JP3555551B2 - マルチパイロットトーン検出方法および整合フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタ技術に係り、特にプリアンブル信号がマルチパイロットトーン信号で構成されている場合にフィルタの回路規模を削減することができるマルチパイロットトーン検出方法および整合フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタにおいて、バースト信号を復調するためには、バースト信号の先頭を検出する同期処理が必要となる。多くの場合、同期処理を行いやすくすることを目的として、バースト信号の先頭に固定のプリアンブルを付与することが行われる。プリアンブル信号は各バースト信号で固定であるため、プリアンブル信号に整合したフィルタを使用することにより、プリアンブル検出を行うことができる(第1従来技術)。
【0003】
また、FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter:有限インパルス応答型デジタルフィルタ)の回路規模を削減するための従来技術としては、特開平9−98069号公報に記載のものがある(第2従来技術)。すなわち、第2従来技術は、従来のものと同一のフィルタ特性を維持しながらタップ係数処理部の回路規模を縮小したFIR型ディジタルフィルタを提供することを目的とするものであって、クロックckに同期して入力ディジタル信号を入力しシフトするm段からなるシフトレジスタと、シフトレジスタの各段を前段と後段に分割し2倍周波数のクロックck2により前段の出力と後段の出力とを交互に選択出力するセレクタと、セレクタから交互に入力したシフトレジスタの前段及び後段の出力に対しタップ係数処理を行うタップ係数処理部と、タップ係数処理部の出力を一時格納し1クロックck2タイム遅延して出力する遅延レジスタと、遅延レジスタの出力とタップ係数処理部の出力とを加算してシフトレジスタの全段に対する演算結果を出力する加算器と、加算器からの演算結果をクロックckと同期しフィルタ出力として出力する出力レジスタとを含み、シフトレジスタの各段を前段と後段に分割してタップ係数処理するようにしている。また、タップ係数処理部には予め設定されたタップ係数を格納するタップ係数ROMと、シフトレジスタの各段にそれぞれ対応するセレクタにより交互に選択されたシフトレジスタの前段及び後段の出力とタップ係数ROMからのタップ係数データとを乗算する乗算器と、乗算器の出力を総和する全加算器とを含み、乗算器をシフトレジスタ各段の略半数の段に対応する数としている。また、タップ係数処理部として、シフトレジスタの出力をタップ係数処理することにより得られるべき全ての演算結果を記憶し、シフトレジスタの前段及び後段の出力をそれぞれ交互にアドレスとして使用することにより記憶した演算結果を読みだすようにした演算結果ROMを備えている。
【0004】
これにより、回路規模が小さいセレクタを使用してシフトレジスタの出力を半数宛乗算のため使用するようにしたことにより、回路規模の大きい乗算器を略半数にし、タップ係数ROMの記憶容量及び全加算器のデータ加算数を大きく減少することができるため、従来技術と同じフィルタ特性を得ることができる上、全体として、回路規模を大きく縮小することができ、その上、回路規模の縮小によりLSI化にも適するFIR型ディジタルフィルタを提供することができる。また、予めタップ係数処理を行った結果を演算結果ROMに記憶しておき、シフトレジスタの出力をそのアドレスとして使用するようにしたため、タップ係数ROM、乗算器及び全加算器の全てを削除することができる上、予め最適な演算結果を算出しておくことができるため、簡単なアドレスの使用による回路構成の簡素化と相俟って、演算処理による劣化が少ないフィルタ特性を出力することができるといった効果が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プリアンブル信号に整合した上記第1従来技術のフィルタは、一般にFIRフィルタで構成されるが、マルチパイロットトーン信号によるプリアンブルではプリアンブルの時間波形は複雑な波形を有するため、タップ係数を少ないビット数で実現すると、フィルタ出力が急激に劣化する。そのため、タップ係数のビット幅を大きくする必要があり、主信号とタップ係数の乗算を行う乗算器の回路規模を削減することが難しいという問題点があった。さらに、整合フィルタには乗算器が複数使用されることが多く、乗算器の回路規模がフィルタ全体の回路規模を左右するため、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの回路規模の増大を招くという問題点があった。
【0006】
また、上記第2従来技術は、FIRフィルタのタップ係数の対称性を使用するものであり、乗算器の回路規模自体を削減することが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プリアンブル信号がマルチパイロットトーン信号で構成されている場合にフィルタの回路規模を削減することができるマルチパイロットトーン検出方法および整合フィルタを提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該検出対象のマルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されることを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法に存する。
また、請求項2に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該検出対象のマルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、複数のフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタとして、前記マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号に整合したフィルタを使用し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されることを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法に存する。
また、請求項3に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、個別のパイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されることを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法に存する。
また、請求項4に記載の発明の要旨は、前記マルチパイロットトーン信号に整合し当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しく設置されたフィルタの伝達関数を、加算器により前記サブフィルタの出力信号に加算することにより、前記マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載のマルチパイロットトーン検出方法に存する。
また、請求項5に記載の発明の要旨は、最終的なフィルタ出力として、個別の前記パイロットトーン信号に整合した前記サブフィルタの出力信号の加算結果を使用することを特徴とする請求項4に記載のマルチパイロットトーン検出方法に存する。
また、請求項6に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されていることを特徴とする整合フィルタに存する。
また、請求項7に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、複数のフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタを、前記マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号に整合したフィルタを用いて構成し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されていることを特徴とする整合フィルタに存する。
また、請求項8に記載の発明の要旨は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、個別のパイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されていることを特徴とする整合フィルタに存する。
また、請求項9に記載の発明の要旨は、前記マルチパイロットトーン信号に整合し当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しく設置されたフィルタの伝達関数を、加算器により前記サブフィルタの出力信号に加算することにより、前記マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得るように構成されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかの請求項に記載の整合フィルタに存する。
また、請求項10に記載の発明の要旨は、最終的なフィルタ出力として、個別の前記パイロットトーン信号に整合した前記サブフィルタの出力信号の加算結果を使用することを特徴とする請求項9に記載の整合フィルタに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタにおいて、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、個別のパイロットトーン信号に整合したフィルタに分割することにより、回路規模削減および低消費電力化を行うものである。
【0010】
本発明では、マルチパイロットトーン信号は、マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力される。サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力される。マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの伝達関数は、マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しいため、加算器4によりサブフィルタ出力を加算することにより、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得ることができる。
【0011】
本発明では、最終的なフィルタ出力として、個別のパイロットトーン信号に整合したサブフィルタ出力の加算結果を使用するため、タップ係数を表現するためのビット数は、パイロットトーン信号に整合したサブフィルタ分割を使用しない従来の整合フィルタ、即ちマルチパイロットトーン信号に整合した1つのフィルタで使用するタップ係数のビット数よりも少ないビット数で実現することができる。特にマルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号数が十分多い場合、個別のパイロットトーン信号に整合したサブフィルタのタップ係数を表現するためのビット数を小さくすることができる。特にタップ係数として±2,±1,0のみを使用すると、乗算器を使用せずにサブフィルタを構成することができ、回路規模の削減を実現できる。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る整合フィルタを説明するための機能ブロック図である。図1に示す実施の形態は、前記マルチパイロットトーン検出方法を、バースト信号先頭に配置されたマルチパイロットトーン信号によるプリアンブルの検出に適用した例である。
【0013】
図1に示す本発明の一実施の形態の整合フィルタにおいて、マルチパイロットトーン信号は、マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタ1,2,3から構成されるフィルタに入力される。サブフィルタ1,2,3は各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力される。マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの伝達関数は、マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しいため、加算器4によりサブフィルタ1,2,3の出力信号を加算することにより、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得ることができる。
【0014】
本実施の形態では、最終的なフィルタ出力として、個別のパイロットトーン信号に整合したサブフィルタ1,2,3の出力信号の加算結果を使用するため、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4を表現するためのビット数は、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタ以下とすることができる。特にマルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号数が十分多い場合、個別のパイロットトーン信号に整合したサブフィルタ1,2,3のタップ係数a0,a1,a2,a3,a4を表現するためのビット数を小さくすることができる。特にタップ係数a0,a1,a2,a3,a4として±2,±1,0のみを使用すると、乗算器を使用せずにサブフィルタ1,2,3を構成することができ、回路規模の削減を実現できる。
【0015】
プリアンブル検出用の整合フィルタに入力される受信信号は所定のフレームフォーマットの信号であり、一例を図2フレームフォーマットの一例に示す。図2を参照すると、本実施の形態では、バースト先頭にはマルチパイロットトーン信号により構成されるプリアンブルが配置され、プリアンブルに続きデータが受信される。プリアンブルを構成するマルチパイロットトーン信号は、予め定められた信号であり、すべてのバースト信号の先頭に固定的に配置される。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態では、マルチパイロットトーン検出用整合フィルタに入力された受信信号は、マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン数nに等しい数からなるサブフィルタ1,2,3に入力される。
【0017】
次に、サブフィルタ1,2,3の構成を図3を参照して説明する。図3は、図1のサブフィルタ1,2,3の一実施の形態を示す機能ブロック図である。本実施の形態では、サブフィルタ1,2,3として5タップのFIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter:有限インパルス応答型デジタルフィルタ)を採用したケースについて説明する。
【0018】
まず、図3を参照すると、サブフィルタ1,2,3の入力信号は遅延器5,6,7,8により順次遅延される。乗算演算器9,10,11,12,13は乗算演算器入力と乗算演算器9,10,11,12,13ごとに設定されるタップ係数a0,a1,a2,a3,a4との乗算を行う回路である。
【0019】
乗算演算器9にはサブフィルタ1,2,3の入力信号が、乗算演算器10には遅延器5により1タイムスロット遅延されたサブフィルタ1,2,3の入力信号がそれぞれ入力される。乗算演算器11には遅延器6の出力信号が入力され、遅延器5および遅延器6により、2タイムスロット遅延されたサブフィルタ1,2,3の入力信号が入力される。同様に、乗算演算器12には、遅延器7の出力信号である3タイムスロット遅延されたサブフィルタ1,2,3の入力信号が入力され、乗算演算器13には、遅延器8の出力信号である4タイムスロット遅延されたサブフィルタ1,2,3の入力信号が入力される。
【0020】
乗算演算器9,10,11,12,13には、図3に示すように、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4が設定されており、乗算演算器9,10,11,12,13により、乗算演算器9,10,11,12,13の入力信号とタップ係数a0,a1,a2,a3,a4の乗算結果が出力される。乗算演算器9,10,11,12,13は乗算器で実現することができるが、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4を表現するビット数を制限することが可能である場合、乗算器を使用しない構成で実現することができる。加算器14には、乗算演算器9,10,11,12,13の出力信号が入力され、乗算演算器9,10,11,12,13の出力信号の加算結果をサブフィルタ1,2,3の出力信号として出力する。
【0021】
再び図1に戻って説明する。サブフィルタ1,2,3の出力信号は加算器4に入力される。加算器4はサブフィルタ1,2,3の出力信号の加算を行い、加算結果をマルチパイロットトーン信号整合フィルタ出力として出力する。
【0022】
次に、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4が±2,±1,0に制限されている場合のサブフィルタの構成を、図4の簡略化されたサブフィルタの一実施の形態を示すブロック図を用いて説明する。図4は、簡略化されたサブフィルタの一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0023】
図4を参照すると、遅延器15,16,17,18’は入力信号を1タイムスロット遅延する遅延器であり、サブフィルタ1,2,3の入力信号を順次遅延する。サブフィルタ1,2,3の入力信号、および遅延器15,16,17,18’により遅延されたサブフィルタ1,2,3の入力信号は、乗算演算器18,19,20,21,22へ入力される。
【0024】
次に、−2倍を実現するための乗算演算器9,10,11,12,13の構成を図5を参照して説明する。図5は、図4の乗算演算器9,10,11,12,13の一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0025】
図5を参照すると、符号反転回路24は、入力信号の符号変換を行う回路である。2進表示として2の補数表示を使用する場合、符号反転回路24は、例えばビット反転回路と加算器により構成される。符号反転回路24の出力信号はビットシフト回路25に入力され、1ビットシフトが施される。−1倍を実現するための乗算演算器9,10,11,12,13は、例えば、図5からビットシフト回路25を削除した回路により構成される。また2倍を実現するための乗算演算器9,10,11,12,13は、例えば、図5から符号反転回路24を削除した回路により構成される。
【0026】
次に、マルチパイロットトーン信号が複素数の場合の、乗算演算器9,10,11,12,13の構成を図6を参照して説明する。図6は、図4の乗算演算器9,10,11,12,13の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0027】
図6を参照すると、実数乗算演算器26,27は図5に一実施の形態を示した実数の乗算演算器である。乗算演算器入力実部は、実数乗算演算器26,28へ入力され、乗算演算器入力虚部は、実数乗算演算器27,29へ入力される。実数乗算演算器26,27出力は加算器30へ入力され、複素数乗算演算器出力実部として、加算結果が出力される。実数乗算演算器28,29の出力信号は加算器31へ入力され、複素数乗算演算器出力虚部として、加算結果が出力される。
【0028】
再び図4に戻って説明する。乗算演算器18,19,20,21,22の出力は加算器23に入力され、乗算演算器18,19,20,21,22の出力を加算した結果がフィルタ出力として出力される。
【0029】
次に、図1に示す本実施の形態の動作について説明する。まず、図1のフィルタ分割について説明する。一般に整合フィルタは相関と等価であり、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)を構成するパイロットトーン信号をf1,f2,…,fnとし、フィルタ入力信号をx、相関をf1(x),f2(x),…,fn(x)で表すと、
【0030】
という関係が成立する。
【0031】
従って、図1に示すように、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)に整合したフィルタを、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)を構成するパイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したサブフィルタ1,2,3と、サブフィルタ1,2,3の出力信号を加算する加算器4に分割することができる。ここでサブフィルタ1,2,3は、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)を構成するパイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したフィルタである。
【0032】
次に、図1に示すサブフィルタ1,2,3の動作について説明する。フィルタ分割の説明で示した通り、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)に整合したフィルタは、各パイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したフィルタに分割することができる。各パイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したフィルタは、パイロットトーン信号f1,f2,…,fnと入力の相関を出力するフィルタであるため、乗算器を使用する構成とする場合、サブフィルタは図3サブフィルタの一実施の形態を示すブロック図に示す一般的なFIRフィルタで構成される。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)を構成する各パイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したフィルタのタップ係数a0,a1,a2,a3,a4が設定されるため、サブフィルタ1,2,3の出力信号はf1(x),f2(x),…,fn(x)となり、加算器4によりf1(x)+f2(x)+…+fn(x)が算出される。式(1)から加算器出力は、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)に整合したフィルタの出力に等しく、図1に示す構成によりマルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)に整合したフィルタが実現される。
【0033】
次に、図4のサブフィルタの動作について説明する。図4に示した実施の形態は、図3に示した実施の形態において、乗算演算器9,10,11,12,13を、図4に示す簡略化された乗算演算器18,19,20,21,22で実現した回路となっている。そのため、乗算演算器18,19,20,21,22により、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として設定される±2,±1,0の乗算が実現されれば、サブフィルタ1,2,3として動作する。以下、乗算演算器18,19,20,21,22の動作を図5を用いて説明する。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として−2が設定された場合、乗算演算器9,10,11,12,13は符号反転回路24およびビットシフト回路25により構成される。符号反転回路24により−1倍の乗算が実施され、乗算演算器18,19,20,21,22の入力信号の符号が反転される。符号反転回路24の出力信号はビットシフト回路25へ入力され、ビットシフトにより符号反転回路24の出力信号が2倍される。以上から、乗算演算器全体として、入力信号の−2倍が実現されることが分かる。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として−1が設定された場合、乗算演算器18,19,20,21,22は符号反転回路24のみで構成され、乗算演算器入力を−1倍する。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として0が設定された場合、乗算演算器9,10,11,12,13を削除し、加算器23の入力のうち該当する入力を0固定とすることで、0倍として動作する。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として1倍が設定された場合、乗算演算器9,10,11,12,13を削除し、遅延器15、16、17、18’の出力を直接加算器に入力することで、1倍として動作する。タップ係数a0,a1,a2,a3,a4として2が設定された場合、ビットシフト回路25のみの構成となるため、乗算演算器全体として2倍の乗算演算器として動作する。
【0034】
簡略化された乗算演算器を使用したマルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)の整合フィルタの一動作例を図8乃至図10に示す。またこのときに使用したマルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)の波形(パイロットトーン数6)を図7に示す。
【0035】
図7は、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)の一例を説明するためのグラフである。また、図8は、図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(量子化誤差なしの場合)、図9は、図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(フィルタ分割の場合)、図10は、図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(フィルタ分割なしの場合)である。
【0036】
図8乃至図10に示した動作例は、サブフィルタ1,2,3のタップ係数a0,a1,a2,a3,a4を±1,0に制限した場合の動作例である。図8に示すように、フィルタ出力(量子化誤差なし)は、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4の量子化を行わなかった場合の理想的なフィルタ出力であり、図9に示すように、フィルタ出力(フィルタ分割)は、簡略化された乗算演算器を使用したフィルタ出力である。
【0037】
比較のため、図10に示すように、フィルタ出力(フィルタ分割なし)に、フィルタ分割を行わず、タップ係数a0,a1,a2,a3,a4を±1,0に量子化をした場合のフィルタ出力を示す。
【0038】
以上より、パイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したサブフィルタ分割を使用しない整合フィルタ構成では、量子化誤差の無い理想的なフィルタと比べ、フィルタ出力のピーク特性は大幅に劣化している。本発明を使用した整合フィルタ出力は、理想的な整合フィルタ出力とほぼ一致するピーク特性を示しており、ピーク特性に影響を与えずにフィルタの回路規模削減が実現できていることが分かる。
【0039】
以上説明したように本実施の形態によれば、マルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)に整合したフィルタ出力を得るために、各パイロットトーン信号f1,f2,…,fnに整合したサブフィルタ1,2,3の出力信号を加算する構成を用いることができ、その結果、回路規模削減を実現できるようになるといった効果を奏する。
【0040】
特にマルチパイロットトーン信号(f1+f2+…+fn)を構成するパイロットトーン信号f1,f2,…,fnが複数あり、出力の精度を保ったままサブフィルタ1,2,3のタップ係数a0,a1,a2,a3,a4を表現するビット数を制限することが可能な場合にあっては、サブフィルタ1,2,3の乗算演算器(乗算演算器9,10,11,12,13、乗算演算器18,19,20,21,22、実数乗算演算器26,27,28,29)を乗算器なしで構成することができるようになるといった効果を奏する。
【0041】
なお、本発明が上記実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上記実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。また、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタ出力を得るために、各パイロットトーン信号に整合したサブフィルタ出力を加算する構成を用いることができ、その結果、回路規模削減を実現できるようになるといった効果を奏する。
【0043】
特にマルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号が複数あり、出力の精度を保ったままサブフィルタのタップ係数を表現するビット数を制限することが可能な場合にあっては、サブフィルタの乗算演算器を乗算器なしで構成することができるようになるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る整合フィルタを説明するための機能ブロック図である。
【図2】フレームフォーマットの一例である。
【図3】図1のサブフィルタの一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図4】簡略化されたサブフィルタの一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図5】図4の乗算演算器の一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図6】図4の乗算演算器の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図7】マルチパイロットトーン信号の一例を説明するためのグラフである。
【図8】図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(量子化誤差なしの場合)である。
【図9】図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(フィルタ分割の場合)である。
【図10】図4の乗算演算器を用いたフィルタの一動作例を説明するためのフィルタ出力のグラフ(フィルタ分割なしの場合)である。
【符号の説明】
1,2,3…サブフィルタ
5,6,7,8…遅延器
9,10,11,12,13…乗算演算器
4,14…加算器
15,16,17,18’…遅延器
18,19,20,21,22…乗算演算器
23…加算器
24…符号反転回路
25…ビットシフト回路
26,27,28,29…実数乗算演算器
30,31…加算器
a0,a1,a2,a3,a4…タップ係数
Claims (10)
- マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該検出対象のマルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力される
ことを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法。 - マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該検出対象のマルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、複数のフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタとして、前記マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号に整合したフィルタを使用し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力される
ことを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法。 - マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタに対して、当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、個別のパイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限することにより、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力される
ことを特徴とするマルチパイロットトーン検出方法。 - 前記マルチパイロットトーン信号に整合し当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しく設置されたフィルタの伝達関数を、加算器により前記サブフィルタの出力信号に加算することにより、前記マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得る
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載のマルチパイロットトーン検出方法。 - 最終的なフィルタ出力として、個別の前記パイロットトーン信号に整合した前記サブフィルタの出力信号の加算結果を使用する
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチパイロットトーン検出方法。 - マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、
当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されている
ことを特徴とする整合フィルタ。 - マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、
当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、複数のフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタを、前記マルチパイロットトーン信号を構成するパイロットトーン信号に整合したフィルタを用いて構成し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されている
ことを特徴とする整合フィルタ。 - マルチパイロットトーン信号を検出する整合フィルタであって、
当該マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタを、個別のパイロットトーン信号に整合したフィルタに分割して構成し、
前記分割に使用するフィルタのタップ係数が取り得る値を0、±1、±2に制限するとともに、前記フィルタを少なくとも符号反転回路およびビットシフト回路で構成し、
前記マルチパイロットトーン信号は、前記マルチパイロットトーン信号を構成する前記パイロットトーン信号数に等しい個数のサブフィルタから構成されるフィルタに入力されるように構成され、
前記サブフィルタは各パイロットトーン信号に整合したフィルタとなっており、各パイロットトーン信号と入力波形との相関が出力されるように構成されている
ことを特徴とする整合フィルタ。 - 前記マルチパイロットトーン信号に整合し当該マルチパイロットトーン信号を構成する各パイロットトーンに整合したフィルタの伝達関数の和に等しく設置されたフィルタの伝達関数を、加算器により前記サブフィルタの出力信号に加算することにより、前記マルチパイロットトーン信号に整合したフィルタの出力を得るように構成されている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかの請求項に記載の整合フィルタ。 - 最終的なフィルタ出力として、個別の前記パイロットトーン信号に整合した前記サブフィルタの出力信号の加算結果を使用する
ことを特徴とする請求項9に記載の整合フィルタ。
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