JP3548658B2 - 熱伝導性基板 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、熱電変換モジュールなどの熱を発生または吸収する部位に用いられる熱伝導性基板に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
優れた熱電変換能力を有する素子が見出されつつある反面、実用的な変換効率を発現できる部材、特に、実用に値するような高い変換効率を示す熱電変換モジュールは依然として得られていない。この主な原因は、モジュールを構成する基板基材の熱抵抗、基板基材と電極材料の間の熱抵抗や電極材料と熱電変換素子の間の熱抵抗が何れも大きいことが考えられる。
【0003】
このような熱抵抗の低減化を行うために、(1)基板基材に熱伝導率が高い銅やアルミニウムなどを用い、その表面に樹脂などの有機物、ガラスなどの無機物の絶縁層を接着し、その絶縁層上に回路を形成した基板。(2)アルミニウム表面を陽極酸化して形成した絶縁皮膜上に、電極板をハンダ付することによって回路を形成させた基板などが作製されてきた。
【0004】
しかし、前記(1)の基板では、絶縁層に熱抵抗の極めて大きい有機物層やガラス層を数10μmの厚さで形成させたものである為、熱電変換素子の発熱に対応できるような、放熱性能を備えたものとはなっておらず、また基板基材と絶縁層とが物理的に接合されているに過ぎないため、この接合強度は比較的弱く、両者の熱膨張率の差や外部応力等によって接合界面に亀裂が生じ、絶縁層が剥離することがあった。また、前記(2)のような基板は、絶縁層と電極層との間に熱伝導度の低いハンダを介在させる為、十分な放熱特性を得ることができない。
【0005】
これらの問題点を解決するため、(3)アルミニウム基板基材表面をポーラス型陽極酸化処理して形成した多孔質層を含む絶縁皮膜上及び該皮膜表面に開口した孔内に、電極材や電極を含む電気回路を直接設置した基板(特願平7−334032号)が提唱され、この基板では発熱量の増大化に十分対応できる高い放熱効率を得ることが達成され、更に基板基材と絶縁層との間に極めて強い結合強度を保持させたものとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに前記(3)の基板では、絶縁層と電極等との接合又は接着強度は従来品よりは改善されてはいるものの、絶縁層多孔質部の孔内に電極又は電極を含む電気回路が必ずしも十分入り込めず、絶縁層表面との接着力に頼る割合が依然高く、絶縁層と電極等との間の高い付着力が得難いという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、特に陽極酸化絶縁皮膜の構造と電極等との接合状態の点から検討を行った結果、前記(3)の基板に於いて、絶縁皮膜の多孔質層表面の孔の開口部の平均直径を15nm〜25nmにせしめ、該孔内及び絶縁層表面に電極等を直接設けることにより、絶縁層と電極等とが極めて強固に結合した基板が得られることを見出し、しかも、この基板は前記(3)の基板の場合と比較し、放熱特性に於いても何ら遜色のない基板であった。
【0008】
即ち本発明は、アルミニウム基板基材と、アルミニウム基板基材の表面に化学的に結合し、多孔質層及び該多孔質層とアルミニウム基板基材の間に介在するバリアー層の二層で構成された絶縁層と、該絶縁層の孔及び絶縁層上に設けた電極又は電極を含む電気回路からなる熱伝導性基板であって、該多孔質絶縁層表面の孔の開口部の平均直径が15〜25nmであることを特徴とする熱伝導性基板である。
【0009】
また本発明は、多孔質絶縁層の孔の開口部の平均直径が17〜20nmであることを特徴とする前記記載の熱伝導性基板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱伝導性基板を構成する基板基材としては、純度が99.8%以上の金属アルミニウムを用いる。その形状や寸法は、少なくとも平面を有するものであって、一般的に用いられている電気回路や電子回路を搭載した基板の基材と大差がないものであれば特に限定されず、例えば、基板に要求される機械的強度や用いる部位の形状寸法に応じて定めることもできる。
【0011】
前記基板基材の少なくとも1つの平面を表面とし、アルミニウム基材表面の一部若しくは全てに酸化アルミニウム(以下アルマイトと称す)の絶縁層が化学的に結合したもので、アルミニウム基板基材表層を酸化し絶縁性酸化物であるアルマイトを生成させたものである。本基板の絶縁層は、化学成分的にはアルマイトであり、形態的には開口性の孔からなる多孔質の部分と、該多孔質部とアルミニウム基板基材との間に介在する孔を含まない部分からなる二層構造を主体とするものである。即ち、アルミニウムと多孔質層との間にいわゆるバリアー層を形成させたものである。このような構造のアルマイト絶縁層は、例えば、硫酸浴や燐酸浴を用いて、より望ましくは蓚酸浴を用いて、いわゆるポーラス型陽極酸化を行うことにより形成することができる。本基板では、特にこのような絶縁層表面の開口部の孔の平均直径を15〜25nm、好ましくは平均直径を17〜20nmにしたものである。孔の直径の調整は、ポーラス型陽極酸化処理時の諸条件を詳細に選定することでも対応できるが、一旦ポーラス型陽極酸化処理して形成される比較的小さな孔からなる絶縁層を、酸処理又は電解処理することにより所望の大きさに拡大することで容易に対応できる。また、前記バリアー層は、多孔質層の孔と通じ且つ一般に複数に分岐している細孔を有するものであっても良いが、該細孔はアルミニウム基材には連通することなく、全てバリアー層中で閉口したものであり、少なくともアルミニウム基材との界面近傍からアルミニウム基材との界面にかけては孔を全く含まない部分を有する。尚、絶縁層の厚さは、要求される基板基材と回路との絶縁抵抗に応じて定めればよく、例えば基板基材と回路との絶縁抵抗が100V程度であるためには、絶縁層の最も薄い部分の厚さが数μm程度有ればよい。
【0012】
本発明はこのような絶縁層上及び該絶縁層の孔に電極又は電極などからなる電気回路を設けた基板である。電極又は電気回路の設置方法は、介在物無しに直接絶縁層に接合又は接着されていることが望ましく、気相蒸着法、メッキ法などの公知の方法で行うことができる。また電極又は電気回路は絶縁層表面及び絶縁層表面の開口孔端から孔内に通じていなければならないが、絶縁層表面の開口孔端を有する全ての孔や孔内の全ての部分に通じたものでなくても良い。
【0013】
前記電極又は電気回路の主要材質は、室温(約300K)に於ける熱伝導率が70W/mK以上の金属又は金属間化合物であるのが望ましく、また、電気抵抗が低い程良い。これらの条件を考慮すると、該材質としては、例えばCu、Ag、Au、Al、Co、Fe、Pd、Pt、Ni、Rh、Ru、W、Znから選択される何れか1種の金属、又は何れか2種以上からなる合金、若しくは何れか2種以上の元素を含む金属間化合物が望ましい。尚、電気回路自体の形状構成等は公知のものを含め前記のような絶縁層及びその孔に設置可能で熱電変換素子等を搭載可能な回路であれば限定されることはない。
【0014】
【作用】
本熱伝導性基板において、前記アルマイト絶縁層表面の開口孔端の孔の平均直径を15nm以上〜25nmとすることは、絶縁層自体の強度低下をもたらすような大規模な孔を含むことなく、電極又は電気回路を該孔内に十分に形成できる大きさを確保できるため、絶縁層と電極又は電気回路との間の接合又は接着強度をかなり強固なものとすることができる。更に、該孔の平均直径を17〜20nmとすると、電極材と孔内の接触表面積をより多く確保することができ、特に高い接合又は接着強度を得ることができるので好ましい。また、絶縁層を構成するバリアー層が細孔を有する場合でも、該細孔部にまで電極材が到達し易くなるため、絶縁層に対する電極材のいわゆるアンカー効果を確実に増大さすことができ、電極又は電気回路の絶縁層への接合又は接着強度を一層強固なものとすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、この発明に基づく実施例、及びこの発明の範囲から外れる比較例を合わせて記す。
[実施例1] 厚さ1mm、縦40mm、横40mmのアルミニウム板の表面を硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに希硫酸浴中に約0.5時間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の直径寸法を15nmに拡大したものに、スパッタリング法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.1mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板2枚を寸法が1.4×1.4×2.5mmのp型およびn型Bi2Te3系熱電変換材料を127個ずつ、合計254個を挟み込んだものを、はんだ付けすることによって直列の回路を作製し熱電変換モジュールとした。
【0016】
この熱電変換モジュールを、温度測定用の銅製平板を2枚用いて挟み込み、1方の銅板を水冷式ヒートシンクに接続し、他方の銅板上に市販の平板型セラミックスヒーターを接続した。真空中で熱電変換モジュールにヒートシンク側が放熱するように2Aの直流電流を印加し、熱電変換モジュールの2枚の基板間の温度差が30℃になるようにセラミックスヒーターに通電した。ここでセラミックスヒーターに印加した電力の半分が熱として熱電変換モジュールに与えられると仮定し、セラミックスヒーターに印加した電力:Aと熱電変換モジュールに印加した電力:Bとから下記に示す式1によりこの熱電変換モジュールの成績係数(COP)を求めたところ、1.20であった。
成績係数(COP)=2A/B (式1)
【0017】
更に、この成績係数測定に使用した基板のうちの1枚の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、2.5Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0018】
[実施例2] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに硫酸浴中に約75分間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の直径寸法を25nmに拡大したものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、2.0Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0019】
[実施例3] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、蓚酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が17μmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、3.5Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0020】
[実施例4] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、蓚酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が20μmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、3.3Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0021】
[比較例1] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、スパッタリング法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、0.7Kg/m2であった。
【0022】
[比較例2] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、燐酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が0.8nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに硫酸浴中に約3時間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の平均直径寸法を31nmに拡大したものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、1.0Kg/mm2であった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の熱伝導性基板は、各構成部間の接着又は接合強度が何れも極めて高いため、特に繰り返し高い熱負荷がかかるような熱電変換モジュールへの適用に対しても損傷なく十分耐え得ることができる。更に、機械的衝撃が加わるような用途に於いても、十分活用できる可能性がある。
また、各構成部には熱抵抗の低い材質を用い、且つ絶縁層と電極部との接触面積を大きくしたものである為、接触熱抵抗も大幅に低減できることから、より高い放熱特性を示すものである。
【発明が属する技術分野】
この発明は、熱電変換モジュールなどの熱を発生または吸収する部位に用いられる熱伝導性基板に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
優れた熱電変換能力を有する素子が見出されつつある反面、実用的な変換効率を発現できる部材、特に、実用に値するような高い変換効率を示す熱電変換モジュールは依然として得られていない。この主な原因は、モジュールを構成する基板基材の熱抵抗、基板基材と電極材料の間の熱抵抗や電極材料と熱電変換素子の間の熱抵抗が何れも大きいことが考えられる。
【0003】
このような熱抵抗の低減化を行うために、(1)基板基材に熱伝導率が高い銅やアルミニウムなどを用い、その表面に樹脂などの有機物、ガラスなどの無機物の絶縁層を接着し、その絶縁層上に回路を形成した基板。(2)アルミニウム表面を陽極酸化して形成した絶縁皮膜上に、電極板をハンダ付することによって回路を形成させた基板などが作製されてきた。
【0004】
しかし、前記(1)の基板では、絶縁層に熱抵抗の極めて大きい有機物層やガラス層を数10μmの厚さで形成させたものである為、熱電変換素子の発熱に対応できるような、放熱性能を備えたものとはなっておらず、また基板基材と絶縁層とが物理的に接合されているに過ぎないため、この接合強度は比較的弱く、両者の熱膨張率の差や外部応力等によって接合界面に亀裂が生じ、絶縁層が剥離することがあった。また、前記(2)のような基板は、絶縁層と電極層との間に熱伝導度の低いハンダを介在させる為、十分な放熱特性を得ることができない。
【0005】
これらの問題点を解決するため、(3)アルミニウム基板基材表面をポーラス型陽極酸化処理して形成した多孔質層を含む絶縁皮膜上及び該皮膜表面に開口した孔内に、電極材や電極を含む電気回路を直接設置した基板(特願平7−334032号)が提唱され、この基板では発熱量の増大化に十分対応できる高い放熱効率を得ることが達成され、更に基板基材と絶縁層との間に極めて強い結合強度を保持させたものとなった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに前記(3)の基板では、絶縁層と電極等との接合又は接着強度は従来品よりは改善されてはいるものの、絶縁層多孔質部の孔内に電極又は電極を含む電気回路が必ずしも十分入り込めず、絶縁層表面との接着力に頼る割合が依然高く、絶縁層と電極等との間の高い付着力が得難いという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、特に陽極酸化絶縁皮膜の構造と電極等との接合状態の点から検討を行った結果、前記(3)の基板に於いて、絶縁皮膜の多孔質層表面の孔の開口部の平均直径を15nm〜25nmにせしめ、該孔内及び絶縁層表面に電極等を直接設けることにより、絶縁層と電極等とが極めて強固に結合した基板が得られることを見出し、しかも、この基板は前記(3)の基板の場合と比較し、放熱特性に於いても何ら遜色のない基板であった。
【0008】
即ち本発明は、アルミニウム基板基材と、アルミニウム基板基材の表面に化学的に結合し、多孔質層及び該多孔質層とアルミニウム基板基材の間に介在するバリアー層の二層で構成された絶縁層と、該絶縁層の孔及び絶縁層上に設けた電極又は電極を含む電気回路からなる熱伝導性基板であって、該多孔質絶縁層表面の孔の開口部の平均直径が15〜25nmであることを特徴とする熱伝導性基板である。
【0009】
また本発明は、多孔質絶縁層の孔の開口部の平均直径が17〜20nmであることを特徴とする前記記載の熱伝導性基板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱伝導性基板を構成する基板基材としては、純度が99.8%以上の金属アルミニウムを用いる。その形状や寸法は、少なくとも平面を有するものであって、一般的に用いられている電気回路や電子回路を搭載した基板の基材と大差がないものであれば特に限定されず、例えば、基板に要求される機械的強度や用いる部位の形状寸法に応じて定めることもできる。
【0011】
前記基板基材の少なくとも1つの平面を表面とし、アルミニウム基材表面の一部若しくは全てに酸化アルミニウム(以下アルマイトと称す)の絶縁層が化学的に結合したもので、アルミニウム基板基材表層を酸化し絶縁性酸化物であるアルマイトを生成させたものである。本基板の絶縁層は、化学成分的にはアルマイトであり、形態的には開口性の孔からなる多孔質の部分と、該多孔質部とアルミニウム基板基材との間に介在する孔を含まない部分からなる二層構造を主体とするものである。即ち、アルミニウムと多孔質層との間にいわゆるバリアー層を形成させたものである。このような構造のアルマイト絶縁層は、例えば、硫酸浴や燐酸浴を用いて、より望ましくは蓚酸浴を用いて、いわゆるポーラス型陽極酸化を行うことにより形成することができる。本基板では、特にこのような絶縁層表面の開口部の孔の平均直径を15〜25nm、好ましくは平均直径を17〜20nmにしたものである。孔の直径の調整は、ポーラス型陽極酸化処理時の諸条件を詳細に選定することでも対応できるが、一旦ポーラス型陽極酸化処理して形成される比較的小さな孔からなる絶縁層を、酸処理又は電解処理することにより所望の大きさに拡大することで容易に対応できる。また、前記バリアー層は、多孔質層の孔と通じ且つ一般に複数に分岐している細孔を有するものであっても良いが、該細孔はアルミニウム基材には連通することなく、全てバリアー層中で閉口したものであり、少なくともアルミニウム基材との界面近傍からアルミニウム基材との界面にかけては孔を全く含まない部分を有する。尚、絶縁層の厚さは、要求される基板基材と回路との絶縁抵抗に応じて定めればよく、例えば基板基材と回路との絶縁抵抗が100V程度であるためには、絶縁層の最も薄い部分の厚さが数μm程度有ればよい。
【0012】
本発明はこのような絶縁層上及び該絶縁層の孔に電極又は電極などからなる電気回路を設けた基板である。電極又は電気回路の設置方法は、介在物無しに直接絶縁層に接合又は接着されていることが望ましく、気相蒸着法、メッキ法などの公知の方法で行うことができる。また電極又は電気回路は絶縁層表面及び絶縁層表面の開口孔端から孔内に通じていなければならないが、絶縁層表面の開口孔端を有する全ての孔や孔内の全ての部分に通じたものでなくても良い。
【0013】
前記電極又は電気回路の主要材質は、室温(約300K)に於ける熱伝導率が70W/mK以上の金属又は金属間化合物であるのが望ましく、また、電気抵抗が低い程良い。これらの条件を考慮すると、該材質としては、例えばCu、Ag、Au、Al、Co、Fe、Pd、Pt、Ni、Rh、Ru、W、Znから選択される何れか1種の金属、又は何れか2種以上からなる合金、若しくは何れか2種以上の元素を含む金属間化合物が望ましい。尚、電気回路自体の形状構成等は公知のものを含め前記のような絶縁層及びその孔に設置可能で熱電変換素子等を搭載可能な回路であれば限定されることはない。
【0014】
【作用】
本熱伝導性基板において、前記アルマイト絶縁層表面の開口孔端の孔の平均直径を15nm以上〜25nmとすることは、絶縁層自体の強度低下をもたらすような大規模な孔を含むことなく、電極又は電気回路を該孔内に十分に形成できる大きさを確保できるため、絶縁層と電極又は電気回路との間の接合又は接着強度をかなり強固なものとすることができる。更に、該孔の平均直径を17〜20nmとすると、電極材と孔内の接触表面積をより多く確保することができ、特に高い接合又は接着強度を得ることができるので好ましい。また、絶縁層を構成するバリアー層が細孔を有する場合でも、該細孔部にまで電極材が到達し易くなるため、絶縁層に対する電極材のいわゆるアンカー効果を確実に増大さすことができ、電極又は電気回路の絶縁層への接合又は接着強度を一層強固なものとすることができる。
【0015】
【実施例】
以下、この発明に基づく実施例、及びこの発明の範囲から外れる比較例を合わせて記す。
[実施例1] 厚さ1mm、縦40mm、横40mmのアルミニウム板の表面を硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに希硫酸浴中に約0.5時間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の直径寸法を15nmに拡大したものに、スパッタリング法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.1mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板2枚を寸法が1.4×1.4×2.5mmのp型およびn型Bi2Te3系熱電変換材料を127個ずつ、合計254個を挟み込んだものを、はんだ付けすることによって直列の回路を作製し熱電変換モジュールとした。
【0016】
この熱電変換モジュールを、温度測定用の銅製平板を2枚用いて挟み込み、1方の銅板を水冷式ヒートシンクに接続し、他方の銅板上に市販の平板型セラミックスヒーターを接続した。真空中で熱電変換モジュールにヒートシンク側が放熱するように2Aの直流電流を印加し、熱電変換モジュールの2枚の基板間の温度差が30℃になるようにセラミックスヒーターに通電した。ここでセラミックスヒーターに印加した電力の半分が熱として熱電変換モジュールに与えられると仮定し、セラミックスヒーターに印加した電力:Aと熱電変換モジュールに印加した電力:Bとから下記に示す式1によりこの熱電変換モジュールの成績係数(COP)を求めたところ、1.20であった。
成績係数(COP)=2A/B (式1)
【0017】
更に、この成績係数測定に使用した基板のうちの1枚の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、2.5Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0018】
[実施例2] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに硫酸浴中に約75分間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の直径寸法を25nmに拡大したものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、2.0Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0019】
[実施例3] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、蓚酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が17μmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、3.5Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0020】
[実施例4] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、蓚酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が20μmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、3.3Kg/mm2であり、熱電変換モジュールとして用いるに十分な強度を有するものであった。
【0021】
[比較例1] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、硫酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が1nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させたものに、スパッタリング法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、0.7Kg/m2であった。
【0022】
[比較例2] 実施例1と同様のアルミニウム板の表面を、燐酸浴で陽極酸化処理して、表層に開口部での平均直径が0.8nmの孔を有する多孔質層と該多孔質層とアルミニウムとの間に介在するバリアー層からなる酸化アルミニウム絶縁層を生成させ、さらに硫酸浴中に約3時間浸漬して絶縁層表面開口部での孔の平均直径寸法を31nmに拡大したものに、無電解メッキ法によって絶縁層上及び該絶縁層の孔内に平均厚さ0.05mmのニッケル膜を形成し、更に電解メッキ法によってニッケル表面に厚さ0.2mmの銅電極を設けた熱伝導性基板を作製した。この基板の電極に直径0.8mmの銅線をハンダ付けし、基板に対し垂直な方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定したところ、1.0Kg/mm2であった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の熱伝導性基板は、各構成部間の接着又は接合強度が何れも極めて高いため、特に繰り返し高い熱負荷がかかるような熱電変換モジュールへの適用に対しても損傷なく十分耐え得ることができる。更に、機械的衝撃が加わるような用途に於いても、十分活用できる可能性がある。
また、各構成部には熱抵抗の低い材質を用い、且つ絶縁層と電極部との接触面積を大きくしたものである為、接触熱抵抗も大幅に低減できることから、より高い放熱特性を示すものである。
Claims (2)
- アルミニウム基板基材と、アルミニウム基板基材の表面に化学的に結合し、多孔質層及び該多孔質層とアルミニウム基板基材の間に介在するバリアー層の二層で構成された絶縁層と、該絶縁層の孔及び絶縁層上に設けた電極又は電極を含む電気回路からなる熱伝導性基板であって、該多孔質絶縁層表面の孔の開口部の平均直径が15〜25nmであることを特徴とする熱伝導性基板。
- 多孔質絶縁層の孔の開口部の平均直径が17〜20nmであることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性基板。
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