JP3549913B2 - 加湿器用発熱体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、湿潤状態において優れた耐久性と導電性を有する加湿器用発熱体と抵抗制御が可能な前記加湿器用発熱体の工業的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、空調設備の分野では温度だけではなく湿度の発生を含めた装置として、容易に湿度コントロールが可能な加湿器の開発が進められている。とくに高精度の湿度制御が要求される加湿器として、多孔質セラミックス発熱体に水を供給しながら通電発熱する機構の装置が注目されている〔「空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集(1992)、P.1301〜1304〕。この加湿器に使用される発熱体には、要求性能として優れた耐久性、抵抗発熱性能ならびに水に対する湿潤性が必要とされている。
【0003】
本発明者の一人は、前記の要求特性を満たす応答性のよい発熱基材として、既に気孔率が60%以上で、気孔径100μm 以下の占有率が5〜20%の気孔分布をもち、かつ保水量が0.1〜0.3g/ccの特性を示す連続気孔組織の導電性セラミックス多孔体からなる加湿器用ヒーター部材を開発した(特開平5−172377号公報) 。しかし、この発熱体組織では抵抗の制御に難点があり、ばらつきの少ない一定品質の材料を定常生産できないところに課題が残されていた。
【0004】
SiCはセラミックス系の半導体であり、不純物として III属元素(Al、B等)がドープされるとP型半導体となり、V属元素(N、P等)がドープされるとN型半導体となって電気的特性が変化することが知られている。この原理を利用してSiC発熱体の抵抗制御を図る試みも数多く提案されている。例えば、特開昭52−110499号公報には微粒子状炭化珪素を特定の密度を得るに十分な熱圧条件で処理し、冷時体積比抵抗を約1.25Ωcm以下に低下させるに十分なように陰性ドーピング元素を陽性ドーピング元素に対し過剰量で含むように導入する燃料点火器の製造方法が開示されている。
【0005】
特公昭60−12761号公報には、抵抗器本体がP型の不純物添加した熱分解多結晶等軸系炭化珪素からなる電気抵抗器が提案されており、製法としては気体珪素化合物、気体炭素化合物および硼素水素化物のような不純物添加元素の混合気体を用いて熱分解により支え上に堆積する方法が開示されている。また、特公昭64−4312号公報には、SiC粉末に0.3〜3.0重量%の硼素相当量の硼素又は硼素化合物と0.1〜6.0重量%の炭素相当量の炭素または炭素化合物を添加した混合成形物を一次焼成し、ついで80〜500気圧の窒素ガス雰囲気中で1500〜2300℃の温度で理論密度の80%比抵抗0.13Ωcm以下の炭化珪素発熱体に再結晶する二次焼成を施す方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術はいずれも加湿器用発熱体を対象とするものではない関係でこれに必要な有用特性である多孔質SiC組織については全く認識されていないし、製造方法が複雑であって量産性に乏しい問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、多孔質SiC組織に特定量範囲のB成分とN成分を含有する耐久性、抵抗発熱性能および湿潤性に優れる加湿器用発熱体と、簡易な手法でのBとNのドープ化により抵抗調整可能な加湿器用発熱体の工業的な製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による加湿器用発熱体は、気孔率60%以上の多孔質SiC構造体からなり、組織中にBを0.01〜0.10重量%、Nを0.05〜0.08重量%の範囲で含有し、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を備えることを構成上の特徴とする。
【0009】
加湿器用発熱体の基材を気孔率60%以上の多孔質SiC構造体とするのは、湿潤体として多量の加湿発生を与えるために必要な材質条件となる。気孔率が60%未満の気孔組織では通気性が悪くなって多孔構造内部の水分を蒸発させることが困難となり、多量の加湿を発生させることができなくなる。しかし、気孔率が90%を越えるような多孔組織になると材質強度が脆弱となって実用に耐えなくなる。とくに好ましい気孔率の範囲は、80〜85%である。
【0010】
多孔質SiC構造体に含有するBとNの成分は、SiC組織に正と負のドーピング剤が共存した補償型半導体を形成する要素となるもので、この導入によって加湿器用発熱体として好適な抵抗発熱性能を付与することが可能となる。この種の補償型半導体では、電気伝導に関してBとNの元素が互いに打ち消し合う作用を営むため、両成分の含有量を加湿器用発熱体として最も好ましい抵抗範囲になるようにバランスさせる必要がある。本発明で特定したB;0.01〜0.10重量%、N;0.05〜0.08重量%の範囲は、前記のバランスを保つ要件となるもので、この範囲を外れると抵抗変動が激しくなって加湿器用発熱体として好適な抵抗発熱性能を付与することができなくなる。例えば、N含有量が前記の範囲にある場合にB含有量が0.10重量%を越えたり、B成分が含有しない組成では、比抵抗および抵抗の温度依存性が共に大きくなり、発熱体として機能しなくなる。
【0011】
本発明による加湿器用発熱体の抵抗特性は、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内にあり、この範囲は上記のBとNの含有度合により制御される。この比抵抗が5Ωcm未満では円滑な抵抗発熱が発現せず、15Ωcmを上回ると環境温度による抵抗変動が大きくなって安定使用が困難となる。
【0012】
上記の加湿器用発熱体を得るための本発明による第1の製造方法は、気孔率が60%以上のSiC多孔質体を、B含有化合物の溶液に浸漬処理し、乾燥後、N2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の基材となるSiC多孔質体は、気孔率が60%以上の性状を有するものであれば製造履歴は特に限定されるものではないが、本発明の目的に対しては、例えばポリウレタンフォームのような三次元網目構造の有機質多孔体の骨格にSiCのスラリーを含浸させて乾燥したのち仮焼成し、この仮焼成体にSiCスラリーを再含浸し、余剰スラリーを除去して乾燥したのち焼成処理を施す方法で製造されたものが最も好適に用いられる。なお、SiC多孔質体にAl、Ga、In等の成分が含有されていると電気抵抗値に影響を及ぼすため、これら不純物の含有量は0.05重量%以下であることが好ましい。前記した製造方法においてこれら不純物成分を減少させるには、含浸するSiCスラリーに高純度のものを用いればよい。
【0014】
上記のSiC多孔質体は、B含有化合物の溶液に浸漬処理する。B含有化合物としては、水溶性に優れるNa2 B4 O7 ,NaBF4 、NaBO2 、KBO2 およびKBH4 から選ばれた少なくとも1種が好ましく使用され、水溶液として使用に供される。B源としては、例えばBN、B4 C等の固体物質もあるが、SiCに均一に分散させることが困難で抵抗変動が生じる。前記のように水溶液状態で使用することによりSiCに均一分散させることが可能となり、抵抗変動を減少させることができる。
【0015】
水溶液の濃度はSiC発熱体に付与する抵抗特性を考慮して設定される。すなわち、SiC発熱体の比抵抗は組織内に残留固溶するB量により変動するが、この調整はSiC多孔質構造体を浸漬するB含有化合物の溶液濃度によっておこなうことができる。しかし、最終的に得られる加湿器用発熱体に対するB濃度として0.01〜0.10重量%になるように調整する必要がある。この要件を満たすための水溶液濃度は、概して1.5重量%以下である。
【0016】
B含有化合物の溶液に浸漬処理したSiC多孔質構造体は、例えば遠心脱水器により水切りしたのち乾燥し、引き続きN2 雰囲気中で加熱処理する。この加熱工程は、浸漬処理により付着したB成分をSiC組織内にドープすると同時に、NをSiC組織にドープさせる段階で、好適な加熱条件は加熱処理装置として密閉式高周波誘導加熱炉を用い、N2 圧力を200〜1500Torr、加熱温度を1900〜2200℃、好ましくは2000〜2100℃の範囲に設定することである。この条件設定により、多孔質SiC組織中にNが0.05〜0.08重量%の範囲でドープされる。N2 圧が1500Torrを越えたり、加熱温度が1900℃未満となるとB成分がSiC組織内に円滑にドープされなくなって抵抗調整が困難となり、N2 圧が200Torrを下廻り、加熱温度が2200℃を越えるようになるとNのドープが円滑に進行しなくなるうえ、SiCの分解が激しくなって材質消耗を越す。
【0017】
加湿器用発熱体を得るための本発明による第2の製造方法は、三次元網目構造の有機質多孔体を、B含有化合物を溶解したSiCスラリーに浸漬処理し、乾燥後に仮焼成し、必要に応じて仮焼成体に前記SiCスラリーを再含浸したのち、N2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することをプロセス上の特徴とする。
【0018】
骨格基材となる三次元網目構造の有機質多孔体としては、均一な発泡組織を有するポリウレタンフォームやラバーフォームが好ましく使用される。該有機質多孔体は、B含有化合物を溶解したSiCスラリーに浸漬処理して、含浸させる。SiCスラリーは、好ましくは最大粒径20〜80μm 、平均粒径1〜10μm の性状を備える高純度のSiC微粉を水に分散させ、適量の粘度調整剤を添加して形成されるが、この溶液にB含有化合物を溶解させる。B含有化合物としては上記した第1の製造方法と同一の物質を使用することができ、溶解濃度も最終的に得られる加湿器用発熱体に占めるB濃度が0.01〜0.10重量%の範囲になるように調整される。
【0019】
浸漬後の有機質多孔体は、余剰のスラリーを遠心分離により除去したのち乾燥し、ついで大気雰囲気下に300℃程度の温度で仮焼成して有機質成分を焼却除去する。更に、必要に応じて前記SiCスラリーに再度浸漬して含浸し、同様に余剰スラリーを遠心除去して乾燥する。乾燥した焼成体をN2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度で加熱処理する。加熱処理の条件は、第1の製造方法と同様にN2 圧力が200〜1500Torrで、加熱温度を2000〜2100℃の範囲に設定することが好ましい。
【0020】
このようにして得られた加湿器用発熱体には、ターミナル電極を接合して製品化する。ターミナル電極としては、長期使用における耐蝕性と抵抗の安定性をもたせるためSi含浸したSiC焼結体により構成することが好ましく、発熱体との接合は例えばSiC粉末と炭素粉末を接着性樹脂と混合した導電性接着剤により接着し熱処理する方法でおこなうことができる。
【0021】
【作用】
本発明の加湿器用発熱体は、気孔率が60%以上のSiC多孔質構造体により構成されているから、十分な耐久性を有し、水に対する湿潤性が良好で多孔組織内部に吸収、吸蔵される水分量が極めて多くなる。したがって、発熱に際して常に多量の加湿粒子を発生させることができる。また、その組織はSiC結晶にBとN元素がドープした補償型半導体として100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を保有しており、この特有の組織特性が加湿器用発熱体とした際に優れた抵抗発熱性能を発揮する。
【0022】
一般に、SiC発熱体の比抵抗は温度に依存する要素が大きく、常温から約600℃までの温度域では抵抗が低下するため、抵抗の温度依存性が頗る高い。ところが、加湿器用発熱体の場合には水中で使用される関係で水の沸点である100℃程度が使用温度となるため、5〜15Ωcmの体積比抵抗範囲では温度依存性が極めて小さくなる。この作用がBとNによる抵抗調整機能と相俟って、常にばらつきの少ない安定した通電抵抗値の発現が保証される。
【0023】
本発明の製造方法に従えば、溶液浸漬という簡易な手段でB含有化合物を含浸付着させ、これをN2 雰囲気中で加熱処理することにより、SiC結晶粒内にB元素とN元素が同時に固溶した補償型半導体に転化させることができる。したがって、応答性よく多量の加湿発生が得られ、かつ長期間に亘り極めて安定した性能と耐久性が保証される加湿器用発熱体を簡易な工程で効率的に製造することが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【0025】
実施例1
(1) SiC多孔質体の調製
純度99.98%、平均粒径10μm のSiC粉末に1重量%のポリビニルアルコールと水を加えて粘度1000cpのSiCスラリーを調製し、このスラリー中に三次元網目構造の軟質ポリウレタンフォーム(#20, 150×80×70mm) を浸漬して含浸処理した。ポリウレタンフォームをスラリーから引上げ、余剰スラリーを除去したのち乾燥し、大気中、300℃の温度で仮焼成した。このようにして有機質成分を焼却除去した仮焼成体に粘度80cpのSiCスラリーを再含浸し、余剰のスラリーを除去したのち、両側端部に相当する面に同スラリーを塗布して目封じを施し乾燥した。得られた多孔質SiC成形体は、気孔率は83%、嵩密度は0.53g/cm3 であった。この成形体を長さ150mm、高さ(側端部)60mm、厚さ10mmの形状に加工してSiC多孔質体を得た。
【0026】
(2) B含有化合物溶液の浸漬処理
上記のSiC多孔質体を、濃度2.5重量%のNa2 B4 O7 水溶液に浸漬して十分に含浸させた。浸漬処理後のSiC多孔質体を溶液から引上げ、遠心脱水器により水切りして80℃の温度で乾燥した。
【0027】
(3) N2 雰囲気下の加熱処理
浸漬処理したSiC多孔質体を密閉式高周波誘導炉に入れ、700TorrのN2 雰囲気に保持した状態で、2050℃の温度により1時間加熱処理した。
【0028】
(4) 加工処理
得られた発熱体の両側端部に、SiC焼結体を溶融Si中に浸漬してSi含浸を施したターミナル電極を、SiC粉末、炭素粉末およびフェノール樹脂液からなるペースト状接着剤を用いて接着し、硬化したのちAr雰囲気下1450℃の温度で接合した。ついで、ターミナル電極の上部を研磨し、Al溶射を施してリード線をハンダ付けにより接合した。
【0029】
(5) 性能評価
このようにして製造した加湿器用発熱体の平均体積比抵抗、比抵抗のばらつき範囲を測定し、発熱体中のB成分およびN成分の含有濃度と対比させて表1に示した。なお、体積比抵抗の測定は、試料を100±1℃に保持された乾燥器に入れ、ターミナル間に1〜2Vの電圧を印加した際の電流値と電圧値から求め、平均体積比抵抗値は8試料の平均値、ばらつき範囲は変動率として表示した。
【0030】
実施例2
Na2 B4 O7 の水溶液濃度を1.0重量%に変えたほかは、実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果を表1に併載した。
【0031】
実施例3
Na2 B4 O7 の水溶液濃度を4.0重量%に変えたほかは、実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0032】
実施例4
B含有化合物溶液をNaBF4 の3.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0033】
実施例5
B含有化合物溶液をNaBO2 の6.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0034】
実施例6
B含有化合物溶液をKBO2 の5.5重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度を対比させて表1に併載した。
【0035】
実施例7
B含有化合物溶液をKBH4 の5.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0036】
実施例8
実施例1において、「(1) SiC多孔質体の調製」工程におけるSiCスラリーにSiC100重量部に対し0.47重量部になるようにNa2 B4 O7 を溶解した。以後は同一条件でB成分を付着したSiC多孔質体を調製した。このSiC多孔質体を実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さずに直接「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」工程に移し、以後は実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0037】
比較例1
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0038】
比較例2
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」におけるN2 圧力を100Torrに設定した。その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0039】
比較例3
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」における条件をN2 圧力1600Torr、加熱温度1700℃とした。その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0040】
比較例4
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」工程におけるNa2 B4 O7 水溶液濃度を6.0重量%に変えたほかは全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について、実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0041】
表1の結果から、本発明の要件を満たす実施例の加湿器用発熱体は、いずれも100℃における体積比抵抗値が5〜15Ωcmの範囲にあり、ばらつきも10%以内に収まる安定した抵抗特性を示した。また、比抵抗は製造条件によって制御が可能となることが判明する。これに対し、Bがドープされていない比較例1〜3では抵抗変動が大きいうえ、最大印加時において20A近い電流が導通していまい、電気回路上に問題が生じることが認められた。比較例4では相対的にB濃度が高い関係で比抵抗値が高く、また発熱時の抵抗変化が大きくなる。
【0042】
【表1】
【0043】
本発明の加湿器用発熱体を、加湿器に装着して実用したところ、いずれも良好な応答性と加湿性能を示し、経時的な抵抗増加は認められなかった。
【0044】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば優れた耐久性と湿潤性を有し、常に安定した抵抗特性を備える加湿器用発熱体を提供することができる。また、本発明の製造方法に従えば、簡易な工程により抵抗調整可能に前記の加湿器用発熱体を工業的に製造することが可能となる。したがって、正確な湿度および温度制御が要求される加湿器用発熱体およびその製造技術として極めて有用である。
【産業上の利用分野】
本発明は、湿潤状態において優れた耐久性と導電性を有する加湿器用発熱体と抵抗制御が可能な前記加湿器用発熱体の工業的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、空調設備の分野では温度だけではなく湿度の発生を含めた装置として、容易に湿度コントロールが可能な加湿器の開発が進められている。とくに高精度の湿度制御が要求される加湿器として、多孔質セラミックス発熱体に水を供給しながら通電発熱する機構の装置が注目されている〔「空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集(1992)、P.1301〜1304〕。この加湿器に使用される発熱体には、要求性能として優れた耐久性、抵抗発熱性能ならびに水に対する湿潤性が必要とされている。
【0003】
本発明者の一人は、前記の要求特性を満たす応答性のよい発熱基材として、既に気孔率が60%以上で、気孔径100μm 以下の占有率が5〜20%の気孔分布をもち、かつ保水量が0.1〜0.3g/ccの特性を示す連続気孔組織の導電性セラミックス多孔体からなる加湿器用ヒーター部材を開発した(特開平5−172377号公報) 。しかし、この発熱体組織では抵抗の制御に難点があり、ばらつきの少ない一定品質の材料を定常生産できないところに課題が残されていた。
【0004】
SiCはセラミックス系の半導体であり、不純物として III属元素(Al、B等)がドープされるとP型半導体となり、V属元素(N、P等)がドープされるとN型半導体となって電気的特性が変化することが知られている。この原理を利用してSiC発熱体の抵抗制御を図る試みも数多く提案されている。例えば、特開昭52−110499号公報には微粒子状炭化珪素を特定の密度を得るに十分な熱圧条件で処理し、冷時体積比抵抗を約1.25Ωcm以下に低下させるに十分なように陰性ドーピング元素を陽性ドーピング元素に対し過剰量で含むように導入する燃料点火器の製造方法が開示されている。
【0005】
特公昭60−12761号公報には、抵抗器本体がP型の不純物添加した熱分解多結晶等軸系炭化珪素からなる電気抵抗器が提案されており、製法としては気体珪素化合物、気体炭素化合物および硼素水素化物のような不純物添加元素の混合気体を用いて熱分解により支え上に堆積する方法が開示されている。また、特公昭64−4312号公報には、SiC粉末に0.3〜3.0重量%の硼素相当量の硼素又は硼素化合物と0.1〜6.0重量%の炭素相当量の炭素または炭素化合物を添加した混合成形物を一次焼成し、ついで80〜500気圧の窒素ガス雰囲気中で1500〜2300℃の温度で理論密度の80%比抵抗0.13Ωcm以下の炭化珪素発熱体に再結晶する二次焼成を施す方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術はいずれも加湿器用発熱体を対象とするものではない関係でこれに必要な有用特性である多孔質SiC組織については全く認識されていないし、製造方法が複雑であって量産性に乏しい問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、多孔質SiC組織に特定量範囲のB成分とN成分を含有する耐久性、抵抗発熱性能および湿潤性に優れる加湿器用発熱体と、簡易な手法でのBとNのドープ化により抵抗調整可能な加湿器用発熱体の工業的な製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による加湿器用発熱体は、気孔率60%以上の多孔質SiC構造体からなり、組織中にBを0.01〜0.10重量%、Nを0.05〜0.08重量%の範囲で含有し、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を備えることを構成上の特徴とする。
【0009】
加湿器用発熱体の基材を気孔率60%以上の多孔質SiC構造体とするのは、湿潤体として多量の加湿発生を与えるために必要な材質条件となる。気孔率が60%未満の気孔組織では通気性が悪くなって多孔構造内部の水分を蒸発させることが困難となり、多量の加湿を発生させることができなくなる。しかし、気孔率が90%を越えるような多孔組織になると材質強度が脆弱となって実用に耐えなくなる。とくに好ましい気孔率の範囲は、80〜85%である。
【0010】
多孔質SiC構造体に含有するBとNの成分は、SiC組織に正と負のドーピング剤が共存した補償型半導体を形成する要素となるもので、この導入によって加湿器用発熱体として好適な抵抗発熱性能を付与することが可能となる。この種の補償型半導体では、電気伝導に関してBとNの元素が互いに打ち消し合う作用を営むため、両成分の含有量を加湿器用発熱体として最も好ましい抵抗範囲になるようにバランスさせる必要がある。本発明で特定したB;0.01〜0.10重量%、N;0.05〜0.08重量%の範囲は、前記のバランスを保つ要件となるもので、この範囲を外れると抵抗変動が激しくなって加湿器用発熱体として好適な抵抗発熱性能を付与することができなくなる。例えば、N含有量が前記の範囲にある場合にB含有量が0.10重量%を越えたり、B成分が含有しない組成では、比抵抗および抵抗の温度依存性が共に大きくなり、発熱体として機能しなくなる。
【0011】
本発明による加湿器用発熱体の抵抗特性は、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内にあり、この範囲は上記のBとNの含有度合により制御される。この比抵抗が5Ωcm未満では円滑な抵抗発熱が発現せず、15Ωcmを上回ると環境温度による抵抗変動が大きくなって安定使用が困難となる。
【0012】
上記の加湿器用発熱体を得るための本発明による第1の製造方法は、気孔率が60%以上のSiC多孔質体を、B含有化合物の溶液に浸漬処理し、乾燥後、N2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の基材となるSiC多孔質体は、気孔率が60%以上の性状を有するものであれば製造履歴は特に限定されるものではないが、本発明の目的に対しては、例えばポリウレタンフォームのような三次元網目構造の有機質多孔体の骨格にSiCのスラリーを含浸させて乾燥したのち仮焼成し、この仮焼成体にSiCスラリーを再含浸し、余剰スラリーを除去して乾燥したのち焼成処理を施す方法で製造されたものが最も好適に用いられる。なお、SiC多孔質体にAl、Ga、In等の成分が含有されていると電気抵抗値に影響を及ぼすため、これら不純物の含有量は0.05重量%以下であることが好ましい。前記した製造方法においてこれら不純物成分を減少させるには、含浸するSiCスラリーに高純度のものを用いればよい。
【0014】
上記のSiC多孔質体は、B含有化合物の溶液に浸漬処理する。B含有化合物としては、水溶性に優れるNa2 B4 O7 ,NaBF4 、NaBO2 、KBO2 およびKBH4 から選ばれた少なくとも1種が好ましく使用され、水溶液として使用に供される。B源としては、例えばBN、B4 C等の固体物質もあるが、SiCに均一に分散させることが困難で抵抗変動が生じる。前記のように水溶液状態で使用することによりSiCに均一分散させることが可能となり、抵抗変動を減少させることができる。
【0015】
水溶液の濃度はSiC発熱体に付与する抵抗特性を考慮して設定される。すなわち、SiC発熱体の比抵抗は組織内に残留固溶するB量により変動するが、この調整はSiC多孔質構造体を浸漬するB含有化合物の溶液濃度によっておこなうことができる。しかし、最終的に得られる加湿器用発熱体に対するB濃度として0.01〜0.10重量%になるように調整する必要がある。この要件を満たすための水溶液濃度は、概して1.5重量%以下である。
【0016】
B含有化合物の溶液に浸漬処理したSiC多孔質構造体は、例えば遠心脱水器により水切りしたのち乾燥し、引き続きN2 雰囲気中で加熱処理する。この加熱工程は、浸漬処理により付着したB成分をSiC組織内にドープすると同時に、NをSiC組織にドープさせる段階で、好適な加熱条件は加熱処理装置として密閉式高周波誘導加熱炉を用い、N2 圧力を200〜1500Torr、加熱温度を1900〜2200℃、好ましくは2000〜2100℃の範囲に設定することである。この条件設定により、多孔質SiC組織中にNが0.05〜0.08重量%の範囲でドープされる。N2 圧が1500Torrを越えたり、加熱温度が1900℃未満となるとB成分がSiC組織内に円滑にドープされなくなって抵抗調整が困難となり、N2 圧が200Torrを下廻り、加熱温度が2200℃を越えるようになるとNのドープが円滑に進行しなくなるうえ、SiCの分解が激しくなって材質消耗を越す。
【0017】
加湿器用発熱体を得るための本発明による第2の製造方法は、三次元網目構造の有機質多孔体を、B含有化合物を溶解したSiCスラリーに浸漬処理し、乾燥後に仮焼成し、必要に応じて仮焼成体に前記SiCスラリーを再含浸したのち、N2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することをプロセス上の特徴とする。
【0018】
骨格基材となる三次元網目構造の有機質多孔体としては、均一な発泡組織を有するポリウレタンフォームやラバーフォームが好ましく使用される。該有機質多孔体は、B含有化合物を溶解したSiCスラリーに浸漬処理して、含浸させる。SiCスラリーは、好ましくは最大粒径20〜80μm 、平均粒径1〜10μm の性状を備える高純度のSiC微粉を水に分散させ、適量の粘度調整剤を添加して形成されるが、この溶液にB含有化合物を溶解させる。B含有化合物としては上記した第1の製造方法と同一の物質を使用することができ、溶解濃度も最終的に得られる加湿器用発熱体に占めるB濃度が0.01〜0.10重量%の範囲になるように調整される。
【0019】
浸漬後の有機質多孔体は、余剰のスラリーを遠心分離により除去したのち乾燥し、ついで大気雰囲気下に300℃程度の温度で仮焼成して有機質成分を焼却除去する。更に、必要に応じて前記SiCスラリーに再度浸漬して含浸し、同様に余剰スラリーを遠心除去して乾燥する。乾燥した焼成体をN2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度で加熱処理する。加熱処理の条件は、第1の製造方法と同様にN2 圧力が200〜1500Torrで、加熱温度を2000〜2100℃の範囲に設定することが好ましい。
【0020】
このようにして得られた加湿器用発熱体には、ターミナル電極を接合して製品化する。ターミナル電極としては、長期使用における耐蝕性と抵抗の安定性をもたせるためSi含浸したSiC焼結体により構成することが好ましく、発熱体との接合は例えばSiC粉末と炭素粉末を接着性樹脂と混合した導電性接着剤により接着し熱処理する方法でおこなうことができる。
【0021】
【作用】
本発明の加湿器用発熱体は、気孔率が60%以上のSiC多孔質構造体により構成されているから、十分な耐久性を有し、水に対する湿潤性が良好で多孔組織内部に吸収、吸蔵される水分量が極めて多くなる。したがって、発熱に際して常に多量の加湿粒子を発生させることができる。また、その組織はSiC結晶にBとN元素がドープした補償型半導体として100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を保有しており、この特有の組織特性が加湿器用発熱体とした際に優れた抵抗発熱性能を発揮する。
【0022】
一般に、SiC発熱体の比抵抗は温度に依存する要素が大きく、常温から約600℃までの温度域では抵抗が低下するため、抵抗の温度依存性が頗る高い。ところが、加湿器用発熱体の場合には水中で使用される関係で水の沸点である100℃程度が使用温度となるため、5〜15Ωcmの体積比抵抗範囲では温度依存性が極めて小さくなる。この作用がBとNによる抵抗調整機能と相俟って、常にばらつきの少ない安定した通電抵抗値の発現が保証される。
【0023】
本発明の製造方法に従えば、溶液浸漬という簡易な手段でB含有化合物を含浸付着させ、これをN2 雰囲気中で加熱処理することにより、SiC結晶粒内にB元素とN元素が同時に固溶した補償型半導体に転化させることができる。したがって、応答性よく多量の加湿発生が得られ、かつ長期間に亘り極めて安定した性能と耐久性が保証される加湿器用発熱体を簡易な工程で効率的に製造することが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【0025】
実施例1
(1) SiC多孔質体の調製
純度99.98%、平均粒径10μm のSiC粉末に1重量%のポリビニルアルコールと水を加えて粘度1000cpのSiCスラリーを調製し、このスラリー中に三次元網目構造の軟質ポリウレタンフォーム(#20, 150×80×70mm) を浸漬して含浸処理した。ポリウレタンフォームをスラリーから引上げ、余剰スラリーを除去したのち乾燥し、大気中、300℃の温度で仮焼成した。このようにして有機質成分を焼却除去した仮焼成体に粘度80cpのSiCスラリーを再含浸し、余剰のスラリーを除去したのち、両側端部に相当する面に同スラリーを塗布して目封じを施し乾燥した。得られた多孔質SiC成形体は、気孔率は83%、嵩密度は0.53g/cm3 であった。この成形体を長さ150mm、高さ(側端部)60mm、厚さ10mmの形状に加工してSiC多孔質体を得た。
【0026】
(2) B含有化合物溶液の浸漬処理
上記のSiC多孔質体を、濃度2.5重量%のNa2 B4 O7 水溶液に浸漬して十分に含浸させた。浸漬処理後のSiC多孔質体を溶液から引上げ、遠心脱水器により水切りして80℃の温度で乾燥した。
【0027】
(3) N2 雰囲気下の加熱処理
浸漬処理したSiC多孔質体を密閉式高周波誘導炉に入れ、700TorrのN2 雰囲気に保持した状態で、2050℃の温度により1時間加熱処理した。
【0028】
(4) 加工処理
得られた発熱体の両側端部に、SiC焼結体を溶融Si中に浸漬してSi含浸を施したターミナル電極を、SiC粉末、炭素粉末およびフェノール樹脂液からなるペースト状接着剤を用いて接着し、硬化したのちAr雰囲気下1450℃の温度で接合した。ついで、ターミナル電極の上部を研磨し、Al溶射を施してリード線をハンダ付けにより接合した。
【0029】
(5) 性能評価
このようにして製造した加湿器用発熱体の平均体積比抵抗、比抵抗のばらつき範囲を測定し、発熱体中のB成分およびN成分の含有濃度と対比させて表1に示した。なお、体積比抵抗の測定は、試料を100±1℃に保持された乾燥器に入れ、ターミナル間に1〜2Vの電圧を印加した際の電流値と電圧値から求め、平均体積比抵抗値は8試料の平均値、ばらつき範囲は変動率として表示した。
【0030】
実施例2
Na2 B4 O7 の水溶液濃度を1.0重量%に変えたほかは、実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果を表1に併載した。
【0031】
実施例3
Na2 B4 O7 の水溶液濃度を4.0重量%に変えたほかは、実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0032】
実施例4
B含有化合物溶液をNaBF4 の3.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0033】
実施例5
B含有化合物溶液をNaBO2 の6.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0034】
実施例6
B含有化合物溶液をKBO2 の5.5重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度を対比させて表1に併載した。
【0035】
実施例7
B含有化合物溶液をKBH4 の5.0重量%濃度の水溶液に代え、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、その結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0036】
実施例8
実施例1において、「(1) SiC多孔質体の調製」工程におけるSiCスラリーにSiC100重量部に対し0.47重量部になるようにNa2 B4 O7 を溶解した。以後は同一条件でB成分を付着したSiC多孔質体を調製した。このSiC多孔質体を実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さずに直接「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」工程に移し、以後は実施例1と同一条件で加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体につき、実施例1と同様に平均体積比抵抗、ばらつき範囲を測定し、結果をBおよびN含有濃度と対比して表1に併載した。
【0037】
比較例1
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0038】
比較例2
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」におけるN2 圧力を100Torrに設定した。その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0039】
比較例3
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」を施さず、「(3) N2 雰囲気下の加熱処理」における条件をN2 圧力1600Torr、加熱温度1700℃とした。その他は全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0040】
比較例4
実施例1の「(2) B含有化合物の浸漬処理」工程におけるNa2 B4 O7 水溶液濃度を6.0重量%に変えたほかは全て実施例1と同一条件により加湿器用発熱体を製造した。得られた加湿器用発熱体について、実施例1と同様にして測定した結果を、表1に併載した。
【0041】
表1の結果から、本発明の要件を満たす実施例の加湿器用発熱体は、いずれも100℃における体積比抵抗値が5〜15Ωcmの範囲にあり、ばらつきも10%以内に収まる安定した抵抗特性を示した。また、比抵抗は製造条件によって制御が可能となることが判明する。これに対し、Bがドープされていない比較例1〜3では抵抗変動が大きいうえ、最大印加時において20A近い電流が導通していまい、電気回路上に問題が生じることが認められた。比較例4では相対的にB濃度が高い関係で比抵抗値が高く、また発熱時の抵抗変化が大きくなる。
【0042】
【表1】
【0043】
本発明の加湿器用発熱体を、加湿器に装着して実用したところ、いずれも良好な応答性と加湿性能を示し、経時的な抵抗増加は認められなかった。
【0044】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば優れた耐久性と湿潤性を有し、常に安定した抵抗特性を備える加湿器用発熱体を提供することができる。また、本発明の製造方法に従えば、簡易な工程により抵抗調整可能に前記の加湿器用発熱体を工業的に製造することが可能となる。したがって、正確な湿度および温度制御が要求される加湿器用発熱体およびその製造技術として極めて有用である。
Claims (5)
- 気孔率60%以上の多孔質SiC構造体からなり、組織中にBを0.01〜0.10重量%、Nを0.05〜0.08重量%の範囲で含有し、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を備える加湿器用発熱体。
- 気孔率が60%以上のSiC多孔質体を、B含有化合物の溶液に浸漬処理し、乾燥後、N2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することにより組織中にBを0.01〜0.10重量%、Nを0.05〜0.08重量%の範囲で含有し、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を備える加湿器用発熱体の製造方法。
- 三次元網目構造の有機質多孔体を、B含有化合物を溶解したSiCスラリーに浸漬処理し、乾燥後に仮焼成し、必要に応じて仮焼成体に前記SiCスラリーを再含浸したのち乾燥し、ついでN2 雰囲気中で1900〜2200℃の温度域で加熱処理することにより組織中にBを0.01〜0.10重量%、Nを0.05〜0.08重量%の範囲で含有し、100℃における体積比抵抗が5〜15Ωcm、そのばらつきが10%以内の抵抗特性を備える加湿器用発熱体の製造方法。
- B含有化合物が、Na2 B4 07 、NaBF4 、NaBO2 、KBO2 およびKBH4 から選ばれた少なくとも1種とし、発熱体に対するB量が0.01〜0.10重量%以下になるように溶液濃度を設定する請求項2又は3記載の加湿器用発熱体の製造方法。
- N2 圧力が200〜1500Torr、温度が2000〜2100℃の条件で加熱処理する請求項2又は3記載の加湿器用発熱体の製造方法。
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