徴とする電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法。
- 該濃度検知手段が発光素子と受光素子を有した光学的検知手段である請求項1記載の電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法。
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JP06379195A JP3556316B2 (ja) | 1995-03-23 | 1995-03-23 | 電子写真平版印刷版現像処理装置の液体現像剤濃度制御方法 |
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JPH08262811A JPH08262811A (ja) | 1996-10-11 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101258114B1 (ko) * | 2006-05-08 | 2013-04-25 | 동우 화인켐 주식회사 | 편광판 염색액 조성물 농도의 자동 관리 장치 및 자동 관리방법 |
-
1995
- 1995-03-23 JP JP06379195A patent/JP3556316B2/ja not_active Expired - Fee Related
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KR101258114B1 (ko) * | 2006-05-08 | 2013-04-25 | 동우 화인켐 주식회사 | 편광판 염색액 조성물 농도의 자동 관리 장치 및 자동 관리방법 |
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