JP3554371B2 - 内視鏡の湾曲部 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、遠隔操作によって湾曲させられる湾曲部の湾曲部材としてマルチルーメンチューブを用いた内視鏡の湾曲部に関する。
【0002】
【従来の技術】
湾曲部材は一般に、ステンレス鋼製の短筒状の多数の節輪をリベットで回動自在に連結して構成されているが、構造が複雑なので極細径化が困難であり、また部品数が多いので、組み立てに非常に手間がかかって高価であるばかりでなく、作動不良などの故障も起きやすい。
【0003】
そこで、操作ワイヤ挿通用のルーメン(貫通孔)と他の内蔵物を挿通するためのルーメンとが形成され、外周面に凹みが形成された弾力性のある材料からなるマルチルーメンチューブを湾曲部材として用い、操作ワイヤ挿通用ルーメンに通された操作ワイヤを牽引することによってマルチルーメンチューブが凹み部分で屈曲するようにして、湾曲部の構造を簡素化したものがある(特開平4−132531号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平4−132531号に記載されたような湾曲部では、操作ワイヤを牽引することによってマルチルーメンチューブを圧縮させて、凹み部分でマルチルーメンチューブを局部的に屈曲させる構造なので、湾曲操作に大きな力が必要で手動操作をするのは実際的に困難であり、また局部的な急激な屈曲によって内蔵物である光学ファイバ等が折損したり、湾曲形状がごつごつしたものになって挿入性が悪いなどの問題が生じていた。
【0005】
そこで本発明は、湾曲部材としてマルチルーメンチューブを用いることにより低コストで細径化することができて故障も起きにくく、しかも軽い操作力で滑らかな湾曲形状を得ることができる内視鏡の湾曲部を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の湾曲部は、外周部近傍において軸方向に貫通して穿設された操作ワイヤ挿通用ルーメンと他の内蔵物を挿通するために軸方向に貫通して穿設された少なくとも一つの内蔵物挿通用ルーメンとが形成された弾力性のある材料からなるマルチルーメンチューブを湾曲部材とした内視鏡の湾曲部において、上記マルチルーメンチューブに、上記操作ワイヤ挿通用ルーメンを略垂直に切断するように外周側から切り込まれた外側に向かって漸次幅が広がる形状の切り込みを、軸方向に間隔をあけて略同じ向きに複数配列したことを特徴とする。
【0007】
なお、上記切り込みによって切り欠かれないルーメンを上記マルチルーメンチューブに設けて、そのルーメンを処置具挿通用チャンネルとして用いてもよく、上記操作ワイヤ挿通用ルーメンを、流体を送り出すための流路として兼用してもよい。
【0008】
また、上記マルチルーメンチューブの外周を、上記複数の切り込み全てを覆うように弾力性のある被覆チューブで被覆してもよく、上記切り込みに連通するルーメンを介して上記被覆チューブ内に流体を送り込むことにより上記被覆チューブを膨らませることができるようにしてもよい。
【0009】
また、上記操作ワイヤ挿通用ルーメンと内蔵物挿通用ルーメンとを同じルーメンによって兼用してもよい。
【0010】
【実施例】
図面を参照して実施例を説明する。
図1ないし図3は、本発明の第1の実施例を示している。
【0011】
図1は斜視図、図2は側面断面図であり、図中1は、軸方向に複数のルーメン(貫通孔)が穿設された断面形状が円形のマルチルーメンチューブであり、例えばシリコンゴム等のような柔軟で可撓性と弾力性のある材料によって形成されている。
【0012】
内視鏡の挿入部を形成する可撓管部2と、遠隔操作によって湾曲自在に可撓管部2の先端に形成された湾曲部3の全域が、このマルチルーメンチューブ1によって形成されている。但し可撓管部2は、螺旋管に網状管を被覆してさらにその外周に可撓性チューブを被覆するような従来の構成をとってもよい。
【0013】
マルチルーメンチューブ1の先端部分には、観察窓5と照明窓6が形成された先端部本体7が連結固着されており、観察窓5内には、例えばロッドレンズを用いた観察用対物レンズ8が内蔵されている。
【0014】
そして、対物レンズ8による被写体の結像位置に、イメージガイドファイババンドル(IG)9の像入射端が配置されている。イメージガイドファイババンドル9の先端部分は、先端部本体7とマルチルーメンチューブ1とにまたがって固着された支持筒10に、対物レンズ8と共に固着されている。
【0015】
また、図1と図2には図示されていないが、照明窓6のすぐ内側には照明用ライトガイドファイババンドル(LG)の射出端が配置されていて、その先端はイメージガイドファイババンドル9と同様にして先端部本体7に固定されている。
【0016】
マルチルーメンチューブ1の外周部近くの上下両側には、湾曲操作ワイヤ13を挿通するための一対の操作ワイヤ挿通用ルーメン14が、マルチルーメンチューブ1を軸方向に貫通して穿設されている。
【0017】
操作ワイヤ挿通用ルーメン14の中には湾曲操作ワイヤ13が進退自在に挿通されており、湾曲操作ワイヤ13の先端は、先端部本体7に穿設されたワイヤ挿通孔24を貫通して、先端部本体7の先端面部分にロー付け固着されている。
【0018】
また、マルチルーメンチューブ1の正面断面を示す図3に示されるように、マルチルーメンチューブ1の中央部の左右には、二つの内蔵物挿通用ルーメン16が、並んでマルチルーメンチューブ1を軸方向に貫通して穿設されており、その一方にはイメージガイドファイババンドル(IG)9が挿通され、もう一方にはライトガイドファイババンドル(LG)が挿通されている。
【0019】
したがって、可撓管部2と湾曲部3とを一本のマルチルーメンチューブ1で一体的に形成することによって、イメージガイドファイババンドル9及びライトガイドファイババンドルを極めて容易に交換する構造をとることもできる。
【0020】
図1及び図2に示されるように、湾曲部3においては、マルチルーメンチューブ1に、外側に向かって漸次幅が広がるV字状の切り込み21が、マルチルーメンチューブ1の軸方向に対して垂直に形成されている。なお、切り込み21は必ずしもV字状でなくても、外側に向かって漸次幅が広がる形状であればよい。
【0021】
切り込み21は、マルチルーメンチューブ1の軸方向に等間隔に、180度ずつ向きを変えながら、したがって上下に交互に、複数形成されている。この実施例では、切り込み21は上下に各4箇所ずつ配列されている。
【0022】
マルチルーメンチューブ1に外周側から切り込み形成された各切り込み21は、操作ワイヤ挿通用ルーメン14を側方から垂直に切断しており、各切り込み21の先端部分は、さらに二つの内蔵物挿通用ルーメン16を各々部分的に切り欠いている。
【0023】
このように、操作ワイヤ挿通用ルーメン14を側方から切断する切り込み21が形成されたマルチルーメンチューブ1を湾曲部材としたことにより、操作ワイヤ挿通用ルーメン14内に挿通された湾曲操作ワイヤ13の一方を、図示されていない操作部から牽引すれば、牽引された湾曲操作ワイヤ13の側にある各切り込み21の幅が狭くなるように、マルチルーメンチューブ1が湾曲部3で全体的に弾性変形して滑らかに湾曲する。
【0024】
湾曲部3の湾曲方向はマルチルーメンチューブ1に切り込み21が形成されている方向であり、この実施例では、切り込み21が上側と下側とに各々同じ向きに配列されているので、図3に示されるように湾曲部3の湾曲方向A,Bは上下方向である。
【0025】
なお、湾曲部3においては、マルチルーメンチューブ1の外周に、柔軟で弾力性のあるゴムチューブ22が全ての切り込み21を覆うように被覆され、両端で水密に固着されていて、内部に水等が侵入しないようになっている。なお、図1は、ゴムチューブ22を透視して、その内側のマルチルーメンチューブ1を図示してある。
【0026】
図4は、第2の実施例のマルチルーメンチューブ1の正面断面図であり、一つの内蔵物挿通用ルーメン16内にイメージガイドファイババンドル9とライトガイドファイババンドルを挿通し、大きな径に形成したルーメン18を処置具挿通のためのチャンネルとして用いている。
【0027】
そして、切り込み21は内蔵物挿通用ルーメン16と処置具挿通用ルーメン18を切り欠かないように、第1の実施例より浅く、内蔵物挿通用ルーメン16と処置具挿通用ルーメン18の縁に沿って少し斜めに形成されている。したがって、処置具挿通用ルーメン18内に処置具類を引っ掛かりなくスムーズに挿通することができる。
【0028】
この場合、湾曲部3の湾曲方向A,Bは切り込み21が形成された向きになるので、上下方向共に少し左側に(又は右側に)ずれた方向に湾曲する。なお、内蔵物挿通用ルーメン16と処置具挿通用ルーメン18が切り込み21に連通していないので、外周のゴムチューブ22を省略することもできる。その他については第1の実施例と同じである。
【0029】
図5は、第3の実施例のマルチルーメンチューブ1の正面断面図であり、イメージガイドファイババンドル9とライトガイドファイババンドルを通すための二つの内蔵物挿通用ルーメン16に加えて、マルチルーメンチューブ1に、処置具挿通用ルーメン18を形成したものである。
【0030】
なお、処置具挿通用ルーメン18は吸引チャンネルとしても兼用することができる。操作ワイヤ挿通用ルーメン14は、それらのルーメンと干渉しないように少し横にずらして形成されている。
【0031】
切り込み21は、内蔵物挿通用ルーメン16を切り欠くが、処置具挿通用ルーメン18を切り欠かないように、処置具挿通用ルーメン18を避けて少し斜めに形成されている。したがって、湾曲部3の湾曲方向A,Bは上下方向共に少し右側に(又は左側に)ずれた方向に湾曲する。その他については第1又は第2の実施例と同じである。
【0032】
図6は、第4の実施例のマルチルーメンチューブ1の正面断面図であり、切り込み21が順に90°ずつ角度をずらして、全体として上下左右4方向に形成されている。
【0033】
操作ワイヤ挿通用ルーメン14は、切り込み21に合わせて上下左右の4箇所に形成されている。したがって、湾曲部3はA,B,C,Dで示されるように上下左右の4方向に湾曲させることができ、上下方向と左右方向の湾曲操作を複合して行えば、任意の方向に湾曲させることができる。
【0034】
なお、この実施例では、切り込み21によって切り欠かれる四つの内蔵物挿通用ルーメン16が設けられていて、それらの中にはイメージガイドファイババンドル9やライトガイドファイババンドルなどが挿通される。また、処置具挿通用ルーメン18が、どの切り込み21にも切り欠かれないように中央に形成されている。
【0035】
図7は、第5の実施例のマルチルーメンチューブ1の正面断面図であり、切り込み21が順に120°ずつ角度をずらして、全体として3方向に形成されている。それに合わせて、操作ワイヤ挿通用ルーメン14も3箇所に形成されている。
【0036】
したがって、湾曲部3は、A,B,Cで示されるように120°ずつずれた3方向に湾曲させることができ、複数方向の湾曲操作を複合して行えば、任意の方向に湾曲させることができる。なお、内蔵物挿通用ルーメン16は切り込み21によって切り欠かれているが、中央の処置具挿通用ルーメン18は切り欠かれていない。
【0037】
なお上記各実施例の他に、図示は省略するが、全ての切り込み21をマルチルーメンチューブ1に同方向に形成して、湾曲部3を一方向にだけ湾曲可能に形成してもよく、5方向以上に湾曲可能に形成してもよい。
【0038】
図8は、第6の実施例の斜視図であり、一本の湾曲操作ワイヤ13を先端部本体7の先端面で曲げ戻して、上下の操作ワイヤ挿通用ルーメン14に挿通してある。
【0039】
先端部本体7に形成されたワイヤ挿通孔24の内径とマルチルーメンチューブ1の操作ワイヤ挿通用ルーメン14の内径は、共に湾曲操作ワイヤ13の外径に対して充分に太く形成してある。また、内蔵物挿通用ルーメン16と処置具挿通用ルーメン18は、共に切り込み21によって切り欠かれないように形成されている。
【0040】
その結果、操作ワイヤ挿通用ルーメン14とワイヤ挿通孔24とを通じて、可撓管部2の基端側から先端部本体7の前方へ、水或いは薬液などの液体や気体を送り出すことができる。28は処置具出口孔、29は観察窓、30は照明窓である。
【0041】
なお、この実施例の場合には、先端部本体7を独立した部品として設けずに、マルチルーメンチューブ1自体で形成することができる。その場合には、ワイヤ挿通孔24は操作ワイヤ挿通用ルーメン14そのものであり、処置具出口孔28は処置具挿通用ルーメン18そのものである。
【0042】
図9は、第7の実施例の斜視図であり、図8の第6の実施例から外周のゴムチューブ22を取り除いたものである。したがって、操作ワイヤ挿通用ルーメン14を通じて送気、送水等を行うと、湾曲部3の各切り込み21の操作ワイヤ挿通用ルーメン14の開口部から側方に向けて、広い範囲に気体や液体を送り出して散布することができる。その他の部分は図8の第6の実施例と同じであり、マルチルーメンチューブ1自体が先端部本体を形成している。
【0043】
図10は、第8の実施例の斜視図であり、図8の第6の実施例のワイヤ挿通孔24を塞いだものである。このように構成することによって、操作ワイヤ挿通用ルーメン14を通じて流体を送り込むと、外周のゴムチューブ22をバルーン状に膨らませることができる。
【0044】
図11と図12は、第9の実施例を示しており、操作ワイヤ挿通用ルーメン14と内蔵物挿通用ルーメン16とを同じルーメンで兼用して、その一つのルーメン内に、湾曲操作ワイヤ13とイメージガイドファイババンドル9、又は湾曲操作ワイヤ13とライトガイドファイババンドル31を挿通したものである。このように構成すると、マルチルーメンチューブ1の製造が容易である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、操作ワイヤを牽引することにより、間隔をあけて略同じ向きに複数配列された切り込み幅が狭くなる方向にマルチルーメンチューブが弾性変形するので、湾曲部を全体的に滑らかに湾曲させることができ、しかも切り込みが操作ワイヤ挿通用ルーメンを側方から切断するように形成されているので、操作ワイヤを軽く牽引するだけで湾曲部を湾曲させることができ、非常に操作性がよい。
【0046】
また、光学ファイバなど内蔵物は互いに独立したルーメン内に挿通されるので、潰れにくくて耐久性がよい。そして、送気、送水及び吸引なども行うことができる。
【0047】
また、湾曲部材としてマルチルーメンチューブを採用したことにより非常に細い湾曲部を形成することも可能となり、血管内や胆管内或いは膵管内等のような細い管腔内での使用が可能となる。また、構造が全体に柔軟なので、体腔内で湾曲方向を誤操作をしても体腔粘膜を傷つけずに済む等の効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例の斜視図である。
【図2】第1の実施例の側面断面図である。
【図3】第1の実施例のマルチルーメンチューブの正面断面図である。
【図4】第2の実施例のマルチルーメンチューブの正面断面図である。
【図5】第3の実施例のマルチルーメンチューブの正面断面図である。
【図6】第4の実施例のマルチルーメンチューブの正面断面図である。
【図7】第5の実施例のマルチルーメンチューブの正面断面図である。
【図8】第6の実施例の斜視図である。
【図9】第7の実施例の斜視図である。
【図10】第8の実施例の斜視図である。
【図11】第9の実施例の側面断面図である。
【図12】第9の実施例の正面断面図である。
【符号の説明】
1 マルチルーメンチューブ
3 湾曲部
13 操作ワイヤ
14 操作ワイヤ挿通用ルーメン
16 内蔵物挿通用ルーメン
21 切り込み

Claims (6)

  1. 外周部近傍において軸方向に貫通して穿設された操作ワイヤ挿通用ルーメンと他の内蔵物を挿通するために軸方向に貫通して穿設された少なくとも一つの内蔵物挿通用ルーメンとが形成された弾力性のある材料からなるマルチルーメンチューブを湾曲部材とした内視鏡の湾曲部において、
    上記マルチルーメンチューブに、上記操作ワイヤ挿通用ルーメンを略垂直に切断するように外周側の略同じ向きから軸方向に間隔をあけて切り込まれた外側に向かって漸次幅が広がる形状の複数の切り込みを、あい異なる方向から代わるがわる切り込まれた状態になるように複数組配列すると共に、上記各方向からの何れの切り込みによって切り欠かれないルーメンを、上記あい異なる方向から切り込まれた複数組の切り込みの間を通過する状態に、少なくとも一つ設けたことを特徴とする内視鏡の湾曲部。
  2. 上記切り込みによって切り欠かれないルーメンの一つが処置具挿通用チャンネルとして用いられる請求項1記載の内視鏡の湾曲部。
  3. 上記操作ワイヤ挿通用ルーメンが、流体を送り出すための流路として兼用されている請求項1又は2記載の内視鏡の湾曲部。
  4. 上記マルチルーメンチューブの外周に、上記複数の切り込み全てを覆うように弾力性のある被覆チューブが被覆されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の湾曲部。
  5. 上記切り込みに連通するルーメンを介して上記被覆チューブ内に流体を送り込むことにより上記被覆チューブを膨らませることができる請求項4記載の内視鏡の湾曲部。
  6. 上記操作ワイヤ挿通用ルーメンと内蔵物挿通用ルーメンとが同じルーメンによって兼用されている請求項1記載の内視鏡の湾曲部。
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