JP3551586B2 - コンデンサ放電回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサを放電させるコンデンサ放電回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭59−172368号公報には、インバータ入力段に設けられたコンデンサを放電させる回路の一例構成が示されている。この公報に示されている回路では、電源とインバータとの接続が断たれたときに、インバータの負荷であるモータの巻線抵抗を利用して、インバータの入力段に設けられているコンデンサを放電させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような原理による放電は、インバータの制御回路が放電動作中正常に動作し続けている限り実行することができる。しかしながら、特殊な用途又は特殊な状況下では、かかる原理を用いた放電のみでは十分でない。
【0004】
例えば、電気自動車走行用のモータの駆動制御に係るインバータを想定する。さらに、このインバータを搭載している電気自動車が交通事故に遭遇し、インバータを制御するための制御回路や、この制御回路に電源を供給するバッテリに破壊乃至損傷が生じたとする。このような状況下では、制御回路がコンデンサ放電用の制御手順を実行することができないから、インバータ入力段に設けられているコンデンサには電荷が残存したままとなる。しかるに、この電気自動車の乗員を救助するためにレスキュー隊が突入すること等を考慮にいれると、このようにコンデンサに電荷が残存している状況は好ましくない。従来は、乗員救助等の作業に際してレスキュー隊等にコンデンサの放電作業という作業負担が強いられていた。
【0005】
本発明の第1の目的は、制御回路とは独立に動作しまたこの制御回路の電源とは独立の電源にて動作する回路を設けることにより、制御回路やその電源に損傷乃至破壊が生じた場合であってもコンデンサを確実に放電することができる回路を提供することにある。本発明の第2の目的は、第1の目的の達成を通じ、レスキュー隊の突入時等における安全性を高めかつ作業負担を軽減することにある。本発明の第3の目的は、コンデンサを放電するための回路の電源をコンデンサにて賄うことにより、従来の装置に新たにバッテリ等を追加することなく第1及び第2の目的を達成することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、車両走行用モータを駆動する直流電源を用いるインバータ回路に設けられるコンデンサ放電回路であって、コンデンサが既に充電されているときに第1の定電圧を出力する第1定電圧源と、前記直流電源と前記コンデンサの接続を開閉する接点と、前記接点が閉じているときには前記第1の定電圧よりも高い定電圧を出力し、開いているときには前記第1の定電圧よりも低い電圧を出力する第2定電圧源と、第1定電圧源と第2定電圧源とに接続され、第2定電圧源の出力電圧が第1定電圧源の出力電圧よりも低いときにのみ前記コンデンサの両端に放電抵抗を接続する制御素子とを備え、前記接点が閉じた状態から開いた状態となったときは、前記コンデンサに前記放電抵抗を接続すると共に前記コンデンサの両端間の電圧を前記インバータ回路の電源として利用して当該コンデンサが放電さることを特徴とする。
また、本発明に係るコンデンサ放電回路は、前記制御素子を前記コンデンサの充電電圧を電源として用いるものとすることができる。また、本発明に係るコンデンサ放電回路は、前記インバータ回路を制御し前記接点の開閉を制御する制御回路とをさらに備え、前記制御回路は前記インバータ回路が動作していないときは前記接点を開くよう前記接点を制御し、前記接点は前記制御回路からの制御を受けないときは開いた状態となることを特徴とするものとすることができる。
【0007】
本構成においては、直流電源とコンデンサが接点を介して接続されておりかつコンデンサが既に充電されているときに、第1定電圧源からは第1の定電圧が、第2定電圧源からは第2の定電圧が、それぞれ出力される。この状態では、制御素子の電源端子に第1定電圧源から第1の定電圧が印加されるためこの制御素子は動作する。しかし、第1の定電圧は第2の定電圧よりも低いから、制御素子はコンデンサの両端に放電抵抗を接続しない。その後、接点による直流電源とコンデンサとの接続が断たれると、第2定電圧源の出力電圧は第1定電圧源の出力電圧(第1の定電圧)よりも低くなるため、制御素子はこの時点でコンデンサの両端に放電抵抗を接続する。これにより、コンデンサに蓄えられている電荷は徐々に放電していく。コンデンサの放電が進行すると、第1定電圧源は第1の定電圧を出力し得なくなるから、制御素子による放電制御動作は自動的に終了する。このように、本構成においては、外部からなんら制御信号の供給を受けることなくまた電源の供給を受けることなく、コンデンサ自体の電圧を利用してコンデンサが放電される。したがって、従来と異なり、上記コンデンサを含む電力回路(例えばインバータ)の制御回路やその電源に損傷乃至破壊が生じている場合であっても、コンデンサが確実に放電される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。
【0009】
図1には、本発明の一実施形態に係る電気自動車のシステム構成が示されている。この図に示される電気自動車においては、三相交流モータが車両走行用のモータ10として使用されている。主バッテリ12はこのモータ10に駆動電力を供給する直流電源である。インバータ16は、コンタクタ14を介して供給される主バッテリ12の放電出力をコントローラ18の制御の下に直流から交流に変換しモータ10に供給する。インバータ16は、コントローラ18から供給される制御信号、例えばパルス幅変調(PWM)された信号によりスイッチングされるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )等のスイッチング素子Q1〜Q6、このQ1〜Q6に逆並列接続されたダイオードD1〜D6、及び主バッテリ12から供給される直流電圧を平滑するコンデンサCを有している。コントローラ18は、IG信号、ST信号等の供給に応じ、またアクセル信号、ブレーキ信号、シフト信号等の内容に応じてPWM信号を発生させ、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチングによりモータ10の出力を制御する。図中、符号20で示されるのはコントローラ18を含め車載の補機に電源を供給する補機バッテリである。また、符号24で示されているのは主バッテリ12の充放電電流が所定値以上となったときに溶融するヒューズである。
【0010】
コンタクタ14は、IG信号、ST信号等に応じコントローラ18によりオン/オフされる3個のリレーa〜cから構成されている。リレーa及びbは主バッテリ12の両端をインバータ16の直流入力端すなわちコンデンサCの両端に直結するリレーであり、リレーcは抵抗Rを介して接続するリレーである。リレーcを設けているのは、始動時等にコンデンサCの充電によって主バッテリ12からインバータ16へと大電流が流れるのを防止するためである。そのため、モータ10及びインバータ16を始動する際には、図2に示されるように、まずリレーb及びcをオンさせ抵抗Rを介しコンデンサCを充電し、その後コンデンサCが十分に充電されたと見られる時間が経過した時点でリレーaをオンさせる。これにより、コンタクタ14及びヒューズ24を介して大電流が流れることを防ぐことができる。
【0011】
また、この実施形態においては、抵抗RZ1及びツェナーダイオードZD1の直列回路がコンデンサCと並列に、また抵抗RZ2及びツェナーダイオードZD2の直列回路がリレーa及びcから見て主バッテリ12側とリレーbから見てインバータ16側とを結ぶよう、それぞれ接続されている。さらに、リレーcと抵抗Rの接続点にコレクタが、またリレーbから見てインバータ16側のマイナス側母線にエミッタが接続されるよう、IGBT等の電力用トランジスタTrが設けられている。加えて、ツェナーダイオードZD1にて生成される定電圧がその電源端子に印加されるコンパレータ22が設けられており、このコンパレータ22の非反転入力端子にはツェナーダイオードZD1のカソードが、反転入力端子にはツェナーダイオードZD2のカソードがそれぞれ接続されている。コンパレータ22の出力端は出力抵抗R0 を介してトランジスタTrのゲートに接続されている。
【0012】
この実施形態が特徴とするのは、第1に、ツェナーダイオードZD1及びZD2、コンパレータ22並びにトランジスタTrにより、補機バッテリ20から電源供給を受けずに、すなわちコンデンサCの両端間の電圧を電源として利用して、コンタクタ14がオフされたときにコンデンサCを自動放電させる回路を構成したことにある。この実施形態の第2の特徴は、コンデンサCの充電に使用した抵抗Rを放電にも使用することにより装置構成を簡素かつ小型にし安価な電気自動車を実現していることにある。
【0013】
図2に示されるように、コントローラ18は、IG信号がオフされたとき等にコンタクタ14に指令を与えリレーa〜cを一斉にオフさせる。すると、ツェナーダイオードZD2の両端の電圧はそれまでの定電圧VZD2 から0へと立ち下がる。他方、ツェナーダイオードZD1の両端間の電圧は、コンデンサCの放電が十分進行するまでは引き続きそれまでの定電圧VZD1 を維持し続ける。したがって、リレーa〜cがオフされた時点で、コンパレータ22の出力はL値からH値へと立ち上がる。これに応じ、トランジスタTrがオンする結果、コンデンサC、抵抗R及びトランジスタTrが閉回路を形成し、したがってコンデンサが抵抗Rを放電抵抗として強制放電させられる。その結果コンデンサCの両端間の電圧が所定値以下に下がるとツェナーダイオードZD1は定電圧VZD1 を出力し得なくなる。この時点で、コンパレータ22の動作が停止する。なお、リレーa〜cがオンしているときにトランジスタTrがオンするのを防ぐべく、ツェナーダイオードZD1及びZD2は、VZD1 <VZD2 となるよう選択乃至設計する。
【0014】
このように、本実施形態によれば、コンタクタ14がオフされたときにこれに応じてコンデンサCが自動放電される。したがって、コントローラ18や補機バッテリ20が損傷乃至破壊しているときであっても、あるいはこれらの交換作業が行われているときであっても、コンタクタ14のリレーa〜cがオフするかぎり、コンデンサCに電荷が残存し続けることがない。これにより、図1に示される構成を有する電気自動車が交通事故に遭遇しレスキュー隊が人命救助に突入するときにコンデンサCを放電させる作業を実施する必要がなく、迅速に乗員救助に当たることができる。なお、コンタクタ14に関しては、コントローラ18からの信号供給が断たれたときに自動的にオフするように設計しておくのが好ましい。
【0015】
以上の説明は、電気自動車やそのインバータ16を例として行ったが、本発明は電気自動車以外の装置においても、またインバータ16以外の電力回路についても、適用することができる。さらに、ツェナーダイオードZD1及びZD2以外の定電圧源を用いるようにしても構わない。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の構成によれば、放電させるべきコンデンサの両端間の電圧を電源として利用して当該コンデンサを放電させるよう、第1定電圧源、第2定電圧源及び制御素子を配置及び接続したため、放電させるべきコンデンサを内蔵する電力回路の制御回路や制御用電源に損傷乃至破壊が生じている場合等であっても、コンデンサに電荷が残存し続けることがなくなり、作業性や安全性がより高い電力回路を実現することが可能になる。また、放電回路を構成する制御素子の電源として前記コンデンサの充電電圧を用いることで、装置構成を簡素かつ小型にし安価なものとすることができる。また、制御回路はインバータ回路が動作していないときは接点を開くよう接点を制御し、接点は制御回路からの制御を受けないときは開いた状態となるようにしておくことで、損傷乃至破壊時において確実に放電が行われるものとすることができる。
【0017】
【補遺】
なお、本発明は次のような構成としても把握できる。
【0018】
(1)本発明の第2の構成に係るコンデンサ充放電回路は、コンデンサを充電するときに閉じ直流電源と当該コンデンサとの間に充電抵抗を挿入する第1の接点と、コンデンサの充電を終えたときに閉じ充電抵抗の両端を短絡する第2の接点と、コンデンサが既に充電されているときに第1の定電圧を出力する第1定電圧源と、第1及び第2の接点のいずれかが閉じているときに第1の定電圧よりも高い第2の定電圧を出力し、いずれも開いているときには第1の定電圧よりも低い電圧を出力する第2定電圧源と、その電源端子が第1定電圧源に接続され、電源端子に印加される電圧が第1の定電圧以上であるときにのみ動作し、第1定電圧源の出力電圧よりも第2定電圧源の出力電圧の方が低いときに上記コンデンサの両端に放電抵抗を接続する制御素子と、を備え、上記コンデンサの両端間の電圧を電源として利用して当該コンデンサを放電させ、また、単一の抵抗にて上記充電抵抗と上記放電抵抗とを構成することを特徴とする。本構成によれば、第1の構成と同様の作用効果を得ることができる。本構成によれば、さらに、コンデンサの充放電を単一の抵抗にて実行できるため、回路を構成する抵抗の本数が少なくて済み、装置構成を小形化及び安価化できる。
【0019】
(2)本発明の第3の構成に係る電気自動車は、車両走行用の交流モータと、当該交流モータに駆動電力を供給する主バッテリと、主バッテリの放電出力を直流から交流に変換して上記交流モータに供給するインバータと、上記交流モータ及びインバータの停止に際してインバータの直流端に設けられている平滑用のコンデンサの両端間の電圧を駆動電源として当該コンデンサを放電させる放電回路と、を備えることを特徴とする。本構成によれば、第1の構成と同様の作用効果を電気自動車にて得ることができる。すなわち、交通事故その他により車載の制御装置や制御用電源に故障乃至破壊が生じた場合であっても、レスキュー隊の突入等に先立ち自動的にコンデンサが放電されるから、事故当事者の救出等の作業をより安全に実行できるようになる。さらに、交流モータ及びインバータの始動に際してコンデンサを充電させる充電回路を設け、充電回路及び放電回路を併せた充放電回路の構成を第2の構成と同様にすれば、第2の構成に係る作用効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】この実施形態における各リレー、コンパレータ、トランジスタ及びコンデンサの動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10 モータ、12 主バッテリ、14 コンタクタ、16 インバータ、18 コントローラ、20 補機バッテリ、22 コンパレータ、a〜c リレー、R 充放電抵抗、ZD1,ZD2 ツェナーダイオード、Tr トランジスタ、Cコンデンサ。

Claims (3)

  1. 車両走行用モータを駆動する直流電源を用いるインバータ回路に設けられるコンデンサ放電回路であって、
    コンデンサが既に充電されているときに第1の定電圧を出力する第1定電圧源と、
    前記直流電源と前記コンデンサとの接続を開閉する接点と、
    前記接点が閉じているときには前記第1の定電圧よりも高い定電圧を出力し、開いているときには前記第1の定電圧よりも低い定電圧を出力する第2定電圧源と、
    第1定電圧源と第2定電圧源とに接続され、第2定電圧源の出力電圧が第1定電圧源の出力電圧よりも低いときにのみ前記コンデンサの両端に放電抵抗を接続する制御素子とを備え、
    前記接点が閉じた状態から開いた状態となったときは、前記コンデンサに前記放電抵抗を接続すると共に前記コンデンサの両端間の電圧を前記インバータ回路の電源として利用して、当該コンデンサが放電されることを特徴とするコンデンサ放電回路。
  2. 請求項1に記載のコンデンサ放電回路であって、
    前記制御素子は前記コンデンサの充電電圧を電源として用いることを特徴とするコンデンサ放電回路。
  3. 請求項1又は2に記載のコンデンサ放電回路であって、
    前記インバータ回路を制御し前記接点の開閉を制御する制御回路とをさらに備え、
    前記制御回路は前記インバータ回路が動作していないときは前記接点を開くように前記接点を制御し、
    前記接点は前記制御回路からの制御を受けないときは開いた状態となることを特徴とするコンデンサ放電回路。
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