JP3549585B2 - 紡績用ロータリーリング - Google Patents
紡績用ロータリーリング Download PDFInfo
- Publication number
- JP3549585B2 JP3549585B2 JP22169094A JP22169094A JP3549585B2 JP 3549585 B2 JP3549585 B2 JP 3549585B2 JP 22169094 A JP22169094 A JP 22169094A JP 22169094 A JP22169094 A JP 22169094A JP 3549585 B2 JP3549585 B2 JP 3549585B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ring
- sliding contact
- traveler
- rotating
- cut
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Spinning Or Twisting Of Yarns (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、縦向きのリング状ホルダーの内側に、摺接リングを介して回転リングを遊嵌し、この回転リングの上端フランジ部にトラベラーを遊嵌させたものに於いて、トラベラーの旋回運動に伴って生ずる振動を極力減衰させる様にした紡績用ロータリーリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
上記の紡績用ロータリーリング(以下は、単にロータリーリングと言う)の構造の一例が、「特開平3−8821号公報」に開示されている。
図9にその部分縦断面を示したこの発明のロータリーリング50は、全体として縦向きの偏平円筒状に形成されている。
51はベース部分となる短円筒状のリングホルダーで、その内側には摺接リング52を介して回転リング53を遊嵌させている。
この回転リング53の上端に形成したフランジ部53aには、トラベラー54を遊嵌させている。
尚、回転リング53は、摺接リング52の組付の必要上、図示の様に2分割構造にしている。
回転リング53の下端側には、弾性材料製で裾拡がりのスカート状をしたブレーキシュー55を周設し、このブレーキシュー55の裾部分には、ブレーキリング56を載置している。
60は、ロータリーリング50を取付けるリングレールで、ロータリーリング50内空部に挿通状態で配置されるスピンドル(図示略)に沿って所定ストロークで上下動される。61は、上記取付用のストップリングである。
ロータリーリング50の作用の概略を説明すると、スピンドルの上方から供給される紡出糸は、その先端をトラベラー54に挿通させたうえスピンドルに装着したボビンに固定する。
この状態でスピンドルを回転させると、トラベラー54はフランジ部53aに沿って旋回し、紡出糸に撚りを掛けながらボビンへの巻取りをガイドする。それと同時に、リングレール60を上下動させると、ボビンには軸方向の所定幅範囲に紡出糸が巻き取られて行く。
そして、旋回するトラベラー54と回転リング53との間に生じた摩擦係合力によって、回転リング53も、トラベラー54に同伴されて回転し始める。
この回転速度の上昇につれて、回転リング53に取着したブレーキシュー55の裾部分は、図9に矢印で示した様に次第に持ち上げられ、ブレーキリング56をリングホルダー51の底面に圧接させる。これによって、回転リング53は回転制動される。
その為、トラベラー54の回転周速度はスピンドルの回転速度以下に抑制されて、紡出糸には適度のテンションが掛かり、ボビンに緊密且つ均等に巻き取ることが出来る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記ロータリーリング50では、回転リング53に摺接しながら高速旋回するトラベラー54に高周波振動が発生する。
この振動は、摺接リング52を介してリングホルダー51に伝えられて、ロータリーリング全体を振動させることになる。そして、この全体振動がトラベラー54の振動を更に増幅させてしまう。
この様な振動が発生すれば、紡出張力、バルーン張力、巻取張力が変動し、紡出糸の均等な撚り掛け、ボビンへの紡出糸の円滑な巻取が阻害されて、糸質の低下を招くことになる。
その上、ロータリーリングは機械的疲労が加速されて、その耐用時間が目立って短縮されてしまう。
そこで本発明の目的は、回転リングに沿って高速旋回するトラベラーが発する高周波振動が、ロータリーリングの全体に伝搬するのを極力防ぐと共に、幾つかの付随的効果も得られる様にした紡績用ロータリーリングを提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為の本発明による紡績用ロータリーリングは、
縦向きに配置したリング状ホルダー1の内側に、摺接リング2を介して回転リング4を遊嵌し、該回転リングの上端に形成したフランジ部4aに、トラベラー9を遊嵌させたものに於いて、
摺接リング2の周方向の少なくとも1箇所に、切れ目2a又は切欠部2bを設ける構成とした。
そして、前記摺接リング2は、弾性変形性を有する合成樹脂、エラストマー又は金属製にするとよい。
【0005】
【作用】
紡出糸に撚りを掛けながら、スピンドルに装着したボビンへの巻き取りをガイドするトラベラー9は、紡出糸の旋回運動を受けて回転リング4の周りに高速回転し、それに伴ってトラベラー9に高周波振動が生ずる。
この高周波振動は、トラベラー9との間に生じた摩擦係合力により追従回転する回転リング4に伝えられ、更に、摺接リング2を介してリングホルダー1に伝搬されて、ロータリーリング全体を振動させることになる。
然し、本発明の摺接リング2は、弾性変形し得る材料で作られ、且つ、その周方向の少なくとも1箇所に、切れ目2a又は切欠部2bを設けてあるので、回転リング4を介して摺接リング2に伝達されたトラベラー9の振動は、振動し易い性質と形状を併せ備えたこの摺接リング2が激しく微振動することによって、有効に減衰され、ロータリーリング全体に伝搬される振動エネルギーは顕著に少なくなる。
又、回転リングの円滑な回転を保証する為に、従来の摺接リングは、その装着間隙に対して高い寸法精度を要求されたが、周方向に切れ目2aや切欠部2bを設けた本発明の摺接リング2は、回転リング4の回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、“逃げ挙動”するので、摺接リング2の寸法精度が比較的低くても回転リング4を円滑・静粛に回転させられる。
更に、ロータリーリングの組立の際に、切れ目2aを設けた摺接リング2はかなり大きく拡径出来るので、図9に示した従来のものとは異なって、回転リング4を面倒な分割構造にしなくても簡単に組付けられる。
【0006】
【実施例】
以下に、本発明の具体例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、ロータリーリングAの部分縦断面を示している。
1は、偏平円筒状のリングホルダーで、図示の様に縦向きに配置されている。リングホルダー1の外周面下部には、このリングホルダー1をリングレール60に取り付ける取付溝1aを周設している。取付溝1aには、ストップリング61が嵌め込まれる。
リングホルダー1の内周面上部には、摺接リング2を遊嵌させるリング収容溝2aの一半側を構成する段差面1bを設けている。
更に、リングホルダー1の上部には、摺接リング2を抜止するカラー3を外嵌させている。
【0007】
4は円筒状をした回転リング、摺接リング2を介してリングホルダー1に内嵌されており、その上部はリングホルダー1の上方に突出させている。この突出端には横断面T字形のフランジ部4aを周設している。
回転リング4の外周面には、リングホルダー1の段差面1bと対向する箇所に、リング収容溝2aの他半側を構成するリング受溝4bを設けている。又、このリング受溝4bの上方には、円環板状のダストカバー5を外嵌させている。
【0008】
図2に示したこの実施例の摺接リング2は、弾性変形性を備えると共に、耐熱性、耐摩耗性、強靭性等に優れて摩擦係数も低い、いわゆるエンジニアリングプラスチックやエラストマー或は金属の中から選んでいる。
そして、周方向の1箇所に切れ目2aを設けている。
【0009】
又、回転リング4の下端部には、図3に示した形状の6個のブレーキ素子6を、図1に示した様に、この下端部に嵌着した横断面L字形のブレーキ組付環7の外周りに、等間隔を隔てて組付けている。
このブレーキ素子6は、ブレーキ組付環7のフランジ部分7a上に突設した枢支ピン8にその一端側を枢支されており、回転リング4の高速回転に伴って生ずる遠心力によりリングホルダー1の内周面に圧接されて、回転リング4の回転を制動する。
回転リング4のフランジ部4aには、図1に示した様に、トラベラー9を遊嵌させている。
【0010】
次に、上記構成の作用を説明する。
スピンドルの上方から供給される紡出糸を、既述の如くして紡績機にセットしたうえ、スピンドルを回転させると、前述の如くトラベラー9の旋回動に追従して回転リング4も回転され、回転リング4に取付けたブレーキ組付環7もこれと一体に回転する。
その為、各ブレーキ素子6は、図1に破線で示した様に、この回転に伴って生ずる遠心力により、枢支ピン8の周りに外に向きに回動してリングホルダー1の内周面に圧接され、回転リング4に回転制動を掛ける。
これによって、回転リング4及びトラベラー9が、スピンドルに対してオーバーランする不具合の発生が防がれる。
【0011】
ところで、スピンドルの回転数は、紡糸速度を増す為に2万RPM、或はそれ以上に高められるので、回転リング4のフランジ部4aに遊嵌された状態で高速回転するトラベラー9には高周波振動が発生する。
この高周波振動は回転リング4に伝えられ、更に、摺接リング2を介してリングホルダー1に伝搬されて、ロータリーリングAの全体を振動させ、トラベラー9の振動を更に増幅させることになる。
【0012】
然し、摺接リング2は弾性変形し得る材料で作られ、且つ、その周方向の1箇所に切れ目2aを設けてあるので、回転リング4を介して伝達されたトラベラー9の振動は、振動し易い性質と形状を併せ備えたこの摺接リング2が激しく微振動することによって有効に減衰され、ロータリーリングA全体への振動の伝搬が大幅に抑制される。
【0013】
又、切れ目2aの存在によって、回転リング4の回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、摺接リング2は“逃げ挙動”する余地が残されている。
その為、摺接リング2の寸法精度が比較的低くても、回転リング4及びトラベラー9を円滑・静粛に回転さることが出来る。
この様に、回転リング4及びトラベラー9がスムーズに回転すれば、スピンドルをより高速回転させても、紡出糸の撚り掛けと、ボビンへの巻取が円滑に行われて、均質な糸をより高速で紡ぐことが出来る。
【0014】
更に、ロータリーリングAの組立の際に、切れ目2aを設けた摺接リング2はかなり大きく拡径出来るので、図8に示した従来のものとは異なって、回転リング4を面倒な分割構造にしなくても、簡単に組付けられる。
【0015】
図4,図5及び図6は、摺接リング2に設ける切れ目2aの夫々異なった形状を示している。
即ち、図4に示した切れ目2aは、斜めカット状に形成し、図5に示した切れ目2aはVカット状に形成している。
実験結果によれば、図2に示した摺接リング2に比べて、図4に示した斜めカット状の切れ目2aを備える摺接リング2の方が、より優れた吸振効果が得られた。その理由に就いては未解明である。
【0016】
図5に示した摺接リング2の切れ目2aはVカット状に、図6に示した摺接リング2は、切れ目2aの両側部分を食い違い状に形成している。
【0017】
図7は、別の実施例の摺接リング2を示している。図2の摺接リング2との相異点は、切れ目2aを3箇所に設けたところにある。
切れ目2aの形成箇所数は、2或は4以上でもよい。
【0018】
図8は、更に別の実施例の摺接リング2を示している。この摺接リング2の特徴は、1以上の切れ目2aのうちの少なくとも一部を、切欠部2bに代えたところにある。
切欠部2bの作用は、切れ目2aに準ずる。
【0019】
尚、上記構成に於いて、細部の構造は適宜に変更しても本発明の目的は達成される。
例えば、摺接リング2の断面形状は図示に限られず、方形、矩形、円形、楕円形、或は、その他の異径断面形状であってもよい。
又、切れ目2aの縁部には、丸みを持たせてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかな様に、本発明による紡績用ロータリーリングは、弾性変形性材料で作られ、その周方向の少なくとも1箇所に、切れ目又は切欠部を設けた摺接リングを組込んだことによって、以下に列挙した如き様々の優れた効果が得られる。
(a)、スピンドルの回転速度の上昇に比例して激しくなるトラベラーの振動は、回転リングを介してこの振動を伝えられた摺接リングが激しく微振動することによって有効に減衰され、ロータリーリング全体への振動の伝搬が著しく抑制される。
(b) その結果、スピンドルをより高速回転させても、紡出糸の撚り掛けと、ボビンへの巻取が円滑に行われて、均質な糸をより高速で紡げる。
(c) 回転リングの回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、切れ目を設けた摺接リングは“逃げ挙動”する余地を残されているので、その寸法精度が比較的低くても、回転リング及びトラベラーを円滑・静粛に回転させられる。
(d) ロータリーリングの組立の際に、切れ目を設けた摺接リングはかなり大きく拡径出来るので、図9に示した従来のものとは異なって、回転リングを面倒な分割構造にしなくても簡単に組付けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す、部分縦断面図である。
【図2】同上、摺接リングの斜視図である。
【図3】同上、 ブレーキ素子の斜視図である。
【図4】摺接リングに設ける切れ目の第2の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図5】摺接リングに設ける切れ目の第3の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図6】摺接リングに設ける切れ目の第4の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図7】摺接リングの他の実施例を示す、平面図である。
【図8】切欠部を設けた摺接リングの、部分斜視図である。
【図9】従来例を示す、部分縦断面図である。
【符号の説明】
A 紡績用ロータリーリング
1 リングホルダー
1a 取付溝
1b 段差面
2 摺接リング
2a 切れ目
2b 切欠部
3 カラー
4 回転リング
4a フランジ部
4b リング受溝
5 ダストカバー
6 ブレーキ素子
7 ブレーキ組付環
8 枢支ピン
9 トラベラー
50 紡績用ロータリーリング
51 リングホルダー
52 摺接リング
53 回転リング
53a フランジ部
54 トラベラー
55 ブレーキシュー
56 ブレーキリング
60 リングレール
61 ストップリング
【産業上の利用分野】
本発明は、縦向きのリング状ホルダーの内側に、摺接リングを介して回転リングを遊嵌し、この回転リングの上端フランジ部にトラベラーを遊嵌させたものに於いて、トラベラーの旋回運動に伴って生ずる振動を極力減衰させる様にした紡績用ロータリーリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
上記の紡績用ロータリーリング(以下は、単にロータリーリングと言う)の構造の一例が、「特開平3−8821号公報」に開示されている。
図9にその部分縦断面を示したこの発明のロータリーリング50は、全体として縦向きの偏平円筒状に形成されている。
51はベース部分となる短円筒状のリングホルダーで、その内側には摺接リング52を介して回転リング53を遊嵌させている。
この回転リング53の上端に形成したフランジ部53aには、トラベラー54を遊嵌させている。
尚、回転リング53は、摺接リング52の組付の必要上、図示の様に2分割構造にしている。
回転リング53の下端側には、弾性材料製で裾拡がりのスカート状をしたブレーキシュー55を周設し、このブレーキシュー55の裾部分には、ブレーキリング56を載置している。
60は、ロータリーリング50を取付けるリングレールで、ロータリーリング50内空部に挿通状態で配置されるスピンドル(図示略)に沿って所定ストロークで上下動される。61は、上記取付用のストップリングである。
ロータリーリング50の作用の概略を説明すると、スピンドルの上方から供給される紡出糸は、その先端をトラベラー54に挿通させたうえスピンドルに装着したボビンに固定する。
この状態でスピンドルを回転させると、トラベラー54はフランジ部53aに沿って旋回し、紡出糸に撚りを掛けながらボビンへの巻取りをガイドする。それと同時に、リングレール60を上下動させると、ボビンには軸方向の所定幅範囲に紡出糸が巻き取られて行く。
そして、旋回するトラベラー54と回転リング53との間に生じた摩擦係合力によって、回転リング53も、トラベラー54に同伴されて回転し始める。
この回転速度の上昇につれて、回転リング53に取着したブレーキシュー55の裾部分は、図9に矢印で示した様に次第に持ち上げられ、ブレーキリング56をリングホルダー51の底面に圧接させる。これによって、回転リング53は回転制動される。
その為、トラベラー54の回転周速度はスピンドルの回転速度以下に抑制されて、紡出糸には適度のテンションが掛かり、ボビンに緊密且つ均等に巻き取ることが出来る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記ロータリーリング50では、回転リング53に摺接しながら高速旋回するトラベラー54に高周波振動が発生する。
この振動は、摺接リング52を介してリングホルダー51に伝えられて、ロータリーリング全体を振動させることになる。そして、この全体振動がトラベラー54の振動を更に増幅させてしまう。
この様な振動が発生すれば、紡出張力、バルーン張力、巻取張力が変動し、紡出糸の均等な撚り掛け、ボビンへの紡出糸の円滑な巻取が阻害されて、糸質の低下を招くことになる。
その上、ロータリーリングは機械的疲労が加速されて、その耐用時間が目立って短縮されてしまう。
そこで本発明の目的は、回転リングに沿って高速旋回するトラベラーが発する高周波振動が、ロータリーリングの全体に伝搬するのを極力防ぐと共に、幾つかの付随的効果も得られる様にした紡績用ロータリーリングを提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する為の本発明による紡績用ロータリーリングは、
縦向きに配置したリング状ホルダー1の内側に、摺接リング2を介して回転リング4を遊嵌し、該回転リングの上端に形成したフランジ部4aに、トラベラー9を遊嵌させたものに於いて、
摺接リング2の周方向の少なくとも1箇所に、切れ目2a又は切欠部2bを設ける構成とした。
そして、前記摺接リング2は、弾性変形性を有する合成樹脂、エラストマー又は金属製にするとよい。
【0005】
【作用】
紡出糸に撚りを掛けながら、スピンドルに装着したボビンへの巻き取りをガイドするトラベラー9は、紡出糸の旋回運動を受けて回転リング4の周りに高速回転し、それに伴ってトラベラー9に高周波振動が生ずる。
この高周波振動は、トラベラー9との間に生じた摩擦係合力により追従回転する回転リング4に伝えられ、更に、摺接リング2を介してリングホルダー1に伝搬されて、ロータリーリング全体を振動させることになる。
然し、本発明の摺接リング2は、弾性変形し得る材料で作られ、且つ、その周方向の少なくとも1箇所に、切れ目2a又は切欠部2bを設けてあるので、回転リング4を介して摺接リング2に伝達されたトラベラー9の振動は、振動し易い性質と形状を併せ備えたこの摺接リング2が激しく微振動することによって、有効に減衰され、ロータリーリング全体に伝搬される振動エネルギーは顕著に少なくなる。
又、回転リングの円滑な回転を保証する為に、従来の摺接リングは、その装着間隙に対して高い寸法精度を要求されたが、周方向に切れ目2aや切欠部2bを設けた本発明の摺接リング2は、回転リング4の回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、“逃げ挙動”するので、摺接リング2の寸法精度が比較的低くても回転リング4を円滑・静粛に回転させられる。
更に、ロータリーリングの組立の際に、切れ目2aを設けた摺接リング2はかなり大きく拡径出来るので、図9に示した従来のものとは異なって、回転リング4を面倒な分割構造にしなくても簡単に組付けられる。
【0006】
【実施例】
以下に、本発明の具体例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、ロータリーリングAの部分縦断面を示している。
1は、偏平円筒状のリングホルダーで、図示の様に縦向きに配置されている。リングホルダー1の外周面下部には、このリングホルダー1をリングレール60に取り付ける取付溝1aを周設している。取付溝1aには、ストップリング61が嵌め込まれる。
リングホルダー1の内周面上部には、摺接リング2を遊嵌させるリング収容溝2aの一半側を構成する段差面1bを設けている。
更に、リングホルダー1の上部には、摺接リング2を抜止するカラー3を外嵌させている。
【0007】
4は円筒状をした回転リング、摺接リング2を介してリングホルダー1に内嵌されており、その上部はリングホルダー1の上方に突出させている。この突出端には横断面T字形のフランジ部4aを周設している。
回転リング4の外周面には、リングホルダー1の段差面1bと対向する箇所に、リング収容溝2aの他半側を構成するリング受溝4bを設けている。又、このリング受溝4bの上方には、円環板状のダストカバー5を外嵌させている。
【0008】
図2に示したこの実施例の摺接リング2は、弾性変形性を備えると共に、耐熱性、耐摩耗性、強靭性等に優れて摩擦係数も低い、いわゆるエンジニアリングプラスチックやエラストマー或は金属の中から選んでいる。
そして、周方向の1箇所に切れ目2aを設けている。
【0009】
又、回転リング4の下端部には、図3に示した形状の6個のブレーキ素子6を、図1に示した様に、この下端部に嵌着した横断面L字形のブレーキ組付環7の外周りに、等間隔を隔てて組付けている。
このブレーキ素子6は、ブレーキ組付環7のフランジ部分7a上に突設した枢支ピン8にその一端側を枢支されており、回転リング4の高速回転に伴って生ずる遠心力によりリングホルダー1の内周面に圧接されて、回転リング4の回転を制動する。
回転リング4のフランジ部4aには、図1に示した様に、トラベラー9を遊嵌させている。
【0010】
次に、上記構成の作用を説明する。
スピンドルの上方から供給される紡出糸を、既述の如くして紡績機にセットしたうえ、スピンドルを回転させると、前述の如くトラベラー9の旋回動に追従して回転リング4も回転され、回転リング4に取付けたブレーキ組付環7もこれと一体に回転する。
その為、各ブレーキ素子6は、図1に破線で示した様に、この回転に伴って生ずる遠心力により、枢支ピン8の周りに外に向きに回動してリングホルダー1の内周面に圧接され、回転リング4に回転制動を掛ける。
これによって、回転リング4及びトラベラー9が、スピンドルに対してオーバーランする不具合の発生が防がれる。
【0011】
ところで、スピンドルの回転数は、紡糸速度を増す為に2万RPM、或はそれ以上に高められるので、回転リング4のフランジ部4aに遊嵌された状態で高速回転するトラベラー9には高周波振動が発生する。
この高周波振動は回転リング4に伝えられ、更に、摺接リング2を介してリングホルダー1に伝搬されて、ロータリーリングAの全体を振動させ、トラベラー9の振動を更に増幅させることになる。
【0012】
然し、摺接リング2は弾性変形し得る材料で作られ、且つ、その周方向の1箇所に切れ目2aを設けてあるので、回転リング4を介して伝達されたトラベラー9の振動は、振動し易い性質と形状を併せ備えたこの摺接リング2が激しく微振動することによって有効に減衰され、ロータリーリングA全体への振動の伝搬が大幅に抑制される。
【0013】
又、切れ目2aの存在によって、回転リング4の回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、摺接リング2は“逃げ挙動”する余地が残されている。
その為、摺接リング2の寸法精度が比較的低くても、回転リング4及びトラベラー9を円滑・静粛に回転さることが出来る。
この様に、回転リング4及びトラベラー9がスムーズに回転すれば、スピンドルをより高速回転させても、紡出糸の撚り掛けと、ボビンへの巻取が円滑に行われて、均質な糸をより高速で紡ぐことが出来る。
【0014】
更に、ロータリーリングAの組立の際に、切れ目2aを設けた摺接リング2はかなり大きく拡径出来るので、図8に示した従来のものとは異なって、回転リング4を面倒な分割構造にしなくても、簡単に組付けられる。
【0015】
図4,図5及び図6は、摺接リング2に設ける切れ目2aの夫々異なった形状を示している。
即ち、図4に示した切れ目2aは、斜めカット状に形成し、図5に示した切れ目2aはVカット状に形成している。
実験結果によれば、図2に示した摺接リング2に比べて、図4に示した斜めカット状の切れ目2aを備える摺接リング2の方が、より優れた吸振効果が得られた。その理由に就いては未解明である。
【0016】
図5に示した摺接リング2の切れ目2aはVカット状に、図6に示した摺接リング2は、切れ目2aの両側部分を食い違い状に形成している。
【0017】
図7は、別の実施例の摺接リング2を示している。図2の摺接リング2との相異点は、切れ目2aを3箇所に設けたところにある。
切れ目2aの形成箇所数は、2或は4以上でもよい。
【0018】
図8は、更に別の実施例の摺接リング2を示している。この摺接リング2の特徴は、1以上の切れ目2aのうちの少なくとも一部を、切欠部2bに代えたところにある。
切欠部2bの作用は、切れ目2aに準ずる。
【0019】
尚、上記構成に於いて、細部の構造は適宜に変更しても本発明の目的は達成される。
例えば、摺接リング2の断面形状は図示に限られず、方形、矩形、円形、楕円形、或は、その他の異径断面形状であってもよい。
又、切れ目2aの縁部には、丸みを持たせてもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかな様に、本発明による紡績用ロータリーリングは、弾性変形性材料で作られ、その周方向の少なくとも1箇所に、切れ目又は切欠部を設けた摺接リングを組込んだことによって、以下に列挙した如き様々の優れた効果が得られる。
(a)、スピンドルの回転速度の上昇に比例して激しくなるトラベラーの振動は、回転リングを介してこの振動を伝えられた摺接リングが激しく微振動することによって有効に減衰され、ロータリーリング全体への振動の伝搬が著しく抑制される。
(b) その結果、スピンドルをより高速回転させても、紡出糸の撚り掛けと、ボビンへの巻取が円滑に行われて、均質な糸をより高速で紡げる。
(c) 回転リングの回転開始当初の“コマ運動様”の偏心回転動に対して、切れ目を設けた摺接リングは“逃げ挙動”する余地を残されているので、その寸法精度が比較的低くても、回転リング及びトラベラーを円滑・静粛に回転させられる。
(d) ロータリーリングの組立の際に、切れ目を設けた摺接リングはかなり大きく拡径出来るので、図9に示した従来のものとは異なって、回転リングを面倒な分割構造にしなくても簡単に組付けられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す、部分縦断面図である。
【図2】同上、摺接リングの斜視図である。
【図3】同上、 ブレーキ素子の斜視図である。
【図4】摺接リングに設ける切れ目の第2の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図5】摺接リングに設ける切れ目の第3の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図6】摺接リングに設ける切れ目の第4の例を示す、摺接リングの部分斜視図である。
【図7】摺接リングの他の実施例を示す、平面図である。
【図8】切欠部を設けた摺接リングの、部分斜視図である。
【図9】従来例を示す、部分縦断面図である。
【符号の説明】
A 紡績用ロータリーリング
1 リングホルダー
1a 取付溝
1b 段差面
2 摺接リング
2a 切れ目
2b 切欠部
3 カラー
4 回転リング
4a フランジ部
4b リング受溝
5 ダストカバー
6 ブレーキ素子
7 ブレーキ組付環
8 枢支ピン
9 トラベラー
50 紡績用ロータリーリング
51 リングホルダー
52 摺接リング
53 回転リング
53a フランジ部
54 トラベラー
55 ブレーキシュー
56 ブレーキリング
60 リングレール
61 ストップリング
Claims (2)
- 縦向きに配置したリング状ホルダー1の内側に、摺接リング2を介して回転リング4を遊嵌し、該回転リングの上端フランジ部4aにトラベラー9を遊嵌させたものに於いて、
前記摺接リング2の周方向の少なくとも1箇所に、切れ目2a又は切欠部2bを設けたことを特徴とする紡績用ロータリーリング。 - 前記摺接リング2は、弾性変形性を有する合成樹脂、エラストマー又は金属製であることを特徴とする請求項1記載の紡績用ロータリーリング。
Priority Applications (12)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22169094A JP3549585B2 (ja) | 1994-09-16 | 1994-09-16 | 紡績用ロータリーリング |
EP95931430A EP0730054B1 (en) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Spinning ring |
BR9506384A BR9506384A (pt) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Tear de anéis |
US08/646,296 US5881546A (en) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Spinning ring |
DE69530671T DE69530671T2 (de) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Spinnring |
PCT/JP1995/001852 WO1996008592A1 (fr) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Anneau de filage |
KR1019960702495A KR100393143B1 (ko) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | 방적용 링 |
CN95190901A CN1135776A (zh) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | 纺纱用钢领 |
AU34853/95A AU3485395A (en) | 1994-09-16 | 1995-09-18 | Spinning ring |
TW88221449U TW420158U (en) | 1994-09-16 | 1996-03-13 | Ring used for textile |
US08/920,615 US5819519A (en) | 1994-09-16 | 1997-08-27 | Spinning ring |
US09/170,240 US6047533A (en) | 1994-09-16 | 1998-10-13 | Spinning ring |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22169094A JP3549585B2 (ja) | 1994-09-16 | 1994-09-16 | 紡績用ロータリーリング |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0892826A JPH0892826A (ja) | 1996-04-09 |
JP3549585B2 true JP3549585B2 (ja) | 2004-08-04 |
Family
ID=16770761
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22169094A Expired - Fee Related JP3549585B2 (ja) | 1994-09-16 | 1994-09-16 | 紡績用ロータリーリング |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3549585B2 (ja) |
-
1994
- 1994-09-16 JP JP22169094A patent/JP3549585B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0892826A (ja) | 1996-04-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100462539B1 (ko) | 구동장치 | |
JPS63243557A (ja) | 駆動ベルト用緊張装置 | |
US6194801B1 (en) | Device for limiting shaft whirl | |
JPH08312659A (ja) | 結合遮断装置 | |
KR20000069988A (ko) | 세탁기 등에 사용되는 마찰 댐퍼 | |
JP3549585B2 (ja) | 紡績用ロータリーリング | |
JPS602411B2 (ja) | オ−プン・エンド紡績ロ−タ装置用の支承及び伝動装置 | |
US4280668A (en) | Thread-storage and delivery device for textile machines | |
KR890003007Y1 (ko) | 자전거용 브레이크 장치에 사용하는 부시 | |
JP2002120969A (ja) | 走行する糸をガイド又は巻き取るための装置 | |
JPH08246262A (ja) | 紡績用ロータリーリング | |
JPH08312641A (ja) | 動圧気体軸受 | |
US5829239A (en) | Spinning ring structure | |
KR20010075524A (ko) | 보빈홀더와, 사조권취기, 사조패키지 제조장치,사조권취방법 및 사조패키지 제조방법 | |
JPH08226028A (ja) | 紡績用回転リング | |
JPS63158332A (ja) | 振動減衰ばね装置 | |
JPH11264417A (ja) | 転がり軸受用保持器 | |
JPS6120049Y2 (ja) | ||
JPS6120050Y2 (ja) | ||
JPH0238701Y2 (ja) | ||
JPH0714258U (ja) | 合成樹脂材製伝動部材 | |
JPH03107614A (ja) | 防振型転がり軸受 | |
JP2594422Y2 (ja) | スプリングクラッチ | |
JPH0840639A (ja) | 紡績機スピンドルの軸受装置 | |
KR950000655Y1 (ko) | 헤드드럼 조립체의 이중 댐퍼장치 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040323 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040421 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |