JP3552303B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は自動変速機の油圧制御装置、特に複数の摩擦要素の油圧室に供給される作動圧の生成、調整ないし排出をデューティソレノイドバルブなどの油圧制御手段を用いて行うようにした油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと変速歯車機構とを組み合わせ、この変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキなどの複数の摩擦要素の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に自動的に変速するように構成したもので、この種の自動変速機には、上記各摩擦要素に設けられた油圧室に対する作動圧の給排を制御する油圧制御回路が設けられる。
【0003】
この油圧制御回路には、例えばオイルポンプの吐出圧を所定のライン圧に調整するレギュレータバルブ、手動操作によってレンジを切り換えるマニュアルバルブ、運転状態に応じて作動して上記各油圧室に対する作動圧の供給状態を切り換えることにより、各摩擦要素を選択的に作動させる複数のシフトバルブなどが備えられるが、近年においては、上記各油圧室に供給される作動圧の生成、調整、排出などの制御をデューティソレノイドバルブなどの油圧制御手段を用いて電気的に行うことが試みられている。
【0004】
このような油圧制御回路の例として、例えば特開平1−299351号公報には、1個のデューティソレノイドバルブにより、3,4速で締結されるC−0クラッチと2,4速で締結されるB−1ブレーキの作動圧を制御するようにしたものが開示されている。これによれば、例えば4−3変速時にはデューティソレノイドバルブによって生成した作動圧をC−0クラッチとB−1ブレーキとに供給するだけで3速が達成されることから、部品点数が節約されて油圧制御回路が簡素化されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に開示された油圧制御回路においては、C−1クラッチの油圧室とB−1ブレーキのリリース室から作動圧を排圧する3−4変速時に次のような問題を発生する可能性がある。
【0006】
つまり、デューティソレノイドバルブの制御によりC−1クラッチの油圧室からは速やかに作動圧が減圧されることになるが、B−1ブレーキのアプライ室にも油圧が供給されていることから、この圧力に影響されてリリース室の圧力低下が遅れることになる。これにより、C−1クラッチの解放動作に対してB−1ブレーキが遅れて締結されることになって、変速段が一時的にニュートラル状態になってエンジンの空吹き現象が発生する可能性がある。
【0007】
これに対しては、C−1クラッチの油圧室及びB−1ブレーキのリリース室からデューティソレノイドバルブなどの油圧制御手段に通じる油路の集合部分にオリフィスを設置することが考えられるが、そうすると今度は4−3変速時の応答性が悪化することになるのである。
【0008】
この発明は、シフトダウン変速時に油圧が供給される複数の摩擦要素の油圧室に対して、これらの油圧室の作動圧を油圧制御手段としての単一のデューティソレノイドバルブが制御するようにした自動変速機における上記の問題に対処するもので、シフトダウン変速時の応答性を損なうことなく、上記複数の摩擦要素の油圧室から作動圧を排圧するシフトアップ変速時に、これらの油圧室から作動圧を同期して排圧できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明は、所定のシフトダウン変速時に油圧が供給される複数の摩擦要素を有すると共に、これらの摩擦要素の油圧室の作動圧を制御する単一のデューティソレノイドバルブが備えられた自動変速機の油圧制御装置において、上記複数の摩擦要素における油圧室から作動圧を排圧するシフトアップ変速時に作動油の通過を制限する絞り手段が、これらの摩擦要素と上記デューティソレノイドバルブとの間に共通して設けられていると共に、上記所定のシフトダウン変速時において上記デューティソレノイドバルブから出力された油圧を上記絞り手段の影響を受けずに複数の摩擦要素に供給する油圧供給手段が設けられており、かつ、該油圧供給手段は、上記絞り手段をバイパスして設けられたバイパス油路を開通または遮断させるバイパスバルブであって、上記デューティソレノイドバルブから出力された油圧により、この油圧が高いときに上記絞り手段をバイパスする油路を開通させ、この油圧が低いときに上記絞り手段をバイパスする油路を遮断させることを特徴とする。
【0013】
【作用】
上記の構成によれば次のような作用が得られる。
【0014】
すなわち、本願発明によれば、シフトアップ変速時においては、複数の摩擦要素の油圧室からオリフィスなどの絞り手段を介して作動圧が排圧されることになるので、それぞれの油圧室から作動圧が同期して排圧されることになる。また、シフトダウン変速時においては、バイパスバルブによって絞り手段をバイパスする油路が開通されることになるので、単一のデューティソレノイドバルブで生成された作動圧が絞り手段を迂回して複数の摩擦要素に供給されることになって、応答性が確実に確保されることになる。
【0015】
その場合に、上記作動圧はデューティソレノイドバルブによって生成されるので、緻密に制御されることになる。
【0017】
ところで、油圧供給手段として逆止弁を絞り手段をバイパスして設置することが考えられる。しかし、上記のように油圧制御手段としてデューティソレノイドバルブを採用した場合には、次のような問題を発生する。
【0018】
つまり、デューティソレノイドバルブは弁体を周期的に開閉することにより、制御元圧を所定圧に調圧するようになっているが、その下流側に逆止弁が配設されている場合には、作動油の排出方向の通過が阻害されることから、デューティソレノイドバルブによる調圧値が損なわれるという問題がある。
【0019】
しかしながら、本願発明によれば、絞り手段をバイパスする油路に設置したバイパスバルブを油圧供給手段として採用しているので、デューティソレノイドバルブの調圧値が損なわれることがない。
【0020】
特に、この発明によれば、デューティソレノイドバルブでデューティ制御された油圧が高いときに、バイパスバルブがバイパス油路を開通させることになるので、デューティソレノイドバルブの脈動による影響が摩擦要素に及ぶのが回避される。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0022】
まず、図1により本実施例に係る自動変速機10の機械的構成を説明すると、この自動変速機10は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、該コンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構30と、該機構30の動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキなどの複数の摩擦要素41〜45及びワンウェイクラッチ46とを有し、これらによりD,S,Lレンジなどの前進走行レンジにおける1〜4速と、Rレンジにおける後退速とが得られるようになっている。
【0023】
上記トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向状に配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との間に介設されると共に変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース21とタービン23との間に設けられて、該ケース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とで構成されている。そして、上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して変速歯車機構30側に出力されるようになっている。
【0024】
ここで、このトルクコンバータ20の反エンジン側には、該トルクコンバータ20のケース21を介してエンジン出力軸1に駆動されるオイルポンプ12が配置されている。
【0025】
一方、上記変速歯車機構30は、それぞれサンギヤ31a,32aと、これらのサンギヤ31a,32aに噛み合った複数のピニオン31b,32bと、これらのピニオン31b,32bを支持するピニオンキャリヤ31c,32cと、ピニオン31b,32bに噛み合ったリングギヤ31d,32dとで構成される第1、第2遊星歯車機構31,32を有する。
【0026】
そして、上記タービンシャフト27と第1遊星歯車機構31のサンギヤ31aとの間にフォワードクラッチ41が、同じくタービンシャフト27と第2遊星歯車機構32のサンギヤ32aとの間にリバースクラッチ42が、またタービンシャフト27と第2遊星歯車機構32のピニオンキャリヤ32cとの間に3−4クラッチ43がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機構32のサンギヤ32aを固定する2−4ブレーキ44が備えられている。
【0027】
さらに、第1遊星歯車機構31のリングギヤ31dと第2遊星歯車機構32のピニオンキャリヤ32cとが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ45とワンウエィクラッチ46とが並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構31のピニオンキャリヤ31cと第2遊星歯車機構32のリングギヤ32dとが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。そして、この出力ギヤ13の回転が伝動ギヤ2,3,4及び差動機構5を介して左右の車軸6,7に伝達されるようになっている。
【0028】
ここで、上記各クラッチやブレーキなどの摩擦要素41〜45及びワンウェイクラッチ46の作動状態と変速段との関係をまとめると、次の表1に示すようになる。
【0029】
【表1】
Figure 0003552303
次に、図2により、上記各摩擦要素41〜45に設けられた油圧室に対して作動圧を給排する油圧制御回路50について説明する。
【0030】
ここで、上記各摩擦要素のうち、バンドブレーキでなる2−4ブレーキ44は作動圧が供給される油圧室としてアプライ室44aとリリース室44bとを有し、アプライ室44aのみに作動圧が供給されているときに該2−4ブレーキ44が締結され、リリース室44bのみに作動圧が供給されているとき、両室44a,44bとも作動圧が供給されていないとき及び両室44a,44bとも作動圧が供給されているときに、2−4ブレーキ44が解放されるようになっている。また、その他の摩擦要素41〜43,45は単一の油圧室を有し、該油圧室に作動圧が供給されているときに当該摩擦要素が締結されるようになっている。
【0031】
この油圧制御回路50には、主たる構成要素として、ライン圧を生成するレギュレータバルブ51と、手動操作によってレンジを切り換えるためのマニュアルバルブ52と、変速段に応じて油路を切り換える第1、第2シフトバルブ56,57と、これらのシフトバルブ56,57を作動させるための第1、第2ON−OFFソレノイドバルブ(以下、ON−OFFバルブと記す)61,62と、各摩擦要素41〜45の油圧室に供給される作動圧の生成、調整、排出などの制御を行う第1〜第3デューティソレノイドバルブ(以下、デューティバルブという)66,67,68などが備えられている。
【0032】
ここで、上記ON−OFFバルブ61,62及びデューティバルブ66〜68はいずれも3方弁であって、上、下流側の油路を連通させた状態と、下流側の油路をドレンさせた状態とが得られるようになっている。そして、後者の場合、上流側の油路が遮断されるので、ドレン状態で上流側からの作動油を徒に排出することがなく、オイルポンプ12の駆動ロスが低減される。
【0033】
なお、ON−OFFバルブ61,62はONのときに上、下流側の油路を連通させ、デューティバルブ66〜68はOFFのときに上、下流側の油路を連通させるようになっている。また、デューティバルブ66〜68は、デューティ制御、すなわちON,OFFを短い周期で繰り返す制御により、上流側の油圧を元圧として、下流側に所定値に調整した油圧を生成するようになっている。
【0034】
上記レギュレータバルブ51は、図1に示すオイルポンプ12から吐出された作動油の圧力を所定のライン圧に調整する。そして、このライン圧は、メインライン100を介して上記マニュアルバルブ52に供給されると共に、レデューシングバルブ71と第3デューティバルブ68とに制御元圧として供給され、さらに、フォワードクラッチ41の締結時用のアキュムレータ72に背圧として供給される。
【0035】
上記レデューシングバルブ71に供給されたライン圧は、該バルブ71によって一定値に減圧された上で、ライン101,102を介して第1、第2ON−OFFバルブ61,62に供給される。そして、第1ON−OFFバルブ61がONのときには、さらにライン103を介して第1シフトバルブ56の一端の制御ポート56aにパイロット圧として供給されて、該シフトバルブ56のスプールを図面上、右側に付勢する。また、第2ON−OFFバルブ62がONのときには、上記一定圧はさらにライン104を介して第2シフトバルブ57の一端の制御ポート57aに供給されて、該シフトバルブ57のスプールを図面上、左側に付勢する。
【0036】
また、このレデューシングバルブ71からの一定圧は、ライン105を介して上記レギュレータバルブ51の調圧ポート51aにも供給される。その場合に、この一定圧は、上記ライン105に備えられたリニアソレノイドバルブ69により例えばエンジン負荷などに応じて調整され、したがって、レギュレータバルブ51によってライン圧がエンジン負荷などに応じて調整されることになる。
【0037】
一方、上記メインライン100からマニュアルバルブ52に供給されるライン圧は、D,S,Lの各レンジでは前進ライン106に、Rレンジでは後退ライン107にそれぞれ導入される。
【0038】
上記前進ライン106は3つのライン111,112,113に分岐され、そのうち、第1のライン111は第1デューティバルブ66に導かれて、該バルブ66に制御元圧としてライン圧を供給する。また、第2のライン112は第1シフトバルブ56にライン圧を供給し、さらに、第3のライン113は第2シフトバルブ57にライン圧を供給する。そして、この第3のライン113は、第2シフトバルブ57のスプールが右側に位置するときにライン114に連通して、第1シフトバルブ56にライン圧を供給すると共に、該ライン114から分岐されたライン115を介して第2デューティバルブ67に制御元圧としてライン圧を供給する。
【0039】
以上のようにして上流側から制御元圧が供給される第1〜第3デューティバルブ66〜68のうち、第1デューティバルブ66の下流側は、オリフィス73が設けられたフォワードクラッチライン121を介してフォワードクラッチ41の油圧室に導かれていると共に、このフォワードクラッチライン121から分岐されたライン122が第1シフトバルブ56に導かれている。また、上記フォワードクラッチライン121には、オリフィス73をバイパスするバイパスライン123が設けられ、該ライン123上に該ライン123を開閉するバイパスバルブ74が設置されている。その場合に、該バイパスバルブ74の制御ポート74aに対して、上記オリフィス73よりも上流側のフォワードクラッチライン121の油圧がパイロット圧として導かれるようになっている。したがって、第1デューティバルブ66によって生成される作動圧が所定値よりも小さいときには、バイパスバルブ74のスプールが図面上の右側に位置することになって、バイパスライン123を遮断すると共に、上記作動圧が所定値よりも大きくなったときに、該バルブ74のスプールが左側に移動して、バイパスライン123を開通させる。
【0040】
さらに、第2デューティバルブ67の下流側は、ライン124及びライン125に分岐されて、いずれも第1シフトバルブ56に導かれている。第3デューティバルブ68の下流側は、ライン126を介して第2シフトバルブ57に導かれている。
【0041】
一方、上記マニュアルバルブ52によりRレンジでライン圧が導入される後退ライン107は第2シフトバルブ57に導かれ、ライン圧を該第2シフトバルブ57に供給する。なお、この後退ライン107は、ライン127を介してレギュレータバルブ51の増圧ポート51bにもライン圧を導き、Rレンジでライン圧を前進レンジの場合より全般的に高い値に調整させるようになっている。
【0042】
そして、以上のようにして、第1、第2シフトバルブ56,57に導かれた各ラインは、第1、第2ON−OFFバルブ61,62のON,OFFに応じた第1、第2シフトバルブ56,57のスプールの位置により、各摩擦要素の油圧室に選択的に接続されるようになっている。
【0043】
さらに、この油圧制御回路50には、以上の構成に加えて、図1に示すロックアップクラッチ26を制御するためのロックアップシフトバルブ76が備えられている。このロックアップシフトバルブ76には、レギュレータバルブ51からリリーフバルブ77が設けられたトルクコンバータライン131を介してトルクコンバータ圧が供給されると共に、両端の第1、第2制御ポート76a,76bには、第1、第2ON−OFFバルブ61,62から導かれたライン132,133がそれぞれ接続されている。
【0044】
そして、通常は、第1ON−OFFバルブ61から第1制御ポート76aに導入されるパイロット圧によってロックアップシフトバルブ76のスプールが右側に位置することにより、上記トルクコンバータライン131がロックアップクラッチ26のフロント室26aに至るライン134に連通されて、トルクコンバータ圧が該フロント室26aに導入されることにより、ロックアップクラッチ26が解放された状態とされている。
【0045】
また、第2ON−OFFバルブ62から第2制御ポート76bにパイロット圧が導入されると、スプールが左側に移動することにより、上記トルクコンバータライン131がロックアップクラッチ26のリヤ室26bに至るライン135に連通されて、トルクコンバータ圧が該リヤ室26bに導入されると共に、フロント室26aに至るライン134はライン136及び第1シフトバルブ56を介して第2デューティバルブ67に通じ、該第2デューティバルブ67によってフロント室26aの作動圧がドレンされる。これにより、該ロックアップクラッチ26が締結される。
【0046】
ところで、当該自動変速機10には、図3に示すように、油圧制御回路50における上記第1、第2ON−FFバルブ61,62、第1〜第3デューティバルブ66〜68及びリニアソレノイドバルブ69を制御するコントローラ150が備えられていると共に、このコントローラ150には、当該車両の車速を検出する車速センサ151からの信号、エンジン負荷を代表するスロットル開度を検出するスロットル開度センサ152からの信号、運転者によって選択されたシフト位置(レンジ)を検出するシフト位置センサ153からの信号などが入力される。そして、コントローラ150は、これらのセンサ151〜153からの信号が示す当該車両ないしエンジンの運転状態などに応じて上記各バルブ61,62,66〜69の作動を制御するようになっている。
【0047】
次に、この第1、第2ON−FFバルブ61,62及び第1〜第3デューティバルブ66〜68の作動状態と各摩擦要素41〜45の油圧室に対する作動圧の給排状態の関係を変速段ごとに説明する。
【0048】
ここで、第1、第2ON−FFバルブ61,62及び第1〜第3デューティバルブ66〜68の各変速段ごとの作動状態の組合せ(ソレノイドパターン)は、次の表2に示すように設定されている。
【0049】
なお、この表2中、(○)は、ON−OFFバルブ61,62についてはON、デューティバルブ66〜68についてはOFFであって、いずれも、上流側の油路を下流側の油路に連通させて元圧をそのまま下流側に供給する状態を示す。また、(×)は、ON−OFFバルブ61,62についてはOFF、デューティバルブ66〜68についてはONであって、いずれも、上流側の油路を遮断して、下流側の油路をドレンさせた状態を示す。さらに、デューティバルブ66〜68についての(duty)は、元圧をデューティ制御により所定値に調整した上で下流側に供給する状態を示す。
【0050】
【表2】
Figure 0003552303
まず、1速(Lレンジの1速を除く)においては、図4に示すように、第1デューティバルブ66が前進ライン106から分岐されたライン111からのライン圧をそのまま下流側のフォワードクラッチライン121に供給する。したがって、ライン圧がフォワードクラッチ圧としてフォワードクラッチ41の油圧室に供給され、該クラッチ41が締結される。
【0051】
ここで、上記フォワードクラッチ圧の供給開始時において、フォワードクラッチライン121のオリフィス73より上流側の油圧が所定値以上に高まると、該オリフィス73に並列に設けられたバイパスバルブ74のスプールが左側に移動して、バイパスライン123を開通させる。したがって、フォワードクラッチ圧は供給開始時にはオリフィス73を介して緩やかに、その後バイパスバルブ74を介して速やかに供給されることになる。
【0052】
また、この1速では、第1ON−OFFバルブ61がその上、下流側を連通させて、ライン103を介して第1シフトバルブ56の制御ポート56aにパイロット圧を供給することにより、該シフトバルブ56のスプールが右側に位置して、上記フォワードクラッチライン121から分岐されたライン122がアキュムレータ72に通じるライン141に連通する。したがって、N−D操作時などにおいてフォワードクラッチ41が締結される場合には、このアキュムレータ72の作用によって該クラッチ41が緩やかに締結され、上記オリフィス73の作用と相まってN−D操作時などにおけるショックが低減されることになる。
【0053】
なお、当該エンジンがパワーオフの状態での4−3変速時においてフォワードクラッチ41が締結される場合には、4速の状態で上記アキュムレータ72にライン圧が蓄圧されていると共に(図9参照)、第1ON−OFFバルブ61が一時的にONとなって第1シフトバルブ56のスプールが右側に移動することにより、まず、このアキュムレータ72からフォワードクラッチ41の油圧室に作動油が供給される。これにより、該油圧室ないしフォワードクラッチライン121に作動油が充満するまでの時間が短縮されて、フォワードクラッチ41が速やかに締結されることになる。
【0054】
次に、2速の状態では、図5に示すように、第3デューティバルブ68がメインライン100からのライン圧を元圧として作動圧を生成する。一方、第2ON−OFFバルブ62がライン104を介して第2シフトバルブ57の制御ポート57aをドレンさせていることにより、該シフトバルブ57のスプールが右側に位置する。そのため、上記第3デューティバルブ68で生成された作動圧が、ライン126、第2シフトバルブ57及びサーボアプライライン142を介して、サーボアプライ圧として2−4ブレーキ44のアプライ室44aに供給される。これにより、上記フォワードクラッチ41に加えて2−4ブレーキ44が締結されることになる。
【0055】
なお、表2に1速と2速の中間パターンとして示すように、1−2変速時には、上記第3デューティバルブ68がサーボアプライ圧をデューティ制御により生成して、2−4ブレーキ44の締結動作を円滑に行わせる。そして、この第3デューティバルブ68は、2速への変速後にライン圧をそのままサーボアプライ圧として供給するように動作する。
【0056】
さらに、表2に2速と3速の中間パターンとしてソレノイドパターンを示す2−3変速時には、図6に示すように、第2デューティバルブ67が、前進ライン106からライン113、第2シフトバルブ57及びライン114,115を介して供給されているライン圧を元圧として作動圧を生成する。そして、この作動圧はライン124,125を介して第1シフトバルブ56に導かれると共に、これらのライン124,125は、該シフトバルブ56のスプールが右側に位置することにより、それぞれ2−4ブレーキ44のリリース室44bに通じるサーボリリースライン143と3−4クラッチ43の油圧室に通じる3−4クラッチライン144とに連通する。
【0057】
したがって、上記第2デューティバルブ67で生成される作動圧が2−4ブレーキ44のリリース室44b及び3−4クラッチ43の油圧室にそれぞれサーボリリース圧及び3−4クラッチ圧として供給され、その結果、2速の状態に対して、2−4ブレーキ44が解放される一方、3−4クラッチ43が締結されることになる。
【0058】
ここで、この2−3変速時には、表2に示すように、上記第2デューティバルブ67がデューティ制御によりサーボリリース圧及び3−4クラッチ圧を生成すると共に、2速の状態で2−4ブレーキ44のアプライ室44aにライン圧を供給していた第3デューティバルブ68もサーボアプライ圧をデューティ制御で調整することにより、2−4ブレーキ44の解放動作と3−4クラッチ43の締結動作が適切なタイミングで行われて、2−3変速時の変速ショックが抑制される。
【0059】
そして、3速への変速終了後には、図7に示すように、上記サーボリリース圧及び3−4クラッチ圧を生成していた第2デューティバルブ67がその生成を停止する一方、第1ON−OFFバルブ61がライン103を介して第1シフトバルブ56の制御ポート56aをドレンさせて、該シフトバルブ56のスプールを左側に移動させることにより、2−4ブレーキ44のリリース室44bには、フォワードクラッチライン121から分岐されたライン122によりフォワードクラッチ圧がサーボリリース圧として供給されることになる。
【0060】
また、3−4クラッチ43の油圧室には、前進ライン106からライン113及び第2シフトバルブ57を介して導かれたライン114により、第1シフトバルブ56を通ってライン圧が直接供給されることになる。そして、サーボアプライ圧を生成していた第3デューティバルブ68もライン圧を直接アプライ室44aに供給する状態となる。
【0061】
なお、図6及び図7に示すように、3速の状態では、3−4クラッチライン144から分岐されたライン145により、第2シフトバルブ57の制御ポート57aと反対側の端部のロックポート57bに3−4クラッチ圧が導入され、これにより、該第2シフトバルブ57のスプールが右側の位置に固定される。これは、3−4クラッチ43が締結される高変速段で、エンジンブレーキ用1速及び後退速で用いられるローリバースブレーキ45に作動圧が供給されることを確実に防止するためである。
【0062】
そして、表2に3速と4速の中間パターンとしてソレノイドパターンを示す3−4変速時には、図8に示すように、第1デューティバルブ66が作動圧をデューティ制御により調整しながら低下させる。その場合に、図7に示す変速後の3速で、第1ON−OFFバルブ61が第1シフトバルブ56の制御ポート56aをドレンさせて、スプールを左側に移動させていることにより、フォワードクラッチライン121とサーボリリースライン143とがライン122を介して連通された状態とされているから、1〜3速でフォワードクラッチ圧を生成していた第1デューティバルブ66が作動圧を減圧することにより、フォワードクラッチ圧とサーボリリース圧とが該第1デューティバルブ66から同時にドレンされることになる。この場合、第1デューティバルブ66による調整圧を所定値よりも低く設定することにより、図8に示すようにバイパスバルブ74のスプールが右側に移動することになって、バイパスライン123が遮断される。これにより、フォワードクラッチライン121に設けられたオリフィス73の絞り作用により、フォワードクラッチ圧とサーボリリース圧とが互いに同期してドレンされることになって、フォワードクラッチ41が解放されると共に、フォワードクラッチ41の解放動作に同期して2−4ブレーキ44が締結されることになる。
【0063】
なお、3−4変速時においては、上記中間パターンで示すように、第3デューティバルブ68についてもデューティ制御により作動圧が調整されるようになっていることから、フォワードクラッチ圧及びサーボリリース圧の排出タイミングと、その間におけるサーボアプライ圧の値とが適切に制御されて、3−4変速時の変速ショックが抑制されることになる。
【0064】
そして、4速では、図9に示すように、第1デューティバルブ66が作動圧の生成を停止し、下流側のフォワードクラッチライン121を完全ドレン状態とする。
【0065】
ここで、エンジンがパワーオン状態での4−3変速について説明すると、この場合の4−3変速は前述の表2における3速と4速との中間パターンを経由して行われる。
【0066】
すなわち、図10に示すように、第1デューティバルブ66が前進ライン106からライン111を介して供給されているライン圧を元圧としてデューティ制御により作動圧を生成する。そして、この作動圧は下流側のフォワードクラッチライン121に供給されてフォワードクラッチ41の油圧室に導かれると共に、その一部がライン122、第1シフトバルブ56及びサーボリリースライン143を介して2−4ブレーキ44のリリース室44bに導かれることになる。その場合に、第1デューティバルブ66で生成される作動圧が所定値よりも高いときには、図10に示すようにバイパスバルブ74のスプールが左側に位置することからバイパスライン123が開通状態となる。したがって、第1デューティバルブ66からフォワードクラッチライン121に流出した作動油は、その大部分がバイパスライン123を通り、オリフィス73の下流側で再びフォワードクラッチライン121に合流した後、フォワードクラッチ41の油圧室と2−4ブレーキ44のリリース室44bとに導かれることになる。これにより、フォワードクラッチ41が速やかに締結され、また2−4ブレーキ44が速やかに解放されることになる。
【0067】
一方、Lレンジの1速では、図11に示すように、Dレンジなどの1速と同様に、第1デューティバルブ66が前進ライン106及びライン111からのライン圧をフォワードクラッチ圧としてフォワードクラッチライン121に供給することにより、フォワードクラッチ41が締結される。
【0068】
そして、これと同時に、第3デューティバルブ68がメインライン100からのライン圧をライン126に供給すると共に、第2ON−OFFバルブ62が第2シフトバルブ57の制御ポート57aにパイロット圧を供給して、該シフトバルブ57のスプールを左側に移動させることにより、上記第3デューティバルブ68からのライン圧がさらにローリバースブレーキライン146に供給される。したがって、このLレンジの1速では、フォワードクラッチ41に加えてローリバースブレーキ45が締結され、エンジンブレーキが作動する1速が得られることになる。
【0069】
なお、Lレンジの1速では、上記のように、第2シフトバルブ57のスプールが左側に位置するが、このとき、前進ライン106から分岐されたライン113が該第2シフトバルブ57で遮断されて、ライン114から第1シフトバルブ56及び第2デューティバルブ67へのライン圧の供給が阻止される。これにより、Lレンジの1速で3−4クラッチ43への作動圧の供給が防止されて、ローリバースブレーキ45と3−4クラッチ43とが同時に締結されることによる変速歯車機構30のインターロックが確実に回避されることになる。
【0070】
さらに、Rレンジでは、図12に示すように、上記Lレンジの1速と同様に、第3デューティバルブ68がメインライン100からのライン圧をライン126に供給すると共に、第2ON−OFFバルブ62から第2シフトバルブ57の制御ポート57aにパイロット圧が供給されて、該シフトバルブ57のスプールが左側に位置することにより、上記ライン圧がローリバースブレーキライン146に供給されてローリバースブレーキ45が締結される。
【0071】
また、図2に示すマニュアルバルブ52から後退ライン107にライン圧が導入され、これが上記第2シフトバルブ57を通ってリバースクラッチライン147に供給されることにより、リバースクラッチ42の油圧室に作動圧が供給される。したがって、Rレンジでは、ローリバースブレーキ45とリバースクラッチ42とが締結されることになる。
【0072】
なお、Rレンジでは前進ライン106にライン圧が導入されないから、第1、第2デューティバルブ66,67の作動状態にかかわらず、フォワードクラッチ41や3−4クラッチ43に作動圧が供給されることはない。
【0073】
以上のように、この油圧制御回路50によれば、3つのデューティバルブ66〜68と、第1、第2シフトバルブ56,57及び第1、第2ON−OFFバルブ61,62とにより、前進用の4つの摩擦要素、すなわちフォワードクラッチ41、2−4ブレーキ44、3−4クラッチ43及びローリバースブレーキ45の合計5つの油圧室に供給される作動圧が制御されることになり、多数の油圧室に対する作動圧の制御が簡素な構成で行われることになる。
【0074】
そして、この実施例によれば、3−4変速時においては、フォワードクラッチ圧及びサーボリリース圧がオリフィス73を介してドレンされることになるので、これらの圧力が同期してドレンされることになる。また、パワーオン状態の4−3変速時においては、バイパスバルブ123によってオリフィス73をバイパスするバイパスライン123が開通されることになるので、第1デューティバルブ66で生成された作動圧がオリフィス73を迂回してフォワードクラッチ41の油圧室と2−4ブレーキ44のリリース室44bとに供給されることになって、応答性が確実に確保されることになる。
【0075】
なお、上記オリフィス73に変えて可変オリフィスを設置し、この可変オリフィスの絞り量を作動圧の供給時に小さくするようにしてもよい。
【0076】
【発明の効果】
以上のように本願発明によれば、シフトアップ変速時においては、複数の摩擦要素の油圧室からオリフィスなどの絞り手段を介して作動圧が排圧されることになるので、それぞれの油圧室から作動圧が同期して排圧されることになる。また、シフトダウン変速時においては、バイパスバルブによって絞り手段をバイパスする油路が開通されることになるので、単一のデューティソレノイドバルブで生成された作動圧が絞り手段を迂回して複数の摩擦要素に供給されることになって、応答性が確実に確保されることになる。
【0077】
その場合に、上記作動圧はデューティソレノイドバルブによって生成されるので、緻密に制御されることになる。
【0079】
そして、本願発明によれば、絞り手段をバイパスする油路に設置したバイパスバルブを油圧供給手段として採用しているので、デューティソレノイドバルブの調圧値が損なわれることがない。
【0080】
特に、この発明によれば、デューティソレノイドバルブでデューティ制御された油圧が高いときに、バイパスバルブがバイパス油路を開通させることになるので、デューティソレノイドバルブの脈動による影響が摩擦要素に及ぶのが回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る自動変速機の機械的構成を示す骨子図である。
【図2】実施例に係る油圧制御回路の回路図である。
【図3】図2の油圧制御回路における各ソレノイドバルブに対する制御システム図である。
【図4】図2の回路の1速の状態を示す要部拡大回路図である。
【図5】同回路の2速の状態を示す要部拡大回路図である。
【図6】同回路の2−3変速時の状態を示す要部拡大回路図である。
【図7】同回路の3速の状態を示す要部拡大回路図である。
【図8】同回路の3−4変速時の状態を示す要部拡大回路図である。
【図9】同回路の4速の状態を示す要部拡大回路図である。
【図10】同回路のパワーオン状態における4−3変速時の状態を示す要部拡大回路図である。
【図11】同回路のLレンジ1速の状態を示す要部拡大回路図である。
【図12】同回路の後退速の状態を示す要部拡大回路図である。
【符号の説明】
10 自動変速機
41 フォワードクラッチ
44 2−4ブレーキ
44b リリース室
56 第1シフトバルブ
66 第1デューティバルブ
73 オリフィス
74 バイパスバルブ
121 フォワードクラッチライン
122 フォワードクラッチラインから分岐されたライン
123 バイパスライン
143 サーボリリースライン

Claims (1)

  1. 所定のシフトダウン変速時に油圧が供給される複数の摩擦要素を有すると共に、これらの摩擦要素の油圧室の作動圧を制御する単一のデューティソレノイドバルブが備えられた自動変速機の油圧制御装置であって、上記複数の摩擦要素における油圧室から作動圧を排圧するシフトアップ変速時に作動油の通過を制限する絞り手段が、これらの摩擦要素と上記デューティソレノイドバルブとの間に共通して設けられていると共に、上記所定のシフトダウン変速時において上記デューティソレノイドバルブから出力された油圧を上記絞り手段の影響を受けずに複数の摩擦要素に供給する油圧供給手段が設けられており、かつ、該油圧供給手段は、上記絞り手段をバイパスして設けられたバイパス油路を開通または遮断させるバイパスバルブであって、上記デューティソレノイドバルブから出力された油圧により、この油圧が高いときに上記絞り手段をバイパスする油路を開通させ、この油圧が低いときに上記絞り手段をバイパスする油路を遮断させることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
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