JP3552355B2 - 縦型レーザ回折式粒度分布測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少量かつ比較的高濃度のサンプルの粒度測定に用いられる縦型レーザ回折式粒度分布測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、縦型レーザ回折式粒度分布測定装置では、図2のように開放型のセル23を用いて、このセル23内に、サンプル(試料)を入れて水平に置き、上方に配置されたレーザ光源21からレーザ光を発射し、コリメータ22によって所定断面積を持つ平行光束とした後、セル23に直角に照射して、下方に出力される回折/散乱光を集光レンズ25で集光し、リングデテクタ等の前方回折/散乱光センサ26によって検出し、サンプルの粒度分布を測定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の構成では集光レンズ25の上に埃や塵が付着または堆積するために、これらの埃等に透過光が入射することによって散乱光が生じ、この散乱光(迷光)と、セル23内のサンプル粒子群から生じる回折/散乱光との強度差が大きくないために、前方回折/散乱光センサ26で検出される信号からは正確な粒度分布が測定できない。そこで、透明カバー24を集光レンズ25の上方に配置して集光レンズ25に埃等が付着・堆積しないようにするようにしているが、この透明カバーの表面の傷等に透過光が入射することによって生ずる散乱光(迷光)と、透明カバーに付着・堆積した埃に透過光が入射することによって生ずる散乱光(迷光)とによって、検出信号自体に誤差信号が加わり、この誤差信号は上記同様サンプル粒子群から生じる回折/散乱光による検出信号と強度差が大きくないので、やはり正確な粒度分布測定ができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために創案されたもので、集光レンズに対する透明カバー等の埃付着防止具を用いなくとも、埃や塵による光の散乱を防止し、正確な粒度分布が測定できる縦型レーザ回折式粒度分布測定装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の縦型レーザ回折式粒度分布測定装置は、レーザ光を照射するレーザ光源と、前記レーザ光源の上方に配置され散乱光の出射部分には壁面のない開放型のサンプルセルと、前記サンプルセルの上側に配置された集光レンズと、前記集光レンズの上側にサンプルセル内の粒子群による照射前方の回折/散乱光の強度分布を測定するセンサとを備えたことを特徴としている。
【0006】
レーザ光源を最下方に位置させ、開放型のサンプルセル、集光レンズ、光センサの順に上方へ配置しているので、集光レンズの設置位置はセルの位置より高くなり、セルの着脱のときに装置ケースの一部を開放することに伴う埃や塵等が付着・堆積しにくい。また、通常光センサの面積は集光レンズより大きいので、光センサ自体が集光レンズへの上方からの埃・塵を遮断する防護カバーとしての役割を果たすので、特別に防護カバーを設ける必要がなく、埃等による散乱を防止することができ、正確な粒度分布を測定することができる。さらに、開放型のサンプルセルは懸濁液の上方には容器の壁が存在しないので、サンプル粒子群の回折/散乱光が再度散乱を生じることもない。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は本発明による縦型レーザ回折式粒度分布測定装置の構成を示している。
1はレーザ光源、2はレーザ光源1からの出力光を所定の断面積を持つ平行光束にするコリメータ、3は透明カバー、4は上面が開放され、サンプル(試料)粒子を分散させた懸濁液が入った開放型セル、5は集光レンズ、6はリングセンサまたはアレイセンサ等からなる前方回折/散乱光センサ、7は側方散乱光センサ、8は後方散乱光センサ、9は各光センサで検出された信号を用いてサンプルの粒度分布を計算等するためのコンピュータである。
【0009】
レーザ光源1が最下方に配置され、その上に、コリメータ2、透明カバー3、セル4が順次配置されている。
【0010】
開放型セル4は水平に置かれており、照射レーザ光の進行方向、開放型セル4の上方には集光レンズ5が、その後方には回折/散乱光センサ6が配置されている。
【0011】
また、開放型セル4の周囲には照射レーザ光の光軸と約90度の角度をなす方向に側方散乱光センサ7が、セル4後方には後方散乱光センサ8が配置されている。
【0012】
レーザ光源1から出射されたレーザ光はコリメータ2によって所定断面積を持つ平行光束となり、開放型セル4に照射される。セル4にはサンプル粒子を分散させた懸濁液が入っているので、照射されたレーザ光はサンプル粒子によって、散乱ないしは回折される。
【0013】
この回折/散乱光は集光レンズ5を経て前方回折/散乱光センサ6の受光面上に回折/散乱像を結ぶ。また、大きな散乱角を持つ散乱光の強度は、側方散乱光センサ7または後方散乱光センサ8で測定される。
【0014】
前方回折/散乱光センサ6の出力と側方散乱光センサ7、後方散乱光センサ8の出力はそれぞれ増幅器およびA/D変換器等(いずれも図示せず)を介してコンピュータ9に取り込まれ、コンピュータ9は各光強度データ、すなわち回折/散乱光強度分布データを用いて、以下に示すアルゴリズムによって試料粒子の粒度分布を算出する。
【0015】
光強度分布パターンは、粒子の大きさによって変化する。実際のサンプルには、大きさの異なる粒子が混在するため、粒子群から生じる光強度分布パターンは、それぞれの粒子からの回折/散乱光の重ね合わせとなる。
【0016】
これを、マトリクス(行列)で表現すると、
s=Aq ・・・・ (1)
となる。ただし、
【0017】
【式1】
【0018】
【式2】
sは光強度分布ベクトルである。その要素si(i=1,2,・・・m)は、リングディテクタの各素子及び側方散乱光センサによって検出される入射光量である。qは粒度分布(頻度分布%)ベクトルである。粒度分布範囲を有限とし、この範囲内をn分割して、最大値をd1 、最小値をdn+1 とする。それぞれの分割区間[dj ,dj+1 ]を1つの粒子径Xj で代表させる。qの要素qj (j=1,2,……n)は粒子径Xj に対応する粒子量である。
【0019】
通常は、
となるように正規化(ノルマライズ)を行っている。
【0020】
Aは、粒度分布(ベクトル)qを、光強度分布(ベクトル)sに、変換する係数行列である。Aの要素のaij(i=1,2,・・・m, j=1,2,・・・n)の物理的意味は、粒子径xjの単位粒子量の粒子群によって回折/散乱した光のi番目の素子に対する入射光量である。
【0021】
ai,j の数値は、理論的に計算することができる。これには、粒子径が光源となるレーザ光の波長に比べて十分に大きい場合には、Fraunhofer回折理論を用いる。しかし、粒子径がレーザ光の波長と同程度か、それより小さいサブミクロンの領域では、Mie 散乱理論を用いる必要がある。Fraunhofer回折理論は、前方微小角散乱において、粒子径が波長に比べて十分大きな場合に有効なMie 散乱理論の優れた近似であると考えることができる。
【0022】
Mie 散乱理論を用いて、係数行列Aの要素を計算するためには、粒子及びそれを分散させる媒液の屈折率を設定する必要がある。
【0023】
さて、粒度分布(ベクトル)の最小自乗解を求める式を導出すると、
q=(AT A)−1AT s ・・・・ (5)
(5)式が得られる。ただし、AT はAの転置行列であり、( )−1は逆行列を示す。
【0024】
(5)式の右辺において、光強度分布(ベクトル)sの各要素は、前方回折/散乱光センサ及び側方散乱光センサ、後方散乱光センサで検出される数値である。また、係数行列Aは、Fraunhofer回折理論あるいはMie 散乱理論を用いて、予め計算しておくことができる。したがって、それらの既知のデータを用いて(5)式の計算を実行すれば、粒度分布(ベクトル)qが求まることは明らかである。
なお、サブミクロン粒子の粒度分布を測定するためには、測定対象となる粒子及びそれを分散させる媒液の屈折率を設定する必要がある。
【0025】
以上のようにして、セル内の懸濁液のサブミクロン領域を含む広範囲な粒度分布を求めることができる。
【0026】
このように、レーザ光源を最下方にし、前方回折/散乱光センサを最上方に位置するように構成することで、集光レンズの配置位置がセルの位置より高くなり、セル着脱時に装置ケースの一部を開放することに伴う埃や塵の付着・堆積する可能性が低い。
【0027】
また、前方回折/散乱光センサは幅広い領域の光を検出するために、通常、集光レンズよりも面積が広くなっているので、集光レンズ全体を覆う形となり、集光レンズの上方からの埃・塵の侵入を防ぐので、埃や塵の付着・堆積するのを防止できる。
【0028】
透明カバー3は、レーザ光源1に対する埃を防ぎ、セル4が破損した場合にセル内の懸濁液がコリメータ2やレーザ光源1にかからないように設けられているが、この透明カバー3の表面の傷等による散乱光(迷光)、透明カバーに付着した埃による散乱光(迷光)は、コリメータ2より出力され、透明カバー3を透過して直進する光の強度に比べれば、非常に小さい。
【0029】
したがって、これらの迷光がセル内のサンプル粒子群に入射して誤差要因となる回折/散乱光を発したとしても、直進する光による回折/散乱光に比べればほとんど問題にならない。
【0030】
また、開放型のセル4を用いているが、従来法と異なり、セル4の容器の部分(斜線部分)に直進光が先に通過した後、セル内の懸濁液に到達するようになっているので、上述したように容器部分による散乱光(迷光)は、直進光に比べて非常に小さいため、正確なサンプル粒子群の回折/散乱光を検出することができる。さらに、懸濁液の上方には容器の壁が存在しないので、サンプル粒子群の回折/散乱光が再度散乱を生じることもない。
【0031】
一方、従来法では、直進光が先にセル内の懸濁液に入射するので、これら直進光がサンプル粒子群によって回折/散乱光となった後にセル容器の部分でこの回折/散乱光がさらに回折/散乱を引き起こすので、これによる迷光とサンプル粒子群によって起こされる回折/散乱光との強度差は大きくなく誤差の原因となる。
【0032】
なお、上述の実施形態のようにレーザ光軸を鉛直方向とする場合だけではなく、レーザ光源を下方に設置し、セルや集光レンズを上方に配置した構成であれば、レーザ光軸が鉛直方向よりも傾いていても(±約45度の範囲)同様な効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の縦型レーザ回折式粒度分布測定装置によれば、レーザ光源を下方に、集光レンズ、回折/散乱光センサを上方に配置するようにしているので、集光レンズに埃を避けるカバーを設ける必要がなく、また、埃や塵が集光レンズに付着・堆積しにくいので、極めて正確なサンプル粒子群の回折/散乱光の検出とそのデータに基づく粒度分布測定を行うことができる。さらに、開放型サンプルセルを使用すると懸濁液の上方には容器の壁が存在しないので、サンプル粒子群の回折/散乱光がサンプルセルの上部壁面によって再度散乱されることもなく、測定の誤差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の縦型レーザ回折式粒度分布測定装置を示す図である。
【図2】従来の縦型レーザ回折式粒度分布測定装置を示す図である。
Claims (1)
- レーザ光を照射するレーザ光源と、前記レーザ光源の上方に配置され散乱光の出射部分には壁面のない開放型のサンプルセルと、前記サンプルセルの上側に配置された集光レンズと、前記集光レンズの上側にサンプルセル内の粒子群による照射前方の回折/散乱光の強度分布を測定するセンサとを備えたことを特徴とする縦型レーザ回折式粒度分布測定装置。
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