JP3552525B2 - ポリテトラフルオロエチレン水性分散液組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)微粒子を含む水性分散液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳化重合法によるPTFEは、純水、過酸化物系重合開始剤、アニオン系分散剤、および重合安定剤である高級パラフィン等の混合物を撹拌しつつ、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)モノマーを加圧下で注入することにより重合して製造される。通常、平均粒子径0.1〜0.5μmのPTFE微粒子が30重量%前後またはそれ以下の濃度で分散した水性分散液が得られる。
この分散液はそのままではきわめて不安定であるため、従来はポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の不飽和構造を疎水基中に有する非イオン系界面活性剤、たとえば、平均的分子構造がC8H17C6H4O(C2H4O)10Hであるユニオンカーバイド社製トライトンX100などを加え一次安定化させたのち、電気濃縮法や相分離法等の公知の方法を用いてPTFE固形分40〜65重量%に濃縮する。その後、さらに長期保存時の安定化や各種用途に適した粘度などの液物性とするために、水、アンモニア等の防腐剤、界面活性剤その他を添加し、PTFE濃度30〜65重量%の水性分散液組成物を得ている。
このPTFE水性分散液組成物の用途としては、たとえば特公昭45−39829に、安定化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(トライトンX100)を用いてPTFE水性分散液組成物を作製し、これを金属板上に塗付し380℃で焼成したのちに剥離してフィルムを得ることが記載されている。得られたフィルムはコンデンサの絶縁膜や電子部品などに用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来例におけるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを界面活性剤として使用したPTFE水性分散液組成物は、下記の問題点があった。
(1)水性分散液組成物により作製されたフィルムは黄褐色に着色し、厚みが厚くなるほど著しくなる。そのうえ、着色したフィルムは絶縁性等の電気的特性が低下する。
この着色の原因は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの熱分解が不充分なために炭素質成分がフィルム中に残留するためであると考えられる。したがって、界面活性剤を熱分解させ揮散させやすくするため、比較的長時間の加熱焼成が行われる。しかし、この方法によっても通常着色は完全には解消せず、フィルムの金属板からの剥離性が悪くなり強度も低下する問題もある。
【0004】
(2)PTFE水性分散液組成物の塗布液に泡が発生すると消えにくく、製品に泡が付着する。たとえば塗付前にPTFE水性分散液組成物を撹拌する際に泡立ちを生ずるが、この泡が製品に付着すると泡の痕跡がPTFEの厚みむらとなり製品の外観上の欠点となるほか、フィルムの強度および伸度を低下させ、ばらつきを生じさせる要因となっていた。
(3)厚いフィルムを作る場合には、マッドクラックの発生を防止するため、一定膜厚以下でPTFE水性分散液組成物を重ね塗りするが、焼成されたPTFEの表面は一般に低表面張力であるために極めてはじきやすく、重ね塗りが困難である。
(4)PTFE水性分散液組成物を塗付し乾燥するまでの間に徐々にクレーター状の「あばた」とよばれる厚みむらを生じ、フィルムの強度および伸度を低下させ、ばらつきを生じさせる。
【0005】
前記問題点(1)に対する方法として、PTFE水性分散液組成物に金属塩を添加する方法が特開昭46−7340に提案されているが、かかる塩類の添加は充分な効果がなく、PTFE粒子の凝集を進行させ保存安定性を低下させるため好ましくない。
また、特公昭52−21532には、ベンゼン環を含まず熱分解しやすいポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、たとえばRO(C2H4O)3H(Rは炭素数6〜8の直鎖状アルキル基である。)と、R’O(C2H4O)m(C3H6O)nH(R’は炭素数12〜13の直鎖状アルキル基、mは12〜13、nは4〜5である。)の混合物を使用し着色を緩和しうることが記載されている。この明細書に記載されているR’O(C2H4O)m(C3H6O)nH(R’は炭素数12〜13の直鎖状アルキル基、mは12〜13、nは4〜5である。)化合物は、熱分解性が良く、焼成後に着色を生じにくいことが知られているが、表面張力が高いためにぬれ性が劣り、PTFEフィルムを作製する用途に用いると、重ね塗りの際にはじきを生ずるため厚いフィルムが満足に作製することができず、また得られるフィルムの強度が低いという問題があった。この化合物のぬれ性が劣る原因として、親水性であるポリオキシエチレン鎖末端に疎水性の大きな重合単位数4〜5のポリオキシプロピレン鎖が結合しているため、界面活性能が低いことが考えられる。また、この明細書に記載されたように、RO(C2H4O)3H(Rは炭素数8のアルキル基である。)と組み合わせて使用した場合も同様にはじきやすいという問題があった。
【0006】
また、特開平8−269285には、曇点が45〜85℃であり、エチレンオキシド基の含有量が65〜70重量%であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、たとえばRO(C2H4O)nH(Rは炭素数8〜18の直鎖状アルキル基、nは5〜20である。)を使用し、着色が抑制され、ガラス繊維布等への塗装に有効であることが記載されている。しかし、この界面活性剤をPTFEフィルムを作製する用途に用いた場合には、水性分散液組成物に泡が発生すると比較的消えにくく、フィルムの塗付面は平滑であるために重ね塗りの際にはじいたり、「あばた」発生がみられるなどの問題点を有していた。
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、着色がなく、重ね塗り時にはじきが発生せず、厚みむらを生じにくく、また泡消えが良いために製品に欠陥を生じにくく、好適に使用できるPTFE水性分散液組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述した課題を克服するために研究を重ねた結果、水性のPTFE分散液組成物に、1〜2個の範囲のオキシプロピレン基を有し特定の分子構造をもった非イオン系界面活性剤を用いることにより、特異的に前述の問題点をすべて解決できることを発見し、技術的に完成させ本発明に至った。
すなわち、本発明は、乳化重合法により重合した平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲であるPTFE微粒子を30〜65重量%、および一般式(1)で示される平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤がPTFEに対して2〜12重量%含有されていることを特徴とするPTFE水性分散液組成物である。
【0008】
【化2】
CxH2x+1−O−A−H (1)
【0009】
(式中、xは8〜18であり、Aはオキシエチレン基数5〜20およびオキシプロピレン基数1〜2のポリオキシアルキレン鎖である。)
また、本発明は、上記PTFE水性分散液組成物において、非イオン系界面活性剤が、一般式(1)におけるxが10〜16であり、Aがオキシエチレン基数7〜12およびオキシプロピレン基数1〜2のポリオキシアルキレン鎖である平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤であるPTFE水性分散液組成物である。
また、本発明は、上記PTFE水性分散液組成物において、非イオン系界面活性剤が、分子末端側に1〜2個のオキシプロピレン基を有する平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤であるPTFE水性分散液組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のPTFE水性分散液組成物に使用されるPTFE微粒子は、乳化重合法により重合したものである。
乳化重合法は、水媒体中で単量体を重合して乳化状態で重合体を得る重合法である。PTFEの好適な乳化重合法としては水媒体、重合開始剤、分散剤、および重合安定剤等の混合物を撹拌しつつTFEを加圧下で注入することにより重合する方法が挙げられる。重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。分散剤としては、アニオン系分散剤などが挙げられる。また、重合安定剤としては、高級パラフィンなどが挙げられる。
重合温度は、特に制限ないが、30〜100℃が好ましく、特に50〜90℃が好ましい。
【0011】
PTFE微粒子の平均粒子径は、0.1〜0.5μmの範囲である。特に0.15〜0.3μmの範囲が好ましい。
また、PTFEの平均分子量は、100万〜1億の範囲が好適であり、余りに小さいとフィルム化したときの強度が小さく、余りに大きいと工業的に重合することが困難である。
本発明において、PTFEとは、TFEの単独重合物のみでなく、実質的に溶融加工できない程度の微量のクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化エチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化プロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等のフルオロビニルエーテル等TFEと共重合しうる共重合成分に基づく重合単位を含むいわゆる変性PTFEも含まれる。
本発明のPTFE水性分散液組成物において、乳化重合法により重合したPTFE微粒子の含有量は、30〜65重量%であり、好ましくは50〜62重量%である。
【0012】
本発明のPTFE水性分散液組成物には、上記一般式(1)の非イオン系界面活性剤が用いられる。
この非イオン系界面活性剤は熱分解しやすいため、本発明のPTFE水性分散液組成物を塗付焼成して作製されるPTFEフィルムの着色が抑えられる。また、本発明のPTFE水性分散液組成物に泡が発生した場合に、格段に消泡性が良いために、塗付時に泡が付着し不良品となる頻度が低下するという利点がある。また、本発明での非イオン系界面活性剤用いた水性分散液組成物は、表面張力が低くPTFE面に対してもぬれ性が良好であり、はじきが生じにくく、また「あばた」と称する厚みむらも生じにくい。これは、非イオン系界面活性剤の分子構造中に1〜2個の範囲の適度のオキシプロピレン基を有するために、消泡性とぬれ性が両立するためと考えられる。
【0013】
一般式(1)において、疎水基であるアルキル基の鎖長を表すxの値は8〜18の範囲が本発明に適しているが、望ましくは10〜16である。アルキル基が短いものを用いると水性分散液組成物の表面張力が高くなりぬれ性が低下し、逆にアルキル基が長すぎると分散液を放置した場合、PTFE微粒子が沈降しやすく、水性分散液組成物の保存安定性が損なわれる。
なお、疎水基であるアルキル基が途中で枝分かれした分岐構造を有する場合、さらにぬれ性が良好で好適な水性分散液組成物が得られるため好ましい。分岐構造を有するアルキル基は、好ましくはアルキル基の基部の炭素原子から5番目の炭素原子の範囲で枝分かれがあるアルキル基であり、特に好ましくはアルキル基の基部の炭素原子から3番目の炭素原子の範囲で枝分かれがあるアルキル基である。また、枝分かれのある炭素原子は、第二級炭素原子でもよいし、第三級炭素原子でもよいが、好ましくは第二級炭素原子である。
分岐構造を有するアルキル基の好適な具体例としては、たとえば、C10H21CH(CH3)CH2−、C9H19CH(C3H7)−、C6H13CH(C6H13)−などが挙げられる。
【0014】
一般式(1)において、親水基であるAは5〜20個のオキシエチレン基および1〜2個のオキシプロピレン基からなるポリオキシアルキレン鎖であるが、特に7〜12個のオキシエチレン基および1〜2個のオキシプロピレン基からなるポリオキシアルキレン鎖であることがPTFE水性分散液組成物としての諸特性が好適となる。
Aがオキシプロピレン基を含まない場合には消泡性が低下する。オキシプロピレン基数が3以上の場合には表面張力が高くなり濡れ性が低下し、重ね塗り時のはじきや「あばた」を生じやすく好ましくない。
また、Aにおいて、オキシプロピレン基はポリオキシエチレン鎖内に存在してもよく、また、ポリオキシエチレン鎖末端に結合してもよい。しかし、ポリオキシエチレン鎖末端に結合したものが消泡性がすぐれ、好適であり、特にポリオキシエチレン鎖両末端の内分子末端側に結合したものがより消泡性に優れ、好適である。
【0015】
1分子中の平均のオキシエチレン基数は5〜20が好適であり、さらに好ましくは7〜12の範囲である。この値が小さすぎると、PTFE微粒子が沈降しやすいために水性分散液組成物の保存安定性が劣り、また大きすぎるとぬれ性が低下し好ましくない。
本発明で用いられる非イオン系界面活性剤としては、たとえば、C13H27(C2H4O)8C3H6OH、C13H27(C2H4O)9C3H6OH、C13H27(C2H4O)10(C3H6O)2H、C16H27(C2H4O)12(C3H6O)2Hなどの平均的分子構造をもつ市販の非イオン系界面活性剤を使用することができる。
【0016】
なお、一般式(1)で表される非イオン系界面活性剤中のオキシアルキレン基におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基の数に関しては、非イオン系界面活性剤の分子構造は一定の分布を有する複数物質の混合物の平均値である。また、一般式(1)で表される非イオン系界面活性剤を複数種混合して使用する場合にも、各々の非イオン系界面活性剤のオキシアルキレン基数の平均値が前記した範囲にあれば好適な結果を得ることができる。また、各数値は整数に限らない。
本発明のPTFE水性分散液組成物において、一般式(1)の非イオン系界面活性剤の含有量は、PTFEに対して2〜12重量%であり、特に4〜12重量%が好ましい。この範囲より少ないと保存安定性が低下する。また、多い場合には厚く塗付する用途に適するが、12重量%超ではさほど性能の向上は認められず、経済的理由から12重量%以下での使用が好ましい。
【0017】
本発明のPTFE水性分散液組成物には、PTFE微粒子、界面活性剤の他に水が含有される。
この水は、PTFE微粒子の乳化重合液に含まれる水であってもよいし、乳化重合液の水とは別に用意した水であってもよいが、PTFE微粒子の乳化重合液に含まれる水を利用することが好ましい。
本発明のPTFE水性分散液組成物には、必要に応じて、フッ素系やシリコーン系等の非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシドなどの増粘剤、チキソトロピー付与剤、各種塩類、水溶性溶剤、濃度調整のための水、アンモニアなどの防腐剤、各種レベリング剤、着色剤、顔料、染料、フィラー、その他公知の他の成分を適宜併用してもよい。
【0018】
本発明のPTFE水性分散液組成物の好適な製造方法としては、PTFE微粒子の乳化重合液に非イオン系界面活性剤を加え一次安定化させたのち、電気濃縮法や相分離法等の公知の方法を用いてPTFE固形分40〜65重量%に濃縮し、その後、さらに長期保存時の安定化や各種用途に適した粘度などの液物性とするために、必要に応じて、水、0.01〜1重量%のアンモニア等の防腐剤、一般式(1)にて示す化学構造を有する非イオン系界面活性剤、その他の添加剤を適宜添加し、PTFE濃度30〜65重量%の水性分散液組成物を得る方法が挙げられる。
PTFE微粒子の乳化重合液に一次安定化させるために加える非イオン系界面活性剤の量は、PTFEに対して2〜12重量%が好ましく、特に2〜8重量%が好ましい。
【0019】
本発明のPTFE水性分散液組成物は、コンデンサ誘電体や電気絶縁材料などに使用されるPTFEフィルムの作製用途に特に好適である。
本発明のPTFE水性分散液組成物は、ガラス繊維布やカーボン繊維布などに含浸させて膜構造建築物の屋根材や高周波用プリント基板等に加工する用途に対しても好適に用いることができ、泡発生によるトラブルや不良発生が少なく、焼成後の製品の着色が少なく、また重ね塗りの際にはじきにくいものとなる。
また、PTFE水性分散液組成物にビスコース、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール等を加え、凝固浴中に加圧紡出して繊維状体を形成し、引き上げ後にこれを加熱焼成してPTFE繊維を作製する用途にも、本発明のPTFE水性分散液組成物を用いることにより、焼成後に着色の少ない繊維が得られる。
【0020】
また、化学肥料や石灰などの土壌改良剤やセメントなどの土木資材の粉体と共に混練し、微粉末を捕捉させて粉体の発塵を防止する場合に、本発明のPTFE水性分散液組成物を用いると、ベンゼン環構造を含有しないため、微生物分解性にすぐれ、環境汚染の懸念が少ない利点もある。
また、電池製造において、使用する二酸化マンガン、水酸化ニッケル、炭素などの活性物質粉末をPTFE水性分散液組成物の希釈液と混練し、PTFEを繊維化させて得られるペーストを電極板へ塗布する。従来のPTFE水性分散液組成物は界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが用いられていたために、混練プロセスで泡立ちやすく、容器からあふれたり、撹拌力が伝わりにくくPTFEが繊維化しにくいといった問題があったが、本発明のPTFE水性分散液組成物を用いることにより、こうした問題が改善される。
【0021】
本発明のPTFE水性分散液組成物は、上記の用途のみならず従来からの多くの用途に関して幅広く置き換えて使用できる。すなわち、調理用品の表面にPTFE水性分散液組成物を塗付し被覆加工する用途、PTFE水性分散液と鉛等の充填剤との共析物を得たのちに無給油軸受け等に加工する用途、PTFEのフィブリル化を利用した各種結着剤用途、プラスチックの燃焼時のたれ落ち防止のためにプラスチック粉末にPTFE分散液を添加する用途、その他従来PTFE分散液が利用されてきた多くの用途に使用できる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらは何ら本発明を限定するものではない。
なお、実施例は例1〜5、11、13、15、16であり、比較例は例6〜10、12、14、17である。
サンプルの作製方法および各項目の評価方法は以下に示す。
(A)水性分散液組成物の表面張力:白金線リングを用い輪環法により測定した。
(B)水性分散液組成物の粘度:ブルックフィールド型粘度計を用い、液温23℃で#1スピンドルを使用し60rpmでの粘度を測定した。
【0023】
(C)水性分散液組成物の消泡性:PTFE水性分散液組成物100mlを500ml容量のメスシリンダに入れ、ディフューザーストーンを用いて空気を吹き込み、泡高さが200mmになったのちに空気を止め、自然放置5分後の泡高さを測定し、消泡性の指標とした。
(D)PTFEフィルムの厚み:渦電流式膜厚計を使用して10点測定の平均値および標準偏差値を算出した。
(E)引張強度:ミクロダンベルで打ち抜き試験片を作製し、インストロン型引張り試験機を用い、23℃、チャック間距離35mm、引張速度100mm/minで引張り試験を行い、5点測定し、引張強度の平均値および標準偏差値を算出した。
引張強度のバラツキの大小は、以下の基準により判定した。
バラツキ大:標準偏差値>10(MN/m2)の場合
バラツキ小:標準偏差値<5(MN/m2)の場合
【0024】
(F)PTFEフィルム、ガラス繊維布などの製品の着色度:白紙上に置き、目視にて判定した。
(G)水性分散液組成物の沈降安定性:PTFE水性分散液組成物100mlを100ml容量のメスシリンダに入れ、1か月間静置し、上澄みの発生および底部沈降物の発生が顕著か否かで良否を判断した。
なお、各例で使用した界面活性剤(a)〜(g)は、表1のそれぞれに対応する符号の界面活性剤に相当する。界面活性剤の平均的分子構造を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
[例1]
乳化重合法により、PTFE微粒子の平均粒子径が0.25μmであり、PTFE濃度が28重量%である水性分散液を得た。これに非イオン系界面活性剤として、界面活性剤(a)を、PTFEに対し5重量%の割合で添加して一次安定化させたのち、電気濃縮法により濃縮を行い、上澄みを除去し、PTFE63重量%、界面活性剤(a)がPTFEに対して2.5重量%の濃縮液を得た。なお、界面活性剤(a)は炭素数13で分岐のある疎水基を有し、9個のオキシエチレン基および1個のオキシプロピレン基を平均的分子構造として有する非イオン系界面活性剤である。
【0027】
この濃縮液に、PTFEに対して界面活性剤(a)を2.5重量%添加し、水および200ppmのアンモニアを加え、PTFE濃度が60重量%、界面活性剤(a)がPTFEに対して5重量%である水性分散液組成物を得た。
この水性分散液組成物の23℃での粘度は19.7mPs、pH=9.4、表面張力は33.4(×10−3N/m)であり、泡消え試験での5分後の泡高さは10mmと低く、消泡性が非常に優れていた。
【0028】
次に、バーコーターを用いて縦20cm、横15cm、厚さ0.2mmのアルミニウム板上に、得られた水性分散液組成物を塗付し、120℃オーブン中で10分間乾燥し、380℃オーブン中で20分間焼成した後に自然冷却した。形成されたPTFE層の上にさらに、塗付、乾燥、焼成を行ないこれを2回繰り返し、計3層が重ね塗りされたPTFE層を形成させた。これを冷却後フィルム層のみ剥離し、厚さ約33.5μmのPTFEフィルムを作製した。
塗付時にはじきや「あばた」の発生はなく、フィルムの厚みにばらつきは少なかった。また、フィルムの引張り強度は33.5(MN/m2)と高く、充分な水準であった。また、得られたフィルムに黄色の着色はなくほぼ白色であった。水性分散液組成物中の非イオン系界面活性剤の種類、その濃度、水性分散液組成物の性状、水性分散液組成物の重ね塗り性、得られたフィルムの物性、水性分散液組成物の沈降安定性の評価結果を表2に示す。
【0029】
[例2]
例1と同じ界面活性剤(a)を用いて得たPTFE濃縮液に、PTFEに対して7.5重量%の界面活性剤(a)、水およびアンモニアを添加し、PTFE濃度が57重量%、界面活性剤(a)濃度がPTFEに対し10重量%の水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物中の界面活性剤の種類、その濃度、水性分散液組成物の性状および沈降安定性、フィルムの物性の結果を表2に示す。また、例1と同様にして、この水性分散液組成物の性状の測定結果を表2に示す。
次に、この水性分散液組成物を例1と同様に3層を重ね塗りし、厚さ37.2μmのPTFEフィルムを作製した。重ね塗り性、フィルムの物性、沈降安定性の評価結果などを表2に示す。
【0030】
[例3]
例1と同じ界面活性剤(a)を用いて得たPTFE濃縮液に対し、PTFEに対して界面活性剤(a)を0.5重量%追加し、PTFE濃度が60重量%、界面活性剤(a)がPTFEに対して3重量%の水性分散液組成物を得た。
例1と同様にして、この水性分散液組成物の性状、重ね塗り性、フィルムの物性、水性分散液組成物の沈降安定性の評価結果を表2に示す。
【0031】
[例4]
炭素数13で分岐のある疎水基を有し、8個のオキシエチレン基と1個のオキシプロピレン基を有する界面活性剤(b)を使用した以外は例1と同様にして、乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない、界面活性剤(b)がPTFEに対して2.4重量%含有される濃縮液を得た。これに界面活性剤(b)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(b)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物およびこれを用いて作製されたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0032】
[例5]
炭素数13の直鎖の疎水基を有し、かつ末端に2個のオキシプロピレン基を有する界面活性剤(c)を使用した以外は例1と同様にして乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない、界面活性剤(c)がPTFEに対して2.5重量%含有される濃縮液を得た。これに界面活性剤(c)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(c)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物の評価結果を表2に示す。この水性分散液組成物の表面張力はやや高めで、フィルムを作製する際に「あばた」発生の兆候がみられたが実質的な問題はなく、またフィルムの物性は良好であった。
【0033】
[例6]
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤(d)を使用した以外は例1と同様にして乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない、界面活性剤(d)がPTFEに対して2.3重量%含有される濃縮液を得た。これに界面活性剤(d)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(d)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。得られた水性分散液組成物の評価結果を表3に示す。この水性分散液組成物の消泡性は劣っていた。また、重ね塗りした際にはじきを生じ、得られたフィルムは黄色く着色していた。また、はじきおよび泡付着のために膜厚や強度のばらつきが大きかった。
【0034】
[例7]
界面活性剤(e)を使用した以外は例1と同様にして乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない、界面活性剤(e)がPTFEに対して2.8重量%含有される濃縮液を得た。これに界面活性剤(e)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(e)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物の評価結果を表3に示す。使用した界面活性剤は分子構造中に4個付加したオキシプロピレン基を有するために水性分散液組成物の表面張力は高く、重ね塗り時にはじきを生じた。またフィルムの膜厚のばらつきがあり、強度も低かった。また、沈降安定性も劣っていた。
【0035】
[例8]
界面活性剤(f)を使用した以外は例1と同様にして乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない界面活性剤(f)がPTFEに対して3.4重量%含有される濃縮液を得た。これに界面活性剤(f)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(f)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物の評価結果を表3に示す。この水性分散液組成物も表面張力が高く、重ね塗り時にはじきを生じた。
【0036】
[例9]
界面活性剤(g)を使用した以外は例1と同様にして乳化重合後のPTFE水性分散液の濃縮を行ない、界面活性剤(g)がPTFEに対して2.4重量%の濃縮液を得た。これに界面活性剤(g)、水およびアンモニアを加え、PTFE濃度60重量%、界面活性剤(g)がPTFEに対して5重量%含有される水性分散液組成物を得た。
得られた水性分散液組成物の評価結果を表3に示す。この水性分散液組成物の消泡性は例1〜5のものに比べて劣っていた。また塗付の際に泡が付着しやすく、また「あばた」の発生がみられた。作製したフィルムは例1〜5での結果と比較して膜厚や強度のばらつきが大きかった。
【0037】
[例10]
例5で得た濃縮液を用いて、界面活性剤(f)を2.5重量%添加した以外は例5と同様にして、PTFE濃度60重量%で界面活性剤(c)2.5重量%、界面活性剤(f)2.5重量%を含有する水性分散液組成物を得た。
この水性分散液組成物では、平均的分子構造中でオキシプロピレン基の数が本発明の範囲よりも多すぎるために重ね塗り時にはじきを生じ、膜厚ばらつきが大きく、強度も劣っていた。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
注:表2および表3における界面活性剤の濃度(重量%)は、PTFEに対する値である。
【0040】
[例11]
あらかじめカラ焼きして有機物を除去した1m2当り重量50g、厚み0.07mm、縦100mm、横50mmに切断したガラス繊維布に、例1で作製したPTFE水性分散液組成物を浸漬法により塗布し、120℃オーブン中で10分間乾燥後380℃で20分間焼成した。この塗布面にさらにPTFE水性分散液組成物を同じ方法で2層塗付し、PTFE含浸ガラス繊維布を作製した。塗付時にはじきは生ぜず、また作製されたガラス繊維布に着色は認められなかった。
【0041】
[例12]
例6で作製したPTFE水性分散液組成物を使用した以外は例11と同様にしてPTFE含浸ガラス繊維布を得た。重ね塗り時にはじきを生じ、また作製されたガラス繊維布に着色が認められた。
【0042】
[例13]
例1で作製したPTFE水性分散液組成物を用いて、ビスコースを加え紡出し、これを380℃で加熱焼成し延伸して直径約20μmで着色の少ないPTFE繊維を得た。
【0043】
[例14]
例6で作製したPTFE水性分散液組成物を用いる以外は例13と同様にしてPTFE繊維を作製したが、繊維は茶色く着色しており、外観的に商品価値が劣るものであった。
【0044】
[例15]
消石灰に対して例1で作製したPTFE水性分散液組成物を0.1重量%添加し、ヘンシェルミキサーで混合を行い、発塵性のほとんどない消石灰粉末を得た。
【0045】
[例16]
内容積2リッターの容器に、電解二酸化マンガン粉末1kg、炭素粉末20g、例1で作製したPTFE水性分散液組成物を16.7g、水を800g入れ、3枚撹拌羽根を有する撹拌機を用いて500rpmで10分間撹拌した。若干の泡立ちを生じたが、問題は無く、PTFEが繊維化した増粘したペーストが得られた。このペーストを極板であるステンレスメッシュに塗布し、乾燥して二酸化マンガン電極を作製した。
【0046】
[例17]
例6で作製したPTFE分散液組成物を使用した以外は例16と同様にして、撹拌機を用いて500rpmで混練したが、泡立ちが大きく、撹拌5分後に容器からあふれ出したため中断した。
【0047】
【発明の効果】
本発明のPTFE水性分散液組成物は、着色がなく、重ね塗り時にはじきが発生せず、厚みむらを生じにくく、また泡消えが良いために製品に欠陥を生じにくい。
Claims (3)
- 非イオン系界面活性剤が、一般式(1)におけるxが10〜16であり、Aがオキシエチレン基数7〜12およびオキシプロピレン基数1〜2のポリオキシアルキレン鎖である平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤である請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散液組成物。
- 非イオン系界面活性剤が、分子末端側に1〜2個のオキシプロピレン基を有する平均的分子構造を有する非イオン系界面活性剤である請求項1または2記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散液組成物。
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