JP3548199B2 - 二酸化チタン微粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
産業上の利用分野
本発明は、分散性および耐光性に優れたジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末に関し、更に詳しくは、食品包装材料、紫外線劣化防止剤、紫外線遮蔽シートおよびフィルム、日焼け防止用化粧料等に有用な易分散性ジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末に関する。
【0002】
従来の技術
0.1μm以下の粒子径を有する二酸化チタン微粉末は、例えば樹脂に配合された時可視光線を透過させ、一方、紫外線を遮蔽して紫外線によって変色、変質する物質を保護するので、食品や医薬品などのプラスチックス包装材、農園芸用プラスチックス被覆材、化粧品などに利用されている。このような二酸化チタン微粉末は、微粒子であるが故に凝集力が極めて強く樹脂への分散が難しい。従って樹脂に添加混合した場合に未分散の凝集粒子が分散媒樹脂中に残存する為、前記の大きさの二酸化チタン微粉末が有する本来の可視光線高透過能および紫外線遮蔽能を実質的には利用できていないのが実状である。更に、上記の大きさの二酸化チタンの微粉末は光活性が強い為分散媒樹脂を酸化、劣化させるとの問題点をも有している。
【0003】
上記の問題点を解決するため、二酸化チタンの表面を被覆処理し、分散性を改善する方法が提案されていた。たとえば、特公昭63−51974は実質的に0.01〜0.1μmの範囲内の大きさの微細な二酸化チタンの粒子表面をケイ素および/又はアルミニウムの酸化物で処理した二酸化チタン組成物を開示している。また、特開平2−194063は分散性及び耐候性に優れた微粒子二酸化チタン粉末として、中核となる最大粒子径が0.1μm以下である微粒子二酸化チタン表面に、微粒子二酸化チタンの重量に対してSnO2として0.1〜5%のスズの含水酸化物および/又はZrO2として0.1〜5%のジルコニウムの含水酸化物を最内層に被覆し、次に微粒子二酸化チタンの重量に対してSiO2として0.1〜8%のケイ素の含水酸化物を中間層に被覆し、最後に該粒子二酸化チタンの重量に対しAl2O3として0.1〜10%の含水酸化物を最外層に被覆してなる微粒子二酸化チタン粉末を開示している。
【0004】
その他にも表面処理により分散性の改良を図るいくつかの出願があるが、いずれの場合にも二酸化チタン粉末の表面に被覆層を設けるに際し、まず二酸化チタン微粉末を一次粒子に分散させることが必要となる。しかし、従来の二酸化チタン微粉末は水中での分散性に問題があり、二酸化チタンを一次粒子に分散させる操作自体が難しく、そのため分散性に優れた二酸化チタン微粉末を工業的に安定して製造することは困難であった。
【0005】
ジルコニウム固溶二酸化チタン微粒子の製造に関しては、Suyamaらが気相法により合成できたと報告している(Y.Suyama,M.Tanaka,A.Kato:Ceramurgia Intern.,Vol.5,No.2,pp.84〜88(1979))。しかしながら彼らの合成したジルコニウム固溶二酸化チタン微粒子は0.3μm以上の大きさの粗大粒子を混在しており、可視光線高透過能および紫外線遮蔽能において劣るものである。
【0006】
発明が解決しようとする課題
このように従来の二酸化チタン微粉末は、▲1▼分散性が悪い▲2▼光活性が強い▲3▼工業的に安定して被覆を設けることが容易ではない等の問題を有していた。そこで、優れた分散性と耐光性を有し、かつ工業的に容易に且つ安定して製造できる新規な二酸化チタン微粉末の出現が望まれていた。また、ジルコニウム固溶二酸化チタンについては、0.1μm以下の大きさの微粉末の合成例はなかった。
【0007】
本発明は二酸化チタン微粉末が持つ、上記の欠点を改良した新規なジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末およびその製造法を提供することを目的とする。
【0008】
課題を解決する手段
本発明者らは上記の課題を解決する為鋭意研究を行った結果、結晶構造中にジルコニウムを固溶させることにより分散性と耐光性が改善されることを見いだし本発明を完成した。すなわち、本発明は0.01〜0.1μmの範囲内の大きさであり、かつ結晶構造中にジルコニウムが固溶したことを特徴とする二酸化チタン微粉末を提供するものである。さらに、本発明は前記粒子表面に被覆層、好ましくはケイ素の含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の含水酸化物の被覆層を設けた前記二酸化チタン、および結晶形がアナタース型である前記二酸化チタンを提供するものである。
【0009】
上記粒子の製造方法は、チタニアゾルに水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを添加して中和し、濾過水洗した後400〜1000℃で焼成すればよく、上記のケイ素および/またはアルミニウムの被覆層を設ける場合には、上記の焼成後、焼成物を水中に分散して水性スラリーとし、このスラリーに水溶性の、ケイ素化合物および/又はアルミニウム化合物を、好ましくはケイ素の含水酸化物および/またはアルミニウムの含水酸化物の被覆量がTiO2に対しSiO2及びAl2O3に換算してそれぞれ1〜20重量%となるような量で添加後、中和する方法により製造できる。
【0010】
本発明にかかる二酸化チタンの粒径は0.01〜0.1μmの範囲内であればよいが、0.01〜0.07μmの範囲内がより好ましい。また、ジルコニウムの量は、TiO2に対して、ZrO2として0.5〜25重量%、望ましくは1〜15重量%が適当である。ZrO2の添加割合がこの範囲よりも少ないと分散性や耐光性の改善効果が得られ難く、また、多すぎる場合には、耐光性に関しては特に特性差は生じないものの、分散性が悪くなる。また、二酸化チタンの結晶形はX線回折による測定でアナタース型あるいはルチル型の結晶構造を示すもののいずれも使用できるが、アナタース型のものが最も好ましく使用できる。
【0011】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は水中での分散性および分散安定性に優れているので、各種の水溶性樹脂に混合して容易に塗膜化でき、また、化粧用基剤或は他の化粧料成分への分散混合が容易である。更に、粗大な凝集粒子を実質的に含まないので、塗料、プラスチックスの粘度調整剤、高温時の物性低下防止の為のシリコンゴム充填剤、顔料、トナーなどの表面被覆剤、アルミニウム・メタリック塗料のフロストカラー顔料、繊維、フィルムなどの固体潤滑剤等として好適に使用し得る。特に、従来の二酸化チタンよりもウレタンとの親和性が良好であり、且つ光活性が小さいので、紫外線に弱いとされるポリウレタン弾性系の繊維に好適に使用される。
【0012】
本発明にかかるジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は、水中での分散性に優れており容易に一次粒子に分散できるので、樹脂中での分散性を改善する為の含水酸化物などによる表面処理を容易かつ均一に行うことができ、樹脂中での優れた分散性と耐光性を有する、被覆層を有する二酸化チタン微粉末を工業的に容易に安定して製造することができる。
【0013】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は代表的には以下の方法で製造される。即ち、硫酸チタニル水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物を洗浄後解膠して得られるチタニアゾル、あるいはチタンの塩酸酸性水溶液を加熱加水分解後解膠して得られたチタニアゾルに、水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを加えて中和した後、洗浄、乾燥、焼成すればよい。
【0014】
チタニアゾルの成分であるチタニア微粒子は、含水酸化チタンを意味する。本発明においては、硫酸チタニル水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物からのチタニアゾルは、凝集沈澱物を洗浄した後スラリー状とし、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリで中和し、濾過、洗浄して硫酸根を除去する。この後、スラリー化し、塩酸や硝酸等の一塩基酸を加えて、該スラリーのpHを3以下、望ましくは2〜1に調整して解膠することで得られる。また、チタンの塩酸酸性水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物からのチタニアゾルは、濾過、洗浄後、スラリー化し、塩酸や硝酸等の一塩基酸を加えて、該スラリーのpHを3以下、望ましくは2〜1に調整することで容易に得られる。
【0015】
チタニアゾルに添加する水溶性のジルコニウム化合物としては、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウムおよび硫酸ジルコニウム等が使用できる。
【0016】
ジルコニウム化合物を添加する時のチタニアゾルの濃度は、TiO2として50〜250g/l、望ましくは80〜200g/lが適当である。ジルコニウムの量は、前記の適当な範囲の生成物が得られるような範囲で添加することが望ましい。添加したジルコニウムの大部分は、二酸化チタンの結晶格子中に存在するが、その全量が結晶格子中に存在する必要はなく、本発明の効果が損なわれない程度でその一部が、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO4)や含水酸化ジルコニウムとして存在していても何ら差し支えない。
【0017】
焼成温度は、400〜1000℃の範囲、好ましくは600〜950℃、最も好ましくは800〜950℃の範囲が適当である。即ち、焼成温度がこの範囲よりも低くなると、吸着水分量が多くなって、例えば、樹脂に混合する際に分散が難しくなるなど好ましくない影響を与える。一方、高くなると、二酸化チタン粒子同士が固着したり、あるいは焼結したりして0.1μmよりも大きい粗大粒子が生成するので好ましくない。
【0018】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は、水分散性に優れたものではあるが、塗料中での分散性や分散安定性については分散媒樹脂や溶剤との馴染みが問題となり、樹脂や溶剤の種類によっては分散安定性に問題が生じる場合がある。このような場合には公知の方法で、粒子表面をケイ素やアルミニウムの含水酸化物などで被覆処理して馴染みを改善することが好ましい。本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は水分散性に優れているので、このような被覆処理が特に有効に活用される。被覆材の種類は特に限定するものではなく、使用される樹脂や溶剤の種類に応じて公知の物質により処理することができる。たとえば、前述のケイ素および/又はアルミニウムの酸化物による処理をしてもよいし、スズの含水酸化物および/又はジルコニウムの含水酸化物を最内層に被覆し、次にケイ素の含水酸化物を中間層に被覆し、最後にアルミニウムの含水酸化物で被覆してもよい。その他、チタニウム、セリウムまたは亜鉛等の含水酸化物で被覆することもできる。さらに、公知の有機被覆材、たとえばステアリン酸アルミニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルカノールアミンのような界面活性剤、多価アルコール、オルガノシロキサン化合物、シラン系、チタネート系およびアルミニウム系のカップリング剤なども使用できる。一般的には、ケイ素および/又はアルミニウムの酸化物による処理が好適に行われる。
【0019】
この被覆処理は公知の方法で行うことができる。例えば、ケイ素および/又はアルミニウムの酸化物により処理をする場合には、前記の焼成工程で得られたジルコニウム固溶二酸化チタンを、TiO2として100〜400g/l、望ましくは200〜300g/lの濃度となるよう水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩やアルミニウム化合物を添加後、アルカリや酸を添加して中和することでなされる。即ち、水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸を上記水性スラリーに添加して、該スラリーのpHを7に調整する。また、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを使用した場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを添加してジルコニウム固溶二酸化チタンを分散させた水性スラリーのpHを7に調整する。
【0020】
ケイ素やアルミニウムの含水酸化物の処理量は、SiO2及びAl2O3に換算してTiO2に対してそれぞれ1〜20重量%が適当である。処理量がこれより少ないと充分な分散性改善効果が得られず、また、この量が多すぎると紫外線遮蔽効果が低下するので好ましくない。
【0021】
また、有機被覆材による処理方法も公知であり、必要に応じ適当な方法により処理することができる。
【0022】
尚、天然産のルチル型酸化チタンやイルメナイト等の鉱石をTiO2源として合成したチタニアゾルは、ニオブ、タンタル、鉄等を始めとする鉱石に由来する各種の不純物を含んでいるが、顔料用途で許容されている程度の量を不純物として含有していても何ら問題はない。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。実施例1
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1100μS/cmになるまで純水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、該スラリーのpHを9に調整し、1時間撹拌を続けた。その後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを7に調整した後、上澄み液の電気伝導度が250μS/cmになるまで純水を用いて洗浄した。
【0024】
この後、該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.5に調整して、TiO2として120g/lのアナタース型の結晶構造を有するチタニアゾル1リットルを得た。ZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を24ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.01〜0.05μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0025】
この微粉末をX線回折により調べたところ、アナタース型二酸化チタンと同様な回折パターンを示したものの、回折線の位置はアナタース型二酸化チタンのそれよりも低角度側にシフトしていた。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.530Åであった。
【0026】
比較例 1
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルに水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成したところ、0.04〜0.18μmの粒子径を持つ微粉末が得られた。
【0027】
この微粉末をX線回折により調べたところアナタース型二酸化チタンの単一相であることが分かった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準として(101)格子面間隔dを求めたところ3.520Åであった。この値は、前述した、実施例1の微粉末のそれよりも小さい値である。このことから、実施例1の微粉末は、アナタース型二酸化チタン結晶格子のTi4+の位置にZr4+が置換固溶した結晶であることが分かる。
【0028】
比較例 2
比較例1において、焼成条件を750℃で1時間とした他はすべて同じ条件で処理したところ、0.01〜0.05μmの粒子径を持つアナタース型二酸化チタンの微粉末が得られた。
【0029】
実施例 2
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルにZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を50ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を800℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0030】
この微粉末をX線回折により調べたところアナタース型二酸化チタンと同様な回折パターンを示し、回折線の位置は実施例1のそれよりも更に低角度側にシフトしていた。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.536Åであり、アナタース型二酸化チタン結晶格子中へのジルコニウムの固溶量は実施例1のそれよりも多かった。
【0031】
実施例 3
実施例2で得られた乾燥物を700℃で焼成して0.01〜0.05μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0032】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンの単一相であることが分かった。
【0033】
実施例 4
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルにZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を65ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を910℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0034】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンと少量のチタン酸ジルコニウムとの2相混合物であることが分かった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.537Åであった。
【0035】
実施例 5
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1100μS/cmになるまで純水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、該スラリーのpHを9に調整後、1時間撹拌を続けた。その後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを7に調整した後、上澄み液の電気伝導度が150μS/cmになるまで純水を用いて洗浄した。
【0036】
この後、該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.0に調整して、TiO2として110g/lのチタニアゾル1リットルとし、この後更に、15時間撹拌続けた。ZrO2として200g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を35ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0037】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンとジルコニウムが固溶したルチル型二酸化チタンとの2相混合物であり、主回折線の強度比から求めた2相の量的割合は、ジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンが約90重量%、ジルコニウムが固溶したルチル型二酸化チタンが約10重量%であった。
【0038】
高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.530Åであり、ルチル型二酸化チタンの(110)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.259Åであった。
【0039】
比較例 3
実施例5で使用したアナタース型の結晶構造を有するチタニアゾルを、実施例5と同様に15時間撹拌を続けた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.05〜0.25μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0040】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンとアナタース型二酸化チタンの2相混合物であり、主回折線の強度比から求めた2相の量的割合は、ルチル型二酸化チタンが約85重量%、アナタース型二酸化チタンが約15重量%であった。
【0041】
高純度ケイ素粉末(99.9%)内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)格子面間隔dを求めたところ、3.521Åであり、ルチル型二酸化チタンの(110)格子面間隔dを求めたところ、3.249Åであった。実施例5および比較例3の結果より、二酸化チタンの結晶格子にジルコニウムが固溶することでアナタースからルチルへの転移が阻害されることが分かる。
【0042】
実施例 6
TiO2として150g/lのルチル型の結晶構造を有するチタニアゾル1リットルに、ZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を45ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを6に調整した。上澄み液の電気伝導度が40μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を850℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0043】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンと同様な回折パターンを示した。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてルチル型二酸化チタンの(110)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.261Åであった。
【0044】
比較例 4
実施例6で使用したチタニアゾル1リットルに、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを6に調整した。上澄み液の電気伝導度が40μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を850℃で1時間焼成して0.04〜0.15μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0045】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンの単一相であった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準として(110)格子面間隔dを求めたところ、3.250Åであった。
【0046】
実施例 7
実施例1で得られた微粉末300gを200g/lの水性スラリーとし、Al2O3として210g/lのアルミン酸ナトリウム水溶液135mlを添加した後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを6.5に調整した。濾過、乾燥して110℃で乾燥した。
【0047】
実施例 8
実施例1で得られた微粉末500gを150g/lの水性スラリーとし、SiO2として85g/lケイ酸ナトリウム水溶液300mlを添加した後、更にAl2O3として107g/lの硫酸アルミニウム水溶液を249mlを添加した。該スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを7.5に調整した。濾過、洗浄して110℃で乾燥した。
【0048】
実施例1〜8および比較例1〜3で得られた微粉末を太陽光に8時間暴露したところ、比較例の微粉末の色調はいずれも青黒く変色したのに対し、実施例の微粉末のそれは特に変色しなかった。
【0049】
また、実施例1〜6および比較例1〜4の微粉末を0.01重量%濃度になるように水中に分散し、10mm厚の石英セルに入れ、可視光線(550nm)及び紫外線(320nm)の透過率を、日本分光製分光光度計Ubest−50型で測定した結果を第1表に示す。この表より、本発明の微粉末の分散液は、高い可視光線透過率を有していることが分かる。また、実施例1〜6および比較例2の分散液を3日間放置した後の上記特性を測定したところ、比較例2の微粉末の分散液については可視光線および紫外線透過率ともに大きくなったのに対し、実施例の微粉末のそれは特に変化せず、本発明の微粉末は水中での分散安定性に優れていた。
【0050】
実施例7および8の微粉末をニトロセルロース溶液に配合してニトロセルロース塗料を作製する際の塗料を5分毎にグラインドゲージで調べたところ、10μm以下になるまでの分散時間はいずれも15〜20分であり、分散性に優れているものであった。
【0051】
【表1】
産業上の利用分野
本発明は、分散性および耐光性に優れたジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末に関し、更に詳しくは、食品包装材料、紫外線劣化防止剤、紫外線遮蔽シートおよびフィルム、日焼け防止用化粧料等に有用な易分散性ジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末に関する。
【0002】
従来の技術
0.1μm以下の粒子径を有する二酸化チタン微粉末は、例えば樹脂に配合された時可視光線を透過させ、一方、紫外線を遮蔽して紫外線によって変色、変質する物質を保護するので、食品や医薬品などのプラスチックス包装材、農園芸用プラスチックス被覆材、化粧品などに利用されている。このような二酸化チタン微粉末は、微粒子であるが故に凝集力が極めて強く樹脂への分散が難しい。従って樹脂に添加混合した場合に未分散の凝集粒子が分散媒樹脂中に残存する為、前記の大きさの二酸化チタン微粉末が有する本来の可視光線高透過能および紫外線遮蔽能を実質的には利用できていないのが実状である。更に、上記の大きさの二酸化チタンの微粉末は光活性が強い為分散媒樹脂を酸化、劣化させるとの問題点をも有している。
【0003】
上記の問題点を解決するため、二酸化チタンの表面を被覆処理し、分散性を改善する方法が提案されていた。たとえば、特公昭63−51974は実質的に0.01〜0.1μmの範囲内の大きさの微細な二酸化チタンの粒子表面をケイ素および/又はアルミニウムの酸化物で処理した二酸化チタン組成物を開示している。また、特開平2−194063は分散性及び耐候性に優れた微粒子二酸化チタン粉末として、中核となる最大粒子径が0.1μm以下である微粒子二酸化チタン表面に、微粒子二酸化チタンの重量に対してSnO2として0.1〜5%のスズの含水酸化物および/又はZrO2として0.1〜5%のジルコニウムの含水酸化物を最内層に被覆し、次に微粒子二酸化チタンの重量に対してSiO2として0.1〜8%のケイ素の含水酸化物を中間層に被覆し、最後に該粒子二酸化チタンの重量に対しAl2O3として0.1〜10%の含水酸化物を最外層に被覆してなる微粒子二酸化チタン粉末を開示している。
【0004】
その他にも表面処理により分散性の改良を図るいくつかの出願があるが、いずれの場合にも二酸化チタン粉末の表面に被覆層を設けるに際し、まず二酸化チタン微粉末を一次粒子に分散させることが必要となる。しかし、従来の二酸化チタン微粉末は水中での分散性に問題があり、二酸化チタンを一次粒子に分散させる操作自体が難しく、そのため分散性に優れた二酸化チタン微粉末を工業的に安定して製造することは困難であった。
【0005】
ジルコニウム固溶二酸化チタン微粒子の製造に関しては、Suyamaらが気相法により合成できたと報告している(Y.Suyama,M.Tanaka,A.Kato:Ceramurgia Intern.,Vol.5,No.2,pp.84〜88(1979))。しかしながら彼らの合成したジルコニウム固溶二酸化チタン微粒子は0.3μm以上の大きさの粗大粒子を混在しており、可視光線高透過能および紫外線遮蔽能において劣るものである。
【0006】
発明が解決しようとする課題
このように従来の二酸化チタン微粉末は、▲1▼分散性が悪い▲2▼光活性が強い▲3▼工業的に安定して被覆を設けることが容易ではない等の問題を有していた。そこで、優れた分散性と耐光性を有し、かつ工業的に容易に且つ安定して製造できる新規な二酸化チタン微粉末の出現が望まれていた。また、ジルコニウム固溶二酸化チタンについては、0.1μm以下の大きさの微粉末の合成例はなかった。
【0007】
本発明は二酸化チタン微粉末が持つ、上記の欠点を改良した新規なジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末およびその製造法を提供することを目的とする。
【0008】
課題を解決する手段
本発明者らは上記の課題を解決する為鋭意研究を行った結果、結晶構造中にジルコニウムを固溶させることにより分散性と耐光性が改善されることを見いだし本発明を完成した。すなわち、本発明は0.01〜0.1μmの範囲内の大きさであり、かつ結晶構造中にジルコニウムが固溶したことを特徴とする二酸化チタン微粉末を提供するものである。さらに、本発明は前記粒子表面に被覆層、好ましくはケイ素の含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の含水酸化物の被覆層を設けた前記二酸化チタン、および結晶形がアナタース型である前記二酸化チタンを提供するものである。
【0009】
上記粒子の製造方法は、チタニアゾルに水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを添加して中和し、濾過水洗した後400〜1000℃で焼成すればよく、上記のケイ素および/またはアルミニウムの被覆層を設ける場合には、上記の焼成後、焼成物を水中に分散して水性スラリーとし、このスラリーに水溶性の、ケイ素化合物および/又はアルミニウム化合物を、好ましくはケイ素の含水酸化物および/またはアルミニウムの含水酸化物の被覆量がTiO2に対しSiO2及びAl2O3に換算してそれぞれ1〜20重量%となるような量で添加後、中和する方法により製造できる。
【0010】
本発明にかかる二酸化チタンの粒径は0.01〜0.1μmの範囲内であればよいが、0.01〜0.07μmの範囲内がより好ましい。また、ジルコニウムの量は、TiO2に対して、ZrO2として0.5〜25重量%、望ましくは1〜15重量%が適当である。ZrO2の添加割合がこの範囲よりも少ないと分散性や耐光性の改善効果が得られ難く、また、多すぎる場合には、耐光性に関しては特に特性差は生じないものの、分散性が悪くなる。また、二酸化チタンの結晶形はX線回折による測定でアナタース型あるいはルチル型の結晶構造を示すもののいずれも使用できるが、アナタース型のものが最も好ましく使用できる。
【0011】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は水中での分散性および分散安定性に優れているので、各種の水溶性樹脂に混合して容易に塗膜化でき、また、化粧用基剤或は他の化粧料成分への分散混合が容易である。更に、粗大な凝集粒子を実質的に含まないので、塗料、プラスチックスの粘度調整剤、高温時の物性低下防止の為のシリコンゴム充填剤、顔料、トナーなどの表面被覆剤、アルミニウム・メタリック塗料のフロストカラー顔料、繊維、フィルムなどの固体潤滑剤等として好適に使用し得る。特に、従来の二酸化チタンよりもウレタンとの親和性が良好であり、且つ光活性が小さいので、紫外線に弱いとされるポリウレタン弾性系の繊維に好適に使用される。
【0012】
本発明にかかるジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は、水中での分散性に優れており容易に一次粒子に分散できるので、樹脂中での分散性を改善する為の含水酸化物などによる表面処理を容易かつ均一に行うことができ、樹脂中での優れた分散性と耐光性を有する、被覆層を有する二酸化チタン微粉末を工業的に容易に安定して製造することができる。
【0013】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は代表的には以下の方法で製造される。即ち、硫酸チタニル水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物を洗浄後解膠して得られるチタニアゾル、あるいはチタンの塩酸酸性水溶液を加熱加水分解後解膠して得られたチタニアゾルに、水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを加えて中和した後、洗浄、乾燥、焼成すればよい。
【0014】
チタニアゾルの成分であるチタニア微粒子は、含水酸化チタンを意味する。本発明においては、硫酸チタニル水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物からのチタニアゾルは、凝集沈澱物を洗浄した後スラリー状とし、水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリで中和し、濾過、洗浄して硫酸根を除去する。この後、スラリー化し、塩酸や硝酸等の一塩基酸を加えて、該スラリーのpHを3以下、望ましくは2〜1に調整して解膠することで得られる。また、チタンの塩酸酸性水溶液を加熱加水分解して生成する凝集沈澱物からのチタニアゾルは、濾過、洗浄後、スラリー化し、塩酸や硝酸等の一塩基酸を加えて、該スラリーのpHを3以下、望ましくは2〜1に調整することで容易に得られる。
【0015】
チタニアゾルに添加する水溶性のジルコニウム化合物としては、オキシ塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウムおよび硫酸ジルコニウム等が使用できる。
【0016】
ジルコニウム化合物を添加する時のチタニアゾルの濃度は、TiO2として50〜250g/l、望ましくは80〜200g/lが適当である。ジルコニウムの量は、前記の適当な範囲の生成物が得られるような範囲で添加することが望ましい。添加したジルコニウムの大部分は、二酸化チタンの結晶格子中に存在するが、その全量が結晶格子中に存在する必要はなく、本発明の効果が損なわれない程度でその一部が、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO4)や含水酸化ジルコニウムとして存在していても何ら差し支えない。
【0017】
焼成温度は、400〜1000℃の範囲、好ましくは600〜950℃、最も好ましくは800〜950℃の範囲が適当である。即ち、焼成温度がこの範囲よりも低くなると、吸着水分量が多くなって、例えば、樹脂に混合する際に分散が難しくなるなど好ましくない影響を与える。一方、高くなると、二酸化チタン粒子同士が固着したり、あるいは焼結したりして0.1μmよりも大きい粗大粒子が生成するので好ましくない。
【0018】
本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は、水分散性に優れたものではあるが、塗料中での分散性や分散安定性については分散媒樹脂や溶剤との馴染みが問題となり、樹脂や溶剤の種類によっては分散安定性に問題が生じる場合がある。このような場合には公知の方法で、粒子表面をケイ素やアルミニウムの含水酸化物などで被覆処理して馴染みを改善することが好ましい。本発明のジルコニウム固溶二酸化チタン微粉末は水分散性に優れているので、このような被覆処理が特に有効に活用される。被覆材の種類は特に限定するものではなく、使用される樹脂や溶剤の種類に応じて公知の物質により処理することができる。たとえば、前述のケイ素および/又はアルミニウムの酸化物による処理をしてもよいし、スズの含水酸化物および/又はジルコニウムの含水酸化物を最内層に被覆し、次にケイ素の含水酸化物を中間層に被覆し、最後にアルミニウムの含水酸化物で被覆してもよい。その他、チタニウム、セリウムまたは亜鉛等の含水酸化物で被覆することもできる。さらに、公知の有機被覆材、たとえばステアリン酸アルミニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルカノールアミンのような界面活性剤、多価アルコール、オルガノシロキサン化合物、シラン系、チタネート系およびアルミニウム系のカップリング剤なども使用できる。一般的には、ケイ素および/又はアルミニウムの酸化物による処理が好適に行われる。
【0019】
この被覆処理は公知の方法で行うことができる。例えば、ケイ素および/又はアルミニウムの酸化物により処理をする場合には、前記の焼成工程で得られたジルコニウム固溶二酸化チタンを、TiO2として100〜400g/l、望ましくは200〜300g/lの濃度となるよう水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩やアルミニウム化合物を添加後、アルカリや酸を添加して中和することでなされる。即ち、水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸を上記水性スラリーに添加して、該スラリーのpHを7に調整する。また、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを使用した場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを添加してジルコニウム固溶二酸化チタンを分散させた水性スラリーのpHを7に調整する。
【0020】
ケイ素やアルミニウムの含水酸化物の処理量は、SiO2及びAl2O3に換算してTiO2に対してそれぞれ1〜20重量%が適当である。処理量がこれより少ないと充分な分散性改善効果が得られず、また、この量が多すぎると紫外線遮蔽効果が低下するので好ましくない。
【0021】
また、有機被覆材による処理方法も公知であり、必要に応じ適当な方法により処理することができる。
【0022】
尚、天然産のルチル型酸化チタンやイルメナイト等の鉱石をTiO2源として合成したチタニアゾルは、ニオブ、タンタル、鉄等を始めとする鉱石に由来する各種の不純物を含んでいるが、顔料用途で許容されている程度の量を不純物として含有していても何ら問題はない。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例は単に例示の為に記すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。実施例1
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1100μS/cmになるまで純水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、該スラリーのpHを9に調整し、1時間撹拌を続けた。その後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを7に調整した後、上澄み液の電気伝導度が250μS/cmになるまで純水を用いて洗浄した。
【0024】
この後、該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.5に調整して、TiO2として120g/lのアナタース型の結晶構造を有するチタニアゾル1リットルを得た。ZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を24ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.01〜0.05μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0025】
この微粉末をX線回折により調べたところ、アナタース型二酸化チタンと同様な回折パターンを示したものの、回折線の位置はアナタース型二酸化チタンのそれよりも低角度側にシフトしていた。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.530Åであった。
【0026】
比較例 1
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルに水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成したところ、0.04〜0.18μmの粒子径を持つ微粉末が得られた。
【0027】
この微粉末をX線回折により調べたところアナタース型二酸化チタンの単一相であることが分かった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準として(101)格子面間隔dを求めたところ3.520Åであった。この値は、前述した、実施例1の微粉末のそれよりも小さい値である。このことから、実施例1の微粉末は、アナタース型二酸化チタン結晶格子のTi4+の位置にZr4+が置換固溶した結晶であることが分かる。
【0028】
比較例 2
比較例1において、焼成条件を750℃で1時間とした他はすべて同じ条件で処理したところ、0.01〜0.05μmの粒子径を持つアナタース型二酸化チタンの微粉末が得られた。
【0029】
実施例 2
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルにZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を50ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を800℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0030】
この微粉末をX線回折により調べたところアナタース型二酸化チタンと同様な回折パターンを示し、回折線の位置は実施例1のそれよりも更に低角度側にシフトしていた。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.536Åであり、アナタース型二酸化チタン結晶格子中へのジルコニウムの固溶量は実施例1のそれよりも多かった。
【0031】
実施例 3
実施例2で得られた乾燥物を700℃で焼成して0.01〜0.05μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0032】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンの単一相であることが分かった。
【0033】
実施例 4
実施例1で使用したチタニアゾル1リットルにZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を65ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が50μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を910℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0034】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンと少量のチタン酸ジルコニウムとの2相混合物であることが分かった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.537Åであった。
【0035】
実施例 5
硫酸チタニル水溶液を加水分解して得た含水酸化チタンを上澄み液の電気伝導度が1100μS/cmになるまで純水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、該スラリーのpHを9に調整後、1時間撹拌を続けた。その後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを7に調整した後、上澄み液の電気伝導度が150μS/cmになるまで純水を用いて洗浄した。
【0036】
この後、該スラリーに塩酸を添加してスラリーのpHを1.0に調整して、TiO2として110g/lのチタニアゾル1リットルとし、この後更に、15時間撹拌続けた。ZrO2として200g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を35ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0037】
この微粉末をX線回折により調べたところジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンとジルコニウムが固溶したルチル型二酸化チタンとの2相混合物であり、主回折線の強度比から求めた2相の量的割合は、ジルコニウムが固溶したアナタース型二酸化チタンが約90重量%、ジルコニウムが固溶したルチル型二酸化チタンが約10重量%であった。
【0038】
高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.530Åであり、ルチル型二酸化チタンの(110)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.259Åであった。
【0039】
比較例 3
実施例5で使用したアナタース型の結晶構造を有するチタニアゾルを、実施例5と同様に15時間撹拌を続けた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを7に調整した。上澄み液の電気伝導度が60μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を900℃で1時間焼成して0.05〜0.25μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0040】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンとアナタース型二酸化チタンの2相混合物であり、主回折線の強度比から求めた2相の量的割合は、ルチル型二酸化チタンが約85重量%、アナタース型二酸化チタンが約15重量%であった。
【0041】
高純度ケイ素粉末(99.9%)内部標準としてアナタース型二酸化チタンの(101)格子面間隔dを求めたところ、3.521Åであり、ルチル型二酸化チタンの(110)格子面間隔dを求めたところ、3.249Åであった。実施例5および比較例3の結果より、二酸化チタンの結晶格子にジルコニウムが固溶することでアナタースからルチルへの転移が阻害されることが分かる。
【0042】
実施例 6
TiO2として150g/lのルチル型の結晶構造を有するチタニアゾル1リットルに、ZrO2として250g/lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を45ml添加後、1時間撹拌した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを6に調整した。上澄み液の電気伝導度が40μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を850℃で1時間焼成して0.01〜0.04μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0043】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンと同様な回折パターンを示した。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準としてルチル型二酸化チタンの(110)面に対応する格子面間隔dを求めたところ、3.261Åであった。
【0044】
比較例 4
実施例6で使用したチタニアゾル1リットルに、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、スラリーのpHを6に調整した。上澄み液の電気伝導度が40μS/cmになるまで純水で洗浄した後、濾過、乾燥した。この乾燥物を850℃で1時間焼成して0.04〜0.15μmの粒子径を持つ微粉末を得た。
【0045】
この微粉末をX線回折により調べたところ、ルチル型二酸化チタンの単一相であった。高純度ケイ素粉末(99.9%)を内部標準として(110)格子面間隔dを求めたところ、3.250Åであった。
【0046】
実施例 7
実施例1で得られた微粉末300gを200g/lの水性スラリーとし、Al2O3として210g/lのアルミン酸ナトリウム水溶液135mlを添加した後、塩酸を滴下して、該スラリーのpHを6.5に調整した。濾過、乾燥して110℃で乾燥した。
【0047】
実施例 8
実施例1で得られた微粉末500gを150g/lの水性スラリーとし、SiO2として85g/lケイ酸ナトリウム水溶液300mlを添加した後、更にAl2O3として107g/lの硫酸アルミニウム水溶液を249mlを添加した。該スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを7.5に調整した。濾過、洗浄して110℃で乾燥した。
【0048】
実施例1〜8および比較例1〜3で得られた微粉末を太陽光に8時間暴露したところ、比較例の微粉末の色調はいずれも青黒く変色したのに対し、実施例の微粉末のそれは特に変色しなかった。
【0049】
また、実施例1〜6および比較例1〜4の微粉末を0.01重量%濃度になるように水中に分散し、10mm厚の石英セルに入れ、可視光線(550nm)及び紫外線(320nm)の透過率を、日本分光製分光光度計Ubest−50型で測定した結果を第1表に示す。この表より、本発明の微粉末の分散液は、高い可視光線透過率を有していることが分かる。また、実施例1〜6および比較例2の分散液を3日間放置した後の上記特性を測定したところ、比較例2の微粉末の分散液については可視光線および紫外線透過率ともに大きくなったのに対し、実施例の微粉末のそれは特に変化せず、本発明の微粉末は水中での分散安定性に優れていた。
【0050】
実施例7および8の微粉末をニトロセルロース溶液に配合してニトロセルロース塗料を作製する際の塗料を5分毎にグラインドゲージで調べたところ、10μm以下になるまでの分散時間はいずれも15〜20分であり、分散性に優れているものであった。
【0051】
【表1】
Claims (6)
- 0.01〜0.1μmの範囲内の大きさであり、かつ結晶構造中にジルコニウムが固溶したことを特徴とする二酸化チタン微粉末。
- 粒子表面に被覆層を有することを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン微粉末。
- 被覆層が、ケイ素の含水酸化物およびアルミニウムの含水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の含水酸化物であることを特徴とする請求項2記載の二酸化チタン微粉末。
- 結晶形がアナタース型である、請求項1から3のいずれか1項記載の二酸化チタン微粉末。
- チタニアゾルに水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを添加して中和し、濾過水洗した後400〜1000℃で焼成することを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン微粉末の製造方法。
- チタニアゾルに水溶性のジルコニウム化合物を添加後、アルカリを添加して中和し、濾過水洗した後400〜1000℃で焼成し、この後該焼成物を水中に分散して水性スラリーとし、このスラリーに水溶性の、ケイ素化合物およびアルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を添加後中和することを特徴とする請求項3記載の二酸化チタン微粉末の製造方法。
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