JP3552287B2 - 車両用推進制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、発進時や加速時に発生する過大なスリップを押さえることにより、車両の安定走行が確保でき、しかも加速性が向上できるようにした車両用推進制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、特開平1−208530号公報に記載されているように、駆動輪のブレーキ装置を駆動して駆動輪の回転を直接抑制すると共に、併せて加速スリップが検出されたときに、点火時期又は燃料供給量を制御して内燃機関の出力トルクを抑制し、所定期間経過後はスロットル開度を制御して、駆動輪の回転を継続して抑制するものが知られている。
【0003】
また、特開平3−202642号公報に記載されているように、内燃機関の回転数と単位吸気量とにより最大の休筒数である最大許容休筒数を設定し、駆動輪にスリップが生じた場合、スリップ量に応じて演算された休筒気筒数の値が大きいときに内燃機関の回転数に基づいて設定された最大許容休筒数で休筒を実施するようにして、内燃機関の回転数が低い場合でも過剰なトルク低減を防止するものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に四輪車両では、内燃機関の駆動力が差動歯車を介して左右駆動輪に分配されている。図18に示すように、内燃機関の駆動力は、図示しないクラッチや変速機を介してドライブピニオン150、リングギヤ152に伝達され、リングギヤ152と一体で回転するピニオンシャフト154を中心に回転するピニオン156,158から左右のサイドギヤ160,162、駆動輪VL ,VR に伝達されている。
【0005】
左右駆動輪VL ,VR の回転が同じであれば問題はないが、図19及び図20に示すように、左右路面の摩擦係数μが異なる場合は、摩擦係数μが低い側の駆動輪に対してブレーキトルクを加え、左右路面の摩擦係数μに応じた駆動力配分にしないと加速性が得られない。この状態でピニオンシャフト154には、駆動力による路面反力とブレーキトルクの和が加わっており、更に、左右駆動輪速度差が生じると、ピニオン156,158が回転するので、ピニオンシャフト154との間に面圧と滑りが同時に加わり摩擦が発生して、ついには焼き付きを起こしてしまう場合があるという問題があった。
【0006】
つまり、左右駆動輪VL ,VR の接地面の摩擦係数μの違いにより、摩擦係数μの低い側の駆動輪が大きくスリップしたところへブレーキ制動力で駆動力を抑えようとすれば前記問題が発生する。
そこで本発明は上記の課題を解決することを目的とし、差動歯車の焼き付きを防止した車両用推進制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、本発明は課題を解決するための手段として次の構成を取った。即ち、図1に例示する如く、
車両加速時に駆動輪に発生する加速スリップを検出し、該加速スリップ発生が検出されたときに駆動輪M1を制動する加速スリップ制御手段M2と、
内燃機関M3の出力を抑制する出力抑制手段M4とを備えた車両用推進制御装置において、
前記出力抑制手段M4は、前記内燃機関M3の減筒により出力を抑制し、
更に、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪M1の速度差が大きいとき、前記出力抑制手段M4による前記内燃機関M3の減筒制御を実行し、前記速度差が小さいとき、前記出力抑制手段M4による減筒制御を実行せず、また、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、前記冷却水温が所定値以上では、前記駆動輪M1の速度差に関係なく前記出力抑制手段M4による減筒制御を実行する抑制制御手段M5を備えたことを特徴とする車両用推進制御装置の構成がそれである。
【0008】
前記抑制制御手段M5は、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、前記駆動輪M1の速度差が大きいとき、前記出力抑制手段M4による前記内燃機関M3の減筒制御を一定時間経過するまで実行する構成のものでもよい。
【0009】
また、車両加速時に駆動輪M1に発生する加速スリップを検出し、該加速スリップ発生が検出されたときに駆動輪M1を制動する加速スリップ制御手段M2と、
内燃機関M3の出力を抑制する出力抑制手段M4とを備えた車両用推進制御装置において、
前記出力抑制手段M4は、前記内燃機関M3の減筒により出力を抑制し、
更に、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪M1の加速度差が大きいとき、前記出力抑制手段M4による前記内燃機関M3の減筒制御を実行し、前記加速度差が小さいとき、前記出力抑制手段M4による減筒制御を実行せず、また、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、前記冷却水温が所定値以上では、前記駆動輪M1の加速度差に関係なく前記出力抑制手段M4による減筒制御を実行する抑制制御手段M5を備えたことを特徴とする車両用推進制御装置の構成がそれである。
【0010】
【作用】
前記構成を有する車両用推進制御装置は、加速スリップ制御手段M2が、車両加速時に駆動輪M1に発生する加速スリップを検出し、該加速スリップ発生が検出されたときに駆動輪M1を制動する。そして、抑制制御手段M5が、加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪M1の速度差が大きいとき、出力抑制手段M4による内燃機関M3の減筒制御を実行し、速度差が小さいとき、出力抑制手段M4による減筒制御を実行せず、また、加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以上では、駆動輪M1の速度差に関係なく出力抑制手段M4による減筒制御を実行する。
【0011】
また、抑制制御手段M5が、一定時間経過するまで減筒制御を実行するものでは、加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、駆動輪M1の速度差が大きいとき、出力抑制手段M4による内燃機関M3の減筒制御を一定時間経過するまで実行する。
【0012】
あるいは、抑制制御手段M5が、加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪M1の加速度差が大きいとき、出力抑制手段M4による内燃機関M3の減筒制御を実行し、加速度差が小さいとき、出力抑制手段M4による減筒制御を実行せず、また、加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以上では、駆動輪M1の加速度差に関係なく出力抑制手段M4による減筒制御を実行する。
【0013】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施例の車両用推進制御装置は、車両のスリップ発生時に、ブレーキ制御を行う構成と内燃機関の出力制御を行う構成とが設けられている。つまり、駆動輪のブレーキ装置を駆動して駆動輪の回転を直接抑制してブレーキ制御を行う加速スリップ制御回路20と、該加速スリップ制御回路20からの指示に基づいて、内燃機関の休筒数を制御して出力トルクを抑制する内燃機関制御回路60とを備えている。
【0014】
図2は本発明の実施例を示す液圧回路図であり、車両用推進制御装置と共にアンチスキッド制御装置を備えている。なお、前輪W2R、W2Lを駆動輪としている。
図2において、1はブレーキペダルであり、ブースタ11を介してマスタシリンダ2のプライマリピストン2dを押圧可能としている。マスタシリンダ2内には、両側面に圧縮コイルバネ2f、2gにより押圧されたセコンダリピストン2eが設けられ、室2b、2cが形成されている。室2bは左右前輪W2L、W2Rのホイールシリンダ3L、3Rと連通し、室2cは左右後輪W1L、W1Rのホイールシリンダ4L、4Rと連通している。更に、室2bのプライマリピストン2dに近接したポート2jと、室2cのセコンダリピストンに近接したポート2kはリザーバ13と連通している。
【0015】
前輪側へのブレーキ液供給シリンダとなる室2bは、ポート2hに接続された管路により3ポート2位置切換弁5Rの1つのポートに連通され、さらに他のポートに接続された管路は2つに分岐され、それぞれ3ポート2位置切換弁7L、7Rを介して左右前輪のホイールシリンダ3L、3Rに連通されている。なお、切換弁5Rを有する前記管路には、ホイールシリンダ3L、3Rに向かう方向を順方向とする逆止弁6Rを有する管路が並列に接続されている。
【0016】
また、ポート2aに連結された管路18は、管路19L、19Rに分岐され、それぞれマスタシリンダ2に向かう方向を順方向とする逆止弁8L、8Rを介してホイールシリンダ3L、3Rに連通している。管路18、19L、19Rはバイパス管路を構成している。
【0017】
図3はマスタシリンダ2の構造を示す。ポート2aはブレーキペダル1が踏まれていなければセコンダリピストン2eによって室2bと遮断され、ブレーキペダル1が踏みこまれ、セコンダリピストン2eが左へ移動しているときは室2bと連通し、ブレーキ液のもどり流路の1つとなるようにされている。すなわち、ポート2aとセコンダリピストン2eとがポート開閉手段を構成している。
【0018】
一方、後輪側へのブレーキ液供給シリンダとなる室2cは、ポート2iに接続された管路により3ポート2位置切換弁5Lの1つのポートに連通され、さらに他のポートに接続された管路は2つに分岐され、それぞれ3ポート2位置切換弁10L、10Rを介して左右前輪のホイールシリンダ4L、4Rに連通されている。
【0019】
切換弁5Lを有する前記管路には、ホイールシリンダ4L、4Rに向かう方向を順方向とする逆止弁6Lを有する管路が並列に接続されている。また、ポート2iに接続された管路は、2つに分岐され、それぞれマスタシリンダ2に向かう方向を順方向とする逆止弁9L、9Rを介してホイールシリンダ4L、4Rに連通している。
【0020】
更に、本実施例はマスタシリンダ2によって発生する液圧源とは別に液圧ポンプ14による液圧源を持っている。この液圧源はアンチスキッド制御装置のそれと共用できるので、重量、コストの軽減を図ることができる。以下これについて説明する。
【0021】
リザーバ13にためられたブレーキ液は、モータ駆動の液圧ポンプ14にストレーナを介して吸い込まれ、所定圧力で吐出される。すなわちポンプ吐出側はアキュムレータ15、リリーフ弁16により、吐出圧力が175〜200Kg/cm に保たれている。アキュムレータ15は各ホイールシリンダに向かう方向を順方向とする2個の逆止弁17L、17Rを介して、それぞれ3ポート2位置切換弁5L、5Rと連通している。
【0022】
また、3ポート2位置切換弁5L、5Rの3つのポートはそれぞれマスタシリンダ2、3ポート2位置切換弁7L、7Rと10L、10Rおよびアキュムレータ15と連通しており、加速スリップ制御回路20からの信号にしたがって、3ポート2位置切換弁7L、7Rと10L、10Rをマスタシリンダ2あるいはアキュムレータ15と連通させる。
【0023】
3ポート2位置切換弁7L、7Rと10L、10Rの3つのポートは図2に示す如くそれぞれ3ポート2位置弁5L、5R、ホイールシリンダ3L、3Rと4L、4Rおよびリザーバ13と連通しており、加速スリップ制御回路20からの信号にしたがって、ホイールシリンダ3L、3Rと4L、4Rを3ポート2位置切換弁5L、5R、あるいはリザーバ13と連通させる。
【0024】
すなわち、加速スリップ制御回路20からの信号が3ポート2位置切換弁5Lのソレノイドに加えられソレノイドが励磁されると、切換弁5Lはソレノイド側(図2の左側)に切り換えられ、ホイールシリンダ4L、4Rは切換弁10L,10Rを介して液圧ポンプ14と連通する。前記信号が加えられないときは、切換弁5Lはスプリング側(図2の右側)すなわちノーマル位置にあり、ホイールシリンダ4L、4Rと液圧ポンプ14との連通が遮断され、ホイールシリンダ4L、4Rはマスタシリンダ2のポート2iに連通する。
【0025】
切換弁5Rの場合も同様にして切り換えられる。すなわち、ECU74からの信号が切換弁5Rのソレノイドに加えられると、ホイールシリンダ3L、3Rはそれぞれ切換弁7L、7Rを介して液圧ポンプ14と連通し、前記信号が加えられないときには、ホイールシリンダ3L、3Rと液圧ポンプ14との連通が遮断され、ホイールシリンダ3L、3Rはポート2hに連通する。
【0026】
そして、切換弁10L、10R、7L、7Rは、それぞれ加速スリップ制御回路20からの信号が各ソレノイドに加えられると、図の左側に切り換えられ、各ホイールシリンダはリザーバ13に連通される。ソレノイドに信号が加えられないときには、切換弁10L、10R、7L、7Rは図の右側の切換位置にあり、各ホイールシリンダと前記切換弁5L、5Rとが連通する。
【0027】
次に、加速スリップ制御回路20について説明する。図4において21は左右駆動輪(前輪)速度をそれぞれ検出する駆動輪速度センサ、22は左右従動輪(後輪)速度をそれぞれ検出する従動輪速度センサ、20は駆動輪のスリップ状態に基づいてスリップ判定をする演算処理を行い制御信号を出力するマイクロコンピュータからなる加速スリップ制御回路、23は加速スリップ制御回路20からの信号によりホイールシリンダに加えられるブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御弁(以下単に液圧制御弁という)である。そして、加速スリップ制御回路20において20aはスリップ判定等の演算を行なう中央処理ユニット(以下CPUと呼ぶ)、20dは速度センサ21,22のパルス数を計数するカウンタ、20fは速度センサ21,22の信号を入力する入力ポート、20cは演算結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(以下RAMと呼ぶ)、20bは演算プログラムや制御データを記憶しているリードオンリーメモリ(以下ROMと呼ぶ)、20gは液圧制御弁23へ制御信号を出力する出力ポートである。
【0028】
加速スリップ制御回路20は、速度センサ21及び22の速度信号から走行状態を検出し、当該走行状態に応じてスリップ判定を行いスリップ発生時には、液圧制御弁23に対し、スリップ状態に応じた制御信号を出力し、各車輪のホイールシリンダ3L、3R、4L、4Rに加えられるブレーキ液圧を増圧モードもしくは減圧モードに切り換えて制御し、スリップを抑えるよう出力ポート20gより指令する。
【0029】
以下図2に従って本実施例のブレーキ作動について説明する。
(1)通常ブレーキ時
各切換弁は図2の状態になっている。以下、各切換弁の右側の状態すなわち、ソレノイドが励磁の状態を第1の位置、左側の状態すなわちソレノイドが励磁された状態を第2の位置と呼ぶ。以下切換弁のソレノイドを励磁し、第2の位置に切り換えることを切換弁をONするとよび、ソレノイドを励磁せず第1の位置におくことを切換弁をOFFするとよぶことにする。
【0030】
運転者が車を停止させようとしてブレーキペダル1を踏むとブースタ11を介してプライマリピストン2dが押され、さらにプライマリピストン2dはセコンダリピストン2eを押すことにより、ポート2j、2kが閉じられた時点から室2b、2cのブレーキ液はマスタシリンダ2より送り出される。
【0031】
以下の説明において、室2bは前輪(駆動輪)用、室2cは後輪(従動輪)用と2系統に分けられているが、後輪用と前輪用は一部を除いて説明が重複するので、以下は主に後輪についてのみ説明し、前輪と異なる点についてはそのつど説明を加えることにする。
【0032】
室2bのポート2hから押し出されたブレーキ液は、3ポート2位置切換弁5Rと逆止弁6Rの両方を通り、1つに合流し、3ポート2位置切換弁7L、7Rを通ってホイールシリンダ3L、3Rに達し、ホイールシリンダ3L、3R内の圧力を上昇させ、ブレーキを作用させる。
【0033】
ホイールシリンダ内の圧力を下げるには、ブレーキペダル1をゆるめることにより行なう。すなわち、ブレーキが解除されるとホイールシリンダ3L、3R内のブレーキ液は、切換弁7L、7R、切換弁5Rを介して室2bに戻され、ブレーキ作動時には、セコンダリピストン2eが左に押されているためマスタシリンダ2のポート2aが室2bと連通し、前記切換弁5Rを通る経路と逆止弁8L、8Rを通る、経路との2つの経路を通って室2bへ戻る。
【0034】
室2cの場合はバイパス管路が開閉されない点を除き、室2bの場合と同様に作動する。
(2)スリップ制御時
次に、発進時または加速時において、ブレーキペダル1が踏み込まれていない状態で駆動輪がスリップした場合のスリップ制御の作動を説明する。以下の説明は前輪(駆動輪)側のみの作動であり、後輪側については初期状態のままである。
【0035】
運転者が発進または加速しようとした時、前輪に過大なスリップが発生した場合には、駆動輪速度センサ21からの信号を受けた加速スリップ制御回路20が前輪のスリップを検出し、スリップ率を所定値(本実施例では約20%)に押さえるように3ポート2位置切換弁5R、7L、7Rを制御するいわゆるスリップ制御が行なわれる。
【0036】
すなわちスリップ制御中、3ポート2位置切換弁5Rは加速スリップ制御回路20の指令によってONされ第2の位置に切り換えられ、左右2個の3ポート2位置切換弁7L、7Rはアキュムレータ15と連通するが、マスタシリンダ2側とは遮断される。さらに、3ポート2位置切換弁7L、7RをOFFし、第1の位置におけば、アキュムレータ15からホイールシリンダ3L、3Rへブレーキ液が注入され、ホイールシリンダ3L、3R内のブレーキ液圧が上昇し、増圧モードとなる。
【0037】
この時ブレーキペダル1は踏まれていないので、マスタシリンダ2のポート2aは3ポート2位置切換弁7L、7RのON、OFFにかかわらずセコンダリピストン2eによって室2bとは遮断されているため、ホイールシリンダ3L、3Rに注入されたブレーキ液が逆止弁8L、8Rを通るバイパス管路で室2bへ流れ込むことが阻止され、その結果ホイールシリンダ3L、3Rのブレーキ液はポート2jを通ってリザーバ13へ抜けてしまうことはない。
【0038】
従って、3ポート2位置切換弁5RをONした状態で3ポート2位置切換弁7L、7RのON/OFFを制御することによってホイールシリンダ3L、3R内の圧力を制御でき、前輪のスリップを押さえることができる。前輪のスリップ率が所定値以下になると、加速スリップ制御回路20の指令に基づき3ポート2位置切換弁7L、7RがONされ、前輪のホイールシリンダ3L、3Rのブレーキ液圧が下がり減圧モードとなる。
【0039】
ここで、3ポート2位置切換弁7L、7Rは左右別々についているので、前輪は左右独立して制御できる。また、このスリップ制御は、ブレーキペダル1が踏まれているときのみONし、踏まれていないときOFFされるブレーキスイッチ24がOFFの間すなわち、ブレーキペダル1が踏まれていない間だけ行なわれるようにされている。
【0040】
従って、もしスリップ制御中に運転者がブレーキペダル1を踏めばスリップ制御は禁止されるため、運転者がブレーキを作動させることによってポート2aが室2bと連通しても、アキュムレータ側のブレーキ液が3ポート2位置切換弁5R、7L、7R、逆止弁8L、8Rを介して室2bに注入されることはない。このように、発進時もしくは加速時における駆動輪のスリップ状態に応じてブレーキ液圧を加減することにより車両の推進力の制御、いわゆる推進制御が行なわれる。
【0041】
次に加速スリップ制御回路20の動作を図5のフローチャートを用いて説明する。
先ずステップ100で従動輪速度VVR(右後輪速度)、VVL(左後輪速度)を演算し、次にステップ101で駆動輪速度VWR(右前輪速度)、VWL(左前輪速度)を演算しステップ102へ移る。ステップ102ではブレーキスイッチ24がONされているかどうかを判別し、運転者がブレーキペダル1を踏み込んでいると判定した場合はステップ103へ進み、アンチスキッド制御を行ないステップ100に戻る。一方、ステップ102でブレーキスイッチ24がOFFで運転者がブレーキを作動させていないと判定した場合はステップ104以後のスリップ制御を行なう。
【0042】
ステップ104ではスリップ判定レベルVrを演算する。すなわち、ステップ100で演算した後輪速度VVR、VVLから平均後輪速度Vv を求めそれをK倍(K≒1.25でこれはスリップ率を約20%にした時の値である)し、それをスリップ判定レベルVrとする。すなわちVr=K・(VVR+VVL)/2である。
【0043】
続いてステップ105では、右前輪速度VWRとスリップ判定レベルVrを比較し、右前輪がスリップしているかどうかを判別する。ステップ105にて、VWR≧Vrが成立した場合は、右前輪にスリップが発生していると判定し、ステップ106に移る。
【0044】
一方、ステップ105にて、VWR<Vrとなった場合は、右前輪はスリップしていないと判定し、ステップ109に移る。ステップ106、および109では、左前輪速度VWLとスリップ判定レベルVrを比較し、左前輪がスリップしているかどうかを判別する。ステップ106にてVWL≧Vrが成立した場合には、左前輪にスリップが発生していると判定しステップ107へ進む。一方、ステップ106にてVWL<Vrとなった場合は左前輪はスリップしていないと判定し、ステップ108へ進む。同様に、ステップ109にてVWL≧Vrが成立した場合はステップ110へ、VWL<Vrとなった場合はステップ111へ、それぞれ進む。
【0045】
すなわち、ステップ105、106、109で左右前輪がそれぞれスリップしているかどうかを判定、その組合せに応じて、それぞれステップ107、108、110、111へ進む。ステップ107へ進んだ場合は、前輪が両輪ともスリップしていると判定された場合であり、ステップ107では3ポート2位置切換弁5RをON、右前輪用の3ポート2位置切換弁7Rおよび左前輪用の3ポート2位置切換弁7LをOFFの状態にし、左右前輪のスリップを抑えるために左右前輪のホイールシリンダへアキュムレータ15からブレーキ液を送り込み、左右前輪に制動をかけステップ100へ戻る。
【0046】
ステップ108へ進んだ場合は、右前輪だけにスリップが発生している場合で、ステップ108では3ポート2位置切換弁5RをON、7RをOFF、7LをONの状態にし、右前輪のスリップを抑えるために、右前輪のホイールシリンダへアキュムレータ15からブレーキ液を送り込み、右前輪に制動をかけ、ステップ100へ戻る。この場合、左前輪用の3ポート2位置切換弁7LはONされ第2の位置にあるため、左前輪のホイールシリンダはアキュムレータ15側と遮断され、リザーバ13と連通しており、左前輪のホイールシリンダの内のブレーキ液圧は減少する。
【0047】
ステップ110へ進んだ場合は、左前輪だけにスリップが発生している場合で、この時作動は、ステップ108へ進んだ場合の右側と左側を交換したものになるので、ここでは省略する。
最後に、ステップ111へ進んだ場合は、左右前輪が共に、スリップしていないと判定された場合であり、ステップ111では3ポート2位置切換弁5R、7L、7Rを共にOFFし、左右前輪のホイールシリンダ3L、3R内のブレーキ液は3ポート2位置切換弁7L、7R、5Rを介してマスタシリンダ2の室2bへ流れ、さらにポート2jからリザーバ13へ抜けるため、ホイールシリンダ3L、3R内のブレーキ液圧は減少し、処理はステップ100に戻る。
【0048】
ここでステップ111の状態は初期状態であるから、この状態が連続すれば、前輪のホイールシリンダ内のブレーキ液圧は元に戻り、前輪は制動されていない状態に戻る。
(3)アンチスキッド制御時
次にアンチスキッド制御時の作動について説明する。前記した通常ブレーキ時と同様な作動でホイールシリンダ3L、3R内の圧力が上昇し、車輪がロックされようとすると、速度センサ21,22からの信号をうけた加速スリップ制御回路20がロック状態を検出し、3ポート2位置切換弁5R、7L、7Rを制御して、ホイールシリンダ3L、3R内の圧力を下げ、車輪のスリップ率を約20%に抑える。
【0049】
従来、アンチスキッド制御装置と推進制御装置とを備えた車両においては、アンチスキッド制御装置に使用されている液圧制御弁、液圧ポンプ、アキュムレータ、センサ等のほかに別個に推進制御装置専用の液圧制御弁、液圧ポンプ、アキュムレータ、センサ等が必要であり、その分構造が複雑で、重量も重く、取り付けスペースも大きくなり、生産コストも高くなるなどの難点があった。
【0050】
これに対し、本発明の前記実施例によれば、従来のアンチスキッド制御装置にわずかの改変を加え、液圧制御弁、液圧ポンプ、アキュムレータなどの構成部品を完全に共用させることにより、構造簡単、重量軽減、取付スペースの減少および生産コストの軽減を図り得るアンチスキッド制御装置を備えた車両用推進制御装置を構成することが可能となる。すなわち、前記実施例では、マスタシリンダのポートおよびピストンを前述した構造とするだけで、上記難点を解消することができる。
【0051】
なお、図5のフローチャートで説明した様に、アンチスキッド制御とスリップ制御は、ブレーキスイッチのON−OFFによって分岐するため、両者の制御が干渉することはない。
次に、図6に基づいて、内燃機関制御回路60及びこの制御回路60によって制御されて内燃機関制御を行なう構成について説明する。
【0052】
内燃機関40の吸気管61には、上流側から、吸入空気量を測定するエアフロメータ76,スロットルバルブ51,各気筒毎に燃料を噴射するインジェクタ62が配置され、排気管64には、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ65,排気の浄化を行なう三元触媒66,触媒66の温度を検出する触媒温度センサ63が配置されている。
【0053】
また、内燃機関40には、冷却水の温度を検出する水温センサ67,ノッキングを検出するノックセンサ68,各気筒毎に混合気の着火を行なう点火プラグ69が設けられ、この点火プラグ69にはディストリビュータ71を介して高圧パルスを供給する点火コイル73が接続されている。尚、ディストリビュータ71には、クランク角の回転を検出するクランク角センサ74及び内燃機関回転数センサ49が取り付けられている。
【0054】
内燃機関40の動力は、変速機75を介して車両の駆動軸に伝達されるが、この変速機75には、変速位置を検出するリバーススイッチ77,ニュートラル位置を検出するニュートラルスイッチ78が設けられている。
次に、図4に基づいて、内燃機関制御回路60について説明する。
【0055】
前記加速スリップ制御回路20と同様に、内燃機関制御回路60は、周知のCPU60a,ROM60b,RAM60c等を中心に論理演算回路として構成され、コモンバス60eを介して入力ポート60f及び出力ポート60gに接続されている。
【0056】
前記入力ポート60fには、内燃機関回転数センサ49,エアフロメータ76,水温センサ67,酸素センサ65,ノックセンサ68,クランク角センサ74,触媒温度センサ63が接続され、各センサからの検出信号が入力される。一方、出力ポート60gには、図示しない駆動回路を介して、点火コイル73,インジェクタ62が接続され、各アクチュエータに制御信号が送られる。
【0057】
つまり、この内燃機関制御回路60は、通常は、各センサからの検出信号に基づき、点火コイル73から点火プラグ69への高電圧発生タイミング(即ち点火時期)や、インジェクタ62の開弁時間(燃料噴射量)を制御するものであり、加速スリップ制御回路20とは、それぞれシリアルI/Oポート26,27を介して全二重通信を行い、ほぼリアルタイムに相手方のデータを送受信でき、加速スリップ発生時には、前記加速スリップ制御回路20からのトルク制御実行信号に基づいて、点火時期の遅角制御及び燃料カット制御を実行する。
【0058】
尚、この内燃機関制御回路60からは、加速スリップ制御回路20へ対して減筒許可などの情報を出力し、トルク低減信号を入力する。また、例えば特開昭63−270950号公報記載の様な変速機制御装置に対して、シフトアップ要求などの指令を出力する。
【0059】
次に、内燃機関制御回路60の動作を図7の減筒数計算のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ201では、例えば、ステップ100により算出された従動輪速度VVR,VVLの平均から算出された車体速度VFより、次式(1)を用いて、内燃機関制御のための制御基準値VSを算出する。
【0060】
VS=max (VF・a1,VSmin ) …(1)
ここで、a1は1以上の定数であり、a1<Kである。そしてこれら基準値のうち、Kはステップ104で用いた値であり、VSは、当該加速スリップ制御に於て駆動輪の目標周速度となるため、その値が路面に対する駆動力が最も大きくなるように、a1は例えば1.12〜1.20程度の値が選ばれる。また、各制御基準値VSの下限値VSmin は約8Km/h程度の定数である。これはエンストとスリップ収束との関係から予め設定する。
【0061】
ステップ202では、後述の処理で当該内燃機関トルク低減制御開始時にセットされるトルク制御実行フラグFSがリセット状態であるか否か、即ち現在内燃機関トルク制御が実行されているか否かを判断し、トルク制御実行フラグFSがリセット状態で、内燃機関トルク制御が実行されていないと判断されると、続くステップ203に移行する。
【0062】
ステップ203では、スロットルバルブ51が全閉状態でなく、駆動輪速度VRが上述の制御基準値VS以上となっているか否かによって、加速スリップ制御の実行条件が成立しているか否かを判断する。
そして、このステップ203で、制御の実行条件が成立していないと判断されると、ステップ204で、内燃機関トルク低減率TRを0とし、そのまま処理を一旦終了する。そうでなければ、ステップ205で、フラグFoへ1をセットした後、ステップ206に移行する。
【0063】
ステップ206では、制御実行条件成立後所定時間(例えば8msec)経過したか否かを判断し、所定時間経過していない場合には、前記ステップ204に進む。これは路面の凹凸等による瞬間的な駆動輪7,8の回転変動に対して加速スリップが発生したと判断して内燃機関トルク低減制御を実行することのないようにするためである。
【0064】
一方、ステップ206で、制御実行条件成立後所定時間経過したと判断されると、ステップ207に移行して、トルク制御実行フラグFSをセットした後、ステップ208では、ブレーキ制御実行中を判断する。ブレーキ制御が実行されていなければ、ステップ209に移行して、目標内燃機関トルクTMを次式(2)によって算出する。
【0065】
TM=(α・△V+β・dV+TM)…(2)
尚、前記(2)式において、αは比例ゲイン,βは微分ゲイン,△Vは目標駆動輪速度となる制御基準値VSと駆動輪速度VRとの差(VS−VR)、dVはその時間微分値である。
【0066】
即ち、ブレーキ制御が行われていないときには、駆動輪速度VRが制御基準値VSに近づくように内燃機関トルク制御を実行するのである。
一方、ブレーキ制御が実行されている場合には、ステップ210に移行して、目標内燃機関トルクTMを所定値cで減少させる。これによって、ブレーキ制御実行中には、目標内燃機関トルクTMが一定速度cで下げられることになる。
【0067】
ステップ211では、出力トルク制御していない状態の内燃機関トルクと内燃機関回転数NE、スロットル開度θの関係が、図8(B)で示されるので、図8(A)のマップより出力トルク制御を実行していないノーマル状態の内燃機関トルクTnを求める。
【0068】
ステップ212では、目標内燃機関トルクTMとノーマル内燃機関トルクTnを比較する。ここで、Tnが小さければ前記ステップ204に進み、一方Tnが大きければ、ステップ213で、次式(3)より内燃機関トルク低減率TRを算出する。
【0069】
TR=(Tn−TM)/Tn…(3)
続くステップ214では、この様にして算出したTRを出力する操作を行う。
そして、このように内燃機関トルク低減率TRが設定されると、一旦処理を終了する。
【0070】
尚、トルク低減率TRの算出は、前述したステップ208〜213の処理に限らず、図13に示すように、内燃機関の回転数をパラメータとして求めるようにしてもよい。
次に、上記ステップ202で、トルク制御実行フラグFSがセット状態であると判断された場合、即ち、内燃機関トルク制御が既に実行されている場合には、ステップ215に移行して、制御開始後フラグFoがセットされているか否かを判断し、フラグFoがセットされていなければ、そのままステップ208に移行する。
【0071】
一方、フラグFoがセットされており、制御開始後一旦スロットル開度全閉となった場合には、ステップ216に移行して、その後スロットルが開かれたか否かを判断する。そして、開であれば再度ステップ208に移行して、上記のように内燃機関トルク低減率算出処理を実行し、全閉であれば、もはや駆動輪に加速スリップが発生することはないと判断して、ステップ217及びステップ218でフラグFS及びFoをリセットした後、ステップ219にて、TRをクリアして処理を一旦終了する。
【0072】
図9は、内燃機関制御回路60のCPU60aで実行される処理のメインルーチンであり、図示しない電源スイッチが通電されると起動される。
図9に示す様に、ステップ300でメモリー、ポート等の初期化を行い、ステップ310で、次の様にして、燃料噴射量Tiを算出する。
【0073】
即ち、検出された吸入空気量Qaと内燃機関回転数NEとに基づいて、基本噴射量Tpを下記(4)式から算出後に、
Tp=K・Qa/NE 但し、K:定数 …(4)
この基本噴射量Tpを、冷却水温度と排気中の酸素温度等に基づいて、下記(5)の様に補正して、燃料噴射量Tiを求める。
【0074】
Ti=Tp×(1+KTW+KAS+KAI+KACC+KDEC−KTR)×KFC…(5)
但し、KTW:水温増量補正係数
KAS:始動および始動後増量補正係数
KAI:アイドル後増量補正係数
KACC:加速補正係数
KDEC:減速補正係数
KTR:トルク低減係数
KFC:フューエルカット補正係数
次に、ステップ302では、点火時期θを下記(6)式より算出する。
【0075】
θ=θBASE−max (θKCS) …(6)
ここで、θBASEは基本点火時期、θKCSはノックセンサ68で検出されたノッキングを所定値以下に抑える点火遅角量である。尚、これらは特公平3−4746号公報等により公知である。
【0076】
次に、噴射制御について図10のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図示しないタイマーとレジスターの比較によって発生する割込時に実行されるものであり、各気筒の吸気行程に同期して実行される。
図10に示す様に、ステップ400では、減速時や最高速、過回転防止などによる燃料カット要求が発生しているかを判定し、ステップ401では、図11(A)のマップを用い、燃料カットする気筒を判定するカウンタCinj2を、気筒別F/C実行値FCLBへ変換する。
【0077】
ステップ402では下記(7)式により、前記ステップ214の処理により出力された内燃機関トルク低減率TRに基づいて、F/C要求気筒数FCLを算出する。
FCL=12×TR/100…(7)
次に、ステップ403では、FCL≧FCLBであれば、ステップ404〜407を迂回し、ステップ408で気筒毎のF/C回数カウンタCFC#(#は気筒No.を意味し気筒判別カウンタCinjの値を用いる)をインクリメントする。
【0078】
ステップ404では、図11(B)のマップを用い、CFC#からF/C補正量TFCを算出し、ステップ405でCFC#をクリアし、ステップ406で、Tiにバッテリ電圧補正量TBとTFCを加算し、最終噴射時間Tinjを算出し、ステップ407では、インジェクタ62へ噴射開始指令を送ると同時にタイマの現時刻にTinjを加算した値を噴射制御レジスターへセットし、その時刻になると、ハードウェアロジックにより噴射が終了する。
【0079】
尚、前記ステップ400又は403でYesの場合は、ステップ407を迂回するので噴射が停止される。
続くステップ409では、次に本ルーチンへ入る時刻を計算し、噴射開始時期レジスターへセットする。この噴射開始時期は下記(8)式で算出する。
【0080】
【数1】
Figure 0003552287
【0081】
但し、式の最後の2msはインジェクタ62の噴露到達時間である。
ステップ410〜412は、気筒判別カウンタCinj を1〜6の範囲でインクリメントする。続くステップ413〜415は、減筒用の気筒判別カウンタCinj2を1〜12の範囲でインクリメントする。
【0082】
次に、加速スリップ制御回路20で実行される減筒制御について図12のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップ601では前述したステップ207の処理によりセットされるトルク制御実行フラグFsが1であると判定されると、ステップ602へ移行し、前述した減筒気筒数計算を行う。
【0083】
ステップ603では内燃機関40の暖機状態を水温で判定し、例えば40度未満であれば、ステップ604で左右駆動輪速度偏差(VWL−VWR)の絶対値と所定の比較値Refとを比較する。比較値Refの範囲はブレーキ制御のスリップ判定値VT(ステップ104参照)の2倍以上とする。これはブレーキ制御を実行中に左右駆動輪差による内燃機関制御が働くと、もたつき感が発生するのを防止するためである。
【0084】
ステップ605ではステップ602で計算した減筒数になるように内燃機関制御回路60へ要求信号を出力する。ステップ603で水温が40度以上と判定されればステップ604を迂回してステップ605へ移るので、左右駆動輪速度の偏差に関係なく減筒を行う。
ステップ603で内燃機関40の暖機状態を判定する理由は、内燃機関40の温度が低いときは排気へ未燃成分が多量に排出されるので、減筒を行い、新気を排気中に供給すると排気管内で燃焼が起こり、排気部品を焼損する恐れがあるためで、本実施例では左右の駆動輪速度差が発生したときのみ低温時には減筒を行う。
【0085】
尚、減筒制御は前述した図12に示すフローチャートの場合に限らず、他の実施例について、図14、図15に示すフローチャートを用いて説明する。前述した実施例と同じ処理については、同一ステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0086】
図14に示すように、ステップ603で40度未満と判定されると、ステップ604に移行し、左右駆動輪速度偏差(VWL−VWR)の絶対値と所定の比較値Refとを比較する。比較値Ref以上であれば、ステップ606に移行し、全気筒を減筒するように減筒数を設定する。つまり、全気筒を休止するのである。あるいは、図13に示すように、内燃機関の回転数に応じて減筒数を設定するようにしてもよい。
【0087】
次に、ステップ607では、一定時間、例えば100ms経過したかどうかを判定し、経過していないときには、ステップ605で減筒を実行する。そして、100ms経過後は、ステップ605を迂回して、減筒を中止する。
即ち、所定気筒数の減筒を所定時間行うようにしても、従来のものに対して改良することができる。
【0088】
あるいは、図15に示すように、前述した実施例では、ステップ604で左右駆動輪速度偏差の絶対値と所定の比較値Refとを比較したが、これに代えて、ステップ608で左右駆動輪加速度偏差の絶対値と所定の比較値Refとを比較するようにしても同様に実施可能である。この場合でも、比較値Refの範囲はブレーキ制御のスリップ判定値の2倍以上とする。
【0089】
次に、図16に基づいて、第3実施例で用いられる減筒実行判定制御について説明する。
図16に示す様に、ステップ500では、触媒温度センサ63の信号から、触媒温度が所定比較値800℃以上であれば、ステップ505で、減筒実行許可フラグFgをクリアする。
【0090】
また、触媒温度が800℃を下回る場合は、ステップ501で、冷却水温度(以後水温という)と第1の所定比較値−20度とを比較し、水温が高ければ、ステップ502で、減筒実行許可フラグFgをセットする。一方、ステップ501で、水温が低ければ、ステップ503で、フラグFgの判定を行い、Fg=0であれば、本ルーチンを終了し、Fg=1であればステップ504に進む。
【0091】
ステップ504では、第2の比較値−25度と比較し、−25度以下であれば、ステップ750へ移って、減筒実行許可フラグFgをクリアし、−25度を上回れば、一旦本処理を終了する。
次に、前述した図10に示した噴射制御に代えて、第3実施例としての噴射制御について、図17のフローチャートによって説明する。
【0092】
ステップ402の処理により、F/C要求気筒数FCLを算出した後、ステップ420で減筒実行許可フラグFgを判定し、Fg=1の触媒温度が低いときには、ステップ421〜423を迂回し、Fg=0の触媒温度が高いときには、ステップ421に移行する。
【0093】
ステップ421及びステップ422では、F/C要求気筒数FCLを判定し、F/C要求気筒数FCLが0<FCL≦3であるときには、ステップ423でF/C要求気筒数FCLに3を代入する。これは、F/C要求気筒数FCLが2以下と小さく、触媒温度が高いときには、1及び2気筒の減筒を禁止するためである。これは、減筒数が極端に小さいときに触媒温度が上昇し易いための対策処置である。
【0094】
以上本発明はこの様な実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【0095】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の車両用推進制御装置は、加速スリップ発生時に、左右駆動輪に速度差が生じたとき、内燃機関の出力を抑制して差動歯車の焼き付きを防止することができるという効果を奏する。また、減筒により内燃機関の出力を抑制することにより、応答よく出力抑制ができる。
【0096】
更に、冷却水温に応じて出力抑制制御を行うことにより、内燃機関の温度が低いときは排気へ未燃成分が多量に排出されるので、このときに減筒制御を行うと新気が排気管中に供給されて燃焼が起こるので、これを防止して部品の破損を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用推進制御装置の基本的構成を例示したブロック図である。
【図2】本実施例の車両用推進制御装置のブレーキ系統の油圧回路図である。
【図3】本実施例のマスタシリンダの詳細断面図である。
【図4】本実施例の電気系統の構成を示すブロック図である。
【図5】本実施例の加速スリップ制御回路において行われるスリップ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施例の内燃機関の概略構成図である。
【図7】本実施例の内燃機関制御回路において行われる減筒数計算制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】本実施例の減筒数計算に用いられるスロットル開度、回転数、出力トルクの関係を示すグラフである。
【図9】本実施例の内燃機関制御回路において行われる燃料噴射量、点火時期算出制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本実施例の内燃機関制御回路において行われる噴射制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】本実施例の噴射制御処理において気筒補正に用いられるマップである。
【図12】本実施例の加速スリップ制御回路において行われる減筒制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】他の実施例として減筒制御処理において用いられる回転数とトルク低減率との関係を示すグラフである。
【図14】他の実施例としての減筒制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図15】更に別の実施例としての減筒制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】他の実施例の内燃機関制御回路において行われる減筒実行判定処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】他の実施例の内燃機関制御回路において行われる噴射制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図18】差動歯車機構の概略斜視図である。
【図19】左右で摩擦係数が異なる路面の走行時のスリップ制御の説明図である。
【図20】差動歯車の動作を説明する展開図である。
【符号の説明】
M1…駆動輪 M2…加速スリップ制御手段 M3,40…内燃機関
M4…出力抑制手段 M5…抑制制御手段 1…ブレーキペダル
2b,2c…室 3L,3R,4L,4R…ホイールシリンダ
11…ブースタ 21…駆動輪速度センサ 60…内燃機関制御回路
154…ピニオンシャフト 156,158…ピニオン
FS…トルク実行許可フラグ FCL…F/C要求気筒数

Claims (3)

  1. 車両加速時に駆動輪に発生する加速スリップを検出し、該加速スリップ発生が検出されたときに駆動輪を制動する加速スリップ制御手段と、
    内燃機関の出力を抑制する出力抑制手段とを備えた車両用推進制御装置において、
    前記出力抑制手段は、前記内燃機関の減筒により出力を抑制し、
    更に、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪の速度差が大きいとき、前記出力抑制手段による前記内燃機関の減筒制御を実行し、前記速度差が小さいとき、前記出力抑制手段による減筒制御を実行せず、また、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、前記冷却水温が所定値以上では、前記駆動輪の速度差に関係なく前記出力抑制手段による減筒制御を実行する抑制制御手段を備えたことを特徴とする車両用推進制御装置。
  2. 前記抑制制御手段は、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、前記駆動輪の速度差が大きいとき、前記出力抑制手段による前記内燃機関の減筒制御を一定時間経過するまで実行することを特徴とする請求項1記載の車両用推進制御装置。
  3. 車両加速時に駆動輪に発生する加速スリップを検出し、該加速スリップ発生が検出されたときに駆動輪を制動する加速スリップ制御手段と、
    内燃機関の出力を抑制する出力抑制手段とを備えた車両用推進制御装置において、
    前記出力抑制手段は、前記内燃機関の減筒により出力を抑制し、
    更に、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、冷却水温が所定値以下では、左右駆動輪の加速度差が大きいとき、前記出力抑制手段による前記内燃機関の減筒制御を実行し、前記加速度差が小さいとき、前記出力抑制手段による減筒制御を実行せず、また、前記加速スリップ発生が検出され、かつ、前記冷却水温が所定値以上では、前記駆動輪の加速度差に関係なく前記出力抑制手段による減筒制御を実行する抑制制御手段を備えたことを特徴とする車両用推進制御装置。
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