JP3553429B2 - 軽油の水素化処理触媒及び軽油の水素化処理方法 - Google Patents

軽油の水素化処理触媒及び軽油の水素化処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽油の水素化処理触媒と、この触媒を用いた軽油の水素化処理方法とに関し、詳しくは、軽油を水素化処理する際に、軽油中の硫黄分を従来のこの種の触媒を使用する場合よりも大幅に低減することができる優れた活性を有する触媒と、この触媒を用いる方法とに関する。
【0002】
【技術背景】
原油の蒸留や分解によって得られる各油留分は、一般に、硫黄化合物を含み、これらの油を燃料として使用する場合には、この硫黄化合物に起因する硫黄酸化物等の大気汚染物質が大気中に放出される。
特に、ディ−ゼル機関からの排ガスによる大気汚染が深刻化しており、その燃料面からの対策として、軽油中の硫黄分の低減が強く要望されている。
実際に、ディ−ゼル車排ガス中のNOxと粒子状物質の排出規制に対応して、日本では、1997年10月から軽油中の硫黄分の規制値が500ppm以下に改定され、ヨーロッパでは、軽油中の硫黄分を2000年までに350ppm以下、2005年までに50ppm以下とすることが決定している。
【0003】
このような状況下で、軽油中の硫黄分を大幅に除去する超深度脱硫技術の開発が重要視されつつある。
軽油中の硫黄分の低減化技術として、通常、水素化脱硫の運転条件、例えば、反応温度、液空間速度等を過酷にすることが行われている。
しかし、反応温度を上げると、触媒上に炭素質が析出して触媒の活性が急速に低下し、また液空間速度を下げると、脱硫能は向上するものの、精製処理能力が低下するため設備の規模を拡張する必要が生じる。しかも、このような過酷な運転条件は、色相や貯蔵安定性等の性状面への悪影響もある。
従って、運転条件を過酷にしないで、軽油の超深度脱硫を達成し得る最も良い方法は、格段に優れた脱硫活性を有する触媒を開発することである。
【0004】
従来の脱硫レベル(生成油硫黄分0.2〜0.05質量%)程度であれば、現在の脱硫技術で、容易に達成することができるが、超深度脱硫領域(生成油硫黄分0.04質量%以下)は、急激に困難になる。
これは、4−メチルジベンゾチオフェン(4−MDBT)や4,6−ジメチルジベンゾチオフェン(4,6−DMDBT)のような、アルキル置換基の位置が硫黄原子の近傍にあるため触媒の脱硫活性点と接触する際に立体障害を起こす硫黄化合物が、脱硫を極めて困難にしているからである。
【0005】
そこで、深度脱硫領域で効率的に脱硫反応を行わせるには、これら脱硫活性点への立体障害を有する物質の脱硫反応を効率的に進行させるように、
1)触媒の活性点数を増やすこと、
2)活性金属量当たりの脱硫活性を上げること、
3)難脱硫性物質を易脱硫性物質に変化させること、
4)難脱硫性物質の細孔内拡散を容易にすること、
が可能な精密化学的触媒調製の技術が必要となる。
【0006】
現在、工業的に用いられている脱硫触媒は、基本的には、CoO−MoO/Al触媒と、NiO−MoO/Al触媒である。
軽油の水素化処理条件下では、CoO−MoO/Al触媒が、NiO−MoO/Al触媒よりも高い脱硫活性を示すため、軽油用の脱硫触媒として多く使用されている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記1)〜4)の全てを満たす高脱硫活性のCoO−MoO/Al触媒を提供し、かつこの触媒を使用した軽油の水素化処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、上記目的を達成するために、CoO−MoO/Al触媒において、
α)難脱硫性物質の細孔内拡散を容易にするために、Al担体に、特定の成分を特定の量で複合化させて、細孔直径を精密に制御し、
β)難脱硫性物質を易脱硫性物質に変化させるために、上記特定の成分を、難脱硫性物質のアルキル基の異性化やベンゼン環の水素化を生起させるブレンステッド酸点やルイス酸点を付与する成分、具体的には、ゼオライト、シリカ、ボリア、ジルコニアのうちの少なくとも1つとし、
γ)触媒の活性点数を増やすために、CoO−MoOの含有比率を最適化し、
δ)活性金属量当たりの脱硫活性を向上させるために、活性点の質的向上を図る成分として、最適量のPを加えたところ、高活性なCo−Mo−S相(脱硫活性点)を精密に創製することができ、
これらの結果として、脱硫反応が効率的に進行し、反応条件を過酷にせずに、超深度脱硫領域を容易に達成することができる高性能脱硫触媒を得ることができるとの知見を得た。
【0009】
本発明の触媒は、上記の知見に基づくもので、アルミナに、ゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上を複合化させた複合酸化物担体に、活性金属としてのコバルト及びモリブデン、活性点の質的向上を図るための成分としてのリンを含む水溶液を含浸して得られる触媒であって、
複合酸化物担体において、アルミナが80質量%より多く99.5質量%以下で、ゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上が0.5質量%以上20質量%未満であり、
この担体に含有させる各成分が、触媒基準、酸化物換算で、コバルト3〜6質量%、モリブデン16〜24質量%、リン0.8〜4.5質量%であり、
触媒の活性点数を増やすために、コバルトとモリブデンの質量比が、〔酸化コバルト〕/〔酸化コバルト+三酸化モリブデン〕の値で、0.12〜0.2であり、
活性金属量当たりの脱硫活性を向上させる(活性点の質的向上を図る)ために、モリブデンとリンの質量比が、〔五酸化二リン〕/〔三酸化モリブデン〕の値で、0.05〜0.25であり、
窒素吸着法で測定した比表面積が220〜300m/g、
水銀圧入法で測定した細孔容積が0.4〜0.6ml/g、
水銀圧入法で測定した細孔分布での平均細孔直径80〜95Å、平均細孔直径±15Åの範囲の細孔容積が全細孔容積の少なくとも75%、
硫化処理後の触媒中のモリブデン金属への硫黄の配位数が、XAFS測定で、5〜6であることを特徴とする。
このとき、アンモニア−TPDで測定した複合酸化物担体の酸量が0.5〜0.8mmol/gであること、またアルミナ担体に複合化させる成分のうちゼオライトは、▲1▼平均粒子径が2.5〜6μm、▲2▼粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の70〜98%の特性を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の水素化処理方法は、上記の触媒の存在下、水素分圧3〜8MPa、300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1で、硫黄分を含む軽油留分の接触反応を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の対象油は、例えば、直留軽油、接触分解軽油、熱分解軽油、水素化処理軽油、脱硫処理軽油、減圧蒸留軽油(VGO)等の軽油留分が適している。
これら原料油の代表的な性状例として、沸点範囲が150〜450℃、硫黄分が5質量%以下のものが挙げられる。
【0012】
本発明の触媒の担体であるアルミナは、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ−アルミナが適している。
アルミナの純度は、約98質量%以上、好ましくは約99質量%以上のものが適している。
アルミナ中の不純物としては、SO 2−、Cl、Fe、NaO等が挙げられるが、これらの不純物はできるだけ少ないことが望ましく、不純物全量で2質量%以下、好ましくは1質量%以下で、成分毎ではSO 2−<1.5質量%、Cl,Fe,NaO<0.1質量%であることが好ましい。
【0013】
アルミナに複合化させる成分は、ゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上である。
このうちゼオライトは、電子顕微鏡写真での測定による平均粒子径が約2.5〜6μm、好ましくは約3〜5μm、より好ましくは約3〜4μmのものである。
また、このゼオライトは、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子に対して占める割合が、約70〜98%、好ましくは約75〜98%、より好ましくは約80〜98%のものである。
ゼオライトのこのような特性は、上記α)の難脱硫性物質の細孔内拡散を容易にするために細孔直径を精密に制御する上で必須であり、例えば、平均粒子径が大きすぎたり、大きな粒子径の含有量が多かったりすると、複合酸化物担体を調製する過程で、アルミナとゼオライトの吸着水量や結晶性の違いから、加熱焼成時のアルミナとゼオライトの収縮率が異なり、複合酸化物担体の細孔として比較的大きなメゾあるいはマクロポアーが生じる。また、これらの大きな細孔は、表面積を低下させるばかりでなく、残油を処理するような場合には触媒毒となるメタル成分の内部拡散を容易ならしめ、延いては脱硫、脱窒素及び分解活性を低下させることとなる。
【0014】
本発明では、ゼオライトとしては、フォージャサイトX型ゼオライト、フォージャサイトY型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM系ゼオライト(ZSM−4、5、8、11、12、20、21、23、34、35、38、46等がある)、MCM−41、MCM−22、MCM−48、SSZ−33、UTD−1、CIT−5、VPI−5、TS−1、TS−2等が使用でき、特にY型ゼオライト、安定化Yゼオライト、βゼオライトが好ましい。また、ゼオライトは、プロトン型が好ましい。
上記のボリア、シリカ、ジルコニアは、一般に、この種触媒の担体成分として使用されるものを使用することができる。
【0015】
上記のゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアは、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組合せて使用することができる。
これらの成分の配合量は、複合酸化物担体中、アルミナが約80質量%より多く99.5質量%以下に対し、約0.5質量%以上20質量%未満であり、好ましくはアルミナが約85〜99.5質量%に対し、約0.5〜10質量%であり、より好ましくはアルミナが約90〜99.5質量%に対し、約0.5〜10質量%である。
これらの成分は、少なすぎても多すぎても上記α)の細孔直径の制御は不十分となり、また少なすぎるとβ)のブレンステッド酸点やルイス酸点の付与が不十分となり、多すぎるとMoが高分散化できなくなる。
【0016】
複合酸化物担体の比表面積、細孔容積、及び平均細孔直径は、特に制限されないが、軽油に対する水素化脱硫活性の高い触媒にするためには、比表面積が約240〜500m/g、好ましくは約300〜450m/g、細孔容積が約0.55〜0.9ml/g、好ましくは約0.65〜0.8ml/g、平均細孔径が約60〜120Å、好ましくは約65〜90Åのものが適している。
【0017】
比表面積が約240m/g未満では、活性金属の分散性が悪くなるため、低脱硫活性の触媒となる。
比表面積が約00m/gより大きいと、細孔直径が極端に小さくなるため、触媒の細孔直径も小さくなる。触媒の細孔直径が小さいと、硫黄化合物の触媒細孔内への拡散が不十分となり、脱硫活性が低下する。
【0018】
細孔容積が約0.55ml/g未満では、通常の含浸法で触媒を調製する場合、細孔容積内に入り込む溶媒が少量となる。溶媒が少量であると、活性金属化合物の溶解性が悪くなり、金属の分散性が低下し、低活性の触媒となる。活性金属化合物の溶解性を上げるためには、硝酸等の酸を多量に加える方法があるが、余り加えすぎると担体の低表面積化が起こり、脱硫性能低下の主原因となる。
細孔容積が約0.9ml/gより大きいと、比表面積が極端に小さくなって、活性金属の分散性が悪くなり、脱硫活性の低い触媒となる。
【0019】
細孔直径が約60Å未満では、活性金属を担持した触媒の細孔直径も小さくなる。触媒の細孔直径が小さいと、硫黄化合物の触媒細孔内への拡散が不十分となり、脱硫活性が低下する。
細孔直径が約120Åより大きいと、比表面積が小さくなる。比表面積が小さいと、活性金属の分散性が悪くなり、脱硫活性の低い触媒となる。
【0020】
複合酸化物担体のアンモニア−TPD法で測定される酸量は、約0.5〜0.8mmol/gが好ましい。
約0.5mmol/g未満では、水酸基量が少なくなりすぎて、Moが高分散化できず、脱硫活性の低い触媒となることがあり、約0.8mmol/gより大きいと、酸点上で軽油留分が急激に過分解し、活性劣化の主原因となる炭素析出を招くことになる。
【0021】
以上の複合酸化物担体に担持させるCo、Mo、リン成分のうち、Co化合物としては、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物が挙げられ、好ましくは炭酸塩、酢酸塩、より好ましくは炭酸塩である。
Mo化合物としては、三酸化モリブデン、モリブドリン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸等が挙げられ、好ましくはモリブドリン酸、三酸化モリブデンである。
リンは、上記の活性成分の化合物として、モリブドリン酸等のリンを含む化合物を使用する場合には、これらの化合物に由来するものであってもよいし、リン化合物以外の化合物を使用する場合や、リン化合物に由来するリンのみでは不足する場合には、この化合物と共に他のリン源を使用する。他のリン源としては、種々のリン酸が挙げられ、具体的には、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、ポリリン酸等が挙げられ、特にオルトリン酸が好ましい。
【0022】
これらの活性成分のうち、Coの含有量は、触媒基準、酸化物換算で、約3〜6質量%、好ましくは約3.5〜6質量%とする。
Coが約3質量%未満では、Coに帰属する活性点が十分に得られず、約6質量%を超えると、Co化合物の凝集によって活性金属の分散性が悪くなるばかりか、不活性な前駆体であるCo種(触媒硫化後や水素化処理中はCo種として存在する)や、担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種を生成するため、触媒活性の向上がみられない上、逆に触媒活性が低下する。
【0023】
Moの含有量は、触媒基準、酸化物換算で、約16〜24質量%、好ましくは約18〜22質量%とする。
Moが約16質量%未満では、Moに起因する効果を発現させるには不十分であり、約24質量%を超えると、Moの凝集によって活性金属の分散性が悪くなるばかりか、効率的に分散する活性金属含有量の限度を超えたり、触媒表面積が大幅に低下する等により、触媒活性の向上がみられない。
【0024】
リンの含有量は、触媒基準、酸化物換算で、約0.8〜4.5質量%、好ましくは約1.0〜4質量%とする。
リンは、上記δ)の活性金属量当たりの脱硫活性を向上させるために活性点の質的向上を図る成分として加えられものであり、高活性なCo−Mo−S相(脱硫活性点)を精密に創製する役割をなす。
すなわち、リンは、触媒の酸性質を向上させる作用をなし、触媒が好適な酸性質の値を示す場合には、活性成分の分散性が向上し、担体上の酸点の量が最適値を示して、硫黄化合物の吸着を促進し、硫黄化合物の水素化脱硫活性を向上させる。
なお、リンが多すぎると、触媒の表面積や細孔容積の減少が起こり、脱硫活性が低下する。
リンが約0.8質量%未満では、上記作用(役割)が十分に発現せず、軽油留分中の硫黄分を効率的に除去することができず、約4.5質量%を超えても、この作用(役割)は飽和し、不経済となる。
【0025】
Co、Mo、リン各成分の上記した含有量において、活性金属であるCoとMoの最適質量比は、〔CoO〕/〔CoO+MoO〕の値で、約0.12〜0.2であり、活性金属であるMoと触媒の酸性質向上成分であるリンの最適質量比は、〔P〕/〔MoO〕の値で、約0.05〜0.25である。
CoとMoの質量比が上記の値で約0.12未満では、脱硫の活性点と考えられるCo−Mo−S相が十分に生成できず、脱硫活性が向上しない。約0.2より大きいと、活性に関与しない無駄なCo種(Co種や、担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種)が生成し、触媒活性が低下する。
Moとリンの質量比が上記の値で約0.05未満では、CoとMoの渾然一体化が図れず、最終的に脱硫の活性点であるCo−Mo−S相が得られ難く、活性の低い触媒となる。約0.25より大きいと、触媒の表面積及び細孔容積の減少を招き、触媒の活性が低下するのみならず、酸量が増えることとなり、炭素析出を招いて活性劣化を引き起こし易くなる。
【0026】
また、本発明の触媒は、硫化処理後において、Mo金属への硫黄の配位数が、XAFS(X−ray Absorption Fine Structure《X線吸収微細構造》)測定で、約5〜6である。
硫黄の配位数が約5未満(即ち、Moの硫化度が低い触媒)では、十分な脱硫活性が得られない。なお、Moへの硫黄の配位数の理論的上限は約6である。
【0027】
更に、本発明の触媒は、硫化処理後に、NOを吸着させ、拡散反射法FT−IRで観察した際に、Coに吸着したNOスペクトル(約1860cm−1)の強度をICo、Moに吸着したNOスペクトル(約1690cm−1)の強度をIMoとした場合、ICo/(ICo+IMo)の値が、約0.3〜0.55の範囲内にあることが好ましい。
約0.3未満では、脱硫の活性点であると考えられるCo−Mo−S相が十分に生成しておらず、脱硫活性が向上しない。約0.55より大きいと、活性に関与しない無駄なCo種(Co種や、担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種)が生成し、触媒活性が低下する。
【0028】
本発明の触媒は、先ず、アルミナに、ゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上を複合化させ、この複合酸化物担体に、水、酸等の溶媒に上記各成分の化合物を溶解させて調製した溶液を含浸させて調製することができる。
アルミナと、ゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上とを複合化させる方法は、共沈法、混練法等が挙げられる。
【0029】
この複合酸化物担体に、Co、Mo、リンの各成分を含浸させる方法は、これら各成分を同時に含浸させる一段含浸法が好ましい。一段含浸法は、脱硫活性点数、酸性質、細孔等の触媒の特性の面、あるいは操作性の面から、有利と考えられるからである。即ち、一段含浸法によれば、CoとMoが渾然一体化して担体に取り込まれることとなるため、最終的に脱硫の活性点であるCo−Mo−S相を大幅に増加させることができる。このとき、リン成分が含浸溶液に存在していると、CoとMoの渾然一体化が促進される。
これに対し、CoとMoを二段含浸させる方法では、CoとMoは十分に渾然一体化せず、最終的に脱硫の活性点であるCo−Mo−S相の形成が困難になると考えられる。例えば、Coは、前述した不活性な前駆体であるCo種や、担体の格子内に取り込まれた活性に関与しないCoスピネル種となることがある。
【0030】
CoとMoを担体に担持させる具体的方法は、次の通りである。
Co、Mo、リンの各化合物(Mo化合物にリンが含まれている場合はリン化合物を加えないか、適当量のリン化合物を添加する)を含む溶液を調製する。調製時、これらの化合物の溶解を促進するために、加温(約30〜100℃)や、酸(硝酸、有機酸《クエン酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸等》)の添加を行ってもよい。
調製した溶液を、担体に、均一になるよう徐々に添加して含浸する。含浸時間は約1分〜5時間、好ましくは約5分〜3時間、温度は約5〜100℃、好ましくは約10〜80℃、雰囲気は特に限定しないが、大気中、窒素中、真空中が適している。
【0031】
含浸担持後、常温〜約80℃、窒素気流中、空気気流中、あるいは真空中で、水分をある程度(LOI《Loss on ignition》約50%以下となるように)除去し、乾燥炉、空気気流中、約80〜150℃で、約10分〜10時間乾燥する。次いで、焼成炉、空気気流中、約300〜700℃で、約10分〜10時間焼成を行う。
【0032】
以上のようにして調製される本発明の触媒は、軽油留分に対する水素化活性及び脱硫活性を高めるために、その比表面積、細孔容積及び平均細孔径が、以下の値に制限される。
窒素吸着法(BET法)で測定した比表面積は、約220〜300m/g、好ましくは約230〜270m/gとする。約220m/g未満では、活性金属の分散性が悪くなって低脱硫活性の触媒となり、約300m/gより大きいと、細孔直径が極端に小さくなるため、触媒の細孔直径も小さくなって、水素化処理の際、硫黄化合物の触媒細孔内への拡散が不十分となり、脱硫活性が低下する。
【0033】
水銀圧入法で測定した細孔容積は、約0.4〜0.6ml/g、好ましくは約0.45〜0.55ml/gとする。約0.4ml/g未満では、水素化処理の際、硫黄化合物の触媒細孔内での拡散が不十分となって脱硫活性が不十分となり、約0.6ml/gより大きいと、触媒の比表面積が極端に小さくなって、活性金属の分散性が低下し、低脱硫活性の触媒となる。
【0034】
水銀圧入法で測定した細孔分布での平均細孔直径は、約80〜95Å、好ましくは約82〜90Åとする。約80Å未満では、反応物質が細孔内に拡散し難くなるため、脱硫反応が効率的に進行せず、約95Åより大きいと、細孔内の拡散性は良いものの、細孔内表面積が減少するため、触媒の有効比表面積が減少し、活性が低くなる。
また、上記の細孔条件を満たす細孔の有効数を多くするために、触媒の細孔径分布、即ち平均細孔径±約15Åの細孔径を有する細孔の割合は、約75%以上、好ましくは約80%以上とする。
しかも、細孔分布は、モノモーダルであることが好ましい。触媒の細孔径分布がシャープなものでないと、活性に関与しない細孔が増大し、脱硫活性が減少する。
【0035】
触媒形状は、特に限定されず、通常、この種の触媒に用いられている種々の形状、例えば、円柱状、三葉型、四葉型等を採用することができる。
触媒の大きさは、通常、直径が約1〜2mm、長さ約2〜5mmが好ましい。触媒の機械的強度は、側面破壊強度(SCS《Side crush strength》)で約2lbs/mm以上が好ましい。SCSが、これより小さいと、反応装置に充填した触媒が破壊され、反応装置内で差圧が発生し、水素化処理運転の続行が不可能となる。
触媒の最密充填かさ密度(CBD:Compacted Bulk Density)は、約0.6〜1.2が好ましい。
【0036】
触媒中の活性金属の分布状態は、触媒中で活性金属が均一に分布しているユニフォーム型が好ましい。
【0037】
本発明の水素化処理方法は、水素分圧約3〜8MPa、約300〜420℃、及び液空間速度約0.3〜5hr−1の条件で、以上の触媒と硫黄化合物を含む軽油留分とを接触させて脱硫を行い、軽油留分中の難脱硫性硫黄化合物を含む硫黄化合物を減少する方法である。
本発明の方法で得られる生成油の硫黄分含有量は、500ppm以下、より具体的には20〜300ppm程度であり、従来技術によるよりも硫黄分を少なくすることができる。
【0038】
本発明の水素化処理方法を商業規模で行うには、本発明の触媒の固定床、移動床、あるいは流動床式の触媒層を反応装置内に形成し、この反応装置内に原料油を導入し、上記の条件下で水素化反応を行えばよい。
最も一般的には、固定床式触媒層を反応装置内に形成し、原料油を反応装置の上部に導入し、固定床を上から下に通過させ、反応装置の下部から生成物を流出させるものか、反対に原料油を反応装置の下部に導入し、固定床を下から上に通過させ、反応装置の上部から生成物を流出させるものである。
【0039】
本発明の水素化処理方法は、本発明の触媒を、単独の反応装置に充填して行う一段の水素化処理方法であってもよいし、幾つかの反応装置に充填して行う多段連続水素化処理方法であってもよい。
【0040】
なお、本発明の触媒は、使用前に(即ち、本発明の水素化処理方法を行うのに先立って)、反応装置中で硫化処理して活性化する。この硫化処理は、約200〜400℃、好ましくは約250〜350℃、常圧あるいはそれ以上の水素分圧の水素雰囲気下で、硫黄化合物を含む石油蒸留物、それにジメチルジスルファイドや二硫化炭素等の硫化剤を加えたもの、あるいは硫化水素を用いて行う。
【0041】
【実施例】
実施例1
SiO/Alモル比6のSHYゼオライト粉末(平均粒子径3.5μm、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の87%)と、アルミナ水和物を混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のゼオライト−アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比=2/98、酸量0.56mmol/g、細孔容積0.71ml/g、比表面積365m/g、平均細孔直径69Å)を得た。
【0042】
一方、イオン交換水40.0gに、炭酸コバルト5.51gと、モリブドリン酸19.02gと、オルトリン酸1.95gを溶解させた含浸用の溶液を調製した。
【0043】
ナス型フラスコ中に、上記のゼオライト−アルミナ複合担体50.0gを投入し、そこへ上記の含浸用溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で1時間浸漬した。
この後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中120℃で約1時間乾燥させ、500℃で4時間焼成し、触媒Aを得た。
【0044】
実施例2
実施例1と同じゼオライトとアルミナを使用し、実施例1と同様にして、実施例1と同一形状のゼオライト−アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比=5/95、酸量0.60mmol/g、細孔容積0.69ml/g、比表面積374m/g、平均細孔直径67Å)を得た。
このゼオライト−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Bを得た。
【0045】
実施例3
シリカとアルミナ水和物とを混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のシリカ−アルミナ複合担体(シリカ/アルミナ質量比=1/99、酸量0.60mmol/g、細孔容積0.70ml/g、比表面積359m/g、平均細孔直径70Å)を得た。
このシリカ−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Cを得た。
【0046】
実施例4
ホウ酸水溶液とアルミナ水和物とを混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のボリア−アルミナ複合担体(ボリア/アルミナ質量比=2/98、酸量0.66mmol/g、細孔容積0.71ml/g、比表面積363m/g、平均細孔直径72Å)を得た。
このボリア−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Dを得た。
【0047】
実施例5
ジルコニアとアルミナ水和物とを混練し、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1/16インチの柱状成形物のジルコニア−アルミナ複合担体(ジルコニア/アルミナ質量比=2/98、酸量0.54mmol/g、細孔容積0.69ml/g、比表面積348m/g、平均細孔直径70Å)を得た。
このジルコニア−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Eを得た。
【0048】
実施例6
実施例1と同じゼオライトとアルミナ水和物を使用し、実施例1と同様にして、実施例1と同一形状のゼオライト−アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比=18/82、酸量0.79mmol/g、細孔容積0.60ml/g、比表面積422m/g、平均細孔直径67Å)を得た。
このゼオライト−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸浸後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Fを得た。
【0049】
実施例7
SiO/Alモル比30のZSM−5粉末(平均粒子径3.4μm、粒子径6μm以下のものがZSM−5全粒子の91%)とアルミナ水和物を使用し、実施例1と同様にして、実施例1と同一形状のZSM−5−アルミナ複合担体(ZSM−5/アルミナ質量比=7/93、酸量0.61mmol/g、細孔容積0.60ml/g、比表面積422m/g、平均細孔直径67Å)を得た。
このゼオライト−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸浸後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Gを得た。
【0050】
実施例8
SiO/Alモル比600のゼオライトベータ粉末(平均粒子径3.7μm、粒子径6μm以下のものがゼオライトベータ全粒子の83%)とアルミナ水和物を使用し、実施例1と同様にして、実施例1と同一形状のゼオライトベータ−アルミナ複合担体(ゼオライトベータ/アルミナ質量比=7/93、酸量0.79mmol/g、細孔容積0.61ml/g、比表面積422m/g、平均細孔直径67Å)を得た。
このゼオライトベータ−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸浸後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒Hを得た。
【0051】
比較例1
ナス型フラスコ中に、細孔容積0.70ml/g、比表面積348m/g、平均細孔直径70Å、酸量0.49mmol/g、直径1/16インチの柱状成形物のアルミナ担体50.0gを投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒aを得た。
【0052】
比較例2
ゼオライト/アルミナ質量比を20/80とする以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同一形状のゼオライト−アルミナ複合担体(細孔容積0.60ml/g、比表面積422m/g、平均細孔直径67Å、酸量0.83mmol/g)を得た。
このゼオライト−アルミナ複合担体50.0gをナス型フラスコ中に投入し、そこへ実施例1と同じ含浸用溶液の全量を実施例1と同様にして添加浸漬後、実施例1と同様にして風乾、乾燥、焼成を行い、触媒bを得た。
【0053】
以上の実施例及び比較例で得た触媒の元素分析値を表1に示し、物性値を表2に示す。
なお、触媒の分析に用いた方法及び分析機器を以下に示す。
【0054】
〔1〕物理性状の分析
a)測定方法及び使用機器:
・比表面積は、窒素吸着によるBET法により測定した。
窒素吸着装置は、日本ベル(株)製の表面積測定装置(ベルソープ28)を使用した。
・細孔容積、平均細孔直径、及び細孔分布は、水銀圧入法により測定した。
水銀圧入装置は、ポロシメーター(MICROMERITICS AUTO−PORE 9200:島津製作所製)を使用した。
【0055】
b)測定原理:
・水銀圧入法は、毛細管現象の法則に基づく。水銀と円筒細孔の場合には、この法則は次式で表される。
D=−(1/P)4γcosθ
式中、Dは細孔直径、Pは掛けた圧力、γは表面張力、θは接触角である。掛けた圧力Pの関数としての細孔への進入水銀体積を測定する。
なお、触媒の細孔水銀の表面張力は484dyne/cmとし、接触角は130度とした。
・細孔容積は、細孔へ進入した触媒グラム当たりの全水銀体積量である。平均細孔直径は、Pの関数として算出されたDの平均値である。
・細孔分布は、Pを関数として算出されたDの分布である。
【0056】
c)測定手順:
▲1▼真空加熱脱気装置の電源を入れ、温度400℃、真空度5×10−2Torr以下になることを確認する。
▲2▼サンプルビュレットを空のまま真空加熱脱気装置に掛ける。
▲3▼真空度が5×10−2Torr以下となったなら、サンプルビュレットを、そのコックを閉じて真空加熱脱気装置から取外し、冷却後、重量を測定する。
▲4▼サンプルビュレットに試料(触媒)を入れる。
▲5▼試料入りサンプルビュレットを真空加熱脱気装置に掛け、真空度が5×10−2Torr以下になってから1時間以上保持する。
▲6▼試料入りサンプルビュレットを真空加熱脱気装置から取外し、冷却後、重量を測定し、試料重量を求める。
▲7▼AUTO−PORE 9200用セルに試料を入れる。
▲8▼AUTO−PORE 9200により測定する。
【0057】
〔2〕化学組成の分析
a)分析方法及び使用機器:
・触媒中の金属分析は、誘導結合プラズマ発光分析(ICPS−2000:島津製作所製)を用いて行った。
・金属の定量は、絶対検量線法にて行った。
【0058】
b)測定手順:
▲1▼ユニシールに、触媒0.05g、塩酸(50%)1ml、フッ酸一滴、及び純水1ccを投入し、加熱して溶解する。
▲2▼溶解後、ポリプロピレン製メスフラスコ(50ml)に移し換え、純水を加えて、50mlに秤量する。
▲3▼この溶液をICPS−2000により測定する。
【0059】
〔3〕モリブデン金属への硫黄の配位数の測定
硫化処理後の触媒中のモリブデン金属への硫黄の配位数をXAFS測定により調べた。
a)触媒の前処理と測定用ディスクの作成:
触媒の前処理は、触媒を流通式反応管に詰め、室温で窒素気流中5分処理し、雰囲気ガスをHS(5%)/Hに切り換え、速度5℃/minで昇温し、400℃に達した後、4時間保持した。その後、同雰囲気下で200℃まで降温し、雰囲気ガスを窒素に切り換え、常温まで降温し、前処理(硫化処理)を終了した。
測定用ディスクは、上記の前処理後、反応管に窒素ガスを通気したまま出口、入口の順でバルブを閉めた反応管をそのまま、窒素置換したグローブバッグ中に移し、グローブバッグ内で、反応管内の触媒をメノウ乳鉢に移して粉砕し、直径13mmのIR用ディスク成型器で、180kg/cmの圧力で成型した。
成型したディスクは、XAFS測定を行うまで窒素置換したグローブボックス中で保存した。
【0060】
b)測定:
高エネルギー物理学研究所の高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設(KEK−PF)の硬X線ビームラインを使用し、XAFS測定装置BL−10Bを用いて、上記のディスクを測定した。
【0061】
c)解析:
標準試料として二硫化モリブデン結晶(MoS)のXAFS測定を行い、触媒上のモリブデン硫化物でのMo−Sのピーク強度をモリブデン金属への硫黄の配位原子数に対応するものとして、各触媒のXAFS動径分布関数からモリブデンへの硫黄の平均配位原子数を算出した。
【0062】
具体的には、以下の式より算出した。
先ず、結晶構造の明確な標準試料(二硫化モリブデン結晶)のXAFS測定を行い、(1)、(2)式により、ΔR、Kを求める。
ΔR=Rr−Robs,r (1)
Nr=K・hr・Rr (2)
式中、Rr :結晶学的データによる原子間距離(Å)
Robs,r:動径分布関数における原子間距離(Å)
Nr :結晶学的データによる配位数
hr :動径分布関数におけるピーク強度
K :定数
【0063】
次に、(3)、(4)式にΔR及びKを代入し、原子間距離(R)を求め、各触媒の平均配位原子数(N)を求める。
Rr=Robs,s+ΔR (3)
Nr=K・hs・R (4)
式中、Robs,s:各触媒の動径分布関数における原子間距離(Å)
hs :各触媒の動径分布関数におけるピーク強度
【0064】
〔4〕NO吸着FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度)測定
前処理後の触媒中の活性金属(Co、Mo)へのNOガス吸着量を調べるために、前処理後の触媒にNOを吸着させ、拡散反射法FTIR(FTIR−8100M、島津製作所製)で観察した。このときの加熱真空型拡散反射用セル(KBr窓板)は、スペクトラテック社製を使用した。
【0065】
a)触媒の前処理(硫化処理):
触媒は、粉砕後拡散反射用セルに入れ、He気流中で昇温し、400℃に達した後、30分保持し、次いでHS(5%)/Hガスに切り替え、2時間保持し、続いてHeガスに切り替え、30分フラッシュイングした後、同気流中で常温まで降温し、前処理を終了した。
【0066】
b)FT−IR測定:
常温で、NOガス気流中で30分保持した後、Heガスに切り替え、30分排気処理後、FT−IR測定を行った。
Figure 0003553429
【0067】
c)測定結果の解析:
Coに吸着したNOスペクトル(1860cm−1)、及びMoに吸着したNOスペクトル(1690cm−1)のそれぞれの強度を調べ、以下の式で示す値で、各触媒を比較した。
ICoMoS=ICo/(ICo+IMo)
式中、ICo:コバルトに吸着したNOスペクトルの強度
IMo:モリブデンに吸着したNOスペクトルの強度
【0068】
表2中の略語は、次の通りを意味する。
SA :比表面積
PV :細孔容積
MPD:平均細孔直径
PSD:細孔分布
CBD:最密充填嵩密度
MoS配位数:XAFSで測定したMoに対する硫黄の配位数
ICoMoS:IR測定による相対的NO吸着量
【0069】
【表1】
Figure 0003553429
【0070】
【表2】
Figure 0003553429
【0071】
〔直留軽油の水素化処理反応1〕
上記の実施例及び比較例で調製した触媒A〜H、a〜bを用い、以下の要領にて、下記性状の直留軽油の水素化処理を行った。
先ず、触媒を高圧流通式反応装置に充填して固定床式触媒層を形成し、下記の条件で前処理した。
次に、反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合流体を、反応装置の上部より導入して、下記の条件で水素化反応を進行させ、生成油とガスの混合流体を、反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。
【0072】
触媒の前処理条件:
圧力 ;常圧
雰囲気;硫化水素(5%)/水素ガス流通下
温度 ;150℃にて0.5hr維持、次いで350℃にて1hr維持のステップ昇温
【0073】
水素化反応条件:
反応温度 ;340℃
圧力(水素分圧);4.9MPa
液空間速度 ;1.5hr−1
水素/オイル比 ;560m/m
【0074】
Figure 0003553429
【0075】
反応結果については、以下の方法で解析した。
340℃で反応装置を運転し、6日経過した時点で生成油を採取し、その性状を分析した。
〔1〕脱硫率(HDS)(%):
原料中の硫黄分を脱硫反応によって硫化水素に転換することにより、原料油から消失した硫黄分の割合を脱硫率と定義し、原料油及び生成油の硫黄分析値から以下の式により算出した。
〔2〕脱硫反応速度定数(Ks):
生成油の硫黄分(Sp)の減少量に対して、1.5次の反応次数を得る反応速度式の定数を脱硫反応速度定数(Ks)とする。
なお、反応速度定数が高い程、触媒活性が優れていることを示している。
これらの結果は、表3の通りであった。
【0076】
【数1】
脱硫率(%)=〔(Sf−Sp)/Sf〕×100
脱硫反応速度定数=〔1/√(Sp)−1/√(Sf)〕×(LHSV)
式中、Sf:原料油中の硫黄分(質量%)
Sp:反応生成油中の硫黄分(質量%)
LHSV:液空間速度(hr−1
比活性(%)=各脱硫反応速度定数/比較触媒aの脱硫反応速度定数×100
【0077】
【表3】
Figure 0003553429
【0078】
表3から判るように、従来の脱硫領域(硫黄分0.2〜0.05質量%)であれば、既存の触媒(比較触媒a)や、ゼオライトとアルミナとの比率が本発明の範囲外の触媒(比較触媒b)でも容易に脱硫することができるが、深度脱硫領域(硫黄分0.05質量%よりも更に低硫黄分)では、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンや4−メチルジベンゾチオフェン等の難脱硫性硫黄化合物の存在により、桁違いに脱硫が困難となる。
これに対し、本発明の触媒A〜Hを用いれば、0.05質量%の1/2以下もの超深度脱硫領域を容易にクリアーできることがわかる。
【0079】
〔直留軽油の水素化処理反応2〕
表3中、活性が最も高い触媒Cを用い、水素化反応条件の反応温度を355℃とする以外は、〔直留軽油の水素化処理反応1〕と同様にして直留軽油の水素化処理を行った。この結果は、表4の通りであった。
【0080】
【表4】
Figure 0003553429
【0081】
以上の結果から明らかなように、本発明の触媒は、従来の軽油水素化処理の場合とほぼ同じ水素分圧や反応温度等の条件下で、超深度脱硫領域での軽油の脱硫反応に対して、極めて優れた活性を有することが判る。
【0082】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)高い脱硫活性を有するため、軽油中の硫黄分の含有率を、大幅に低減させることができる。
(2)反応条件を従来の水素化処理の際の反応条件とほぼ同じとすることができるため、従来の装置を大幅改造することなく転用できる。
(3)硫黄含有量の少ない軽油基材を、容易に供給することができる。

Claims (4)

  1. 80質量%より多く99.5質量%以下のアルミナと、0.5質量%以上20質量%未満のゼオライト、ボリア、シリカ、及びジルコニアから選ばれる一種以上とを有する複合酸化物担体に、コバルト、モリブデン、及びリンを含む水溶液を含浸して得られる触媒であって、
    触媒基準、酸化物換算で、3〜6質量%のコバルト、16〜24質量%のモリブデン、及び0.8〜4.5質量%のリンを含み、
    コバルトとモリブデンの質量比が、〔酸化コバルト〕/〔酸化コバルト+三酸化モリブデン〕の値で、0.12〜0.2、
    モリブデンとリンの質量比が、〔五酸化二リン〕/〔三酸化モリブデン〕の値で、0.05〜0.25、
    窒素吸着法で測定した比表面積が220〜300m/g、
    水銀圧入法で測定した細孔容積が0.4〜0.6ml/g、
    水銀圧入法で測定した細孔分布での平均細孔直径80〜95Å、平均細孔直径±15Åの範囲の細孔容積が全細孔容積の少なくとも75%、
    硫化処理後の触媒中のモリブデン金属への硫黄の配位数が、XAFS測定で、5〜6であることを特徴とする軽油の水素化処理触媒。
  2. アンモニア−TPDで測定した複合酸化物担体の酸量が0.5〜0.8mmol/gであることを特徴とする請求項1記載の軽油の水素化処理触媒。
  3. ゼオライトの特性が、
    ▲1▼平均粒子径が2.5〜6μm、
    ▲2▼粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の70〜98%、
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の軽油の水素化処理触媒。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の触媒の存在下、水素分圧3〜8MPa、300〜420℃、液空間速度0.3〜5hr−1で、硫黄分を含む軽油留分の接触反応を行うことを特徴とする軽油の水素化処理方法。
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