JP3548796B2 - 合成脱硫触媒及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な合成脱硫触媒と、その製造方法及びその触媒の使用方法に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、Si−Co複合多孔体より成る高活性を有する合成脱硫触媒、あるいはそれを担体として用いた白金担持脱硫触媒を提供し、これらを用いてチオフェン等の有機硫黄化合物を効率よく水素化脱硫する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油に随伴して地表にもたらされる硫黄の量は、地球上の自然な硫黄循環量にも匹敵する膨大なものとも言われている。水素化脱硫なしでは、石油の燃焼使用に伴ってこの膨大な硫黄がSO2 として大気に放たれ、酸性雨等の原因となっている。公害防止あるいは地球環境の改善のため、我国では石油中の硫黄分の規制強化が行われてきている。例えば、軽油中の硫黄分の規制は1992年に0.5%から0.2%になり、1997年には更に0.05%へ強化されている(山田宗慶、触媒、第40巻、No.1、34−35頁、1998年)。更に、近年は東京都でトラック等のディーゼルエンジン排ガス規制強化の提起があり、軽油のより低硫黄化が緊急の課題となってきている。現行の硫黄分500ppm(0.05%)から50ppm、更には30ppmへと規制強化が図られようとしている。
【0003】
石油等から硫黄分を取り除くため、種々の脱硫触媒が検討されてきている。例えば、近年、コバルト−モリブデン二元系触媒の研究開発が実施されてきており、コバルトはモリブデンに対する助触媒効果を与えているとされている。しかしながら、アルミナ等の担体にモリブデンとコバルトを原子オーダーで高分散させるのは困難であり、安定した活性を与える触媒の製造が課題となっている。また、更なる軽油の硫黄分の規制強化に対応するため、高活性な新たな触媒の開発が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Si−Co複合多孔体より成る触媒、あるいはそれを担体として用いた白金担持触媒を提供し、これらのものを用いて有機硫黄化合物を効率的に水素化脱硫することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水ガラスとコバルト塩を出発原料として用い、実用性のある脱硫触媒を開発するため鋭意研究を重ねた結果、Si−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒及びSi−Co複合多孔体を担体とした白金担持脱硫触媒が、高活性を有する脱硫触媒として、チオフェン等の有機硫黄化合物から効果的に水素化脱硫できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して高活性を有する水素化脱硫触媒であって、一般式
SiCoa O2+a
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒、あるいはSi−Co複合多孔体に白金を担持させて成る白金担持脱硫触媒、更には、これらの脱硫触媒の効率的製造方法を提供するものである。
【0007】
このような触媒は、本発明に従えば、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、及び必要に応じて水酸化アルカリ金属を含む水溶液と、2価コバルト金属イオン含有酸性水溶液を混合して得られたSi−Co複合沈殿物を生成させ、得られた複合沈殿物を水洗して副生溶解物を除去した後、乾燥し、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理することによって、一般式
SiCoa O2+a・・・・(I)
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒を製造することができる。また、上記製造方法によって得られたSi−Co複合多孔体を担体として用い、これに白金化合物の水溶液を含浸させ、乾燥したのち、必要に応じて焼成処理、水素還元処理あるいは硫化処理をすることによって、本発明の白金担持脱硫触媒を製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明触媒においては、触媒あるいは担体として前記一般式(I)の組成を持つSi−Co複合多孔体が用いられる。この一般式(I)中のCoは、通常、単独のイオンとして用いられるのが好ましいが、一部、Mg,Ni, Zn等の他の二価金属を含有してもよく、含有量はCo量の10wt%程度までは許容される。他方、式中のaは0<a≦2、の関係を満たす数であり、好ましくは0<a≦1、最も好ましくは0<a≦0.75の範囲の数であり、Si−Co複合多孔体の製造の際の原料の種類、使用割合、反応条件などにより変化する。通常、aの値は蛍光X線分析等の化学組成分析法によってコバルト含有量を測定することによって得られる。aは、2以下で正の値であればよいが、好ましくは、1以下の正の値であり、最も好ましくは、0.75以下の正の値であればよい。特に、aは0.05から0.75の範囲にある場合は好適に用いられ得る。
【0009】
シリカ原料としては、通常、3号水ガラス等の珪酸ナトリウムが用いられるが、3号水ガラスは珪石等から製造されているため、アルミナを不純物として含有する場合が多い。アルミナ含有量は10wt.%までは許容される。
【0010】
Si−Co複合多孔体に含有されたCoは、通常のシリカゲル多孔体に担持された粒状のCoとは異なり、化学組成成分として原子状で分散しているため、コバルト担持シカゲル触媒より、本発明の脱硫触媒の方が高活性を有すると考えられる。
【0011】
次に、本発明においては、このSi−Co複合多孔体は、比表面積が100〜800m2 /g、平均細孔直径が2〜10nm、及び細孔容積が0.1〜0.8cm3 /gの範囲にある性状を有することが必要である。これらのいずれかが前記範囲を逸脱すると所望の性能を有する触媒が得られない。得られる触媒の活性及び選択性などの面から、このSi−Co複合多孔体としては、特に比表面積が300〜800m2 /g、平均細孔直径が3〜6nm、細孔容積が0.3〜0.8cm3 /gの範囲にあるものが好適である。
【0012】
本発明の白金担持脱硫触媒においては、白金担持量を、触媒全量に基づき、0.1〜5重量%にするのが望ましい。この担持量が0.1重量%未満では触媒活性が不十分であり、5重量%を超えるとその量の割には触媒活性の向上があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性のバランスなどを考慮すると、この白金担持量は、特に0.2〜2重量%の範囲にあるのが有利である。
【0013】
本発明のSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒の製造方法については、前記の性状を有する合成脱硫触媒が得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明方法に従えば、所望の合成脱硫触媒を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明方法においては、まず、目的のSi−Co複合多孔体の組成になるような割合のSiとCoを含む複合沈殿物を調製する。この複合沈殿物の調製方法としては、例えば、(1)ケイ酸ナトリウムを含有するアルカリ水溶液とコバルト塩を含有する酸性水溶液とを混合して沈殿を形成させ、濾過などにより回収後、十分に洗浄して副生塩を除去する方法、及び(2)ケイ酸とコバルト塩を含有する均質酸性水溶液とアルカリ水溶液とを混合して沈殿を形成させ、以下、前記(1)と同様に処理する方法などを好ましく用いることができる。
【0015】
前記(1)の方法において、触媒を製造するには、まず、ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸のアルカリ金属塩を含有するアルカリ水溶液を調製する。この際、ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、市販の1号ないし4号の水ガラスやメタケイ酸ナトリウムなどを用いることができる。このケイ酸ナトリウムを水に溶解してケイ酸ナトリウム含有水溶液を調製するが、この溶液のpHが所定の範囲にあれば、特にアルカリを添加する必要はない。pHが所定の範囲未満であれば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水などのアルカリ水溶液を加えて、pHを所定の範囲に調整する。このpHは、後述の複合沈殿物を調製する際のpH値に対応して適宜選定されるが、通常は、pH11以上である。また、ケイ酸アルカリ金属塩の濃度については、特に制限はないが、通常、5〜50重量%の範囲で選ばれる。
【0016】
例えば、このようにして調製されたケイ酸アルカリ金属塩含有アルカリ水溶液に、次いで、コバルト水溶液塩の酸性水溶液を加える。これらのコバルト塩は、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩などから選定することができる。このコバルト塩の濃度については、特に制限はないが、通常、10〜50重量%の範囲が好ましい。このようにして、ケイ酸アルカリ金属塩含有アルカリ水溶液とコバルトの水溶液塩を含有する水溶液とを混合すると複合沈殿物が形成される。
【0017】
前記(2)の方法において、ケイ酸とコバルトを含有する均一酸性水溶液を調製するのには、まず、ケイ酸ナトリウムと鉱酸とを混合し、液のpHを酸性にすることによりケ酸酸性水溶液を作製し、これにコバルト塩を加えて溶解させればよい。この際、ケイ酸ナトリウムと鉱酸を混合する場合、ゲル化を防ぐために、ケイ酸酸性水溶液のpHを1〜3の範囲になるように調製するのが有利である。ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、市販の1号ないし3号の水ガラスやメタケイ酸ナトリウムなどが好ましく用いられ、また、鉱酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などが好適に用いられる。更に、コバルト塩として塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩などが用いられる。一方、アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、アンモニア水などを用いることができる。
【0018】
前記(1)と(2)の方法において、酸性水溶液とアルカリ性水溶液とを混合する場合、アルカリ性水溶液に酸性水溶液を滴下して沈殿を形成させてもよいし、酸性水溶液にアルカリ性水溶液を滴下して沈殿を形成させてもよく、あるいは両方の水溶液を一度に混合して沈殿を形成させてもよい。混合の際、特に攪拌は必要でないが、もちろん攪拌することは一向に差し支えない。ケイ酸ナトリウムとコバルトの量比は、前記一般式(I)において、aの範囲を満たすように選べばよい。
【0019】
複合沈殿物を沈殿させる際のpHの値は、一般に、5〜13の範囲であるが、好ましいpH値は、pH6〜10の範囲である。最も好ましいpH値は、pH7〜10の範囲である。一般的には、pH値が低いとコバルトイオンが沈殿し難く、逆にpH値が高いとケイ素が沈殿し難くなる傾向がみられる。特に熟成する必要はないが、7日間程度までは熟成してもよい。また、このようにして形成されたSi−Co複合沈殿物は、特に加熱する必要はないが、例えば、沸騰処理した後、熟成しても一向に差し支えない。
【0020】
ろ過、遠心分離、デカンテーションなどの公知の手段により、Si−Co複合沈殿物を取り出した後、十分に水洗して副生溶解質を除去した後、乾燥処理する。この乾燥処理工程では、一般的な乾燥器や真空乾燥器を用い、好ましくは60℃以上の温度で加熱乾燥あるいは脱水乾燥してもよいし、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥してもよい。この場合、必要に応じ、予め所望の形状、例えば、ヌードル形状、ハニカム形状や粒状などに成形した後、乾燥処理してもよい。また、乾燥後、必要に応じて粉砕し、粒状にして脱硫触媒や担体として用いてもよいし、粉末状のSi−Co複合多孔体をヌードル形状、ハニカム形状や粒状などに成形して触媒や担体として用いてもよい。この際、特に粘結剤を必要としないが、所望により粘土等の粘結剤を用いることができる。粘結剤は50wt.%まで使用することができる。
【0021】
この乾燥した反応生成物は必要に応じ、焼成処理、水素還元処理あるいは硫化処理を行って、所望の合成脱硫触媒を得る。焼成処理工程は、通常、空気雰囲気中で200〜600℃で実施される場合が多い。また、還元処理工程や硫化処理工程は、通常、触媒として用いる直前に脱硫装置内で実施する場合が多い。還元処理工程は、通常、水素ガスを流しながら加熱して水素還元を行い、活性化する。この水素還元温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。また、硫化工程は、通常、水素ガスと硫化水素の混合溶液を流しながら加熱して硫化処理を行い、活性化する。処理原料で硫化処理してもよい。この硫化処理温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。
【0022】
更に、本発明の白金担持脱硫触媒は、前記一般式(I)で表わされ、且つ前記の性状を有するSi−Co複合多孔体を担体として用い、白金化合物含有水溶液を含浸させ、白金前駆体を該担体に吸着させる。この白金化合物含有水溶液は、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。また、白金化合物としては、例えば、塩化白金酸やテトラアミンジクロロ白金−水塩などが好ましく用いられる。白金担持量は、吸着前後の溶液中の白金濃度を原子吸光分析法で測定することにより、求めることができる。
【0023】
このようにして白金前駆体を吸着したSi−Co複合多孔体を、ろ過、遠心分離、デカンテイションなどの公知の手段により取り出し、十分に水洗し、乾燥処理した後、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理を行って、白金担持脱硫触媒を得る。焼成処理工程は、通常、空気雰囲気中で200〜600℃で実施される。また、還元処理工程及び硫化処理工程は、通常、触媒として用いる直前に脱硫装置内で実施する場合が多い。一般には、還元処理工程は、水素ガスを流しながら加熱して水素還元を行い、活性化する。この水素還元温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。硫化処理工程は、通常、水素ガスと硫化水素の混合溶液を流しながら、加熱して硫化処理を行い、活性化する。この硫化処理温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。
【0024】
前記の方法で得られた本発明の2種類の脱硫触媒は、化学分析、触媒活性測定、比表面積測定、細孔径分布測定、昇温脱離(TPD)、X線回折、赤外線吸収スペクトル分析、X線光電子分光分析(ESCA)、X線吸収広域連続微細構造スペクトル測定(EXAFS)などによって評価することができる。
【0025】
多孔体としての機能は、窒素ガス吸着による比表面積及び細孔容積測定、あるいは窒素吸脱着曲線から求められた細孔径分布により確認することができる。
Si−Co複合多孔体の細孔は主として、2〜50nmの細孔直径を有するメソポアと細孔直径が2nmより小さいミクロポアから構成され、細孔直径が50nmより大きいマクロポアも一部含まれる。平均的な細孔直径は2〜10nmであり、比表面積は100〜800m2 /g及び細孔容積は0.1〜0.8cm3/gの性状を示す。化学成分としてCoを含有し、構造中にほぼ均質に分散しているため、このコバルトが触媒活性点として機能し、例えば、軽油中のチオフェン等を効率的に水素化脱硫することができると推察される。
【0026】
更に、本発明の白金担持脱硫触媒における白金の分散度を調べる尺度として、通常、白金1原子当たりの水素吸着原子量(H/Pt)が用いられる。この水素吸着原子量は、昇温脱離(TPD)法によって求めることができる。例えば、400℃で水素還元して活性化処理した後、室温で水素気流下にて20分間触媒試料に水素を吸着させ、次いで、30ml/分のアルゴン気流下に昇温速度30℃/分にて400℃まで昇温させ、脱離する水素量をガスクロマトグラフィにより測定することによって、H/Ptを求めることができる。
【0027】
このようにして得られたH/Ptの値は、例えば、白金担持シリカゲル触媒の場合、0.19であり、白金が粒子状で分散しているのに対し、本発明の白金担持脱硫触媒は1.38の値を示し、白金が原子状で高分散していることが判る。いずれにしても、本発明の白金担持触媒は、白金が高分散な状態で担持されているため、触媒活性が高くなり、水素化脱硫触媒として優れていると考えられる。
【0028】
これら本発明の2種類の触媒は、チオフェン等有機硫黄化合物の水素化脱硫に用いることができる。また、他のチオフェン類、例えば、ベンゾチオフェン、メチルベンゾチオフェンの様なアルキルベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンの様なアルキルジベンゾチオフェン等の水素化脱硫にも用いることが可能である。本発明の合成脱硫触媒は、これらのチオフェン等有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に使用される。
【0029】
チオフェン、ベンゾチオフェン、メチルベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物類は、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、エル・ピー・ジーガス、ブタンガス、天然ガス等に含有されている。本発明の触媒を用いることにより、これらの液体やガス状物質に含有されるチオフェンやベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物から水素化脱硫反応によって硫黄分を除去することができ、結果的に硫黄分を低下させることができる。
【0030】
水素化脱硫反応をチオフェンを用いて行うと、通常の脱硫触媒ではノルマルブタンの生成量が多く、1−ブテン、トランス型2−ブテン、シス型2−ブテン等が生成する場合が多い。本発明の触媒を用いた場合は、ノルマルブタンの生成量が少なく、トランス型2−ブテン>シス型2−ブテン>1−ブテン>ノルマルブタンの生成物の序列となっている。
【0031】
このチオフェンの350℃における水素化脱硫反応を触媒として、水素気流中400℃で3時間活性化処理した本発明の2種類の触媒、市販のコバルト−モリブデン系担持脱硫触媒、コバルト担持シリカ触媒および白金担持シリカ触媒を用いて脱硫試験を実施した場合、それぞれの触媒性能は、以下に示すようになる。なお、使用した水素中のチオフェン濃度は2.9Vol.%であった。
【0032】
本発明の実施例1の合成脱硫触媒(SC1)及びSC1のSi−Co複合多孔体を担体とした実施例2の1wt.%白金担持触媒(1wt.%Pt/SC1)の転化率はそれぞれ61%及び75%であった。一方、比較として用いた市販のコバルト−モリブデン担持脱硫触媒G−35B、10wt.%コバルト担持シリカ触媒(10wt.%Co/SiO2 )と1wt.%白金担持シリカ触媒(1wt.%Pt/SiO2)の転化率はそれぞれ29%、19%及び36%であった。従って、触媒活性の強さは、
1wt.%Pt/SC1>SC1>1wt.%Pt/SiO2 >G−35B>10wt.%Co/SiO2 の順となる。
このように、本発明の白金担持触媒及び合成脱硫触媒は、チオフェンの水素化脱硫反応に対して強い触媒活性を示す。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例1
1 リットルビーカーに水200mlを入れ、これに3号水ガラス(SiO2 :29.04重量%、Na2 O:9.4重量%、SiO2 /Na2 Oモル比:3.19)86gを溶解した後、更に2M水酸化ナトリウム水溶液120mlを加えた混合溶液(A液)を調製した。一方、水200mlに塩化コバルト六水和物(一級試薬)27.4gを溶解させた溶液(B液)を調製した。次に、マグネッチックスターラでA液をかき混ぜながら、その中にB液を5分間で滴下し、更に1時間かき混ぜた。沈殿pHは8.4であった。次いで、生成した複合沈殿物をろ取し、十分に水洗した後、80℃で乾燥した後、空気中300℃で1時間焼成した。得られたSi−Co複合多孔体の含有コバルト量を示すaの値はa=0.278であり、比表面積は583m2 /g、細孔容積は0.49cm3 /g及び平均細孔径は3.4nmであった。40ml/分の水素気流下にて400℃で3時間還元して、本発明の合成脱硫触媒を得た。
【0035】
実施例2
常圧流通式反応装置を用い、実施例1で得られた触媒0.1gを使用し、水素とチオフェンとの混合ガス(チオフェン濃度:2.9vol.%)を20ml/分で供給し、350℃の一定温度で反応させた。生成ガスの分析はガスクロマトグラフ測定装置を用いて行った。
【0036】
6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で61%であった。生成物の選択性はノルマルブタン10%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン41%及びシス型2−ブテン29%であり、チオフェンからトランス型2−ブテンとシス型2−ブテンが生成する脱硫反応が進行しやすいことが判明した。
【0037】
実施例3
実施例1で得られたSi−Co複合多孔体を担体として白金担持脱硫触媒を製造した。蒸留水1リットルにテトラアミンジクロロ白金一水塩3.6gを溶解し、アンモニア水を用いてpH12に調整して濃度2mgPt/mlの溶液を得た。このテトラアミンジクロロ白金水溶液25mlに前記担体5gを1日間浸せきして白金前駆体を吸着させた。白金担持量は1重量%であった。ろ過、洗浄後、自然乾燥し、110℃で3時間真空乾燥した後、40ml/分の水素気流下にて400℃で3時間還元して、本発明の白金担持脱硫触媒を得た。
【0038】
実施例4
実施例3の1wt.%白金担持脱硫触媒を用いて実施例2と同様にしてチオフェンの水素化脱硫反応を行ったところ、6時間後の反応温度350℃における転化率は75%であった。また、生成物のガス組成はモル基準でノルマルブタン16%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン38%及びシス型2−ブテン28%であった。コバルト含有シリカ多孔体に白金を担持させることにより、転化率が23%程度増加し、2−ブテン類の割合が若干減少し、ノルマルブタンの割合が若干増加する傾向となることが判明した。
【0039】
実施例5
実施例1において、原料仕込みを塩化コバルト六水和物(一級試薬)18.3gとした以外は、実施例1と同様ににして触媒を調製した。沈殿pHは8.9であった。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.185であり、比表面積は632m2 /g、細孔容積は0.51cm3 /g及び平均細孔径は3.2nmであった。
【0040】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で75%であった。生成物の選択性はノルマルブタン7%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン42%及びシス型2−ブテン31%であった。
【0041】
実施例6
実施例1において、原料仕込みを塩化コバルト六水和物(一級試薬)50.8g及び2M水酸化ナトリウム水溶液180mlとした以外は、実施例1と同様ににして触媒を調製した。沈殿pHは7.6であった。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.514であり、比表面積は493m2 /g、細孔容積は0.57cm3 /g及び平均細孔径は4.6nmであった。
【0042】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で55%であった。生成物の選択性はノルマルブタン7%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン30%であった。
【0043】
実施例7
1リットルビーカーに水400mlを入れ、これに3号水ガラス(SiO2 :29.04重量%、Na2 O:9.4重量%、SiO2 /Na2 Oモル比:3.19)86gを溶解した後、濃硝酸溶液25mlを添加してケイ酸酸性溶液を作製し、更に、水100mlに塩化コバルト六水和物 (一級試薬)71.1gを溶解させた溶液を混合してケイ酸−コバルト均質混合酸性溶液(C)を調製した。次に、マグネッチックスターラで2Mの水酸化ナトリウム溶液350mlのD液をかき混ぜながら、その中にC液を10分間で滴下し、更に1時間かき混ぜた。沈殿pHは9.2であった。次いで、生成した複合沈殿物をろ取し、十分に水洗し、80℃で乾燥した後、空気中300℃で1時間焼成した。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.719であり、比表面積は345m2 /g、細孔容積は0.46cm3 /g及び平均細孔径は5.3nmであった。
【0044】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で42%であった。生成物の選択性はノルマルブタン5%、1−ブテン20%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン32%であった。
【0045】
比較例1
市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒G−35Bを用いて触媒活性を調べた。本触媒は原料炭化水素中の有機硫黄化合物の水添分解に使用され、重質油の脱硫に適しているとされている。組成はCoO 3.5wt.%及びMoO3 10.0wt.%である。実施例2と同様な操作で測定した本製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で29%であった。生成物の選択性はノルマルブタン20%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン35%及びシス型2−ブテン26%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が増加し、ブテン類の割合が減少しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は5割弱の値であった。
【0046】
比較例2
市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒G−51Bを用いて触媒活性を調べた。本触媒は原料炭化水素中の有機硫黄化合物の水添分解に使用され、ナフサ、ブタン、オフガスなどの軽質油の脱硫に適しているとされている。組成はCoO 3.5wt.%及びMoO3 10.0wt.%である。実施例2と同様な操作で測定した本製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で28%であった。生成物の選択性はノルマルブタン18%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン35%及びシス型2−ブテン26%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が増加し、ブテン類の割合が減少しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は5割弱の値であった。
【0047】
比較例3
市販のシリカゲル〔アルドリッチ(Aldrichi)社製、商品名「ダビジル(Davisil)646〕を32〜60メッシュに整粒して担体として用い、Co(CH3 COO)2 ・4H2 O水溶液に入れて、含浸法によってコバルトを10wt.%担持させた10wt.%Co担持シリカゲルを調製した。1リットルのビーカーを用い、水500mlに2.1gの酢酸コバルト四水塩試薬(特級試薬、純度99%)を溶解し、0.0017mol濃度の酢酸コバルト水溶液を作製した。この酢酸コバルト水溶液52mlに0.52gのシリカゲルを1日浸せきして10wt.%コバルト担持シリカゲルを作製した。乾燥後、水素気流下400℃で3時間還元処理して10wt.%Co担持シリカゲル触媒を得た。本触媒の比表面積は240m2 /g、細孔容積は0.95cm3 /g及び平均細孔径は15.8nmであった。この触媒を用いて、350℃でチオフェンの水素化脱硫反応を行った所、転化率は19%であった。生成物のガス組成はノルマルブタン2%、1−ブテン23%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン31%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が減少し、1−ブテンの割合が増加しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は3割ぐらいの値であった。
【0048】
比較例4
比較例3と同様な方法によって35wt.%Co担持シリカゲル触媒を調製した。ただし、この場合0.0017モル濃度の酢酸コバルト水溶液259mlに0.74gのシリカゲルを浸せきした。本触媒の比表面積は196m2 /g、細孔容積は0.75cm3 /g及び平均細孔径は15.4nmであった。本触媒を用いて、350℃でチオフェンの水素化脱硫反応を行った所、転化率は23%であった。生成物のガス組成はノルマルブタン5%、1−ブテン23%、トランス型2−ブテン41%及びシス型2−ブテン30%であった。転化率は実施例1と比べて、4割弱の値であった。
【0049】
比較例5
比較例3と同じ32〜60メッシュに整粒したシリカゲル(商品名 Davisil 646)を担体として用い、実施例3と同様な方法で1wt.%白金担持触媒を調製した。350℃におけるチオフェンの水素化脱硫反応の転化率は36%であった。生成物のガス組成は、ノルマルブタン80%、1−ブテン4%、トランス型2−ブテン8%及びシス型2−ブテン6%でり、大部分がノルマルブタンになることが判明した。転化率は実施例3の白金担持脱硫触媒と比較して5割弱の値であった。
【0050】
実施例8
実施例1及び実施例3の本発明製品を触媒として用いて反応温度350℃におけるチオフェンの水素化脱硫反応について1週間の連続試験を実施し、触媒の長期安定性を調べた。その結果を表1に示す。表1より実施例1及び実施例3の発明製品のチオフェン脱硫の触媒活性は初期においてやや活性は弱いが6時間で活性は向上してほぼ一定の転化率を示し、7日後の活性もほとんど変化せず、長期安定性にすぐれていることが判明した。この様にチオフェン2.9Vol.%の高濃度含有した試料に対して、本発明の触媒は長時間高活性を維持出来る機能を有する。
比較として、市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒の結果を示す。この市販触媒は初期活性がやや失活してゆく傾向が認められた。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例9
実施例1及び実施例3の本発明製品を触媒として用いてチオフェンの水素化脱硫反応について反応温度を300〜450℃に変化させ、それぞれ6時間後の転化率を測定した。測定結果を表2に示す。表2の結果から、反応温度が高いほど触媒活性が高いことが判明した。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例10
実施例6の本願発明製品及び比較例3の10wt.%Co担持シリカゲル触媒を用いて、内容積100mlのオートクレーブ内において、スラリー方式でベンゾチオフェンの水素化脱硫反応を行った。溶媒としてn−デカン45mlにベンゾチオフェンを溶解させ、硫化処理した上記触媒0.2gを入れ、水素圧力30気圧下、250℃で1時間及び5時間後の組成変化をガスクロマトグラフ測定装置で測定し、水素化脱硫活性を調べた。測定結果を表3に示す。5時間後の結果では、本発明製品の方が転化率の値が大きくなっており、ベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に対しても有効な触媒であることを示唆している。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明は、コバルトを含有した特定の化学組成とメソポアを主体とした特定の性状を有するSi−Co複合多孔体から成る合成脱硫触媒あるいは当該Si−Co複合多孔体担体に白金を担持させた白金担持脱硫触媒に係るものであって、1)チオフェン等の有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して、高活性を有し、しかも、製造方法を変化させることによって触媒活性を制御することができる、2)コバルトが原子オーダーで高分散しているSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒を作製することができる、3)それにより、安定した活性を与える触媒が得られる、4)白金が原子状で高分散な状態で担持されている白金担持脱硫触媒を作製することができる、5)それにより、触媒活性を高めることができる、6)チオフェンやベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物から水素化脱硫反応によって硫黄分を除去することができる、という格別の効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な合成脱硫触媒と、その製造方法及びその触媒の使用方法に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、Si−Co複合多孔体より成る高活性を有する合成脱硫触媒、あるいはそれを担体として用いた白金担持脱硫触媒を提供し、これらを用いてチオフェン等の有機硫黄化合物を効率よく水素化脱硫する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石油に随伴して地表にもたらされる硫黄の量は、地球上の自然な硫黄循環量にも匹敵する膨大なものとも言われている。水素化脱硫なしでは、石油の燃焼使用に伴ってこの膨大な硫黄がSO2 として大気に放たれ、酸性雨等の原因となっている。公害防止あるいは地球環境の改善のため、我国では石油中の硫黄分の規制強化が行われてきている。例えば、軽油中の硫黄分の規制は1992年に0.5%から0.2%になり、1997年には更に0.05%へ強化されている(山田宗慶、触媒、第40巻、No.1、34−35頁、1998年)。更に、近年は東京都でトラック等のディーゼルエンジン排ガス規制強化の提起があり、軽油のより低硫黄化が緊急の課題となってきている。現行の硫黄分500ppm(0.05%)から50ppm、更には30ppmへと規制強化が図られようとしている。
【0003】
石油等から硫黄分を取り除くため、種々の脱硫触媒が検討されてきている。例えば、近年、コバルト−モリブデン二元系触媒の研究開発が実施されてきており、コバルトはモリブデンに対する助触媒効果を与えているとされている。しかしながら、アルミナ等の担体にモリブデンとコバルトを原子オーダーで高分散させるのは困難であり、安定した活性を与える触媒の製造が課題となっている。また、更なる軽油の硫黄分の規制強化に対応するため、高活性な新たな触媒の開発が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、Si−Co複合多孔体より成る触媒、あるいはそれを担体として用いた白金担持触媒を提供し、これらのものを用いて有機硫黄化合物を効率的に水素化脱硫することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水ガラスとコバルト塩を出発原料として用い、実用性のある脱硫触媒を開発するため鋭意研究を重ねた結果、Si−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒及びSi−Co複合多孔体を担体とした白金担持脱硫触媒が、高活性を有する脱硫触媒として、チオフェン等の有機硫黄化合物から効果的に水素化脱硫できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して高活性を有する水素化脱硫触媒であって、一般式
SiCoa O2+a
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒、あるいはSi−Co複合多孔体に白金を担持させて成る白金担持脱硫触媒、更には、これらの脱硫触媒の効率的製造方法を提供するものである。
【0007】
このような触媒は、本発明に従えば、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、及び必要に応じて水酸化アルカリ金属を含む水溶液と、2価コバルト金属イオン含有酸性水溶液を混合して得られたSi−Co複合沈殿物を生成させ、得られた複合沈殿物を水洗して副生溶解物を除去した後、乾燥し、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理することによって、一般式
SiCoa O2+a・・・・(I)
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒を製造することができる。また、上記製造方法によって得られたSi−Co複合多孔体を担体として用い、これに白金化合物の水溶液を含浸させ、乾燥したのち、必要に応じて焼成処理、水素還元処理あるいは硫化処理をすることによって、本発明の白金担持脱硫触媒を製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明触媒においては、触媒あるいは担体として前記一般式(I)の組成を持つSi−Co複合多孔体が用いられる。この一般式(I)中のCoは、通常、単独のイオンとして用いられるのが好ましいが、一部、Mg,Ni, Zn等の他の二価金属を含有してもよく、含有量はCo量の10wt%程度までは許容される。他方、式中のaは0<a≦2、の関係を満たす数であり、好ましくは0<a≦1、最も好ましくは0<a≦0.75の範囲の数であり、Si−Co複合多孔体の製造の際の原料の種類、使用割合、反応条件などにより変化する。通常、aの値は蛍光X線分析等の化学組成分析法によってコバルト含有量を測定することによって得られる。aは、2以下で正の値であればよいが、好ましくは、1以下の正の値であり、最も好ましくは、0.75以下の正の値であればよい。特に、aは0.05から0.75の範囲にある場合は好適に用いられ得る。
【0009】
シリカ原料としては、通常、3号水ガラス等の珪酸ナトリウムが用いられるが、3号水ガラスは珪石等から製造されているため、アルミナを不純物として含有する場合が多い。アルミナ含有量は10wt.%までは許容される。
【0010】
Si−Co複合多孔体に含有されたCoは、通常のシリカゲル多孔体に担持された粒状のCoとは異なり、化学組成成分として原子状で分散しているため、コバルト担持シカゲル触媒より、本発明の脱硫触媒の方が高活性を有すると考えられる。
【0011】
次に、本発明においては、このSi−Co複合多孔体は、比表面積が100〜800m2 /g、平均細孔直径が2〜10nm、及び細孔容積が0.1〜0.8cm3 /gの範囲にある性状を有することが必要である。これらのいずれかが前記範囲を逸脱すると所望の性能を有する触媒が得られない。得られる触媒の活性及び選択性などの面から、このSi−Co複合多孔体としては、特に比表面積が300〜800m2 /g、平均細孔直径が3〜6nm、細孔容積が0.3〜0.8cm3 /gの範囲にあるものが好適である。
【0012】
本発明の白金担持脱硫触媒においては、白金担持量を、触媒全量に基づき、0.1〜5重量%にするのが望ましい。この担持量が0.1重量%未満では触媒活性が不十分であり、5重量%を超えるとその量の割には触媒活性の向上があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性のバランスなどを考慮すると、この白金担持量は、特に0.2〜2重量%の範囲にあるのが有利である。
【0013】
本発明のSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒の製造方法については、前記の性状を有する合成脱硫触媒が得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明方法に従えば、所望の合成脱硫触媒を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明方法においては、まず、目的のSi−Co複合多孔体の組成になるような割合のSiとCoを含む複合沈殿物を調製する。この複合沈殿物の調製方法としては、例えば、(1)ケイ酸ナトリウムを含有するアルカリ水溶液とコバルト塩を含有する酸性水溶液とを混合して沈殿を形成させ、濾過などにより回収後、十分に洗浄して副生塩を除去する方法、及び(2)ケイ酸とコバルト塩を含有する均質酸性水溶液とアルカリ水溶液とを混合して沈殿を形成させ、以下、前記(1)と同様に処理する方法などを好ましく用いることができる。
【0015】
前記(1)の方法において、触媒を製造するには、まず、ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸のアルカリ金属塩を含有するアルカリ水溶液を調製する。この際、ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、市販の1号ないし4号の水ガラスやメタケイ酸ナトリウムなどを用いることができる。このケイ酸ナトリウムを水に溶解してケイ酸ナトリウム含有水溶液を調製するが、この溶液のpHが所定の範囲にあれば、特にアルカリを添加する必要はない。pHが所定の範囲未満であれば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水などのアルカリ水溶液を加えて、pHを所定の範囲に調整する。このpHは、後述の複合沈殿物を調製する際のpH値に対応して適宜選定されるが、通常は、pH11以上である。また、ケイ酸アルカリ金属塩の濃度については、特に制限はないが、通常、5〜50重量%の範囲で選ばれる。
【0016】
例えば、このようにして調製されたケイ酸アルカリ金属塩含有アルカリ水溶液に、次いで、コバルト水溶液塩の酸性水溶液を加える。これらのコバルト塩は、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩などから選定することができる。このコバルト塩の濃度については、特に制限はないが、通常、10〜50重量%の範囲が好ましい。このようにして、ケイ酸アルカリ金属塩含有アルカリ水溶液とコバルトの水溶液塩を含有する水溶液とを混合すると複合沈殿物が形成される。
【0017】
前記(2)の方法において、ケイ酸とコバルトを含有する均一酸性水溶液を調製するのには、まず、ケイ酸ナトリウムと鉱酸とを混合し、液のpHを酸性にすることによりケ酸酸性水溶液を作製し、これにコバルト塩を加えて溶解させればよい。この際、ケイ酸ナトリウムと鉱酸を混合する場合、ゲル化を防ぐために、ケイ酸酸性水溶液のpHを1〜3の範囲になるように調製するのが有利である。ケイ酸アルカリ金属塩としては、例えば、市販の1号ないし3号の水ガラスやメタケイ酸ナトリウムなどが好ましく用いられ、また、鉱酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などが好適に用いられる。更に、コバルト塩として塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩などが用いられる。一方、アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、アンモニア水などを用いることができる。
【0018】
前記(1)と(2)の方法において、酸性水溶液とアルカリ性水溶液とを混合する場合、アルカリ性水溶液に酸性水溶液を滴下して沈殿を形成させてもよいし、酸性水溶液にアルカリ性水溶液を滴下して沈殿を形成させてもよく、あるいは両方の水溶液を一度に混合して沈殿を形成させてもよい。混合の際、特に攪拌は必要でないが、もちろん攪拌することは一向に差し支えない。ケイ酸ナトリウムとコバルトの量比は、前記一般式(I)において、aの範囲を満たすように選べばよい。
【0019】
複合沈殿物を沈殿させる際のpHの値は、一般に、5〜13の範囲であるが、好ましいpH値は、pH6〜10の範囲である。最も好ましいpH値は、pH7〜10の範囲である。一般的には、pH値が低いとコバルトイオンが沈殿し難く、逆にpH値が高いとケイ素が沈殿し難くなる傾向がみられる。特に熟成する必要はないが、7日間程度までは熟成してもよい。また、このようにして形成されたSi−Co複合沈殿物は、特に加熱する必要はないが、例えば、沸騰処理した後、熟成しても一向に差し支えない。
【0020】
ろ過、遠心分離、デカンテーションなどの公知の手段により、Si−Co複合沈殿物を取り出した後、十分に水洗して副生溶解質を除去した後、乾燥処理する。この乾燥処理工程では、一般的な乾燥器や真空乾燥器を用い、好ましくは60℃以上の温度で加熱乾燥あるいは脱水乾燥してもよいし、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥してもよい。この場合、必要に応じ、予め所望の形状、例えば、ヌードル形状、ハニカム形状や粒状などに成形した後、乾燥処理してもよい。また、乾燥後、必要に応じて粉砕し、粒状にして脱硫触媒や担体として用いてもよいし、粉末状のSi−Co複合多孔体をヌードル形状、ハニカム形状や粒状などに成形して触媒や担体として用いてもよい。この際、特に粘結剤を必要としないが、所望により粘土等の粘結剤を用いることができる。粘結剤は50wt.%まで使用することができる。
【0021】
この乾燥した反応生成物は必要に応じ、焼成処理、水素還元処理あるいは硫化処理を行って、所望の合成脱硫触媒を得る。焼成処理工程は、通常、空気雰囲気中で200〜600℃で実施される場合が多い。また、還元処理工程や硫化処理工程は、通常、触媒として用いる直前に脱硫装置内で実施する場合が多い。還元処理工程は、通常、水素ガスを流しながら加熱して水素還元を行い、活性化する。この水素還元温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。また、硫化工程は、通常、水素ガスと硫化水素の混合溶液を流しながら加熱して硫化処理を行い、活性化する。処理原料で硫化処理してもよい。この硫化処理温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。
【0022】
更に、本発明の白金担持脱硫触媒は、前記一般式(I)で表わされ、且つ前記の性状を有するSi−Co複合多孔体を担体として用い、白金化合物含有水溶液を含浸させ、白金前駆体を該担体に吸着させる。この白金化合物含有水溶液は、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。また、白金化合物としては、例えば、塩化白金酸やテトラアミンジクロロ白金−水塩などが好ましく用いられる。白金担持量は、吸着前後の溶液中の白金濃度を原子吸光分析法で測定することにより、求めることができる。
【0023】
このようにして白金前駆体を吸着したSi−Co複合多孔体を、ろ過、遠心分離、デカンテイションなどの公知の手段により取り出し、十分に水洗し、乾燥処理した後、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理を行って、白金担持脱硫触媒を得る。焼成処理工程は、通常、空気雰囲気中で200〜600℃で実施される。また、還元処理工程及び硫化処理工程は、通常、触媒として用いる直前に脱硫装置内で実施する場合が多い。一般には、還元処理工程は、水素ガスを流しながら加熱して水素還元を行い、活性化する。この水素還元温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。硫化処理工程は、通常、水素ガスと硫化水素の混合溶液を流しながら、加熱して硫化処理を行い、活性化する。この硫化処理温度は200℃以上、好ましくは300〜700℃の範囲であり、最も好ましくは300〜500℃の範囲である。
【0024】
前記の方法で得られた本発明の2種類の脱硫触媒は、化学分析、触媒活性測定、比表面積測定、細孔径分布測定、昇温脱離(TPD)、X線回折、赤外線吸収スペクトル分析、X線光電子分光分析(ESCA)、X線吸収広域連続微細構造スペクトル測定(EXAFS)などによって評価することができる。
【0025】
多孔体としての機能は、窒素ガス吸着による比表面積及び細孔容積測定、あるいは窒素吸脱着曲線から求められた細孔径分布により確認することができる。
Si−Co複合多孔体の細孔は主として、2〜50nmの細孔直径を有するメソポアと細孔直径が2nmより小さいミクロポアから構成され、細孔直径が50nmより大きいマクロポアも一部含まれる。平均的な細孔直径は2〜10nmであり、比表面積は100〜800m2 /g及び細孔容積は0.1〜0.8cm3/gの性状を示す。化学成分としてCoを含有し、構造中にほぼ均質に分散しているため、このコバルトが触媒活性点として機能し、例えば、軽油中のチオフェン等を効率的に水素化脱硫することができると推察される。
【0026】
更に、本発明の白金担持脱硫触媒における白金の分散度を調べる尺度として、通常、白金1原子当たりの水素吸着原子量(H/Pt)が用いられる。この水素吸着原子量は、昇温脱離(TPD)法によって求めることができる。例えば、400℃で水素還元して活性化処理した後、室温で水素気流下にて20分間触媒試料に水素を吸着させ、次いで、30ml/分のアルゴン気流下に昇温速度30℃/分にて400℃まで昇温させ、脱離する水素量をガスクロマトグラフィにより測定することによって、H/Ptを求めることができる。
【0027】
このようにして得られたH/Ptの値は、例えば、白金担持シリカゲル触媒の場合、0.19であり、白金が粒子状で分散しているのに対し、本発明の白金担持脱硫触媒は1.38の値を示し、白金が原子状で高分散していることが判る。いずれにしても、本発明の白金担持触媒は、白金が高分散な状態で担持されているため、触媒活性が高くなり、水素化脱硫触媒として優れていると考えられる。
【0028】
これら本発明の2種類の触媒は、チオフェン等有機硫黄化合物の水素化脱硫に用いることができる。また、他のチオフェン類、例えば、ベンゾチオフェン、メチルベンゾチオフェンの様なアルキルベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンの様なアルキルジベンゾチオフェン等の水素化脱硫にも用いることが可能である。本発明の合成脱硫触媒は、これらのチオフェン等有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に使用される。
【0029】
チオフェン、ベンゾチオフェン、メチルベンゾチオフェン、4−メチルジベンゾチオフェン、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物類は、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、エル・ピー・ジーガス、ブタンガス、天然ガス等に含有されている。本発明の触媒を用いることにより、これらの液体やガス状物質に含有されるチオフェンやベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物から水素化脱硫反応によって硫黄分を除去することができ、結果的に硫黄分を低下させることができる。
【0030】
水素化脱硫反応をチオフェンを用いて行うと、通常の脱硫触媒ではノルマルブタンの生成量が多く、1−ブテン、トランス型2−ブテン、シス型2−ブテン等が生成する場合が多い。本発明の触媒を用いた場合は、ノルマルブタンの生成量が少なく、トランス型2−ブテン>シス型2−ブテン>1−ブテン>ノルマルブタンの生成物の序列となっている。
【0031】
このチオフェンの350℃における水素化脱硫反応を触媒として、水素気流中400℃で3時間活性化処理した本発明の2種類の触媒、市販のコバルト−モリブデン系担持脱硫触媒、コバルト担持シリカ触媒および白金担持シリカ触媒を用いて脱硫試験を実施した場合、それぞれの触媒性能は、以下に示すようになる。なお、使用した水素中のチオフェン濃度は2.9Vol.%であった。
【0032】
本発明の実施例1の合成脱硫触媒(SC1)及びSC1のSi−Co複合多孔体を担体とした実施例2の1wt.%白金担持触媒(1wt.%Pt/SC1)の転化率はそれぞれ61%及び75%であった。一方、比較として用いた市販のコバルト−モリブデン担持脱硫触媒G−35B、10wt.%コバルト担持シリカ触媒(10wt.%Co/SiO2 )と1wt.%白金担持シリカ触媒(1wt.%Pt/SiO2)の転化率はそれぞれ29%、19%及び36%であった。従って、触媒活性の強さは、
1wt.%Pt/SC1>SC1>1wt.%Pt/SiO2 >G−35B>10wt.%Co/SiO2 の順となる。
このように、本発明の白金担持触媒及び合成脱硫触媒は、チオフェンの水素化脱硫反応に対して強い触媒活性を示す。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例1
1 リットルビーカーに水200mlを入れ、これに3号水ガラス(SiO2 :29.04重量%、Na2 O:9.4重量%、SiO2 /Na2 Oモル比:3.19)86gを溶解した後、更に2M水酸化ナトリウム水溶液120mlを加えた混合溶液(A液)を調製した。一方、水200mlに塩化コバルト六水和物(一級試薬)27.4gを溶解させた溶液(B液)を調製した。次に、マグネッチックスターラでA液をかき混ぜながら、その中にB液を5分間で滴下し、更に1時間かき混ぜた。沈殿pHは8.4であった。次いで、生成した複合沈殿物をろ取し、十分に水洗した後、80℃で乾燥した後、空気中300℃で1時間焼成した。得られたSi−Co複合多孔体の含有コバルト量を示すaの値はa=0.278であり、比表面積は583m2 /g、細孔容積は0.49cm3 /g及び平均細孔径は3.4nmであった。40ml/分の水素気流下にて400℃で3時間還元して、本発明の合成脱硫触媒を得た。
【0035】
実施例2
常圧流通式反応装置を用い、実施例1で得られた触媒0.1gを使用し、水素とチオフェンとの混合ガス(チオフェン濃度:2.9vol.%)を20ml/分で供給し、350℃の一定温度で反応させた。生成ガスの分析はガスクロマトグラフ測定装置を用いて行った。
【0036】
6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で61%であった。生成物の選択性はノルマルブタン10%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン41%及びシス型2−ブテン29%であり、チオフェンからトランス型2−ブテンとシス型2−ブテンが生成する脱硫反応が進行しやすいことが判明した。
【0037】
実施例3
実施例1で得られたSi−Co複合多孔体を担体として白金担持脱硫触媒を製造した。蒸留水1リットルにテトラアミンジクロロ白金一水塩3.6gを溶解し、アンモニア水を用いてpH12に調整して濃度2mgPt/mlの溶液を得た。このテトラアミンジクロロ白金水溶液25mlに前記担体5gを1日間浸せきして白金前駆体を吸着させた。白金担持量は1重量%であった。ろ過、洗浄後、自然乾燥し、110℃で3時間真空乾燥した後、40ml/分の水素気流下にて400℃で3時間還元して、本発明の白金担持脱硫触媒を得た。
【0038】
実施例4
実施例3の1wt.%白金担持脱硫触媒を用いて実施例2と同様にしてチオフェンの水素化脱硫反応を行ったところ、6時間後の反応温度350℃における転化率は75%であった。また、生成物のガス組成はモル基準でノルマルブタン16%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン38%及びシス型2−ブテン28%であった。コバルト含有シリカ多孔体に白金を担持させることにより、転化率が23%程度増加し、2−ブテン類の割合が若干減少し、ノルマルブタンの割合が若干増加する傾向となることが判明した。
【0039】
実施例5
実施例1において、原料仕込みを塩化コバルト六水和物(一級試薬)18.3gとした以外は、実施例1と同様ににして触媒を調製した。沈殿pHは8.9であった。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.185であり、比表面積は632m2 /g、細孔容積は0.51cm3 /g及び平均細孔径は3.2nmであった。
【0040】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で75%であった。生成物の選択性はノルマルブタン7%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン42%及びシス型2−ブテン31%であった。
【0041】
実施例6
実施例1において、原料仕込みを塩化コバルト六水和物(一級試薬)50.8g及び2M水酸化ナトリウム水溶液180mlとした以外は、実施例1と同様ににして触媒を調製した。沈殿pHは7.6であった。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.514であり、比表面積は493m2 /g、細孔容積は0.57cm3 /g及び平均細孔径は4.6nmであった。
【0042】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で55%であった。生成物の選択性はノルマルブタン7%、1−ブテン19%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン30%であった。
【0043】
実施例7
1リットルビーカーに水400mlを入れ、これに3号水ガラス(SiO2 :29.04重量%、Na2 O:9.4重量%、SiO2 /Na2 Oモル比:3.19)86gを溶解した後、濃硝酸溶液25mlを添加してケイ酸酸性溶液を作製し、更に、水100mlに塩化コバルト六水和物 (一級試薬)71.1gを溶解させた溶液を混合してケイ酸−コバルト均質混合酸性溶液(C)を調製した。次に、マグネッチックスターラで2Mの水酸化ナトリウム溶液350mlのD液をかき混ぜながら、その中にC液を10分間で滴下し、更に1時間かき混ぜた。沈殿pHは9.2であった。次いで、生成した複合沈殿物をろ取し、十分に水洗し、80℃で乾燥した後、空気中300℃で1時間焼成した。得られた本発明製品の含有コバルト量を示すaの値はa=0.719であり、比表面積は345m2 /g、細孔容積は0.46cm3 /g及び平均細孔径は5.3nmであった。
【0044】
実施例2と同様な操作で測定した本発明製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で42%であった。生成物の選択性はノルマルブタン5%、1−ブテン20%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン32%であった。
【0045】
比較例1
市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒G−35Bを用いて触媒活性を調べた。本触媒は原料炭化水素中の有機硫黄化合物の水添分解に使用され、重質油の脱硫に適しているとされている。組成はCoO 3.5wt.%及びMoO3 10.0wt.%である。実施例2と同様な操作で測定した本製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で29%であった。生成物の選択性はノルマルブタン20%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン35%及びシス型2−ブテン26%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が増加し、ブテン類の割合が減少しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は5割弱の値であった。
【0046】
比較例2
市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒G−51Bを用いて触媒活性を調べた。本触媒は原料炭化水素中の有機硫黄化合物の水添分解に使用され、ナフサ、ブタン、オフガスなどの軽質油の脱硫に適しているとされている。組成はCoO 3.5wt.%及びMoO3 10.0wt.%である。実施例2と同様な操作で測定した本製品の、6時間後におけるチオフェン脱硫反応の転化率は、反応温度350℃で28%であった。生成物の選択性はノルマルブタン18%、1−ブテン17%、トランス型2−ブテン35%及びシス型2−ブテン26%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が増加し、ブテン類の割合が減少しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は5割弱の値であった。
【0047】
比較例3
市販のシリカゲル〔アルドリッチ(Aldrichi)社製、商品名「ダビジル(Davisil)646〕を32〜60メッシュに整粒して担体として用い、Co(CH3 COO)2 ・4H2 O水溶液に入れて、含浸法によってコバルトを10wt.%担持させた10wt.%Co担持シリカゲルを調製した。1リットルのビーカーを用い、水500mlに2.1gの酢酸コバルト四水塩試薬(特級試薬、純度99%)を溶解し、0.0017mol濃度の酢酸コバルト水溶液を作製した。この酢酸コバルト水溶液52mlに0.52gのシリカゲルを1日浸せきして10wt.%コバルト担持シリカゲルを作製した。乾燥後、水素気流下400℃で3時間還元処理して10wt.%Co担持シリカゲル触媒を得た。本触媒の比表面積は240m2 /g、細孔容積は0.95cm3 /g及び平均細孔径は15.8nmであった。この触媒を用いて、350℃でチオフェンの水素化脱硫反応を行った所、転化率は19%であった。生成物のガス組成はノルマルブタン2%、1−ブテン23%、トランス型2−ブテン43%及びシス型2−ブテン31%であった。実施例1と比較するとノルマルブタンの割合が減少し、1−ブテンの割合が増加しているのが判明した。実施例1と比べて、転化率は3割ぐらいの値であった。
【0048】
比較例4
比較例3と同様な方法によって35wt.%Co担持シリカゲル触媒を調製した。ただし、この場合0.0017モル濃度の酢酸コバルト水溶液259mlに0.74gのシリカゲルを浸せきした。本触媒の比表面積は196m2 /g、細孔容積は0.75cm3 /g及び平均細孔径は15.4nmであった。本触媒を用いて、350℃でチオフェンの水素化脱硫反応を行った所、転化率は23%であった。生成物のガス組成はノルマルブタン5%、1−ブテン23%、トランス型2−ブテン41%及びシス型2−ブテン30%であった。転化率は実施例1と比べて、4割弱の値であった。
【0049】
比較例5
比較例3と同じ32〜60メッシュに整粒したシリカゲル(商品名 Davisil 646)を担体として用い、実施例3と同様な方法で1wt.%白金担持触媒を調製した。350℃におけるチオフェンの水素化脱硫反応の転化率は36%であった。生成物のガス組成は、ノルマルブタン80%、1−ブテン4%、トランス型2−ブテン8%及びシス型2−ブテン6%でり、大部分がノルマルブタンになることが判明した。転化率は実施例3の白金担持脱硫触媒と比較して5割弱の値であった。
【0050】
実施例8
実施例1及び実施例3の本発明製品を触媒として用いて反応温度350℃におけるチオフェンの水素化脱硫反応について1週間の連続試験を実施し、触媒の長期安定性を調べた。その結果を表1に示す。表1より実施例1及び実施例3の発明製品のチオフェン脱硫の触媒活性は初期においてやや活性は弱いが6時間で活性は向上してほぼ一定の転化率を示し、7日後の活性もほとんど変化せず、長期安定性にすぐれていることが判明した。この様にチオフェン2.9Vol.%の高濃度含有した試料に対して、本発明の触媒は長時間高活性を維持出来る機能を有する。
比較として、市販のコバルトーモリブデン系触媒である水添脱硫触媒の結果を示す。この市販触媒は初期活性がやや失活してゆく傾向が認められた。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例9
実施例1及び実施例3の本発明製品を触媒として用いてチオフェンの水素化脱硫反応について反応温度を300〜450℃に変化させ、それぞれ6時間後の転化率を測定した。測定結果を表2に示す。表2の結果から、反応温度が高いほど触媒活性が高いことが判明した。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例10
実施例6の本願発明製品及び比較例3の10wt.%Co担持シリカゲル触媒を用いて、内容積100mlのオートクレーブ内において、スラリー方式でベンゾチオフェンの水素化脱硫反応を行った。溶媒としてn−デカン45mlにベンゾチオフェンを溶解させ、硫化処理した上記触媒0.2gを入れ、水素圧力30気圧下、250℃で1時間及び5時間後の組成変化をガスクロマトグラフ測定装置で測定し、水素化脱硫活性を調べた。測定結果を表3に示す。5時間後の結果では、本発明製品の方が転化率の値が大きくなっており、ベンゾチオフェンの水素化脱硫反応に対しても有効な触媒であることを示唆している。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】
本発明は、コバルトを含有した特定の化学組成とメソポアを主体とした特定の性状を有するSi−Co複合多孔体から成る合成脱硫触媒あるいは当該Si−Co複合多孔体担体に白金を担持させた白金担持脱硫触媒に係るものであって、1)チオフェン等の有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して、高活性を有し、しかも、製造方法を変化させることによって触媒活性を制御することができる、2)コバルトが原子オーダーで高分散しているSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒を作製することができる、3)それにより、安定した活性を与える触媒が得られる、4)白金が原子状で高分散な状態で担持されている白金担持脱硫触媒を作製することができる、5)それにより、触媒活性を高めることができる、6)チオフェンやベンゾチオフェン等の有機硫黄化合物から水素化脱硫反応によって硫黄分を除去することができる、という格別の効果を奏する。
Claims (7)
- 有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して高活性を有する水素化脱硫触媒であって、一般式
SiCoa O2+a
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒。 - 有機硫黄化合物の水素化脱硫反応に対して高活性を有する水素化脱硫触媒であって、請求項1に記載のSi−Co複合多孔体に白金を担持させて成る白金担持脱硫触媒。
- 請求項1に記載のSi−Co複合多孔体より成る水素化脱硫触媒を製造する方法であって、ケイ酸アルカリ金属塩、及び必要に応じて水酸化アルカリを含むアルカリ性水溶液に、コバルト塩含有酸性水溶液を混合してSi−Co複合沈殿物を生成させ、得られた複合沈殿物を水洗して副生溶解物を除去した後、乾燥し、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理することを特徴とする、一般式
SiCoa O2+a
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒の製造方法。 - 請求項1に記載のSi−Co複合多孔体より成る水素化脱硫触媒を製造する方法であって、ケイ酸とコバルト塩を含有する酸性水溶液とアルカリ水溶液とを混合してSi−Co複合沈殿物を生成させ、得られた複合沈殿物を水洗して副生溶解物を除去した後、乾燥し、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理することを特徴とする、一般式
SiCoa O2+a
(式中のaは0<a≦2の関係を満たす数である)で表わされ、且つ比表面積100〜800m2 /g、平均細孔直径2〜10nm及び細孔容積0.1〜0.8cm3 /gを有するSi−Co複合多孔体より成る合成脱硫触媒の製造方法。 - 請求項2に記載の白金担持水素化脱硫触媒を製造する方法であって、請求項3又は4に記載の製造方法によって作製されたSi−Co複合多孔体を担体として用い、これに白金化合物の水溶液を含浸させ、乾燥した後、必要に応じて焼成処理、還元処理あるいは硫化処理することを特徴とする白金担持脱硫触媒の製造方法。
- 請求項1に記載の合成脱硫触媒の存在下、有機硫黄化合物を250〜500℃において水素と接触させることを特徴とする有機硫黄化合物の水素化脱硫方法。
- 請求項2に記載の白金担持脱硫触媒の存在下、有機硫黄化合物を250〜500℃において水素と接触させることを特徴とする有機硫黄化合物の水素化脱硫方法。
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