JP3642652B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロック基調のトレッドパターンを有する空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、ウェット性能や耐偏摩耗性を実質的に低下させることなく、騒音性能及び操縦安定性を向上するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ブロック基調のトレッドパターンを有する空気入りラジアルタイヤの騒音を低減する手法として、タイヤのピッチ数(ブロック数)を増やすこと等により、ブロック剛性を低減させて打音の減少を図ることが一般的に行われている。しかしながら、単にブロック剛性を低減させると、タイヤ横方向のブロック剛性が不十分になって操縦安定性が低下してしまうという問題があった。
【0003】
また、上述のように二律背反関係にある騒音性能と操縦安定性とをトレッドの溝形状を工夫することによって両立させようとする試みもあるが、この場合、ウェット路面における走行性能や耐偏摩耗性が犠牲になってしまう。このため、近年の自動車の高級化に伴って操縦性指向の自動車用タイヤについて優れた騒音性能が併せて要求されているが、このような要求品質を満足することが困難になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ウェット性能や耐偏摩耗性を実質的に低下させることなく、騒音性能及び操縦安定性を向上することを可能にする空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド面に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本のサブ溝とを設け、これら主溝及びサブ溝によって少なくともショルダー部に複数のブロックを分割形成した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記サブ溝をタイヤ赤道側から両ショルダー側へ向けてタイヤ反回転側へ傾斜させた方向性を有するトレッドパターンにすると共に、接地幅Wに対して両ショルダー側の各10%の領域で前記サブ溝をさらにタイヤ反回転側へ屈曲させ、その屈曲部のタイヤ周方向に対してタイヤ反回転側に測った傾斜角度αを0〜50°の範囲にし、溝幅bを0.3〜1.0mmの範囲にし、かつ長さeを8〜40mmの範囲にしたことを特徴とするものである。
【0006】
このようにサブ溝をタイヤ赤道側から両ショルダー側へ向けてタイヤ反回転側へ傾斜させた方向性を有するトレッドパターンにすると共に、騒音性能に大きな影響を与えるショルダー領域においてサブ溝をさらにタイヤ反回転側へ屈曲させ、その屈曲部のタイヤ周方向に対する傾斜角度αを上記範囲で小さくし、溝幅bを上記範囲で狭くし、かつ長さeを上記範囲で長く設定することにより、ウェット性能や耐偏摩耗性を実質的に低下させることなく、騒音性能及び操縦安定性を向上することが可能になる。
【0007】
なお、本発明において、接地幅WとはJATMA標準空気圧でJATMA最大荷重の80%にて接地したときの接地幅である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを例示するものである。このトレッドパターンは矢印Rの方向をタイヤ回転方向として指定された方向性パターンになっている。
【0009】
図1において、トレッド面Tには、タイヤ周方向に延びる2本の主溝1と、この主溝1よりも溝幅が狭い3本の副主溝2が設けられ、これらが副主溝2を中心としてタイヤ幅方向に交互に配置されていると共に、タイヤ幅方向に延びる複数本のサブ溝3が設けられている。これら主溝1、副主溝2及びサブ溝3によってタイヤ赤道側から両ショルダー側へそれぞれリブ列4、複数のブロック5aからなるブロック列5、複数のブロック6aからなるブロック列6が分割形成されている。また、サブ溝2はタイヤ赤道側から両ショルダー側へ向けてそれぞれタイヤ反回転側へ傾斜するように設けられている。
【0010】
両ショルダー部のブロック列6において、サブ溝3は2点A,Bを支点として2回屈曲し、図中右側ではS字型を形成し、左側ではZ字型を形成している。即ち、接地幅Wに対して両ショルダー端からタイヤ赤道側へ各10%の領域において、サブ溝3の2点A,B間の屈曲部3aはその両側の部分に比べてさらにタイヤ反回転側に傾斜するようになっている。
【0011】
図2に示すように、サブ溝3の屈曲部3aのタイヤ周方向に対してタイヤ反回転側に測った傾斜角度αは、0°≦α≦50°を満足するように小さく設定されている。また、サブ溝3の屈曲部3aの溝幅bは、0.3mm≦b≦1.0mmを満足するように狭く設定されている。更に、サブ溝3の屈曲部3aの長さeは、8mm≦e≦40mmを満足するように長く設定されている。
【0012】
このようにショルダー領域においてサブ溝3をさらにタイヤ反回転側へ屈曲させ、屈曲部3aのタイヤ周方向に対する傾斜角度αを上記範囲で小さくし、溝幅bを上記範囲で狭くし、かつ長さeを上記範囲で長く設定することにより、タイヤ周方向に隣り合うブロック6aが屈曲部3aを挟んでタイヤ幅方向に重複し、接地時に隣り合うブロック6aが互いに接触するようになるので、タイヤ周方向のブロック剛性を低減しながらタイヤ横方向のブロック剛性を向上することができる。従って、ショルダー領域のサブ溝3を上記形状にすることにより、タイヤ騒音の低減を図りながら操縦安定性を向上することができ、かつウェット性能や耐偏摩耗性を実質的に低下させることはない。
【0013】
本発明において、サブ溝3の屈曲部3aの傾斜角度αは、0〜50°の範囲にする。この屈曲部3aの傾斜角度αが0°未満(即ち、屈曲部3aがサブ溝3の方向性に反する状態)になると、ブロック6aの接地端部に鋭角なコーナーが形成されるので偏摩耗を生じやすくなる。一方、屈曲部3aの傾斜角度αが50°を超えると、騒音性能の向上を図ることができず、また必然的に屈曲部3aの長さeが不十分になるためウェット性能を確保することが困難になる。
【0014】
サブ溝3の屈曲部3aの溝幅bは、0.3〜1.0mmの範囲にする。この屈曲部3aの溝幅bが1.0mmを超えると、タイヤ横方向のブロック剛性を十分に確保することができないため操縦安定性が低下し、また通過音の低減を図ることができない。即ち、溝幅bを1.0mm以下にすることにより、ショルダー部における空気の流れが遮断され、ポンピングノイズを低減することが可能になる。なお、屈曲部3aの溝幅bの下限値は、タイヤ製造上の限界値である。
【0015】
サブ溝3の屈曲部3aの長さeは、8〜40mmの範囲にする。この屈曲部3aの長さeが8mm未満であると、タイヤ横方向のブロック剛性とウェット路面でのエッジ効果を確保することができなくなる。即ち、長さeを8mm以上にすることにより、そのエッジ効果によりウェット路面での走行性能を確保することができ、かつタイヤ横方向の剛性が向上するため操縦安定性の向上を図ることができる。一方、屈曲部3aの長さeが40mmを超えると、ブロック全体としての剛性が低下するため操縦安定性が不十分になる。
【0016】
なお、接地幅Wに対して両ショルダー端からタイヤ赤道側へ各10%のショルダー領域は、騒音性能に対して大きな影響を与えるが、この領域においてサブ溝3の形状を上記のように限定することにより本発明の作用効果を得ることが可能になる。
【0017】
【実施例】
タイヤサイズを225/50R16とし、図3に示すトレッドパターンを有する従来タイヤと、図1に示すトレッドパターンを有し、両ショルダー領域でサブ溝3の屈曲部3aの傾斜角度α、溝幅b、長さeを種々異ならせた本発明タイヤ1〜3及び比較タイヤ1〜4を製作した。
【0018】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により騒音性能、操縦安定性、ウェット性能、耐偏摩耗性を評価し、その結果を表1に示した。なお、各試験において、試験タイヤをリムサイズ16×8JJのリムに組付け、空気圧200kPaとし、2500ccの国産乗用車に装着するようにした。
騒音性能:
各試験タイヤについて、40〜80km/hで走行した時の車内騒音を測定した。評価結果は、従来タイヤの測定値の逆数を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど騒音性能が優れている。
【0019】
操縦安定性:
各試験タイヤについて、テストコースにおいて2名のパネラーによるフィーリングテストを行った。評価結果は、従来タイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れている。
【0020】
ウェット性能:
各試験タイヤについて、水深10mm、半径100mのテストコースで走行し、その平均速度を測定した。評価結果は、従来タイヤの測定値の逆数を100とする指数で示した。この指数値が大きいほどウェット性能が優れている。
【0021】
耐偏摩耗性:
各試験タイヤについて、1万km走行後に、ブロックエッジを形成する点A(図1参照)に発生した偏摩耗量を測定した。評価結果は、従来タイヤの測定値の逆数を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど、耐偏摩耗性が優れている。
【0022】
【表1】
Figure 0003642652
【0023】
この表1から明らかなように、本発明タイヤ1〜3は、従来タイヤに比べて騒音性能と操縦安定性が共に優れており、しかもウェット性能や耐偏摩耗性が実質的に低下していなかった。これに対して、比較タイヤ1は、屈曲部3aの傾斜角度αが−10°(屈曲部3aがサブ溝3の方向性に反する状態)であるため、従来タイヤに比べてウェット性能と耐偏摩耗性が低下していた。
【0024】
比較タイヤ2は、屈曲部3aの傾斜角度αが60°と大きくなっているため、従来タイヤに比べてウェット性能が低下していた。比較タイヤ3は、屈曲部3aの溝幅bが1.5mmと広くなっているため、従来タイヤに比べて操縦安定性と耐偏摩耗性が低下していた。更に、比較タイヤ4は、屈曲部3aの長さeが7mmと短くなっているため、従来タイヤに比べてウェット性能が低下していた。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、少なくともショルダー部に複数のブロックを分割形成した空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤ幅方向に延びるサブ溝をタイヤ赤道側から両ショルダー側へ向けてタイヤ反回転側へ傾斜させた方向性を有するトレッドパターンにすると共に、接地幅Wに対して両ショルダー側の各10%の領域でサブ溝をさらにタイヤ反回転側へ屈曲させ、その屈曲部のタイヤ周方向に対してタイヤ反回転側に測った傾斜角度αを0〜50°の範囲にし、溝幅bを0.3〜1.0mmの範囲にし、かつ長さeを8〜40mmの範囲にしたことにより、タイヤ周方向のブロック剛性を低減しながらタイヤ横方向のブロック剛性を向上することができるので、ウェット性能や耐偏摩耗性を実質的に低下させることなく、騒音性能及び操縦安定性を同時に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを例示する平面図である。
【図2】図1のショルダー部のブロックを示す部分拡大平面図である。
【図3】従来の空気入りラジアルタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
【符号の説明】
T トレッド面
1 主溝
2 副主溝
3 サブ溝
3a 屈曲部
5,6 ブロック列
5a,6a ブロック

Claims (1)

  1. トレッド面に、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本のサブ溝とを設け、これら主溝及びサブ溝によって少なくともショルダー部に複数のブロックを分割形成した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記サブ溝をタイヤ赤道側から両ショルダー側へ向けてタイヤ反回転側へ傾斜させた方向性を有するトレッドパターンにすると共に、接地幅Wに対して両ショルダー側の各10%の領域で前記サブ溝をさらにタイヤ反回転側へ屈曲させ、その屈曲部のタイヤ周方向に対してタイヤ反回転側に測った傾斜角度αを0〜50°の範囲にし、溝幅bを0.3〜1.0mmの範囲にし、かつ長さeを8〜40mmの範囲にした空気入りラジアルタイヤ。
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