JP3547496B2 - 刺繍ミシン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は刺繍ミシンに関し、特にステッチデータに従って刺繍を行うとともに、キルティング縫いを可能にするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な刺繍ミシンでは、往復動する針棒を備えたヘッドの下方において、刺繍枠に保持された被刺繍物がXY平面上で水平方向に移動するように構成されている。その刺繍枠の移動を制御するために、XY平面内の相対移動量を個々に数値化したステッチデータが用いられる。なお、ステッチデータを集合させ、柄の全体を刺繍するためのデータがステッチデータ群(他に、「柄データ」とも呼ぶ。)である。
ところで、刺繍ミシンで刺繍を行う際には、縫い針の往復動に同期させて刺繍枠を送る制御を行なっている。すなわち、針棒下端の縫い針が被刺繍物の面上に位置する間は刺繍枠を移動させ、縫い針が被刺繍物に刺さっている間は刺繍枠を一時的に停止させる。このように、刺繍ミシンでは被刺繍物を間欠的に送る制御(以下、「間欠送り制御」と呼ぶ。)が行われている。
【0003】
上記のステッチデータに従って刺繍枠の移動を制御する刺繍ミシンについて、図15乃至図17を参照しつつ説明する。
まず、パルスモータに出力するパルスの総数Pnと刺繍枠の基本移動量D(例えば、1mm)との関係について、図15を参照しつつ説明する。図において、基本移動量Dに基づいてパルスモータにパルスを出力する。この場合、制御線fp に従って、始めには刺繍枠を加速させるためにパルスを次第に増やしながら出力し、中間点付近では時間的にほぼ一定数のパルスを出力し、終わりには刺繍枠を減速させるためにパルスを次第に減らしながら出力する。
【0004】
こうして、パルスモータにパルスを総数Pnだけ出力すると、刺繍枠は基本移動量Dを移動する。このとき、実際に出力されるパルスの総数Pnはステッチデータで指定された相対移動量に従って増減し、刺繍枠を基本移動量Dだけ移動させるだけでも数十から数百になる。以下、説明を簡単にするために、本明細書では、パルスモータに1パルス出力すると、刺繍枠は基本移動量Dだけ移動するものとする。なお、上記の制御線fp に従って刺繍枠を移動させる制御は、横軸をサーボモータに出力する駆動電圧の総和とすれば、サーボモータでも実現することができる。
【0005】
次に、パルスモータを用いて刺繍枠を移動させる場合について、図16を参照しつつ説明する。図16(A)において、ある位置P100から次の位置P102へ送り、その後次の位置P102から次々の位置P104へ刺繍枠を送る場合には、図16(B)に示すようなパルスを出力する。すなわち、刺繍枠をX軸方向に移動させるX軸パルスモータとY軸方向に移動させるY軸パルスモータのそれぞれに、単位周期をΔTとするパルスを移動距離に対応する個数分だけ送る。
【0006】
すなわち、位置P100から位置P102の間では、X軸パルスモータに4パルス送り、Y軸パルスモータに6パルス送っている。同様に、位置P102から位置P104の間では、X軸パルスモータに6パルス送り、Y軸パルスモータに4パルス送っている。
また、X軸とY軸のパルスモータに出力するパルスは、ともに図示する期間ΔT1の間に送られ、期間ΔT2の間には送られない。ここで、期間ΔT1は針棒が被刺繍物の上方にあって、針棒と被刺繍物の相対移動が可能な期間であり、これを「基本周期」という。また、期間ΔT2は針棒が被刺繍物に刺さっており、針棒と被刺繍物の相対移動が不適当な期間である。
【0007】
ここで、位置P100から位置P102へ送る際には、時刻t100から時刻t102まではXY同軸で送り(この結果、45度方向に移動する)、時刻t102から時刻t104まではY軸方向にのみ送る。その後、時刻t104から時刻t106までは刺繍枠の移動を停止する。同様に、位置P102から位置P104へ送る際には、時刻t106から時刻t108まではXY同軸で送り(この結果、45度方向に移動する)、時刻t108から時刻t110までX軸方向にのみ送る。その後、時刻t110から時刻t112までは刺繍枠の移動を停止する。したがって、実際の刺繍枠は、図16(A)に破線で示すような軌跡でヘッドと相対的に送られる。この時刻t104から時刻t106までと、時刻t110から時刻t112までの間に縫い針が被刺繍物に刺さる。なお、実際の縫い目は、実線で示すものとなる。
【0008】
さらに、サーボモータを用いて刺繍枠を移動させる場合について、図17を参照しつつ説明する。なお、図16と同一の要素や時刻には同一の番号を付し、説明を省略する。また、図16(A)に示す場合と同様に、刺繍枠はある位置P100から次の位置P102へ送り、その後次の位置P102から次々の位置P104へ送るものとする。
この場合、図17(B)に示すような加減速を伴う速度パターンfxa,fyaに従って、X軸サーボモータとY軸サーボモータのそれぞれに駆動電圧を出力する。この駆動電圧が大きくなるにつれてサーボモータの回転数が高くなり、結果として刺繍枠の移動速度も比例して大きくなる。
【0009】
具体的に、位置P100から位置P102へ送る際には、時刻t100でXY同軸で加速し始め、まずX軸サーボモータが時刻t101で減速を終了し、その後にY軸サーボモータが時刻t103で減速を終了する。同様に、位置P102から位置P104へ送る際には、時刻t106でXY同軸で加速し始め、まずY軸サーボモータが時刻t107で減速を終了し、その後にX軸サーボモータが時刻t109で減速を終了する。
上記のサーボモータの制御は最も簡単な制御法であり、実際の刺繍枠は図17(A)に破線で示すような軌跡でヘッドと相対的に送られることになる。しかし、パルスモータの場合と同様に、縫い針が被刺繍物に刺さるのは刺繍枠が停止しているときであるため、実際の縫い目は実線で示すものとなる。
【0010】
ところで、キルティング縫いを専門に行うキルティングマシンでは、ステッチデータは通常2mm〜5mmの一定ピッチで走り縫い(直線縫い)を行うデータで構成され、合わせ縫いを行うようになっている。このピッチ幅は、刺繍と異なり必ずしも一定である必要がない。したがって、縫い針の往復動に同期させて被刺繍物を送る必要はないので、縫い針の往復動とは無関係に被刺繍物を連続的に送る制御(以下、「連続送り制御」と呼ぶ。)が行われている。この際、縫い針が被刺繍物に刺さってから抜けるまでの間も被刺繍物は送られるが、この縫い針が被刺繍物に刺さってから抜けるまでの時間はごく僅かである。このため、針板の針孔を若干大径にすることで針折れ等の支障がなくキルティング縫いを行うことができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
間欠送り制御を前提とする刺繍ミシンを用いてキルティング縫いを行う際に、縫い加工の高速化のために通常のキルティングマシンが採用している連続送り制御を行うと次のような不都合が生ずる。
例えば、パルスモータを用いて図16(C)に示す位置P106,P108,P110を通り、破線に示すような縫い目を形成する場合、刺繍枠の実際の移動軌跡が二点鎖線のものであっても、破線の縫い目が形成される。しかるに連続送り制御を行うと、縫い針の往復動のタイミングによって刺繍枠の移動軌跡のどこで縫い針が被刺繍物を刺すかが不確定である。例えば、図中の×印に示す位置で縫い針が被刺繍物を刺すと、実線に示すような縫い目ができる。このため、希望する縫い目(図中の破線に示す)に対してギザギザな縫い目になるという問題があった。このことは、サーボモータを用いてキルティング縫いを行なっても、図17(C)に示すようにパルスモータの場合と同様の結果になる。
【0012】
ところで、図18に示すように、[x,y]=[4,3]の方向に刺繍枠を移動させると、ちょうど位置P120,P122,P124の位置で針棒が被刺繍物を刺すため、刺繍枠を針棒の往復動のタイミングと同期させる必要がない場合もある。しかし、例えば[x,y]=[8,3]の方向に刺繍枠を移動させた場合、希望する縫い目(図中の二点鎖線)に対しては、やはりギザギザな縫い目になってしまう。このように、針棒の往復動と同期するような一定の方向に刺繍枠を移動させる場合には問題がなくても、他の方向に刺繍枠を移動させた場合には綺麗な縫い目ができなくなり、その仕上がりの見た目も悪い。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、刺繍ミシンでキルティング縫いを行なった場合でも、希望する縫い目が確実にできるように、しかも綺麗に仕上がるようにすることである。また、他の課題は、連続送り制御を行うことにより、全体の刺繍時間を短縮することである。
【0014】
【課題を解決するための第1の手段】
請求項1に記載された発明は、図1に模式的に示すように、被刺繍物62を張っておく刺繍枠60と、往復動する針棒42を有するヘッド40と、刺繍枠60とヘッド40を相対的にX軸方向に移動させるX軸モータ50と、刺繍枠60とヘッド40を相対的にY軸方向に移動させるY軸モータ30と、X軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)を対にし、その複数の対が順に並んでいるステッチデータ群を記憶しておく記憶手段10を備えた刺繍ミシンにおいて、
刺繍を行う同期モードと、キルティング縫いを行う非同期モードとの間で切り換えるモード切換手段22と、同期モードが選択されている間、前記針棒42が前記被刺繍物62を抜けてから次に刺さるまでの期間内に、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータ50に出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータ30に出力し、前記針棒42が前記被刺繍物62に刺さってから抜けるまでの期間内は、X軸モータ50とY軸モータ30を停止させておく駆動信号を出力し、非同期モードが選択されている間、同一期間内におけるX軸方向とY軸方向の速度比がX軸方向の相対移動量(ΔX)とY軸方向の相対移動量(ΔY)の比と等しくなるように、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータ50に出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータ30に出力し、かつ、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)のための駆動信号を出力する期間と次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)のための駆動信号を出力する期間の間に、X軸モータ50とY軸モータ30を停止させる駆動信号を出力しないように構成した駆動信号出力手段24とが付加されている。
【0015】
ここで、「駆動信号」という場合には、パルスモータに出力するパルス列だけでなく、サーボモータに出力する駆動電圧を含むものとする。さらに、「被刺繍物」という場合には、刺繍を行う対象物に限らず、キルティング縫いを行う対象物をも含むものとする。
【0016】
【第1の手段による作用】
請求項1の発明によれば、モード切換手段22で切り換えられるモードに従って、同期モードでは針棒42が被刺繍物62に刺さっていない間は刺繍枠60を一つの対のステッチデータ(ΔX,ΔY)で指定された相対移動量だけ移動させ、針棒42が被刺繍物62に刺さっている間は刺繍枠60を移動させない。一方、非同期モードでは同一期間内に刺繍枠60をX軸とY軸の同軸で移動させるとともに、各々の対のステッチデータに従って連続的に刺繍枠60を移動させる。
このため、同期モードでは刺繍枠60が針棒42の往復動のタイミングに合わせて送られるので、刺繍が行われる。また、非同期モードでは刺繍枠60が針棒42の往復動と別のタイミングで送られるので、キルティング縫いが行われる。したがって、刺繍ミシンで刺繍を行うとともに、キルティング縫いを行うことができるようになる。
また駆動信号出力手段24は、X軸方向とY軸方向の速度比をX軸方向の相対移動量(ΔX)とY軸方向の相対移動量(ΔY)の比と等しくする。このため、X軸方向とY軸方向のいずれの方向も速度が零にならない。したがって、刺繍枠60はX軸方向のみやY軸方向のみに移動することがなく、直線的にスムーズに移動する。
【0017】
【課題を解決するための第2の手段】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、駆動信号出力手段24は、X軸方向の相対移動量(ΔX)に反比例するパルス間隔でX軸モータ50にパルスを出力するとともに、Y軸方向の相対移動量(ΔY)に反比例するパルス間隔でY軸モータ30にパルスを出力する。
【0018】
【第2の手段による作用】
請求項2の発明によれば、駆動信号出力手段24は、X軸方向とY軸方向のそれぞれの相対移動量(ΔX,ΔY)に反比例するパルス間隔でX軸モータ50とY軸モータ30にパルスを出力する。このため、パルスによって移動制御を行なった場合でも、刺繍枠60を直線的にスムーズに移動させることが可能になる。
【0019】
【課題を解決するための第3の手段】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載された発明において、駆動信号出力手段24は、X軸モータ50に出力するパルス数の二乗とY軸モータ30に出力するパルス数の二乗の和が、単位時間当たり一定になるようにパルスを出力する。
【0020】
【第3の手段による作用】
請求項3の発明によれば、駆動信号出力手段24は、X軸方向とY軸方向のベクトル和の方向に対してパルス数が一定になるように、X軸モータ50とY軸モータ30のそれぞれにパルスを出力する。このため、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に基づいて移動する速度と、次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に基づいて移動する速度が等しくなる。したがって、刺繍枠60は縫製の開始から終了まで等速度で移動する。
【0021】
【課題を解決するための第4の手段】
請求項4に記載された発明は、被刺繍物62を張っておく刺繍枠60と、往復動する針棒42を有するヘッド40と、刺繍枠60とヘッド40を相対的にX軸方向に移動させるX軸モータ50と、刺繍枠60とヘッド40を相対的にY軸方向に移動させるY軸モータ30と、X軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)を対にし、その複数の対が順に並んでいるステッチデータ群を記憶しておく記憶手段10を備えた刺繍ミシンにおいて、
刺繍を行う同期モードと、キルティング縫いを行う非同期モードとの間で切り換えるモード切換手段22と、同期モードが選択されている間、前記針棒42が前記被刺繍物62を抜けてから次に刺さるまでの期間内に、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータ50に出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータ30に出力し、前記針棒42が前記被刺繍物62に刺さってから抜けるまでの期間内は、X軸モータ50とY軸モータ30を停止させておく駆動信号を出力し、非同期モードが選択されている間、同一期間内におけるX軸方向とY軸方向の速度比がX軸方向の相対移動量(ΔX)とY軸方向の相対移動量(ΔY)の比と等しくなるように、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータ50に出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータ30に出力し、かつ、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)のための駆動信号を出力する期間と次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)のための駆動信号を出力する期間の間に、X軸モータ50とY軸モータ30を停止させる駆動信号を出力せず、所定の条件を満たさない場合には、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に基づく駆動信号を出力した後に少なくとも針棒42の往復動に要する期間以上は停止させておくためのX軸とY軸の駆動信号をそれぞれX軸モータ50とY軸モータ30に出力し、その後に次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に基づく駆動信号を出力するように構成した駆動信号出力手段24とが付加されている。
【0022】
【第4の手段による作用】
請求項4の発明によれば、刺繍ミシンで刺繍を行うとともに、キルティング縫いを行うことができるようになる点については、請求項1の発明と同様である。
さらに、モード切換手段22によって非同期モードが選択されている場合に所定の条件を満たさなければ、駆動信号出力手段24は、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に基づく駆動信号を出力した後に、同期モードのように刺繍枠60を一時的に停止させる。そして、その後に次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に基づく駆動信号を出力する。このため、所定の条件を満たす場合には刺繍枠60が連続的に送られ、所定の条件を満たさない場合には刺繍枠60が間欠的に送られる。したがって、所定の条件を満たさなければ針棒42の往復動とのタイミングがとられるので、針棒42を落とす位置を正確に制御することが可能になる。
【0023】
【課題を解決するための第5の手段】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、所定の条件は、次の対のステッチデータの相対移動量の傾き(ΔY2/ΔX2)が一つの対のステッチデータの相対移動量の傾き(ΔY1/ΔX1)から所定の範囲以内であること、および/または、所定の移動条件が設定されたことであるようにする。
【0024】
【第5の手段による作用】
請求項5の発明によれば、相対移動量の傾きの変化(ΔY2/ΔX2−ΔY1/ΔX1)が所定の範囲以内である場合には刺繍枠60が停止することなく連続的に送られ、相対移動量の傾きの変化が所定の範囲を超える場合には刺繍枠60が間欠的(一つの対のステッチデータと次の対のステッチデータの間で、少なくとも針棒42が被刺繍物62に刺さってから抜けるまでの往復動に要する期間は停止される)に送られる。
また、所定の移動条件が設定された場合には刺繍枠60が停止することなく連続的に送られ、所定の移動条件が設定されていない場合には刺繍枠60が間欠的に送られる。
このため、折れ線状になる位置に達した場合や、オペレータによって所定の移動条件が設定された場合には、必ず針棒42が被刺繍物62に刺さるので、柄の模様がくずれてしまうことがない。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。まず、第1の実施例について説明する。
図2は、刺繍ミシンの構成を示すブロック図であって、本発明を実施するために必要な最小限の構成を示す。なお、この刺繍ミシンでは、X軸モータ50としてX軸パルスモータ142を、Y軸モータ30としてY軸パルスモータ132をそれぞれ適用する。
図において、ミシン制御装置100は、CPU110、ROM102、RAM104、表示制御回路106、表示装置108、入力処理回路112、出力処理回路116およびバス114によって構成されている。
【0028】
CPU110は、ROM102に格納されたミシン制御プログラムに従ってミシン制御装置100の全体を制御する。ROM102には、EEPROMが使用される。このROM102には、上記ミシン制御プログラムの他に、後述する処理手順を制御するプログラム等が格納されている。なお、このROM102はEEPROMに限らず、PROMやEPROMおよびフラッシュRAM等の不揮発性メモリを使用してもよい。
RAM104は記憶手段10を具体化したものであって、アクセス速度やコストの面からDRAMが使用される。このRAM104には、X軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)を対にし、その複数の対が順に並んでいるステッチデータ群、設定モード、タイムコンスタント、被刺繍物を送る際の送り速度等のような各種のデータあるいは入出力信号が格納される。なお、RAM104はDRAMに限らず、SRAMやフラッシュRAM等の揮発性メモリを使用してもよい。
【0029】
表示制御回路106は、CPU110からバス114を介して送られた表示制御データに従って、表示装置108の表示制御を行う回路である。すなわち、表示制御データに含まれるステッチデータ群(他に、「柄データ」とも呼ぶ。以下、本明細書において同じ。)に従って線分図形を順次描いてその柄を表示したり、現在の縫製状態などを表示したりする。この表示装置108には、筐体の大きさをコンパクトにし、消費電力を低く抑えるため、モノクロの液晶表示装置を使用するのが最適である。なお、この表示装置108にはモノクロの液晶表示装置に限らず、カラーの液晶表示装置やCRT、プラズマ表示装置およびLED表示装置(LEDを矩形領域に格子状に配置した表示装置)等のように、柄が表示可能な他の表示装置を使用してもよい。
【0030】
入力処理回路112には、KEY(キーボード)120、ポインティングデバイス(pointing device )122、外部記憶装置124、X軸用エンコーダ144およびY軸用エンコーダ134が接続されている。この入力処理回路112は、これらの装置等から送られたそれぞれのデータ信号を受けて、ミシン制御装置100内で処理可能なデータ形式に変換し、バス114を介してCPU110又はRAM104へ転送する。ここで、X軸用エンコーダ144とY軸用エンコーダ134は、刺繍枠60が所定の間隔(例えば、0.1mm )ごとに移動すると、それぞれの軸方向成分について1個のパルスを発生する装置である。
【0031】
なお、ポインティングデバイス122にはマウスを使用するのが最適であるが、トラックボール(track ball)、ライトペン、デジタイザ、タッチセンススクリーン(touch-sensitive screen)等を使用してもよい。これらのうち、トラックボールやライトペン、およびタッチセンススクリーンを適用すれば、カーソルを移動させるための場所をとらないため、省スペース化を図ることができる。
また、外部記憶装置124にはフレキシブルディスク装置(FDD,FlexibleDisk Device)を使用するのが最適であるが、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、紙テープリーダ/パンチ装置等のように、大容量の記憶装置を使用してもよい。特に、ハードディスク装置を適用した場合にはアクセス速度が向上し、光磁気ディスク装置を適用した場合には膨大なデータ量を記憶させることができる。
【0032】
出力処理回路116は、CPU110からバス114を介して送られた駆動データを駆動装置130へ転送するためのインタフェースである。この駆動装置130は、上記の駆動データに従って主軸モータ128、X軸パルスモータ142およびY軸パルスモータ132を駆動させる。
ここで、主軸モータ128は駆動装置130から出力された制御電圧に従ってミシン本体140の主軸126を回転駆動させるサーボモータである。この主軸126の回転駆動により縫い針が往復動し、刺繍枠60に保持されている被刺繍物62を縫製する。また、X軸パルスモータ142は駆動装置130から出力されたパルス数に従って刺繍枠60をX軸方向に移動させ、Y軸パルスモータ132は駆動装置130から出力されたパルス数に従って刺繍枠60をY軸方向に移動させる。さらに、ミシン本体140にはヘッド40が形成されており、このヘッド40には主軸126に同期して往復動する針棒42が設けられている。
なお、上記各構成要素は、いずれもバス114に互いに結合されている。
【0033】
次に、本発明を実行するための処理手順について、図3乃至図9を参照しつつ説明する。図3〜図5,図7,図9は本発明を実施するための処理手順を示すフローチャートであって、図1に示す枠移動手段20を具体化した処理である。これらのフローチャートは、いずれも図2に示すROM102に格納された処理プログラムをCPU110が実行することによって実現される。
なお、図4に示すステップS22と図5に示すステップS42はモード切換手段22を具体化した処理ステップであり、図5に示すステップS38乃至ステップS46は駆動信号出力手段24を具体化した処理ステップである。
【0034】
図3において、まず、刺繍ミシンの動作を開始させるために必要な初期化処理を行う(ステップS10)。この初期化処理の具体的な内容としては、例えば、刺繍枠60を原点に戻したり、RAM104の作業領域をクリアしたり、入力処理回路112や出力処理回路116に接続されている外部機器の有無をチェックしたりする。
そして、刺繍ミシンの停止処理を行う(ステップS12)。この停止処理の具体的な処理内容について、図4を参照しつつ説明する。
【0035】
図4において、まず安全のために、出力処理回路116に停止を指示する駆動データを送り、駆動装置130を介して主軸モータ128を停止させる(ステップS20)。このステップの実行によって、針棒42は確実に停止する。
その後、モード設定を行うとともに、ステッチデータ群の入力を行う(ステップS22)。このモード設定は、例えばKEY120などを用いて「同期モード」あるいは「非同期モード」のいずれかに設定する。この設定によって、縫製を行うモードがRAM104に記憶される。
ここで、同期モードは、針棒42の往復動のタイミングに合わせて刺繍枠60を移動させ、刺繍を行うモードである。また、非同期モードは、針棒42の往復動と刺繍枠60の移動を独立させ、キルティング縫いを行うモードである。
【0036】
また、ステッチデータ群の入力方法としては三通りあり、以下に具体的な入力方法を示す。なお、上記の「ステッチデータ群の入力」は、縫製を行う柄の全体についてデータを入力することである。
まず、第1の方法は、フレキシブルディスク装置(外部記憶装置124)からフレキシブルディスク内に記憶されている複数のステッチデータ群の一覧を表示装置108に表示し、この中から縫製を行うステッチデータ群を選択する方法である。選択されたステッチデータ群はフレキシブルディスク装置からRAM104の所定の作業領域に転送される。
【0037】
また、第2の方法は、ROM102にあらかじめ記憶されている複数のステッチデータ群の一覧を表示装置108に表示し、この中から縫製を行うステッチデータ群を選択する方法である。選択されたステッチデータ群はROM102からRAM104の所定の作業領域に転送される。これらの第1の方法と第2の方法では、KEY120やポインティングデバイス122を用いて縫製を行うステッチデータ群の選択を行う。
さらに、第3の方法は、直接KEY120やマウス(ポインティングデバイス122)を用いてステッチデータ群を入力し、設定する方法である。入力されたステッチデータ群は、RAM104の所定の作業領域に設定される。
【0038】
次に、KEY120に設けられた枠移動指令ボタンが押された場合には、対応するスタート位置合わせを行う(ステップS24)。この枠移動指令ボタンは、縫製を開始する前に刺繍枠60を移動させるためのボタンである。ステップS24の実行により、オペレータは刺繍枠60を希望する位置に移動させることができる。
その後、縫製の始まりか否か、具体的にはKEY120に設けられた始動指令ボタンが押されたか否かを判別する(ステップS26)。もし、始動指令ボタンが押されていない(NO)ならばステップS22に戻り、ステッチデータ群の入力とスタート位置合わせを再び行う。一方、始動指令ボタンが押された(YES)ならば、縫製を行うため、本処理手順を終了する。
【0039】
図3に戻り、ステップS12で設定又は選択されたステッチデータ群に従って、刺繍処理を行う(ステップS14)。この刺繍処理の具体的な処理内容について、図5を参照しつつ説明する。
【0040】
図5において、まず、縫製を開始するために必要な初期化処理を行う(ステップS30)。初期化処理の具体的な内容としては、例えば、刺繍枠60を原点に戻したり、後述するステップS36において取得するステッチデータを指すポインタをステッチデータ群の先頭に設定したりする。
次に、主軸モータ128に所定の制御電圧を出力し、低速回転{例えば、300[rpm]}で始動させた後(ステップS32)、データエンド(具体的には、ポインタが最後のステッチデータを超えた位置を指している)か否かを判別する(ステップS34)。なお、第1回目はポインタがステッチデータ群の先頭のステッチデータを指すためにデータエンドではなく(NO)、ステップS36に進む。
【0041】
そして、ポインタが指すステッチデータを取得し(ステップS36)、このステッチデータで指定されたX軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)に基づいて、タイムコンスタントTx ,Ty を求める(ステップS38)。
具体的には、図1に示すように、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に従って刺繍枠60を移動させる場合のX軸方向タイムコンスタントTx1とY軸方向タイムコンスタントTy1、および、次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に従って刺繍枠60を移動させる場合のX軸方向タイムコンスタントTx2とY軸方向タイムコンスタントTy2を求める。
ここで、上記のタイムコンスタントとは、図2に示すX軸パルスモータ142とY軸パルスモータ132に出力するパルスの一周期の長さである。このタイムコンスタントの値が小さいほど刺繍枠60の送り速度は速くなり、逆に値が大きいほど刺繍枠60の送り速度は遅くなる。
【0042】
まず、ステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に従って刺繍枠60を移動させる場合のX軸方向タイムコンスタントTx1とY軸方向タイムコンスタントTy1は、次の各式によって求められる。ここで、X軸方向送り速度をVx1とし、Y軸方向送り速度をVy1とする。また、あらかじめ設定された刺繍枠60の送り速度をVとする。
Vx1=V・[ΔX1/{(ΔX1)2 +(ΔY1)2 }1/2 ]
Tx1=1/Vx1
Vy1=V・[ΔY1/{(ΔX1)2 +(ΔY1)2 }1/2 ]
Ty1=1/Vy1
【0043】
また、ステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に従って刺繍枠60を移動させる場合のX軸方向タイムコンスタントTx2とY軸方向タイムコンスタントTy2は、次の各式によって求められる。ここで、X軸方向送り速度をVx2とし、Y軸方向送り速度をVy2とする。
Vx2=V・[ΔX2/{(ΔX2)2 +(ΔY2)2 }1/2 ]
Tx2=1/Vx2
Vy2=V・[ΔY2/{(ΔX2)2 +(ΔY2)2 }1/2 ]
Ty2=1/Vy2
【0044】
次に、傾き演算処理を行う(ステップS40)。具体的には、上記の例に従って、一つの対のステッチデータの相対移動量が(ΔX1,ΔY1)であり、次の対のステッチデータの相対移動量が(ΔX2,ΔY2)である場合には、一つの対のステッチデータの傾き(ΔY1/ΔX1)および次の対のステッチデータの傾き(ΔY2/ΔX2)を求める。
こうして求められた傾きによって、ステップS42では、次の対のステッチデータの傾き(ΔY2/ΔX2)が一つの対のステッチデータの傾き(ΔY1/ΔX1)から所定の範囲以内である場合には連続刺繍処理を行うステップS44に進み、それ以外は間欠刺繍処理を行うステップS46に進む。すなわち、(ΔY2/ΔX2−ΔY1/ΔX1)を演算し、その演算結果が所定の範囲以内か否かで後の処理が異なる。
なお、上記の判定は非同期モードが設定された場合について行われ、同期モードが設定された場合には強制的に間欠刺繍処理を行うステップS46に進む。
【0045】
上記の制御によって、同期モードが設定された場合には間欠刺繍処理により縫製が行われる。また、非同期モードが設定された場合には、通常は連続刺繍処理によりキルティング縫いが行われ、ステップS42の判定結果が「NO」であるときに間欠刺繍処理によりキルティング縫いが行われる。
例えば、図6(A)に示すように、ある位置P10から相対移動量(ΔX10,ΔY10)を隔てて位置P12があり、この位置P12から相対移動量(ΔX12,ΔY12)を隔てて位置P14がある場合を仮定する。この場合、位置P10と位置P14を結ぶ直線上に位置P12が位置する場合には、ステップS40の実行結果は「YES」となる。この場合における連続刺繍処理の具体的な処理手順について、図7を参照しつつ説明する。
【0046】
図7において、まず、主軸モータ128に所定の制御電圧を出力し、高速回転{例えば、850[rpm]}させ(ステップS50)、ステップS38で算出されたタイムコンスタントTx ,Ty に従って刺繍枠60をある位置P10から次の位置P12へ移動させる(ステップS52)。
具体的には、タイムコンスタントTx ,Ty が図2に示す駆動装置130に送られる。タイムコンスタントTx ,Ty を受けた駆動装置130では、このタイムコンスタントTx ,Ty に示す期間ごとにパルスをX軸パルスモータ142とY軸パルスモータ132のそれぞれに出力し、刺繍枠60を移動させる。
【0047】
例えば、図6(A)に示すような位置関係にあるステッチデータでは、上記のステップS50を実行すると、図6(B)に示すようなパルスの出力制御が行われる。すなわち、時刻t10から時刻t18までの基本周期ΔT12の間では、タイムコンスタントTx1の周期でX軸パルスモータ142にパルスを8回連続的に出力し、タイムコンスタントTy1の周期でY軸パルスモータ132にパルスを6回連続的に出力する。このようなパルスの出力制御により直線補間が実現され、刺繍枠60をあらゆる方向に対しても直線的に移動させることができる。
【0048】
また、時刻t18から時刻t22までの基本周期ΔT14の間では、タイムコンスタントTx2の周期でX軸パルスモータ142にパルスを4回連続的に出力し、タイムコンスタントTy2の周期でY軸パルスモータ132にパルスを3回連続的に出力する。したがって、刺繍枠60を位置P12で一時的に停止させることなく縫製を行うので、全体のキルティング縫いに要する時間を短縮することができる。なお、この場合は位置P10から位置P14の間は直線的であるので、タイムコンスタントTx1とタイムコンスタントTx2が等しく、タイムコンスタントTy1とタイムコンスタントTy2が等しくなる。
【0049】
そして、刺繍枠60を移動させている間に、主軸モータ128の回転数に従って複数の縫い目の縫製を行う(ステップS54)。
図6の例では、主軸モータ128は一定の回転速度で回転する(その回転周期をΔT10とする)ので、図6(B)に示すように、時刻t10,t12,t14,t16,t18,t20,t22の各時刻で縫製を行う。このため、刺繍枠60が移動する方向に沿って等間隔でキルティング縫いを行うことができる。
【0050】
したがって、タイムコンスタントTx1,Ty1に従ってパルスを出力することによって、ある位置P10から次の位置P12へ刺繍枠60をXY同軸で移動させる直線補間を行うことができる。このため、キルティングマシンで採用している連続送り制御を本発明の刺繍ミシンで実行しても、直線的な縫製では縫い目がギザギザにならず、ステッチデータ群で指定された位置に沿った縫い目を形成させることができる。
【0051】
また、図6(A)に示すような位置P10と位置P12の間、および、位置P12と位置P14の間において、移動量の傾きが等しい場合{(ΔY10/ΔX10)=(ΔY12/ΔX12)}には位置P10と位置P14を結ぶ直線上に位置P12が位置することになり、位置P12で刺繍枠60を連続的に送る。このため、間欠送り制御のような一時的に停止する期間がなくなるので、全体としてキルティング縫いに要する時間を短縮することができる。
【0052】
さらに、X軸方向の移動量(ΔX10,ΔX12)に反比例するパルス間隔(タイムコンスタントTx1)でX軸パルスモータ142にパルスを出力し、Y軸方向の移動量(ΔY10,ΔY12)に反比例するパルス間隔(タイムコンスタントTy1)でY軸パルスモータ132にパルスを出力するので、それぞれの軸について出力されるパルスの間隔が等しくなる。
このため、刺繍枠60をあらゆる移動方向に対して、しかも等速度で移動させることができる。したがって、あらゆる移動方向の直線的な縫製を実行しても縫い目がギザギザにならず、ステッチデータ群で指定された位置に沿った縫い目を形成させることができる。
【0053】
そして、送り速度Vに基づきタイムコンスタントTx1,Ty1,Tx2,Ty2を求めているので、X軸パルスモータ142とY軸パルスモータ132に出力するパルス数の二乗の和(すなわち、X軸方向とY軸方向のベクトル和の方向に対してパルス数)を一定にすることができる。具体的には、図6に示す例において、位置P10から位置P12までの間の送り速度と、位置P12から位置P14までの間の送り速度が等しくなるため、全体として刺繍枠60の送り速度を一定に維持することができる。
こうして、針棒42が被刺繍物62を刺す間隔(ピッチ)を一定にすることができる。したがって、縫い目のピッチが等間隔になるので、より綺麗な縫い目を形成することができる。
【0054】
一方、ステッチデータが図8(A)に示すように、位置P32と位置P34を結ぶ線分の傾きが位置P30と位置P32を結ぶ線分の傾きから所定の範囲を外れた場合には、図5に示すステップS42の実行結果は「NO」となる。この場合における間欠刺繍処理の具体的な処理手順について、図9を参照しつつ説明する。
【0055】
図9において、まず、主軸モータ128に所定の制御電圧を出力し、低速回転{例えば、300[rpm]}させる(ステップS60)。その後、枠移動のタイミングを図って(ステップS62)、停止している刺繍枠60を位置P32まで移動させる(ステップS64)。さらに、針棒42の往復動とのタイミングを図って(ステップS66)、刺繍枠60を停止させた状態で一針の縫製を行う(ステップS68)。
【0056】
例えば、図8(B)に示すように、時刻t30から時刻t32の間(単位周期ΔT30)に、X軸パルスモータ142とY軸パルスモータ132にそれぞれ必要なパルスを出力する。図では、X軸パルスモータ142に7パルスを、Y軸パルスモータ132に3パルスを出力している。
また、低速になった主軸モータ128の回転速度(この場合の回転周期を図に示すようにΔT34とする)に合わせるため、時刻t32から時刻t36の間は刺繍枠60を一時的に停止させる。この停止制御により、時刻t34で一針の縫製を行うことができるので、位置P30と位置P32の間に直線的な縫い目を形成することができる。
その後、刺繍枠60を位置P34に移動させるため、時刻t36から時刻t38までの基本周期ΔT32の間に、タイムコンスタントTx3の周期でX軸パルスモータ142にパルスを3回連続的に出力し、タイムコンスタントTy3の周期でY軸パルスモータ132にパルスを4回連続的に出力する。
【0057】
したがって、第1の実施例では、位置P32と位置P34を結ぶ線分の傾きが位置P30と位置P32を結ぶ線分の傾きから所定の範囲を外れた場合には、次の位置P32で刺繍枠60を一時的に停止させることによって、確実に次の位置P32で縫製させたい縫い目を形成することができる。このため、希望する縫い目に従って確実に縫製を行うことができる。
【0058】
また、図6(A)に示すように、位置P10と位置P14を結ぶ直線上に位置P12が位置する場合(連続送りの場合)には主軸モータ128の回転速度を高速にし、図8(A)に示すように位置P32と位置P34を結ぶ線分の傾きが位置P30と位置P32を結ぶ線分の傾きから所定の範囲を外れた場合(間欠送りの場合)には主軸モータ128の回転速度を低速にした。このため、連続送りの場合に刺繍枠60を高速で送っても確実に縫い目ができ、その間隔も短くなるので縫い目がほつれにくくなる。さらに、間欠送りの場合には針棒42の往復動とタイミングが取りやすくなり、縫製したい位置で刺繍やキルティング縫いのための縫製を確実に行うことができる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。なお、物理的な構成は第1の実施例に示す図2と同一であり、また処理手順も図3〜図5,図7,図9と同一である。ただし、第1の実施例における図7のステップS52に代えて、図10(A)に示す枠移動処理を実行する。以下、この枠移動処理の具体的な処理手順について説明する。
図10(A)において、まず、所定期間(例えば、0.1秒間)におけるX軸用エンコーダ144とY軸用エンコーダ134から出力されるパルスの数をカウントし(ステップS70)、現在の刺繍枠60の移動速度を算出する(ステップS72)。
【0060】
この刺繍枠60の移動速度の算出は、次式によって行われる。なお、刺繍枠60の移動速度をV、X軸用エンコーダ144から出力されるパルスの数をCx 、Y軸用エンコーダ134から出力されるパルスの数をCy 、1パルス当たりの移動量をL、上記の所定期間をTc 、X軸方向移動速度をVx 、Y軸方向移動速度をVy とする。
Vx =(Cx ・L)/Tc
Vy =(Cy ・L)/Tc
V={(Vx )2 +(Vy )2 }1/2
【0061】
そして、ステップS72で算出された刺繍枠60の移動速度Vに基づいて、主軸モータ128の回転数Nを次式により求める(ステップS74)。なお、係数kは一定値である。
N=k・V
こうして算出された回転数Nに基づいて、主軸モータ128に出力する制御電圧Eを算出する。この制御電圧Eは、図10(B)に示す1次関数のグラフに従って、次式によって算出される。ただし、係数a,bは主軸モータ128ごとに異なる固有の一定値である。
E=aN+b
こうして算出された制御電圧Eを主軸モータ128に出力し(ステップS76)、主軸モータ128の回転数Nを制御する。その後、本処理手順を終了する。
【0062】
上記の処理手順を実行することにより、例えば、図6(A)に示すように、位置P10と位置P14を結ぶ直線上に位置P12が位置する場合には、図11に示すようなパルスの出力制御が行われる。
すなわち、第2の実施例を実行すると、基本周期ΔT52は従来の単位周期と同様に常に一定の時間間隔(時刻t50と時刻t58の間、および、時刻t58と時刻t62の間)になる。
【0063】
そして、時刻t50と時刻t58の間においては、ステップS76で出力される制御電圧Eに従って主軸モータ128の回転速度が回転周期ΔT50に調整され、時刻t50,t52,t54,t56の各時刻で縫製を行う。
また、時刻t58と時刻t62の間においては、ステップS76で出力される制御電圧Eに従って主軸モータ128の回転速度が回転周期ΔT54に調整され、時刻t58と時刻t60で縫製を行う。
なお、針棒42は時刻t50で位置P10に位置し、時刻t58で位置P12に位置する。このため、刺繍枠60が移動する方向に沿って等間隔で縫製を行うことができるので、仕上がりの見た目が綺麗になる。
【0064】
図7に示すステップS52を実行した場合には、移動方向に対する刺繍枠60の送り速度を維持しながら、主軸モータ128の回転速度を一定に保っていた。これに対して、図10(A)に示す処理手順を実行すると、基本周期ΔT52の時間間隔を一定に保ちながら、主軸モータ128の回転速度を変えている。したがって、第2の実施例は図6(A)に示すように、移動方向に沿って等間隔(等ピッチ)で縫製を行うことができるので、第1の実施例と等価な技術である。
なお、第2の実施例では、制御電圧Eを1次関数のグラフに従って求めたが、主軸モータ128の実際の回転数Nに対応する制御電圧Eの特性に応じて、2次関数以上の多次関数のグラフに従って求めてもよい。この場合には、主軸モータ128ごとの特性に合わせて、より均一な間隔で縫製を行うことができる。したがって、仕上がりの見た目もより綺麗になる。
【0065】
ここで、第1の実施例と第2の実施例では、X軸とY軸のモータにパルスモータを適用したが、X軸モータ30としてX軸サーボモータ150を、Y軸モータ40としてY軸サーボモータ160をそれぞれ適用する第3の実施例について、図6(A),図8(A)と図12を参照しつつ説明する。これらの三つの図において、同一の要素には同一の番号を付し、説明を省略する。
【0066】
なお、物理的な構成は第1の実施例に示す図2と同一であり、処理手順も図3〜図5,図7,図9と同一である。ただし、第1の実施例における枠移動処理(図7のステップS52,図9のステップS64)ではX軸モータ30とY軸モータ40にパルス列を出力する代わりに、駆動電圧を出力する。
また、図2に示す駆動装置130は、CPU110からバス114を介して送られた駆動データに従って、X軸サーボモータ150とY軸サーボモータ160にそれぞれ駆動電圧を出力する。X軸サーボモータ150とY軸サーボモータ160は、この駆動電圧に応じて刺繍枠60を移動させる。したがって、刺繍枠60の移動速度は、X軸サーボモータ150とY軸サーボモータ160にそれぞれ出力する駆動電圧に比例する。
【0067】
まず、図6(A)に示すように、ある位置P10、次の位置P12および次々の位置P14が直線上にあるときに刺繍枠60を移動させる場合には、図12(A)に示すような駆動電圧の出力制御を行う。
すなわち、時刻t10から時刻t22までの間に、X軸サーボモータ150には制御線fx1に従って変化させた駆動電圧を出力し、Y軸サーボモータ160には制御線fy1に従って変化させた駆動電圧を出力する。このとき、制御線fx1に従う駆動電圧と制御線fy1に従う駆動電圧はそれぞれ一定の値であり、これらの比は4:3である。このため、刺繍枠60は次の位置P12で停止することなく、ある位置P10から次々の位置P14へ等速度で移動する。
【0068】
なお、ある位置P10から刺繍枠60を移動させ始める場合には、時刻t10から時刻t11までは、制御線fx1と制御線fy1ともに二点鎖線で示すように加速する。同様に、次々の位置P14で刺繍枠60を停止させる場合には、時刻t21から時刻t22までは、制御線fx1と制御線fy1ともに二点鎖線で示すように減速する。この加減速時においても制御線fx1に従う駆動電圧と制御線fy1に従う駆動電圧の比を4:3に維持することにより、加減速時の直線補間が可能となる。
【0069】
また、図8(A)に示すように、位置P32と位置P34を結ぶ線分の傾きが位置P30と位置P32を結ぶ線分の傾きから所定の範囲を外れたときに刺繍枠60を移動させる場合には、図12(B)に示すような駆動電圧の出力制御を行う。
すなわち、時刻t32まではX軸サーボモータ150には制御線fx2に従って変化させた駆動電圧を出力し、Y軸サーボモータ160には制御線fy2に従って変化させた駆動電圧を出力する。この例では、時刻t31bまで等速度で移動し、時刻t31bから時刻t32まで減速している。このとき、制御線fx2に従う駆動電圧と制御線fy2に従う駆動電圧の比は、等速度時も加減速時も7:3である。
【0070】
その後、時刻t32から時刻t36までは、針棒42の往復動とのタイミングを図るために刺繍枠60を一時的に停止させる。この例では、時刻t34で一針の縫製が行われている。
そして、時刻t36以後はX軸サーボモータ150には制御線fx3に従って変化させた駆動電圧を出力し、Y軸サーボモータ160には制御線fy3に従って変化させた駆動電圧を出力する。この例では、時刻t37aまで加速し、時刻t37a以後は等速度で移動している。このとき、制御線fx3に従う駆動電圧と制御線fy2に従う駆動電圧の比は、等速度時も加減速時も3:4である。
【0071】
なお、ある位置P30から刺繍枠60を移動させ始める場合には、時刻t30から時刻t31aまでは,制御線fx2と制御線fy2ともに二点鎖線で示すように加速する。同様に、次々の位置P34で刺繍枠60を停止させる場合には、時刻t37bから時刻t38までは、制御線fx3と制御線fy3ともに二点鎖線で示すように減速する。
【0072】
ここで、上記図15との関係では、図15で示す基本移動量D(相対移動量)と出力する駆動電圧の総和との関係について、図12では時間的な駆動電圧の変化を示している。すなわち、図15に示す一般的な制御線fp について、図12ではステッチデータに基づく相対移動量に従って変化させた具体的な制御線fx1,fx2,fy1,fy2をそれぞれ示しているものであり、両者は同種類のものである。
このため、図13に示すように、同一時間内に加速し始めた後に減速し終える移動速度の加減速パターンを、予め移動量(ΔXまたはΔY)ごとにROM102(あるいはRAM104でもよい)に記憶する。こうして記憶された加減速パターン群の中からステッチデータで指定された相対移動量に応じて適切な加減速パターンを選択し、図12に示すような駆動電圧の出力制御を行うこともできる。
【0073】
例えば、図13に示すように、移動速度の加減速パターン群(fp1〜fp8)は同一時間内(時間tc 内)に加速し始めた後に減速し終える移動速度の加減速パターンである。これらの全ての加減速パターンは、時刻t0 で加速し始め、時刻ta で等速度で移動し始め、時刻tb で減速し始め、時刻tc で停止する。したがって、一つ一つの加減速パターンは、相対移動量に応じて駆動する電圧が異なる。なお、図示する移動速度の加減速パターン群(fp1〜fp8)は、その一例である。
【0074】
ここで、仮に加減速パターンfp3と加減速パターンfp4の移動量の比が3:4であるときは、その駆動電圧の比も3:4になる。なお、仮に加減速パターンfp3と加減速パターンfp4の相対移動量の比が3:4であれば、その移動速度の比もまた3:4になる。したがって、加減速パターンfp3と加減速パターンfp4の各時刻における速度比もまた3:4になり、速度比が時間に対して不変となる。このため、相対移動量ごとに対する加減速パターンにおいて、ある一つの加減速パターンと他の一つの加減速パターンの速度比は、加速開始から減速終了まで変わらず、刺繍枠60を直線的に移動させることができる。
【0075】
したがって、上記の制御線fx1,fx2と制御線fy1,fy2に従って変化する駆動電圧をサーボモータに出力し、直線補間、すなわち刺繍枠60をある位置から次の位置へXY同軸で移動させることができる。このため、キルティング縫いを本発明の刺繍ミシンで実行しても、直線的な縫製ではその縫い目がギザギザにならず、またステッチデータ群で指定された位置に沿った縫い目を形成させることができる。
なお、第3の実施例を上記の第2の実施例に従って、針棒42が被刺繍物62を刺す時間的な周期である基本周期を一定に保ちながら、主軸モータ128の回転速度を変える構成としてもよい。この構成では、移動方向に沿って等間隔(等ピッチ)で縫製を行うことができるため、折れ線状の位置に沿った縫製でも縫い目を等間隔(等ピッチ)で形成することができる。
【0076】
以上では刺繍ミシンの一実施例について説明したが、この刺繍ミシンにおけるその他の部分の構造、形状、大きさ、材質、個数、配置および動作条件等についても、本実施例に限定されるものでない。
例えば、上記の実施例では本発明を刺繍ミシンに適用したが、キルティング縫いを専門に行うキルティングマシンにも同様に本発明を適用することができる。なお、キルティングマシンでは全て連続送り制御で縫製が行えるため、キルティング縫いに要する時間を短縮することができる。
【0077】
また、上記の実施例では、ある位置P10と次々の位置P14を結ぶ直線上に次の位置P12が位置する場合には刺繍枠60を連続的に送り、そうでない場合には間欠的に送る構成としたが、KEY120に設けられた送り指令ボタンが「連続」あるいは「間欠」に設定されたか等のように、所定の移動条件が設定されたか否かで刺繍枠60を連続的に送ったり、間欠的に送る構成としてもよい。
この構成によれば、多少のギザギザが問題にならない程度の縫製を行う場合には、上記の例のようにKEY120に設けられた送り指令ボタンを「連続」に設定することにより、終始連続送りでキルティング縫いが行われる。このため、最短時間でキルティング縫いを行うことができる。
【0078】
さらに、上記の実施例では図5において、二つのステッチデータの傾きから連続刺繍処理を行うか間欠刺繍処理を行うかを、新たにステッチデータを取得するごとに判定する構成としていた(ステップS34乃至ステップS42)。この構成に代えて、図4のステップS22に示すステッチデータ群の入力時に、複数のステッチデータ(あるいは全てのステッチデータ)についてあらかじめ上記の判定を行うように構成してもよい。この場合、各ステッチデータごとの判定結果をRAM104等に保持しておく必要がある。
この構成によれば、キルティング縫いを実行している際に直線性の検査を行う時間の分が少なくなるので、他の処理などに充てることができる。
【0079】
そして、駆動信号出力手段24はステッチデータに従って直線補間を行うように構成したが、曲線補間を行うように構成してもよい。すなわち、図14(A)に示すように、例えばある位置Pa から次の位置Pb へ被刺繍物62を移動させる場合において、X軸パルスモータ50とY軸パルスモータ30にはそれぞれパルス間隔を変化させながらパルスを出力する。
具体的には、図14(B)に示すように、X軸パルスモータ50には、始めはパルス間隔を長くし、次第に短くしながらパルスを出力する。一方、Y軸パルスモータ30には、始めはパルス間隔を短くし、次第に長くしながらパルスをする。こうした三以上の位置に基づいて曲線補間を行う方法には、円弧補間、スプライン補間、ベジエ補間等がある。
このようなパルス間隔の可変制御によって、図14(A)に示す曲線に沿って被刺繍物62をスムーズに移動させることができる。したがって、被刺繍物62に曲線的に縫製を行うことができる。
【0080】
その他、ステッチデータ群の選択処理(図4に示すステップS22)では、ROM102に格納されたステッチデータ群をそのまま入力した後、表示制御回路106に転送して表示するように構成したが、あらかじめステッチデータ群を所定の形式で圧縮してROM102に格納しておき、この圧縮されたステッチデータ群を読み出して演算や表示する際に、上記圧縮されたステッチデータ群を展開(復元)して演算や表示を行うように構成してもよい。
この構成では、ステッチデータ群を圧縮してROM102に格納することで、ステッチデータ群を格納するために必要な容量が大幅に抑えられる。このため、必要なROM102の容量を少なくすることができ、ひいては刺繍ミシン全体のコストを低く抑えることができる。ここで、圧縮方法としては、MR(modifiedREAD )方式やMMR(modified modified READ)方式の符号化法、ランレングス(Run-Length)符号化法、LZ(Lempel-Ziv)符号化法、算術符号化法、LZSS符号化法、LZW(Lempel-Ziv-Welch)符号化法などの符号化法が望ましい。
【0081】
また、ステッチデータ群を外部記憶装置124に記憶しておき、電源起動時又はリセット時にあらかじめRAM104へステッチデータ群を転送(あるいは圧縮されたステッチデータ群を展開)し、あるいは必要に応じて外部記憶装置にアクセスしてステッチデータ群を取得するように構成してもよい。同様に、よく使用される基本的なステッチデータ群をROM102に記憶し、あまり使用されないステッチデータ群を外部記憶装置124に記憶するように、分散して記憶する構成としてもよい。
これらの構成によれば、外部記憶装置124はROM102に比べて膨大な容量を有するので、非常に多くのステッチデータ群を記憶させることができる。これにより、図4に示すステップS22で縫製を行うステッチデータ群を選択する際に、選択可能なステッチデータ群が大幅に増える。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、この本発明の実施例には特許請求の範囲に記載した技術的事項以外に、次に示すような各種の技術的事項の実施態様を有する。
所定期間内に加速し始めた後に減速し終える移動速度の加減速パターンを記憶している加減速パターン記憶手段と、相対移動量(ΔX,ΔY)に応じてX軸方向とY軸方向の速度比が時間に対して不変であるように前記加減速パターンを調整するパターン調整手段をさらに備えており、
前記駆動信号出力手段は、ステッチデータの相対移動量(ΔX,ΔY)に従って前記加減速パターンを前記パターン調整手段によって移動速度を調整し、駆動信号をそれぞれX軸モータとY軸モータに出力することを特徴とする請求項2記載の刺繍ミシン。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、モード切換手段で切り換えられるモードに従って、同期モードでは針棒が被刺繍物に刺さっていない間は刺繍枠を一つの対のステッチデータ(ΔX,ΔY)で指定された相対移動量だけ移動させ、針棒が被刺繍物に刺さっている間は刺繍枠を移動させず、一方非同期モードでは同一期間内に刺繍枠をX軸とY軸の同軸で移動させるとともに、各々の対のステッチデータに従って連続的に刺繍枠を移動させる構成としたので、刺繍ミシンで刺繍を行うとともに、キルティング縫いを行うことができるようになる。したがって、刺繍ミシンでキルティング縫いを行なった場合でも、希望する縫い目を確実に実現することができる。
また、X軸方向とY軸方向の速度比をX軸方向の相対移動量(ΔX)とY軸方向の相対移動量(ΔY)の比と等しくするので、刺繍枠はX軸方向のみやY軸方向のみに移動することがなく、直線的にスムーズに移動する。
【0084】
また、請求項2の発明によれば、駆動信号出力手段は、X軸方向とY軸方向のそれぞれの相対移動量(ΔX,ΔY)に反比例するパルス間隔でX軸モータとY軸モータにパルスを出力する構成としたので、パルスによって移動制御を行なった場合でも、刺繍枠はX軸方向のみやY軸方向のみに移動することがなく、ある位置から次の位置に直線的にスムーズに移動する。したがって、パルスモータを用いた場合でも簡単に直線補間を実現することができ、しかも見た目に綺麗な柄を仕上げることができる。
【0085】
さらに、請求項3の発明によれば、駆動信号出力手段がX軸方向とY軸方向のベクトル和の方向に対してパルス数が一定になるようにX軸モータとY軸モータのそれぞれにパルスを出力する構成としたので、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に基づいて移動する速度と、次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に基づいて移動する速度が等しくなる。したがって、刺繍枠は縫製全体を通じて等速度で送られることになるので、縫い針は等間隔で落ちる。このため、キルティング縫いを高速に行なった場合でも、縫い目を等間隔で揃えて綺麗に仕上げることができる。
【0086】
さらに、請求項4の発明によれば、請求項1と同様に刺繍ミシンでキルティング縫いを行なった場合でも、希望する縫い目を確実に実現することができる。
また、所定の条件を満たさなければ針棒の往復動とのタイミングがとられるので、針棒を落とす位置を正確に制御することが可能になる。このため、柄の模様をくずすことなく、輪郭などを綺麗に揃えながら縫製を行うことができる。
【0087】
そして、請求項5の発明によれば、相対移動量の傾きの変化(ΔY2/ΔX2−ΔY1/ΔX1)が所定の範囲以内である場合には刺繍枠を停止することなく連続的に送り、相対移動量の傾きの変化が所定の範囲を超える場合には刺繍枠を間欠的に送る構成としたので、所定の範囲を超える折れ線状になる位置に達した場合や、オペレータによって所定の移動条件が設定された場合には、必ず針棒が被刺繍物に刺さる。このため、自動的に又は任意の刺繍箇所において、刺繍枠を連続的に送ったり、間欠的に送ったりすることができるので、全体の刺繍時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の刺繍ミシンの構成を示す概念図である。
【図2】刺繍ミシンの全体構成を示すブロック図である。
【図3】メイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】停止処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】刺繍処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】連続刺繍処理の具体例を示す図であって、(A)にはステッチデータ(位置)の位置関係を示し、(B)にはX軸・Y軸モータに出力するパルスの波形をそれぞれ示す。
【図7】連続刺繍処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】間欠刺繍処理の具体例を示す図であって、(A)にはステッチデータ(位置)の位置関係を示し、(B)にはX軸・Y軸モータに出力するパルスの波形をそれぞれ示す。
【図9】間欠刺繍処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】他の枠移動処理の具体例を示す図であって、(A)には処理手順のフローチャートを、(B)には主軸モータに出力する制御電圧の算出方法をそれぞれ示す。
【図11】他の枠移動処理におけるX軸・Y軸モータに出力するパルスの波形を示す図である。
【図12】X軸・Y軸モータに出力する駆動電圧の変化を示す図である。
【図13】サーボモータに出力する駆動電圧の他の制御方法を示す図である。
【図14】曲線補間によってX軸・Y軸モータに出力するパルスの波形を示す図である。
【図15】相対移動量とパルス数(駆動電圧)の関係を示す図である。
【図16】従来の刺繍ミシンにおいてパルスモータを用いた刺繍枠の送り方法を示す図であって、(A)には位置の位置関係を、(B)にはX軸・Y軸モータに出力するパルス波形を、(C)には刺繍ミシンを用いて連続送り制御によるキルティング縫いを実行させた場合における位置と縫い目の位置関係をそれぞれ示す。
【図17】従来の刺繍ミシンにおいてサーボモータを用いた刺繍枠の送り方法を示す図であって、(A)には位置の位置関係を、(B)にはX軸・Y軸モータに出力する駆動電圧の変化を、(C)には刺繍ミシンを用いて連続送り制御によるキルティング縫いを実行させた場合における位置と縫い目の位置関係をそれぞれ示す。
【図18】従来の刺繍ミシンにおける刺繍枠の送り方向と縫い目の関係を示す図である。
【符号の説明】
10 ステッチデータ
20 枠移動手段
22 ステッチデータ入力手段
24 駆動信号出力手段
30 Y軸モータ
40 ヘッド
42 針棒
50 X軸モータ
60 刺繍枠
62 被刺繍物
Claims (5)
- 被刺繍物を張っておく刺繍枠と、往復動する針棒を有するヘッドと、刺繍枠とヘッドを相対的にX軸方向に移動させるX軸モータと、刺繍枠とヘッドを相対的にY軸方向に移動させるY軸モータと、X軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)を対にし、その複数の対が順に並んでいるステッチデータ群を記憶しておく記憶手段を備えた刺繍ミシンにおいて、
刺繍を行う同期モードと、キルティング縫いを行う非同期モードとの間で切り換えるモード切換手段と、
同期モードが選択されている間、
前記針棒が前記被刺繍物を抜けてから次に刺さるまでの期間内に、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータに出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータに出力し、
前記針棒が前記被刺繍物に刺さってから抜けるまでの期間内は、X軸モータとY軸モータを停止させておく駆動信号を出力し、
非同期モードが選択されている間、
同一期間内におけるX軸方向とY軸方向の速度比がX軸方向の相対移動量(ΔX)とY軸方向の相対移動量(ΔY)の比と等しくなるように、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータに出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータに出力し、
かつ、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)のための駆動信号を出力する期間と次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)のための駆動信号を出力する期間の間に、X軸モータとY軸モータを停止させる駆動信号を出力しないように構成した駆動信号出力手段と、
が付加されていることを特徴とする刺繍ミシン。 - 駆動信号出力手段は、X軸方向の相対移動量(ΔX)に反比例するパルス間隔でX軸モータにパルスを出力するとともに、Y軸方向の相対移動量(ΔY)に反比例するパルス間隔でY軸モータにパルスを出力することを特徴とする請求項1記載の刺繍ミシン。
- 駆動信号出力手段は、X軸モータに出力するパルス数の二乗とY軸モータに出力するパルス数の二乗の和が、単位時間当たり一定になるようにパルスを出力することを特徴とする請求項1または2記載の刺繍ミシン。
- 被刺繍物を張っておく刺繍枠と、往復動する針棒を有するヘッドと、刺繍枠とヘッドを相対的にX軸方向に移動させるX軸モータと、刺繍枠とヘッドを相対的にY軸方向に移動させるY軸モータと、X軸方向への相対移動量(ΔX)とY軸方向への相対移動量(ΔY)を対にし、その複数の対が順に並んでいるステッチデータ群を記憶しておく記憶手段を備えた刺繍ミシンにおいて、
刺繍を行う同期モードと、キルティング縫いを行う非同期モードとの間で切り換えるモード切換手段と、
同期モードが選択されている間、
前記針棒が前記被刺繍物を抜けてから次に刺さるまでの期間内に、相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータに出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータに出力し、
前記針棒が前記被刺繍物に刺さってから抜けるまでの期間内は、X軸モータとY軸モータを停止させておく駆動信号を出力し、
非同期モードが選択されている間、
同一期間内において相対移動量(ΔX)だけ移動させる駆動信号をX軸モータに出力するとともに、相対移動量(ΔY)だけ移動させる駆動信号をY軸モータに出力し、
かつ、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)のための駆動信号を出力する期間と次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)のための駆動信号を出力する期間の間に、X軸モータとY軸モータを停止させる駆動信号を出力せず、
所定の条件を満たさない場合には、一つの対のステッチデータ(ΔX1,ΔY1)に基づく駆動信号を出力した後に少なくとも針棒の往復動に要する期間以上は停止させておくためのX軸とY軸の駆動信号をそれぞれX軸モータとY軸モータに出力し、その後に次の対のステッチデータ(ΔX2,ΔY2)に基づく駆動信号を出力するように構成した駆動信号出力手段と、
が付加されていることを特徴とする刺繍ミシン。 - 所定の条件は、次の対のステッチデータの相対移動量の傾き(ΔY2/ΔX2)が一つの対のステッチデータの相対移動量の傾き(ΔY1/ΔX1)から所定の範囲以内であること、および/または、所定の移動条件が設定されたことを特徴とする請求項4記載の刺繍ミシン。
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