JP3554412B2 - 培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法 - Google Patents
培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法に関する。さらに詳しくは、熱傷、創傷、褥瘡または皮膚潰瘍などの皮膚疾患などの皮膚欠損創に用いて、欠損組織を早期に再建させるまたは治療するための培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より浅達性II度熱傷など真皮の浅い部分に達する皮膚欠損創の治療としては創傷被覆材の適用あるいは軟膏塗布ガーゼなどを適用するのが一般的に行われてきた治療である。しかしながら、深達性II度熱傷、III度熱傷あるいはII度以上の褥瘡など真皮の深い部分に達する広範囲の皮膚欠損を負ったばあい、自己の表皮細胞増殖による皮膚組織の再建は期待できない。そこで、まず壊死組織あるいは不良肉芽組織を除去し、同種皮膚または創傷被覆材を適用して良好な肉芽組織を再建したのち、自家分層植皮を行うことにより皮膚を再建するという治療が行われてきた。しかし、自家分層植皮を行うばあい、自己の健全な部位から採皮するが、採皮した部位には傷跡が残るという整容についての問題が生じる。また患部が極めて広範囲であるばあいには、自家分層植皮は困難である。
【0003】
この問題を解決するために、わずかな皮膚片から表皮細胞あるいは線維芽細胞を採取し、培養フラスコ中で大量培養する技術が開発され、これらの培養細胞を用いた種々の培養皮膚が開発されてきている。
【0004】
ハワード・グリーン(H.Green)、ジェームズ・レインワルド(J.Rheinwald)らが開発した培養表皮シートは、切手大の皮膚を採取し、表皮細胞を培養フラスコ中で大量培養して表皮シートをうるものであるが、該シートを培養フラスコから剥離する際の酵素処理によって最も重要な細胞である基底細胞が損傷を受けるために自家移植において生着率が低いという問題点が指摘されている(黒柳能光、生体材料9巻、1991年2月号参照)。
【0005】
また、ユージーン・ベル(E.Bell)ら(サイエンス(Science)、211巻、1052〜1054頁、1981年3月号参照)は、皮膚から分離、採取した表皮細胞および線維芽細胞を培養フラスコ中で大量に培養し、線維芽細胞を組み込んだコラーゲンゲル上に表皮細胞を重層化させた培養皮膚を開発した。
【0006】
さらに、スティーブン・ボイス(S.Boyce)ら(サージェリー(SURGERY)、103巻、421〜431頁、1988年4月号参照)は、皮膚から採取した表皮細胞を培養フラスコ中で大量に培養したものを、少量のコンドロイチン−6−硫酸を添加してえられたコラーゲンスポンジ上に播種し重層化させた培養皮膚を開発している。
【0007】
また、アテロコラーゲンを基材とする培養皮膚が、特開昭第62−246371号公報および特開平第4−332561号公報に記載されている。特開昭第62−246371号公報には、アテロコラーゲンシートを基材とする培養皮膚が記載されているが、シートに貫通孔がないので、移植床からもたらされる細胞増殖などに欠かすことのできない栄養分がシートを透過してシート上の表皮細胞にまで供給され難いために自家移植において、表皮の生着率が低いという問題があった。
【0008】
また、線維芽細胞のみを組み込んだ培養皮膚を作製したばあいにおいても、やはり適用創面からもたらされる栄養分が培養皮膚基材全体へ供給され難いために、線維芽細胞の増殖と代謝が不活発になること、生理活性物質の放出が円滑になされなくなることなどのために皮膚の再建または良性肉芽組織の形成に支障をきたすことがある。
【0009】
さらに貫通孔がないことで、培養皮膚を適用した患部に浸出液が過度に滞留し、この排出が円滑になされず感染の温床となるという問題もあった。
【0010】
特開平第4−332561号公報には、前記のような問題点を解決するために貫通孔を設けたアテロコラーゲンスポンジが記載されているが、貫通孔を設けると細胞を播種する際に落下逸脱してしまうので、これを防ぐために細胞播種前にあらかじめアテロコラーゲンゲルなどでスポンジをコーティングすることを必須としたものであり、こうした方法は、工程が煩雑であるばかりでなくコストの高い培養皮膚となってしまうという問題がある。そのため、より安価で簡便な代替品または手法の開発が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来からコラーゲンを基材として用いた培養皮膚において課題とされていた点は、
1.皮膚欠損組織への適用後に、培養皮膚基材がバリアーとなり、適用創面から培養皮膚全体への栄養供給が円滑にいかないこと、
2.皮膚欠損組織への適用後に、培養皮膚適用部に浸出液が過度に滞留すること
3.前記1および2を防ぐために基材に貫通孔を設けておくばあい、細胞播種時に細胞が落下逸脱してしまうこと、および
4.前記3を防ぐために基材の貫通孔をコラーゲンゲルなどの生体繊維状高分子材料でコーティングしたばあい、コストが高くなってしまうこと
であった。
【0012】
本発明はかかる1〜4の課題を解消するためになされたものであり、熱傷、創傷、褥瘡または皮膚潰瘍などの皮膚欠損創に用いて、欠損組織を早期に再建させるための培養皮膚を提供することを目的とする。さらに詳しくは、適用創面から培養皮膚全体の細胞への栄養分供給および適用創面に過度に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる機能を有し、しかも安価に作製しうる培養皮膚を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的は、培養皮膚用コラーゲン基材に貫通した切込みを設けることにより、皮膚由来の細胞を該基材上に播種する際の細胞の落下逸脱の防止を目的とした処理を必要とせず、かつ培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめ、前記基材に播種培養された細胞への栄養供給、および適用創面に過度に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる培養皮膚を提供することである。
【0014】
したがって本発明は貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に関する。
【0015】
前記切込みは直線状であり、一方向にそって設けられたものであってよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形に少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよい。
【0016】
また本発明は貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と播種培養された皮膚由来の細胞からなる培養皮膚に関する。
【0017】
さらに本発明は、貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚、貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚、ならびに貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞および該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚に関する。
【0018】
前記コラーゲンはアテロコラーゲンであってよく、また前記切込みは均斉に設けられてもよい。
【0019】
前記切込みは、一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうるものであってもよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形当りに少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよく、また、スリットであってもよい。より好ましくは、前記切込みは切込み方向に対し平行にならない方向に、前記切込みが開くように力が加えられる。
【0020】
さらに本発明は、
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法、および
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程からなる培養皮膚の製造法、ならびに
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養し、かつ該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法に関する。
【0021】
前記コラーゲンはアテロコラーゲンであってよく、また前記切込みは均斉に設けられてもよい。
【0022】
前記切込みは、一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうるものであってもよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形当りに少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよく、また、スリットであってもよい。より好ましくは、前記切込みは切込み方向に対し平行にならない方向に、前記切込みが開くように力が加えられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本明細書において「閉じた状態」とは培養皮膚用基材における切込みが開くように力がかかっていない状態をいう。
【0024】
本発明の培養皮膚用基材には、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ポリグリコール酸、コンドロイチン硫酸またはヒアルロン酸などのムコ多糖類などを用いることができ、前記コラーゲンは、たとえばアテロコラーゲンなどのように生体適合性を有するものであることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるコラーゲンスポンジは、酸性に調整したコラーゲン溶液をホモジナイザーを用いてホモジナイズすることにより充分に気泡を含ませたものをポリスチレンなどの容器に流し込み、アンモニアガス雰囲気中に静置してゲル化させたのち水洗して、凍結真空乾燥を行い、ついで紫外線照射または架橋剤によって分子間架橋を導入することにより作製することができる。
【0026】
本発明においてコラーゲン溶液は、ウシ真皮などからえられたコラーゲンから調製して、pHを好ましくは2〜4に調整し、濃度を0.2〜3w/v%、好ましくは0.5〜2w/v%とすることによりえられる。ゲル化はアンモニアなどのガス雰囲気下で必要に応じて数分〜2時間程度行い、こののち、水洗し、凍結真空乾燥を行う。
【0027】
架橋に用いる紫外線(UV)の主波長は250〜270nmのものが好ましく、紫外線量は500〜12000mWsec/cm2、好ましくは1000〜5000mWsec/cm2の線量を照射するとよい。本発明に用いられる架橋剤の例としてはたとえば、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられる。また、コラーゲンスポンジの大きさは患部の大きさにあわせて適宜選択される。また、コラーゲンスポンジの厚さおよび形状は適用される患部の状態によって変化するが、厚さ0.2〜40mm、形状は、薄板状、板状、棒状、紡錘状あるいは両側凸のレンズ状などに成形するとよい。
【0028】
本発明に用いられるコラーゲンシートは、コラーゲン溶液を前記スポンジ作製と同様の容器に入れ、乾燥機の中で風乾してシートを形成させたのち、紫外線照射または架橋剤によって分子間架橋を導入することにより作製することができる。
【0029】
前記コラーゲンシート作製に用いられるコラーゲン溶液は、ウシ真皮などからえられたコラーゲンから調製して、pHを好ましくは2〜4に調整し、濃度が0.2〜3w/v%、好ましくは0.5〜2w/v%とすることによりえられる。
【0030】
架橋に用いる紫外線(UV)の主波長は250〜270nmのものが好ましく、紫外線量は500〜12000mWsec/cm2、好ましくは1000〜5000mWsec/cm2の線量を照射するとよい。本発明に用いられる架橋剤の例としてはたとえば、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられる。また、コラーゲンシートの大きさおよび厚さは患部の状態にあわせて適宜選択される。
【0031】
本発明の培養皮膚用基材に設けられる貫通した切込みとは、刃厚が極めて薄く、かつ刃先が鋭利な、たとえば安全カミソリやメスのような刃物などの切断手段を用いて線状に貫通しているものをいい、該切断手段を除去すれば細胞が落下逸脱する間隙はほとんど生じない。このため、細胞播種の際には設けられた切込みを通過して細胞が落下逸脱するようなことは極度に少なくなり、培養皮膚適用時には基材を伸展する力などを加えることにより切込みを広げて栄養分や適用創面からの浸出液などが通過しうる貫通孔を形成することができる。
【0032】
前記切込みを設けるために用いられる刃物は刃先が薄ければ薄いほど良く、厚いものでも0.2mmを超えず、好ましくは0.1mm以内であるとよい。前記切込みの数はとくに限定されないが、2〜20mm、好ましくは5〜10mmの長さの切込みを切込みに対して縦方向に2〜30mm、好ましくは5〜15mm間隔で、横方向に3〜20mm、好ましくは5〜15mm間隔で隣り合う列どうしの切込みが互い違いになり1列おきに各切込みが隣り合うように設けるのが好ましい(図2(b)参照)が、隣り合う列どうしの切込みが隣り合うように並んでいてもよい(図2(a)および(c)参照)。また、切り込みは前記培養皮膚用基材に均斉に設けられているのが好ましいが、同一基材上で搾設する切込みの長さおよび密度は異なっていても良い。
【0033】
切込みの形状は、直線状であるのみならず、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形であってもよいが、一定方向の力を加えたときに、開きやすい形が好ましい。全ての切込みが同一の形状であっても異なっていてもよく、配列も平行のみならず、ランダムであってもよい。これらの例示として図1〜9にその形状を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の培養皮膚用基材には、その少なくとも片面において哺乳動物皮膚由来の表皮細胞および/または線維芽細胞が播種され培養増殖される。前記表皮細胞とは、基底細胞を含む角質化細胞および表皮細胞層に通常存在するそのほかの細胞を意味するが、このうち培養増殖させるのは角質化細胞である。前記線維芽細胞とは、真皮中の主要な細胞であり、コラーゲンをはじめとする結合組織成分を産生し、これらの成分と結合して結合組織を形成している細胞をいう。
【0035】
本発明の培養皮膚は、播種される細胞に応じて以下の3種類を作製することが可能である:
▲1▼本発明のコラーゲン基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞のみを播種培養した培養皮膚(複合培養真皮)、
▲2▼本発明のコラーゲン基材の片面に表皮細胞を播種培養した培養皮膚(複合培養表皮)および
▲3▼本発明のコラーゲン基材の少なくとも片面で皮膚由来の線維芽細胞を播種培養して、該基材の片面に表皮細胞を播種培養した培養皮膚(複合培養皮膚)。このばあい、先に線維芽細胞を播種培養する工程を行う方が、表皮細胞の脱落を防ぐことができるのでより好ましい。
【0036】
前記の3種類の培養皮膚は、患部の面積、深さおよび患者の症状などによって適宜使い分けることでより効果が発揮される。また、これらの培養皮膚を自家、他家で適宜使い分けることもできる。
【0037】
前記表皮細胞は以下の手順で調製される。清潔な環境下で採取された皮膚(表皮および真皮の一部、または皮膚全層)を消毒し、抗生物質を含有する生理食塩水またはハンクス(Hank′s)液などの緩衝液に浸漬する。この皮膚をディスパーゼ濃度を1000U/mLに調製したダルベッコ変法イーグル最少必須培地(DMEM)(以下、「ディスパーゼ溶液」という)に浸漬したのち表皮と真皮に分離する。えられた表皮をトリプシン濃度0.25w/v%、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)濃度を0.5mMに調製したハンクス液(以下、「トリプシン溶液」という)中、37℃で約15分間浸漬したのち10v/v%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM(以下、この培地を「DMEM+10%FCS」という)などの培地中に移し、振とうすることにより細胞を分散させ、約400×g、5分間、遠心分離して採取させることによってうることができる。えられた表皮細胞は、たとえばグリーン(Green)培地、NCTC168培地、MCDB153培地、とくに好ましくはグリーン培地を加えて表皮細胞懸濁液とする。
【0038】
前記グリーン培地とはDMEMとハム(Ham′s)F−12を3:1に混合し、ヒドロコルチゾン(0.4μg/mL)、インスリン(5μg/mL)、トランスフェリン(5μg/mL)、トリヨードチロニン(0.0013μg/mL)、コレラトキシン(0.01μg/mL)、アデニン(24.3μg/mL)、表皮細胞増殖因子(0.01μg/mL)と抗生物質を添加し、10v/v%FCSを含んでなる表皮細胞増殖培地である(セル(Cell)、40巻、677〜683頁、1985年3月号参照)。
【0039】
前記表皮細胞を高効率で増殖させるには、たとえばマイトマインシン処理や放射線照射などによって増殖能を消失させたマウス由来の線維芽細胞である3T3細胞などを支持細胞として接着させた培養フラスコ中で培養を行うことが好ましい。
【0040】
具体的には、この3T3細胞を培養したのち、培地を除去してハンクス液ですすぎ、これを除去する。ついでマイトマイシンC 4μg/mL含有DMEM溶液を細胞全体が充分漬かるように(75cm2培養フラスコでは、2〜4mL程度が好ましい)加え37℃にて2時間程度静置したのち緩衝液で洗浄し、マイトマイシンCを除去する。こうして、3T3細胞は生きたままで増殖能のみが消失せしめられる。えられた増殖能を有さない3T3細胞を採取して、前記グリーン培地に懸濁し、1×103〜5×104cells/cm2、好ましくは5×103〜3×104cells/cm2の密度になるように調製したのち培養フラスコへ播種して接着させる。この培養フラスコに前記表皮細胞を3T3細胞を播種したのちに5×103〜5×105cells/cm2、好ましくは1×104〜2×105cells/cm2の細胞密度にて播種して、5%CO2インキュベーター中、37℃にて培養する。
【0041】
3T3細胞はこの培養継続中に表皮細胞がコロニーを形成する過程において培養フラスコ底面より脱離して培地中に浮き上がり、培地を交換する際に除去されるので、最終的にえられる表皮細胞にはほとんど含まれない。
【0042】
培養増殖した表皮細胞は、ディスパーゼ溶液を加え37℃にて約2時間静置することにより剥し、さらにトリプシン溶液により分散させ遠心分離して、表皮細胞を採取し、グリーン培地を添加して細胞懸濁液をえる。表皮細胞は、必要に応じて継代培養して多量の表皮細胞をえておく。具体的には、前記支持細胞を必要数量作製し前記したように培養増殖した表皮細胞を採取して、支持細胞に播種培養する。この際、表皮細胞が角質化しないよう注意して継代培養する。えられた前記表皮細胞を、たとえば切込みを設けた約6×9.5cm、厚さ1mmのコラーゲンスポンジ基材上に、5×104〜2×105cells/cm2の細胞密度に調製して播種する。
【0043】
細胞播種前にFCSを基材全体に添加し、37℃にて約20時間静置し、こののち、余分なFCSを除去しておくことにより、前記細胞の接着が良好となる。表皮細胞が基材に接着したのち、グリーン培地を加えて5%CO2インキュベーター中37℃にて3日ごとに培地を交換しながら7〜21日間培養する。このようにして複合培養表皮がえられる。
【0044】
前記線維芽細胞は、採取された皮膚を前記と同様に表皮と真皮に分離したのち、えられた真皮をハサミ、ホモジナイザーなどを用いて砕き、コラゲナーゼをDMEMに溶解し0.5w/v%の濃度に調製した溶液(以下、「コラゲナーゼ溶液」という)に加えて、約3時間、約37℃にて静置したのち振とうして結合組織を溶解させ、約400×g〜約1,000×g、好ましくは約600×g〜約800×gで遠心分離して採取する。えられた線維芽細胞は、DMEM+10%FCSなどを培地として5%CO2インキュベーター中37℃にてサブコンフルエントとなるまで培養し、必要に応じて多くの線維芽細胞をうるように継代培養する。
【0045】
えられた線維芽細胞をたとえば切込みを搾設した約6×9.5cm、厚さ1mmのコラーゲンスポンジ基材に播種するばあい、播種前にまず、前記した複合培養表皮作製におけると同様に基材にFCSを含ませておく。培養した線維芽細胞をトリプシン溶液を用いて培養フラスコからはがし、遠心分離により採取して、DMEM+10%FCSを添加して懸濁液を調製する。この線維芽細胞懸濁液を5×103〜5×105cells/cm2、好ましくは5×104〜2×105cells/cm2の細胞密度にてコラーゲン基材に播種する。細胞が基材に接着したのち、DMEM+10%FCSを加え、5%CO2インキュベーター中37℃にて3日ごとに培地を交換しながら1〜14日間培養を行う。このようにして複合培養真皮をうることができる。複合培養真皮は基材の少なくとも片面に線維芽細胞を培養増殖させてえられる。
【0046】
表皮細胞および真皮細胞の両方を併せて有する複合培養皮膚は、以下のように作製される。前記した複合培養真皮の作製工程にて線維芽細胞を播種し、細胞を良好に基材に接着させたのち該基材を裏返し、前記複合培養表皮の作製における工程を行い複合培養皮膚をうる。
【0047】
このようにしてえらえた培養皮膚は、創面に適用される前に、DMEMを用いて洗浄し、FCSを除いた同様の培地に置き換えておくことが好ましい。
【0048】
貫通孔を設けられていない基材を用いた培養皮膚では、培養皮膚全体に栄養成分が供給され難く培養細胞の増殖、代謝を阻害することがあった、またその適用創面に浸出液などが過度に滞留し、感染の温床となることがあるのに対し、本発明の基材を用いた培養皮膚においては、前記のように創面への適用前に搾設した切込みを開くように力を加えて貫通孔を設けることによって培養皮膚全体に栄養成分が供給され易くなり、培養細胞の増殖、代謝を円滑にすると共に適用創面における浸出液の排出が良好に行われる。
【0049】
また複合培養表皮または複合培養皮膚を自家移植するばあいには生着率を高める効果がある。
【0050】
前記細胞を基材に良好に接着させるために、細胞接着因子としてフィブロネクチンやラミニンなどを本発明の基材に被覆しておくとさらに良好な培養皮膚がえられる。
【0051】
【実施例】
以下に本発明を実施例をあげてさらに詳細に説明するが、本発明はもとよりこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
切込みを設けたアテロコラーゲンスポンジの作製
1w/v%となるよう調製したアテロコラーゲン((株)高研製)の水溶液(塩酸でpH4に調整)をホモジナイザー((株)日本精機製作所製)を用いて1分間撹拌することにより気泡を入れ、プラスチックケース(10×18cm、高さ2.8cm)に50mlを注加し、アンモニアガス雰囲気下にてゲル化させた。これを流水中にて充分洗浄したのち凍結真空乾燥を行って厚さ約1mmのアテロコラーゲンスポンジをえた。ついで、このスポンジの片面にUVを1.5mW/cm2、表面裏面各30分間照射した。
【0053】
えられたアテロコラーゲンスポンジに、ステンレス製メス(フェザー安全剃刀(株)製)を用いて長さ5mmの切込みを長辺に平行に5mm間隔かつ短辺において5mm間隔に、隣り合う列同志の切込みは互い違いになり1列おきに各切込みが隣り合うように貫通させ、エチレンオキサイドガス滅菌を行い、切込み入りの培養皮膚用アテロコラーゲンスポンジをえた(図1(a))。
【0054】
実施例2
切込みを設けた複合培養皮膚の作製
清潔な環境下で採取されたヒトの皮膚片(約2×2cm、厚さ約0.5mm)をイソジン溶液(明治製菓(株)製)に浸漬し、ハンクス液で洗い流したのちストレプトマイシン(1000μg/mL)、ペニシリン(1000U/mL)およびアンホテリシンB(2.5μg/mL)を混合したハンクス液に室温、30分間浸漬して殺菌した。
【0055】
つぎに、ディスパーゼ溶液(ディスパーゼは合同酒精(株)製、DMEMはライフテックテクノロジーズ社製)10mlに4℃にて約20時間浸漬し、ピンセットを用いて表皮と真皮に分離した。こうしてえられた表皮をトリプシン溶液(トリプシンは和光純薬工業(株)製、EDTAは(株)同仁化学製)10mlに15分間、37℃にて処理したのちDMEM+10%FCS中に移し、振とうすることにより細胞を培地中に分散させ、約400×g、5分間の遠心分離にて沈殿させることによって集め、本明細書に記載した組成よりなるグリーン培地に懸濁した。
【0056】
表皮細胞を高効率で増殖させるために、以下の支持細胞を用いた。マウス由来線維芽細胞である3T3細胞をDMEM+10%FCSの入った培養フラスコ中で、サブコンフルエントとなるまで5%CO2インキュベーター中37℃にて培養した。そののち、培地を除去してハンクス液ですすぎ、DMEMを加えてここにマイトマイシンCの最終濃度が0.0004%になるようにマイトマイシンC(和光純薬工業(株)製)含有生理的食塩水溶液(0.1mg/mL)を添加した。ついでこの培養フラスコを37℃で2時間静置したのち、ハンクス液で洗浄してマイトマイシンCを除き、増殖能が消失した3T3細胞を採取し、さらにグリーン培地に懸濁し、計数後2×104cells/cm2の密度となるよう調製して新たな培養フラスコに播種した。
【0057】
このようにして調製した3T3細胞が接着した培養フラスコに前記表皮細胞を播種し、37℃にて5%のCO2インキュベーター中で培養増殖させた。
【0058】
一方、分離した真皮部分をハサミでペースト状になるまで砕いてコラゲナーゼ溶液(コラゲナーゼは和光純薬工業(株)製、DMEMはライフテックテクノロジーズ社製)10mlで約6時間、37℃にて処理して結合組織を除去したのち、約700×g、5分間の遠心分離にて沈殿させることによって線維芽細胞をえた。えられた線維芽細胞はDMEM(ライフテックテクノロジーズ社製)+10%FCSを培地として用いて5%CO2インキュベーター中37℃にて培養フラスコ中で3日ごとに培地を交換しながら継代培養し、増殖させた。トリプシン溶液でこの培養フラスコから線維芽細胞を剥がし、遠心分離して採取し、DMEM+10%FCS中で細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を5×104cells/cm2の細胞密度にて実施例1で作製した切込み入りアテロコラーゲンスポンジに播種し、DMEM+10%FCS中で2日間培養した。
【0059】
この際、線維芽細胞を播種する前に、当該アテロコラーゲンスポンジにFCSを満遍なく滴下して含浸させ37℃、5%CO2インキュベーターに静置し、20時間後、余分なFCSを除去した。
【0060】
こののち、前記線維芽細胞を播種培養したアテロコラーゲンスポンジの入った容器中の培地を除去し、該アテロコラーゲンスポンジを裏返した。そののち前記で培養増殖させた表皮細胞を2×105cells/cm2の密度で播種し、クリーンベンチの中で6時間静置したのち、グリーン培地20mlを加えて5%CO2インキュベーター内で37℃にて14日間培養し、複合培養皮膚をえた。
【0061】
試験例
複合培養皮膚の適用
ヌードマウスの背部に約2.5×2cmの全層欠損を作製した。
【0062】
実施例2でえられた複合培養皮膚を作製した欠損形状に合わせて切り、切込みに平行な両辺に力を加えて貫通孔を生じさせたのち適用した。適用部位上をゲンタマイシン含有創傷被覆材で被覆し、この周囲を被覆材と共に縫合した上にガーゼをのせて弾性包帯で固定した。
【0063】
適用3週間後、肉眼的には浸出液の滞留は認められず、ほぼ全体的に表皮化して乾燥していた。組織は、表皮の重層化が認められ順調な皮膚の再建の状態を示した。
【0064】
比較例
切込みが設けられていない複合培養皮膚の作製
切込みを設けずに実施例1および2と同様にして作製した複合培養皮膚を試験例におけると同様にヌードマウスに適用して3週間後に肉眼的および形態学的観察を行った。その結果、適用部の一部に浸出液の滞留が認められ、適用部で真皮層の再建は観察されたが、表皮細胞の生着は認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、コラーゲン基材に細胞を播種する際に生ずる細胞の落下逸脱の防止を目的とした前処理を要せず、培養皮膚を創面に適用する前に培養皮膚に設けられた切込みを開くように力を加えることによって貫通孔を生ぜしめ、播種培養された表皮細胞および/または線維芽細胞への充分な栄養分の供給ならびに適用部に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる培養皮膚を安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが直線)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図1(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図2】本発明の培養皮膚用基材の切込みの設ける位置を示す概略図である。(a)では長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は5mmおきで設けられ、(b)では長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は5mmおきで設けられ、列が隣りどうしの切込みは互い違いに設けられており、および(c)では、長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は1cmおきに設けられている。
【図3】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがナミ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図3(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図4】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがカギ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図4(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図5】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがカップ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図5(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図6】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが放射状直線形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図6(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図7】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが同心円形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図7(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図8】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが同心の楕円形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図8(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図9】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが無定形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図9(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法に関する。さらに詳しくは、熱傷、創傷、褥瘡または皮膚潰瘍などの皮膚疾患などの皮膚欠損創に用いて、欠損組織を早期に再建させるまたは治療するための培養皮膚用基材、培養皮膚およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より浅達性II度熱傷など真皮の浅い部分に達する皮膚欠損創の治療としては創傷被覆材の適用あるいは軟膏塗布ガーゼなどを適用するのが一般的に行われてきた治療である。しかしながら、深達性II度熱傷、III度熱傷あるいはII度以上の褥瘡など真皮の深い部分に達する広範囲の皮膚欠損を負ったばあい、自己の表皮細胞増殖による皮膚組織の再建は期待できない。そこで、まず壊死組織あるいは不良肉芽組織を除去し、同種皮膚または創傷被覆材を適用して良好な肉芽組織を再建したのち、自家分層植皮を行うことにより皮膚を再建するという治療が行われてきた。しかし、自家分層植皮を行うばあい、自己の健全な部位から採皮するが、採皮した部位には傷跡が残るという整容についての問題が生じる。また患部が極めて広範囲であるばあいには、自家分層植皮は困難である。
【0003】
この問題を解決するために、わずかな皮膚片から表皮細胞あるいは線維芽細胞を採取し、培養フラスコ中で大量培養する技術が開発され、これらの培養細胞を用いた種々の培養皮膚が開発されてきている。
【0004】
ハワード・グリーン(H.Green)、ジェームズ・レインワルド(J.Rheinwald)らが開発した培養表皮シートは、切手大の皮膚を採取し、表皮細胞を培養フラスコ中で大量培養して表皮シートをうるものであるが、該シートを培養フラスコから剥離する際の酵素処理によって最も重要な細胞である基底細胞が損傷を受けるために自家移植において生着率が低いという問題点が指摘されている(黒柳能光、生体材料9巻、1991年2月号参照)。
【0005】
また、ユージーン・ベル(E.Bell)ら(サイエンス(Science)、211巻、1052〜1054頁、1981年3月号参照)は、皮膚から分離、採取した表皮細胞および線維芽細胞を培養フラスコ中で大量に培養し、線維芽細胞を組み込んだコラーゲンゲル上に表皮細胞を重層化させた培養皮膚を開発した。
【0006】
さらに、スティーブン・ボイス(S.Boyce)ら(サージェリー(SURGERY)、103巻、421〜431頁、1988年4月号参照)は、皮膚から採取した表皮細胞を培養フラスコ中で大量に培養したものを、少量のコンドロイチン−6−硫酸を添加してえられたコラーゲンスポンジ上に播種し重層化させた培養皮膚を開発している。
【0007】
また、アテロコラーゲンを基材とする培養皮膚が、特開昭第62−246371号公報および特開平第4−332561号公報に記載されている。特開昭第62−246371号公報には、アテロコラーゲンシートを基材とする培養皮膚が記載されているが、シートに貫通孔がないので、移植床からもたらされる細胞増殖などに欠かすことのできない栄養分がシートを透過してシート上の表皮細胞にまで供給され難いために自家移植において、表皮の生着率が低いという問題があった。
【0008】
また、線維芽細胞のみを組み込んだ培養皮膚を作製したばあいにおいても、やはり適用創面からもたらされる栄養分が培養皮膚基材全体へ供給され難いために、線維芽細胞の増殖と代謝が不活発になること、生理活性物質の放出が円滑になされなくなることなどのために皮膚の再建または良性肉芽組織の形成に支障をきたすことがある。
【0009】
さらに貫通孔がないことで、培養皮膚を適用した患部に浸出液が過度に滞留し、この排出が円滑になされず感染の温床となるという問題もあった。
【0010】
特開平第4−332561号公報には、前記のような問題点を解決するために貫通孔を設けたアテロコラーゲンスポンジが記載されているが、貫通孔を設けると細胞を播種する際に落下逸脱してしまうので、これを防ぐために細胞播種前にあらかじめアテロコラーゲンゲルなどでスポンジをコーティングすることを必須としたものであり、こうした方法は、工程が煩雑であるばかりでなくコストの高い培養皮膚となってしまうという問題がある。そのため、より安価で簡便な代替品または手法の開発が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来からコラーゲンを基材として用いた培養皮膚において課題とされていた点は、
1.皮膚欠損組織への適用後に、培養皮膚基材がバリアーとなり、適用創面から培養皮膚全体への栄養供給が円滑にいかないこと、
2.皮膚欠損組織への適用後に、培養皮膚適用部に浸出液が過度に滞留すること
3.前記1および2を防ぐために基材に貫通孔を設けておくばあい、細胞播種時に細胞が落下逸脱してしまうこと、および
4.前記3を防ぐために基材の貫通孔をコラーゲンゲルなどの生体繊維状高分子材料でコーティングしたばあい、コストが高くなってしまうこと
であった。
【0012】
本発明はかかる1〜4の課題を解消するためになされたものであり、熱傷、創傷、褥瘡または皮膚潰瘍などの皮膚欠損創に用いて、欠損組織を早期に再建させるための培養皮膚を提供することを目的とする。さらに詳しくは、適用創面から培養皮膚全体の細胞への栄養分供給および適用創面に過度に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる機能を有し、しかも安価に作製しうる培養皮膚を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記の目的は、培養皮膚用コラーゲン基材に貫通した切込みを設けることにより、皮膚由来の細胞を該基材上に播種する際の細胞の落下逸脱の防止を目的とした処理を必要とせず、かつ培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめ、前記基材に播種培養された細胞への栄養供給、および適用創面に過度に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる培養皮膚を提供することである。
【0014】
したがって本発明は貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に関する。
【0015】
前記切込みは直線状であり、一方向にそって設けられたものであってよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形に少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよい。
【0016】
また本発明は貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と播種培養された皮膚由来の細胞からなる培養皮膚に関する。
【0017】
さらに本発明は、貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚、貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚、ならびに貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞および該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚に関する。
【0018】
前記コラーゲンはアテロコラーゲンであってよく、また前記切込みは均斉に設けられてもよい。
【0019】
前記切込みは、一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうるものであってもよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形当りに少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよく、また、スリットであってもよい。より好ましくは、前記切込みは切込み方向に対し平行にならない方向に、前記切込みが開くように力が加えられる。
【0020】
さらに本発明は、
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法、および
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程からなる培養皮膚の製造法、ならびに
a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養し、かつ該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法に関する。
【0021】
前記コラーゲンはアテロコラーゲンであってよく、また前記切込みは均斉に設けられてもよい。
【0022】
前記切込みは、一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうるものであってもよく、また、前記培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形当りに少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まないものであってもよく、また、スリットであってもよい。より好ましくは、前記切込みは切込み方向に対し平行にならない方向に、前記切込みが開くように力が加えられる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本明細書において「閉じた状態」とは培養皮膚用基材における切込みが開くように力がかかっていない状態をいう。
【0024】
本発明の培養皮膚用基材には、コラーゲン、ゼラチン、キチン、キトサン、ポリグリコール酸、コンドロイチン硫酸またはヒアルロン酸などのムコ多糖類などを用いることができ、前記コラーゲンは、たとえばアテロコラーゲンなどのように生体適合性を有するものであることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるコラーゲンスポンジは、酸性に調整したコラーゲン溶液をホモジナイザーを用いてホモジナイズすることにより充分に気泡を含ませたものをポリスチレンなどの容器に流し込み、アンモニアガス雰囲気中に静置してゲル化させたのち水洗して、凍結真空乾燥を行い、ついで紫外線照射または架橋剤によって分子間架橋を導入することにより作製することができる。
【0026】
本発明においてコラーゲン溶液は、ウシ真皮などからえられたコラーゲンから調製して、pHを好ましくは2〜4に調整し、濃度を0.2〜3w/v%、好ましくは0.5〜2w/v%とすることによりえられる。ゲル化はアンモニアなどのガス雰囲気下で必要に応じて数分〜2時間程度行い、こののち、水洗し、凍結真空乾燥を行う。
【0027】
架橋に用いる紫外線(UV)の主波長は250〜270nmのものが好ましく、紫外線量は500〜12000mWsec/cm2、好ましくは1000〜5000mWsec/cm2の線量を照射するとよい。本発明に用いられる架橋剤の例としてはたとえば、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられる。また、コラーゲンスポンジの大きさは患部の大きさにあわせて適宜選択される。また、コラーゲンスポンジの厚さおよび形状は適用される患部の状態によって変化するが、厚さ0.2〜40mm、形状は、薄板状、板状、棒状、紡錘状あるいは両側凸のレンズ状などに成形するとよい。
【0028】
本発明に用いられるコラーゲンシートは、コラーゲン溶液を前記スポンジ作製と同様の容器に入れ、乾燥機の中で風乾してシートを形成させたのち、紫外線照射または架橋剤によって分子間架橋を導入することにより作製することができる。
【0029】
前記コラーゲンシート作製に用いられるコラーゲン溶液は、ウシ真皮などからえられたコラーゲンから調製して、pHを好ましくは2〜4に調整し、濃度が0.2〜3w/v%、好ましくは0.5〜2w/v%とすることによりえられる。
【0030】
架橋に用いる紫外線(UV)の主波長は250〜270nmのものが好ましく、紫外線量は500〜12000mWsec/cm2、好ましくは1000〜5000mWsec/cm2の線量を照射するとよい。本発明に用いられる架橋剤の例としてはたとえば、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジイソシアネートなどがあげられる。また、コラーゲンシートの大きさおよび厚さは患部の状態にあわせて適宜選択される。
【0031】
本発明の培養皮膚用基材に設けられる貫通した切込みとは、刃厚が極めて薄く、かつ刃先が鋭利な、たとえば安全カミソリやメスのような刃物などの切断手段を用いて線状に貫通しているものをいい、該切断手段を除去すれば細胞が落下逸脱する間隙はほとんど生じない。このため、細胞播種の際には設けられた切込みを通過して細胞が落下逸脱するようなことは極度に少なくなり、培養皮膚適用時には基材を伸展する力などを加えることにより切込みを広げて栄養分や適用創面からの浸出液などが通過しうる貫通孔を形成することができる。
【0032】
前記切込みを設けるために用いられる刃物は刃先が薄ければ薄いほど良く、厚いものでも0.2mmを超えず、好ましくは0.1mm以内であるとよい。前記切込みの数はとくに限定されないが、2〜20mm、好ましくは5〜10mmの長さの切込みを切込みに対して縦方向に2〜30mm、好ましくは5〜15mm間隔で、横方向に3〜20mm、好ましくは5〜15mm間隔で隣り合う列どうしの切込みが互い違いになり1列おきに各切込みが隣り合うように設けるのが好ましい(図2(b)参照)が、隣り合う列どうしの切込みが隣り合うように並んでいてもよい(図2(a)および(c)参照)。また、切り込みは前記培養皮膚用基材に均斉に設けられているのが好ましいが、同一基材上で搾設する切込みの長さおよび密度は異なっていても良い。
【0033】
切込みの形状は、直線状であるのみならず、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形であってもよいが、一定方向の力を加えたときに、開きやすい形が好ましい。全ての切込みが同一の形状であっても異なっていてもよく、配列も平行のみならず、ランダムであってもよい。これらの例示として図1〜9にその形状を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の培養皮膚用基材には、その少なくとも片面において哺乳動物皮膚由来の表皮細胞および/または線維芽細胞が播種され培養増殖される。前記表皮細胞とは、基底細胞を含む角質化細胞および表皮細胞層に通常存在するそのほかの細胞を意味するが、このうち培養増殖させるのは角質化細胞である。前記線維芽細胞とは、真皮中の主要な細胞であり、コラーゲンをはじめとする結合組織成分を産生し、これらの成分と結合して結合組織を形成している細胞をいう。
【0035】
本発明の培養皮膚は、播種される細胞に応じて以下の3種類を作製することが可能である:
▲1▼本発明のコラーゲン基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞のみを播種培養した培養皮膚(複合培養真皮)、
▲2▼本発明のコラーゲン基材の片面に表皮細胞を播種培養した培養皮膚(複合培養表皮)および
▲3▼本発明のコラーゲン基材の少なくとも片面で皮膚由来の線維芽細胞を播種培養して、該基材の片面に表皮細胞を播種培養した培養皮膚(複合培養皮膚)。このばあい、先に線維芽細胞を播種培養する工程を行う方が、表皮細胞の脱落を防ぐことができるのでより好ましい。
【0036】
前記の3種類の培養皮膚は、患部の面積、深さおよび患者の症状などによって適宜使い分けることでより効果が発揮される。また、これらの培養皮膚を自家、他家で適宜使い分けることもできる。
【0037】
前記表皮細胞は以下の手順で調製される。清潔な環境下で採取された皮膚(表皮および真皮の一部、または皮膚全層)を消毒し、抗生物質を含有する生理食塩水またはハンクス(Hank′s)液などの緩衝液に浸漬する。この皮膚をディスパーゼ濃度を1000U/mLに調製したダルベッコ変法イーグル最少必須培地(DMEM)(以下、「ディスパーゼ溶液」という)に浸漬したのち表皮と真皮に分離する。えられた表皮をトリプシン濃度0.25w/v%、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)濃度を0.5mMに調製したハンクス液(以下、「トリプシン溶液」という)中、37℃で約15分間浸漬したのち10v/v%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM(以下、この培地を「DMEM+10%FCS」という)などの培地中に移し、振とうすることにより細胞を分散させ、約400×g、5分間、遠心分離して採取させることによってうることができる。えられた表皮細胞は、たとえばグリーン(Green)培地、NCTC168培地、MCDB153培地、とくに好ましくはグリーン培地を加えて表皮細胞懸濁液とする。
【0038】
前記グリーン培地とはDMEMとハム(Ham′s)F−12を3:1に混合し、ヒドロコルチゾン(0.4μg/mL)、インスリン(5μg/mL)、トランスフェリン(5μg/mL)、トリヨードチロニン(0.0013μg/mL)、コレラトキシン(0.01μg/mL)、アデニン(24.3μg/mL)、表皮細胞増殖因子(0.01μg/mL)と抗生物質を添加し、10v/v%FCSを含んでなる表皮細胞増殖培地である(セル(Cell)、40巻、677〜683頁、1985年3月号参照)。
【0039】
前記表皮細胞を高効率で増殖させるには、たとえばマイトマインシン処理や放射線照射などによって増殖能を消失させたマウス由来の線維芽細胞である3T3細胞などを支持細胞として接着させた培養フラスコ中で培養を行うことが好ましい。
【0040】
具体的には、この3T3細胞を培養したのち、培地を除去してハンクス液ですすぎ、これを除去する。ついでマイトマイシンC 4μg/mL含有DMEM溶液を細胞全体が充分漬かるように(75cm2培養フラスコでは、2〜4mL程度が好ましい)加え37℃にて2時間程度静置したのち緩衝液で洗浄し、マイトマイシンCを除去する。こうして、3T3細胞は生きたままで増殖能のみが消失せしめられる。えられた増殖能を有さない3T3細胞を採取して、前記グリーン培地に懸濁し、1×103〜5×104cells/cm2、好ましくは5×103〜3×104cells/cm2の密度になるように調製したのち培養フラスコへ播種して接着させる。この培養フラスコに前記表皮細胞を3T3細胞を播種したのちに5×103〜5×105cells/cm2、好ましくは1×104〜2×105cells/cm2の細胞密度にて播種して、5%CO2インキュベーター中、37℃にて培養する。
【0041】
3T3細胞はこの培養継続中に表皮細胞がコロニーを形成する過程において培養フラスコ底面より脱離して培地中に浮き上がり、培地を交換する際に除去されるので、最終的にえられる表皮細胞にはほとんど含まれない。
【0042】
培養増殖した表皮細胞は、ディスパーゼ溶液を加え37℃にて約2時間静置することにより剥し、さらにトリプシン溶液により分散させ遠心分離して、表皮細胞を採取し、グリーン培地を添加して細胞懸濁液をえる。表皮細胞は、必要に応じて継代培養して多量の表皮細胞をえておく。具体的には、前記支持細胞を必要数量作製し前記したように培養増殖した表皮細胞を採取して、支持細胞に播種培養する。この際、表皮細胞が角質化しないよう注意して継代培養する。えられた前記表皮細胞を、たとえば切込みを設けた約6×9.5cm、厚さ1mmのコラーゲンスポンジ基材上に、5×104〜2×105cells/cm2の細胞密度に調製して播種する。
【0043】
細胞播種前にFCSを基材全体に添加し、37℃にて約20時間静置し、こののち、余分なFCSを除去しておくことにより、前記細胞の接着が良好となる。表皮細胞が基材に接着したのち、グリーン培地を加えて5%CO2インキュベーター中37℃にて3日ごとに培地を交換しながら7〜21日間培養する。このようにして複合培養表皮がえられる。
【0044】
前記線維芽細胞は、採取された皮膚を前記と同様に表皮と真皮に分離したのち、えられた真皮をハサミ、ホモジナイザーなどを用いて砕き、コラゲナーゼをDMEMに溶解し0.5w/v%の濃度に調製した溶液(以下、「コラゲナーゼ溶液」という)に加えて、約3時間、約37℃にて静置したのち振とうして結合組織を溶解させ、約400×g〜約1,000×g、好ましくは約600×g〜約800×gで遠心分離して採取する。えられた線維芽細胞は、DMEM+10%FCSなどを培地として5%CO2インキュベーター中37℃にてサブコンフルエントとなるまで培養し、必要に応じて多くの線維芽細胞をうるように継代培養する。
【0045】
えられた線維芽細胞をたとえば切込みを搾設した約6×9.5cm、厚さ1mmのコラーゲンスポンジ基材に播種するばあい、播種前にまず、前記した複合培養表皮作製におけると同様に基材にFCSを含ませておく。培養した線維芽細胞をトリプシン溶液を用いて培養フラスコからはがし、遠心分離により採取して、DMEM+10%FCSを添加して懸濁液を調製する。この線維芽細胞懸濁液を5×103〜5×105cells/cm2、好ましくは5×104〜2×105cells/cm2の細胞密度にてコラーゲン基材に播種する。細胞が基材に接着したのち、DMEM+10%FCSを加え、5%CO2インキュベーター中37℃にて3日ごとに培地を交換しながら1〜14日間培養を行う。このようにして複合培養真皮をうることができる。複合培養真皮は基材の少なくとも片面に線維芽細胞を培養増殖させてえられる。
【0046】
表皮細胞および真皮細胞の両方を併せて有する複合培養皮膚は、以下のように作製される。前記した複合培養真皮の作製工程にて線維芽細胞を播種し、細胞を良好に基材に接着させたのち該基材を裏返し、前記複合培養表皮の作製における工程を行い複合培養皮膚をうる。
【0047】
このようにしてえらえた培養皮膚は、創面に適用される前に、DMEMを用いて洗浄し、FCSを除いた同様の培地に置き換えておくことが好ましい。
【0048】
貫通孔を設けられていない基材を用いた培養皮膚では、培養皮膚全体に栄養成分が供給され難く培養細胞の増殖、代謝を阻害することがあった、またその適用創面に浸出液などが過度に滞留し、感染の温床となることがあるのに対し、本発明の基材を用いた培養皮膚においては、前記のように創面への適用前に搾設した切込みを開くように力を加えて貫通孔を設けることによって培養皮膚全体に栄養成分が供給され易くなり、培養細胞の増殖、代謝を円滑にすると共に適用創面における浸出液の排出が良好に行われる。
【0049】
また複合培養表皮または複合培養皮膚を自家移植するばあいには生着率を高める効果がある。
【0050】
前記細胞を基材に良好に接着させるために、細胞接着因子としてフィブロネクチンやラミニンなどを本発明の基材に被覆しておくとさらに良好な培養皮膚がえられる。
【0051】
【実施例】
以下に本発明を実施例をあげてさらに詳細に説明するが、本発明はもとよりこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
切込みを設けたアテロコラーゲンスポンジの作製
1w/v%となるよう調製したアテロコラーゲン((株)高研製)の水溶液(塩酸でpH4に調整)をホモジナイザー((株)日本精機製作所製)を用いて1分間撹拌することにより気泡を入れ、プラスチックケース(10×18cm、高さ2.8cm)に50mlを注加し、アンモニアガス雰囲気下にてゲル化させた。これを流水中にて充分洗浄したのち凍結真空乾燥を行って厚さ約1mmのアテロコラーゲンスポンジをえた。ついで、このスポンジの片面にUVを1.5mW/cm2、表面裏面各30分間照射した。
【0053】
えられたアテロコラーゲンスポンジに、ステンレス製メス(フェザー安全剃刀(株)製)を用いて長さ5mmの切込みを長辺に平行に5mm間隔かつ短辺において5mm間隔に、隣り合う列同志の切込みは互い違いになり1列おきに各切込みが隣り合うように貫通させ、エチレンオキサイドガス滅菌を行い、切込み入りの培養皮膚用アテロコラーゲンスポンジをえた(図1(a))。
【0054】
実施例2
切込みを設けた複合培養皮膚の作製
清潔な環境下で採取されたヒトの皮膚片(約2×2cm、厚さ約0.5mm)をイソジン溶液(明治製菓(株)製)に浸漬し、ハンクス液で洗い流したのちストレプトマイシン(1000μg/mL)、ペニシリン(1000U/mL)およびアンホテリシンB(2.5μg/mL)を混合したハンクス液に室温、30分間浸漬して殺菌した。
【0055】
つぎに、ディスパーゼ溶液(ディスパーゼは合同酒精(株)製、DMEMはライフテックテクノロジーズ社製)10mlに4℃にて約20時間浸漬し、ピンセットを用いて表皮と真皮に分離した。こうしてえられた表皮をトリプシン溶液(トリプシンは和光純薬工業(株)製、EDTAは(株)同仁化学製)10mlに15分間、37℃にて処理したのちDMEM+10%FCS中に移し、振とうすることにより細胞を培地中に分散させ、約400×g、5分間の遠心分離にて沈殿させることによって集め、本明細書に記載した組成よりなるグリーン培地に懸濁した。
【0056】
表皮細胞を高効率で増殖させるために、以下の支持細胞を用いた。マウス由来線維芽細胞である3T3細胞をDMEM+10%FCSの入った培養フラスコ中で、サブコンフルエントとなるまで5%CO2インキュベーター中37℃にて培養した。そののち、培地を除去してハンクス液ですすぎ、DMEMを加えてここにマイトマイシンCの最終濃度が0.0004%になるようにマイトマイシンC(和光純薬工業(株)製)含有生理的食塩水溶液(0.1mg/mL)を添加した。ついでこの培養フラスコを37℃で2時間静置したのち、ハンクス液で洗浄してマイトマイシンCを除き、増殖能が消失した3T3細胞を採取し、さらにグリーン培地に懸濁し、計数後2×104cells/cm2の密度となるよう調製して新たな培養フラスコに播種した。
【0057】
このようにして調製した3T3細胞が接着した培養フラスコに前記表皮細胞を播種し、37℃にて5%のCO2インキュベーター中で培養増殖させた。
【0058】
一方、分離した真皮部分をハサミでペースト状になるまで砕いてコラゲナーゼ溶液(コラゲナーゼは和光純薬工業(株)製、DMEMはライフテックテクノロジーズ社製)10mlで約6時間、37℃にて処理して結合組織を除去したのち、約700×g、5分間の遠心分離にて沈殿させることによって線維芽細胞をえた。えられた線維芽細胞はDMEM(ライフテックテクノロジーズ社製)+10%FCSを培地として用いて5%CO2インキュベーター中37℃にて培養フラスコ中で3日ごとに培地を交換しながら継代培養し、増殖させた。トリプシン溶液でこの培養フラスコから線維芽細胞を剥がし、遠心分離して採取し、DMEM+10%FCS中で細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を5×104cells/cm2の細胞密度にて実施例1で作製した切込み入りアテロコラーゲンスポンジに播種し、DMEM+10%FCS中で2日間培養した。
【0059】
この際、線維芽細胞を播種する前に、当該アテロコラーゲンスポンジにFCSを満遍なく滴下して含浸させ37℃、5%CO2インキュベーターに静置し、20時間後、余分なFCSを除去した。
【0060】
こののち、前記線維芽細胞を播種培養したアテロコラーゲンスポンジの入った容器中の培地を除去し、該アテロコラーゲンスポンジを裏返した。そののち前記で培養増殖させた表皮細胞を2×105cells/cm2の密度で播種し、クリーンベンチの中で6時間静置したのち、グリーン培地20mlを加えて5%CO2インキュベーター内で37℃にて14日間培養し、複合培養皮膚をえた。
【0061】
試験例
複合培養皮膚の適用
ヌードマウスの背部に約2.5×2cmの全層欠損を作製した。
【0062】
実施例2でえられた複合培養皮膚を作製した欠損形状に合わせて切り、切込みに平行な両辺に力を加えて貫通孔を生じさせたのち適用した。適用部位上をゲンタマイシン含有創傷被覆材で被覆し、この周囲を被覆材と共に縫合した上にガーゼをのせて弾性包帯で固定した。
【0063】
適用3週間後、肉眼的には浸出液の滞留は認められず、ほぼ全体的に表皮化して乾燥していた。組織は、表皮の重層化が認められ順調な皮膚の再建の状態を示した。
【0064】
比較例
切込みが設けられていない複合培養皮膚の作製
切込みを設けずに実施例1および2と同様にして作製した複合培養皮膚を試験例におけると同様にヌードマウスに適用して3週間後に肉眼的および形態学的観察を行った。その結果、適用部の一部に浸出液の滞留が認められ、適用部で真皮層の再建は観察されたが、表皮細胞の生着は認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、コラーゲン基材に細胞を播種する際に生ずる細胞の落下逸脱の防止を目的とした前処理を要せず、培養皮膚を創面に適用する前に培養皮膚に設けられた切込みを開くように力を加えることによって貫通孔を生ぜしめ、播種培養された表皮細胞および/または線維芽細胞への充分な栄養分の供給ならびに適用部に滞留する浸出液の排出が円滑に行われうる培養皮膚を安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが直線)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図1(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図2】本発明の培養皮膚用基材の切込みの設ける位置を示す概略図である。(a)では長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は5mmおきで設けられ、(b)では長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は5mmおきで設けられ、列が隣りどうしの切込みは互い違いに設けられており、および(c)では、長さ2mmの切込みが縦の間隔は2mmおき、横の間隔は1cmおきに設けられている。
【図3】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがナミ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図3(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図4】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがカギ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図4(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図5】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みがカップ形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図5(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図6】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが放射状直線形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図6(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図7】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが同心円形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図7(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図8】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが同心の楕円形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図8(a)の矢印は力を加える方向を示す。
【図9】本発明の培養皮膚用基材または培養皮膚(切込みが無定形)の適用前(a)および適用時(b)の切込みの状態を示す概略図である。図9(a)の矢印は力を加える方向を示す。
Claims (20)
- 貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚用基材。
- コラーゲンがアテロコラーゲンである請求項1記載の培養皮膚用基材。
- 貫通した切込みが均斉に設けられた請求項1または2記載の培養皮膚用基材。
- 貫通した切込みが直線状であり、一方向にそって設けられた請求項1、2または3記載の培養皮膚用基材。
- 貫通した切込みが直線状であって、該切込みが培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形に少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まない請求項1、2、3または4記載の培養皮膚用基材。
- 貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と播種培養された皮膚由来の細胞からなる培養皮膚であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚。
- 貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚。
- 貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚であって、該切込みが直線状、半弧 形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚。
- 貫通した切込みが設けられたコラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材と該基材の少なくとも片面に播種培養された皮膚由来の線維芽細胞および該基材の片面に播種培養された表皮細胞からなる培養皮膚であり、培養皮膚適用時に前記切込みを開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる培養皮膚であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚。
- コラーゲンがアテロコラーゲンである請求項6、7、8または9記載の培養皮膚。
- 貫通した切込みが均斉に設けられた請求項6、7、8、9または10記載の培養皮膚。
- 貫通した切込みが一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる、請求項6、7、8、9、10または11記載の培養皮膚。
- 貫通した切込みが直線状であって、該切込みが培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形に少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まない請求項6、7、8、9、10、11または12記載の培養皮膚。
- a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚の製造法。 - a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚の製造法。 - a)コラーゲンスポンジまたはコラーゲンシートからなる培養皮膚用基材に貫通した切込みを設ける工程および
b)該切込みが閉じた状態で該基材の少なくとも片面に皮膚由来の線維芽細胞を播種培養し、かつ該基材の片面に表皮細胞を播種培養する工程
からなる培養皮膚の製造法であって、該切込みが直線状、半弧形、波形、カギ形、放射状直線形、同心円形、同心の楕円形、カップ形または無定形の線状である培養皮膚の製造法。 - コラーゲンがアテロコラーゲンである請求項14、15または16記載の製造法。
- 貫通した切込みが均斉に設けられる請求項14、15、16または17記載の製造法。
- 貫通した切込みが一方向にそって設けられた直線状であり、切込みが開くように力を加えることにより貫通孔を生じせしめうる、請求項14、15、16、17または18記載の製造法。
- 貫通した切込みが直線状であって、該切込みが培養皮膚用基材において2.5cm×2.5cmの正方形に少なくとも部分的に設けられ、かつ1cm×1cmの正方形に合計で長さ4cmを超える切込みを含まない請求項14、15、16、17、18または19記載の製造法。
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