JP3555992B2 - 環縫いミシンにおける糸外し方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、フック部を備えたかぎ針の上下動と布送りとに伴い、多数のループを連鎖状に結合して、加工布に環縫い縫目を形成する環縫いミシンにおいて、縫製場所の変更等に際し、糸をかぎ針から外す方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の糸外し方法として、図7及び図8に示す技術が知られている。図7に示す第一の従来方法においては、例えば、一つの柄が終了して次の縫製場所に移る場合に、布送りを停止した状態で、かぎ針31を上下動することによって糸外しが試みられる。すなわち、まず、同図(a)に示すように、前の柄の縫製終了点で、かぎ針31が上昇され、糸Tが針板32の針孔32a及び加工布Wを貫通して上方へ引き出され、最終ループLが糸縛りのために通常よりも大き目に形成される。次に、同図(b)に示すように、かぎ針31が下降され、そのフック部31aが最終ループLから解離される。続いて、かぎ針31がフック部31aを縫製方向前方に向けたままで上昇され、最終ループLの糸Tがかぎ針31から外される。その後、加工布Wが送られ、次の柄の縫製開始点がかぎ針31の真下に位置決めされる。
【0003】
これに対し、図8に示す第二の従来方法においては、次の縫製場所に移る際に、かぎ針31を一定の高さに保持した状態で、加工布Wを前後に送ることによって糸外しが行われる。すなわち、まず、同図(a)に示すように、加工布Wが縫製終了点から通常ピッチよりも相当大きな移動量で送られ、長い最終ループLが形成される。次に、同図(b)に示すように、加工布Wが逆方向へ戻され、かぎ針31のフック部31aと最終ループLの先端との間に間隙が形成される。続いて、同図(c)に示すように、かぎ針31が回動され、フック部31aが縫製方向後方に向けられる。その後、かぎ針31を同じ高さに保持した状態で加工布Wが送られ、糸Tがかぎ針31から外されるとともに、次の柄の縫製開始点がかぎ針31の真下に位置決めされる。なお、この第二の従来方法は特開平4−51989号公報に開示された公知技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、環縫い縫目は多数のループを連鎖状に結合して形成されるため、最終のループが一つ前のループによって縫製方向後方へ引っ張られることがある。こうした場合、第一の従来方法によると、図7の(b)に示すようにかぎ針31の下降によりフック部31aから一旦解離された最終ループLの糸Tが、その後のかぎ針31の上昇に伴ってフック部31aに再度引っ掛かる可能性がある。糸Tが引っ掛かった状態で、加工布Wを次の縫製場所へ送ると、糸切りをしていない場合は、糸Tによって加工布Wが無理に引っ張られ、また、糸切り後の場合には、糸端が加工布Wの表側に引き出され、何れの場合も、仕上りを悪くするという問題点があった。
【0005】
これに対し、第二の従来方法によると、かぎ針31を後退させた後に回動して、フック部31aを縫製方向後方へ向けるため、糸Tをフック部31aから確実に解離することができる。しかしながら、こうするためには加工布Wを前後に送らねばならず、糸外し用の特別な布送り制御が必要になるばかりでなく、布送りに相当時間を費やす無駄もあった。また、糸Tの弾力によってループLが起立しないように、これを相当長く形成しておく必要があり(前掲公報の第2頁右下欄に記載)、一つの柄のうちで最終ループLのみが加工布Wから大きく突出し、縫製品の見栄えを悪くするという不具合もあった。この不具合を回避するために、最終ループLを短めに形成した場合には、場所替えの布送りに際し、かぎ針31が一定の高さ位置で相対移動するので、かぎ針31の背側に起立したループLが衝突し、このときの衝撃で糸Tが切断される可能性もあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、縫製場所の変更等に際し、仕上りに悪影響を及ぼすことなく、簡単な制御で糸をかぎ針から確実に外すことができる環縫いミシンにおける糸外し方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の糸外し方法は、フック部を備えたかぎ針の上下動と布送りとに伴い、多数のループを連鎖状に結合して、加工布に環縫い縫目を形成する環縫いミシンにおいて、布送りを停止した状態で、かぎ針を上昇し、糸を加工布から引き出し、かぎ針を下降し、フック部が縫製方向後方に向くようにかぎ針を回動した後に、かぎ針を上昇して、糸をかぎ針から外すことを特徴とする。
【0008】
ここで、「縫製方向後方」とは、縫製方向に対し90°〜270°の範囲を含み、好ましくは、120°〜240°の範囲、さらに好ましくは、150°〜210°の範囲を例示できる。
【0009】
【作用】
本発明の糸外し方法によれば、かぎ針を下降位置で回動して、フック部を縫製方向後方へ向けた後に、かぎ針を上昇するので、ループが後方へ傾いた状態で形成された場合でも、糸をフック部に引っ掛けることなく、かぎ針から確実に外すことができる。また、糸外しが布送りの停止状態で行われるため、特別な布送り制御が不要となり、かぎ針を上下動及び回動するだけの簡単な制御によって、糸を短時間に外すことができる。さらに、ループの起立状態であっても糸外しが可能であるから、ループを必要最小限の長さに形成して、縫製品の見栄えをよくすることもできる。しかも、糸外し後の布送りに際しては、かぎ針が上昇されるので、かぎ針とループとの衝突を回避できて、糸切れを未然に防止することができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を具体化した一実施例を図面に基づいて説明する。図1は環縫い刺繍ミシンのヘッド部分を示すもので、ミシンヘッド1の前面には支持枠2が取り付けられている。支持枠2には案内筒3を介して針棒4が上下動可能に支持され、針棒4の下端にはフック部5aを備えたかぎ針5が装着されている。ミシンヘッド1の下方には針板6が配設され、針板6の下側にはかぎ針5に糸を供給するルーパ7が設置されている。加工布Wは針板6の上側において刺繍枠8に張設されている。
【0011】
ミシンヘッド1の後方には、多頭刺繍ミシンの複数のヘッドに共通の駆動軸10が配設されている。駆動軸10は歯車11,12を介して主軸13に連結され、主軸13の前端にはクランク14が取着されている。ミシンヘッド1と支持枠2との間には昇降枠15が介装され、その横長孔15aはクランク14の偏心ピン14aに連結されている。昇降枠15の上端には連結具28が傾動可能に軸着され、連結具28はばね23によって図1の左回り方向に付勢されている。この付勢により、連結具28のフック部28aは、案内バー29に昇降可能に装着された昇降子30の係合ピン30aに係脱可能に係合している。
【0012】
一方、案内筒3の上部にはスライダ16が外嵌され、スライダ16はネジ17により針棒把持体18を介し針棒4に結合されている。そして、スライダ16の外周溝16aに前記昇降子30の嵌合部30bが嵌合している。また、ミシンヘッド1の支持枠9には操作軸33が回動可能に軸着され、操作軸33には持上レバー34が止着されている。フック部28aが係合ピン30aから外れた状態で、操作軸33及び持上レバー34が図1の右回り方向に回動すると、持上レバー34は昇降子30の上端の被動ピン30cに当接して昇降子30を上方へ持上げるようになっている。
【0013】
従って、フック部28aが係合ピン30aに係合しているときには、主軸13の回転によって、昇降枠15、連結具28、昇降子30、針棒4及びかぎ針5が一体的に上下動され、かぎ針5の上下動と刺繍枠8による布送りとに伴い、多数のループが連鎖状に結合され、加工布Wに環縫い縫目が形成される。また、フック部28aが係合ピン30aから外れたときには、主軸13が回転しても昇降子30以降は上下動せず、この状態で操作軸33が回動すると、持上レバー34は昇降子30を介して針棒4及びかぎ針5を縫製時の上死点位置よりも例えば20mm程度高い持上位置まで持上げるようになっている。
【0014】
案内筒3は支持枠2に回動可能に支持され、方向制御軸20により歯車21,22を介して垂直軸線の周りで回動される。この案内筒3に対し、針棒4は案内筒3の縦溝3aと針棒把持体18との嵌合を介して一体回動可能に連結されている。そして、縫製時には、方向制御軸20を刺繍データに基づく角度で回転することにより、案内筒3及び針棒4を一体に回動して、かぎ針5のフック部5aの向きを縫製方向に合わせて制御できるように構成されている。
【0015】
支持枠2の下端にはガイド筒24を介してスライド筒25が上下動可能に支持され、その下端にはニップル26が取着されている。スライド筒25の上端には、ニップル26を針棒4とは独自に昇降制御する制御部材27が連結されている。ニップル26は、かぎ針5が上昇して加工布Wから抜けるときに、加工布Wを押えていて加工布Wの浮き上がりを防止するとともに、常にかぎ針5の上下動を案内して、かぎ針5の振れを防止する。
【0016】
上記のように構成された環縫い刺繍ミシンにおいて、次に、糸外し方法の一実施例を図2〜図6に基づいて説明する。一つの柄の縫製が終了すると、その時点で布送りが停止され、糸切り装置を装備したミシンの場合は、針板6の下側で糸Tが切断される。次いで、図2に示すように、ニップル26が上昇される。続いて、操作軸33及び持上レバー34が回動されて、図3に示すように、かぎ針5が上死点位置よりも高い持上位置まで上昇され、糸Tが針板6の針孔6a及び加工布Wを貫通して上方へ引き出され、ループLが糸縛りのために通常よりも大き目に形成される。
【0017】
再び、図4に示すように、かぎ針5のみが加工布Wに近接する位置まで下降され、そのフック部5aがループLから解離される。このようにかぎ針5が下降した状態で、方向制御軸20が回転され、図5に示すように、同かぎ針5が180°回動されて、フック部5aが縫製方向後方に向けられる。そして、操作軸33及び持上レバー34が回動されて、図6に示すように、かぎ針5が上死点位置よりも高い持上位置まで上昇され、糸Tがかぎ針5から外される。こうすれば、ループLが糸Tの弾力で後方へ傾いて形成されていた場合でも、かぎ針5の上昇時に糸Tをフック部5aに引っ掛けるおそれがなく、糸Tをかぎ針5から確実に外すことができる。
【0018】
糸外し後は、加工布Wが送られ、次の柄の縫製開始点がかぎ針5の真下に位置決めされる。このとき、糸Tはかぎ針5から完全に外れているので、糸切り後の糸端が加工布Wの表側に引き出されたり、糸切りをしていない場合に加工布Wが無理に引っ張られたりするおそれがなく、刺繍柄を見栄え良く仕上げることができる。また、かぎ針5を上昇した後に加工布Wを送るため、かぎ針5とループLとの衝突を確実に回避できて、糸切れを未然に防止することもできる。
【0019】
このように、本実施例の糸外し方法によれば、糸外しが布送りの停止状態で行われるため、特別な布送り制御が不要となり、既存の機構を利用してかぎ針5を上下動及び回動するだけの簡単な制御によって、糸Tを短時間に外すことができる。また、ループLが起立した状態であっても糸外しが可能であるから、ループLを糸縛りに必要な最小限の長さに形成して、縫製品の見栄えを良くすることもできる。
【0020】
なお、本発明は刺繍ミシンに限定されるものではなく、加工布をミシンベッド上で送り歯により送るタイプの環縫いミシンにおいて実施することもでき、その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して具体化することも可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の環縫いミシンにおける糸外し方法によれば、縫製場所の変更等に際し、かぎ針を下降位置で回動して、フック部を縫製方向後方へ向けた後に、かぎ針を上昇するので、仕上りに悪影響を及ぼすことなく、簡単な制御で糸をかぎ針から確実に外すことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る糸外し方法が実施される環縫い刺繍ミシンの要部断面図である。
【図2】同糸外し方法の最初の動作を示す断面図である。
【図3】同糸外し方法の第2の動作を示す断面図である。
【図4】同糸外し方法の第3の動作を示す断面図である。
【図5】同糸外し方法の第4の動作を示す断面図である。
【図6】同糸外し方法の第5の動作を示す断面図である。
【図7】第一従来例の糸外し方法を示す断面図である。
【図8】第二従来例の糸外し方法を示す断面図である。
【符号の説明】
4 針棒
5 かぎ針
5a フック部
6 針板
8 刺繍枠
13 主軸
20 方向制御軸
T 糸
L ループ
W 加工布
Claims (1)
- フック部を備えたかぎ針の上下動と布送りとに伴い、多数のループを連鎖状に結合して、加工布に環縫い縫目を形成する環縫いミシンにおいて、布送りを停止した状態で、かぎ針を上昇し、糸を加工布から引き出し、かぎ針を下降し、フック部が縫製方向後方に向くようにかぎ針を回動した後に、かぎ針を上昇して、糸をかぎ針から外すことを特徴とする環縫いミシンにおける糸外し方法。
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| JP21054094A JP3555992B2 (ja) | 1994-08-10 | 1994-08-10 | 環縫いミシンにおける糸外し方法 |
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1994
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