JP3552589B2 - トランスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ、ディスプレイ、車載用電子機器などに組み込まれて使用されるトランスと、その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来のトランスの一例を示す斜視図であり、(a)はそのテーピング工程を示す図、(b)はその接着工程を示す図である。
【0003】
従来この種のトランスとしては、図3に示すように、下部4箇所に脚部(図示せず)が形成された四角枠形のベース2に、パターンコイル3を上下一対のE形のコア5、6とともに組み込んだ薄型軽量のトランス1が多用されている。
【0004】
このトランス1を製造する際には、図3(a)に示すように、パターンコイル3の上下両側からコア5、6を嵌着して対向させ、その状態でベース2に内挿し、テープ10でコア5、6をベース2に固定した後、図3(b)に示すように、コア5、6の端部側面4箇所に接着剤12を塗布して両方のコア5、6をベース2に接着する。なお、図3(b)ではテープ10の図示を省略している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これでは次のような不都合があった。
【0006】
第1に、トランス1を製造するにはテープ10を巻いてから接着しなければならず、テーピング工程と接着工程の2工程が必要となるので、トランス1の生産効率が悪いばかりか、テーピングと4点接着にコストがかかるため経済性にも劣る。
【0007】
第2に、トランス1の組立中にコア5、6が上下にずれやすく、その位置決めに困難を伴うとともに、コア5、6とパターンコイル3との距離が一定に決まらず、トランス1の特性(透磁率、インダクタンス等)にバラツキが生じる恐れがある。
【0008】
第3に、コア5、6とベース2とは4点接着で強固に固定されているため、両者の熱膨張率の違いによってコア5、6にストレスが生じ、トランス1の特性を変化させる。また、このストレスによってコア5、6にクラックが入ることもある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、生産効率および経済性に優れ、特性のバラツキを抑えて安定化し、熱膨張率の差によるコアへのストレスで特性が変化するのを回避することが可能なトランスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明のうちトランスの発明は、パターンコイル(3)および上下一対のE形のコア(5、6)を四角枠形のベース(2)に組み込み、前記ベースの下部に脚部(2d)を形設したトランス(1)において、前記ベースの脚部にコア搭載面(2e)を形成し、このコア搭載面上に前記コアを搭載して構成される。こうした構成を採用することにより、コアおよびパターンコイルがベースのコア搭載面上で安定して支持されるように作用する。
【0012】
また、上記ベース(2)の両側面に切り欠き窓(2a、2b)を形成し、一方の切り欠き窓(2a)において上記2個のコア(5、6)と前記ベースとを接着し、他方の切り欠き窓(2b)において前記2個のコア同士を接着して構成される。かかる構成により、ベースの両側面の剛性が切り欠き窓の分だけ低下すると同時に、コアの一端部のみがベースに固定された状態となるように作用する。
【0013】
さらに、上記切り欠き窓(2a)を波形状として構成される。かかる構成により、コアとベースとの接着面積が拡大するように作用する。
【0014】
一方、本発明のうちトランスの製造方法の発明は、上記トランス(1)を製造する際に、ベース(2)のコア搭載面(2e)上に下側のコア(6)を搭載し、その後、このコア上にパターンコイル(3)を載置し、次に、このパターンコイル上に上側のコア(5)を載置し、最後に、前記2個のコアを前記ベースに固定するようにして構成される。こうした構成を採用することにより、トランスの製造が接着工程のみで完了し、その工程が簡略化されるように作用する。
【0015】
なお、括弧内の符号は図面において対応する要素を表す便宜的なものであり、従って、本発明は図面上の記載に限定拘束されるものではない。このことは「特許請求の範囲」の欄についても同様である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るトランスの一実施形態を示す図であり、(a)はその組立斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)はその左側面図、
図2は図1に示すトランスのベースを示す詳細図であり、(a)はその平面図、(b)はその左側面図、(c)はその右側面図、(d)はその正面図、(e)はその底面図である。
【0018】
このトランス1は、図1に示すように、四角枠形のベース2を有しており、ベース2には、パターンコイル3が上下一対のE形のコア5、6とともに組み込まれている。
【0019】
ここで、図2に示すように、ベース2は本体2cを有しており、本体2cの下部4箇所には三角柱状の脚部2dが形成されている。各脚部2dの上部にはそれぞれ、図2(a)に示すように、コア搭載面2eが形成されており、これらコア搭載面2e上にはコア6の下面四隅が当接して支持された形で搭載されている。また、本体2cの一方の側面(図2(a)右側面)には波形状の切り欠き窓2aが形成されており、この切り欠き窓2aにおいて、図1(a)に示すように、2個のコア5、6とベース2の本体2cとが接着剤8によって接着されている。一方、本体2cの他方の側面(図2(a)左側面)にはU字形の切り欠き窓2bが形成されており、この切り欠き窓2bにおいて、図1(c)に示すように、コア5とコア6とが接着剤9によって接着されている。
【0020】
このような構成を有するトランス1では、ベース2とコア5、6の熱膨張率の差に起因してコア5、6にストレスが生じて特性が変化するのを回避することができる。すなわち、ベース2の本体2cの両側面には切り欠き窓2a、2bが形成されており、その分だけ本体2cの剛性が低下することに加えて、2個のコア5、6は、その両端部で接着剤8、9を介して互いに固定されると同時に、その一端部のみが接着剤8を介してベース2に固定された状態となっているので、コア5、6およびベース2はいずれも独立して膨張することができ、コア5、6の膨張に起因してコア5、6にストレスが生じて特性が変化する事態は発生しない。なお、このトランス1では、従来の4点接着のトランス1(図3(b)参照)に比べて接着箇所は少なくなるが、ベース2の切り欠き窓2aは波形状であり、接着面積が大きくなるので、コア5、6とベース2との接着力の低下が抑制され、トランス1の耐振性が確保される。
【0021】
ところで、このトランス1を製造する際には次の手順による。
【0022】
まず、下側のコア6をベース2に内挿してコア搭載面2e上に搭載する。すると、コア6はコア搭載面2e上に容易に位置決めされ、安定して支持される。
【0023】
次いで、このコア6上にパターンコイル3を載置し、さらに、このパターンコイル3上にコア5を載置する。この際、下側のコア6は安定した状態で支持されているので、その上に重なるパターンコイル3および上側のコア5は所定位置に位置決めされる。また、コア5、6とパターンコイル3との距離が一定となるため、トランス1としての特性(透磁率、インダクタンス等)にバラツキが生じることもない。
【0024】
その後、図1(a)に示すように、ベース2の波形状の切り欠き窓2aにおいて、上下両方のコア5、6とベース2の本体2cとを接着剤8で接着し、図1(c)に示すように、ベース2のU字形の切り欠き窓2bにおいて、コア5、6同士を接着剤9で接着する。ここで、この接着剤9はベース2に付着しないようにする。すると、トランス1が出来上がる。
【0025】
このように、トランス1の製造は接着工程のみで済み、テーピング工程が不要となるので、工程が簡略化された分だけ生産性が向上し、また、テーピングの材料コストと作業コストが削減されるため経済性にも優れる。
【0026】
なお、上述の実施形態においては、ベース2とコア5、6の熱膨張率の差によるコア5、6へのストレスで特性が変化するのを回避すべく、2個のコア5、6をその両端部で互いに接着し、その一端部のみベース2に接着したトランス1について説明したが、コア5、6へのストレスで特性が変化するのを別の手段で防ぐことができる場合には、2個のコア5、6の両端部をベース2に接着してトランス1の耐振性をさらに高めることが可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうちトランスの発明によれば、パターンコイル3および上下一対のE形のコア5、6を四角枠形のベース2に組み込み、前記ベース2の下部に脚部2dを形設したトランス1において、前記ベース2の脚部2dにコア搭載面2eを形成し、このコア搭載面2e上に前記コア5、6を搭載すると共に、ベース2の両側面に切り欠き窓2a、2bを形成し、一方の切り欠き窓2aにおいて2個のコア5、6と前記ベースとを接着し、他方の切り欠き窓2bにおいて前記2個のコア同士を接着して構成したので、コア搭載面2e上にコア5、6を搭載することにより、コア5、6およびパターンコイル3がベース2のコア搭載面2e上で安定して支持されることから、トランス1の特性のバラツキを抑えて安定化することができると共に、上記ベース2の両側面に切り欠き窓2a、2bを形成し、一方の切り欠き窓2aにおいて上記2個のコア5、6と前記ベース2とを接着し、他方の切り欠き窓2bにおいて前記2個のコア5、6同士を接着して構成することにより、ベース2の両側面の剛性が切り欠き窓2a、2bの分だけ低下すると同時に、コア5、6の一端部のみがベース2に固定された状態となることから、ベース2とコア5、6の熱膨張率の差によるコア5、6へのストレスで特性が変化するのを回避することができる。
【0030】
さらに、上記切り欠き窓2aを波形状として構成したので、コア5、6とベース2との接着面積が拡大することから、トランス1の耐振性を確保しつつ、ベース2とコア5、6の熱膨張率の差によるコア5、6へのストレスで特性が変化するのを低減または回避することができる。
【0031】
一方、本発明のうちトランスの製造方法の発明によれば、上記トランス1を製造する際に、ベース2のコア搭載面2e上に下側のコア6を搭載し、その後、このコア6上にパターンコイル3を載置し、次に、このパターンコイル3上に上側のコア5を載置し、最後に、前記2個のコア5、6を前記ベース2に固定するようにして構成したので、トランス1の製造が接着工程のみで完了し、その工程が簡略化されることから、トランス1を効率よく経済的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトランスの一実施形態を示す図であり、(a)はその組立斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)はその左側面図である。
【図2】図1に示すトランスのベースを示す詳細図であり、(a)はその平面図、(b)はその左側面図、(c)はその右側面図、(d)はその正面図、(e)はその底面図である。
【図3】従来のトランスの一例を示す斜視図であり、(a)はそのテーピング工程を示す図、(b)はその接着工程を示す図である。
【符号の説明】
1……トランス
2……ベース
2a、2b……切り欠き窓
2d……脚部
2e……コア搭載面
3……パターンコイル
5、6……E形のコア

Claims (3)

  1. パターンコイル(3)および上下一対のE形のコア(5、6)を四角枠形のベース(2)に組み込み、前記ベースの下部に脚部(2d)を形設したトランス(1)において、
    前記ベースの脚部にコア搭載面(2e)を形成し、このコア搭載面上に前記コアを搭載すると共に、ベース(2)の両側面に切り欠き窓(2a、2b)を形成し、一方の切り欠き窓(2a)において2個のコア(5、6)と前記ベースとを接着し、他方の切り欠き窓(2b)において前記2個のコア同士を接着したことを特徴とするトランス。
  2. 切り欠き窓(2a)を波形状としたことを特徴とする請求項1に記載のトランス。
  3. 請求項1に記載のトランス(1)を製造する際に、
    ベース(2)のコア搭載面(2e)上に下側のコア(6)を搭載し、
    その後、このコア上にパターンコイル(3)を載置し、
    次に、このパターンコイル上に上側のコア(5)を載置し、
    最後に、前記2個のコアを前記ベースに固定するようにしたことを特徴とするトランスの製造方法。
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