JP3555219B2 - 制動液圧制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の制動液圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
制動液圧を制御する技術として、本出願人は、先に、車輪制動により車輪の駆動スリップを防止するトラクションコントロールシステム(TCS)についての提案をしている(特開平2−85051号公報(文献1))。
このものは、制御対象車輪のホイールシリンダ(w/c)の液圧を推定しつつ、そのホイールシリンダ圧(以下、w/c圧とも略記する)の必要な増減圧制御を行う場合において、増圧時間と減圧時間を計時して、その偏差に基づきw/c圧の推定をしようというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、上記のものは、更に進んで、より正確な推定をしようとする上では、例えば次のような点から考察すると、なお改良を加えることができる。
w/cを外部液圧源のアキュムレータ(ACC)により増圧する場合、w/c圧の増圧量は、増圧時間が同じでも、アキュムレータ圧(以下、ACC圧とも略記する)と増圧前w/c圧との差圧によって異なる。
そのため、w/c圧を制御目標のw/c圧に制御する際、単に、上記のように増圧時間と減圧時間を計時してその偏差に基づきw/c圧の推定をしたのでは、推定精度が低下し、制御精度が低下する場合が生ずる。
【0004】
w/c圧の制御精度が低下することにより、駆動輪のスリップに対し、そのスリップを抑えるために必要となる目標w/c圧を算出し、w/c圧を制御するトラクションコントロール装置にあっては、w/c圧不足や過多により確実には駆動輪のスリップを抑えることができなかったり、車両の加速性が低下したりする。
【0005】
また、外部液圧源(マスターシリンダ圧以外)によりw/cを増圧する装置は、例えば、目標車速を設定し、実車速が目標車速となるように、加速時には駆動力を、減速時には制動力を制御する、車両の追従走行制御システム等として組み込むこともできるものであるところ、そのような追従走行制御装置において、その減速時には実車速が目標車速となるために必要となる目標w/c圧を算出し、w/c圧を制御する際、推定精度が十分でなく、制御精度が悪いために、実際のw/c圧が目標w/c圧通りに制御されていないとすると、車速も目標車速通りに制御することができなくなる。
【0006】
本発明は、このような考察を基に改善を図り、ホイールシリンダ圧を推定しながら制動液圧の制御をする場合の液圧制御における推定精度を高め、制御精度を向上させ、高価な圧力センサを用いずに正確にホイールシリンダ圧を目標液圧に制御することのできる制動液圧制御装置を提供しようというものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、下記の制動液圧制御装置が提供される。
即ち、外部液圧源により車両の制御対象車輪のホイールシリンダの増圧が可能な制動液圧制御装置であって、
前記外部液圧源からの供給圧を元圧とする前記ホイールシリンダの目標ホイールシリンダ圧を算出する目標液圧算出手段と、
該外部液圧源からの供給圧を推定する推定手段と、
所定時間増圧指令または減圧指令することでホイールシリンダ圧を前記目標ホイールシリンダ圧に調圧するよう、制御される電磁弁と、
前記推定手段による元圧の推定値と目標ホイールシリンダ圧値を基に所定時間増圧後のホイールシリンダ圧を推定する手段を含む、ホイールシリンダ圧推定手段と、
前記元圧の推定値と推定ホイールシリンダ圧値と目標ホイールシリンダ圧値を基にホイールシリンダ圧を目標ホイールシリンダ圧に調圧するのに必要な前記電磁弁に対する増圧指令時間を算出する手段を含む、制御指令演算手段と
を備えることを特徴とする制動液圧制御装置である。
【0008】
また、上記において、前記外部液圧源はホイールシリンダ圧の元圧を得るためのアキュムレータを含み、
かつ、当該アキュムレータ圧を所要の圧力となるよう調圧するポンプ機構を有するとともに、
そのポンプの駆動停止を検出する検出手段を備え、
前記元圧の推定手段は、推定ホイールシリンダ圧の変化もしくは推定ホイールシリンダ圧の前回値及び今回値と、当該検出手段により検出されるポンプの駆動停止情報に基づき、そのアキュムレータ圧を推定する手段である、
ことを特徴とする制動液圧制御装置である。
【0009】
また、前記元圧の推定手段によりアキュムレータ圧を推定し、
前記ホイールシリンダ圧推定手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧を推定し、
前記増圧指令時間を算出する手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、目標ホイールシリンダ圧にホイールシリンダ圧を調圧するために必要な増圧時間を算出する、
ことを特徴とする制動液圧制御装置、及び
予め求めたホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係と、予め求めた前記ポンプの駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係と、予め求めたアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧の差圧で異なる増圧時間とホイールシリンダ圧の増圧量の関係とを記憶させた記憶手段を有し、
斯く記憶手段に記憶させた関係により、推定ホイールシリンダ圧前回値と推定ホイールシリンダ圧今回値からアキュムレータ圧の減圧量を求め、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量を求めて、アキュムレータ圧の今回値を推定し、
該推定アキュムレータ圧今回値と推定ホイールシリンダ圧今回値より、その差圧を算出し、前記記憶手段に記憶させた関係から所定の増圧時間に対するホイールシリンダ圧増圧量を求め、増圧後のホイールシリンダ圧を推定するよう、アキュムレータ圧推定とホイールシリンダ圧推定を行う、
ことを特徴とする制動液圧制御装置である。
【0010】
また、前記目標ホイールシリンダ圧は、
トラクションコントロールにおける駆動スリップ制御時の駆動輪の目標ホイールシリンダ圧であるか、
追従走行制御における減速制御時の制動力の制御のための制御対象車輪の目標ホイールシリンダ圧であるか、
車両挙動制御において左右輪のホイールシリンダ圧を独立に制御する場合の制御対象車輪の目標ホイールシリンダ圧であるかの、
いずれかを対象とするか、またはそれら二以上を対象とする、
ことを特徴とする制動液圧制御装置である。
【0011】
【作用】
上述した構成により、外部液圧源によりホイールシリンダ圧が増圧制御される場合においても、そのホイールシリンダ圧の元圧となる外部液圧源の圧も推定し、ホイールシリンダ圧の推定、指令時間の算出を行うことができ、増圧制御時の外部液圧源の圧の変化をも制御に適切に反映し得て、元圧とホイールシリンダ圧との圧力差をも考慮した推定、制御を行うことが可能で、元圧をみない場合のものに比し推定精度の低下はこれを少なからしめ、しかも、これを高価な圧力センサも付加せず容易に実現でき、制御対象車輪のホイールシリンダ圧をよりきめ細かく目標値通りに制御し、制御精度の向上を実現することを可能ならしめる。
【0012】
元圧を推定し、ホイールシリンダ圧を推定して制御することで、正確にホイールシリンダを制御でき、制御精度を高められることにより、トラクションコントロール装置においては、駆動輪がスリップした際に、ホイールシリンダ圧の不足や過多が発生せず、確実にスリップを抑えることができ、また、加速性の低下もしない。また、追従走行制御装置においては、目標車速通りに実車速を制御することができる。
また、左右のホイールシリンダ圧を独立に制御し、旋回、直進中の車両の挙動を制御する場合に適用して、同様に効果的なものとすることができる。
このような車両の挙動を制御する場合、ホイールシリンダ圧の制御精度が悪いために左右ホイールシリンダが目標値通りになっていないと(例えば、一方のホイールシリンダ圧が目標値より高く、他方のホイールシリンダ圧が目標値より低いなどすると)、車両に意図しないモーメントが発生してしまい、車両の挙動を狙い通りに制御できないのに対し、本発明に従いホイールシリンダ圧を目標値通りに制御することができることにより、かかる車両挙動制御装置においては、意図しないモーメントが発生せず、狙い通りの車両の挙動の制御が実現できる。
【0013】
また、外部液圧源はホイールシリンダ圧の元圧を得るためのアキュムレータを含み、かつ、当該アキュムレータ圧を所要の圧力となるよう調圧するポンプ機構を有するとともに、そのポンプの駆動停止を検出する検出手段を備え、元圧の推定手段は、推定ホイールシリンダ圧の変化もしくは推定ホイールシリンダ圧の前回値及び今回値と、当該検出手段により検出されるポンプの駆動停止情報に基づき、そのアキュムレータ圧を推定する手段として構成して、本発明は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。この場合は、元圧となるアキュムレータ圧の推定は、アキュムレータにおけるアキュムレータ圧はホイールシリンダ圧の増圧で減少し、一方また、ポンプの駆動によってアキュムレータ圧は増加することをも考慮して、元圧のアキュムレータ圧の正確な推定を可能とすることができる。
【0014】
また、元圧の推定手段によりアキュムレータ圧を推定し、
ホイールシリンダ推定手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧を推定し、
増圧指令時間を算出する手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、目標ホイールシリンダ圧にホイールシリンダ圧を調圧するために必要な増圧時間を算出するようにして、本発明は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。
この場合は、上記推定で得られる推定アキュムレータ圧を基にして、そのホイールシリンダ推定、増圧指令時間算出をなすことができる。従って、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に応じた所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧の推定もより正確なものにすることができ、また、必要なホイールシリンダ圧の増圧量に対する増圧時間の関係が元圧となるアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧との差圧で異なる場合でも適切に対応でき、アキュムレータ圧とホイールシリンダを推定してその差圧を算出し、増圧量に対する増圧時間を求めることで必要な増圧量だけ増圧するための時間を正確に算出できるとともに、その場合も、上記の正確なものとして得られる推定アキュムレータ圧値を使用してその増圧指令時間の算出をより正確なものとすることができる。
【0015】
また、予め求めたホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係と、予め求めた前記ポンプの駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係と、及び予め求めたアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧の差圧で異なる増圧時間とホイールシリンダ圧の増圧量の関係とを記憶させた記憶手段を有し、
斯く記憶手段に記憶させた関係により、推定ホイールシリンダ圧前回値と推定ホイールシリンダ圧今回値からアキュムレータ圧の減圧量を求め、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量を求めて、アキュムレータ圧の今回値を推定し、
該推定アキュムレータ圧今回値と推定ホイールシリンダ圧今回値より、その差圧を算出し、前記記憶手段に記憶させた関係から所定の増圧時間に対するホイールシリンダ圧増圧量を求め、増圧後のホイールシリンダ圧を推定するよう、アキュムレータ圧推定とホイールシリンダ圧推定を行う構成として、本発明は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。
この場合、好適例では、適用するシステムにより、その使用アキュムレータ、ポンプ等に応じ、それらの関係データを予め得てコントローラのメモリに格納しておき、これに基づいてそれぞれの推定を容易に的確に行うことができる。アキュムレータ圧の推定では、ホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係を予め得ておくことでアキュムレータを正確に推定でき、また、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係を予め得ておくことでアキュムレータ圧を正確に推定できる。ホイールシリンダ圧の増圧時間に対する増圧量の関係は、元圧となるアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧との差圧で異なるため、アキュムレータ圧とホイールシリンダ圧を推定してその差圧を算出し、増圧時間に対する増圧量を求めることで正確に増圧後のホイールシリンダを推定できる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は本発明装置の一実施例の構成を示すシステム図である。
図では、車両の1個の車輪に係わる、本実施例に従う場合の制動液圧制御系の必要的な要素・構成部分を示してあるが、車両の他の制御対象車輪についても、同様構成のものが存在する。
【0017】
図中、1は車輪10のホイールシリンダ(w/c)を示し、そのホイールシリンダ圧(w/c圧)を次のような液圧制御系によって制御する(図中、実線は油圧配管、点線は信号線を示す)。
本例では、油圧回路には、外部液圧源(マスターシリンダ圧以外)によりホイールシリンダの増圧をする構成を備えるものとし、ここでは、車輪10のホイールシリンダ1、電磁弁2、リザーバタンク3、ポンプ4、及びアキュムレータ(ACC)6を含み、これらを図示の如くに配管、接続して構成する。
【0018】
電磁弁2は、w/c圧の元圧を得る液圧源とホイールシリンダ1との間に介挿して、増減圧指令に応じw/c圧の増減圧による調圧が可能な電磁弁である。ここでは、増圧、保持、減圧を切り換える、3ポート、3位置切換え電磁弁とする。
電磁弁2は、その増圧制御の場合には、ホイールシリンダ1側の液路のポートと、増圧時に該ホイールシリンダ1に送るための液圧を蓄えておくアキュムレータ7側の液路のポートとの間を接続する一方、リザーバタンク3へ至る液路との間は遮断するよう、切換え制御する。また、その保持位置に切換えられるときはアキュムレータ6側及びリザーバタンク3側のいずれともその接続を断つように、更に、その減圧制御の場合にあっては、ホイールシリンダ1側の液路のポートはこれをリザーバタンク3側の液路のポートと接続するように、かつ、アキュムレータ6側の液路との間は遮断するように、切換え制御される。
【0019】
ホイールシリンダ1は、減圧時にホイールシリンダ1からの制動液を蓄えておくリザーバタンク3と接続され、これにより、そのホイールシリンダ内の制動液が抜かれる。リザーバタンク3からの液路は、更にこれをポンプ4を介してアキュムレータ6へ接続する。
【0020】
ポンプ4は、アキュムレータ圧(ACC圧)を所定の圧力となるよう調圧可能なモータ駆動によるポンプ(アキュムレータポンプ)とし、そのポンプ駆動用モータ5の駆動及びその駆動停止、従ってポンプ4の駆動、停止に応じ、ポンプ駆動時には、上記減圧によってリザーバタンク3にたまった制動液をアキュムレータ6に送り液圧を蓄えるようになす。
そして、ここでは、上記アキュムレータ6の液路に、圧力応動型のスイッチ7を配してあり、該スイッチは、例えば、アキュムレータ6内の圧力(ACC圧)が第1の所定値(例えば120kgf/cm2 )以下ならばON、該第1の所定値より大なる第2の所定値(例えば150kgf/cm2 )以上ならばOFFを出力しポンプモータ5を制御するための圧力スイッチ7として用いる。
【0021】
上記装置においては、外部液圧源はアキュムレータ6を含んで構成され、そのACC圧は、電磁弁2に対する制御よるホイールシリンダ1の増圧時、w/c圧の増圧で減圧され、他方、モータ7によるポンプ駆動時、ポンプ5の駆動で増圧される。
【0022】
電磁弁2に対する制御は、システムを制御するコントローラ8により行い、図示のように、電磁弁2は制御信号線でコントローラ8と結線し、また、コントローラ8と前記モータ5とを結線してある。
コントローラ8は、入出力部と、演算処理部と、該演算処理部で実行されるプログラム及び演算結果等を格納する記憶部等からなるマイクロコンピュータを含んで構成される。
【0023】
コントローラ8は、ホイールシリンダ1のw/c圧制御において、予め記憶部に格納された目標ホイールシリンダ圧算出演算プログラムに従い、所要の入力情報を基に、制御に必要な目標液圧を演算し、設定して、w/c圧制御を実行する。
ここに、w/c圧の目標値の算出に関しては、例えば、トラクションコントロールシステム(TCS)の場合なら、駆動輪のスリップに対し、そのスリップを抑えるために必要となる目標w/c圧を算出することで行うことができる。また、例えば、これに代えて、もしくはこれとともに車両自動追従システムを搭載する場合は、その減速制御時に制動力を制御して走行時の車速のコントロールをするべく、実車速を、前車両との関係で設定した目標車速とするために必要となる目標w/c圧を算出する。
【0024】
また、コントローラ8は、所定時間増圧指令または減圧指令することでw/c圧をそのような設定目標w/c圧に調圧するよう電磁弁2を制御するにあたり、圧力センサを用いず、w/c圧を推定してこれを行うものであるが、このとき、基本的にはアキュムレータポンプ4の駆動、停止に関する情報を入力情報とし、w/c圧の変化量と、該ポンプ4の駆動停止信号よりACC圧をも推定しつつ、制御を実行する。コントローラ8の記憶部には、このため、上述した目標w/c圧算出サブルーチンプログラムのほか、上記ACC圧推定、w/c圧推定処理も含む制御プログラムも予め格納しておき、その演算処理部によりこれを実行する。
【0025】
この場合、好ましくは、w/c圧の増圧制御では、斯く推定で得られるその推定ACC圧と増圧前推定w/c圧との差圧に基づき、所定時間増圧指令後のw/c圧を推定する。
また、好ましくは、推定ACC圧と増圧前推定w/c圧との差圧に基づき、目標w/c圧にw/c圧を調圧するために必要な増圧指令時間を算出する。
【0026】
図2は、上記のようなw/c圧制御のための図1に示した実施例システムでの機能の概要の一例をブロックとして表したものであり、図示のように、目標液圧を算出する手段a、アキュムレータポンプの駆動と停止を検出する手段b、アキュムレータ圧(ACC圧)推定手段f、推定ACC圧と推定w/c圧から所定時間後のw/c圧を推定するホイールシリンダ圧推定手段g、推定ACC圧と推定w/c圧と目標w/c圧から、推定w/c圧を目標w/c圧に調圧するのに必要な増圧時間を算出する手段h、及び制動力制御手段jを備える。
ここに、本実施例においては、制動力制御手段jは、増減圧指令に対し、w/c圧を目標圧に調圧する電磁弁2を含む図1の油圧回路及びコントローラ8の一部を含んで構成される。コントローラ8はまた、上記目標液圧算出手段a、検出手段b、各推定手段f,g、及び増圧時間算出手段hを構成する。
【0027】
目標液圧算出手段aは、適用するシステムに合わせて、その制御で必要な制動液圧、即ち目標w/c圧を算出する手段として機能し、また、アキュムレータポンプ駆動停止検出手段bは、w/c圧の元圧を得るためのACC圧を所定の圧力となるよう調圧するポンプ5のその駆動と停止を検出する検出手段として機能する。
また、好適例では、アキュムレータ圧推定手段fは、ホイールシリンダ圧センサを使用せずに、例えば制御周期ごとのw/c圧を推定しながら電磁弁2の駆動制御を行う場合においてホイールシリンダ圧推定手段gで得られる推定w/c圧についての前回値と今回値、及び上記検出手段bで検出されるポンプ5の駆動停止から、ACC圧の今回値を推定するものとすることができる。推定により得られる推定ACC圧今回値は、ホイールシリンダ圧推定手段gでの推定や、増圧時間算出手段hでの算出に適用できる。
【0028】
この場合において、ACC圧の推定については、より好ましくは、既述の如くにアキュムレータ6におけるACC圧はw/c圧の増圧をしたときはそれに伴い減圧され、一方また、ポンプの駆動によってACC圧は増圧されることから、図1に示すような油圧回路中のその使用アキュムレータ6、ポンプ5等に応じ、w/c圧の増圧量に対するACC圧の減圧量の関係や、ポンプ駆動時間に対するACC圧の増圧量の関係を考慮して、これを行う。
それらの関係については、予め、w/c圧の増圧量に対するACC圧の減圧量の関係を得ておいて、コントローラ8の記憶部のメモリにそのデータを記憶しておくことができ、また、同様に、予め、使用ACCポンプの駆動時間に対するACC圧の増圧量を求めておき、コントローラ8の記憶部のメモリにそのデータを記憶しておくことができる。
【0029】
ホイールシリンダ圧推定手段gでの推定は、より好ましくは、上記アキュムレータ圧推定手段fにおいて上述したような関係を考慮し推定して得られるその推定値を使用し、推定ACC圧と推定w/c圧から、所定時間増圧後のw/c圧を推定することにより、行うことができる。
この場合、かかるw/c圧推定において、好ましくはまた、ACC圧とw/c圧の差圧で異なる増圧時間と増圧量の関係を考慮して、これを行うようにし、そのため、上記推定ACC圧今回値と推定w/c圧今回値を用い、両者の差圧を算出し、かつ、該差圧に応じた、増圧時間に対する増圧量を求め、そして、その推定w/c圧今回値と当該求めた増圧量値との和として、その増圧後のw/c圧の推定をするものとすることができる。
また、この場合においても、予め、ACC圧とw/c圧の差圧如何で異なる増圧時間と増圧量の関係を得ておき、コントローラ8の記憶部のメモリにはそのデータを記憶しておくことができ、これを利用し、所定の増圧時間に対するw/c圧増圧量を求めるようにする。
【0030】
増圧時間算出手段hは、推定ACC圧と推定w/c圧と上記目標液圧算出手段aの算出目標w/c圧とを用い、これらから推定w/c圧を該目標w/c圧に調圧するのに必要な増圧時間を算出する。斯く算出される増圧時間に対応する増圧指令が、制動力制御手段jに与えれ、これにより電磁弁2は制御される。
この場合においても、好ましくは、必要なw/c圧の増圧量に対する増圧時間の関係が、元圧となるACC圧とw/c圧との差圧で異なることを考慮し、推定ACC圧今回値と推定w/c圧今回値との差圧に応じて、必要増圧量に対する増圧時間を求めることで、実w/c圧を目標値へ制御するのに必要な増圧量だけ増圧するための時間を算出するようにする。上記ホイールシリンダ圧推定手段gで使用される上述の増圧時間と増圧量の関係の特性は、かかる増圧時間算出の場合もこれを好適に利用することができる。
【0031】
また、周期ごとの推定において適用する上記w/c圧の今回値等に関しては、w/c圧の今回値を前回値に更新し、増圧後w/c圧を今回値に更新する。それにより、次回の推定ACC圧が算出できる。更に、次回推定ACC圧を今回値に更新し、次回推定w/c圧が算出される。このようにして、順次、推定ACC圧、推定w/c圧が算出される。
この場合において、各推定手段f,gには、これら更新機能を含めて構成することができる。
【0032】
図3乃至図5は、コントローラ8により実行される、上記ACC圧推定、w/c圧推定、及び指令時間の算出その他の処理を含む制動液圧制御プログラムの一例のフローチャートである。本プログラムは一定周期Tごとに繰り返し実行される。
また、図6乃至図14は、本制御内容の説明に供する図である。
以下、これらの図も参照して、フローチャートに従い説明するが、その説明において使用される下記の記号表記ものは、それぞれ、次の事項、内容を意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
また、以下の記述中で、添字部分に用いられる添字のn−1は、前回サンプリング時の値、nは今回サンプリング時の値、n+1は次回サンプリング時の値を、それぞれ示す。
【0035】
図3〜5をみるに、本プログラム例の場合、処理ステップはステップ101〜ステップ111,ステップ201〜ステップ210からなり、各ステップの大まかな役割は、以下のようになっている。そして、次の処理を一定時間ごとに繰り返す。
〔1〕ステップ101〜ステップ107では、ACC圧を推定する。
〔2〕ステップ108〜ステップ111では、目標w/c圧と推定w/c圧の偏差を算出し増圧、保持、減圧のどの演算を行うか判断する。ここで、目標w/c圧は、例えばTCSシステムや前車への自動追従システムなどにより算出されるものである。
〔3〕ステップ201では、保持の演算を行う。
〔4〕ステップ202〜ステップ205では、増圧の場合の演算を行う。
〔5〕ステップ206〜ステップ208では、減圧の演算を行う。
〔6〕ステップ209は、w/c圧の推定処理であり、また、ステップ210では、各推定値についての更新を行う。
【0036】
フローチャートの流れに従い順次説明すると、図3において、まず、ステップ101では、推定w/c圧今回値pWCn と推定w/c圧前回値pWCn−1 を比較して、前回行ったのが増圧か減圧かを判断する。
ここに、値pWCn ,値pWCn−1 は、それぞれ、前回ループでのステップ210の更新処理において書き替えられた値であり、本ステップ101では、それらを読み出してかかる判断を行う。
上記判断の結果に応じて、ステップ102の処理(ΔpACC − =f1 (pWCn ,pWCn−1 ))、またはステップ103の処理(ΔpACC − =0)のいずれかを選択して、ステップ104へ進む。
【0037】
前回行ったのがw/c増圧の場合は、ステップ102において、ACC6の減圧量ΔpACC − を演算する。ここに、本プログラム例では、w/c圧の増圧量に対するACC圧の減圧量の関係を予め得てあり、そのデータはメモリに記憶されており、従って、まず、その予め求めておいた関係によりw/c圧前回値pWCn−1 と推定w/c圧今回値pWCn からACC圧の減圧量ΔpACC − を求める。
【0038】
具体的には、本実施例で用いるシステムでは、例えば、w/c圧50kgf/cm2 の増圧に対し、ACC圧は1kgf/cm2 減圧されるという関係にあるものとすると、その場合なら、ACC圧の減圧量ΔpACC − は、次式に基づき求めることができる。
【数1】
ΔpACC − =−(pWCn −pWCn−1 ) /50 ・・・1
一方、増圧でなく、前回行ったのがw/c圧減圧の場合(pWCn =pWCn−1 の場合を含む)は、ACC圧の減圧は行われないので、ステップ103で、ΔpACC − =0とする。
【0039】
w/c圧の増圧の場合、ACC圧はw/c圧の増圧により減圧されるが、このようにして、w/c圧の増圧量に対するACC圧の減圧量の関係を予め得ておくと、ACC圧推定はその減圧分を考慮したものにでき、正確な推定が行える。
【0040】
次に、ステップ104では、モータON/OFF情報を取り込み、ポンプモータ5のON,OFFを判断する。即ち、ここでは、ACCポンプ6が駆動されているか、停止されているかを検出し監視していることとなり、そして、その判断の結果に応じて、答がYesのときはステップ105を、またNoのときはステップ106を選択してステップ107へ進む。
モータ5がONの場合は、即ちポンプ6の駆動状態の場合にあっては、ACC圧の増圧量ΔpACC + の演算をする。この場合も、本プログラム例では、予めACCポンプ6の駆動時間に対するACC圧の増圧量を求めてメモリにそのデータが記憶されており、従って、ステップ105では、予め求めておいた関係によりポンプ6の駆動時間からACC圧の増圧量ΔpACC + を求める。
【0041】
例えば、本実施例で用いるシステムでは、ポンプモータ5がONの場合、ACC圧は時間に対して一定の割合で増加する関係を有するので、このような関係の場合なら、ACC圧増圧量ΔpACC + に所定の一定値を代入することで(ΔpACC + =定数)、ここでの処理を達成できる。
一方、ポンプモータ5がOFFの場合は、ACC圧は増圧されないので、ステップ106でACC圧増圧量ΔpACC + として値0を代入し、ステップ107に進む。
【0042】
このようにして、ACC圧はポンプ6の駆動により増圧されるため、ポンプ駆動時間に対するACC圧の増圧量の関係を予め得ておくことで、ACCポンプ駆動時も、ACC圧の正確な推定できる。
【0043】
上述のようにして、ACC圧の減圧量ΔpACC − を求め、またACC圧増圧量ΔpACC + を求め、ACC圧の今回値pACCnを推定する。即ち、次のステップ107において、ACC圧前回値pACCn−1に対し、上記ステップ102または103と、ステップ105または106で得られた値ΔpACC + と値ΔpACC − を、次式に基づき加えて、推定ACC圧今回値pACCnを求める。
【数2】
pACCn=pACCn−1+ΔpACC + +ΔpACC − ・・・2
ここに、値pACCn−1は、前回ループでのステップ210の更新処理において書き替えられた値であり、本ステップ107では、それを読み出して上式2に適用する。
【0044】
以上のようにして、w/c圧制御時の外部液圧源の圧としてのACC圧の推定ができ、また、たとえそれがw/c圧の増圧により減圧され、かつ、ポンプ駆動により増圧されるものであっても、正確な推定値として得ることができる。
上記ステップ101〜107の処理により算出された推定ACC圧値pACCnは、後述のステップ203(図5)でのΔpAW値(推定ACC圧と推定w/c圧との差圧値)の算出処理に用いられる。
【0045】
次に、ステップ108(図4)では、目標w/c圧p* の読み込みを行う。目標w/c圧p* については、既述したように、本実施例では、コントローラ8の記憶部には、適用するTCSシステム等に対応して、目的とする制御に必要なw/c圧目標値を設定するための目標w/c圧算出サブルーチン(不図示)のためのプログラムを組み込み、これを実行することで得ることができる。従って、この場合は、そのプログラム側で目標w/c圧p* の演算がなされているので、本ステップ108では、当該時点で算出されている目標w/c圧値の演算結果を本ステップの処理のつどを取り込む。
【0046】
しかして、ステップ109では、読み込んだ目標w/c圧値p* と推定w/c圧今回値pWCn の偏差Δpe を、
【数3】
Δpe =p* −pWCn ・・・3
により求める。
そして、上記式により算出される値Δpe を用い、次のステップ110,111で、偏差Δpe の正負によって増圧、保持または減圧のどの演算を行うか判断する。
【0047】
ここでは、具体的には、Δpe <−1か否かの判別(ステップ110)と、Δpe >1か否かの判別(ステップ111)とを行うようにしており、上式3で得られる値Δpe が、Δpe <−1の範囲(ステップ110の答がYes)なら減圧、Δpe >1の範囲(ステップ110の答がNoで、かつステップ111の答がYes)なら増圧、−1≦Δpe ≦1の範囲(ステップ110の答がNoで、かつステップ111の答がNo)なら保持をするものとする。
【0048】
ここで、保持をすると判断した場合は、ステップ201(図5)によりw/c圧増減圧量の推定値Δpwc(推定増減圧量)は、これを値0と設定する。そして、ステップ209へ処理を進め、後述のステップ209,210を実行して、今回ループでの本プログラムを終了する。
この場合は、偏差Δpe が零近傍の値をとり、w/c圧は、ほぼ目標w/c圧p* 近傍に制御されていることを意味していることから、電磁弁2に対する指令は周期Tの全期間にわたり保持指令であり(図13,14参照)、結果、電磁弁2は、増減圧をしない保持位置を保つ。
【0049】
これに対して、ステップ111の判別結果がYesで、増圧すると判断した場合は、本プログラム例では、ステップ111からステップ202(図5)以下の処理を経るループで、必要な増圧指令時間の算出をする一方、増圧後のw/c圧の推定を行い、今回ループでの本プログラム処理を終了する。
また、本プログラム例では、以下のw/c圧増圧処理の場合に使用することとなる増圧時間と増圧量の関係もこれを予め得ておき、そのデータが後述の増圧特性マップとしてメモリに格納されており、この予め求めた関係に基づき必要な演算が行われる。
【0050】
まず、ステップ202の処理は、基本的には、当該制御に際しての、元圧であるACC圧とw/c圧との圧力差を求めることを内容とするものである。本実施例制御では、前述したとおり、ACC7の圧力を推定して得ることができるので、ステップ202では、前記ステップ107で得られたその推定ACC圧PACCn(今回値)を用い、該PACCn値と推定w/c圧pWCn (今回値)との差圧ΔpAWを、次式、
【数4】
ΔpAW=PACCn−pWCn ・・・4
により求めることができるものである。
ここに、値ΔpAWは、ACC圧に対するw/c圧の圧力の差(両者間の圧力差)を表すことを意味する(後記「(ステップ203での)増圧時間Δtを求める関数の説明」の項参照)。そして、ACC圧は、この場合、正確な推定値として得られていることも既に述べたとおりであり(ステップ101〜107)、従って、その推定値を上記式に適用して得られる差圧値ΔpAWも、それだけ両者の圧力差を正確に反映したものとして求められることとなる。
しかして、次に、ステップ203において、前記ステップ109で求めた偏差Δpe と上記の差圧ΔpAWから増圧時間を求める(Δt=f2 (Δpe ,ΔpAW))。即ち、推定ACC圧と推定w/c圧(増圧前推定w/c圧)との差圧値ΔpAWと、目標w/c圧と推定w/c圧(増圧前推定w/c圧)の偏差値Δpe から、増圧時間Δtを求める。
以下、これについて、説明する。
【0051】
〔増圧特性の特徴〕
この場合は、ACC圧を基準として考える。
図6は、増圧特性曲線を示すものであるが、同図において、今、ACC圧よりp1低いw/c圧から、ACC圧よりp2低いw/c圧まで増圧する時間をt12とする。また、ACC圧よりp2低いw/c圧から、ACC圧よりp3低いw/c圧まで増圧する時間をt23とする。
また、ACC圧よりp1低いw/c圧から、ACC圧よりp3低いw/c圧まで増圧する時間をt13とする。
【0052】
このとき、t12,t23,t13の関係は、t13=t12+t23となり、増圧時間の合計が同じであれば、ACC圧を基準とした場合、同じw/c圧になる。
これに対し、例えば、w/c圧=0を基準にして考えると、図7のように、同じ増圧時間でも、ACC圧の違い(ACC圧の大小)によって、同じ増圧量とはならないので、本例では、ACC圧を基準として考える。
【0053】
「(ステップ203での)増圧時間Δtを求める関数の説明」
このような、増圧特性の特徴から、ACC圧を基準として、図8に示す如くに、ACC圧より例えばpA低いw/c圧から、ACC圧よりpB低いw/c圧まで増圧(Δp増圧)するのに必要な増圧時間Δtを求めることができる。
即ち、図8に示すようなACC圧を基準にしたw/c圧の増圧特性マップ(これは、予めメモリに記憶させておく)により求めるものである。
【0054】
その手法は、以下のようである。
〔手順1〕 図8に示すような−pA,−pBに対応する時間tA,tBをマップよりそれぞれ求める。
〔手順2〕 そして、それらtA,tBが求まれば、増圧時間Δt=tB−tAより、Δp増圧するのに必要な増圧時間Δt値を算出できる。
【0055】
ここで、図3〜5に示したプログラム例の場合と対比させれば、本実施例では、
pA=圧力差ΔpAW(ステップ202の算出値)、
pB=圧力差ΔpAW−Δpe (Δpe はステップ109の算出値)
となり、従って、前記ステップ203では、上記のような特性のマップを用い、かかる〔手順1〕,〔手順2〕の演算手法に従い、値ΔpAWと値Δpe から増圧時間Δt値を算出できる。
【0056】
以上の如くに、目標w/c圧にw/c圧を調圧するために必要な増圧指令時間は、こうして、推定ACC圧と増圧前推定w/c圧との差に基づき、算出することができる。
必要なw/c圧の増圧量に対する増圧時間の関係が元圧となるACC圧とw/c圧との差圧で異なる場合であっても、こうしてACC圧とw/c圧を推定し、その両者の差を算出し、増圧量に対する増圧時間を求めるようにして必要な増圧量だけ増圧するための時間は正確に算出できる。
【0057】
図5に戻り、斯く値Δtを算出したら、本プログラム例では、ステップ204において、その増圧時間Δt のあいだ増圧指令を出力する。
図13は、かかる増圧指令出力時の出力の様子の例を示す。増圧時間Δtが算出されたとき、出力は、同図のように、Δt間は増圧指令を出力し、残りT−Δt間は保持指令を出す。
電磁弁2は、こうした指令に応じてその増圧位置、保持位置への切り換えが制御されることとなり、この場合、ホイールシリンダ1の液圧は、電磁弁2の増圧、保持の切換え制御でACC圧を元圧として目標に向け増圧制御される。
【0058】
ステップ204に続くステップ205は、増圧時間Δt と差圧ΔpAWから増圧量ΔpWCを求めるステップである(ΔpWC=f3 (Δt,ΔpAW))。
増圧指令の分解能や制動液圧の応答性の影響で必ずしもΔtの増圧によりΔpe 増圧されるとは限らないので、再度増圧量を演算する。
【0059】
「(ステップ205での)増圧量を求める関数の説明」
この場合、基本的な考え方は、前記図6〜8を参照して述べたものに準じており、同様にして、図9に示す如くに、ACC圧よりpA低いw/c圧から、時間Δt増圧したときの増圧量を求めることができる。
ここでは、その増圧量Δpは、図8と同じ増圧特性マップを用いて、図9のようにして次の手順で求める(図9中、矢印参照)。
【0060】
〔手順11〕 −pAに対応する時間tAをマップより求める。
〔手順12〕 tAに増圧時間Δtを加えて、tB=tA+Δtより時間tBを求める。
〔手順13〕 tBに対応するw/c圧−pBをマップより求める。
〔手順14〕 Δp=(−pB)−(−pA)より増圧時間Δtから増圧量を算出することができる。
この場合も図3〜5に示したプログラム例の場合と対比させていえば、本実施例では、pA=圧力差ΔpAW、pB=圧力差ΔpAW−Δpe となり、前記ステップ205では、こうした〔手順11〕〜〔手順14〕による演算手法で、ステップ202の算出値である差圧値ΔpAWと増圧時間Δtから増圧量Δp(ΔpWC)が算出される。
そして、ステップ205実行ごと上記算出処理を行い、ステップ209,210を実行する。
【0061】
ステップ209は、次回ループで適用するための推定w/c圧値を算出する処理である。ここでは、推定w/c圧今回値pwcn に、前述した保持の場合のステップ201、または上述の増圧の場合のステップ205もしくは後述する減圧の場合のステップ208の処理のいずれかで得られるw/c圧増減圧量の推定値Δpwcを加えて、
【数5】
pWCn+1 =pwcn +Δpwc ・・・5
により、増減圧後の推定w/c圧pWCn+1 を求める。
なお、前述した保持の場合は、上式右辺第2項に値0が適用され、結果、pWCn+1 =pwcn となり、その状態でステップ210が実行されることになる。
【0062】
今の場合、増圧(Δpwc>0)であり、従って、このときは、上式5により、ステップ205で求められた値Δpwcをw/c圧の推定増圧量として値pwcn に加算したものが、増圧後のw/c圧の推定値として得られる。所定時間増圧後のw/c圧は、こうして推定ACC圧と増圧前推定w/c圧との差に基づき、適切にその推定が行われる。即ち、w/c圧の推定は、ACC圧を推定しつつ行われ、かつ、その得られる推定ACC圧今回値pACCnと推定w/c圧今回値pWCn よりその差圧値ΔpAWを算出し、予め求めた関係から所定の増圧時間に対する増圧量Δpwc値を求めて(ステップ202〜205)、増圧後のw/c圧を推定することができる(ステップ209)。そして、これが、次のステップ210の更新処理の実行により、次回ループにおいては、当該ループで適用すべき推定w/c圧今回値として読み出され、使用されていくこととなる。
【0063】
ステップ210では、推定w/c圧前回値pWCn−1 を推定w/c圧今回値pWCn に、推定w/C圧今回値pwcn を推定w/c圧次回値pWCn+1 (ステップ209算出値)に、推定ACC圧前回値pACCn−1を推定ACC圧今回値pACCnに、それぞれ更新し、この処理の後、スタートに戻る。
即ち、本ステップ210実行のつど、次回ループでの処理に備えて、推定ACC圧、推定w/c圧の値の書替え処理を実行して、今回ループでの本プログラムの処理を終了する。
【0064】
ホイールシリンダ1の増圧の場合、こうしてステップ101→102→104→105または106→107→108→109→110→111→202→203→204→205→209→210を経るループで、w/c圧の制御が実行される。
演算に適用するw/c圧値は逐次書き替えられ、増圧後推定w/c圧は新たな値として更新され、それを基礎として次回の推定ACC圧値が算出できる。更に、次回推定ACC圧を今回値に更新し、次回推定w/c圧値が算出されるのであり、このようにして、順次、推定ACC圧値、推定w/c圧値が算出される。
【0065】
この場合、元圧のACC圧は、w/c圧の増圧により減圧されても、本プログラム例では既述のように、w/c圧の増圧量に対するACC圧の減圧量の関係を予め得ておくことでACC圧を正確に推定できるし、かつまた、ポンプ駆動時間に対するACC圧の増圧量の関係を予め得ておくことでACC圧を正確に推定でき、正確なACC圧の推定が実現される。
そして、その推定されたACC圧は、増圧指令後のw/c圧の推定処理にも、w/c目標圧に調圧するため必要な増圧指令時間の算出処理にも、基礎データとして適用され、それぞれを正確なものにすることができる。
w/c圧の増圧時間に対する増圧量の関係は、元圧となるACC圧とw/c圧との差圧で異なるため、ACC圧とw/c圧を推定してその差圧を算出し、増圧時間に対する増圧量を求めることで正確に増圧後のw/c圧を推定できる。
必要なw/c圧の増圧量に対する増圧時間の関係は、元圧となるACC圧とw/c圧との差圧で異なるため、ACC圧とw/c圧を推定してその差圧を算出し、増圧量に対する増圧時間を求めることで必要な増圧量だけ増圧するための時間を正確に算出できる。
このような方法で、増圧の場合でも、w/c圧の推定、指令時間の算出を行うことで、高価な圧力センサを用いずに、w/c圧を目標値通りに制御できる。
【0066】
w/c圧制御にあたり、w/c圧の増圧量がたとえ同じ増圧時間であっても、アキュムレータ6のACC圧の大小や、そのACC圧と増圧前のホイールシリンダ1の圧との差圧如何で異なるといった場合にでさえも対応し得て、より推定を正確なものとし、容易に推定精度を高めることができ、正確なw/c圧制御が達成される。
本プログラム例では、容易に正確な推定をするために、ACC圧とw/c圧との差圧を得る方法を導入しており、しかも、そのために、ACC圧についての圧力センサも設けず、かつw/c圧についての圧力センサも設けずに元圧のACC圧についても推定をし、ACC圧とw/c圧の両者を推定しながら、w/c圧制御を達成していく方法が実現される。
また、この場合に、前記のようなACC圧を基準にした増圧特性マップを使用した演算手法とすれば、より制御精度を高め正確なものとすることができる。
【0067】
ホイールシリンダ1の減圧制御が行われる場合は、図4のステップ108での読み込み目標w/c圧p* 値に基づき、ステップ109→ステップ110と処理が進められる過程において、偏差Δpe が所定値を下回る負の値をとるときである。即ち、そのステップ110の判別結果がYesで減圧すると判断した場合、ステップ206(図5)が選択され、処理はステップ110からステップ206以下へと進み、まず、ステップ206で、偏差Δpe 値と推定w/c圧今回値pwcn から減圧時間Δtを求める(Δt=f4 (Δpe ,ΔpAW))。
以下、これについて、説明する。
【0068】
〔減圧特性の特徴〕
減圧特性も、増圧特性と同様である。図10において、w/c圧p1からw/c圧p2に減圧するのに必要な減圧時間をt12、w/c圧p2からw/c圧p3に減圧するのに必要な減圧時間をt23とする。また、w/c圧p1からw/c圧p3に減圧するのに必要な減圧時間をt13とする。
このとき、t13=t12+t23となり、減圧時間の合計が同じであれば、同じw/c圧になる。
【0069】
「(ステップ206での)減圧時間を求める関数の説明」
上記のような、減圧特性の特徴から、図11に示す如く、w/c圧をpAからpBまでΔp減圧するのに必要な減圧時間Δtを求めることができる。
即ち、図11に示すようなw/c圧の減圧特性マップを用いて算出する。その場合の手順は、以下のようになる。
〔手順21〕 図11に示すようなpA,pBに対応する時間tA,tBをマップからそれぞれ求める。
〔手順22〕 そして、それらtA,tBを基に、Δt=tB−tAにより、Δp減圧するのに必要な減圧時間Δt値を算出できる。
ここで、この場合も、図3〜5のプログラム例の場合と対比させれば、本実施例では、pA=推定w/c圧今回値pWCn 、pB=w/c圧pWCn +Δpe (ただし、Δpe は負値)となり、従って、前記ステップ206では、かかる演算手法に従い、値pWCn と値Δpe とから減圧時間Δt値を算出できる。
【0070】
次に、図5において、そうして減圧時間Δt値を算出したら、ステップ207では、その減圧時間Δt のあいだ減圧指令を出力する。
図14は、かかる減圧指令出力時の出力の様子の例を示す。減圧時間Δtが算出されたとき、出力は、同図のように、Δt間は減圧指令を出力し、残りT−Δt間は保持指令を出す。
電磁弁2は、かかる指令に応じた減圧、保持の切り換え制御でホイールシリンダ1内のその制動液をリザーバタンク3へ抜いて減圧を行うこととなる。
そして、続くステップ208において、減圧時間Δtと推定w/c圧今回値pWCn から推定減圧量ΔpWCを求める(ΔpWC=f5 (Δt,pWCn ))。
ここで、推定減圧量Δpwcは負に算出されるようにする。
【0071】
「(ステップ208での)減圧量を求める関数の説明」
同様にして、減圧特性マップを使用し、図12に示す如く、w/c圧pAから、時間Δt減圧した場合の減圧量Δpを求めることができる。即ち、図11と同じ減圧特性マップを用いて、図12のようにして次の手順で求める(図12中、矢印参照)。
〔手順31〕 pAに対応する時間tAをマップより求める。
〔手順32〕 tAに減圧時間Δtを加えて、tB=tA+Δtより時間tBを求める。
〔手順33〕 tBに対応するw/c圧pBをマップより求める。
〔手順34〕 Δp=pB−pAより、減圧量Δp(<0)が算出される。
【0072】
この場合も図3〜5のプログラム例の場合と対比させていえば、本実施例では、pA=推定w/c圧今回値pWCn 、pB=w/c圧pWCn +Δpe となり、前記ステップ208では、値pWCn と減圧時間Δtから減圧量Δp(ΔpWC)が算出される。
【0073】
かくして、ステップ208の後は、前記ステップ209及びステップ210の各処理を実行して、今回ループでの本プログラムの処理を終了する。
この場合においては、前記式5の右辺第2項には負の値ΔpWCがw/c圧の推定減圧量として適用され、これをw/c圧今回値pwcn から減算したものが減圧後のw/c圧の推定値として得られるとともに、これを基に、前述したと同様にして次回ループに備えた推定w/c圧の書替え更新処理が実行され、かつまた、推定ACC圧値についての書替え更新処理も行われ、次回ループでは、ステップ101以下の前述した処理が実行されてくことになる。
【0074】
こうして減圧の場合は、ステップ101→103→104→105または106→107→108→109→110→206→207→208→209→210を経るループで、w/c圧の制御が実行される。こうした過程で周期ごと推定されていくw/c圧値は、w/c圧の保持や増圧への制御の切り換わりの場合にはその際のホイールシリンダ1の液圧を示すものとして引き継がれていくとともに、ACC圧についても、同様に、正確な推定値として引き継がれていくことになる。
【0075】
即ち、ホイールシリンダ1の制動液を抜く場合には、その減圧制御によってはアキュムレータ6内の圧力の低下方向の変動分はないものの、前記した圧力スイッチ7に基づきACC圧を所定範囲内の圧とするよう調圧するポンプ4のON作動によっては、次にw/c圧増圧制御が行われる場合のその元圧となることとなるACC圧の増加方向への変化はある。
本プログラム例では、減圧制御ときでも、上記ステップ101〜ステップ107の処理は実行されており、従って、該当するときはポンプ駆動時間に対応し、逐次その時点での推定アキュムレータ圧値に値ΔpACC + 分は加算されていく。よって、アキュムレータポンプ6の駆動/停止をも考慮した、正確なACC圧の推定は引き続き継続して行うことができ、そして、w/c圧制御が増圧制御に転じたときなら、その際の推定ACC圧今回値がそのときのアキュムレータ6内の圧力を示すものとして、前述の増圧制御の演算(ステップ202〜205)に適用すべきこととなる推定ACC圧値として適切に引き継がれていくこととなるのであり、よって、高い推定精度、制御精度を保ちつつ必要なw/c圧の増減圧制御がされる。
【0076】
以上のように、ACC圧を推定し、w/c圧を推定して制御することで、高価な圧力センサを用いずに正確にw/c圧を制御できる。
w/c圧を目標値通りに制御することにより、▲1▼例えば、トラクションコントロール装置においては、駆動輪がスリップした際に、w/c圧の不足や過多が発生せず、確実にスリップを抑えることができ、また、加速性の低下もしない。
また、▲2▼例えば、左右w/c圧を独立に制御し、旋回、直進中の車両の挙動を制御する場合も、意図しないモーメントが発生せず、狙い通りの車両の挙動の制御ができる。
また、▲3▼例えば、前述したような追従走行制御装置においては、目標車速通りに実車速を制御することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記のようなTCS等に限らず、外部液圧源(マスターシリンダ圧以外)によりホイールシリンダを増圧する装置(例えば、その他のアクティブブレーキ、自動ブレーキ等)にも適用可能であることは、いうまでもない。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、外部液圧源により車両の制御対象車輪のホイールシリンダ圧の増圧が可能な制動液圧制御において、ホイールシリンダ圧が増圧制御される場合においても、そのホイールシリンダ圧の元圧となる外部液圧源の圧も推定し、ホイールシリンダ圧の推定、指令時間の算出を行うことができ、増圧制御時の外部液圧源の圧の変化をも制御に適切に反映し得て、元圧とホイールシリンダ圧との圧力差をも考慮した推定、制御を行うことが可能で、元圧をみない場合のものに比し推定精度の低下はこれを少なからしめ、しかも、これを高価な圧力センサも付加せず容易に実現でき、制御対象車輪のホイールシリンダ圧をよりきめ細かく目標値通りに制御し、制御精度の向上を実現できる。
【0079】
元圧を推定し、ホイールシリンダ圧を推定して制御することで、正確にホイールシリンダを制御でき、制御精度を高められることにより、トラクションコントロール装置においては、駆動輪がスリップした際に、ホイールシリンダ圧の不足や過多が発生せず、確実にスリップを抑えることができ、また、加速性の低下もしない。また、追従走行制御装置においては、目標車速通りに実車速を制御することができる。
また、左右のホイールシリンダ圧を独立に制御し、旋回、直進中の車両の挙動を制御する場合に適用して、意図しないモーメントが発生せず、狙い通りの車両の挙動の制御が実現できる。
【0080】
また、外部液圧源はホイールシリンダ圧の元圧を得るためのアキュムレータを含み、かつ、当該アキュムレータ圧を所要の圧力となるよう調圧するポンプ機構を有するとともに、そのポンプの駆動停止を検出する検出手段を備え、元圧の推定手段は、推定ホイールシリンダ圧の変化もしくは推定ホイールシリンダ圧の前回値及び今回値と、当該検出手段により検出されるポンプの駆動停止情報に基づき、そのアキュムレータ圧を推定する手段として構成して、本発明は実施でき、同様に上記を実現することができる。この場合は、元圧となるアキュムレータ圧の推定は、アキュムレータにおけるアキュムレータ圧はホイールシリンダ圧の増圧で減少し、一方また、ポンプの駆動によってアキュムレータ圧は増加することをも考慮して、元圧のアキュムレータ圧の正確な推定を可能とすることができる。
【0081】
また、元圧の推定手段によりアキュムレータ圧を推定し、
ホイールシリンダ推定手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧を推定し、
増圧指令時間を算出する手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、目標ホイールシリンダ圧にホイールシリンダ圧を調圧するために必要な増圧時間を算出するようにして、本発明は実施でき、同様に上記を実現することができる。
この場合は、上記推定で得られる推定アキュムレータ圧を基にして、そのホイールシリンダ推定、増圧指令時間算出をなすことができる。従って、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に応じた所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧の推定もより正確なものにすることができ、また、必要なホイールシリンダ圧の増圧量に対する増圧時間の関係が元圧となるアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧との差圧で異なる場合でも適切に対応でき、アキュムレータ圧とホイールシリンダを推定してその差圧を算出し、増圧量に対する増圧時間を求めることで必要な増圧量だけ増圧するための時間を正確に算出できるとともに、その場合も、上記の正確なものとして得られる推定アキュムレータ圧値を使用してその増圧指令時間の算出をより正確なものとすることができる。
【0082】
また、予め求めたホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係と、予め求めた前記ポンプの駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係と、及び予め求めたアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧の差圧で異なる増圧時間とホイールシリンダ圧の増圧量の関係とを記憶させた記憶手段を有し、
斯く記憶手段に記憶させた関係により、推定ホイールシリンダ圧前回値と推定ホイールシリンダ圧今回値からアキュムレータ圧の減圧量を求め、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量を求めて、アキュムレータ圧の今回値を推定し、
該推定アキュムレータ圧今回値と推定ホイールシリンダ圧今回値より、その差圧を算出し、前記記憶手段に記憶させた関係から所定の増圧時間に対するホイールシリンダ圧増圧量を求め、増圧後のホイールシリンダ圧を推定するよう、アキュムレータ圧推定とホイールシリンダ圧推定を行う構成として、本発明は実施でき、同様に上記を実現することができる。
この場合、好ましくは、適用するシステムにより、その使用アキュムレータ、ポンプ等に応じ、それらの関係データを予め得てコントローラのメモリに格納しておき、これに基づいてそれぞれの推定を容易に的確に行うことができる。これにより、アキュムレータ圧の推定では、ホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係を予め得ておくことでアキュムレータを正確に推定でき、また、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係を予め得ておくことでアキュムレータ圧を正確に推定できる。ホイールシリンダ圧の増圧時間に対する増圧量の関係は、元圧となるアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧との差圧で異なるため、アキュムレータ圧とホイールシリンダ圧を推定してその差圧を算出し、増圧時間に対する増圧量を求めることで正確に増圧後のホイールシリンダを推定できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明制動液圧制御装置の一実施例を示すシステム図で、制御対象車輪の一輪分に係わる構成を示す図である。
【図2】同例での制御内容を表す機能ブロック図である。
【図3】コントローラにより実行される制御プログラムの一例で、その一部を示すフローチャートである。
【図4】同じく、他の一部を示すフローチャートである。
【図5】同じく、他の一部を示すフローチャートである。
【図6】制御内容の説明に供するもので、ACC圧を基準とした場合の増圧時間とw/c圧との関係の説明に供する、増圧特性曲線の一例を示す図である。
【図7】比較例として示す特性図である。
【図8】増圧特性マップによる、増圧制御での増圧時間の算出手法の一例を示す図である。
【図9】同じく、増圧量の算出手順の一例を含めて示す、説明図である。
【図10】減圧時間とw/c圧との関係の説明に供する、減圧特性曲線の一例を示す図である。
【図11】減圧特性マップによる、減圧制御での減圧時間の算出手法の一例を示す図である。
【図12】同じく、減圧量の算出手順の一例を含めて示す、説明図である。
【図13】増圧指令の出力の説明に供するもので、増圧指令出力時の出力波形の図である。
【図14】減圧指令の出力の説明に供するもので、減圧指令出力時の出力波形の図である。
【符号の説明】
1 w/c
2 電磁弁
3 リザーバタンク
4 ポンプ
5 ポンプ駆動用モータ
6 アキュムレータ
7 圧力スイッチ
8 コントローラ
10 車輪
Claims (4)
- 外部液圧源により車両の制御対象車輪のホイールシリンダの増圧が可能な制動液圧制御装置であって、
前記外部液圧源からの供給圧を元圧とする前記ホイールシリンダの目標ホイールシリンダ圧を算出する目標液圧算出手段と、
該外部液圧源からの供給圧を推定する推定手段と、
所定時間増圧指令または減圧指令することでホイールシリンダ圧を前記目標ホイールシリンダ圧に調圧するよう、制御される電磁弁と、
前記推定手段による元圧の推定値と目標ホイールシリンダ圧値を基に所定時間増圧後のホイールシリンダ圧を推定する手段を含む、ホイールシリンダ圧推定手段と、
前記元圧の推定値と推定ホイールシリンダ圧値と目標ホイールシリンダ圧値を基にホイールシリンダ圧を目標ホイールシリンダ圧に調圧するのに必要な前記電磁弁に対する増圧指令時間を算出する手段を含む、制御指令演算手段とを備え、
前記外部液圧源はホイールシリンダ圧の元圧を得るためのアキュムレータを含み、
かつ、当該アキュムレータ圧を所要の圧力となるよう調圧するポンプ機構を有するとともに、そのポンプの駆動停止を検出する検出手段を備え、
前記元圧の推定手段は、推定ホイールシリンダ圧の変化もしくは推定ホイールシリンダ圧の前回値及び今回値と、当該検出手段により検出されるポンプの駆動停止情報に基づき、そのアキュムレータ圧を推定する手段である、
ことを特徴とする請求項1記載の制動液圧制御装置。 - 前記元圧の推定手段によりアキュムレータ圧を推定し、
前記ホイールシリンダ圧推定手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、所定時間増圧指令後のホイールシリンダ圧を推定し、
前記増圧指令時間を算出する手段は、その推定アキュムレータ圧と増圧前推定ホイールシリンダ圧との差圧に基づき、目標ホイールシリンダ圧にホイールシリンダ圧を調圧するために必要な増圧時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の制動液圧制御装置。 - 予め求めたホイールシリンダ圧の増圧量に対するアキュムレータ圧の減圧量の関係と、予め求めた前記ポンプの駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量の関係と、予め求めたアキュムレータ圧とホイールシリンダ圧の差圧で異なる増圧時間とホイールシリンダ圧の増圧量の関係とを記憶させた記憶手段を有し、
斯く記憶手段に記憶させた関係により、推定ホイールシリンダ圧前回値と推定ホイールシリンダ圧今回値からアキュムレータ圧の減圧量を求め、ポンプ駆動時間に対するアキュムレータ圧の増圧量を求めて、アキュムレータ圧の今回値を推定し、
該推定アキュムレータ圧今回値と推定ホイールシリンダ圧今回値より、その差圧を算出し、前記記憶手段に記憶させた関係から所定の増圧時間に対するホイールシリンダ圧増圧量を求め、増圧後のホイールシリンダ圧を推定するよう、アキュムレータ圧推定とホイールシリンダ圧推定を行う、
ことを特徴とする請求項1、または請求項2記載の制動液圧制御装置。 - 前記目標ホイールシリンダ圧は、
トラクションコントロールにおける駆動スリップ制御時の駆動輪の目標ホイールシリンダ圧であるか、
追従走行制御における減速制御時の制動力の制御のための制御対象車輪の目標ホイールシリンダ圧であるか、
車両挙動制御において左右輪のホイールシリンダ圧を独立に制御する場合の制御対象車輪の目標ホイールシリンダ圧であるかの、
いずれかを対象とするか、またはそれら二以上を対象とする、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3記載の制動液圧制御装置。
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