JP3552459B2 - 殺菌洗浄水の生成方法及びその生成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔洗浄、肛門洗浄、膣洗浄、手指洗浄、植物の病害防除などに用いられる殺菌洗浄水の生成方法、及びこの殺菌洗浄水の生成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水を電気分解することによって殺菌洗浄水を生成し、この殺菌洗浄水を上記のような各種の洗浄に用いることが行われている。このような殺菌洗浄水を用いた口腔洗浄装置としては特開昭63−286148号公報や特開平05−76550号公報に記載されているようなものがあり、前者は水を電気分解することにより陽極で生成する酸性水をノズルから噴出するものであり、また後者は水を電気分解することにより生成するアルカリ水、酸性水をノズルから噴出するものであり、これら酸性水やアルカリ水を殺菌洗浄水として口腔内の洗浄・殺菌及び刺激を行うようにしたものである。
【0003】
また、上記のような殺菌洗浄水を用いた肛門等の局部洗浄装置としては、特開昭63−289133号公報、特開平01−125436号公報、特開平04−339934号公報、特開平05−156688号公報に記載されているようなものがある。いずれも基本構造として温水洗浄便座における水の通水経路中に電気分解機構を有し、陽極で得られる酸性水をノズルから噴出させることで肛門あるいは膣周辺部を殺菌洗浄することを特徴としている。このような場合、酸性水の洗浄・殺菌効果はその塩素成分に基づくものであり、各水のpH値によって塩素成分の形態が異なる。
【0004】
これら上記のいずれの公報においては、原水の水質の違いから生じる殺菌洗浄水のpHについてなんらの検討をおこなっておらず、殺菌洗浄水のpH値が4より下がると、口腔洗浄水として使用する際、ノズルからの噴出時に塩素成分が揮発してしまい、十分な洗浄・殺菌効果が出せない場合があった。また生成水のpH値が6以上になると塩素成分の化学的な存在形態が変わってしまい、洗浄・殺菌効果に対する殺菌洗浄水(酸性水)の殺菌効果が不十分になる場合があった。さらに、口腔洗浄用として用いる場合、pHが4未満では歯の表面が脱灰し悪影響を与えるため用いることができないものであった。
【0005】
また、室内空間中の殺菌を主な狙いとする噴霧用殺菌水の生成方法としては、特開平07−204653号公報に記載されているようなものがある。この殺菌水(殺菌洗浄水)は、ハロゲン化合物添加水溶液を電気分解した酸性水を噴霧用として用いる殺菌消毒水において、pHが5以下の範囲における揮発性有効塩素成分量を14%以下にしたものであるが、これは、図6に示すようにpHと塩素の存在比率の関係から一義的に決まる科学的な事項であり、また、この殺菌水が上記のようなpH範囲、特にpHが4以下である場合には、噴出後の塩素成分が揮発性の形態となりしかも分圧の関係もあって、噴霧対象物に到達したときに殺菌水の塩素成分が著しく低下し、対象物表面に付着した微生物を殺菌することができないという問題があった。また、金属の腐食性等も上記の範囲内のpHでは問題ないとはいえない。さらに製法的には、食塩等を添加した水を電解して、陽極水と陰極水の混合割合を弁体でもって制御し所定の水質を得るようにしたものであるが、この方法は電解前の水質、温度、電極状態により、生成された殺菌水の水質が大きく影響を受けるために、公報に記載されているようなpHが5以下の範囲における揮発性有効塩素成分量を14%以下にした殺菌水を得るのは困難であった。
【0006】
また、特開平04−94785号公報には、食塩添加水に塩酸を混合し、これを無隔膜電解し、得られた電解水を水で希釈してpHが3〜7、塩素濃度が1.0〜200ppmである殺菌水の製造方法が記載されている。この方法は、pHを調整するために無機酸の一つである塩酸を添加したものであるが、家庭内での使用を考慮すると塩酸の入手が難しく、安全性という面でも強酸であり危険な物質であり取り扱いが難しかった。また、塩酸だけの添加では、緩衝効果がないため、水質にもよるが、電解後のpHが大きく変化するという欠点もあり、生成される殺菌洗浄水の水質が安定しないという問題があった。
【0007】
また、特開平07−313982号公報には、電解殺菌水添加液として食塩などの塩化物と酢酸や乳酸などの食品添加用有機酸を添加したことを特徴とすることが記載されているが、先の特開平04−94785号公報から酸の種類を変更することは容易に推考され、また、無機酸添加による電解殺菌水の肌荒れの影響については、電解効率を上げるための食塩添加による塩素イオン量とpH調整のための塩酸添加による塩素イオン量の増加の割合を考えると、通常1000倍以上食塩添加による塩素イオン量の増加が多く、電解によって電解殺菌水添加液の塩素量が高くなり、肌荒れを生ずるとは考えにくい。また、有機酸だけの添加では、緩衝効果がないため、水質にもよるが、電解後のpHが大きく変化するという欠点もあり、生成される電解殺菌水添加液の水質が安定しないという問題があった。
【0008】
そこで本発明者らは、電気分解で生成する殺菌洗浄水を得るにおいて、電解前後でpH値がほとんど変化せず、電解後の塩素成分が次亜塩素酸として揮発性が少なくかつ殺菌効果が高い状態を維持するような添加剤の組み合わせを新たに発明し、以上のような従来例の欠点を解消することができるようにした。
図6にpHと水に含まれる塩素成分の存在比率との関係を示す(尚、図6は「浄水の技術」技報堂出版1986より抜粋した)。水中で塩素成分は三つの形態で存在しており、水のpHによってそれらの存在比が決定される。この三形態のうちCl2 は揮発性有効成分であるので水から容易に揮発する。従って、Cl2 を多量に含む水は、ノズル等から噴出されて噴霧対象物に到達する前にCl2 が大気中に揮発してしまい洗浄・殺菌効果が低下するので、殺菌洗浄水として用いるのには不向きである。
【0009】
図7に残りの二形態の塩素成分が大腸菌群を殺菌するのに要する時間を示す(尚、図7は「浄水の技術」技報堂出版1986より抜粋した)。図7から明らかなように、HOClはOCl− よりも非常に高い殺菌力を有することが判る。例えば、水の塩素濃度が0.1mg/リットルの場合、HOClでは約1.5分で99%の大腸菌群を殺菌することができるが、OCl− では120分(HOClの80倍)となる。尚、NH2 Clでは520分(HOClの350倍)となる。つまり、図6、7から、pHを4〜6にしてHOClを多く含むようにした水が殺菌洗浄水として好適であるといえる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、電解する前の水の水質によらず殺菌洗浄水のpHを4〜6の範囲にすることによって、洗浄・殺菌効果の大きい殺菌洗浄水を得ることができる殺菌洗浄水の生成方法及びその生成装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の殺菌洗浄水の生成方法は、水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩の添加量を調整するようにして、水に無機塩化物と2×10−3モル/リットル以上の有機酸と1×10−3モル/リットル以上の有機酸塩を添加し、この水を電気分解することを特徴とするものである。
また本発明の請求項2に記載の殺菌洗浄水の生成方法は、請求項1の構成に加えて、有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ用いることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の請求項3に記載の殺菌洗浄水の生成装置は、無機塩化物と2×10−3モル/リットル以上の有機酸と1×10−3モル/リットル以上の有機酸塩が添加された水を電気分解する電解手段1と、水の溶存炭酸量を測定する測定電極2と、測定電極2で測定された水の溶存炭酸量から求められる水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩を水に供給する供給部4とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の請求項4に記載の殺菌洗浄水の生成装置は、請求項3の構成に加えて、有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ添加された水を用いて成ることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に口腔洗浄器5を備えた殺菌洗浄水の生成装置Aを示す。この生成装置Aは、電解槽6内に一対の電極7、8を設けて形成される電解手段1を、基台9の上面に設けて形成されるものであって、基台9には電解電圧供給部10が内蔵されている。上記電極7、8としては白金(Pt)などの不溶性の金属材料で形成されるものを用いるのが好ましい。口腔洗浄器5は基台9の上面に着脱自在に設けられており、本体部11とノズル部12とで構成されている。本体部11には貯水タンク13とポンプ14と送水管15が内蔵されており、また基台9には口腔洗浄器5の充電用の電源部16が内蔵されている。尚、電極7、8の間に電解槽6を二つに仕切る隔膜を設けるようにしてもよい。
【0015】
このような装置を用いて殺菌洗浄水を生成するにあたっては、まず、電解槽6に水道水などの水を供給し、この水に無機塩化物と有機酸と有機酸塩を添加して溶解させる。あるいは水道水などの水に無機塩化物と有機酸と有機酸塩を添加して溶解させた後、この水を電解槽6に供給するようにしてもよい。無機塩化物としては塩化ナトリウム(NaCl)などを用いることができ、その添加量は1×10−3〜0.2モル/リットル(1リットルの水に対するモル量)に設定することができる。無機塩化物の添加量が1×10−3モル/リットル未満であれば、洗浄・殺菌効果の高い殺菌洗浄水を得ることができない恐れがあり、また無機塩化物の添加量が0.2モル/リットルを超えると、過度の塩素発生及び腐食という問題が生じる恐れがある。
【0016】
上記有機酸としてはクエン酸、フタル酸、酢酸、リン酸などを単独あるいは複数種組み合わせて用いることができ、その添加量は2×10−3モル/リットル以上に設定することができる。また上記有機酸塩としてはクエン酸塩、フタル酸塩、酢酸塩、リン酸塩などを単独あるいは複数種組み合わせて用いることができ、特に、これらのナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、マグネシウム(Mg)塩を好適に用いることができ、その添加量は1×10−3モル/リットル以上に設定することができる。
【0017】
有機酸の添加量が2×10−3モル/リットル未満、あるいは有機酸塩の添加量が1×10−3モル/リットル未満であれば、電解前の水の水質によってpHが4〜6の殺菌洗浄水を得ることができなくなる。表1に酢酸及び酢酸ナトリウムの添加量と河川水あるいは地下水のpHとの関係を示すが、酢酸の添加量が2×10−3モル/リットル未満のもの、あるいは酢酸ナトリウムの添加量が1×10−3モル/リットル未満のものは、pHが4〜6の範囲から逸脱しているのが判る。このことから有機酸の添加量を2×10−3モル/リットル以上で、且つ有機酸塩の添加量を1×10−3モル/リットル以上に設定するのである。
【0018】
【表1】
【0019】
また有機酸及び有機酸塩としては、酢酸及び酢酸塩(酢酸ナトリウム)を用いるのが最も好ましい。有機酸及び有機酸塩としてクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを用いると、図2のように、殺菌洗浄水のpHは生成直後から一定の値を保つが、殺菌洗浄水の有効塩素濃度は経時的に減少する。これは発生した塩素成分がクエン酸と反応して消滅するためであり、殺菌洗浄水の洗浄・殺菌効果が低下する恐れがある。一方、有機酸及び有機酸塩として酢酸及び酢酸ナトリウムを用いると、図2のように、殺菌洗浄水のpH及び有効塩素濃度は生成直後から一定の高い値を保つので、殺菌洗浄水の洗浄・殺菌効果が経時的に低下しないようにすることができる。
【0020】
尚、有機酸の添加量の上限は、水への溶解量の上限により自ずと設定されるが、1モル/リットルである。また有機酸塩の添加量の上限は、水への溶解量の上限により自ずと設定されるが、1モル/リットルである。さらに有機酸と有機酸塩の添加比率は、有機酸:有機酸塩=1:10〜10:1であることが好ましい。
【0021】
次に、電極7、8間に電解電圧供給部10から電圧を印加し、電極槽6内の無機塩化物と有機酸と有機酸塩が添加された水を電気分解(電解処理)して殺菌洗浄水を生成する。このときの電極間電圧は1〜50V、電解時間は1〜30分間にそれぞれ設定することができる。印加電圧が1V未満であったり印加時間が1分間未満であったりすると、洗浄・殺菌効果の高い殺菌洗浄水を得ることができない恐れがあり、また、印加電圧が50Vを超えたり印加時間が30分間を超えたりしても、生成される殺菌洗浄水の洗浄・殺菌効果は余り高くならず、消費電力が無駄になる恐れがある。
【0022】
このように本発明では、水に無機塩化物を添加し、さらにpH調整剤として有機酸と有機酸塩を水に添加するので、有機酸と有機酸塩の緩衝作用によって、無機塩化物の添加の前後及び電気分解の前後で、水のpHをあまり変化させないようにすることができ(pHの変化は0.3程度で、0.3以内であるのが好ましい)、電解する前の水の水質によらず殺菌洗浄水のpHを塩素成分の揮発が少ない4〜6の範囲にすることができるものであり、洗浄・殺菌効果の大きい殺菌洗浄水を得ることができるものである。
【0023】
次に、本発明の具体例を示す。pH=7.0の350ミリリットルの地下水に無機塩化物として1.2gのNaClと、有機酸として3×10−3モル/リットルの酢酸と、有機酸塩として1.5×10−3モル/リットルの酢酸ナトリウムと添加して溶解し、この水に電極間電圧7V、電解時間1分間の条件で印加して電気分解を行って殺菌洗浄水を得た。比較のために、pH=7.0の350ミリリットルの地下水に無機塩化物として1.2gのNaClを添加して上記と同条件で電気分解を行って殺菌洗浄水を得た(比較例)。表2のように、具体例では電気分解の前後で大きなpHの変化は見られないが、比較例では電気分解でpHが上昇してアルカリ性となった。
【0024】
【表2】
【0025】
次に、炭酸濃度の異なる水道水1〜5を用意し、上記具体例と同様にして殺菌洗浄水を生成した。表3から判るように、水道水1〜5の各pHは電気分解後であっても4〜6の範囲内に収まり、洗浄・殺菌効果の大きくなるものである。日本の水道水は炭酸濃度が0〜80ppmのものが99%であるので、本発明を用いると、日本の水道水のほとんどで洗浄・殺菌効果の大きい殺菌洗浄水を生成することができる。
【0026】
【表3】
【0027】
次に、上記口腔洗浄器5を用いた口腔洗浄について説明する。まず、上述のようにして生成された殺菌洗浄水を電解槽6から口腔洗浄器5の貯水タンク13に移す。次に、本体部11に設けたスイッチ17をオンにして電源部16で予め充電された本体部11からポンプ14に電気を供給し、ポンプ14を作動させる。そしてこのポンプ14の作動によって貯水タンク13内の殺菌洗浄水を送水管15を通じてノズル部12に供給し、ノズル部12の先端の噴射部18から殺菌洗浄水を口腔へと噴射(噴霧)する。このようにして口腔洗浄器5を用いて殺菌洗浄水で口腔の洗浄を行うものである。
【0028】
口腔には乳酸菌、レンサ球菌、フソバクテリウム族などの細菌、酵母菌が非常に多量に存在し、その数は108 個にも及ぶ。これらの細菌や酵母菌は歯の隣接部、歯冠と歯根の境目の歯頚部に生成した歯垢や歯石に含まれる有機物を分解するものであり、歯周病や歯槽膿漏や虫歯などの原因となっている。そこで本発明で生成された殺菌洗浄水で口腔を洗浄すると、上記のような細菌や酵母菌を死滅させることができ、歯周病や歯槽膿漏や虫歯などを予防することができる。
【0029】
次に、上記具体例を用いて本発明で生成された殺菌洗浄水の口腔における効果を確認する。まず、一般的な口腔の細菌、酵母菌であるStaphilococcus aureus,Candida albicans,Staphilococcus mutas,Fusobacterium nucleatum をそれぞれ単独で約104 個/ミリリットル含む試験水1〜4を1ミリリットル用意し、これに上記具体例で生成された殺菌洗浄水を9ミリリットルずつ添加した。また、比較のため滅菌水も具体例と同様にして試験水1〜4に添加した。尚、滅菌水は、オートクレーブ(滅菌装置)を用いて、大気圧+1気圧、120℃、20分間の条件で蒸留水を滅菌した水であって、菌数が0の水である。この結果、表4から明らかなように、具体例の殺菌洗浄水が添加された試験水1〜4では、添加直後から細菌や酵母菌の菌数がほとんど0個となり、細菌や酵母菌を死滅させることができたが、滅菌水では細菌や酵母菌を死滅させることができなかった。また、実際に具体例の殺菌洗浄水で口腔洗浄を行った後、殺菌洗浄水に含まれる菌数を測定してみるとほとんど0個となったが、滅菌水では約106 個/ミリリットルとなった。
【0030】
【表4】
【0031】
図3に口腔洗浄器5を備えた殺菌洗浄水の生成装置Aの他例を示す。この生成装置Aは、水の溶存炭酸量を測定する炭酸ガスの測定電極2を電解槽6内に設け、測定電極2で測定された溶存炭酸量から水の溶存炭酸濃度を求めて水への有機酸及び有機酸塩の添加量を決定する制御部3を基台9内に設け、制御部3で決定された添加量の有機酸及び有機酸塩を水に供給する供給部4を基台9の上面に設けて形成されるものである。そして必要とする(生成したい)殺菌洗浄水のpH値を制御部3に入力すると、図4のグラフで示される関係に基づいて有機酸及び有機酸塩の添加量が決定され、供給部4の供給口28から水に有機酸及び有機酸塩が添加されるようになっている。例えば、炭酸濃度20ppmの水を用いてpH=5の殺菌洗浄水を得るためには、有機酸としての酢酸を3×10−3モル/リットル、有機酸塩としての酢酸ナトリウムを4.8×10−3モル/リットルそれぞれ添加する必要があるが、これらの添加量は制御部3で自動的に決定され、また、有機酸及び有機酸塩の添加は供給部4から自動的に行われる。
【0032】
このように水の溶存炭酸量を測定する測定電極2と、測定電極2で測定された水の溶存炭酸量から求められる水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩を水に供給する供給部4とを備えているので、所望のpHの殺菌洗浄水を容易に正確に生成することができるものである。
図5(a)(b)に他の殺菌洗浄水の生成装置Aを示す。この生成装置Aは図5(a)のように便座装置20に設けられているものであって、便座21や蓋22が取り付けられる便座装置20の保持部23の下側に生成装置Aが取り付けられている。またこの生成装置Aは図5(b)のように、電解槽6内に一対の電極7、8を設けて電解手段1を形成し、電解槽6の一側面に添加装置24を、他側面にポンプ部25をそれぞれ設けて形成されるものである。尚、電極7、8の間に電解槽6を二つに仕切る隔膜を設けるようにしてもよい。
【0033】
このような装置を用いて殺菌洗浄水を生成するにあたっては、まず、電解槽6に水道水などの水を供給し、この水に添加装置24から供給管30を通じて無機塩化物と有機酸と有機酸塩を添加して溶解させる。あるいは電解槽6に添加装置24から供給管30を通じて無機塩化物と有機酸と有機酸塩を供給した後、水道水などの水を電解槽6に供給して無機塩化物と有機酸と有機酸塩を溶解させるようにしてもよい。電解槽6に供給する水としては、タンク27に貯水された便器の洗浄用の水を用いるようにしてもよい。次に、電極7、8間に保持部23に内蔵される電解電圧供給部から電圧を印加し、電極槽6内の無機塩化物と有機酸と有機酸塩が添加された水を電気分解(電解処理)して殺菌洗浄水を生成する。尚、無機塩化物と有機酸と有機酸塩の各添加量や電極間電圧や電解時間は上記と同様に設定することができる。
【0034】
このように生成された殺菌洗浄水はポンプ部25内に設けられたポンプ14の作動によって電解槽6から肛門部洗浄ノズル26と膣部洗浄ノズル29にそれぞれ供給され、各ノズル26、29から殺菌洗浄水を肛門部や膣部へと噴射される。こうして殺菌洗浄水で肛門部や膣部の洗浄を行うものである。
次に、上記具体例を用いて本発明で生成された殺菌洗浄水の肛門部や膣部における効果を確認する。まず、一般的な肛門部や膣部の細菌、酵母菌であるEscherichia coli,Enterococcus faecalis,Pseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureus をそれぞれ単独で約108 個/ミリリットル含む試験水5〜8を0.1ミリリットル用意し、これに上記具体例で生成された殺菌洗浄水を10ミリリットルずつ添加した。また、滅菌水も具体例と同様にして試験水5〜8に添加した。この結果、表5から明らかなように、具体例の殺菌洗浄水が添加された試験水5〜8では、添加直後から細菌や酵母菌の菌数がほとんど0個となり、細菌や酵母菌を死滅させることができたが、滅菌水では細菌や酵母菌を死滅させることができなかった。また、実際に具体例の殺菌洗浄水で肛門部周辺の洗浄を行った後、肛門部周辺の菌数を測定してみると約10個/cm2 となったが、滅菌水では約104 個/cm2 となった。
【0035】
【表5】
【0036】
肛門部周辺や膣部周辺には大腸菌、レンサ球菌、コリネバクテリウム、乳酸菌、カンジダなどの細菌、酵母菌が非常に多量に存在し、これらの細菌や酵母菌は炎症や化膿など肛門部疾患や膣部疾患の原因の一つとなっている。そこで本発明で生成された殺菌洗浄水で肛門部周辺や膣部周辺を洗浄すると、上記のような細菌や酵母菌を死滅させることができ、肛門部疾患や膣部疾患などを予防することができる。
【0037】
上記のような生成装置Aで得られる殺菌洗浄水は手指の洗浄に用いることができ、その効果を上記具体例を用いて確認する。まず、一般的な手や指の細菌、酵母菌であるEscherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureus をそれぞれ単独で約108 個/ミリリットル含む試験水9〜11を0.1ミリリットル用意し、これに上記具体例で生成された殺菌洗浄水を10ミリリットルずつ添加した。また、上記の滅菌水も具体例と同様にして試験水9〜11に添加した。この結果、表6から明らかなように、具体例の殺菌洗浄水が添加された試験水9〜11では、添加直後から細菌や酵母菌の菌数がほとんど0個となり、細菌や酵母菌を死滅させることができたが、滅菌水では細菌や酵母菌を死滅させることができなかった。また、実際に具体例の殺菌洗浄水で手指の洗浄を行った後、グローブジュース法により手指表面の菌数を測定してみると約10個/cm2 となったが、滅菌水では約106 個/cm2 となった。
【0038】
【表6】
【0039】
手や指にはブドウ球菌、大腸菌、コリネバクテリウムなどの細菌、酵母菌が105 〜106 個/cm2 存在し、これらの細菌や酵母菌は飲食物と一緒に体内に入り、その菌が病原性の場合、発病を引き起こすこともある。そこで本発明で生成された殺菌洗浄水で手指を洗浄すると、上記のような細菌や酵母菌を死滅させることができ、菌による発病を予防することができる。
【0040】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に記載の発明は、水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩の添加量を調整するようにして、水に無機塩化物と2×10−3モル/リットル以上の有機酸と1×10−3モル/リットル以上の有機酸塩を添加し、この水を電気分解するので、有機酸と有機酸塩の緩衝作用によって、無機塩化物の添加の前後及び電気分解の前後で、水のpHの変化を小さくすることができ、電解する前の水の水質によらず殺菌洗浄水のpHを4〜6の範囲にすることができるものであり、洗浄・殺菌効果の大きい殺菌洗浄水を得ることができるものである。また、水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩の添加量を調整するので、所望のpHの殺菌洗浄水を容易に正確に生成することができるものである。
【0041】
また本発明の請求項2に記載の発明は、有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ用いるので、殺菌洗浄水がpH及び有効塩素濃度を生成直後から一定の高い値に保つようにすることができ、殺菌洗浄水の洗浄・殺菌効果が経時的に低下しないようにすることができるものである。
【0042】
また本発明の請求項3に記載の発明は、無機塩化物と2×10−3モル/リットル以上の有機酸と1×10−3モル/リットル以上の有機酸塩が添加された水を電気分解する電解手段と、水の溶存炭酸量を測定する測定電極と、測定電極で測定された水の溶存炭酸量から求められる水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩を水に供給する供給部とを備えるので、有機酸と有機酸塩の緩衝作用によって、無機塩化物の添加の前後及び電解手段による電気分解の前後で、水のpHの変化を小さくすることができ、電解する前の水の水質によらず殺菌洗浄水のpHを4〜6の範囲にすることができるものであり、洗浄・殺菌効果の大きい殺菌洗浄水を得ることができるものである。また、水の溶存炭酸量を測定する測定電極と、測定電極で測定された水の溶存炭酸量から求められる水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩を水に供給する供給部とを備えたので、所望のpHの殺菌洗浄水を容易に正確に生成することができるものである。
【0043】
また本発明の請求項4に記載の発明は、有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ添加された水を用いたので、pH及び有効塩素濃度を生成直後から一定の高い値に保つような殺菌洗浄水を得ることができ、殺菌洗浄水の洗浄・殺菌効果が経時的に低下
しないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例を示す概略図である。
【図2】同上の殺菌洗浄水の塩素濃度とpHの経時変化を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図4】同上の殺菌洗浄水の炭酸濃度と酢酸ナトリウム濃度とpHの関係を示すグラフである。
【図5】(a)は同上の他の実施の形態を示す斜視図、(b)は概略図である。
【図6】殺菌洗浄水のpHと有効塩素存在百分率の関係を示すグラフである。
【図7】殺菌洗浄水の殺菌に要する時間と塩素濃度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 電解手段
2 測定電極
4 供給部
A 生成装置
Claims (4)
- 水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩の添加量を調整するようにして、水に無機塩化物と2×10−3モル/リットル以上の有機酸と1×10−3モル/リットル以上の有機酸塩を添加し、この水を電気分解することを特徴とする殺菌洗浄水の生成方法。
- 有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ用いることを特徴とする請求項1に記載の殺菌洗浄水の生成方法。
- 無機塩化物と2×10 −3 モル/リットル以上の有機酸と1×10 −3 モル/リットル以上の有機酸塩が添加された水を電気分解する電解手段と、水の溶存炭酸量を測定する測定電極と、測定電極で測定された水の溶存炭酸量から求められる水の溶存炭酸濃度に基づいて有機酸と有機酸塩を水に供給する供給部とを備えて成ることを特徴とする殺菌洗浄水の生成装置。
- 有機酸として酢酸を、有機酸塩として酢酸塩をそれぞれ添加された水を用いて成ることを特徴とする請求項3に記載の殺菌洗浄水の生成装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12683497A JP3552459B2 (ja) | 1997-05-16 | 1997-05-16 | 殺菌洗浄水の生成方法及びその生成装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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