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Description

本発明はアミノメタンホスホン酸の製造方法に関する。
アミノメタンホスホン酸は農薬の製造の中間体として有用である既知化合物である。特に、アミノメタンホスホン酸を除草剤N−ホスホノメチルグリシンとその塩に転化するための種々な方法が開示されている。典型的な方法は例えば米国特許第4094928号に見いだされ、この特許は、還元と加水分解とによってN−ホスホノメチルグリシンに転化されるカルボニルアルジミノメタンホスホネート(carbonylaldiminomethanephosphonate)を形成するための、アミノメタンホスホン酸又はそのアルキルエステルとグリオキサル又はグリオキシル酸エステルとの反応を開示する。出発物質としてのアミノメタンホスホン酸からN−ホスホノメチルグリシンを製造するための、このような方法の多くの他の変形が発表されている。
しかし、このような方法の商業的な利用は、アミノメタンホスホン酸出発物質を製造するための経済的に実行可能な経路がないために、制限されている。
WO−A−9203448では、式:R2CONHCH2OH[式中、R2はH、アルキル又は任意に置換したアリールである]のN−ヒドロキシメチルアミドを亜リン酸又は亜ホスホン酸と反応させる。アミノメタンホスホン酸とアミノメチルホスフィン酸との製造方法が開示される。
US−A−4044006では、新規なウレイドアルキルホスホネートと、それらの製造方法が開示される。実施例1においては、ウレイドアルキルホスホネートがトリメチルホスフィットとジメチロール尿素との反応によって製造される。
Synthesis,6号(1978),469〜472号では、チオウレイドアルカンホスホネートを介した1−アミノアルカンホスホネートの合成が開示される。
本発明は、安価で、容易に入手可能な出発物質を用いるアミノメタンホスホン酸の製造方法を提供する。さらに、目的のアミノメタンホスホン酸以外の、この方法の唯一の主要生成物は二酸化炭素であるので、本発明の方法は環境的に好ましい。本発明によると、次の工程:
(a) 式:R−CH2−NH−CO−NH−CH2−R'[式中、RとR'はヒドロキシ又はC1−C4アルコキシを表す]で示される化合物を下記の(i)〜(iv)のいずれかのホスホン化剤と反応させる工程と、
(i) 三塩化リン、
(ii) ジアルキルホスフィット、
(iii) 式(VI):
(Cl)nP(OR13-n (VI)
[式中、nは1又は2であり、R1は任意に置換されたアルキル又は任意に置換されたアリールである]
で示される化合物又はこのような化合物の混合物、又は
(iv) 式:R1OH[式中、R1は上記で定義する通りである]のアルコールとの混合物としての三塩化リン;次に
(b) 工程(a)の生成物を加水分解して、アミノメタンホスホン酸を形成する工程と;
を含むアミノメタンホスホン酸の製造方法が提供される。
本発明の範囲は何らかの特定の理論によって限定されるものと解釈すべきではないが、化合物R−CH2−NH−CO−NH−CH2−R'[式(I)]とホスホン化剤との反応は、R基とR'基との反応がホスホン化又は部分的ホスホン化尿素中間体を形成し、この中間体が次に工程(b)において加水分解されて、アミノメタンホスホン酸を形成することによって、進行すると考えられる。ジメチロール尿素と三塩化リンとの反応に関してはスキーム1において、ジメチロール尿素とジメチルクロロホスフィネートとの反応に関してはスキーム2において、反応スキームが記載されているが、これについては以下でさらに詳細に説明する。
簡単な脱離基が商業的に好ましく、RとR'とが両方ともヒドロキシであるジメチロール尿素が特に好ましい出発物質である。
望まれる場合には、ホスホン化剤(i)〜(iv)の混合物を使用してもよい。
式(VI)の化合物において、nは好ましくは1である。nが1である式(VI)化合物は、ジアルキルホスホクロリダイト(dialkyl phosphochioridite)、ジアルキルクロロホスフィット及びジアルキルクロロホスフィネートを含めた、種々な、ありふれた名称で表される既知化合物である。このような化合物を本明細書ではジアルキルクロロホスフィネート、例えばジエチルクロロホスフィネートと呼ぶことにする。nが1であるとき、2つの基R1は同じ基でも異なる基でもよい。望まれる場合には、2つの基R1が連結して架橋アルキル基をつくってもよい。2つの基R1が同じであることが好都合である。
例えばハロゲン及びニトロのような任意の置換基がアルキル基R1中に存在しうるが、このような置換基の存在に特別の利点がある訳ではなく、R1基は例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルのような、非置換C1−C7であることが好ましい。
式(VI)化合物は便利には三塩化リンとアルコールR1OHとの反応によって製造される。nが1である式(VI)化合物は、例えば、2モル割合のアルコールを1モル割合の三塩化リンと反応させることによって製造される。2モル割合未満のアルコールが、nが2である式(VI)化合物の割合を生じると考えられることが理解される。2モル割合を越えるアルコールの使用はトリアルキルホスフィットの割合を形成する傾向がある。
式(VI)化合物はアルコールR1OHと三塩化リンとの混合物から単離して、その後にホスホン化剤として用いることができるが、式:R1OHのアルコールとの混合物としての三塩化リンをそれ自体ホスホン化剤として用いることができ、好ましい割合は上記した通りである。ホスホン化反応の過程中にこのような混合物中に存在する化学種の性質は複雑(complex)であり、本発明の範囲は、前記混合物をホスホン化剤として用いる場合の三塩化リンと式:R1OHのアルコールとの混合物中の特定の化学種、式(VI)化合物又はその他の存在によって限定されるものと見なすべきではない。
ホスホン化剤が三塩化リンとアルコールとの反応によって形成される式(VI)化合物であろうと、又はホスホン化剤が三塩化リンとR1OHのアルコールとの混合物であろうといずれにしても、三塩化リン1モルにつきアルコールR1OHが1〜2.2モル、例えば三塩化リン1モルにつきアルコールR1OHが1.8〜2.2モル、特に三塩化リン1モルにつきアルコールR1OHが約2モルを用いることが好ましい。
必要な場合には、反応生成物である塩酸を、例えば窒素のような乾燥非酸化性ガスの散布によって、最初に除去することができる。
亜リン酸は適切には、酢酸及び無水酢酸と組合せて、ホスホン化剤として用いられる。ジアルキルホスフィットをホスホン化剤として用いることができるが、生成物の妥当な収率を得るためには100℃のオーダーの反応温度が必要であるが、好ましいホスホン化剤はより緩和な条件下で良好な収率を与えることを我々は発見した。
三塩化リン又はジアルキルクロロホスフィネート(例えば、ジエチルクロロホスフィネート若しくはジブチルクロロホスフィネート)、又は三塩化リンとアルコール(例えば、エタノール若しくはブタノール)との混合物が特に好ましいホスホン化剤である。
反応工程(a)は適当には実質的に無水かつ非酸化性条件下で行われる。
反応工程(a)は必要な場合には溶媒の不存在下で実施することができるが、但し、ホスホン化剤自体が式(I)化合物を溶解又は懸濁させ、有効な反応媒質を形成することを条件とする。必要な場合には、過剰なホスホン化剤を用いて、例えば媒質の粘度を減じて、効果的な撹拌若しくは揺動を可能にするために、効果的な反応媒質を形成することができる。或いは、無水溶媒をホスホン化剤と共に用いることができる。適当な溶媒は反応条件下で不活性であり、特に、ホスホン化剤による作用(attack)に対して不活性である。適当な溶媒の例には、ケトン、塩素化炭化水素、芳香族溶媒、ニトリル及び無水カルボン酸とエステルがある。特に好ましい溶媒は例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオンニトリル及びブチロニトリルのようなニトリルと、例えば酢酸及びギ酸エチルのようなカルボン酸である。例えば、ギ酸エチルと酢酸との混合物のような溶剤の組合せも用いることができる。その後のアミノメタンホスホン酸生成物の単離は、以下で詳述するように、水不混和性溶媒の使用によって促進することができる。
可動な反応媒質を形成して、撹拌を促進するために、式(I)化合物1重量部につき少なくとも1重量部の溶媒を用いることが好ましい。したがって、反応溶媒の割合は好ましくは式(I)化合物1重量部につき溶媒1重量部から、式(I)化合物1重量部につき溶媒20重量部までである。過剰な溶媒を用いることは商業的に好ましくなく、式(I)化合物1重量部につき溶媒1重量部から、式(I)化合物1重量部につき溶媒5重量部までを用いることが好ましい。
反応工程(a)は好ましくは0℃〜50℃の範囲内の温度で行われるが、我々は、反応が例えばアセトニトリルのような適当な溶媒中で−30℃程度の低温においても徐々に進行することを発見している。反応工程(a)を50℃を越える温度において実施することは、副生成物形成が収率を下げる傾向があるので、一般に特別な利益はない。工程(a)の反応は発熱性であり、望ましい温度を維持するためには冷却が必要である。
工程(a)には化学量論的割合の反応物を用いることが便利であるが、必要な場合には、ホスホン化剤又は式(I)化合物のいずれかのやや過剰な量を用いることができる。上述したように、ホスホン化剤を反応溶媒として用いることが望ましい場合には、ホスホン化剤の大きく過剰な量を用いることができる。
加水分解工程(b)は工程(a)から生ずる反応媒質に、用いた場合の任意の水混和性溶媒を任意に除去した後に、水を添加することによって行われる。必要な場合には、酸又は塩基を加えて、加水分解工程(b)を促進することができる。例えば塩酸のような希無機酸を用いる酸性加水分解が好ましい。0〜36重量%の濃度、例えば0.3〜4.0重量%の濃度の無機酸の存在下で酸性加水分解を行うことが好都合である。ホスホン化剤として三塩化リンを用いる場合には、工程(a)において酸が生成され、これは尿素中間体を生成するホスホン化又は部分的ホスホン化の結果として考えられるので(スキーム1)、酸の添加は不要である。
反応工程(a)で水不混和性溶媒を用いる場合には、水又は酸の添加がスキーム(1)では中間体ホスホン化生成物(II)を、スキーム(2)では(II')を水相に移動させる。次に、水相では加水分解工程(b)が行われ、有機相は任意に再循環されるように、水相と有機相とを分離する。
反応(a)を水混和性溶媒の存在下で実施する場合には、加水分解工程(b)の完了前に溶媒を分離して、溶媒を水不混和性溶媒と置換して、溶媒の回収と再循環とを容易にすることが望ましい。したがって、例えば、水混和性溶媒を蒸留によって除去して、水不混和性溶媒と置換することができる。水不混和性溶媒が水混和性溶媒よりも高沸点であり、水混和性溶媒と共沸混合物を形成しない場合には、有効な作用量を維持し、実質的に全ての水混和性溶媒の除去を助けるために、蒸留の前又は中に水不混和性溶媒を加えることができる。したがって、例えば、アセトニトリルが水不混和性溶媒である場合には、キシレン又はベンゾニトリルを加えて、混合物をアセトニトリルの沸点まで加熱して、アセトニトリルを取り出して、再循環させる。次に、水又は酸の添加がホスホン化中間体をその後の加水分解又は加水分解の完成のために水相中に抽出させる。その後に、水不混和性溶媒相も再循環させることができる。
加水分解工程(b)をスキーム1及び2に単一工程として示す。実際には、加水分解はスキーム3におけるように2工程で実施されると考えられる。工程(i)は緩和な条件下で非常に容易に、例えば簡単には周囲条件下で水との接触時に、又は周囲圧力下での還流時に行われると考えられる。工程(ii)は以下に述べるようにかなり厳しい条件を必要とする。ある条件下では、水混和性溶媒を除去すべき場合に、水混和性溶媒を除去して、これを水不混和性溶媒と置換する前に工程(i)加水分解を実施するために充分な水が存在することが有利であり、その結果、水混和性溶媒を除去するための蒸留中に(化学種(II)又は(II')よりはむしろ)化学種(IV)が存在し、その後に完全な加水分解のために水相中に抽出される。
したがって、本発明の他の態様によると、アミノメタンホスホン酸の製造方法であって、
(1)式:R−CH2−NH−CO−NH−CH2−R'[式中、RとR'はヒドロキシ又はC1−C4アルコキシを表す]で示される化合物を、三塩化リン若しくは式:ClP(OR1[式中、R1はC1−C7アルキルである]のジアルキルクロロホスフィネート(dialkil chlorophosphinate)であるホスホン化剤又は、三塩化リンと式:R1OHのアルコールとの混合物であるホスホン化剤と、水混和性溶媒の存在下で反応させて、ホスホン化剤が三塩化リンである場合には式(II)化合物を形成し、ホスホン化剤がジアルキルクロロホスフィネートであるか、又は三塩化リンとアルコールR1OHとの混合物である場合には式(II')化合物を形成する工程と;
(2)式(II)又は式(II')化合物を緩和な条件下で水によって加水分解して、式(IV)化合物を形成する工程と;
(3)水混和性溶媒を蒸留によって分離して、これを水不混和性溶媒と置換する工程と;
(4)水を加えて、このようにして形成された水相中に式(IV)化合物を抽出する工程と;
(5)工程(4)からの水相を100℃〜200℃の温度において、圧力を適当に調節して加水分解し、それによってアミノメタンホスホン酸を形成する工程と
を含む前記製造方法を提供する。
他の変形態様(variant)では、化学種(V)(化学種(II)ではなく)が水混和性溶媒を除去するための蒸留中に存在して、その後に完全な加水分解のために水相中に抽出されるように、例えばR1OHのようなC1−C7アルキルアルコール又は、例えばC5−C15アルコールのような高級アルコール(例えば、2−エチルヘキサノール)であるアルコールを水の代わりに用いることができる(スキーム4)。
水混和性溶媒を除去するための蒸留中に存在する化学種の選択(スキーム1、2、3又は4による)はこの方法にフレキシビリティを与え、例えば、水不混和性溶媒の沸点における化学種の相対的熱安定性によって決定されうる。
加水分解工程(b)は、スキーム1と2において説明するような工程(i)と(ii)の組合せとして又はスキーム3と4において説明するような分割プロセス(split process)における第2工程(ii)としてのいずれであっても、室温から還流温度までの範囲内の温度において、任意に外圧を加えて、行われることが好ましい。したがって、加水分解は好ましくは100℃〜200℃の温度(例えば、150℃)において、圧力を適当に調節しながら、行われる。加水分解中に二酸化炭素が発生するが(スキーム1)、これは加水分解中に排気されることが好ましい。
加水分解の全過程中に式(I)出発物質1モルにつき水5〜50モルを加えることが好ましい。必要な場合には追加の水を加えることができるが、過剰な水の存在はその後の単離工程の困難さを高めることになる。加水分解を行い、反応生成物を溶解するために必要である、最少量の水を加えることが一般に好ましい。
式(I)化合物は既知化合物であるか、又は既知化合物の製造に用いられる方法と類似の方法を用いて製造することができる。したがって、例えばジメチロール尿素は尿素とホルムアルデヒドとの反応によって便利に製造される。式(I)化合物は乾燥固体として又は無水溶媒中の溶液若しくはスラリーとして、例えば反応工程(a)のために用いる予定の溶媒中の溶液若しくはスラリーとして反応に供給することができる。
加水分解工程(b)の生成物は通常は目的の(desired)アミノメタンホスホン酸生成物を含む水溶液である。アミノメタンホスホン酸はこの水溶液から当業者に周知の方法(例えば、再結晶)によって回収することができる。しかし、一般に、本発明の方法によって製造されるアミノメタンホスホン酸は他の反応に出発物質として、例えば、N−ホスホノメチルグリシンの製造のための出発物質として用いられる。アミノメタンホスホン酸の水溶液が他の反応のための適当な供給原料であり、任意に中間体精製工程が加えられることがよくある。この場合には、アミノメタンホスホン酸生成物を水溶液から単離することが不要である。
したがって、本発明の他の態様によると、アミノメタンホスホン酸生成物を水溶液から単離せずにさらに反応させて、N−ホスホノメチルグリシンを製造する。
上述したように、水不混和性溶媒を反応工程(a)に用いる場合、又は工程(a)に用いる水混和性溶媒が次に水不混和性溶媒と置換される場合に、水不混和性溶媒を新たな反応工程(a)のために連続又は半連続ベースで再循環させることが便利である。
ホスホン化剤として式(VI)化合物又は、三塩化リンとアルコールとの混合物を用いる場合に、加水分解の1つの生成物はアルコールR1OHである(スキーム2)。R1OHが例えば、C4又はC5アルキル基R1に由来するアルコール(それぞれ、ブタノール又はペンタノール)のような水不混和性アルコールである場合には、これはアルコールを分離して、再循環させる可能性を広げる(open)。必要な場合には、低級アルコールを代替え手段(例えば、蒸留)によって加水分解工程中に回収して、再循環させることができる。
工程(a)における反応物の添加の順序は必要に応じて(as desired)変えることができる。したがって、例えば、式(I)化合物とホスホン化剤とを溶媒に加えることが便利である。しかし、ホスホン化剤を反応溶媒中の式(I)化合物の溶液若しくはスラリーに加えること、又は式(I)化合物の溶液若しくはスラリーを反応溶媒中のホスホン化剤の溶液に加えることが等しく可能である。式(VI)化合物をホスホン化剤として用い、この式(VI)化合物を三塩化リンとアルコールR1OHとの反応によって使用現場で製造する場合に、式(VI)化合物を反応媒質に添加する前に予め製造することは重要ではない。したがって、例えば、三塩化リンを反応媒質に加えて、その後にアルコールを加えることができる。
本発明を下記実施例によって説明するが、下記実施例において全ての部と%は、他に指定しないかぎり、重量によるものである。
実施例1
三塩化リン25.7g(0.183gmol)を250ml丸底フラスコに装入して、撹拌を開始した。ジメチロール尿素10g(0.083gmol)を撹拌しながら30分間にわたって加えた。反応量(reaction mass)の撹拌を容易にするために、さらに10g(0.073gmol)の三塩化リンを加えて、反応を室温に3時間維持した。乾燥酢酸20g(0.333gmol)を加えて、反応量を50℃に加熱して、この温度に3時間維持した。温度を100℃に上昇させて、4時間維持した。次に、反応を60℃に冷却して、水(50g)を15分間にわたって加えた。反応を還流温度(104℃)に加熱して、20分間維持した。
得られた水溶液の分析は、50%収率を越えるアミノメタンホスホン酸の存在を実証した。
実施例2
撹拌機と、温度計と、冷却管とを装備した500ml丸底フラスコにアセトニトリル(100g,2.44gmol)を装入した。この装置をアルゴンによってフラッシュして、溶媒を10℃に冷却した。ジメチロール尿素(51.6g,0.409gmol)と三塩化リン(105.9g,0.766gmol)とをそれぞれ10等分して(in ten equal portions)3時間にわたって撹拌しながら加えた。反応を室温において16時間撹拌した後に、それまでスラリーとして存在したジメチロール尿素出発物質が全て溶解した。温度を30℃未満に維持しながら、水(27g)を徐々に加えた。反応量を大気圧においてアセトニトリルを蒸留するために充分な温度に加熱して、この蒸留中にキシレン(100g)を徐々に加えた。水(100g)を加え、下層の、ビスホノメチル尿素(スキーム3における化合物(IV))を含む水相を分離した。
希塩酸(3.65重量%濃度,200ml)を水層に加え、温度を150℃に維持するために充分な圧力下で水層を10時間加熱し、圧力容器を周期的に排気して、形成される二酸化炭素を除去した。
アミノメタンホスホン酸の収率はnmr分析によって85%として、またHPLC分析によって83.2%として算出された。
実施例3
撹拌機、温度計と、冷却管とを装備した100ml丸底フラスコにブチロニトリル(20g)を装入した。この装置をアルゴンによってフラッシュして、溶媒を10℃に冷却した。ジメチロール尿素(95%濃度において10.3g)と三塩化リン(21.3g)とをそれぞれ5等分し(in five equal portions)、三塩化リンの1回の添加とその後のジメチロール尿素の添加との間に10分間遅延させて、約1時間にわたって加えた。反応を室温において一晩撹拌し、次に55℃に加熱し、その温度に1時間維持した。水(20g)を加えると、形成された固体沈殿物は過剰な水中に迅速に溶解した。2層を分離して、透明な無色のブチロニトリル層と、ビス(ホスホノメチル)尿素の透明な水溶液とを得た。ビス(ホスホノメチル)尿素の収率はnmrによる測定によって80%であった。水層の加水分解は、アミノメタンホスホン酸への定量的転化を示して、実施例1と同様に行われた。
実施例4
酢酸とギ酸エチルとをそれぞれ水混和性溶媒として用いて、実施例2の操作を繰り返した。
実施例5
トルエン、ベンゾニトリル、プロピオニトリル及び2−メチル−グルタロニトリルを水不混和性溶媒として用いて、実施例3の操作を繰り返した。
実施例7
三塩化リン(23.4g)とアセトニトリル(100g)とを250mlフラスコに装入した。ジメチロール尿素のジメチルエーテル(式中、RとR'とが両方とも−OCH3である式(I)化合物)(12.3g)を少量ずつ加えた。混合物を周囲温度において18時間撹拌し、次に50℃に加熱し、この温度に2時間維持した。白色沈殿が形成され、水素ガスが発生した。反応混合物を還流するまで、加熱し、この温度に2時間維持した。この反応混合物からアセトニトリル溶媒を蒸留によって除去し、蒸留の終了近くにキシレン30mlを加えた。反応混合物を水60gによって浸し(drowned out)、次に2層に分離した。水(40g)を水層から真空蒸留によって除去して、固体生成物を得た。
このようにして得られた生成物を水40gと36%塩酸11.9gに溶解し、周囲圧力において還流するまで加熱した(商業的実施では、固体生成物を得るために反応混合物から水を除去し、その後さらに水を加えることは不要である。この場合には、これを蒸留中にHClが除去されるように実施し、次に、加水分解を正確に既知濃度の酸を用いて実施した)。加水分解は8日間を越えて終了し、HPLC分析による測定によって48.3%のアミノメタンホスホン酸を生成した。
実施例8
出発物質として式(I)化合物[式中、RとR'とは同じであり、−O−C4H9である]を用いて、実施例7の操作を繰り返した。収率はHPLCによる測定によってアミノメタンホスホン酸35%であった。
実施例9
酢酸60ml中の亜リン酸32.8gの溶液を無水酢酸112.2gに、冷却しながら、1時間にわたって滴加した。温度を10〜15℃に維持しながら、ジメチロール尿素(24g)を少量ずつ50分間にわたって加えた。この溶液を10℃においてさらに20分間撹拌した。次に、反応混合物を還流するまで加熱し、この温度に2.5時間維持した。周囲温度に冷却した後に、水12.2gを冷却しながら滴加し、温度を25〜30℃の範囲内に維持した。次に、溶液を還流するまで加熱し、この温度に2時間維持した。冷却後に、酢酸を真空蒸留によって除去して、乳白色固体を得た。
固体を水(40g)と塩酸(36%溶液11.9g)中に溶解し、大気圧において還流するまで加熱した。7日間後に加水分解が終了し、アミノメタンホスホン酸の収率はHPLCによる測定によって17.8%であった。
実施例10
アルカリ性条件下で加水分解を実施した以外は実施例9の操作を繰り返した。ビス(ホスホノメチル)尿素(30%濃度82.7g;0.1gmole)と水酸化ナトリウム溶液(47%濃度51.1g;0.6gmole)とを100℃に120時間加熱した。アミノメタンホスホン酸二ナトリウム塩の収率は10.55g(装入したビス(ホスホノメチル)尿素を基準にして95%)であった。
実施例11
ジメチロール尿素(6g)をアセトニトリル(100ml)に加え、ジエチルクロロホスフィネート(15.65g)を、冷却かつ撹拌しながら、1/2時間にわたって滴加した。本質的に全てのジメチロール尿素が溶解して(passed into solution)、反応混合物は透明になった。水(50ml)と塩酸(0.1M,10ml)とを加え、アセトニトリルを蒸留するために、反応フラスコを加熱した。2部分(各30ml)のエタノールを加えて、水と共沸させて、さらに蒸留を実施し、次に混合物を大気圧下で還流するまで加熱した。還流温度における7日間後に、加水分解が終了し、アミノメタンホスホン酸の収率はリンnmrによる測定によって88%であった。
実施例12
冷却管と、温度計と、滴下ロートとを装備したフラスコにアセトニトリル(25ml)を装入し、全体を0〜10℃に冷却した。三塩化リン(7g)を加えた後に、温度を0〜10℃に維持しながら、エタノール(4.6g)を30分間にわたって徐々に加えた。混合物を1時間撹拌し、温度を0〜10℃に維持しながら、固体ジメチロール尿素(3.3g)を30分間にわたって加えた。反応混合物を室温に温度上昇させ、3時間撹拌した。次に、アセトニトリルを真空蒸留によって除去した。水(50ml)を加え、水性混合物を大気圧下で1時間、還流加熱した。ビスホスホノメチル尿素が80%収率で得られ、これは本質的に定量的収率(quantitative yield)でアミノメタンホスホン酸に転化した。
実施例13
アセトニトリルの代わりにトルエンを用いて、実施例12の操作を繰り返した。ホスホン化反応が終了した後に、水(50ml)を加えて、相を分離した。水相を大気圧下で1時間、還流加熱した。ビスホスホノメチル尿素が69%収率で得られ、これは本質的に定量的収率でアミノメタンホスホン酸に転化した。
実施例14
スラリーとして存在したジメチロール尿素出発物質が全て溶解する段階まで、実施例2の操作を繰り返した。
次に、温度を30℃未満に維持しながら、2−エチルヘキサノール(200.7g)を徐々に加えた。反応量を大気圧においてアセトニトリルを蒸留するために充分な温度に加熱した。水(100g)を加え、反応量を加熱して、2時間還流させた。反応量を冷却し、層を分離して、ビス(ホスホノメチル)尿素の水溶液を得て、このビス(ホスホノメチル)尿素を実施例2と同様に加水分解した。
実施例15
ジエチルホスフィット(41.4g)とジメチロール尿素(10g)とを100ml丸底フラスコに装入し、120℃に加熱した。加熱を20分間続け、この間に少量の留出物(7.2g)が回収された。過剰なジエチルホスフィットを減圧下で蒸留し、水(40ml)を加えた。反応量(mass)を36%HCl 0.8gの存在下で2時間還流させた。ビス(ホスホノメチル)尿素の収率はnmrによる測定によって66%であり、ビス(ホスホノメチル)尿素は加水分解時に本質的に定量的収率でアミノメタンホスホン酸に転化した。
実施例16
三塩化リン(7.0g)を100ml丸底フラスコに装入し、反応温度を20℃未満に維持しながら、メタノール(3.2g)を徐々に加えた。ベンゾニトリル(25ml)を加え、ジメチロール尿素(3.3g)を少量ずつ30分間にわたって加えた。混合物を室温において一晩撹拌し、水(50ml)を加えて、2相を分離させた。水相を2時間還流させて、ビス(ホスホノメチル)尿素の水溶液を82%収率で得た、このビス(ホスホノメチル)尿素は加水分解時に本質的に定量的収率でアミノメタンホスホン酸に転化する。
Figure 0003547441
Figure 0003547441
Figure 0003547441
Figure 0003547441

Claims (10)

  1. 次の工程:
    (a) 式:R−CH2−NH−CO−NH−CH2−R'[式中、RとR'はヒドロキシ又はC1−C4アルコキシを表す]で示される化合物を下記の(i)〜(iv)のいずれかのホスホン化剤と反応させる工程と、
    (i) 三塩化リン、
    (ii) ジアルキルホスフィット、
    (iii) 式(VI):
    (C1)nP(OR13-n (VI)
    [式中、nは1又は2であり、R1は、ハロゲン若しくはニトロにより任意に置換されたアルキル、又はアリールである]
    で示される化合物又はこのような化合物の混合物、又は
    (iv) 式:R1OH[式中、R1は上記で定義する通りである]のアルコールとの混合物としての三塩化リン;次に
    (b) 工程(a)の生成物を加水分解して、アミノメタンホスホン酸を形成する工程と;
    を含むアミノメタンホスホン酸の製造方法。
  2. ホスホン化剤が、式(VI):
    (Cl)nP(OR13-n (VI)
    [式中、nは1又は2であり、R1は、ハロゲン若しくはニトロにより任意に置換されたアルキル、又はアリールである]
    で示される化合物又はこのような化合物の混合物、あるいは式:R1OH[式中、R1は上記で定義する通りである]のアルコールとの混合物としての三塩化リンである請求項1記載の方法。
  3. ホスホン化剤が式(VI)[式中、nは1であり、R1はC1−C7アルキルである]の化合物である請求項2記載の方法。
  4. ホスホン化剤が三塩化リンと式:R1OH[式中、R1はC1−C7アルキルである]のアルコールとの混合物であり、三塩化リン1モルにつき1.8〜2.2モルのアルコールR1OHが用いられる請求項2記載の方法。
  5. 工程(a)の反応を0℃〜50℃の温度において実施する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 工程(b)の加水分解反応を100℃〜200℃の温度において、圧力を適宜調節して実施する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 工程(a)の反応を、ケトン、塩素化炭化水素、芳香族溶媒、ニトリル又は無水カルボン酸若しくはエステルである溶媒の存在下で実施する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 工程(a)の反応を水混和性溶媒の存在下で実施し、工程(b)の加水分解反応の完了前にこの水混和性溶媒を分離して、水不混和性溶媒と置換する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  9. アミノメタンホスホン酸の製造方法であって、
    (1) 式:R−CH2−NH−CO−NH−CH2−R'[式中、RとR'はヒドロキシ又はC1−C4アルコキシを表す]で示される化合物を、三塩化リン若しくは式:ClP(OR1[式中、R1はC1−C7アルキルである]のジアルキルクロロホスフィネートであるホスホン化剤又は、三塩化リンと式:R1OH[式中、R1は上記で定義する通りである]のアルコールとの混合物であるホスホン化剤と、水混和性溶媒の存在下で反応させて、ホスホン化剤が三塩化リンである場合には式(II)の化合物を形成し、ホスホン化剤がジアルキルクロロホスフィネートであるか、又は三塩化リンとアルコールR1OHとの混合物である場合には式(II')の化合物[式中、R1は上記で定義する通りである]を形成する工程と;
    Figure 0003547441
    Figure 0003547441
    (2) 式(II)又は式(II')の化合物を緩和な条件下で水によって加水分解して、式(IV)の化合物を形成する工程と;
    Figure 0003547441
    (3) 水混和性溶媒を蒸留によって分離して、これを水不混和性溶媒と置換する工程と;
    (4) 水を加えて、このようにして形成された水相中に式(IV)の化合物を抽出する工程と;
    (5) 工程(4)からの水相を100℃〜200℃の温度において、圧力を適宜調節して加水分解し、それによってアミノメタンホスホン酸を形成する工程と;
    を含む前記製造方法。
  10. アミノメタンホスホン酸生成物を、単離せずに、さらに反応させて、N−ホスホノメチルグリシンを形成する請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
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