JP3554421B2 - 走査光学系 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばレーザープリンターの光走査ユニット等に用いられる走査光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の走査光学系は、一般に、レーザー光源から発した光束を副走査方向にパワーを有するシリンドリカルレンズにより線状に結像させ、この結像位置の近傍に設けられたポリゴンミラーにより反射偏向させ、fθレンズを介して走査対象面上に結像させる。
【0003】
このような走査光学系において、描画の高精細化を図るためには、走査光学系のfθ特性を良好に保つと共に、像面湾曲、球面収差等の収差を小さく抑える必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、限られた枚数のfθレンズで主走査方向の球面収差の補正と、fθ特性の向上および像面湾曲の低減とを両立させることは困難であり、例えばfθ特性を良好に保つと共に像面湾曲を小さく抑えると、球面収差が大きくなる。
【0005】
また、ポリゴンミラーに入射する光束が主走査面内でfθレンズの光軸に対して角度を持つタイプの走査光学系では、偏向点(入射光束の主光線とポリゴンミラーの反射面との交点)がポリゴンミラーの回転に伴って主走査面内でfθレンズの光軸方向及びこれと直交する主走査方向に移動する。
【0006】
そして、fθレンズが球面収差を持つ場合、偏向点が主走査方向に移動すると走査対象面上でコマ収差が発生するため、このタイプの走査光学系でfθレンズに球面収差が存在すると、走査対象面上で球面収差とコマ収差とが発生し、高精度な描画ができないという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、走査レンズにより発生する主走査方向の球面収差と、走査レンズが球面収差を持つ場合に偏向器の動作に伴う偏向点変化により生じるコマ収差とを偏向器より光源側の光学素子により相殺するため、光源と偏向器との間の光路中に、主走査面内で主光線に対して対称な球面収差成分と、非対称なコマ収差成分とを有する補正手段を配置したことを特徴とする。
【0008】
補正手段としては、主走査方向において光軸に関して対称な球面収差を有する補正素子を、その光軸が主走査面内で主光線と垂直な方向に偏心するよう配置する。
【0009】
また、光源として半導体レーザーのような発散光源を利用する場合には、光源の後段に設けられたコリメートレンズに光軸に対して対称な球面収差を持たせると共に、アパーチャの開口中心をコリメートレンズの光軸から偏心させて配置してもよい。
【0010】
球面収差は、補正素子の入射側、射出側の面の少なくともいずれか一方を非球面とすることにより、あるいは屈折率に分布を持たせることにより発生させることができる。また、コリメートレンズが球面収差を持つよう構成してもよい。製造を容易にするためには、補正素子の両面を光軸に対して回転対称とし、あるいはコリメートレンズの全ての面を光軸に関して回転対称とすることが望ましい。
【0011】
なお、光源からポリゴンミラー(偏向器)に入射する光束の主光線がfθレンズ(走査レンズ)の光軸と主走査面内で鋭角で交差し、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の主光線の偏向点である基準偏向点がfθレンズの光軸より光源から離れた位置にある走査光学系を用いる場合、補正素子は、その光軸がfθレンズから離れる方向に偏心するよう配置される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる走査光学系の実施形態を説明する。図1は、この発明の実施態様を示す走査光学系の主走査方向の平面図である。
【0013】
光源である半導体レーザー1から発した発散光は、コリメートレンズ2で平行化され、アパーチャー3を介してシリンドリカルレンズ4に入射する。シリンドリカルレンズ4は、偏向器としてのポリゴンミラー5の近傍でレーザー光を副走査方向において一旦結像させる。ポリゴンミラー5で反射、偏向されたレーザー光は、4枚のレンズ6a,6b,6c,6dから構成されるfθレンズ(走査レンズ)6により走査対象面7上に結像し、主走査方向に走査するスポットが形成される。
【0014】
なお、この走査光学系では、半導体レーザー1からポリゴンミラー5に入射する光束の主光線Lは、fθレンズ6の光軸Axと主走査面内で鋭角θで交差している。また、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の主光線の偏向点である基準偏向点P0は、fθレンズの光軸より半導体レーザー1から離れた位置に設定されている。図1の破線は、基準偏向点P0からの反射光の主光線を示す。
【0015】
fθレンズ6は、fθ特性が良好で像面湾曲が小さくなるよう設計されており、主走査方向の球面収差は残存している。そして、fθレンズ6の主走査方向の球面収差を相殺するため、主走査方向の球面収差を有する補正素子10が、アパーチャー3とシリンドリカルレンズ4との間に配置されている。
【0016】
補正素子10は、主走査方向について光軸に関して対称な球面収差を有し、その光軸が主光線Lに対して主走査面内で主光線Lに直交してfθレンズから離れる方向Aに偏心するよう配置されている。
【0017】
補正素子10は、図2に拡大して示したように、アパーチャー側の面10aが破線で示される光軸に関して回転対称な形状で球面収差を発生させる非球面、シリンドリカルレンズ4側の面が平面である。破線で示した補正素子10の光軸の主光線Lに対する偏心量はSで示されている。
【0018】
【実施例】
次に、上記の実施形態に基づく具体的な実施例を説明する。実施例にかかる走査光学系の補正素子10より後の具体的構成は表1に示される。表中の記号Kは走査係数、ryは主走査方向の曲率半径、rzは副走査方向の曲率半径(回転対称面の場合は省略)、dは光軸上のレンズ厚若しくは空気間隔、nは波長780nmでの屈折率である。
【0019】
表中、第1面及び第2面が補正素子10、第3面及び第4面がシリンドリカルレンズ4、第5面がポリゴンミラー5のミラー面、第6、第7面がfθレンズ6の第1レンズ6a、第8、第9面が第2レンズ6b、第10,11面が第3レンズ6c、第12,13面が第4レンズ6dを示す。
【0020】
【表1】
【0021】
補正素子10のコリメートレンズ2側の面は、平面のベース形状に以下の式(1)で示される非球面を付加した形状である。ΔS(r)は、光軸からの高さrの点での非球面の付加量である。
【0022】
【数1】
ΔS(r)=−5.6×10−8×r4 …(1)
【0023】
図3は、上記の式(1)により導かれる付加量を示すグラフである。なお、この例ではベース形状が平面であるため、付加量は非球面のサグ量と等しい。
【0024】
ここでは、ポリゴンミラー5の位置を、ポリゴンミラー5に入射する光束の主光線Lとfθレンズ6の光軸Axとの交点を原点とする主走査面内における回転軸5aの座標(Px,Py)で表示する。Pxはfθレンズの光軸方向の座標でfθレンズから離れる方向をプラス、Pyはこれと直交する方向の座標でシリンドリカルレンズ4から離れる方向をプラスとする。実施例では、Px=29.6mm,Py=16.6mmであり、主走査面内における反射面の内接円の半径PR=32.50mmである。
【0025】
次に、補正素子10の作用につき、これが設けられていない場合等と比較して説明する。
【0026】
まず、第1のケースとして、実施例の構成で補正素子10が設けられていない場合を想定する。この場合、走査対象面7上では図4に示すような波面収差が発生する。図4は、主走査方向の像高Yが157mm,80mm,0mm,−80mm,−157mmの各点での波面収差を示す。プラス側の像高では波面がほぼ対称であるため主として球面収差のみが発生しており、軸上(Y=0)及び−80mmでは波面が非対称であるため球面収差の他にコマ収差成分が含まれていることが理解できる。
【0027】
次に、第2のケースとして、補正素子10を偏心させずに設けた場合、すなわち補正素子10の光軸が主光線Lに一致する場合を想定する。この場合、走査対象面7上で発生する波面収差は図5に示すとおりとなる。図4と比較すると、全体に波面収差の量が減少しており、特に対称形の球面収差が低く抑えられている。しかしながら、像高Y=0,−80での非対称なコマ収差の発生量が大きい。
【0028】
コマ収差の発生原因は、球面収差を持つfθレンズに対してポリゴンミラーの偏向点が主走査方向に大きく変化することにある。ポリゴンミラーのミラー面は、回転軸からの距離が中心部では小さく、周辺に向かうにしたがって大きくなる。したがって、ミラー面の中心部のみを利用する場合には回転中心からの距離の変化が小さいために偏向点の変化が少ないが、周辺に向かうにつれて偏向点の変化量が大きくなる。
【0029】
実施例のようにポリゴンミラーに入射する光束が主走査面内でfθレンズの光軸に対して鋭角で交差する場合、走査面上での対称性、特に強いパワーを持つ副走査方向の像面位置を一定に保つため、走査両端での偏向点がfθレンズの光軸上で一致するように基準偏向点がミラー面の中心から離れて設定されている。このため、主走査面内での偏向点の変化量が比較的大きく、また、基準偏向点がfθレンズの光軸から偏心するよう設定されているため、この偏心によって軸上(Y=0)においてもコマ収差が発生する。
【0030】
そこで、第3のケースとして、補正素子10を偏心させずに設けた状態で、ポリゴンミラーの位置を、基準偏向点がfθレンズの光軸とポリゴンミラーに入射する光束の主光線との交点上に位置するよう設定した場合を想定する。具体的には、ポリゴンミラーの光軸の座標をPx=29.0,Py=15.0とする。
【0031】
この結果、波面収差は図6に示す通りとなる。偏向点の主走査方向への変化量が小さくなるため、特にY=−80でのコマ収差が低減され、かつ、基準偏向点が光軸に一致し、軸上のコマ収差は発生しなくなる。
【0032】
しかしながら、この第3のケースでは、図7に示されるように副走査方向の像面の傾きが過大となり、走査対象面上でのこの方向のスポット径の変化が大きく、実用に耐えられなくなる。図7のグラフの縦軸Yは像高、横軸は相対的な焦点位置であり、単位は共にmmである。破線Mが主走査方向、実線Sが副走査方向を示す。
【0033】
上記の第1〜第3のケースにおける全ての問題点を解決する手段が、実施例におけるように球面収差を有する補正素子10を主光線に対して偏心させて設ける構成である。実施例の構成によれば、走査対象面上での波面収差は図8に示すように全ての像高において小さく抑えられ、かつ、副走査方向の像面湾曲も図9に示すように小さく抑えられる。
【0034】
図10は、この発明の他の実施例を示す。この例では、上記の実施例から補正素子10を削除すると共に、シリンドリカルレンズ4に球面収差補正素子の機能を合わせて持たせ、かつ、このシリンドリカルレンズ4の光軸を主光線に対して主光線に直交してfθレンズから離れる方向に1mm偏心するよう配置している。なお、ポリゴンミラーの位置、半径は、上記の実施例と同一である。
【0035】
この実施例の構成を表2に示す。補正素子10が設けられておらず、シリンドリカルレンズ4のポリゴンミラー側の面が非球面となる以外は、表1に示される実施例と同一である。すなわち、表2では、第1、第2面がシリンドリカルレンズ、第3面がポリゴンミラー5のミラー面、第4面〜第11面がfθレンズ6を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
シリンドリカルレンズ4のポリゴンミラー5側の面は、平面のベース形状に以下の式(2)で示される非球面を付加した形状である。ΔS(r)は、光軸からの高さrの点での非球面の付加量である。
【0038】
【数2】
ΔS(r)=5.69×10−8×r4 …(2)
【0039】
図11は、この発明のさらに他の実施例を示す。この例では、コリメートレンズ2に球面収差補正素子の機能を合わせて持たせ、かつ、コリメートレンズ2の光軸に対してアパーチャー3の開口中心をfθレンズに近づく方向に偏心させている。
【0040】
コリメートレンズ2は、図11に示したように2枚のレンズ2a,2bから構成され、その具体的な数値構成は表3に示す通りである。面番号1は半導体レーザー1の発光点、第2面〜第5面がコリメートレンズ2を示す。
【0041】
【表3】
【0042】
上記のコリメートレンズ2は、前記の実施例の補正素子10と同一の球面収差を発生させる。したがって、このコリメートレンズ2をアパーチャー2の開口中心を通る主光線Lに対してfθレンズ6から離れる方向に1mm偏心させることにより、前記の実施例と同様に走査対象面上での球面収差、コマ収差を低く抑えることができ、描画性能を向上させることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、光源と偏向器との間に配置した補正手段により走査レンズにより発生する球面収差を相殺する構成とすることにより、走査レンズ側では球面収差を完全に補正する必要がなくなり、fθ特性、像面湾曲を良好に保つことが容易となる。
【0044】
また、副走査方向の像面の湾曲や傾きを小さく保つために基準偏向点を走査レンズの光軸から偏心させた状態であっても、走査レンズに残存する球面収差により発生するコマ収差を相殺することができる。
【0045】
この結果、走査対象面上での球面収差とコマ収差との発生を共に低く抑えることができスポットの性能を良好にして描画性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる走査光学系の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図2】図1の光学系の補正素子を拡大して示す平面図である。
【図3】補正素子の非球面付加量を示すグラフである。
【図4】補正素子を設けない場合の波面収差を示すグラフである。
【図5】補正素子を偏心させずに設けた場合の波面収差を示すグラフである。
【図6】補正素子を偏心させずに設け、ポリゴンミラーの位置を変更した場合の波面収差を示すグラフである。
【図7】補正素子を偏心させずに設け、ポリゴンミラーの位置を変更した場合の像面湾曲を示すグラフである。
【図8】実施例の構成による波面収差を示すグラフである。
【図9】実施例の構成による像面湾曲を示すグラフである。
【図10】この発明にかかる走査光学系の他の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図11】この発明にかかる走査光学系のさらに他の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図12】図11の光学系のコリメートレンズの拡大図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザー
10 補正素子
2 コリメートレンズ
3 アパーチャー
4 シリンドリカルレンズ
5 ポリゴンミラー
6 fθレンズ(走査レンズ)
7 走査対象面
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばレーザープリンターの光走査ユニット等に用いられる走査光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の走査光学系は、一般に、レーザー光源から発した光束を副走査方向にパワーを有するシリンドリカルレンズにより線状に結像させ、この結像位置の近傍に設けられたポリゴンミラーにより反射偏向させ、fθレンズを介して走査対象面上に結像させる。
【0003】
このような走査光学系において、描画の高精細化を図るためには、走査光学系のfθ特性を良好に保つと共に、像面湾曲、球面収差等の収差を小さく抑える必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、限られた枚数のfθレンズで主走査方向の球面収差の補正と、fθ特性の向上および像面湾曲の低減とを両立させることは困難であり、例えばfθ特性を良好に保つと共に像面湾曲を小さく抑えると、球面収差が大きくなる。
【0005】
また、ポリゴンミラーに入射する光束が主走査面内でfθレンズの光軸に対して角度を持つタイプの走査光学系では、偏向点(入射光束の主光線とポリゴンミラーの反射面との交点)がポリゴンミラーの回転に伴って主走査面内でfθレンズの光軸方向及びこれと直交する主走査方向に移動する。
【0006】
そして、fθレンズが球面収差を持つ場合、偏向点が主走査方向に移動すると走査対象面上でコマ収差が発生するため、このタイプの走査光学系でfθレンズに球面収差が存在すると、走査対象面上で球面収差とコマ収差とが発生し、高精度な描画ができないという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、走査レンズにより発生する主走査方向の球面収差と、走査レンズが球面収差を持つ場合に偏向器の動作に伴う偏向点変化により生じるコマ収差とを偏向器より光源側の光学素子により相殺するため、光源と偏向器との間の光路中に、主走査面内で主光線に対して対称な球面収差成分と、非対称なコマ収差成分とを有する補正手段を配置したことを特徴とする。
【0008】
補正手段としては、主走査方向において光軸に関して対称な球面収差を有する補正素子を、その光軸が主走査面内で主光線と垂直な方向に偏心するよう配置する。
【0009】
また、光源として半導体レーザーのような発散光源を利用する場合には、光源の後段に設けられたコリメートレンズに光軸に対して対称な球面収差を持たせると共に、アパーチャの開口中心をコリメートレンズの光軸から偏心させて配置してもよい。
【0010】
球面収差は、補正素子の入射側、射出側の面の少なくともいずれか一方を非球面とすることにより、あるいは屈折率に分布を持たせることにより発生させることができる。また、コリメートレンズが球面収差を持つよう構成してもよい。製造を容易にするためには、補正素子の両面を光軸に対して回転対称とし、あるいはコリメートレンズの全ての面を光軸に関して回転対称とすることが望ましい。
【0011】
なお、光源からポリゴンミラー(偏向器)に入射する光束の主光線がfθレンズ(走査レンズ)の光軸と主走査面内で鋭角で交差し、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の主光線の偏向点である基準偏向点がfθレンズの光軸より光源から離れた位置にある走査光学系を用いる場合、補正素子は、その光軸がfθレンズから離れる方向に偏心するよう配置される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる走査光学系の実施形態を説明する。図1は、この発明の実施態様を示す走査光学系の主走査方向の平面図である。
【0013】
光源である半導体レーザー1から発した発散光は、コリメートレンズ2で平行化され、アパーチャー3を介してシリンドリカルレンズ4に入射する。シリンドリカルレンズ4は、偏向器としてのポリゴンミラー5の近傍でレーザー光を副走査方向において一旦結像させる。ポリゴンミラー5で反射、偏向されたレーザー光は、4枚のレンズ6a,6b,6c,6dから構成されるfθレンズ(走査レンズ)6により走査対象面7上に結像し、主走査方向に走査するスポットが形成される。
【0014】
なお、この走査光学系では、半導体レーザー1からポリゴンミラー5に入射する光束の主光線Lは、fθレンズ6の光軸Axと主走査面内で鋭角θで交差している。また、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の主光線の偏向点である基準偏向点P0は、fθレンズの光軸より半導体レーザー1から離れた位置に設定されている。図1の破線は、基準偏向点P0からの反射光の主光線を示す。
【0015】
fθレンズ6は、fθ特性が良好で像面湾曲が小さくなるよう設計されており、主走査方向の球面収差は残存している。そして、fθレンズ6の主走査方向の球面収差を相殺するため、主走査方向の球面収差を有する補正素子10が、アパーチャー3とシリンドリカルレンズ4との間に配置されている。
【0016】
補正素子10は、主走査方向について光軸に関して対称な球面収差を有し、その光軸が主光線Lに対して主走査面内で主光線Lに直交してfθレンズから離れる方向Aに偏心するよう配置されている。
【0017】
補正素子10は、図2に拡大して示したように、アパーチャー側の面10aが破線で示される光軸に関して回転対称な形状で球面収差を発生させる非球面、シリンドリカルレンズ4側の面が平面である。破線で示した補正素子10の光軸の主光線Lに対する偏心量はSで示されている。
【0018】
【実施例】
次に、上記の実施形態に基づく具体的な実施例を説明する。実施例にかかる走査光学系の補正素子10より後の具体的構成は表1に示される。表中の記号Kは走査係数、ryは主走査方向の曲率半径、rzは副走査方向の曲率半径(回転対称面の場合は省略)、dは光軸上のレンズ厚若しくは空気間隔、nは波長780nmでの屈折率である。
【0019】
表中、第1面及び第2面が補正素子10、第3面及び第4面がシリンドリカルレンズ4、第5面がポリゴンミラー5のミラー面、第6、第7面がfθレンズ6の第1レンズ6a、第8、第9面が第2レンズ6b、第10,11面が第3レンズ6c、第12,13面が第4レンズ6dを示す。
【0020】
【表1】
【0021】
補正素子10のコリメートレンズ2側の面は、平面のベース形状に以下の式(1)で示される非球面を付加した形状である。ΔS(r)は、光軸からの高さrの点での非球面の付加量である。
【0022】
【数1】
ΔS(r)=−5.6×10−8×r4 …(1)
【0023】
図3は、上記の式(1)により導かれる付加量を示すグラフである。なお、この例ではベース形状が平面であるため、付加量は非球面のサグ量と等しい。
【0024】
ここでは、ポリゴンミラー5の位置を、ポリゴンミラー5に入射する光束の主光線Lとfθレンズ6の光軸Axとの交点を原点とする主走査面内における回転軸5aの座標(Px,Py)で表示する。Pxはfθレンズの光軸方向の座標でfθレンズから離れる方向をプラス、Pyはこれと直交する方向の座標でシリンドリカルレンズ4から離れる方向をプラスとする。実施例では、Px=29.6mm,Py=16.6mmであり、主走査面内における反射面の内接円の半径PR=32.50mmである。
【0025】
次に、補正素子10の作用につき、これが設けられていない場合等と比較して説明する。
【0026】
まず、第1のケースとして、実施例の構成で補正素子10が設けられていない場合を想定する。この場合、走査対象面7上では図4に示すような波面収差が発生する。図4は、主走査方向の像高Yが157mm,80mm,0mm,−80mm,−157mmの各点での波面収差を示す。プラス側の像高では波面がほぼ対称であるため主として球面収差のみが発生しており、軸上(Y=0)及び−80mmでは波面が非対称であるため球面収差の他にコマ収差成分が含まれていることが理解できる。
【0027】
次に、第2のケースとして、補正素子10を偏心させずに設けた場合、すなわち補正素子10の光軸が主光線Lに一致する場合を想定する。この場合、走査対象面7上で発生する波面収差は図5に示すとおりとなる。図4と比較すると、全体に波面収差の量が減少しており、特に対称形の球面収差が低く抑えられている。しかしながら、像高Y=0,−80での非対称なコマ収差の発生量が大きい。
【0028】
コマ収差の発生原因は、球面収差を持つfθレンズに対してポリゴンミラーの偏向点が主走査方向に大きく変化することにある。ポリゴンミラーのミラー面は、回転軸からの距離が中心部では小さく、周辺に向かうにしたがって大きくなる。したがって、ミラー面の中心部のみを利用する場合には回転中心からの距離の変化が小さいために偏向点の変化が少ないが、周辺に向かうにつれて偏向点の変化量が大きくなる。
【0029】
実施例のようにポリゴンミラーに入射する光束が主走査面内でfθレンズの光軸に対して鋭角で交差する場合、走査面上での対称性、特に強いパワーを持つ副走査方向の像面位置を一定に保つため、走査両端での偏向点がfθレンズの光軸上で一致するように基準偏向点がミラー面の中心から離れて設定されている。このため、主走査面内での偏向点の変化量が比較的大きく、また、基準偏向点がfθレンズの光軸から偏心するよう設定されているため、この偏心によって軸上(Y=0)においてもコマ収差が発生する。
【0030】
そこで、第3のケースとして、補正素子10を偏心させずに設けた状態で、ポリゴンミラーの位置を、基準偏向点がfθレンズの光軸とポリゴンミラーに入射する光束の主光線との交点上に位置するよう設定した場合を想定する。具体的には、ポリゴンミラーの光軸の座標をPx=29.0,Py=15.0とする。
【0031】
この結果、波面収差は図6に示す通りとなる。偏向点の主走査方向への変化量が小さくなるため、特にY=−80でのコマ収差が低減され、かつ、基準偏向点が光軸に一致し、軸上のコマ収差は発生しなくなる。
【0032】
しかしながら、この第3のケースでは、図7に示されるように副走査方向の像面の傾きが過大となり、走査対象面上でのこの方向のスポット径の変化が大きく、実用に耐えられなくなる。図7のグラフの縦軸Yは像高、横軸は相対的な焦点位置であり、単位は共にmmである。破線Mが主走査方向、実線Sが副走査方向を示す。
【0033】
上記の第1〜第3のケースにおける全ての問題点を解決する手段が、実施例におけるように球面収差を有する補正素子10を主光線に対して偏心させて設ける構成である。実施例の構成によれば、走査対象面上での波面収差は図8に示すように全ての像高において小さく抑えられ、かつ、副走査方向の像面湾曲も図9に示すように小さく抑えられる。
【0034】
図10は、この発明の他の実施例を示す。この例では、上記の実施例から補正素子10を削除すると共に、シリンドリカルレンズ4に球面収差補正素子の機能を合わせて持たせ、かつ、このシリンドリカルレンズ4の光軸を主光線に対して主光線に直交してfθレンズから離れる方向に1mm偏心するよう配置している。なお、ポリゴンミラーの位置、半径は、上記の実施例と同一である。
【0035】
この実施例の構成を表2に示す。補正素子10が設けられておらず、シリンドリカルレンズ4のポリゴンミラー側の面が非球面となる以外は、表1に示される実施例と同一である。すなわち、表2では、第1、第2面がシリンドリカルレンズ、第3面がポリゴンミラー5のミラー面、第4面〜第11面がfθレンズ6を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
シリンドリカルレンズ4のポリゴンミラー5側の面は、平面のベース形状に以下の式(2)で示される非球面を付加した形状である。ΔS(r)は、光軸からの高さrの点での非球面の付加量である。
【0038】
【数2】
ΔS(r)=5.69×10−8×r4 …(2)
【0039】
図11は、この発明のさらに他の実施例を示す。この例では、コリメートレンズ2に球面収差補正素子の機能を合わせて持たせ、かつ、コリメートレンズ2の光軸に対してアパーチャー3の開口中心をfθレンズに近づく方向に偏心させている。
【0040】
コリメートレンズ2は、図11に示したように2枚のレンズ2a,2bから構成され、その具体的な数値構成は表3に示す通りである。面番号1は半導体レーザー1の発光点、第2面〜第5面がコリメートレンズ2を示す。
【0041】
【表3】
【0042】
上記のコリメートレンズ2は、前記の実施例の補正素子10と同一の球面収差を発生させる。したがって、このコリメートレンズ2をアパーチャー2の開口中心を通る主光線Lに対してfθレンズ6から離れる方向に1mm偏心させることにより、前記の実施例と同様に走査対象面上での球面収差、コマ収差を低く抑えることができ、描画性能を向上させることができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、光源と偏向器との間に配置した補正手段により走査レンズにより発生する球面収差を相殺する構成とすることにより、走査レンズ側では球面収差を完全に補正する必要がなくなり、fθ特性、像面湾曲を良好に保つことが容易となる。
【0044】
また、副走査方向の像面の湾曲や傾きを小さく保つために基準偏向点を走査レンズの光軸から偏心させた状態であっても、走査レンズに残存する球面収差により発生するコマ収差を相殺することができる。
【0045】
この結果、走査対象面上での球面収差とコマ収差との発生を共に低く抑えることができスポットの性能を良好にして描画性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる走査光学系の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図2】図1の光学系の補正素子を拡大して示す平面図である。
【図3】補正素子の非球面付加量を示すグラフである。
【図4】補正素子を設けない場合の波面収差を示すグラフである。
【図5】補正素子を偏心させずに設けた場合の波面収差を示すグラフである。
【図6】補正素子を偏心させずに設け、ポリゴンミラーの位置を変更した場合の波面収差を示すグラフである。
【図7】補正素子を偏心させずに設け、ポリゴンミラーの位置を変更した場合の像面湾曲を示すグラフである。
【図8】実施例の構成による波面収差を示すグラフである。
【図9】実施例の構成による像面湾曲を示すグラフである。
【図10】この発明にかかる走査光学系の他の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図11】この発明にかかる走査光学系のさらに他の実施例を示す主走査方向の平面図である。
【図12】図11の光学系のコリメートレンズの拡大図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザー
10 補正素子
2 コリメートレンズ
3 アパーチャー
4 シリンドリカルレンズ
5 ポリゴンミラー
6 fθレンズ(走査レンズ)
7 走査対象面
Claims (11)
- 光源から発する光束を偏向器を介して走査レンズに入射させ、走査対象面上に前記偏向器の作動に伴って走査するスポットを形成する走査光学系において、
前記光源と前記偏向器との間の光路中に、前記走査レンズが有する主走査方向の球面収差と、前記走査レンズが球面収差を持つ場合に前記偏向器の作動に伴う偏向点変化により生じるコマ収差とを相殺可能な収差を有する補正手段を配置したことを特徴とする走査光学系。 - 前記補正手段は、前記偏向器に入射する主光線に対して主走査方向に非対称な収差を有することを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記補正手段は、主走査方向において光軸に関して対称な球面収差を有する補正素子であり、該補正素子は、その光軸を前記主光線に対して主走査面内で主光線と垂直な方向に偏心させて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の走査光学系。
- 前記偏向器に入射する主光線と前記走査レンズの光軸とが主走査面内で鋭角をなし、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の前記主光線の偏向点である基準偏向点が、前記走査レンズの光軸より前記光源から離れた位置にあり、前記補正素子は、その光軸が前記主光線に対して前記走査レンズから離れる方向に偏心するよう配置されていることを特徴とする請求項3に記載の走査光学系。
- 前記補正素子は、入射側、射出側の両面が前記光軸に関して回転対称な形状を有し、少なくとも1面が前記球面収差を発生させる形状とされていることを特徴とする請求項3に記載の走査光学系。
- 前記補正手段は、少なくとも2つのレンズ面を有するレンズであり、該レンズの一方のレンズ面が前記球面収差を発生させる形状とされ、他方のレンズ面が光束を副走査方向に一旦結像させるためのシリンドリカル面とされ、該レンズの光軸が前記主光線に対して前記主走査方向に偏心していることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記補正手段は、前記光源から発する発散光を平行化する主走査方向の球面収差を有するコリメートレンズであり、該コリメートレンズと前記偏向器との間に配置されたアパーチャーは、その開口中心を前記コリメートレンズの光軸に対して主走査面内で前記主光線と垂直な方向に偏心させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記コリメートレンズは、全てのレンズ面が光軸に関して回転対称な形状を有することを特徴とする請求項7に記載の走査光学系。
- 光源からポリゴンミラーに入射する光束の主光線が、前記ポリゴンミラーで偏向された光束を結像させるfθレンズの光軸と主走査面内で鋭角で交差し、主走査方向の像高が0となる点に光束が結像する際の前記主光線の偏向点である基準偏向点が、前記fθレンズの光軸より前記光源から離れた位置にある走査光学系において、
前記光源と前記ポリゴンミラーとの間の光路中に、主走査方向において光軸に関して対称な球面収差を有する補正素子が、その光軸を前記主光線に対して主走査面内で主光線と垂直な方向に偏心させて配置されていることを特徴とする走査光学系。 - 前記補正素子は、前記光源から発する発散光を平行化するコリメートレンズであることを特徴とする請求項9に記載の走査光学系。
- 前記補正素子は、その光軸が前記主光線に対して前記fθレンズから離れる方向に偏心するよう配置されていることを特徴とする請求項9に記載の走査光学系。
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