JP3553095B2 - メタルコートロール - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、軽量で慣性が小さく且つ高い剛性を有するロールに関し、特にフィルム、紙、箔等の製造工程に使用される搬送ロール、ダンサーロール、計測ロール、糊付けロール、ラミネーティングロール等として適したロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、フィルム、紙、箔等の製造工程で用いられる上記のような各種のロールは、鋼、アルミニウム等の金属製のものがほとんどであった。しかし、これら金属製ロールは重量が重く、しかも慣性モーメントも大きいため、フィルム、紙、箔等の加工工程において被処理物に対する追従性が悪く、被処理物に擦り傷等を発生させたり、起動・停止に長時間を要する等の欠点があった。
【0003】
近年、上記金属製ロールによる問題を解消するため、金属よりも軽量、低慣性で且つ比弾性率(剛性)の高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた、いわゆるコンポジットロールが開発され、業界で高い評価を受け盛んに用いられるようになった。コンポジットロールを使用することにより、フィルム、紙、箔等の加工工程において大幅なスピードアップが可能になるばかりでなく、製品の品質も向上した。そして、このようにコンポジットロールの効果、有用性が一般に認知されるようになるとともに、コンポジットロールを大型のロールにも適用する要望が高まってきた。
【0004】
コンポジットロールを上記用途に用いるためには、ロールの外周面に良好な平滑性と高い耐久性を付与するために、電解メッキによるクロムメッキ(硬質クロムメッキ)が施される。
しかし、コンポジットロールを大型ロールに適用するとその製造に際して、特に電解クロムメッキ時に下記の問題があることが分かった。
【0005】
図1を参照して、従来のコンポジットロールの製造手順を具体的に説明する。なお、同図(b)は同図(a)のMの部分を拡大して示したものである。
コンポジットロール10は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の円筒状ロール芯体11の両端内部に、ロール回転軸12Aを有する金属製端部材(ヘッダー)12が挿入・接合されており、且つ実質的にロール全長にわたってロール外周面が金属メッキ皮膜13で被覆されている構造を有し、通称としてメタルコートロールと呼ばれている。金属メッキ皮膜13は、CFRP11の表面に導電処理層14を形成した上に、通常は銅メッキ層15を形成し、その上にクロムメッキ層16を形成する。また場合によっては、銅メッキ層15の上に更にニッケルメッキ(図示せず)を行ってから、クロムメッキ16を行う。
【0006】
電解クロムメッキを行う際、被メッキ面となるロール外周面へのメッキ電流の供給はロール端のヘッダー部12にあるロール軸12Aに電極を装着して行い、ロール外周面の主要部に均一なメッキ層が形成されるようにする。ロール軸12Aから供給されたメッキ電流Cは、図1(b)に矢印で示したようにヘッダー12内を通りCFRP11、導電処理層14、銅メッキ層15を介してクロム電着部16に供給される。
【0007】
CFRP11自体は導電性があるとはいえ、CFRP11と銅メッキ層15との密着性は必ずしも良くないので両者の界面で電気抵抗が大きくなるため、ロールが大型化しメッキ電流が大きくなるとメッキ実施中に上記界面でかなりの発熱があり、ヘッダー部にメッキ不良等が発生することがあった。
その対策として、クロムメッキ時のメッキ治具をコンポジットロール専用の特殊なものを用い、メッキ電流も従来の金属ロールのクロムメッキ時の電流に比べて少ない電流値とする等の工夫を行っていた。そのため、メッキ作業が煩雑になるばかりでなく、メッキに長時間を要し、しかもメッキ品質が不安定になり生産性も低下するという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、クロムメッキ時のロール端部での発熱を低減することにより、煩雑な作業や長時間のメッキ処理を必要とせず、高い生産性と高品質を確保できるように構造を改良したメタルコートロールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のメタルコートロールは、炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体の両端内部に、ロール回転軸を有する金属製端部材が挿入・接合されており、且つ実質的にロール全長にわたってロール外周面が金属メッキ皮膜で被覆されているメタルコートロールにおいて、
上記金属製端部材の少なくとも一つが、その外周部をニッケル製または銅製のリングで作製されており、このリングを介して上記ロール全長にわたってロール外周面に被覆した金属メッキ皮膜の内周面と直接接触した部分を有することを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明のメタルコートロールは、金属製端部材(ヘッダー)の少なくとも一つが、その外周面に、金属メッキ皮膜の内周面と直接接触した部分を有するので、従来のようにCFRPと金属層(例えば銅メッキ層)との界面すなわち高抵抗部を介さず、導電性の良い金属部分のみを介して電着部へメッキ電流を供給することができるため、従来CFRP/金属界面での高抵抗により発生したような発熱を生ずることなく、クロムメッキを行うことができる。
【0011】
本発明は、ロール端部に電極を装着してロール外周面の金属皮膜を電解メッキにより形成する構造のコンポジットロールあるいはメタルコートロールであれば、どのようなロールに適用しても効果があるが、特に金属メッキ皮膜の最外層として電解クロムメッキを行う場合は、従来構造での発熱が大きいので本発明の効果が顕著に現れる。
【0012】
最外層としてクロムメッキ層を形成する場合、一般的な金属メッキ皮膜の構造は、最内層から順にニッケルメッキ層、銅メッキ層およびクロムメッキ層または最内層から順に銅メッキ層およびクロムメッキ層から成る。
また、金属製端部材の外周部をニッケル製または銅製のリングで作製しておけば、クロムメッキの下地としての銅メッキまたはニッケルメッキと銅メッキを省略することができる。
【0013】
一般に、炭素繊維強化プラスチック製円筒状ロール芯体は、その外周面を特公平3−12541号公報に記載されているように導電処理した上に金属メッキを行うと良好なメッキ処理を行う上で有利である。
以下に、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
【実施例】
〔参考例〕
本発明により、ロール面長さ3500mm、ロール全長3960mm、外径220mm、内径200mmで、ロール面がハードクロムメッキされたロールを製作した。得られたロール構造を図2に示す。同図(b)は同図(a)の部分Mを拡大して示したものである。
【0015】
図2(a)において、本発明のメタルコートロールあるいはコンポジットロール20は、炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体21の両端内部に、ロール回転軸22Aを有する金属製端部材22が挿入・接合されており(22Cの部分)、且つ実質的にロール全長にわたってロール外周面が金属メッキ皮膜23で被覆されている構造において、上記金属製端部材22の少なくとも一つが(図示の例では両方共に)、その外周面に、上記金属メッキ皮膜23の内周面と直接接触した部分22Bを有する。
【0016】
図2(a)および図2(b)を参照してメタルコートロール20の製造手順を以下に説明する。
【0017】
〔炭素繊維強化プラスチック(CFRP)芯体の作製〕
CFRP芯体21は、フィラメントワインディング成形により成形した。用いた炭素繊維は、繊維弾性率40Ton/mm2 の三菱レイヨン製「パイロフィル」(登録商標)HRX40を用いた。マトリックス樹脂はエポキシ樹脂を用いた。芯体21は硬化後にマンドレルから脱型し、長さ3450mmに切断した。
【0018】
〔金属製端部材(ヘッダー)の作製〕
ヘッダー部22として、先ずアルミニウム材料を機械加工により外径219mm(ロール端面寄りの部分22B)および199mm(ロール内部寄りの部分22C)の段付きに仕上げた。次に、外周面のうちロール端面寄りの部分22Bに厚さ0.03mmの電気ニッケルメッキ27を施した。
【0019】
〔CFRP芯体とヘッダーの接合〕
このヘッダー22のロール内部寄りの部分22CをCFRP芯体21の両端に挿入し接着剤で接合した。これにより、ヘッダー部22のロール端面寄りの部分22Bの外周面はCFRP芯体21の両端から露出した状態になっている。
【0020】
〔CFRP芯体の外径研磨および導電処理〕
このようにCFRP芯体21の両端にヘッダー22を接合した状態で、円筒研磨機によりCFRP芯体21の外径を219.2mmに研磨仕上げした後、銀粉体を配合したエポキシ樹脂の導電樹脂を塗布硬化せしめて銅メッキのための下地処理(導電処理)24を施した。
【0021】
〔電気銅メッキおよび外周研磨〕
CFRP芯体21と両端のヘッダー部22とから成るロール外周面全長に電気銅メッキ25を施した後、外径を研磨して219.94mmに仕上げた。これによりロール外周は全面研磨仕上げされた銅メッキ面となっている。
【0022】
〔電気クロムメッキ〕
研磨仕上げされたロール外周銅メッキ層25の上に、電気クロムメッキ26を施した後、最終仕上げ研磨を行い、外周全面が均一にクロムメッキ皮膜26で被覆されたメタルコートロールを得た。
この電気クロムメッキは、金属製ロールのメッキ時に用いたものと同一のメッキ治具を用い、メッキ電流密度25A/dm2 、全メッキ電流約6000A共に非常に大きい値で行った。クロムメッキ処理の所要時間は2.2時間であった。
【0023】
メッキ実施中、メッキ浴温度は55℃に維持した。ヘッダー22に設けた測温用の穴に熱電対を差し込んでヘッダーの温度を連続的に測定した。その結果、ヘッダーの温度は最高でも61.2℃であり、メッキ浴温度55℃に対する昇温は6.2℃であって、メッキ処理に支障のない範囲の昇温であった。
上記最終仕上げ研磨後にロール外周全体のクロムメッキ皮膜26を肉眼により検査した結果、メッキ不良部は全く認められず、均一なメッキ皮膜であることが確認された。
【0024】
なお本実施例では、ヘッダー22の外周22Bの部分は、アルミニウム製ヘッダー材の上にニッケルメッキ27を施した後CFRP芯体21と接合し、両者同時に電気銅メッキ25を施したが、接合前のアルミニウムヘッダー材の上に直接に予め銅メッキを施しておいてもよい。
ニッケルメッキ、銅メッキは電解メッキまたは無電解メッキのいずれでもよいが、クロムメッキ時の大電流と高温に耐え得るメッキ層が形成される必要がある。
【0025】
〔実施例1〕
ヘッダーの構造以外は参考例と同様にして、本発明によるメタルコートロールを作製した。
【0026】
〔ヘッダーの作製〕
図3に、作製したヘッダーの構造を示す。ロール軸32Aを加工し、外径216mm(ロール端面寄りの部分32B)および196mm(ロール内部寄りの部分32C)に旋盤仕上げしたアルミニウム製ボス32Pを用意し、その外周の内ロール端面寄りの部分32Bに、肉厚1.6mmの銅リング32Qを圧入し、ヘッダー32とした。
【0027】
以下、参考例と同様の手順でCFRP芯体と接合以降の工程を行い、メタルコートロールを得た。ただし、電気銅メッキはCFRP芯体外周のみに施し、ヘッダー外周については、銅リング32Qで銅メッキに代替させた。
電気クロムメッキ中のヘッダー32の昇温は参考例と同様であり、メッキ処理に支障の無い範囲であり、外周面全面がメッキ不良の無い良好なクロムメッキ皮膜で被覆されたメタルコートロールが得られた。
【0028】
本実施例では、銅リングを用いたが、その代わりにニッケルリングを用いることもできる。いずれも、銅メッキまたはニッケルメッキの代替として用い、メッキと同等の作用を有するものである。
本発明に用いる金属製端部材(ヘッダー)の材質は、ロール全体の軽量化を考えるとアルミニウムが最も適しているが、ステンレス鋼等、ヘッダーとして十分な剛性、耐久性を有する材質であればよい。
【0029】
また、ロール芯体を構成する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)も上記実施例に限定されることなく、ロール芯体として十分な剛性、耐久性を有する材質であればよい。
【0030】
〔従来例〕
比較のため、図1の構造の従来ロールを作製した。ロールの基本寸法およびロール外周のハードクロムメッキは実施例1と同じである。
図1(a)において、メタルコートロールあるいはコンポジットロール10は、炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体11の両端内部に、ロール回転軸12Aを有する金属製端部材12が挿入・接合されており、且つ実質的にロール全長にわたってロール外周面が金属メッキ皮膜13で被覆されている。金属製端部材12はその外周全体がCFRP芯体11の内部に挿入されており、金属メッキ皮膜13と金属製端部材12との間にCFRP芯体11が介在している。
【0031】
図1(a)および図1(b)を参照してメタルコートロール10の製造手順を以下に説明する。
【0032】
〔炭素繊維強化プラスチック(CFRP)芯体の作製〕
CFRP芯体11を、実施例1のCFRP芯体21と同様に作製した。
【0033】
〔金属製端部材(ヘッダー)の作製〕
ヘッダー部12として、先ずアルミニウム材料を機械加工により外径219mmに仕上げた。
【0034】
〔CFRP芯体とヘッダーの接合〕
このヘッダー12をCFRP芯体11の端部に挿入し、ヘッダー12の外周全体を接着剤で接合した。これにより、金属メッキ皮膜13と金属製端部材12との間にCFRP芯体11が介在した状態になっている。
【0035】
〔CFRP芯体の外径研磨および導電処理〕
実施例1と同様に、円筒研磨機によりCFRP芯体11の外径を219.2mmに研磨仕上げした後、銅メッキのための下地処理(導電処理)14を施した。
【0036】
〔電気銅メッキおよび外周研磨〕
実施例1と同様に、CFRP芯体11と両端のヘッダー部12とから成るロール外周面全長に電気銅メッキ15、外径研磨仕上を行った。
【0037】
〔電気クロムメッキ〕
研磨仕上げされたロール外周銅メッキ層15の上に、電気クロムメッキ16を施した後、最終仕上げ研磨を行った。
この電気クロムメッキは、金属製ロールのメッキ時に用いるものとは異なるメタルコートロール専用のメッキ治具を用い、メッキ電流密度15A/dm2 、全メッキ電流約3630A共に非常に小さい値で行った。クロムメッキ処理の所要時間は3.6時間であった。
【0038】
メッキ実施中、メッキ浴温度は55℃に維持した。ヘッダー12に設けた測温用の穴に熱電対を差し込んでヘッダーの温度を連続的に測定した。その結果、ヘッダーの温度は最高85℃に達し、メッキ浴温度55℃に対して30℃も昇温した。
上記最終仕上げ研磨後にロール外周全体のクロムメッキ皮膜16を肉眼により検査した結果、ヘッダー12の位置のロール外周部でメッキ不良が発生していた。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のメタルコートロールは、クロムメッキ時のロール端部での発熱を低減することができるので、煩雑な作業や長時間のメッキ処理を必要とせず、高い生産性と高品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のメタルコートロール(コンポジットロール)の構造を示す断面図であり、図1(b)は図1(a)の部分Mを拡大して示したものである。
【図2】本発明のメタルコートロール(コンポジットロール)の構造の一例を示す断面図であり、図2(b)は図2(a)のヘッダー部近傍部分Mを拡大して示したものである。
【図3】本発明のメタルコートロール(コンポジットロール)のヘッダー部の構造の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
10…従来のメタルコートロールあるいはコンポジットロール
11…炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体
12…金属製端部材(ヘッダー)
12A…金属製端部材12のロール回転軸
13…金属メッキ皮膜(銅メッキ層15およびクロムメッキ層16)
14…銅メッキのための下地処理(導電処理)層
15…銅メッキ層
16…クロムメッキ層
20…本発明のメタルコートロールあるいはコンポジットロール
21…炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体
22…金属製端部材(ヘッダー)
22A…金属製端部材22のロール回転軸
22B…金属製端部材22のロール端面寄りの外周面(金属メッキ皮膜の直接接触する外周部分)
22C…金属製端部材22のロール芯体21内挿入・接合部分
23…金属メッキ皮膜(銅メッキ層25およびクロムメッキ層26、但し部分22B上では銅メッキ層25の下のニッケルメッキ層27も含む)
23で被覆されている構造において、上記金属製端部材22の少なくとも一つが27…ニッケルメッキ層
24…銅メッキのための下地処理(導電処理)層
25…銅メッキ層
26…クロムメッキ層
32…金属製端部材(ヘッダー)
32A…金属製端部材32のロール回転軸
32B…金属製端部材22のロール端面寄りの外周面(金属メッキ皮膜の直接接触する外周部分)
32C…金属製端部材32のロール芯体内挿入・接合部分
32P…アルミニウム製ボス
32Q…銅製リング
Claims (4)
- 炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体の両端内部に、ロール回転軸を有する金属製端部材が挿入・接合されており、且つ実質的にロール全長にわたってロール外周面が金属メッキ皮膜で被覆されているメタルコートロールにおいて、上記金属製端部材の少なくとも一つが、その外周部をニッケル製または銅製のリングで作製されており、このリングを介して上記ロール全長にわたってロール外周面に被覆した金属メッキ皮膜の内周面と直接接触した部分を有することを特徴とするメタルコートロール。
- 炭素繊維強化プラスチック製の円筒状ロール芯体にのみ、その外周面に導電処理を施され、この導電処理層の上に前記ロール全長にわたってロール外周面に被覆した金属メッキ皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメタルコートロール。
- 前記ロール全長にわたってロール外周面に被覆した金属メッキ皮膜は、最外層がクロムメッキ層であることを特徴とする請求項1に記載のメタルコートロール。
- 前記ロール全長にわたってロール外周面に被覆した金属メッキ皮膜が、最内層から順にニッケルメッキ層、銅メッキ層およびクロムメッキ層または最内層から順に銅メッキ層およびクロムメッキ層から成ることを特徴とする請求項1に記載のメタルコートロール。
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