JP3554933B1 - 水底トンネルの構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】延伸方向の両端部を開口した貫通型函体を使用し、効率よく施工できる水底トンネルの構築方法を提供すること。
【解決手段】延伸方向の両端部を開口した貫通型函体1を、水底において隣接する貫通型函体1に接合しながら複数個並べ、複数の前記貫通型函体を接合した函体群10の両端部を外水22から遮断し、前記函体群の内部に滞留する内水21を排水して函体群内を気中状態とする方法である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレキャスト製の函体を水底に沈設して構築する水底トンネルの構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から製作ヤードで構築した函体を、目的地まで曳航して沈設することによって水底トンネルを構築する沈埋工法が実施されていた。通常、沈設する函体は、100m〜140m程度の長さを有するため、造船所のドックのような製作ヤードを工事現場付近に構築して函体を製作していた。このように長大な剛性の高い函体を水底に沈設した場合、水底の不等沈下や地震などの変動に伴って、函体に大きな応力が発生することがある。このため、クレーンで吊り上げることができる程度の大きさの分割函体(ユニット)を製作し、複数の分割函体を連結して大型の沈埋函を構築する方法が開発されている(特許文献1〜5参照)。
このなかの特許文献2では、鋼板等の仮締切りで仕切られたブロックを水上で複数連結し、大型の沈埋函本体を構築した後に沈設を行っている。また、作業船上で分割函体を複数連結して大型の沈埋函を構築し、目的地まで作業船で運搬した後に沈埋函を沈設する方法が特許文献3〜5に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−178990号公報
【特許文献2】
特公昭48−6227号公報
【特許文献3】
特開平6−193391号公報
【特許文献4】
特開平11−140893号公報
【特許文献5】
特開2000−257091号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の函体を使用した水底トンネルの構築方法にあっては、次のような問題点がある。
<イ>既設の水底トンネルの隣接地に新たに水底トンネルを構築する場合、長大な沈埋函を一時に設置しようとすれば、既設の水底トンネルへの影響が避けられない。すなわち、大型の沈埋函を沈設するためには、大規模な掘削をおこなう必要があり、この大規模な掘削によって既設の沈埋函が影響を受ける場合がある。このような問題に対処するために、既設の水底トンネルに対策工を施した後に掘削をおこなう必要がある。
<ロ>従来の方法では、沈設する沈埋函は隔壁(バルクヘッド)によって区切られている。この隔壁は、沈設後に撤去される一時的な構造物であるため、できるだけ設けない方が施工性は向上する。しかし、上記した従来の方法においては、沈埋函の少なくとも両端、方法によっては各分割函体ごとに隔壁を設けるため、それらの隔壁を構築し、撤去する作業が必要になる。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、延伸方向の両端部を開口した貫通型函体を使用し、効率よく施工できる水底トンネルの構築方法を提供することを目的とする。特に、個々の函体の沈設が容易で、隔壁の数を削減することで、効率よく施工できる水底トンネルの構築方法を提供することを目的とする。
また、周辺環境への影響を最小限に抑えることができる水底トンネルの構築方法を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の水底トンネルの構築方法は、延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら沈設し、水底において浸水した状態の前記貫通型函体を、隣接する貫通型函体に接合しながら複数個並べ、複数の前記貫通型函体を接合した函体群の両端部を外水から遮断し、前記函体群の内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする方法である。
また、延伸した水底トンネルの端部に、延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら接合し、前記貫通型函体を複数接合して函体群を構築した後に新たに水底トンネルの端部となった貫通型函体の端部を外水から遮断し、前記函体群の内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする方法である。
さらに、延伸方向の両端部を開口して外水を自由に浸入させた貫通型函体を複数接合して函体群を構築し、前記函体群の端部に延伸した水底トンネルの端部を接合し、前記函体群の端部が外水から遮断された状態で内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする方法である。
ここで、上記したいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、前記函体群の構築と函体群の内部に滞留する内水の排水を繰り返すことによって水底トンネルを延伸することができる。
【0007】
また、本発明の水底トンネルの構築方法は、水中に間隔を置いて複数の水中構造物を構築し、前記水中構造物間に延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら沈設し、水底において浸水した状態の前記貫通型函体を、隣接する貫通型函体に接合しながら複数個並べ、複数の前記貫通型函体を接合した函体群を少なくとも一部に含む水底トンネルによって前記水中構造物間を連結し、前記水中構造物から前記函体群の内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする方法である。
ここで、上記のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、前記貫通型函体の接合時に貫通型函体の端面に備えた止水材で貫通型函体間を止水することができる。また、前記貫通型函体の接合後に貫通型函体間を止水することもできる。
【0008】
また、本発明の水底トンネルの構築方法は、上記のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、前記貫通型函体の内側又は躯体内部に独立して気中状態を確保するための管を設け、前記貫通型函体の接合時または接合後に前記管も延伸方向に接合し、前記貫通型函体が浸水状態のときに前記管の内部を気中状態にすることを特徴とした方法である。ここで、前記管の表面から前記貫通型函体の内部に滞留した内水へ気体を供給することができる。また、前記貫通型函体の内部の内水を貫通型函体に設けた開口部から外水側に吐出すると共に、貫通型函体に設けた他の開口部から外水を内水側に取り込むことで、内水を循環させることもできる。
【0009】
また、本発明の水底トンネルの構築方法は、水底を掘削する掘削工程と、上記のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法によって掘削した水底に貫通型函体を設置する沈設工程と、水底に設置した前記貫通型函体を前記掘削工程において発生した掘削土によって埋め戻す覆土工程と、からなる方法である。ここで、前記掘削工程によって掘削した掘削土を水上の土砂運搬船に搬送し、前記土砂運搬船から水底に設置した前記貫通型函体を埋め戻す埋戻土を供給することができる。また、前記土砂運搬船から供給する埋戻土は、前記土砂運搬船上で掘削土を原料に固化材を添加して製造することもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<イ>貫通型函体
貫通型函体1は、水底トンネル3を構成する構造体である。複数の貫通型函体1を水底で接合することによって水底トンネル3を構築する。
貫通型函体1の函体長は、例えば20〜30m程度にする。本発明で使用する貫通型函体1は、クレーンを備えた起重機船41で吊り上げるなどして容易に運搬できるようにするため、従来から沈埋工法で使用されていた函体長より短いものを使用するのが好ましい。そして、必要に応じて水底において複数の貫通型函体1(例えば5〜7函体)を緊張材により一体化する(図示せず)。
貫通型函体1の断面形状は矩形、楕円形など任意に選択することができる。通常は、図1に示すようなボックスカルバート型の矩形断面の貫通型函体1を使用する。
貫通型函体1の両端は開口されて貫通状態となっている。このため、水中に貫通型函体1を沈めると、自由に外水22が内部に浸入する。この内外共に浸水した状態の貫通型函体1を複数連結して水底トンネル3を構築する。
【0012】
本発明では、前述したように延伸方向の両端部を開口した貫通型函体1を水底において複数接合して函体群10を構築し、函体群10を延伸することで水底トンネル3を形成する。このため、貫通型函体1を複数接合しただけでは、函体群10内に内水21が滞留した状態になる。この函体群10内に滞留した内水21を排水して気中状態の水底トンネル3を構築するには、函体群10の両端を外水22から遮断する必要がある。ここで、外水から函体群10の両端部を遮断する方法としては、函体群10の端部に配置する貫通型函体1に隔壁11を設ける方法がある。この隔壁11は、貫通型函体1を水底に沈設した後に取り付けることもできるが、図3に示すような予め片側の開口部に隔壁11を設けた片壁付き函体1aを函体群10の端部にのみ配置してもよい。また、函体群10を延伸して水底トンネル3の端部が水上に突出した場合も外水22の浸入が遮断されることになるため、ここでいう外水22からの遮断に該当する(図1参照)。
さらに、立坑5aや人工島等の外水22を遮断した水中構造物5に函体群10の端部が接続した場合も、ここでいう外水22からの遮断に該当する(図8参照)。また、外水22から遮断された別の水底トンネル3a,3b,3c,3eに接続した場合も、ここでいう外水22からの遮断に該当する(図4,7,9参照)。
【0013】
<ロ>止水材(図10,11)
止水材6は貫通型函体1,1同士の接合部の止水性を高めるために貫通型函体1の端部に配置する。止水材6には、接合時に止水性を発揮する一次止水材6aと、接合後に止水性を発揮する二次止水材6b,6cがある。
一次止水材6aは、例えば貫通型函体1,1同士が対向する端面に配置する線状の止水シールである。一次止水材6aには、ゴムシールやガスケットなど公知の止水材料が使用できる。この一次止水材6aは、貫通型函体1を別の貫通型函体1に押し付けて接合したときに変形して止水性を発揮する(図10参照)。
二次止水材6b,6cは、例えば仮接合が完了した後に止水性を発揮する部材である。二次止水材6b,6cには、貫通型函体1の接合前に予め端部に取り付けておいて、接合後に浸透水の作用などで膨潤させる膨潤ゴム製の二次止水材6bや、貫通型函体1を接合した内部から取り付ける断面Ω型の止水ゴム製の二次止水材6cがある(図11参照)。内部から取り付ける二次止水材6cのみによって止水を行う場合は、潜水作業によって二次止水材6cの取り付けをおこなう。
これらの一次止水6aと二次止水6b,6cは、単独又は併用して使用することができる。
【0014】
<ハ>連結材(図18)
連結材は、貫通型函体1,1同士を連結するために必要に応じて使用する。
連結材は、例えば連結鋼棒91と一組の台座92で構成する。台座92は、予め貫通型函体1の外面又は内面に突出するように取り付けておく。台座92を貫通型函体1に固定するために、脚部を貫通型函体1に埋め込む方法やアンカーボルトで固定する方法が採用できる。台座92にはU字型の切込みを設け、容易に連結鋼棒91を装着できるように構成するのが好ましい。
連結材は、貫通型函体1の周方向に間隔をおいて複数配置する(図示せず)。
複数の貫通型函体1ごとに後述する緊張材93で一体化する場合は、プレストレストを導入するまでの貫通型函体1,1間の連結を確保するために連結材を使用することもできる。この場合は、連結材は緊張材93によって複数の貫通型函体1が一体化された後に撤去して、転用することができる。また、そのまま取り付けておくこともできる。
【0015】
<ニ>緊張材(図19)
緊張材93は、複数の貫通型函体1を一体化するために必要に応じて配置する。緊張材93には、公知のPC鋼線、PC鋼より線、PC鋼棒等が使用できる。
緊張材93は、例えば貫通型函体1の床版や側壁等の躯体内部に設置したシース管に挿入する。シース管は、貫通型函体1の貫通方向、言い換えると軸方向に配置する。
なお、緊張材93及びシース管を躯体外部に配置して緊張力を与えることもできる。
【0016】
【実施例1】
以下、図1を参照しながら本発明の実施例1について説明する。
【0017】
<イ>函体の製作
貫通型函体1は、陸上の製作ヤードで製作する。
製作ヤードには、例えば流体圧を利用したウォータキャスタやローラコンベヤなどの移送装置を設置する。そして、貫通型函体1の下床版、側壁、上床版を順に流れ作業で製作する。この際、先に製作した貫通型函体1の端部を型枠にして次の貫通型函体1を製作するマッチキャスト方式を採用すれば、接合部を精度よく製作することができる。
完成した貫通型函体1はクレーンを備えた起重機船41で吊り上げて目的地まで運搬する。沈設地点までの運搬は、貫通型函体1を起重機船41に積載して運搬しても良いし、クレーンで吊り下げたままの状態で運搬することもできる。
【0018】
<ロ>函体の沈設
貫通型函体1を沈設する場所は、必要に応じて予め浚渫又は掘削し、基礎砕石を敷き均したり、袋状のモルタルパックなどを敷設したりして基礎31を構築しておく。本発明の貫通型函体1は小規模であり、貫通型函体1の沈設の進捗状況に合わせて掘削を順次おこなっていけばよいため、貫通型函体1を設置するために掘削をおこなったとしても周辺環境に与える影響は少ない。
また、杭基礎32を構築しておき、杭頭部に貫通型函体1を設置することもできる(図20参照)。
貫通型函体1を沈設場所の上方まで運搬した後に、貫通型函体1を先に沈設した貫通型函体1の隣に沈設する。貫通型函体1は両端が開口されているため、外水22が自由に貫通型函体1の内部に浸水することができる。このため、浮力抵抗も受け難く、容易に水底に沈設することができる。
【0019】
<ハ>函体の連結
貫通型函体1と先に沈設した貫通型函体1を接合する。例えば、沈設した貫通型函体1を引き寄せジャッキ等で既設の貫通型函体1側に引き寄せて接合をおこなう。貫通型函体1,1同士が衝突すると、一次止水材6aが貫通型函体1の端面に取り付けてある場合は変形して一次止水が完了する。
貫通型函体1,1に設けた台座92間に連結鋼棒91等を配置して連結をおこなう。台座92を貫通型函体1の外面に設けた場合は、連結鋼棒91を貫通型函体1の外部から容易に取り付けることができる。
貫通型函体1を沈設した後に貫通型函体1の下部に基礎モルタル等を注入して基礎31を完成させる。
貫通型函体1を順次連結して、複数の貫通型函体1,1,1・・・を連結した函体群10からなる水底トンネル3の両端部が水上に突出すると、外水22が水底トンネル3の内部に浸水することがなくなり、水底トンネル3の端部が外水22から遮断される。この状態で、水底トンネル3の内部に滞留した内水21を一気に排水すれば、気中状態の水底トンネル3が一時に完成する。
排水にあたっては、排水後の貫通型函体1の見かけの比重が、浮き上がりのない安定した比重となっているかどうかを確認しておく必要がある。例えば、安定比重を見かけの比重が1.05以上であるとする場合は、貫通型函体1の自重及び内部に配置した部材の重量を、貫通型函体1の外形の体積で割った値が1.05以上になっているかを確認する。安定重量に達しない場合は、水バラスト設けたり、インゴットを設置したり、後述する覆土を行うなどして水底トンネル3を安定重量にする。
このように、水底トンネル3の構築中は函体群10の内部に内水21が滞留した状態にしておき、連結が完了した後に一時に内水21を排水する方法を採用することで、構築中の水底トンネル3を安定した状態で水底に沈設しておくことができる。すなわち、函体群10から早期に排水をおこなうということは、函体群10の安定重量を早期に確保する必要があるということであるため、バラストの追加や覆土による埋め戻しのタイミングも厳しい制限を受けることになる。これに対して、ある程度、水底トンネル3を浸水状態で延伸する場合は、バラストを追加するタイミングや覆土のタイミングの自由度が広がるため、より効率的な施工をおこなうことが可能になる。
【0020】
【実施例2】
以下、図2,3を参照しながら本発明の実施例2について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
【0021】
<イ>函体群の構築
水底トンネル3は、実施例1で説明したように、水上に端部が突出するなどして外水22が遮断される状態になるまで延伸することもできるが、所定の間隔ごとに隔壁11を設けることによって段階的に構築していくこともできる。
例えば図2に示すように、複数の貫通型函体1,1,1,1,1を連結した函体群10の両端を隔壁11,11で締め切り、外水22を遮断した後に、内水21を排水することによって、任意の函体群10を部分的に、独立して気中状態にすることができる。この場合の内水21の排水先は、先に構築済みの水底トンネル3であっても良いし、函体群10の一部に開口部を設け、開口部から水上まで排水管を接続して排水する方法であっても良い。
隔壁11を設けた片壁付き函体1aは、例えば水底トンネルの長さで100〜150m間隔ごとに配置する。
【0022】
<ロ>函体群の一体化(図19、図2)
貫通型函体1を複数連結した函体群10を緊張材93によって一体化する場合は、例えば5〜7函体毎に一体化をおこなう。
まず、躯体内部に設けたシース管に函体群10を貫くように緊張材93を挿入する。シース管は、通常、貫通型函体1の周方向に間隔を置いて複数配置されている。
緊張材93は、函体群10に隣接する水底トンネル3に設けた一方の定着部から他方の定着部に向けて挿入する(図示せず)。こうすることで一体化する函体群10を隣接する水底トンネル3の端部に接続することができる。すなわち、緊張材93を緊張して函体群10に一度にプレストレストを導入して一体化すると、その緊張材93の定着部が隣接する水底トンネル3の端部に設けられているため、函体群10を水底トンネル3と一体化することが同時にできる。
なお、貫通型函体1の一体化が完了した後に必要に応じて連結鋼棒91等を撤去する。函体群10が緊張材93のみで連結された場合は、不等沈下や地震時などに柔構造として対応することができる。
【0023】
【実施例3】
以下、図4〜6を参照しながら本発明の実施例3について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
実施例3は、延伸してきた水底トンネル3a,3bの先端に、貫通型函体1を複数連結して、水底トンネル3を更に延伸していく実施例である。ここで、水底トンネル3aは、水上から徐々に水深の深い水底に向かって延伸してきたトンネルを表したもので、水底トンネル3bは、水底又は地中から延伸してきたトンネルを表したものである。また、延伸してきた水底トンネル3a,3bは、必ずしも貫通型函体1で構築されている必要はなく、推進トンネル工法、シールド工法、従来の沈埋函工法など様々なトンネル構築方法によって構築することができる。
延伸してきた水底トンネル3の先端は、図4に示すように隔壁11によって外水22から遮断されていても良いし、図5に示すように遮断されていなくとも良い。水底トンネル3a,3bの先端に貫通型函体1を複数連結した後に、新たに水底トンネル3の先端となった函体群10の端部に隔壁11を設ける。隔壁11は、函体群10の先端部に配置する函体を片壁付き函体1aとすることで設けることができる。
そして、函体群10内の内水21を水底トンネル3a,3b内に向けて排水することで、函体群10内を気中状態にすることができる。また、函体群10aの先端に更に函体群10bを構築し、貫通型函体1の連結工程、函体群10a,10b単位の排水工程を繰り返すことで、水底トンネル3を延伸していくことができる(図6参照)。
【0024】
【実施例4】
以下、図7を参照しながら本発明の実施例4について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
実施例3では、延伸してきた水底トンネル3の先端に函体群10を構築することで水底トンネル3を更に延伸していく実施例について説明したが、実施例4では水底に構築した函体群10に水底トンネル3cが到達する実施例について説明する。
実施例4では、水底の任意の場所に貫通型函体1を複数並べ、函体群10を構築しておく。そして、構築した函体群10に向けて水底トンネル3cを延伸させる。到達させる水底トンネル3cの構築方法は、実施例3でも述べたようにどのような方法であってもよい。また、水底トンネル3cの先端部が函体群10の端部に連結することよって、函体群10の端部は外水22から遮断されるため、函体群10には隔壁11を設けなくともよい。水底トンネル3cが到達した後に、内水21を水底トンネル3c内に排水することで函体群10を気中状態にすることができる。
【0025】
【実施例5】
以下、図8,9を参照しながら本発明の実施例5について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
実施例5は、立坑5a、人工島、トンネル等の水中構造物5間を、貫通型函体1を使用して連結する実施例である。
図8は、予め構築した2つの立坑5a,5aの間に、複数の貫通型函体1を並べて、立坑5a,5a間を連結した状態を示した図である。複数の貫通型函体1,1・・・を連結して構築した水底トンネル3d内の内水21は、立坑5a,5aへ排水することができる。また、立坑5aには、様々な方法で構築した水底トンネル3eを接続することができる。
また図9は、立坑5a,5a間を連結する水底トンネル3の一部を貫通型函体1で構築した実施例を示した図である。必ずしも立坑5a,5a間を連結する水底トンネル3のすべてを貫通型函体1で構築する必要はなく、別の水底トンネルの構築方法と組み合わせて立坑5a,5a間を連結すればよい。
【0026】
【実施例6】
以下、図12,13を参照しながら本発明の実施例6について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
本発明では、貫通型函体1を使用して水底トンネル3を構築するため、一時的に内水21が函体群10内に滞留する。このため、潜水作業でしか函体群10内に入れなかったり、滞留した内水21の水質が劣化したりするなどの問題が生じる場合もある。特に、水上に両端が突出するまで内水21を滞留させた状態で水底トンネル3を延伸させる場合は、長期にわたって内水21が水底トンネル3内に滞留する。このため、貫通型函体1の内部に管7を配置することで、内水21が滞留する函体群10からは独立して気中状態を確保できるように構成することができる。先行して気中状態にした管7は、監査路や気体供給路に使用することができる。
【0027】
例えば、沈設する貫通型函体1の内部に予め管7aを取り付けておく。管7aの断面形状は円形、矩形など任意に選択でき、大きさも使用目的に応じて任意に設定できる。例えば、監査路に使用する場合は作業員71が通行できる大きさを確保したり、管7aの壁面に窓や扉を設けたりするのが好ましい。また、気体72を内水21に供給するだけであれば、管径を小さくすることができる。
貫通型函体1に取り付けた管7aは、貫通型函体1,1同士の接合時に同時に連結しても良いし、函体の連結後に連結しても良い。また、図13に示すように、連続した管7bを後から水底トンネル3内に挿入することもできる。図13は、管7bの表面に複数の孔を設けて、管7bを通って供給される空気などの気体72を内水21に供給し、水質を維持している状態を示した図である。気体72の供給は、監査路に使用する管7を配置した場合でも実施でき、例えば管7に逆止弁を付けて管7内部に内水21が浸水しないようにして気体72を供給することができる。
監査路として管7を使用する場合は、複数の貫通型函体1を連結した出来型を気中測量によって確認することができる。
【0028】
【実施例7】
以下、図14を参照しながら本発明の実施例7について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
実施例6では、気体72を内水21に供給することによって水質を維持する実施例を説明したが、実施例7では内水21を循環させることによって水質を維持する実施例について説明する。
この実施例では、水底トンネル3に少なくとも二つの開口部12a,12bを設ける必要がある。一方の開口部12aは内水21を外水22側に吐出させるための開口部であり、貫通型函体1の天井や側壁に設けることができる。吐出用の開口部12aには排水ポンプなどを取り付けて、強制的に内水21を吐出させるのが好ましい。
また、他方の開口部12bは、外水22を内水21側に取り込むために設ける。最端部に設置した貫通型函体1の開口部を開口部12bとして使用することができる。水底トンネル3内に滞留した内水21を広く循環させるために、開口部12a,12bは滞留した内水21の両端部付近にそれぞれ設けるのが好ましい。
【0029】
【実施例8】
以下、図15〜17を参照しながら本発明の実施例8について説明する。なお、他の実施例において記載する部分については説明を省略する。
【0030】
<イ>水底トンネルの埋め戻し
上記した実施例によって構築した水底トンネル3は、通常、埋戻土8によって覆土する。実施例8ではこの覆土について詳述する。
図15は、浚渫船42で掘削した掘削土をそのまま構築後の水底トンネル3に覆土する実施例である。この方法は掘削地盤が良質であり、埋戻土8aとして適している場合に採用できる。掘削した掘削土をそのまま利用できれば、仮置きの必要がないので掘削、埋め戻し作業を連続して行うことができる。また、掘削土の処理費も不要となる。
図16は、掘削した掘削土を一旦、水上の土砂運搬船43に積載し、その後、構築後の水底トンネル3を徐々に埋め戻していく状態を示した図である。
後述する改良土を使用する場合等も含めて水底トンネル3が浸水状態のうちに覆土をおこなうことで、水底トンネル3に別途、バラストを追加しなくとも安定重量を確保することができる。また、バラストを追加する場合も、埋戻土8による重量を差し引いた分だけ追加すればよいため、経済的であり、水底トンネル3の内空を広く確保することもできる。すなわち、覆土によって安定重量を確保した水底トンネル3の内水21を一時に排水しても、水底トンネル3は浮き上がることなく安定した状態で水底に設置される。
【0031】
<ロ>掘削土の改良
水底トンネル3を構築するような水底の土砂は、軟弱であってそのまま埋戻土8には適さない場合が多い。そこで、掘削土を土砂運搬船43上で改良して埋戻土8bとして供給することができる。ここで、土砂の改良をおこなう土砂運搬船43を土砂改良船44と呼ぶことにする。
土砂改良船44は、掘削土を再生利用可能な材料に改良するためのプラント船である。土砂改良船44では、浚渫船42で掘削した掘削土と、セメントなどの固化材を混合して改良土を製造する。改良土は、水底トンネル3を埋め戻すための埋戻土8bとして利用する。例えば、浚渫した掘削土を土砂改良船44のホッパー441に投入し、固化材を添加して製造した改良土を、土砂改良船44に備え付けたトレミー管442などの排出装置を介して水底トンネル3の上方に投下して埋戻土8bとして利用する。土砂改良船44は、水底トンネル3の構築に合わせて伴走させるのが好ましい。
この結果、通常は産業廃棄物として処理されてしまう軟弱な掘削土を再生利用することができる。そして、ゴミの削減、資源の有効利用が可能となり、地球環境の保護に有効である。また、掘削土を埋戻土8に利用できるので材料費も削減できる。また、改良した土を直ぐに利用すれば、改良土をストックする必要がなく、土砂改良船44を大規模にする必要がない。
【0032】
【発明の効果】
本発明の水底トンネルの構築方法は、以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>貫通型函体を使用するため沈設が容易である。また、水底トンネルの構築後には不要となる隔壁の数を最小限に抑えることができるため、効率的に施工ができ、工費も削減できる。
<ロ>小型の貫通型函体を沈設して水底で連結することによって、水底の周辺環境への影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例1の説明図。
【図2】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例2の説明図。
【図3】貫通型函体と片壁付き函体の実施例の斜視図。
【図4】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例3の説明図。
【図5】実施例3において内水を一度に排水する実施例を示した説明図。
【図6】実施例3において貫通型函体の連結工程、函体群単位の排水工程を繰り返すことで水底トンネルを延伸する実施例を示した説明図。
【図7】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例4の説明図。
【図8】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例5の説明図。
【図9】実施例5において立坑間を連結する水底トンネルの一部を貫通型函体で構築した実施例を示した説明図。
【図10】一次止水材の実施例を示した説明図。
【図11】二次止水材の実施例を示した説明図。
【図12】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例6の説明図。
【図13】実施例6において気体供給路の実施例を示した説明図。
【図14】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例7の説明図。
【図15】本発明の水底トンネルの構築方法の実施例8の説明図。
【図16】実施例8において土砂運搬船を使用する実施例を示した説明図。
【図17】実施例8において土砂改良船を使用する実施例を示した説明図。
【図18】連結材の実施例を示した説明図。
【図19】緊張材の実施例を示した説明図。
【図20】杭基礎を配置した場合の実施例を示した説明図。
【符号の説明】
1・・・貫通型函体
10・・函体群
11・・隔壁
12・・開口部
21・・内水
22・・外水
3・・・水底トンネル
5・・・水中構造物
6a・・一次止水材
6b・・二次止水材
6c・・二次止水材
7・・・管
8・・・埋戻土

Claims (13)

  1. 延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら沈設し、
    水底において浸水した状態の前記貫通型函体を、隣接する貫通型函体に接合しながら複数個並べ、
    複数の前記貫通型函体を接合した函体群の両端部を外水から遮断し、
    前記函体群の内側に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする、
    水底トンネルの構築方法。
  2. 延伸した水底トンネルの端部に、延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら接合し、
    前記貫通型函体を複数接合して函体群を複数接合して函体群を構築した後に新たに水底トンネルの端部となった貫通型函体の端部を外水から遮断し、
    前記函体群の内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする、
    水底トンネルの構築方法。
  3. 延伸方向の両端部を開口して外水を自由に浸入させた貫通型函体を複数接合して函体群を構築し、
    前記函体群の端部に延伸した水底トンの端部を接合し、
    前記函体群の端部が外水から遮断された状態で内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする、
    水底トンネルの構築方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記函体群の構築と函体群の内部に滞留する内水の排水を繰り返すことによって水底トンネルを延伸することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  5. 水中に間隔を置いて複数の水中構造物を構築し、
    前記水中構造物間に延伸方向の両端部を開口した貫通型函体に外水を自由に浸入させながら沈設し、
    水底において浸水した状態の前記貫通型函体を、隣接する貫通型函体に接合しながら複数個並べ、
    複数の前記貫通型函体を接合した函体群を少なくとも一部に含む水底トンネルによって前記水中構造物間を連結し、
    前記水中構造物から前記函体群の内部に滞留する内水を排水して函体群内を気中状態とする、
    水底トンネルの構築方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記貫通型函体の接合時に貫通型函体の端面に備えた止水材で貫通型函体間を止水することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記貫通型函体の接合後に貫通型函体間を止水することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記貫通型函体の内側又は躯体内部に独立して気中状態を確保するための管を設け、
    前記貫通型函体の接合時または接合後に前記管も延伸方向に接合し、
    前記貫通型函体が浸水状態のときに前記管の内部を気中状態にすることを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  9. 請求項8に記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記管の表面から前記貫通型函体の内部に滞留した内水へ気体を供給することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  10. 請求項1乃至7のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記貫通型函体の内部の内水を貫通型函体に設けた開口部から外水側に吐出すると共に、貫通型函体に設けた他の開口部から外水を内水側に取り込むことで、内水を循環させることを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  11. 水底を掘削する掘削工程と、
    請求項1乃至5のいずれかに記載の水底トンネルの構築方法によって掘削した水底に貫通型函体を設置する沈設工程と、
    水底に設置した前記貫通型函体を前記掘削工程において発生した掘削土によって埋め戻す覆土工程と、からなる、
    水底トンネルの構築方法。
  12. 請求項11記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記掘削工程によって掘削した掘削土を水上の土砂運搬船に搬送し、
    前記土砂運搬船から水底に設置した前記貫通型函体を埋め戻す埋戻土を供給することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
  13. 請求項12記載の水底トンネルの構築方法において、
    前記土砂運搬船から供給する埋戻土は、前記土砂運搬船上で掘削土を原料に固化材を添加して製造することを特徴とした、
    水底トンネルの構築方法。
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