JP2013089798A - 熱電変換素子 - Google Patents

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直之 林
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利明 青合
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吉則 堀田
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亮 西尾
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Abstract

【課題】熱伝導率が低く、基板と熱電変換層との密着性に優れた熱電変換素子を提供する。
【解決手段】アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換層を積層し、前記導電性高分子及びドーパントが熱電変換層中に均一に分散され、前記熱電変換層がさらに無機の熱電変換材料を含有し、前記ドーパントが、熱又は活性エネルギー線照射の付与により酸を発生する化合物である熱電変換素子
【選択図】図1

Description

本発明は、熱熱電変換素子に関する。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換材料や熱電変換素子を応用した熱電発電は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要としない等の利点を有し、体温で作動する腕時計や僻地用電源、宇宙用電源等に用いられている。
熱電変換材料には良好な熱電変換性能が要求され、現在主に実用化されているのは無機材料である。しかし、これらの無機材料は材料自体が高価であったり、有害物質を含んでいたり、熱電変換素子への加工工程が複雑である等の問題を有している。そのため、比較的廉価に製造でき、成膜等の加工も容易な有機熱電変換材料の研究が進められ、導電性高分子を用いた熱電変換材料や素子が報告されている。
熱電変換性能は熱電変換材料のゼーベック係数、導電率及び熱伝導率により変化し、ゼーベック係数及び導電率が大きく、熱伝導率が小さいほど熱電変換性能は向上する。
導電性高分子を材料とする熱電変換素子は、基板上に導電性高分子を成膜して形成されるのが一般的であるが、基板としてガラスやシリコンを用いた場合、基板自身の熱伝導率が高いため、素子の温度差が小さくなり熱起電力が低下してしまう。また、プラスチック基板では、熱電素子へのヒートサイクル(加熱と冷却の繰り返し)による基板の変形や、導電性高分子とプラスチック基板との線膨張係数の違いによる基板の反りが発生してしまう。また、メソポーラスシリカ等の多孔質の担体を用い、導電性有機化合物を溶解した溶液中に担体を浸漬することで、当該担体の細孔内に導電性有機化合物やドーパントを担持させた熱電材料も報告されている(特許文献1)。しかし、当該材料ではドーパントが細孔内の内壁に化学的又は物理的に固定されているため、ドーピング効果が導電性有機化合物との界面近傍のみでしか働かず、界面から離れるにつれ導電率が低下してしまう。
このような事情から、低い熱伝導率を維持でき、良好な熱電変換性能を発揮し、使用時において基板の変形や反りが生じない熱電変換素子の開発が望まれている。
特開2006−128444号公報
本発明は、有機熱電変換材料を用いた熱電変換素子において、熱伝導率を低減し、熱電変換層と基板との密着性を向上させ、良好な熱電変換性能を備えた熱電変換素子を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、有機熱電変換材料を用いた熱電変換素子について鋭意検討を行った。その結果、素子基板として多孔質陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板を用い、当該基板上に導電性高分子を含有する熱電変換層を積層することで、素子の熱伝導率が低下することを見出した。さらに、この素子は基板と熱電変換層との密着性に優れ、使用時における基板の変形や反りを抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき成されたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により達成された。
(1) アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換層を積層してなる熱電変換素子。
(2) 前記導電性高分子及びドーパントが熱電変換層中に均一に分散されていることを特徴とする前記(1)項記載の熱電変換素子。
(3) 前記熱電変換層がさらに無機の熱電変換材料を含有する前記(1)又は(2)項記載の熱電変換素子。
(4) 前記ドーパントが、熱又は活性エネルギー線照射の付与により酸を発生する化合物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
(5) 前記導電性高分子が、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
本発明の熱電変換素子は、熱伝導率が低く、熱電変換層と基板との密着性に優れ、良好な熱電変換性能を発揮することができる。本発明の熱電変換素子は、種々の熱電発電用物品に好適に用いることができる。
熱電変換素子の一例を示す模式図である。 アルミニウム基板および該アルミニウム基板上に形成される陽極酸化皮膜の模式的な端面図である。 アルミニウムの陽極酸化皮膜の部分断面図である。
本発明の熱電変換素子は、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換層を積層してなる。導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換材料と陽極酸化アルミニウム皮膜を有する基板とを組合わせて用いることで、素子全体の熱伝導率を低下させることができる。そのため、本発明の素子及びこれを用いた熱電変換モジュールでは十分な温度差を実現でき、熱電変換性能が向上する。また、当該基板は、導電性高分子を含有する熱電変換層と良好な密着性を示し、素子へのヒートサイクルや熱電材料と基板との膨張係数等の違いにより生じる基板の変形、反りを抑制することができる。基板の変形や反りはクラックを発生させ、クラックは素子の熱電変換性能低下の原因となりうるが、本発明の素子ではこのようなクラックの発生を抑制できる。さらに、基板との密着性が向上することによって熱電変換層の強度も向上する。
熱電変換素子はゼーベック効果を利用して熱電変換を行うものであり、その熱電変換性能を表す指標として、下記式で表される性能指数Zが用いられている。

式: Z=S2σ/κ

式中、Sはゼーベック係数を、σは導電率を、κは熱伝導率をそれぞれ表す。素子の熱電変換性能を高めるためには、ゼーベック係数Sの絶対値及び導電率σを大きくし、熱伝導率κを小さくすればよい。なお、ゼーベック係数は、絶対温度1Kあたりの熱起電力である。
本発明の熱電変換素子の一例を図1に示す。素子は基板と熱電変換層に加え、これらを電気的に接続する電極を有していてもよい。また、素子の基板は、図3に示されるアルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する。図3のアルミニウム陽極酸化皮膜14には、断面形状が略直管形状で、ハニカム状に配列するマイクロポア16が形成されている。以下、これらの図面を適宜参照して、本発明を詳細に説明する。
[導電性高分子]
導電性高分子としては、共役系の分子構造を有する高分子化合物を用いることができる。ここで、共役系の分子構造を有する高分子とは、高分子の主鎖上の炭素−炭素結合において、一重結合と二重結合とが交互に連なる構造を有している高分子である。
このような共役系高分子としては、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、p−フルオレニレンビニレン系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物、金属フタロシアニン系化合物、p−キシリレン系化合物、ビニレンスルフィド系化合物、m−フェニレン系化合物、ナフタレンビニレン系化合物、p−フェニレンオキシド系化合物、フェニレンスルフィド系化合物、フラン系化合物、セレノフェン系化合物、アゾ系化合物、金属錯体系化合物、及びこれらの化合物に置換基を導入した誘導体などをモノマーとし、当該モノマーから導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子が挙げられる。
上記の誘導体に導入される置換基としては特に制限はないが、他の成分との相溶性や用いる媒体の種類等を考慮して、適宜選択して導入することが好ましい。
一例として、媒体として有機溶媒を用いる場合、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基のほか、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基、クラウンエーテル基、アリール基等を好ましく用いることができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。また、置換基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは1〜12個、より好ましくは4〜12個であり、特に炭素数6〜12個の長鎖のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基が好ましい。
水系の媒体を用いる場合は、各モノマーの末端又は上記置換基にさらに、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基等の親水性基を導入することが好ましい。
他にも、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基、イソシアノ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基などを置換基として導入することができ、好ましい。
導入されうる置換基の数も特に制限されず、導電性高分子の分散性や相溶性、導電性等を考慮して、1個又は複数個の置換基を適宜導入することができる。
チオフェン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、ポリチオフェン、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子が挙げられる。
チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシル)チオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン、ポリ−3−(2’−メトキシエトキシ)メチルチオフェン、ポリ−3−(メトキシエトキシエトキシ)メチルチオフェンなどのポリ−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシルオキシ)チオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン、ポリ−3−メトキシ(ジエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−3−メトキシ(トリエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリ−アルコキシ置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ置換−4−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−チオヘキシルチオフェン、ポリ−3−チオオクチルチオフェン、ポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン類が挙げられる。
なかでも、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−アルコキシチオフェン類が好ましい。3位に置換基を有するポリチオフェンに関しては、チオフェン環の2,5位での結合の向きにより異方性が生じる。3−置換チオフェンの重合において、チオフェン環の2位同士が結合したもの(HH結合体:head−to−head)、2位と5位が結合したもの(HT結合体:head−to−tail)、5位同士が結合したもの(TT結合体:tail−to−tail)の混合物になるが、2位と5位が結合したもの(HT結合体)の割合が多いほど、重合体主鎖の平面性が向上し、ポリマー間のπ−πスタッキング構造を形成しやすく、電荷の移動を容易にする上で好ましい。これら結合様式の割合は、H−NMRにより測定することができる。チオフェン環の2位と5位が結合したHT結合体の重合体中における割合は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に90質量%以上のものが好ましい。
より具体的に、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子として、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
ピロール系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
アニリン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
アセチレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
p−フェニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
p−フェニレンビニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
p−フェニレンエチニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
上記以外の化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
Figure 2013089798
上記共役系高分子のなかでも、直鎖状の共役系高分子を用いることが好ましい。このような直鎖状の共役系高分子は、例えば、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子の場合、各モノマーのチオフェン環又はピロール環が、それぞれ2,5位で結合することにより得られる。ポリ−p−フェニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンビニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンエチニレン系高分子では、各モノマーのフェニレン基がパラ位(1,4位)で結合することにより得られる。
本発明で用いる導電性高分子は、上述の繰り返し単位(以下、この繰り返し単位を与えるモノマーを「第1のモノマー(群)」とも称する)を1種単独で有しても、2種以上を組合わせて有していてもよい。また、第1のモノマーに加えて、他の構造を有するモノマー(以下、「第2のモノマー」と称する)から導かれる繰り返し単位を、併せて有していてもよい。複数種の繰り返し単位からなる高分子の場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト重合体であってもよい。
上記第1のモノマーと併用される、他の構造を有する第2のモノマーとしては、フルオレニレン基、カルバゾール基、ジベンゾ[b,d]シロール基、チエノ[3,2−b]チオフェン基、チエノ[2,3−c]チオフェン基、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン基、シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル基、アゾ基、1,4−フェニレン基、5H−ジベンゾ[b、d]シロール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H、5H)−ジオン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、トリアゾール基等を有する化合物、及びこれらの化合物にさらに置換基を導入した誘導体が挙げられる。導入する置換基としては、上述した置換基と同様のものが挙げられる。
本発明で用いる導電性高分子は、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから導かれる繰り返し単位を導電性高分子中、合計で50質量%以上有していることが好ましく、70質量%以上有していることがより好ましく、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから導かれる繰り返し単位のみからなることが更に好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー群から選択された単一の繰り返し単位のみからなる共役系高分子である。
第1のモノマー群のなかでも、チオフェン系化合物及び/又はその誘導体から導かれる繰り返し単位を含むポリチオフェン系高分子がより好ましく用いられる。特に、下記の構造式(1)〜(5)で表されるチオフェン環、又はチオフェン環含有縮合芳香環構造を繰り返し単位として有するポリチオフェン系高分子が好ましい。
Figure 2013089798
上記構造式(1)〜(5)中、R〜R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、チオエーテル基、ポリエチレンオキシ基、エステル基を表し、Yは炭素原子又は窒素原子を表し、nは1または2の整数を表す。また*は、各繰り返し単位の連結部位を表す。
導電性高分子の分子量は特に限定されず、高分子量のものはもちろん、それ未満の分子量のオリゴマー(例えば重量平均分子量1000〜10000程度)であってもよい。
導電性の観点から、導電性高分子は、酸、光、熱に対して分解されにくいものが好ましい。また、高い導電性を得るためには、導電性高分子の長い共役鎖を介した分子内のキャリア伝達、及び分子間のキャリアホッピングが必要となる。そのためには、導電性高分子の分子量がある程度大きいことが好ましく、この観点から、本発明で用いる導電性高分子の分子量は、重量平均分子量で5000以上であることが好ましく、7000〜300,000であることがより好ましく、8000〜100,000であることがさらに好ましい。当該重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
これらの導電性高分子は、構成単位である上記モノマーを通常の酸化重合法により重合させて製造できる。
また、市販品を用いることもでき、例えば、アルドリッチ社製のポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5ージイル) レジオレギュラー品が挙げられる。
熱電変換層中の導電性高分子の含有量は、全固形分中、30〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることが特に好ましい。
[ドーパント]
本発明の熱電変換層には、導電性高分子とともにドーパントが含有される。ドーパントとしては、下記のオニウム塩化合物、酸化剤、酸性化合物、電子受容性物質、遷移金属化合物等を用いることができ、好ましい。
1.オニウム塩化合物
本発明でドーパントとして用いるオニウム塩化合物は、放射線や電磁波等の活性エネルギー線の照射又は熱の付与等のエネルギー付与によって酸を発生する化合物(酸発生剤、酸前駆体)であることが好ましい。このようなオニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩が好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、カルボニウム塩がより好ましい。当該塩を構成するアニオン部分としては、強酸の対アニオンが挙げられる。
具体的には、スルホニウム塩として下記一般式(I)及び(II)で表される化合物が、ヨードニウム塩として下記一般式(III)で表される化合物が、アンモニウム塩として下記一般式(IV)で表される化合物が、カルボニウム塩として下記一般式(V)で表される化合物が、それぞれ挙げられ、本発明において好ましく用いられる。
Figure 2013089798
上記一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26及びR31〜R33は、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基を示す。R21〜R33は、さらに置換されていてもよい。Xは、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)においてR21〜R23のいずれか2つの基が、一般式(II)においてR21及びR23が、一般式(III)においてR25及びR26が、一般式(IV)においてR27〜R30のいずれか2つの基が、一般式(V)においてR31〜R33のいずれか2つの基が、それぞれ結合して脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環を形成してもよい。
21〜R23、R25〜R33において、直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。
環状アルキル基としては、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンシル基、ピレニル基などが挙げられる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピラゾール基、イミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、プリン基、ピリミジン基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジン基等が挙げられる。
27〜R30において、アルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
24において、アルキレン基としては、炭素数2〜20のアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基などが挙げられる。環状アルキレン基としては、炭素数3〜20の環状アルキレン基が好ましく、具体的には、シクロペンチレン基、シクロへキシレン、ビシクロオクチレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基などが挙げられる。
21〜R33が更に置換基を有する場合、置換基として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、沃素原子)、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜6のアルケニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアルキル基、アリールカルボニルアルキル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、トリフルオロメチル基、−S−R41などが挙げられる。なお、R41は、前記R21と同義である。
としては、アリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、過ハロゲン酸アニオン、又は、アルキル若しくはアリールボレートアニオンが好ましい。これらは、さらに置換基を有してもよく、置換基としてはフルオロ基が挙げられる。
アリールスルホン酸のアニオンとして具体的には、p−CHSO 、PhSO 、ナフタレンスルホン酸のアニオン、ナフトキノンスルホン酸のアニオン、ナフタレンジスルホン酸のアニオン、アントラキノンスルホン酸のアニオンが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオンとして具体的には、CFSO 、CSO 、C17SO が挙げられる。
過ハロゲン化ルイス酸のアニオンとして具体的には、PF 、SbF 、BF 、AsF 、FeCl が挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオンとして具体的には、CFSO−N−SOCF、CSO−N−SOが挙げられる。
過ハロゲン酸アニオンとして具体的には、ClO 、BrO 、IO が挙げられる。
アルキル若しくはアリールボレートアニオンとして具体的には、(C、(C、(p−CH、(CF)が挙げられる。
としてより好ましくは、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン(好ましくは、PF )、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、アルキル若しくはアリールボレートアニオン(好ましくは、(C、(C)であり、さらに好ましくは過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、フルオロ置換アリールボレートアニオンである。
オニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013089798
Figure 2013089798
Figure 2013089798
Figure 2013089798
Figure 2013089798
Figure 2013089798
なお、上記具体例中のXは、PF 、SbF 、CFSO 、CHPhSO 、BF 、(C、RfSO 、(C、又は下記式で表されるアニオン
Figure 2013089798
を表し、Rfは任意の置換基を有するパーフルオロアルキル基を表す。
本発明においては、特に下記一般式(VI)又は(VII)で表されるオニウム塩化合物が好ましい。
Figure 2013089798
一般式(VI)中、Yは炭素原子又は硫黄原子を表し、Arはアリール基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar〜Arは、さらに置換されていてもよい。
Ar1としては、好ましくはフルオロ置換アリール基であり、より好ましくはペンタフルオロフェニル基、又は少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
Ar〜Arのアリール基、芳香族へテロ環基は、上述のR21〜R23、R25〜R33のアリール基、芳香族へテロ環基と同義であり、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。これらの基は、さらに置換されていてもよく、置換基としては上述のR21〜R33の置換基が挙げられる。
Figure 2013089798
一般式(VII)中、Arはアリール基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar、Ar及びArは、さらに置換されていてもよい。
Arは、上記一般式(VI)のArと同義であり、好ましい範囲も同様である。
Ar及びArは、上記一般式(VI)のAr〜Arと同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記オニウム塩化合物は、通常の化学合成により製造することができる。また、市販の試薬等を用いることもできる。
オニウム塩化合物の合成方法の一実施態様を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。他のオニウム塩に関しても、同様の手法により合成する事ができる。
トリフェニルスルホニウムブロミド(東京化成製)2.68g、リチウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエ−テルコンプレックス(東京化成製)5.00g、およびエタノール146mlを500ml容三口フラスコに入れ、室温にて2時間撹拌した後、純水200mlを添加し、析出した白色固形物を濾過により分取する。この白色固体を純水およびエタノールにて洗浄および真空乾燥することにより、オニウム塩としてトリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6.18gを得ることができる。
2.酸化剤
本発明でドーパントとして用いる酸化剤としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO ,PF ,AsF ,SbF ,BF ,各種スルホン酸アニオン)、その他O,XeOF,(NO )(SbF ),(NO )(SbCl ),(NO )(BF ),FSOOOSOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
3.酸性化合物
酸性化合物としては、ポリリン酸、ヒドロキシ化合物、カルボキシ化合物、又はスルホン酸化合物が挙げられる。
−ポリリン酸−
ポリリン酸には、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、メタリン酸及ポリリン酸、及びこれらの塩が含まれる。これらの混合物であってもよい。本発明ではポリリン酸は、二リン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸であることが好ましく、ポリリン酸であることがより好ましい。ポリリン酸は、HPOを充分なP10(無水リン酸)とともに加熱することにより、或いはHPOを加熱して水を除去することにより合成できる。
−ヒドロキシ化合物−
ヒドロキシ化合物は水酸基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、フェノール性水酸基を有することが好ましい。ヒドロキシ化合物としては、下記一般式(VIII)で表される化合物が好ましい。
Figure 2013089798
一般式(VIII)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
−カルボキシ化合物−
カルボキシ化合物としてはカルボキシ基を少なくとも1つ有する化合物であればよく、下記一般式(IX)又は(X)で表される化合物が好ましい。
Figure 2013089798
一般式(IX)中、Aは二価の連結基を表す。該二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基又はアルケニレン基と、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子との組み合わせが好ましく、アルキレン基又はアリーレン基と、酸素原子又は硫黄原子との組み合わせがより好ましい。なお、二価の連結基がアルキレン基と硫黄原子との組み合わせの場合、当該化合物はチオエーテル化合物にも該当する。このようなチオエーテル化合物の使用も好適である。
Aで表される二価の連結基がアルキレン基を含むとき、該アルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基が好ましく、カルボキシ基を置換基として有することがより好ましい。
Figure 2013089798
一般式(X)中、Rはスルホ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基を表し、nは1〜6を示し、mは0〜5を示す。
Rとしては、スルホ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、スルホ基、アルコキシカルボニル基がより好ましい。
nは、1〜5が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
mは、0〜5であり、0〜4が好ましく、0〜3が更に好ましい。
−スルホン酸化合物−
スルホン酸化合物は、スルホ基を少なくとも1つ有する化合物であり、スルホ基を2つ以上有する化合物が好ましい。スルホン酸化合物として好ましくは、アリール基、アルキル基に置換されたものであり、より好ましくは、アリール基に置換されたものである。具体的には、2−ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられる。
なお、上記で説明したヒドロキシ化合物及びカルボキシ化合物において、置換基としてスルホ基を有する化合物も好適である。
4.電子受容性物質
電子受容性物質としては、例えば「有機導電体の化学(丸善社)」の24頁に記載の物質が挙げられ、具体的には、TCNQ誘導体、金属錯体、ナフトキノン類、ベンゾキノン類等が挙げられる。
5.遷移金属化合物
遷移金属化合物としては、FeCl、FeOCl、TiC、ZrCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、WF等が挙げられる。
これらのドーパントの中でも、本発明では導電率の向上の観点からオニウム塩化合物を用いることが好ましく、光等の活性エネルギー線の照射又は熱の付与によって酸を発生するオニウム塩化合物を用いることが好ましい。本発明では熱電変換層に含まれる導電性高分子及びドーパントが均一に分散されていることが好ましく、オニウム塩化合物を用いることで分散性を向上させることができる。このようなオニウム塩化合物は酸放出前の状態では中性で、光や熱等のエネルギー付与により分解して酸を発生し、この酸によりドーピング効果が発現する。そのため、熱電変換材料を熱電変換層に成形・加工した後に光照射等によりドーピングを行うことができる。また、酸放出前は中性のため導電性高分子を凝集・析出等させることなく、各成分が材料中に均一に溶解又は分散するので、材料の塗布性や成膜性が良好となり、ドーピング後の導電性も向上する。
ドーパントは、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。ドーパントの使用量は、ドーピング効果の観点から、導電性高分子100質量部に対して5質量部以上使用することが好ましく、5〜40質量部使用することがより好ましく、10〜30質量部使用することがさらに好ましい。
[他の成分]
本発明の熱電変換層は、導電性高分子及びドーパント以外に他の成分を含有してもよい。
例えば、導電率を向上させるため、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、グラファイト等の炭素材料、Pt、Au、Ag、Si等のナノ粒子又はナノワイヤーなどの金属材料を配合してもよい。また、熱起電力(ゼーベック係数)を向上させるため、Bi2Te3、Bi0.3Sb1.7Te3、MnSi、CoSb3、ビスマス(Bi)、TiO2、ZnO等の無機の熱電変換材料を配合してもよい。特に、本発明の熱電変換層には無機の熱電変換材料が含有されることが好ましい。
熱電変換層中に上記材料を含有させた場合、変換層の強度や耐擦性が低下することがあるが、本発明では基板との良好な密着性により、変換層に上記材料を配しても良好な強度を保つことができる。
熱電変換層中の炭素材料、金属材料、無機の熱電変換材料の含有量は合計で、全固形分中、30〜90質量%であることが好ましく、35〜80質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが特に好ましい。
さらに、熱電変換層は上記材料の他に、酸化防止剤、対光安定剤、耐熱安定剤、可塑剤等を適宜含有してもよい。これらの成分の含有量は、材料全質量に対し5質量%以下であることが好ましい。
酸化防止剤としては、イルガノックス1010(日本チガバイギー製)、スミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)、スミライザーGS(住友化学工業(株)製)、スミライザーGM(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
耐光安定剤としては、TINUVIN 234(BASF製)、CHIMASSORB 81(BASF製)、サイアソーブUV−3853(サンケミカル製)等が挙げられる。
耐熱安定剤としては、IRGANOX 1726(BASF製)が挙げられる。
可塑剤としては、アデカサイザーRS(アデカ製)等が挙げられる。
[溶媒]
熱電変換層の調製にあたっては、適宜溶媒を用いることができる。
溶媒は、導電性高分子やドーパント等の熱電変換材料を良好に分散又は溶解できればよく、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは有機溶媒であり、アルコール、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、DMF、NMP、DMSOなどの極性の有機溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジンなどの芳香族系溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THF、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグリムなどのエーテル系溶媒等が好ましく使用される。
溶媒は材料の種類等に応じて適量を使用すればよいが、熱電変換材料の全固形分量に対し、97〜99.99質量%であることが好ましく、98〜99.95質量%であることがより好ましく、98.5〜99.9質量%であることがさらに好ましい。
[基板]
本発明の熱電変換素子の基板は、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有するものであればよい。このような基板は、アルミニウム基板に陽極酸化処理を施して、基板表面に陽極酸化皮膜を形成させることで得られる。アルミニウムの陽極酸化皮膜は、基底層であるバリアー層とその上に形成された多孔質層とからなる。多孔質層は規則的に配列した複数の細孔(マイクロポア)を有している(図3参照)。本発明の熱電変換素子は、この多孔質層の上に熱電変換層が積層されてなるものである。
陽極酸化処理により形成されたアルミニウムの陽極酸化皮膜は、それ自体が自立可能であるため、陽極酸化処理後に土台のアルミニウム板を除去して皮膜部分のみを素子の基板として用いてもよい。もちろん、表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板をそのまま基板として用いてもよい。
以下、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜の作製方法について説明する。
<アルミニウム基板>
アルミニウム基板は特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
アルミニウム基板の陽極酸化処理を施す表面は、アルミニウムの純度が高い方が好ましい。具体的には、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、アルミニウム陽極酸化皮膜の表面に形成されるマイクロポア(細孔)のポア配列の規則性が良好なものが得られるため好ましい。
アルミニウム基板の陽極酸化処理を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましく、特に、ポア配列の規則性を向上させる観点から、熱処理が施されるのが好ましい。
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム基板を加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。このような熱処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の表面に形成されるマイクロポアの配列の規則性が向上する。
また、熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法等が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種の陽極酸化処理用電解液を常温で金属基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム基板表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
また、脱脂処理には、通常の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸、例えば、アルミニウム基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRaが0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理は、アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する処理である。
陽極酸化処理としては、通常の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜に形成されるマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウム基板を使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、後述する陽極酸化処理(a−1)を実施すればよいが、好ましくは、後述する陽極酸化処理(a−1)、脱膜処理(a−2)および再陽極酸化処理(a−3)をこの順に実施する方法により形成するのが好ましい。
<陽極酸化処理(a−1)>
陽極酸化処理(a−1)をする際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有するマイクロポアを形成することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理(a−1)は、例えば、酸濃度0.01〜5mol/Lの溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理(a−1)に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸がさらに好ましく、シュウ酸が特に好ましい。形成されるマイクロポアの孔径は用いる酸溶液の種類により異なる。本発明では後述のように孔の平均孔径が60nm以上であることが好ましく、このような孔径を得るためにはシュウ酸を用いることが好ましい。
これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理(a−1)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.01〜5mol/L、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.05〜3mol/L、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度0.1〜1mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理(a−1)の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理(a−1)は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
<脱膜処理(a−2)>
脱膜処理(a−2)は、上記陽極酸化処理(a−1)によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理(a−2)により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理(a−2)では、アルミニウム基板は溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
アルミナ溶解液は、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
脱膜処理(a−2)は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
<再陽極酸化処理(a−3)>
上記脱膜処理(a−2)により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理(a−3)は、通常の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、ポア径の均一性が向上する点で、好ましい。
また、再陽極酸化処理(a−3)を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、再陽極酸化処理(a−3)を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
上述した陽極酸化処理(a−1)および脱膜処理(a−2)に代えて、例えば、物理的方法、粒子線法、ブロックコポリマー法、レジストパターン・露光・エッチング法等により、上述した再陽極酸化処理(a−3)によるマイクロポア生成の起点となる窪みを形成させてもよい。
<物理的方法>
例えば、インプリント法(突起を有する基板またはロールをアルミニウム基板に圧接し、凹部を形成する、転写法、プレスパターニング法)を用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム基板表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム基板表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとしてアルミニウム基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
<粒子線法>
粒子線法は、アルミニウム基板の表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
<ブロックコポリマー法>
ブロックコポリマー法は、アルミニウム基板の表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
<レジストパターン・露光・エッチング法>
レジストパターン・露光・エッチング法は、フォトリソグラフィーあるいは電子ビームリソグラフィー法によりアルミニウム板表面のレジストに露光および現像を施し、レジストパターンを形成した後これをエッチングする。レジストを設け、エッチングしてアルミニウム基板の表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
また、上記陽極酸化処理として、下記(1)〜(4)の工程をこの順に施すことにより、アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成してもよい。
(1)アルミニウム基板の表面を陽極酸化して、アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程
(2)酸またはアルカリを用いて、上記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる工程
(3)陽極酸化処理を実施して上記マイクロポアを深さ方向に成長させる工程
(4)上記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する工程
<工程(1)>
工程(1)では、アルミニウム基板の少なくとも一方の表面を陽極酸化処理して、該アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する。
工程(1)は、上記陽極酸化処理(a−1)と同様の手順で実施することができる。
図2は、アルミニウム基板および該アルミニウム基板上に形成される陽極酸化皮膜の模式的な端面図である。
図2(A)は、工程(1)により、アルミニウム基板12a表面に、マイクロポア16aを有する陽極酸化皮膜14aが形成された状態を示している。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて、部分的に溶解させる。
ここで、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させるとは、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を完全に溶解させるのではなく、図2(B)に示されるように、アルミニウム基板12a上に、マイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bが残存するように、図2(A)に示す陽極酸化皮膜14aの表面およびマイクロポア16aの内部を部分的に溶解させることを示す。
また、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜全体の0.001〜50質量%であるのが好ましく、0.005〜30質量%であるのがより好ましく、0.01〜15質量%であるのが更に好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができるとともに、マイクロポアの底部分に陽極酸化皮膜を残存させて、工程(3)で実施する陽極酸化処理の起点を残すことができる。
工程(2)は、アルミニウム基板上に形成された陽極酸化皮膜を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
工程(2)に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は0.01〜1mol/Lであるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜60℃であるのが好ましい。
工程(2)にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.01〜1mol/Lであるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、0.5mol/L、40℃のリン酸水溶液、0.05mol/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.05mol/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で陽極酸化皮膜が部分的に溶解されたアルミニウム基板に対して、再び陽極酸化処理を実施してマイクロポアを深さ方向に成長させる。
図2(C)に示されるように、工程(3)の陽極酸化処理により、図2(B)に示されるアルミニウム基板12aの酸化反応が進行し、アルミニウム基板12b上に、マイクロポア16bよりも深さ方向に成長したマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cが形成される。
陽極酸化処理は、通常の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
上述した電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、後に電着処理を行う場合に、均一化することができる。
陽極酸化皮膜の厚さの増加量は、0.1〜100μmであるのが好ましく、0.5〜50μmであるのがより好ましい。増加量が上記範囲であると、ポアの配列の規則性をより高くすることができる。
<工程(4)>
工程(4)では、図2(C)に示されるマイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。自己規則化法により形成されるマイクロポアは、図2(C)に示されるように、マイクロポア16cの上部を除いて、断面形状が略直管形状になる。言い換えると、マイクロポア16cの上部には、該マイクロポア16cの残りの部分とは断面形状が異なる部分(異形部分)20が存在する。工程(4)では、このようなマイクロポア16c上部に存在する異形部分20を解消するため、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。
ここで、変曲点30とは、マイクロポア16cの断面形状がなす主たる形状(ここでは、略直管形状)に対して、著しく形状が変化する部分を指し、別の言い方をすると、マイクロポア16cの断面形状において、主たる形状(略直管形状)に対して、形状の連続性が失われる部分を指す。
マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去することにより、図2(D)に示されるように、マイクロポア16d全体が略直管形状となる。
工程(4)では、工程(3)実施後の陽極酸化皮膜14cを断面方向からFE−SEMを撮影することによって、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30を特定し、該変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去してもよい。
ただし、マイクロポアに異形部分が生じるのは、主として、工程(1)のように、アルミニウム基板12a上に新たに陽極酸化皮膜14aを形成した場合である。したがって、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去して、マイクロポア16c上部の異形部分20を解消するには、工程(1)で形成された陽極酸化皮膜を工程(4)で除去すればよい。
なお、後述するように、工程(3)および工程(4)を2回以上繰り返す場合、工程(4)実施後の陽極酸化皮膜14dでは、異形部分30が解消されて、マイクロポア16dの断面形状全体が略直管形状となるので、工程(4)に続いて実施する工程(3)(以下、本段落においては「工程(3′)」という。)で形成されるマイクロポア上部には新たに異形部分が生じる。したがって、工程(3′)に続いて実施する工程(4)(以下、本段落においては「工程(4′)」という。)では、工程(3′)で形成されたマイクロポア上部に新たに生じた異形部分を除去する必要がある。このため、工程(4′)では、工程(3′)で形成されるマイクロポアの変曲点よりも上方の陽極酸化被膜を除去する必要がある。
工程(4)で、マイクロポア16cの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する処理としては、例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨等の研磨処理であってもよい。ただし、工程(2)のように、酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を溶解させる処理であることが好ましい。この場合、図2(D)に示されるように、図2(C)に示される陽極酸化皮膜14cよりも厚さが小さい陽極酸化皮膜14dが形成される。
工程(4)で、酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる場合、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜の溶解量は、特に限定されず、陽極酸化皮膜全体の0.01〜30質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができる。また、工程(3)および工程(4)を2回以上繰り返して実施する場合、次に実施する工程(3)での陽極酸化処理の起点を残すことができる。
上記工程(3)および上記工程(4)は、2回繰り返して行うのが、ポアの配列の規則性が高くなるため好ましく、3回以上繰り返して行うのがより好ましく、4回以上繰り返して行うのが更に好ましい。
上記工程を2回以上繰り返して行う場合、各回の工程(3)および工程(4)の条件はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。規則化度向上性の観点から、工程(3)は、各回ごとに電圧を変えて実施することが好ましい。この場合、徐々に高電圧の条件に変えていくのが、規則化度向上性の観点から、より好ましい。
<アルミニウム除去処理>
上記の陽極酸化処理によってアルミニウム基板の表面上に形成された陽極酸化皮膜から、必要に応じてアルミニウム基板を除去してもよい。上述のように、本発明で用いる素子基板は少なくとも多孔質陽極酸化皮膜を有していればよく、アルミニウム部分は必ずしも伴っていなくてもよい。アルミニウム基板の除去は、通常の方法により行うことができる。例えば、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いて、アルミニウム基板のみを溶解して除去する方法が挙げられる。
本発明で用いるアルミニウムの陽極酸化皮膜は、膜厚が6μm以上であることが好ましい。
また、陽極酸化皮膜の多孔質層の開口率が0.5以上であることが好ましい。開口率は下記数式(I)から算出される孔間隔に対する孔径の比率である。

数式(I) 開口率=φ/P>0.5

数式(I)において、φは多孔質層の細孔の平均孔径を、Pは平均孔間隔をそれぞれ表す。多孔質層の孔径とは開口部の孔の直径をいい、平均孔径φはその平均値である。多孔質層の孔間隔Pとは隣接する2つの開口部の中心間距離をいい、平均孔間隔Pはその平均値である。
本発明では、多孔質層の平均孔径が60nm以上であることが好ましい。また、平均孔間隔は100nm以上であることが好ましい。
[熱電変換素子]
本発明の熱電変換素子は、陽極酸化アルミニウム皮膜を有する基板上に、導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換材料を成形して熱電変換層を積層することにより得られる。熱電変換材料の調製方法は特に限定されず、導電性高分子及びドーパント、必要に応じて他の成分を混合して調製すればよい。適宜溶媒を使用してもよい。調製は通常の混合装置等を用いて常温常圧下で行うことができる。例えば、各成分を溶媒中で撹拌、振とうして溶解又は分散させて調製すればよい。溶解や分散を促進するため超音波処理を行ってもよい。
熱電変換層に、導電性高分子及びドーパント以外の成分として上述した無機の熱電変換材料を配合する場合、当該材料は微粒子化して用いることが好ましい。無機材料の微粒子化の方法としては、(1)還元による微粒子の合成法、(2)ジルコニアビーズ等を用いた粉砕法などの通常の技術を用いることができる。微粒子化することで、(1)導電性高分子へ分散性が向上し、無機材料が沈降することなく、成膜が可能であること、(2)無機材料の比表面積が大きくなり、無機材料と導電性高分子間のキャリア移動が促進されるなどの効果がある。分散性向上の観点では、微粒子の平均粒径が10μm以下であること好ましく、平均粒径が1μm以下であることがより好ましい。
熱電変換層の形成方法は、基板上に変換層を積層できればよく特に限定されないが、熱電変換材料を基材上に塗布して成膜することが好ましい。塗布方法としては、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、溶融押出成型法、溶液流延法、カレンダー法等、通常の高分子フイルムの製膜に使用される塗布方法を用いることができる。塗布後、必要に応じて加熱工程や乾燥工程を設けて溶媒等を留去してもよい。
熱電変換層の膜厚は、200nm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。膜厚が薄いと温度差を付与しにくくなることと、膜内の抵抗が増大してしまうため好ましくない。
熱電変換層がドーパントとしてオニウム塩化合物を含む場合、熱電変換層形成後にドーピングのために加熱又は活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。この処理によってオニウム塩化合物から酸が発生し、この酸が導電性高分子をプロトン化することにより導電性高分子が正の電荷でドーピング(p型ドーピング)される。
活性エネルギー線には、放射線や電磁波が包含され、放射線には粒子線(高速粒子線)と電磁放射線が包含される。粒子線としては、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、陽子線、電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)、重陽子線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線、宇宙線等が挙げられ、電磁放射線としては、ガンマ線(γ線)、エックス線(X線、軟X線)が挙げられる。電磁波としては、電波、赤外線、可視光線、紫外線(近紫外線、遠紫外線、極紫外線)、X線、ガンマ線などがあげられる。本発明において用いる線種は特に限定されず、例えば、使用するオニウム塩化合物の極大吸収波長付近の波長を有する電磁波を適宜選べばよい。
これらの活性エネルギー線のうち、ドーピング効果および安全性の観点から好ましいのは紫外線、可視光線、赤外線であり、より好ましいのは紫外線である。具体的には240〜1100nm、好ましくは300〜850nm、より好ましくは350〜670nmに極大吸収を有する光線である。
活性エネルギー線の照射には、放射線または電磁波照射装置が用いられる。照射する放射線または電磁波の波長は特に限定されず、使用するオニウム塩化合物の感応波長に対応する波長領域の放射線または電磁波を照射できるものを選べばよい。
放射線または電磁波を照射できる装置としては、LEDランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、DeepUVランプ、低圧UVランプなどの水銀ランプ、ハライドランプ、キセノンフラッシュランプ、メタルハライドランプ、ArFエキシマランプ、KrFエキシマランプなどのエキシマランプ、極端紫外光ランプ、電子ビーム、X線ランプを光源とする露光装置がある。紫外線照射は、通常の紫外線照射装置、例えば、市販の硬化/接着/露光用の紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社SP9-250UB等)を用いて行うことができる
露光時間及び光量は、用いるオニウム塩化合物の種類及びドーピング効果を考慮して適宜選択すればよい。具体的には、光量10mJ/cm〜10J/cm、好ましくは50mJ/cm〜5J/cmで行うことが挙げられる。
熱によるドーピングは、熱電変換層をオニウム塩化合物が酸を発生する温度以上で加熱すればよい。加熱温度として、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは70℃〜120℃である。加熱時間は、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは15分〜1時間である。
本発明の熱電変換素子は、温泉熱発電、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源、太陽熱発電、廃熱発電等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
製造例 陽極酸化アルミニウム基板の製造(処理液:シュウ酸)
(A)前処理(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下組成の電解研磨液を用い、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
(B)陽極酸化皮膜形成工程(陽極酸化処理)
上記で得られた電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬して脱膜処理を施した。
これらの処理をこの順に4回繰り返した後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で4時間再陽極酸化処理を施し、更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜を形成させた。
なお、陽極酸化処理および再陽極酸化処理ともに、陰極はステンレス電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)を用い、かくはん加温装置として、ペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
得られた陽極酸化アルミニウム基板の多孔質構造について、平均孔径φ、平均孔間隔P、開口率(φ/P)をそれぞれ下記の方法で測定・算出した。
電子顕微鏡を用い、陽極酸化アルミ表面を撮影した。撮影画像より、開口部20個を選定し、直径を計測し、平均孔径φを求めた。また、2つ開口部の中心間距離を計測し、平均孔間隔Pと、開口率(φ/P)を算出した。平均孔径φは60nm、平均孔間隔Pは100nm、開口率(φ/P)は0.6であった。
実施例1 熱電変換素子の作製
(1)熱電変換層塗布液の調製
テトラヒドロフラン(和光純薬製)700質量部と、電子工業用キシレン(関東化学製)300質量部とを混合し、混合溶媒Aを調製した。混合溶媒A980質量部に、導電性高分子:ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT、レジオレギュラー)を18質量部と、ドーパント:FeCl6水和物2質量部とを混合、溶解して塗布液1を調製した。
(2)熱電変換層の成膜
塗布液1を、上記製造例により得られた陽極酸化アルミニウム基板上に成膜して、熱電変換素子を作製した。
厚さ300μmのニトフロンNo.901UL(日東電工社製品名)と両面粘着フイルムを用い、陽極酸化アルミニウム基板上に型枠を作製した。型枠内に塗布液1を流し込み、加熱乾燥させ、該型枠を剥離することで、厚さ3.5μmの熱電変換層を成膜した。
実施例2
下記により調製した無機粒子分散液2を9質量部添加した以外は実施例1と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
[無機微粒子分散液の調製]
Bi0.3Sb1.7Teの組成からなる粗粒子0.1質量部と、φ1mmのジルコニアビース2.5質量部と電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)0.9質量部とをマイクロチューブ(容量1.5ml)内に封入し、卓上小型振とう機Mix−EVR(タイテック社製品名)を用い、12時間攪拌することで、Bi0.3Sb1.7Teの微粒子を含む無機粒子分散液2を調製した。
比較例1
基板を合成石英基板に変更した以外には実施例1と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
比較例2
基板を合成石英基板に変更した以外には実施例2と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
比較例3
基板としてポリイミド基板500H(東レ・デュポン社製品名)を用い、UVオゾン処理を行った以外は実施例1と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
比較例4
基板としてポリイミド基板500H(東レ・デュポン社製品名)を用い、UVオゾン処理を行った以外は実施例2と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
比較例5
基板としてシリコン基板を用い、UVオゾン処理を行った以外は実施例1と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
実施例1〜2、比較例1〜5を下記により評価した。結果を表1に示す。
[熱伝導率の測定]
レーザーフラッシュ法により、熱電変換層と基板からなる熱電変換素子の熱伝導率を測定した。実施例1の素子の熱伝導率を1とし、これに対し0(変化なし)〜1.5倍未満の変化の場合は○、1.5倍以上の変化の場合は×と相対評価した。
[ヒートサイクル試験]
熱電変換層を成膜した基板を、恒温槽SMU−2(エスペック社製品名)内で、(1)160℃、2時間保持のサイクルと、(2)−20℃、2時間保持のサイクルを10回繰り返したのち、変化ない場合には○、基板の反り/変形が生じた場合には×と評価した。
[擦り試験]
エタノールを含ませた綿棒を用い、熱電変換層を擦り、変化が無い場合には○、膜の剥がれが発生した場合には×と評価した。
Figure 2013089798
表1から明らかなように、実施例1及び2の素子は熱伝導率が低く、ヒートサイクルを経ても基板の反りや変形が生じなかった。また、熱電変換層の耐擦性も良好であり、熱電変換層に無機粒子を配合しても良好な耐擦性が維持されていた。
これに対し、陽極酸化アルミニウム基板以外の基板を用いた比較例1〜5では、熱伝導率の低減効果がなかったり、基板に反りや変形が生じていた。さらに、耐擦性も悪化していた。
実施例3
ドーパントをFeCl6水和物から下記化合物Aに変更した以外は実施例1と同様にして、塗布液3を調製した。さらに、加熱乾燥後に、UV照射(2J/cm)処理を追加して行った以外には実施例1と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
実施例4
無機粒子としてアナタース型TiO2(Aldrich製、製品コード637254)5質量部を添加した以外は実施例3と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
実施例5
導電性高分子をポリチオフェン(P3HT)から下記化合物Bに変更し、無機粒子をアナタース型TiO2に代えてBi0.3Sb1.7Te分散液2を9質量部添加した以外は実施例4と同様にして、熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
Figure 2013089798
実施例6
[無機微粒子分散液の調製]
BiTeの組成からなる粗粒子0.1質量部と、φ1mmのジルコニアビース2.5質量部と電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)0.9質量部とをマイクロチューブ(容量1.5ml)内に封入し、卓上小型振とう機Mix−EVR(タイテック社製品名)を用い、12時間攪拌することで、BiTeの微粒子を含む無機粒子分散液6を調製した。
[熱電変換層塗布液の調製]
導電性高分子としてポリアニリン分散液(Aldrich製、商品名:Polyaniline (emeraldine salt),2-3 wt. % (dispersion in xylene)、製品コード650013、スルホン酸誘導体添加済み)99質量部と、上記で調整したBiTe分散液6を1質量部とを混合し、塗布液6を調製した。
塗布液6を用いて、実施例1と同様に熱電変換層を成膜し熱電変換素子を作製した。
実施例3〜6を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
Figure 2013089798
表2から明らかなように、実施例3〜6の素子は熱伝導率が低く、ヒートサイクルを経ても基板の反りや変形が生じなかった。また、熱電変換層の耐擦性も良好であり、熱電変換層に無機粒子を配合しても良好な耐擦性が維持されていた。
12a、12b、12c、12d:アルミニウム基板
14、14a、14b、14c、14d:陽極酸化皮膜
16、16a、16b、16c、16d:マイクロポア
20:異形部分
30:変曲点

Claims (5)

  1. アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、導電性高分子及びドーパントを含有する熱電変換層を積層してなる熱電変換素子。
  2. 前記導電性高分子及びドーパントが熱電変換層中に均一に分散されていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換素子。
  3. 前記熱電変換層がさらに無機の熱電変換材料を含有する請求項1又は2記載の熱電変換素子。
  4. 前記ドーパントが、熱又は活性エネルギー線照射の付与により酸を発生する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
  5. 前記導電性高分子が、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーから導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
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