JP3556157B2 - レーザー墨出し器のジンバル機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築作業や部屋の間仕切りなどを行う際に、レーザー光によって壁面から天井面あるいは床面にかけて、通り芯あるいは「たち」と呼ばれる基準線を投射し、あるいは壁面に「ろく」と呼ばれる基準線を投射するレーザー墨出し器に関するもので、特にそのジンバル機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光は、本来横断面が楕円形の光であるが、コリメートレンズおよび軸線を水平とした円柱状のロッドレンズを通すことにより、一条の鉛直光線となる。また、コリメートレンズおよび軸線を垂直とした円柱状のロッドレンズを通すことにより、一条の水平光線となる。
レーザー墨出し器は、このような鉛直光線または水平光線を投射するレーザー投光器を利用したもので、ジンバル機構により支持されたレーザーユニットホルダーを備え、このレーザーユニットホルダーの所定位置にレーザー投光器を備えたレーザーユニットが支持されている。レーザーユニットホルダーは、上記ジンバル機構により、傾きのない所定の姿勢に保持され、これによって正確な鉛直光線または水平光線を投射することができるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
正確な鉛直光線または水平光線を投射するためには、レーザーユニットホルダーが傾きのない所定の姿勢に保持されている必要があり、そのためにはジンバル機構の機械的抵抗が限りなくゼロに近いことが望ましい。そこでジンバル機構の軸受には精密部品であるボールベアリングが用いられ、このボールベアリングによって軸が回転自在に支持されている。
【0004】
しかしながら、ボールベアリングのような精密部品をジンバル機構の軸受に用いると、軸受の中心軸線に対して交差する方向に衝撃力が加わったとき、回転軸が屈曲する方向に応力が加わり、精密部品であるボールベアリングが変形したりボールベアリングに傷がついたりする。そうすると、レーザーユニットホルダーが所定の姿勢を保持することができなくなり、正確な鉛直光線または水平光線を投射することができなくなる。
【0005】
また、レーザー墨出し器には、運搬時などにレーザーユニットホルダーが無闇に揺れてがたつかないように、使用時以外はレーザーユニットホルダーを機械的にロックする装置が装着されている。しかし、ロック装置の構造によっては、ロック時に回転軸およびこれを支持するボールベアリングに荷重がかかり、この状態で衝撃力が加わると、ボールベアリングが変形したりボールベアリングに傷がつきやすいという問題がある。
【0006】
本発明は以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、軸受の中心軸線に対して交差する方向に衝撃力が加わったとき、ボールベアリングに加わる衝撃力を分散させるとともに、ボールベアリング以外の部材に荷重を逃がすことができるレーザー墨出し器のジンバル機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、少なくとも一つのレーザーユニットが取付けられたレーザーユニットホルダーを揺動可能に支持してなるレーザー墨出し器のジンバル機構であって、同一方向の上下2段の第1の軸と第2の軸を有するとともに、第1の軸によって揺動可能に支持された揺動体を有し、第2の軸が揺動体によって支持されており、第2の軸によってレーザーユニットホルダーが上記揺動体に揺動可能に支持されていることを特徴とする。
レーザーユニットホルダーにかかる衝撃力は、同一方向の上下2段の軸に分散してかかる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、レーザーユニットホルダーは、揺動体の内方において第2の軸により揺動可能に支持されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、第1の軸よりも下側に第2の軸が位置していることを特徴とする。
レーザー墨出し器の基台が傾くと、基台に対して揺動体が第1の軸を中心に揺動して傾き、レーザーユニットホルダーは第2の軸を中心に揺動し垂下した姿勢を保つ。ただし、揺動体の揺動によって第2の軸の位置が相対移動しているので、レーザーユニットホルダーも垂下した姿勢を保ったまま平行移動する。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、揺動体は円筒形の部材で、外リングの内方に第1の軸を中心に揺動可能に支持されており、揺動体が第1の軸を中心に所定の角度以上に揺動すると外リングに当接し、この当接位置に荷重の一部がかかることを特徴とする。
ロック機構によるレーザーユニットホルダーのロック操作などによってレーザーユニットホルダーが一定の角度以上に傾き、あるいはレーザーユニットホルダーが上下方向に押されると、揺動体が第1の軸を中心に所定の角度以上に揺動して外リングに当接し、荷重の一部が外リングにかかり、荷重が軸および軸受に集中することが回避される。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、レーザーユニットホルダーが第2の軸を中心に揺動体に対して所定の角度以上に揺動すると揺動体に当接し、この当接部にレーザーユニットホルダーの荷重の一部がかかることを特徴とする。
ロック機構によるレーザーユニットホルダーのロック操作などによってレーザーユニットホルダーが一定の角度以上に傾き、あるいはレーザーユニットホルダーが上下方向に押されると、レーザーユニットホルダーが揺動体に当たって荷重の一部が揺動体にかかり、荷重が軸および軸受に集中することが回避される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明にかかるレーザー墨出し器のジンバル機構の実施形態について説明する。
図1において、基板10には、その下側に3本の脚12が取付けられ、これらの脚12によって基板10がほぼ水平に保たれるようになっている。基板10には、その上側に適宜数の支柱14が垂直方向に立てられている。各支柱14の上端部にはジンバル機構15が取付けられていて、ジンバル機構15によってレーザーユニットホルダー24が吊り下げられている。
【0012】
ジンバル機構15は、図2にも示すように、上記支柱14の上端部に水平方向に固定された外リング16と、外リング16の内周側に配置された揺動体としての揺動リング18と、揺動リング18の内周側に配置されたレーザーユニットホルダー24とを有してなる。ジンバル機構15はまた、外リング16に半径方向に打ち込まれ、外リング16の内周側に突出する一対の軸44、44と、揺動リング18に埋め込まれ、上記軸44、44をそれぞれ回転自在に支持する一対のボールベアリングからなる軸受46、46とを有する。さらに、ジンバル機構15は、揺動リング16に上記一対の軸44、44よりも下方において半径方向に打ち込まれ、揺動リング16の内周側に突出する一対の軸47、47と、レーザーユニットホルダー24に埋め込まれ、上記軸47、47をそれぞれ回転自在に支持する一対のボールベアリングからなる軸受49、49とを有する。揺動リング18は円筒形の部材で、第1の軸44、44を中心に揺動可能に支持されている。
【0013】
上記一対の軸44、44は、揺動リング18の直径方向の仮想的な一直線C1上に位置している。他方の一対の軸47、47も、揺動リング18の直径方向の仮想的な一直線C2上に位置している。上記一対の軸44、44を第1の軸、他方の一対の軸47、47を第2の軸とする。第1の軸44、44と、第2の軸47、4とは、互いに平行になっている。換言すれば、上記直線C1とC2は平行になっている。このようにして、ジンバル機構15は、同一方向の上下2段の揺動軸44、47を有することになり、かかる構成がこの実施形態の特徴的な構成となっている。
【0014】
ジンバル機構15よりも上側に突出したレーザーユニットホルダー24の上端部には鉛直光線投射用のレーザーユニット30が斜め上方に向けて取付けられている。レーザーユニットホルダー24にはまた、ジンバル機構15の下側に水平光線投射用の第2のレーザーユニット40が水平方向に向けて取付けられている。レーザーユニットホルダー24の下端部には、地墨投射用の第3のレーザーユニット50が真下に向けて取付けられている。
【0015】
鉛直光線投射用のレーザーユニット30は、レーザーダイオード31と、レーザーダイオード31から出射される発散光を平行光束にするコリメータレンズ32と、この平行光束を垂直方向にのみ伸張する円柱状ロッドレンズ33とを有してなる。水平光線投射用の第2のレーザーユニット40もほぼ同様の構成で、レーザーダイオード41と、レーザーダイオード41から出射される発散光を平行光束にするコリメータレンズ42と、この平行光束を水平方向にのみ伸張する円柱状ロッドレンズ43とを有してなる。地墨投射用の第3のレーザーユニット50は、レーザーダイオード51と、レーザーダイオード51から出射される発散光を平行光束にするコリメータレンズ52とを有してなる。各レーザーユニット30、40、50はともに、所定の鏡筒に組み込まれている。
【0016】
レーザーユニットホルダー24は、ジンバル機構15を介して吊り下げられることによりほぼ鉛直な姿勢をとる。この状態で上記三つのレーザーユニット30、40、50のレーザーダイオード31、41、51に通電されると、各レーザーユニット30、40、50からレーザー光が出射される。レーザーユニット30からは鉛直方向に伸張されたレーザー光が出射され、このレーザー光の光路上にある建物の壁などに投射されて鉛直線を描くとともに、上記壁に連続する床や天井に上記鉛直線に続く直線を描く。レーザーユニット40からは水平方向に伸張されたレーザー光が出射され、このレーザー光の光路上にある建物の壁などに投射されて水平線を描く。レーザーユニット50からはレーザーの平行光束が真下に向かって出射され、レーザー墨出し器が設置された建物の床などにレーザーのスポットを描く。これが地墨用のレーザースポットで、このスポットが所定の建物の床などに記された基準マークの上に形成されるように墨出し器を設置する。
【0017】
図1において符号26は、レーザーユニットホルダー24のバランス調整機構で、レーザーユニットホルダー24の外周から半径方向に突出したねじ棒と、このねじ棒の外周側にねじ込まれた重りなどを有してなる。バランス調整機構26は、レーザーユニット30、40、50を取付け、あるいは、次に説明する制動装置35などを取付けることによる、レーザーユニットホルダー24のバランスの狂いを調整する。
【0018】
前記基板10上には、レーザーユニットホルダー24の側方において制動装置35が取付けられている。制動装置35は、基板10上に固定された横向きのU字状ヨーク36と、ヨーク36の相対向する内底面と天井面に固定された磁石37、38とを有してなる。そして、レーザーユニットホルダー24の下部外周から導電板39が水平方向に突出し、この導電板39が磁石37、38間に適宜の間隙をおいて進入している。磁石37、38間に磁束が通っていて、この磁束を導電板39が切る形になっている。したがって、レーザーユニットホルダー24が揺れて導電板39が移動すると、導電板39に渦電流が発生し、渦電流と上記磁束とによって導電板39の移動の向きとは反対向きの電磁力が発生し、これがレーザーユニットホルダー24に対する制動力となって、レーザーユニットホルダー24がみだりに動かないようになっている。
【0019】
前記基板10の上には、以上説明した各機構を覆うカバー60が被せられている。カバー60には、上記レーザーユニット30から鉛直方向に伸張されたレーザー光が出射されるのを妨げないように鉛直方向に長い窓孔61が形成されるとともに、上記レーザーユニット40から水平方向に伸張されたレーザー光が出射されるのを妨げないように水平方向に長い窓孔62が形成されている。
【0020】
以上説明したように、ジンバル機構15は、同一方向の上下2段の軸44、47を有し、この上下2段の軸44、47を介してレーザーユニットホルダー24が揺動可能に支持されている。したがって、レーザーユニットホルダー24の荷重が上下2段の軸44、47に分散されて支持される。
【0021】
また、ジンバル機構15は、一方向の第1の軸44と、第1の軸44によって揺動可能に支持された揺動体としての揺動リング18と、第1の軸44と平行で揺動体18によって支持された第2の軸47とを有し、第2の軸47により揺動リング18の内方においてレーザーユニットホルダー24が揺動可能に支持されているため、レーザー墨出し器全体が傾くと、レーザー墨出し器の基台に対して揺動リング18が第1の軸44を中心に揺動して傾き、レーザーユニットホルダー24は第2の軸47を中心に揺動し垂下した姿勢を保つ。このとき、揺動リング18の揺動によって第2の軸47の位置が相対移動しているので、レーザーユニットホルダー24も垂下した姿勢を保ったまま平行移動することになる。
【0022】
レーザー墨出し器の基台に対して揺動リング18が所定の角度以上に揺動すると、図3に示すように、揺動リング18の上下何れかの縁部が外リング16の内周面に当接し、この当接位置において、レーザーユニットホルダー24および揺動リング18の荷重の一部が外リング16にかかり、軸44、47にかかる荷重を軽減することができる。
【0023】
上記のように、レーザーユニットホルダー24は第2の軸47を中心に揺動し垂下した姿勢を保つことができるが、レーザー墨出し器が大きく傾くと、揺動リング18が外リング16に当接した上に、レーザーユニットホルダー24の外周も、揺動リング18の上下何れかの内周縁部に当接し、レーザーユニットホルダー24は垂下姿勢をとることができなくなる。このように、レーザーユニットホルダー24が揺動リング18に当接することにより、レーザーユニットホルダー24の荷重の一部が揺動リング18にかかり、軸47にかかる荷重を軽減することができる。
【0024】
このようにして、図示の実施形態によれば、衝撃力が加わった場合に、軸に加わる衝撃力を分散させ、軸を支持するボールベアリングの変形や傷つきを防止することができ、ボールベアリングの変形や傷を原因とするレーザーユニットホルダー24の姿勢の狂いを防止して、常に正確な鉛直光線または水平光線を投射することができる。
【0025】
また、使用時以外に、レーザーユニットホルダー24が妄りに振れないように、レーザーユニットホルダー24を機械的に押してロックしたとき、揺動リング18が傾いて外リング16に当接し、さらには、レーザーユニットホルダー24が移動して揺動リング18に当接し、これら当接部にレーザーユニットホルダー24の荷重の一部がかかるため、ロック状態で衝撃力が加わったとしても、ボールベアリングが変形したり傷ついたりすることを防止することができ、ボールベアリングの変形や傷を原因とするレーザーユニットホルダー24の姿勢の狂いを防止して、常に正確な鉛直光線または水平光線を投射することができる。
【0026】
図示の実施形態では、ジンバル機構の軸は一方向のみ(この方向をX方向とする)になっていたが、互いに直交する二方向(X−Y方向)の軸にするとなおよい。二方向の軸にした場合、一方向(X方向)の軸のみを上下2段にし、あるいはこれに直交する方向(Y方向)の軸のみを上下2段にしてもよいし、二方向(X−Y方向)の軸をともに上下2段にしてもよい。
【0027】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、同一方向の上下2段の第1の軸と第2の軸を有するとともに、第1の軸によって揺動可能に支持された揺動体を有し、第2の軸が揺動体によって支持されており、第2の軸によってレーザーユニットホルダーが上記揺動体に揺動可能に支持されているため、衝撃力が加わった場合に、軸に加わる衝撃力を上下2段の軸に分散させ、軸を支持するボールベアリングの変形や傷つきを防止することができ、ボールベアリングの変形や傷を原因とするレーザーユニットホルダーの姿勢の狂いを防止して、常に正確な鉛直光線または水平光線を投射することができる。
【0028】
請求項4記載の発明によれば、ロック機構によるレーザーユニットホルダーのロック操作などによってレーザーユニットホルダーが一定の角度以上に傾き、あるいはレーザーユニットホルダーが上下方向に押されると、揺動体が第1の軸を中心に所定の角度以上に揺動して外リングに当接し、荷重の一部が外リングにかかり、荷重が軸および軸受に集中することを回避し、軸および軸受の変形や傷つきを防止することができる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、ロック機構によるレーザーユニットホルダーのロック操作などによってレーザーユニットホルダーが一定の角度以上に傾き、あるいはレーザーユニットホルダーが上下方向に押されると、レーザーユニットホルダーが揺動体に当たって荷重の一部が揺動体にかかり、荷重が軸および軸受に集中することを回避し、軸および軸受の変形や傷つきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるレーザー墨出し器のジンバル機構の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記実施形態中のジンバル機構部分を示す一部断面斜視図である。
【図3】上記ジンバル機構部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
15 ジンバル機構
16 外リング
18 揺動体としての揺動リング
24 レーザーユニットホルダー
30 レーザーユニット
40 レーザーユニット
44 第1の軸
47 第2の軸
50 レーザーユニット
Claims (5)
- 少なくとも一つのレーザーユニットが取付けられたレーザーユニットホルダーを揺動可能に支持してなるレーザー墨出し器のジンバル機構であって、
同一方向の上下2段の第1の軸と第2の軸を有するとともに、第1の軸によって揺動可能に支持された揺動体を有し、
上記第2の軸が上記揺動体によって支持されており、
上記第2の軸によって上記レーザーユニットホルダーが上記揺動体に揺動可能に支持されていることを特徴とするレーザー墨出し器のジンバル機構。 - レーザーユニットホルダーは、揺動体の内方において第2の軸により揺動可能に支持されている請求項1記載のレーザー墨出し器のジンバル機構。
- 第1の軸よりも下側に第2の軸が位置している請求項1または2記載のレーザー墨出し器のジンバル機構。
- 揺動体は円筒形の部材で、外リングの内方に第1の軸を中心に揺動可能に支持されており、揺動体が第1の軸を中心に所定の角度以上に揺動すると外リングに当接し、この当接位置に荷重の一部がかかることを特徴とする請求項1または2記載のレーザー墨出し器のジンバル機構。
- レーザーユニットホルダーが第2の軸を中心に揺動体に対して所定の角度以上に揺動すると揺動体に当接し、この当接位置にレーザーユニットホルダーの荷重の一部がかかることを特徴とする請求項4記載のレーザー墨出し器のジンバル機構。
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