JP3555899B2 - 金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物 - Google Patents

金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は工業用金属及びプラスチックス材料の脱脂洗浄剤組成物に関する。更に詳しくは、アルカリ洗浄に際して金属及びプラスチックス材料表面に付着した汚れ成分を効果的に除去する脱脂洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】
従来より、金属やプラスチックス材料を脱脂、洗浄するためには溶剤洗浄、アルカリ洗浄、酸洗浄等の種々の方法が用いられている。
その中で、アルカリ型洗浄剤は、酸の中和、油脂類の鹸化および電気伝導性を有する等の性質から動植物性油脂、鉱物油、ワックス、グリース、タンパク質及びカーボン等の強力な汚れの洗浄剤として工業的に有用な手段として用いられている。また、その利用される工業分野としては、金属、金属−プラスチックス、ガラス等の脱脂洗浄分野であり、該分野において幅広く使用されている。
本発明で目的とする、金属やプラスチックス材料表面の脱脂、洗浄は、メッキ、塗装等の前処理として不可欠であり、その良し悪しは、メッキ、塗装等の成否を支配する重要な因子となっている。
金属やプラスチックス材料の洗浄剤組成物としては、アルカリ剤等の各種ビルダーと界面活性剤とからなるものが主流であり、汚れ中の遊離脂肪酸や酸性成分を鹸化し、中和する以外に汚れの脱脂液中への分散性を高めるとともに、長期間液の劣化がなく安定に使用できることが望まれる。また、洗浄方法には浸漬洗浄、スプレー洗浄、電解洗浄、ブラシ洗浄等、又はこれらを組み合わせた方法があり、これらの方法を用いて洗浄処理される。
【0003】
しかしながら、従来のアルカリ型脱脂洗浄剤は、未だ種々の問題点を有しており、十分満足のゆくものではなかった。特に、工業用水中及び/または汚れ成分から混入蓄積する硬水成分であるカルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオンによる界面活性剤の性能の低下、汚れ成分の吸着および汚れの劣化等による洗浄性の低下、洗浄液のスタミナ性の低下等の改良が熱望されている。特に昨今、上記問題点を改良するために効果のあるリン酸塩は、河川及び湖沼の富栄養化の問題があり、法的規制が強くなってきていること、NTA、EDTA等の有機キレート剤は、CODを高くすること、生態学上への悪影響の懸念があること等により、できるだけ使用しない方向での改良が特に望まれる。
【0004】
このような要求に対応すべく、例えば特公昭62−53600号公報、特開平2−110197号公報及び特公平4−50393号公報に、特定の界面活性剤、有機酸塩、水溶性高分子を使用して、従来の洗浄剤組成物に添加配合することによって上記要求を満足させようという技術が開示されている。
しかしながら、前記の従来の技術では、環境に対する影響、廃水処理性に対する低減等を満足する状態で、前記界面活性剤の性能の低下及びスタミナ性の低下等の改良を十分に行なえるとは言い難く、上記種々の特性を向上させた脱脂洗浄剤組成物の開発が待たれている。また、珪酸塩類の中の珪酸アルカリ金属塩は、無機ビルダーとして主に脱脂洗浄液のpH値を高くする目的であるアルカリ剤として使用されている(界面活性剤便覧、西・今井・笠、第624頁、1960、産業図書)。また、工業的に用いられる脱脂洗浄剤組成物中の珪酸アルカリ金属塩の使用に関する前記の特許公報等には、水溶性アルカリ剤としての珪酸アルカリ金属塩の使用についての記述は多く見受けられるが、耐水溶性に優れ、かつイオン交換能をも有する結晶性珪酸アルカリ金属塩の記述については触れられていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような技術的背景と前記の要望を満足し得る金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物について鋭意検討を重ねた結果、ある特定の組成からなる結晶性の珪酸塩化合物が高いアルカリ能とカチオン交換能を有することを見いだし、該結晶性珪酸塩及び/又はその水和物、および界面活性剤を必須成分として含有させることにより、該目的が達成された脱脂洗浄剤組成物を提供することが可能であることを見いだし、本発明を完成させるに到った。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、無水物の一般式として
xMO・ySiO・zM’O
(式中、MはNa及び/又はKを示し、M’はCa及び/又はMgを示し、y/x=0.5〜4.0、z/x=0〜1.0である。ただし、y/x=0.5〜2.0の場合を除く。)で表される結晶性珪酸塩および/またはその水和物、および界面活性剤を必須成分として含有してなる金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物に関する。
【0007】
本発明における結晶性珪酸塩は、無水物での組成が、一般式xMO・ySiO・zM’Oで表される。ここでMはNa及び/又はKを示し、M’はCa及び/又はMgを示す。また、y/xは0.5〜4.0であり、好ましくは0.5〜1.9であり、さらに好ましくは1.0〜1.9である。y/xが0.5未満では耐水溶性が不十分であり、4.0を超えると、イオン交換能が低くなり、金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物としての使用に適さない。z/xは0〜1.0であり、好ましくは0.005〜1.0であり、更に好ましくは0.01〜0.6である。z/xが1.0を超えるとイオン交換能が低く、金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物としての使用に適さない。x、y、zは前記のy/xおよびz/xに示されるような関係であれば、特に限定されるものではない。K/Naはカチオン交換速度を高める観点から通常0〜8.0であり、好ましくは0.01〜8.0である。Mg/Caはカチオン交換容量を高める観点から通常0〜10であり、好ましくは0.02〜10である。
【0008】
このような本発明における結晶性珪酸塩として、種々の態様があるが好適なものを例示すると次のようなものが挙げられる。
前記の一般式において、y/x=0.5〜1.9、z/x=0.005〜1.0、MO中のK/Na=0.01〜8.0、M’O中のMg/Ca=0〜10で表される、カチオン交換容量が200〜600CaCOmg/gである結晶性珪酸塩
【0009】
また、本発明における結晶性珪酸塩は、水和物であってもよく、この場合の水和量はHOのモル量換算として通常0〜20モル%である。
【0010】
本発明における結晶性珪酸塩は、合成により得られるものであって、前記一般式に示されるようにMO、SiO、M’ Oの三成分よりなっている。従って、本発明における結晶性珪酸塩を製造するには、その原料として各成分に対応する物質が必要になるが、本発明においては特に限定されることなく公知の化合物が適宜用いられる。例えば、MO成分、M’ O成分としては、各々の当該元素の単独あるいは複合の酸化物、水酸化物、塩類、当該元素含有鉱物が用いられる。具体的には例えば、MO成分の原料としては、NaOH,KOH,NaCO,KCO,NaSO等が、M’ O成分の原料としては、CaCO,Ca(OH)、MgCO,Mg(OH),MgO,ドロマイト等が挙げられる。SiO成分としては珪石,珪砂,クリストバライト石,カオリン,タルク,溶融シリカ,珪酸ソーダ等が用いられる。
【0011】
本発明においては、これらの原料成分を目的とする結晶性珪酸塩のx、y、zとなるように所定の量比で混合し、通常300〜1300℃、好ましくは500〜1000℃、さらに好ましくは600〜900℃の範囲で焼成して結晶化させる方法、及び同様に混合後、一旦1100℃〜1600℃で溶融してガラス化物を得た後焼成する方法、更に溶融後水ガラス化し焼成する方法が例示される。加熱時間は通常0.1〜24時間である。このような焼成は通常、電気炉、ガス炉等の加熱炉で行うことができる。また、焼成後、必要に応じて粉砕し所定の粒度に調製される。粉砕機としては例えばボールミル、ローラーミル等を用いてなされる。
このような製造方法により、前述のような構造上の特徴を有する本発明における結晶性珪酸塩を得ることができる。
【0012】
また、本発明における結晶性珪酸塩の水和物を調製するには、公知の方法により容易に行うことができ、特に制限されるものではない。例えば、前記のようにして得られた結晶性珪酸塩の無水物をイオン交換水に懸濁して水和させ、乾燥せしめて粉末化する方法が挙げられる。
【0013】
このようにして得られた本発明における結晶性珪酸塩またはその水和物は、一般に用いられる有機キレート剤と同等または、それ以上の特性が必要であるという観点から、カチオン交換容量として少なくとも200CaCOmg/g以上、好ましくは200〜600CaCOmg/gを有するものである。本発明においてカチオン交換容量とは、実施例で示す後述の測定方法により得られるカチオン交換能の値をいう。但し、500CaCOmg/g以上の場合は塩化カルシウム溶液の量を200mlにして測定した値である。
【0014】
本発明において耐水溶性とは、結晶性珪酸塩の水中での安定性を意味する。従って耐水溶性に劣るとは、水中での結晶性珪酸塩の安定性が悪く水中でのSi溶出量が増大することを意味する。一方、耐水溶性に優れるとは、結晶性珪酸塩の水中での安定性が高く、水中でのSi溶出量が非常に少ないことをいう。
本発明における結晶性珪酸塩において、水へのSi溶出量はSiO換算で通常120mg/g以下であり、好ましくは90mg/g以下、より好ましくは60mg/g以下であり、ほとんどが実質的に水に不溶である。なお、本発明において実質的に水に不溶であるとは、試料2gをイオン交換水100g中に加え、25℃で30分攪拌した場合におけるSi溶出量がSiO換算で通常120mg/gより少ないものをいう。
【0015】
本発明に用いる結晶性珪酸塩は、金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物として幅広く用いられ、優れたCa、Mg等のカチオン捕捉能およびアルカリ度調整能、更にpHの緩衝効果を発現する。その結果、本発明に用いる結晶性珪酸塩を配合したアルカリ性の脱脂洗浄剤は優れた脱脂及び洗浄性能を有する。
本発明の脱脂洗浄剤組成物に用いる結晶性珪酸塩の配合量は、特に限定されないが、組成物中に通常5〜95重量%、好ましくは20〜85重量%である。5重量%未満であると十分な脱脂及び洗浄性能を発現せず、95重量%を越えると界面活性剤及びその他の添加剤の配合量が少なくなり、乳化及び分散性が不良となる。
【0016】
また、本発明で用いられる界面活性剤としては、ノニオン型界面活性剤、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれでもよく、例えば以下のものが挙げられる。
【0017】
(1)例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノ−,ジ−エステル等のノニオン型界面活性剤、
(2)例えば、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のアニオン型界面活性剤、
(3)例えば、アルキルアミンアセテート、アルキルアミン塩酸塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン型界面活性剤、
(4)例えば、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
この内、(1)のノニオン型界面活性剤としては、次の一般式:
−O−(CHCHO)−(CHCHCHO)
(式中、RはH、炭素数1〜18の直鎖脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12の分岐鎖脂肪族炭化水素基またはアルキル基の炭素数が1〜12のアルキルフェニル基を示し、nは0〜60、mは0〜60で且つn+mは1より大きい数を示す。)
で表されるものが好ましい。
【0018】
これらの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリルエーテル、ポリオキシエチレンキシレニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル等が挙げられる。
【0019】
上記の界面活性剤成分の脱脂洗浄剤組成物における配合量は、特に限定されないが、通常0.1〜50重量%であり、好ましくは1〜30重量%である。
また、本発明の脱脂洗浄剤組成物は、前記の結晶性珪酸塩、および界面活性剤を含むのみで著しい効果が得られるが、更に無機ビルダー、有機ビルダーを含有させるか、これらを併用することにより相乗効果を得ることができる。本発明に用いることができる無機ビルダー及び有機ビルダーを、以下に例示する。
【0020】
▲1▼無機ビルダー;
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の強アルカリ剤;硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、珪酸等の無機酸のアルカリ金属塩;アンモニウム塩、低級アミン塩等;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが用いられる。これらは通常、脱脂洗浄剤組成物に対して5〜90重量%程度を添加して用いられる。
【0021】
▲2▼有機ビルダー;
グリシン、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のアミノカルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、粘液酸等のオキシカルボン酸類のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、低級アミン塩等が用いられる。これらは通常、脱脂洗浄剤組成物に対して0.5〜15重量%程度を添加して用いられる。
これらの無機ビルダーおよび有機ビルダーは金属やプラスチックス材料の種類、汚れ成分の種類等により必要に応じて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例、比較例および試験例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。尚、本実施例及び比較例における測定値は、次に示す方法により測定した。また、実施例12以外の実施例は参考例である。
【0023】
(1)カチオン交換能
試料0.1gを精秤し、塩化カルシウム水溶液(濃度はCaCOとして500ppm)100ml中に加え、25℃で60分間撹拌した後、孔サイズ0.2μmのメンブランフィルター(アドバンテック社、ニトロセルロース製)を用いて濾過を行い、その濾液10ml中に含まれるCa量をEDTA滴定により測定した。その値より試料のカルシウムイオン交換容量(カチオン交換容量)を求めた。
【0024】
(2)Si溶出量
試料2gをイオン交換水100g中に加え、25℃で30分間攪拌する。その後遠心分離を行い、その上澄みを孔サイズ0.2μmのメンブランフィルターを用いて濾過する。濾液中のSi濃度をプラズマ発光分析(IPC)により測定し、SiO換算でSiの溶出量を求めた。
【0025】
(3)アルカリ能
試料1gを精秤し、イオン交換水1000mlに懸濁し撹拌しながら、0.25規定の塩酸を10ml滴下した際に、懸濁液のpHが9.0〜12.0を示すようなものをアルカリ能が良好であると判定し、pHが9.0未満の場合に、アルカリ能が不十分であると判定した。
【0026】
実施例1
2号珪酸ソーダ(SiO/ NaO=2.5)100重量部に水酸化ナトリウム4.2重量部を加え、ホモミキサーにより、撹拌を行い水酸化ナトリウムを溶解した。ここに、微粉砕した無水炭酸カルシウム10重量部を加え、ホモミキサーを用いて混合した。混合物をニッケル製坩堝に適量採り、700℃の温度で、空気中1時間焼成し、急冷後得られた焼成体を粉砕して、本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体1を得た。この粉体のカチオン交換能は251CaCOmg/gと高く、かつSi溶出量は、21.5SiOmg/gであり耐水溶性に優れたものであった。また、得られた焼成体の粉末X線(CuKα)回折パターンは、d=3.95±0.1Aに主回折ピークを示し、焼成前の混合物とは異なる新規な結晶構造を示す物質であった。
【0027】
実施例2〜8
実施例1において無水炭酸カルシウムの添加量を変えることにより、表1に示す組成となるようにした以外は実施例1と同様にして本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体2〜8を得た。得られた粉体についてカチオン交換能及びSi溶出量を測定し、その結果を表1に示したが、本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体1と同様にカチオン交換能及び耐水溶性に共に優れたものであった。また、得られた焼成体の粉末X線(CuKα)回折パターンは、d=4.17〜2.05Aに主回折ピークを示し、それぞれ焼成前の混合物とは異なる新規な結晶構造を示す物質であった。
【0028】
実施例9〜11
実施例1における無水炭酸カルシウムの代わりに無水炭酸マグネシウムを用いるか、無水炭酸カルシウム及び無水炭酸マグネシウムを同時に用いて、表2に示す組成となるようにした以外は実施例1と同様にして本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体9〜11を得た。得られた粉体についてカチオン交換能及びSi溶出量を測定し、その結果を表2に示したが、本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体1と同様にカチオン交換能及び耐水溶性に共に優れたものであった。また、得られた焼成体の粉末X線(CuKα)回折パターンは、d=4.17〜2.05Aに主回折ピークを示し、それぞれ焼成前の混合物とは異なる新規な結晶構造を示す物質であった。
【0029】
実施例12〜14
実施例1において2号珪酸ソーダの代わりに、325メッシュパスの珪石粉と水酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムを用い、無水炭酸カルシウムまたは無水炭酸マグネシウムを用いて、表2に示す組成となるようにした以外は実施例1と同様にして本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体12〜14を得た。得られた粉体についてカチオン交換能及びSi溶出量を測定し、その結果を表2に示したが、本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体1と同様にカチオン交換能及び耐水溶性に共に優れたものであった。また、得られた焼成体の粉末X線(CuKα)回折パターンは、d=4.17〜2.05Aに主回折ピークを示し、それぞれ焼成前の混合物とは異なる新規な結晶構造を示す物質であった。
【0030】
実施例15、16
実施例7、14で得られた無水物10gを500mlのイオン交換水中に1時間分散させ、0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、フィルター上の残渣を100℃で16時間乾燥させ、それぞれ実施例7、14で得られたものの水和物である本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体15、16を得た。得られた粉体についてカチオン交換能及びSi溶出量を測定し、その結果を表1および表2に示したが、本発明に用いられる結晶性珪酸塩粉体1と同様にカチオン交換能及び耐水溶性に共に優れたものであった。また、得られた焼成体の粉末X線(CuKα)回折パターンは、d=10.40〜3.98Aに主回折ピークを示し、それぞれ焼成前の混合物とは異なる新規な結晶構造を示す物質であった。
【0031】
【表1】
Figure 0003555899
【0032】
【表2】
Figure 0003555899
【0033】
比較例1
2号珪酸ソーダ100重量部に水酸化ナトリウム1.9重量部を加え、ホモミキサーを用いて水酸化ナトリウムを溶解した。これを、ニッケル製坩堝に適量採り、700℃の温度で、空気中1時間焼成した。急冷後、粉砕を行い比較粉体1を得た。この粉体のカチオン交換能は、142CaCOmg/gと低い値であった。また、Si溶出量は、3.8SiOmg/gであった。
【0034】
比較例2
2号珪酸ソーダ100重量部に水酸化ナトリウム28重量部を加え、ホモミキサーを用いて水酸化ナトリウムを溶解した。これを、ニッケル製坩堝に適量採り、700℃の温度で、空気中1時間焼成した。急冷後、粉砕を行い比較粉体2を得た。この粉体のカチオン交換能は91CaCOmg/gと低く、Si溶出量は、171SiOmg/gと耐水溶性に劣るものであった。
【0035】
比較例3
2号珪酸ソーダの粉末を比較粉体3とした。この粉体のカチオン交換能は、59CaCOmg/gと低く、全量水ガラス状に溶解するため耐水溶性に劣るものであった。
【0036】
比較例4
メタ珪酸ソーダの粉末を比較粉体4とした。この粉体のカチオン交換能は、0CaCOmg/gと全くなく、全量水ガラス状に溶解するため耐水溶性に劣るものであった。
【0037】
【表3】
Figure 0003555899
【0038】
脱脂洗浄剤組成物の調製例
前記の実施例で得られた結晶性珪酸塩粉末を用いた、本発明の脱脂洗浄剤組成物の調製例(A〜O)を表4に示す。また、前記の比較例で得られた比較粉体を用いた、比較用脱脂洗浄剤組成物の調製例(P〜Y)を表5に示す。
界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(a)、ポリオキシエチレン(3.0)アルキル(C12〜C16)エーテル硫酸ナトリウム(b)、ポリオキシエチレン(8.0)ノニルフェニルエーテル(c)を用いた。
また、その他の無機ビルダーとして、常用される水酸化ナトリウム(I)、トリポリリン酸ナトリウム(II)、有機ビルダーとしてニトリロ三酢酸(III)、エチレンジアミン四酢酸(IV)を用いた。
【0039】
【表4】
Figure 0003555899
【0040】
【表5】
Figure 0003555899
【0041】
試験例1(脱脂洗浄性能試験)
トリクロロエチレン溶剤により脱脂したステンレスパイプに潤滑剤0.2gをパイプ表面に均一付着させ、60℃で2時間保温放置したものをテストピースとし、表4、表5に示す脱脂洗浄剤組成物を用い、下記テスト条件で浸漬洗浄した。その後、テストピースを流水中で30秒間水洗し、温風乾燥を施した。上記により処理されたテストピース表面の残留油分をトリクロロエチレン溶剤により抽出し、その抽出油の重量を測定し、次式により脱脂率を求め評価した。この結果を表6、表7に示す。
脱脂率(%)=(テスト前付着量−テスト後付着量)/テスト前付着量×100
(テスト条件)
ステンレスパイプ:SUS 304TPD
潤滑剤:鉱物油+合成エステル
脱脂洗浄剤濃度:15°DH硬水を用いて、脱脂洗浄剤組成物の4重量%液を調製し、評価に用いた。
脱脂洗浄液温度:50℃
洗浄時間:10分
脱脂洗浄液撹拌:400rpm
【0042】
試験例2(スタミナ性能試験)
試験例1の脱脂洗浄性能試験において、パイプ処理数50本及び100本目の脱脂率からスタミナ性能を評価した。
【0043】
試験例3(排水処理性能試験)
試験例1で調製した液と同様の使用前の脱脂洗浄液を、更に100倍に希釈したもの1000mlを処理液とし、塩化第2鉄を用いた凝集沈澱法により処理した。
〔排水処理法〕
上記100倍希釈品にHClを添加し、pH=5に調整した後、塩化第二鉄を添加し、水酸化カルシウムを添加し、pH=7にした後、濾過し、得られた濾液のCOD値を測定し、これを排水処理後のCOD濃度(ppm)として示し、評価した。この結果を表6、表7に示す。
【0044】
【表6】
Figure 0003555899
【0045】
【表7】
Figure 0003555899
【0046】
表6、表7の各試験結果に示されるように、本発明の脱脂洗浄剤組成物は、脱脂洗浄性、スタミナ性、排水処理性等のいずれの特性も満足し、優れた性能が得られた。一方、比較用脱脂洗浄剤組成物に見られるように、従来の組成物では、上記要求特性を同時に満足する性能を得ることが難しいことが判明した。
【0047】
【発明の効果】
本発明の金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物は、従来の脱脂洗浄剤組成物では困難であった高い脱脂洗浄性とスタミナ性を維持する。さらに、従来の有機および無機ビルダーの全てまたは一部と置き換えることにより、昨今問題となっている河川および湖沼等の富栄養化および生態学上も問題となり得る有機化合物の使用を低減あるいは使用することなく、低CODおよび良好な排水処理性が達成される。

Claims (5)

  1. 無水物の一般式としてxMO・ySiO・zM’O(式中、MはNa及び/又はKを示し、M’はCa及び/又はMgを示し、y/x=0.5〜4.0、z/x=0〜1.0である。ただし、y/x=0.5〜2.0の場合を除く。)で表される結晶性珪酸塩及び/又はその水和物、および界面活性剤を必須成分として含有してなる金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物。
  2. 結晶性珪酸塩のカチオン交換容量が200〜600CaCOmg/gである請求項1記載の金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物。
  3. 結晶性珪酸塩の水へのSi溶出量がSiO換算で120mg/g以下である請求項1又は2記載の金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物。
  4. 結晶性珪酸塩が酸に対する緩衝作用であるアルカリ能を有するものである請求項1〜いずれかに記載の金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物。
  5. 結晶性珪酸塩および/またはその水和物を5〜95重量%、および界面活性剤を0.1〜50重量%配合することを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の金属・プラスチックス用脱脂洗浄剤組成物。
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