JP3555777B2 - 方向性傾斜溝を有する高運動性能空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は乗用車用空気入りタイヤに関するもので、特に、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤであって、しかもウエット性能を犠牲にせずにパターン・ノイズを低く抑えた乗用車用空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高運動性能乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンの典型的な従来例を図3に示す。従来のタイヤは、図示のように、数本(図示の例では4本、一般的には2乃至8本程度)の周方向溝と周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝よりなるトレッド・パターンを備えている。
本明細書において、
周方向溝とは、周方向に連続して延びるストレート溝または実質的にストレートな溝を意味し、
周方向リブとは、周方向に連続または実質的に連続して延びるリブを意味し、
方向性傾斜溝とは、周方向に対して傾斜して延びる溝であって、該溝の傾斜して延びる部分のタイヤ赤道面に近い側が先に接地して、赤道面に遠い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向が指定されている、いわゆる方向性トレッド・パターンが形成される溝を意味する。
【0003】
上記のような従来のタイヤでウエット路面での操縦安定性やハイドロ・プレーニング特性を高めるためには、溝本数や溝幅を増やしてネガティブ比率(トレッド接地面の面積に対する溝表面の面積の割合)を増加させること、特に、方向性傾斜溝のネガティブ比率を高めることが効果的であって、頻繁に採用される設計手法である。
しかしながら、この手法で設計されたウエット性能に優れた方向性トレッド・パターンを備えた空気入りタイヤではパターン・ノイズが悪化することが分かった。タイヤのパターン・ノイズはいろいろな要素から構成されているが、タイヤが負荷状態で回転したときに路面と接触する際に発生する打撃音もその一つである。高ネガティブ比率の方向性傾斜溝を有するタイヤの場合にはこの打撃成分のパターン・ノイズが極端に大きいことが分かった。
また、排水性を高めるために、周方向に連続して延びる比較的広幅のストレート溝、いわゆるアクア・チャンネルと呼ばれる周方向溝をトレッド中央部に配置し、これと周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝を組み合わせたタイヤも知られている。このタイヤは、排水性には優れているが、直進安定性など微小舵角での操縦性が劣り、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤとしては不適格である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤであって、しかもウエット性能にも優れたパターン・ノイズを低く抑えた乗用車用空気入りタイヤに用いられる新規なトレッド・パターンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも1本の周方向リブと、周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝とを備えた方向性トレッド・パターンを有する空気入りタイヤにおいて、(1)該方向性傾斜溝は、少なくとも、周方向に対して10度〜30度の小さな傾斜角度で延びている方向性低傾斜溝を含み、(2)該方向性低傾斜溝は、タイヤ赤道面に遠い側よりタイヤ赤道面に近い側が周方向に対して小さな傾斜角度を有し、(3)該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックには、該周方向リブに隣接する箇所が設けられ、少なくともこの箇所でのブロック高さは、同一ブロック内でタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっていることを特徴とするトレッド・パターンを備えた空気入りタイヤである。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成される該ブロックの高さが、該周方向リブに隣接する同一ブロック内でタイヤの正回転時に最先に接地する箇所では、隣接する該方向性低傾斜溝底と同じレベルであることが好ましい。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性傾斜溝は、該方向性低傾斜溝のほかに、周方向に対して60度〜80度の大きな傾斜角度で延びている方向性高傾斜溝を含むことが好ましい。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性低傾斜溝および/または該方向性高傾斜溝はトレッド端部に開口していることが好ましい。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性傾斜溝の周方向に対する傾斜角度が、該方向性高傾斜溝では45度以上で、該方向性低傾斜溝では30度以下であることが好ましい。
【0010】
【作用】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、上記のように、周方向に対して10度〜30度の小さな傾斜角度で延びている多数の方向性低傾斜溝が周方向に間隔を置いて配置されているので、ウエット性能に優れたタイヤであるが、方向性低傾斜溝だけで構成されたパターンは十分なブロック剛性を確保しにくいので操縦安定性能に難点が生じやすい。本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、上記のように、方向性低傾斜溝とともに少なくとも1本の周方向リブとでパターンが構成されているので、この周方向リブによってトレッド・パターンに剛性が付与され、微小舵角時のハンドル手応えが強くなり、ドライバーに与えるいわゆる”しっかり感”が高まり、直進安定性が向上するとともに、スムースな接地によってパターン・ノイズも減少する。この周方向リブは、トレッド中央部に設ける、いわゆるセンター・リブが好ましいが、左右非対称のトレッド・パターンの場合にはトレッド幅の1/3程度まで片寄って周方向リブを設けることも可能で、さらにトレッド中央部に2本の周方向リブ設ける、いわゆるセンター・グルーブとすることも可能である。
【0011】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックには、周方向リブに隣接する箇所が設けられ、少なくともこの箇所でのブロック高さは、同一ブロック内でタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっているので、リブ剛性を確保しながらウエット性能をさらに向上することが可能となる。
【0012】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックによって周方向リブが支えられているので、従来の高運動性能乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターン(典型的な従来例を図3に示す)の周方向リブよりも細い幅にすることができる。
【0013】
【実施例】
本発明に従う実施例について図面を参照して説明すると、図1および図2は本発明に従う乗用車用空気入りタイヤの実施例1および実施例2のトレッド・パターンであって、タイヤ・サイズはいずれも225/50R16で、トレッド幅TWは約200mmである。
【0014】
図1に示す実施例1の空気入りタイヤは、トレッド中央部に設けられた1本の周方向リブ(1)と周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝(2、3)よりなるトレッド・パターンを備えている。
この方向性傾斜溝は、周方向に対して10度乃至30度の小さな傾斜角度で延びている方向性低傾斜溝(2)と周方向に対して60度乃至80度の大きな傾斜角度で延びている方向性高傾斜溝(3)とを含み、いずれも、タイヤ赤道面に遠い側よりタイヤ赤道面に近い側が周方向に対して小さな傾斜角度となるように曲線状に延びる溝であって、これらの溝の傾斜して延びる部分のタイヤ赤道面に近い側が先に接地して、赤道面に遠い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向(D)が図示の方向に指定されている、いわゆる方向性トレッド・パターンが形成されている。このように、タイヤの車両への装着姿勢の正面視で、トレッド中央部を境に下方から上方に向けて次第に拡開する方向に延びる複数本の方向性傾斜溝がトレッドに設けられている。
この方向性低傾斜溝(2)の間にブロック(41、42、43)が周方向に間隔を置いて形成され、周方向リブ(1)に隣接するブロック(41)の高さは、A〜A断面図に示すようにタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっていて、タイヤの正回転時に最先に接地する箇所では、隣接する該方向性低傾斜溝底と同じレベルである。換言すれば、ブロック(41)の最先に接地する箇所の高さが溝深さと同じくなるまでブロック(41)の表面が斜めに削り取られている。
方向性高傾斜溝(3)はトレッド端部に開口していて、タイヤのトレッド接地面と路面との間の水分の排水口の機能を担っている。
【0015】
図2に示す実施例2の空気入りタイヤは、基本的には図1に示す実施例1の空気入りタイヤと同じである。主たる相違点は、方向性高傾斜溝(3)の一部がスリット状に細くなっていることおよびトレッド中央部寄りを避けて主にトレッド両端付近に設けられていてその結果ブロック(41、43)がやや縦長になっていることで、実施例1の空気入りタイヤ対比排水性を若干犠牲にしてパターン・ノイズの改良を狙ったタイヤである。
【0016】
図3に示す従来例の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤのトレッド・パターンの典型的な例であって、図示のように5本の周方向溝と多数の方向性傾斜溝が周方向に間隔を置いて配置されている。タイヤ・サイズは225/50R16で、トレッド幅TWは約200mmであって、いずれも上記実施例と同じである。
トレッド中央に設けられた周方向溝(63)は幅4mmの狭い溝であるが、その左右に溝幅11mmの一対の周方向溝(62、64)が設けられ、さらに、トレッド両端部からトレッド中央部に向かってトレッド幅の約1/4に相当する個所に溝幅10mmの一対の周方向溝(61、65)が設けられ、この4本の太い周方向溝と多数の方向性傾斜溝(71、72、73、74、75、76)が濡れた路面上をタイヤが走行するときの排水性に大きく寄与することを狙ったタイヤである。
【0017】
図1乃至2に示す上記本発明に従う実施例1乃至2の乗用車用空気入りタイヤと図3に示す上記従来例の乗用車用空気入りタイヤについて、ハイドロ・プレーニング特性、パターン・ノイズおよびドライ路面での操縦安定性の評価試験を実施した。テスト条件はタイヤ内圧2.3Kg/cm2 、直線ハイドロ・プレーニング特性は水深5mmのウエット路面を時速80kmおよび90kmで通過時の接地面の残存面積の測定値、コーナリング時のハイドロ・プレーニング特性は水深5mmのウエット路面通過時の限界横Gの測定値、パターン・ノイズは直線平滑路を時速100Kmでエンジンを切りそのまま走行したときの車内音のフィーリング評価結果、ドライ路面での操縦安定性はドライ状態のサーキット・コースを種々の走行モードによりスポーツ走行したときのテスト・ドライバーのフィーリング評価結果である。
【0018】
評価結果は従来例の空気入りタイヤの結果を100とした指数表示で示してあり、数字が大きいほど性能が優れていることを示している。
評価結果のまとめを表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示された結果から、本発明に従う実施例1乃至2の乗用車用空気入りタイヤは上記従来例の乗用車用空気入りタイヤに比べて、ハイドロ・プレーニング特性とドライ路面での操縦安定性およびパターン・ノイズのいずれにおいても優れていることが分かった。
【0021】
【発明の効果】
本発明では、方向性高傾斜溝と周方向リブを適切に配置し、方向性低傾斜溝の間にブロックが周方向に間隔を置いて形成され、周方向リブに隣接するブロックの高さは、タイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっているので、排水性、操縦安定性およびパターン・ノイズのいずれにおいても優れたタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【図2】本発明による空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【図3】従来の典型的な空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【符号の説明】
D タイヤの回転方向
TE トレッド端部
TW トレッド幅
1 周方向リブ
2 方向性低傾斜溝
3 方向性高傾斜溝
41 ブロック
42 ブロック
43 ブロック
【産業上の利用分野】
本発明は乗用車用空気入りタイヤに関するもので、特に、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤであって、しかもウエット性能を犠牲にせずにパターン・ノイズを低く抑えた乗用車用空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高運動性能乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンの典型的な従来例を図3に示す。従来のタイヤは、図示のように、数本(図示の例では4本、一般的には2乃至8本程度)の周方向溝と周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝よりなるトレッド・パターンを備えている。
本明細書において、
周方向溝とは、周方向に連続して延びるストレート溝または実質的にストレートな溝を意味し、
周方向リブとは、周方向に連続または実質的に連続して延びるリブを意味し、
方向性傾斜溝とは、周方向に対して傾斜して延びる溝であって、該溝の傾斜して延びる部分のタイヤ赤道面に近い側が先に接地して、赤道面に遠い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向が指定されている、いわゆる方向性トレッド・パターンが形成される溝を意味する。
【0003】
上記のような従来のタイヤでウエット路面での操縦安定性やハイドロ・プレーニング特性を高めるためには、溝本数や溝幅を増やしてネガティブ比率(トレッド接地面の面積に対する溝表面の面積の割合)を増加させること、特に、方向性傾斜溝のネガティブ比率を高めることが効果的であって、頻繁に採用される設計手法である。
しかしながら、この手法で設計されたウエット性能に優れた方向性トレッド・パターンを備えた空気入りタイヤではパターン・ノイズが悪化することが分かった。タイヤのパターン・ノイズはいろいろな要素から構成されているが、タイヤが負荷状態で回転したときに路面と接触する際に発生する打撃音もその一つである。高ネガティブ比率の方向性傾斜溝を有するタイヤの場合にはこの打撃成分のパターン・ノイズが極端に大きいことが分かった。
また、排水性を高めるために、周方向に連続して延びる比較的広幅のストレート溝、いわゆるアクア・チャンネルと呼ばれる周方向溝をトレッド中央部に配置し、これと周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝を組み合わせたタイヤも知られている。このタイヤは、排水性には優れているが、直進安定性など微小舵角での操縦性が劣り、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤとしては不適格である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、スポーツ走行にも対応できる運動性能を重視した高運動性能タイヤであって、しかもウエット性能にも優れたパターン・ノイズを低く抑えた乗用車用空気入りタイヤに用いられる新規なトレッド・パターンを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも1本の周方向リブと、周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝とを備えた方向性トレッド・パターンを有する空気入りタイヤにおいて、(1)該方向性傾斜溝は、少なくとも、周方向に対して10度〜30度の小さな傾斜角度で延びている方向性低傾斜溝を含み、(2)該方向性低傾斜溝は、タイヤ赤道面に遠い側よりタイヤ赤道面に近い側が周方向に対して小さな傾斜角度を有し、(3)該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックには、該周方向リブに隣接する箇所が設けられ、少なくともこの箇所でのブロック高さは、同一ブロック内でタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっていることを特徴とするトレッド・パターンを備えた空気入りタイヤである。
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成される該ブロックの高さが、該周方向リブに隣接する同一ブロック内でタイヤの正回転時に最先に接地する箇所では、隣接する該方向性低傾斜溝底と同じレベルであることが好ましい。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性傾斜溝は、該方向性低傾斜溝のほかに、周方向に対して60度〜80度の大きな傾斜角度で延びている方向性高傾斜溝を含むことが好ましい。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性低傾斜溝および/または該方向性高傾斜溝はトレッド端部に開口していることが好ましい。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターンでは、該方向性傾斜溝の周方向に対する傾斜角度が、該方向性高傾斜溝では45度以上で、該方向性低傾斜溝では30度以下であることが好ましい。
【0010】
【作用】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、上記のように、周方向に対して10度〜30度の小さな傾斜角度で延びている多数の方向性低傾斜溝が周方向に間隔を置いて配置されているので、ウエット性能に優れたタイヤであるが、方向性低傾斜溝だけで構成されたパターンは十分なブロック剛性を確保しにくいので操縦安定性能に難点が生じやすい。本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、上記のように、方向性低傾斜溝とともに少なくとも1本の周方向リブとでパターンが構成されているので、この周方向リブによってトレッド・パターンに剛性が付与され、微小舵角時のハンドル手応えが強くなり、ドライバーに与えるいわゆる”しっかり感”が高まり、直進安定性が向上するとともに、スムースな接地によってパターン・ノイズも減少する。この周方向リブは、トレッド中央部に設ける、いわゆるセンター・リブが好ましいが、左右非対称のトレッド・パターンの場合にはトレッド幅の1/3程度まで片寄って周方向リブを設けることも可能で、さらにトレッド中央部に2本の周方向リブ設ける、いわゆるセンター・グルーブとすることも可能である。
【0011】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックには、周方向リブに隣接する箇所が設けられ、少なくともこの箇所でのブロック高さは、同一ブロック内でタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっているので、リブ剛性を確保しながらウエット性能をさらに向上することが可能となる。
【0012】
本発明の乗用車用空気入りタイヤでは、方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックによって周方向リブが支えられているので、従来の高運動性能乗用車用空気入りタイヤのトレッド・パターン(典型的な従来例を図3に示す)の周方向リブよりも細い幅にすることができる。
【0013】
【実施例】
本発明に従う実施例について図面を参照して説明すると、図1および図2は本発明に従う乗用車用空気入りタイヤの実施例1および実施例2のトレッド・パターンであって、タイヤ・サイズはいずれも225/50R16で、トレッド幅TWは約200mmである。
【0014】
図1に示す実施例1の空気入りタイヤは、トレッド中央部に設けられた1本の周方向リブ(1)と周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝(2、3)よりなるトレッド・パターンを備えている。
この方向性傾斜溝は、周方向に対して10度乃至30度の小さな傾斜角度で延びている方向性低傾斜溝(2)と周方向に対して60度乃至80度の大きな傾斜角度で延びている方向性高傾斜溝(3)とを含み、いずれも、タイヤ赤道面に遠い側よりタイヤ赤道面に近い側が周方向に対して小さな傾斜角度となるように曲線状に延びる溝であって、これらの溝の傾斜して延びる部分のタイヤ赤道面に近い側が先に接地して、赤道面に遠い側が後に接地するように車両に装着する際のタイヤの回転方向(D)が図示の方向に指定されている、いわゆる方向性トレッド・パターンが形成されている。このように、タイヤの車両への装着姿勢の正面視で、トレッド中央部を境に下方から上方に向けて次第に拡開する方向に延びる複数本の方向性傾斜溝がトレッドに設けられている。
この方向性低傾斜溝(2)の間にブロック(41、42、43)が周方向に間隔を置いて形成され、周方向リブ(1)に隣接するブロック(41)の高さは、A〜A断面図に示すようにタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっていて、タイヤの正回転時に最先に接地する箇所では、隣接する該方向性低傾斜溝底と同じレベルである。換言すれば、ブロック(41)の最先に接地する箇所の高さが溝深さと同じくなるまでブロック(41)の表面が斜めに削り取られている。
方向性高傾斜溝(3)はトレッド端部に開口していて、タイヤのトレッド接地面と路面との間の水分の排水口の機能を担っている。
【0015】
図2に示す実施例2の空気入りタイヤは、基本的には図1に示す実施例1の空気入りタイヤと同じである。主たる相違点は、方向性高傾斜溝(3)の一部がスリット状に細くなっていることおよびトレッド中央部寄りを避けて主にトレッド両端付近に設けられていてその結果ブロック(41、43)がやや縦長になっていることで、実施例1の空気入りタイヤ対比排水性を若干犠牲にしてパターン・ノイズの改良を狙ったタイヤである。
【0016】
図3に示す従来例の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤのトレッド・パターンの典型的な例であって、図示のように5本の周方向溝と多数の方向性傾斜溝が周方向に間隔を置いて配置されている。タイヤ・サイズは225/50R16で、トレッド幅TWは約200mmであって、いずれも上記実施例と同じである。
トレッド中央に設けられた周方向溝(63)は幅4mmの狭い溝であるが、その左右に溝幅11mmの一対の周方向溝(62、64)が設けられ、さらに、トレッド両端部からトレッド中央部に向かってトレッド幅の約1/4に相当する個所に溝幅10mmの一対の周方向溝(61、65)が設けられ、この4本の太い周方向溝と多数の方向性傾斜溝(71、72、73、74、75、76)が濡れた路面上をタイヤが走行するときの排水性に大きく寄与することを狙ったタイヤである。
【0017】
図1乃至2に示す上記本発明に従う実施例1乃至2の乗用車用空気入りタイヤと図3に示す上記従来例の乗用車用空気入りタイヤについて、ハイドロ・プレーニング特性、パターン・ノイズおよびドライ路面での操縦安定性の評価試験を実施した。テスト条件はタイヤ内圧2.3Kg/cm2 、直線ハイドロ・プレーニング特性は水深5mmのウエット路面を時速80kmおよび90kmで通過時の接地面の残存面積の測定値、コーナリング時のハイドロ・プレーニング特性は水深5mmのウエット路面通過時の限界横Gの測定値、パターン・ノイズは直線平滑路を時速100Kmでエンジンを切りそのまま走行したときの車内音のフィーリング評価結果、ドライ路面での操縦安定性はドライ状態のサーキット・コースを種々の走行モードによりスポーツ走行したときのテスト・ドライバーのフィーリング評価結果である。
【0018】
評価結果は従来例の空気入りタイヤの結果を100とした指数表示で示してあり、数字が大きいほど性能が優れていることを示している。
評価結果のまとめを表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1に示された結果から、本発明に従う実施例1乃至2の乗用車用空気入りタイヤは上記従来例の乗用車用空気入りタイヤに比べて、ハイドロ・プレーニング特性とドライ路面での操縦安定性およびパターン・ノイズのいずれにおいても優れていることが分かった。
【0021】
【発明の効果】
本発明では、方向性高傾斜溝と周方向リブを適切に配置し、方向性低傾斜溝の間にブロックが周方向に間隔を置いて形成され、周方向リブに隣接するブロックの高さは、タイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっているので、排水性、操縦安定性およびパターン・ノイズのいずれにおいても優れたタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【図2】本発明による空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【図3】従来の典型的な空気入りタイヤのトレッド・パターン図である。
【符号の説明】
D タイヤの回転方向
TE トレッド端部
TW トレッド幅
1 周方向リブ
2 方向性低傾斜溝
3 方向性高傾斜溝
41 ブロック
42 ブロック
43 ブロック
Claims (5)
- 少なくとも1本の周方向リブと、周方向に間隔を置いて配置された多数の方向性傾斜溝とを備えた方向性トレッド・パターンを有する空気入りタイヤにおいて、(1)該方向性傾斜溝は、少なくとも、周方向に対して10度〜30度の小さな傾斜角度で延びている方向性低傾斜溝を含み、(2)該方向性低傾斜溝は、タイヤ赤道面に遠い側よりタイヤ赤道面に近い側が周方向に対して小さな傾斜角度を有し、(3)該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成されるブロックには、該周方向リブに隣接する箇所が設けられ、少なくともこの箇所でのブロック高さは、同一ブロック内でタイヤの正回転時に先に接地する側が後に接地する側より低くなっていることを特徴とするトレッド・パターンを備えた空気入りタイヤ。
- 該方向性低傾斜溝の間に周方向に間隔を置いて形成される該ブロックの高さが、該周方向リブに隣接する同一ブロック内でタイヤの正回転時に最先に接地する箇所では、隣接する該方向性低傾斜溝底と同じレベルであることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 該方向性傾斜溝は、該方向性低傾斜溝のほかに、周方向に対して60度〜80度の大きな傾斜角度で延びている方向性高傾斜溝を含むことを特徴とする請求項1乃至2記載の空気入りタイヤ。
- 該方向性低傾斜溝および/または該方向性高傾斜溝はトレッド端部に開口していることを特徴とする請求項1乃至3記載の空気入りタイヤ。
- 該方向性傾斜溝の周方向に対する傾斜角度が、該方向性高傾斜溝では45度以上で、該方向性低傾斜溝では30度以下であることを特徴とする請求項1乃至4記載の空気入りタイヤ。
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