JP3547353B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体装置の製造方法に関し、さらに詳しくは、非晶質ケイ素膜を結晶化した結晶性ケイ素膜を活性領域とする半導体装置の製造方法に関する。特に、この発明は、絶縁表面を有する基板上に設けられた薄膜トランジスタ(TFT)を用いた半導体装置に有効であり、アクティブマトリックス型の液晶表示装置,密着型イメージセンサ,三次元IC(集積回路)等に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、大型で高解像度の液晶表示装置や高速で高解像度の密着型イメージセンサや三次元IC等への実現に向けて、ガラス等の絶縁基板上や絶縁膜上に高性能な半導体素子を形成する試みがなされている。上記各装置に用いられる半導体素子には、薄膜状のケイ素半導体を用いるのが一般的である。薄膜状のケイ素半導体としては、非晶質ケイ素(a‐Si(アモルファス・シリコン))半導体からなるものと結晶性を有するケイ素半導体からなるものの2つに大別される。
【0003】
上記非晶質ケイ素半導体は、作製温度が低く、気相法で比較的容易に作製することが可能で量産性に富むために、最も一般的に用いられている。ところが、導電性等の物性が結晶性を有するケイ素半導体に比べて劣るため、今後より高速特性を得るためには、結晶性を有するケイ素半導体からなる半導体装置の作製方法の確立が強く求められている。尚、結晶性を有するケイとしては、多結晶ケイ素や微結晶ケイ素等が知られている。
【0004】
これら結晶性を有する薄膜状のケイ素半導体を得る方法としては、
(1) 成膜時に結晶性を有する膜を直接成膜する。
(2) 非晶質の半導体膜を成膜しておき、レーザ光のエネルギーによって結晶性を有せしめる。
(3) 非晶質の半導体膜を成膜しておき、熱エネルギーを加えることによって結晶性を有せしめる。
等の方法が知られている。
【0005】
しかしながら、(1)の方法においては成膜工程と同時に結晶化が進行する。したがって、大粒径の結晶性ケイ素を得るにはケイ素膜の厚膜化が不可欠であり、良好な半導体物性を有する膜を基板上に全面に渡って均一に成膜することが技術上困難である。
【0006】
また、(2)の方法においては、溶融固化過程の結晶化現象を利用するために、粒界が良好に処理されて、小粒径ながら高品質な結晶性ケイ素膜が得られる。ところが、現在最も一般的に使用されているエキシマレーザを例にとっても、未だ十分な安定性を有するものが得られていない。したがって、大面積基板の全面を均一に処理するのは困難であり、ハード面での更なる技術向上が望まれる。
【0007】
また、(3)の方法においては、(1),(2)の方法に比して基板内の均一性や安定性の点においては有利である。しかしながら、600℃で30時間程度の長時間に渡る加熱処理が必要であり、処理時間が長く、スループットが低いという問題がある。さらに、この方法においては、結晶構造が双晶構造となるために、一つの結晶粒は数μmと比較的大きいのであるが、結晶粒内に多数の双晶欠陥を含み、上記(2)の方法に比べて結晶性は劣る。結晶性を向上させる方法として、さらに1000℃程度で酸素雰囲気にて加熱処理を施すような手法も用いられてはいる。ところが、その場合には安価なガラス基板は使用できなくなり、また、そうして得られた素子特性もTFTにおいて電界効果移動度100cm2/Vs程度の低いものである。
【0008】
上述の方法に対して、上記(3)の方法を改善し、高品質な結晶性ケイ素膜を得る方法が特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および持開平11−40816号公報で提案されている。これらの方法においては、非晶質ケイ素膜の結晶化を助長する触媒元素を利用することによって、加熱温度の低温化および処理時間の短縮を図り、結晶性の向上を図っている。具体的には、非晶質ケイ素膜の表面にニッケルやパラジウム等の金属元素を微量に導入させ、しかる後に加熱を行うものである。
【0009】
この低温結晶化のメカニズムは、先ず金属元素を核とした結晶核発生が早期に起こり、その後その金属元素が触媒となって結晶成長を助長し、結晶化が急激に進行することで理解される。そういった意味で、以後これらの金属元素を触媒元素と言う。これらの触媒元素によって結晶化が助長されて結晶成長した結晶性ケイ素膜は、通常の固相成長法(上記(3)の方法)で結晶化した結晶性ケイ素膜の一つの粒内が双晶構造であって多数の結晶欠陥を有しているのに対して、その粒内は何本もの柱状結晶ネットワークで構成されており、夫々の柱状結晶内部は略理想的な単結晶状態となっている。
【0010】
さらに、上記各公報においては、非晶質ケイ素膜の一部に選択的に触媒元素を導入して加熱することで、他の部分を非晶質ケイ素膜の状態として残したまま、触媒元素が導入された領域のみを選択的に結晶化し、そして更に、加熱時間を延長することで、その導入領域から横方向(基板と平行な方向)に結晶成長を行わせている。この横方向結晶成長領域の内部では、成長方向が略一方向に揃った柱状結晶がひしめき合っており、触媒元素が直接導入されてランダムに結晶核の発生が起こった領域に比べて結晶性がさらに良好になっている。したがって、この横方向結晶成長領域の結晶性ケイ素膜を半導体装置の活性領域に用いることによって、半導体装置の高性能化が行える。
【0011】
上記特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および特開平11−40816号公報においては、上記触媒元素が導入された領域に、さらに重ねてリン等の5族Bの元素(上記各公報では15族と表現している)を導入し、加熱処理を行うことによって、導入された触媒元素を元の導入部に移動(ゲッタリング)させようとしている。すなわち、触媒元素を用いてケイ素膜を横方向に結晶成長させた段階では、横方向に成長したケイ素膜中(特に成長先端部)に触媒元素が残存している。その触媒元素を元の導入領域まで引き戻し、後に素子領域として用いられる横方向に結晶成長したケイ素膜中の触媒元素を除去してしまおうというコンセプトである。上記特開平10−247735号公報においては、通常に横方向に結晶成長させた後に触媒元素導入部にさらにリンなどを導入し、加熱処理によってゲッタリングを行っている。また、特開平11−40500号公報においては、この方法をさらに発展させ、ゲッタリング後に触媒元素が集っているリンおよび触媒元素の導入部をハロゲンガスによって除去している。その際に、ハロゲンガスの作用によって、横方向結晶成長部のケイ素膜においては、さらに上記触媒元素を低減できるとしている。また、特開平11−40816号公報においては、素子領域に対して外側全域に触媒元素を導入し、素子領域の中心方向に向かって結晶成長させている。そして、その後、触媒元素が導入された領域に重ねてリンを導入し、成長と逆方向へ(素子領域の中心から外側方向へ)と触媒元素をゲッタリングしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および持開平11−40816号公報に開示されているような高品質な結晶性ケイ素膜を得る方法には、以下のような問題がある。
【0013】
すなわち、上述したように、触媒元素を導入することによって非晶質ケイ素膜を結晶化するので、加熱温度の低温化や加熱時間の短縮化を図ることができ、結晶化後に得られるケイ素膜の結晶性は他の従来の結晶化方法に比べて明らかに優れてはいる。しかしながら、上記金属類を主とする触媒元素が半導体中に多量に存在していることは、これら半導体を用いた装置の信頼性や電気的安定性を阻害するものであり、決して好ましいことでない。
【0014】
したがって、上記のニッケル等の結晶化を助長する触媒元素は、非晶質ケイ素を結晶化させる際には必要であるが、結晶化したケイ素中には極力含まれないようにすることが望ましい。そのためには、第1に、結晶化に必要な触媒元素の量を極力少なくし、最低限の量で結晶化を行う必要がある。しかしながら、触媒元素の導入量を少なくしていくと、結晶成長状態が非常に不安定化する。そのような状態で作成した結晶性ケイ素膜は、基板内での結晶性のばらつきが非常に大きくなり、半導体装置の活性領域を構成する膜としては到底使用できない。
【0015】
そこで、第2に、上記各公報のように、上記触媒元素を用いて結晶成長させた後に、触媒元素を移動(ゲッタリング)させることによって、素子領域内の触媒元素を除去あるいは低減することになる。しかしながら、実際に特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および特開平11−40816号公報のような方法を用いてTFT素子を試作したところ、十分な効果が得られていないことがわかった。具体的には、ゲッタリングと称される工程の後にも触媒元素はまだ多量に存在しており、TFT素子に明らかな悪影響を及ぼしているのである。特に、ゲッタリング工程後、導入領域を除去して、さらに高温での熱処理を行うと、素子領域内に残存している触媒元素が再凝集してシリサイド状態となって現れる。これは、上記各公報に開示されたゲッタリング方法ではまだ不十分であることの証明である。そして、これらの触媒元素がTFTの接合部に存在するとリーク源となり、オフ動作時のリーク電流が非常に増大するのである。実際にTFTを試作すると、上記特開平10−247735号公報および特開平11−40500号公報の方法においては、3%程度の確率で、オフ時のリーク電流が非常に大きい不良TFTが現れる。尚、ハロゲンガスによる明確差は見られない。また、特開平11−40816号公報の方法の場合には、さらに確率が高くなり、7%程度にまで不良率が増加する。この差は、特開平11−40816号公報においては、素子領域外全域に触媒元素を導入するために導入される触媒元素量も非常に多く、成長に使用される触媒元素量が過剰となって十分にゲッタリングできていないためである。
【0016】
以上で述べたように、上記3公報の方法では、素子領域中の触媒元素量を十分に低減できない。その結果、高性能な半導体装置は一部確率的に作製できるのではあるが不良率が高く、また信頼性が非常に悪く、とても量産に適用できるような技術ではない。
【0017】
そこで、この発明の目的は、触媒元素のゲッタリング率が高く、オフ動作時おけるリーク電流の異常な増大のない、製造歩留まりの高い半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の半導体装置の製造方法は、絶縁表面を有する基板上に非晶質ケイ素膜を形成し,この非晶質ケイ素膜の一部に結晶化を促進する触媒元素を選択的に導入する工程と、加熱処理を施して,上記触媒元素が導入された第1領域からその周辺領域へ向って上記基板と平行に上記非晶質ケイ素膜を結晶化させる工程と、上記結晶化によって得られた結晶性ケイ素膜における上記第1領域よりも広い領域であって , 且つ , 互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部と上記第1領域とを含む第2領域に,5族Bから選ばれた元素を選択的に導入する工程と、加熱処理を行なって,上記5族Bから選ばれた元素が導入された上記第2領域に,この第2領域以外の第3領域中の上記触媒元素を移動させる工程と、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて半導体装置の活性領域を形成する工程を備えたことを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、非晶質ケイ素膜を基板と平行に結晶化させた結晶性ケイ素膜に、5族Bから選ばれた元素(選択元素)を選択的に導入して加熱処理を行うことによって、上記結晶化の際に選択的に導入された触媒元素が上記選択元素の導入領域に移動される。その際に、上記選択元素の導入領域である第2領域は、上記触媒元素の導入領域である第1領域よりも広く設定されている。したがって、上記従来の技術のごとく、上記第2領域と第1領域とが同一領域である場合に比して、上記触媒元素の導入量が少なく抑えられる一方、上記選択元素の導入量が多く確保されて、大きなゲッタリング効果が得られる。
さらに、上記非晶質ケイ素膜に導入された触媒元素は、その導入領域 ( 第1領域 ) に多く残存するために上記第1領域の触媒元素の濃度は高い。上記構成によれば、上記選択元素が上記第1領域を含む領域に対して行われるため、上記第1領域中の触媒元素がトラップされ、さらに周囲の結晶性ケイ素膜中の触媒元素が上記第1領域に効率よく集められる。したがって、上記結晶性ケイ素膜における上記選択元素の非導入領域 ( 上記第3領域 ) の触媒元素濃度がより低減される。
さらに、非晶質ケイ素膜の横方向への結晶成長に際しては、上記触媒元素が先端部に局在し、非晶質ケイ素膜の結晶化を引き起こしている。したがって、互いに隣接する上記第1領域から成長してきた結晶性ケイ素膜がぶつかり合って結晶成長が終了した場合には、上記境界部の触媒元素の濃度は高い。上記構成によれば、上記選択元素が上記境界部を含む領域に対して行われるため、上記境界部の触媒元素がトラップされ、さらに周囲の結晶性ケイ素膜中の触媒元素が上記境界部に効率よく集められる。したがって、上記結晶性ケイ素膜における上記選択元素の非導入領域 ( 上記第3領域 ) の触媒元素濃度がより低減される。
【0020】
尚、この場合、さらに高温での熱処理を行っても、残存している触媒元素を再凝集してシリサイド状態となって現われることは全く無い。
【0021】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域を形成するに際して、互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部を避けて形成することが望ましい。
【0022】
互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部は、結晶化後においては上記触媒元素の濃度が高く、上記ゲッタリング後においては結晶性が不安定である。上記構成によれば、結晶性が不安定な上記境界部を避けて活性領域が形成されるため、信頼性および安定性の高い半導体装置が得られる。
【0027】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素の非晶質ケイ素膜への選択的導入を,上記非晶質ケイ素膜上に設けられて開口部を有する絶縁膜をマスクとして行い、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の結晶性ケイ素膜への選択的導入を,上記絶縁膜の開口部を更に拡げて成るマスクを用いて行うことが望ましい。
【0028】
上記構成によれば、上記触媒元素の選択的導入と上記選択元素の選択的導入とが、同一絶縁膜から形成されたマスクを用いて行われる。こうして、上記選択元素導入用のマクス膜の堆積プロセスが省略されて、コストダウンが図られる。さらに、後に上記活性領域が形成される領域が、上記触媒元素の導入から上記選択元素の導入に亘って常に上記マスクで覆われる。したがって、上記活性領域に対するプロセス起因の汚染が最低限に抑えられ、良品率の向上が図られる。
【0029】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素の非晶質ケイ素膜への選択的導入を、上記非晶質ケイ素膜上に設けられると共に平行に配列された直線状(所謂、ライン&スペース形状)の開口部を有するマスクを用いて直線状に導入するように成すことが望ましい。
【0030】
上記構成によれば、上記触媒元素が直線状に導入されるため、結晶成長の方向が上記直線状に対して略垂直な一方向になる。その結果、横方向結晶成長領域における各柱状結晶成分は成長方向に沿って並び、曲がりや分岐等の少ない良好な結晶性が得られる。
【0031】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素導入用のマスクにおける直線状の開口部の幅を2μm以上且つ15μm以下にすることが望ましい。
【0032】
上記構成によれば、上記触媒元素導入用マスクの開口部の幅は2μm以上である。したがって、上記非晶質ケイ素膜の結晶成長に十分な触媒元素が導入され、結晶性長距離が十分確保される。また、上記開口部の幅は15μm以下である。したがって、上記触媒元素の必要以上の導入が防止され、残留触媒元素のシリサイド化物が起因となって後のマスクの再パターニングやエッチングに際して結晶性ケイ素膜に生ずる穴開きや剥離が防止される。
【0033】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の結晶性ケイ素膜への選択的導入を、後に上記活性領域となる領域を含む領域上をマスクした状態で上記活性領域の周辺部に対して行なうことが望ましい。
【0034】
上記構成によれば、上記選択元素が、後に上記活性領域となる領域を含む領域上をマスクした状態で上記活性領域の周辺部に対して行われる。その結果、少なくとも上記活性領域中の触媒元素は周囲全方向に向かって効率的に移動し、優れたゲッタリング効果が得られる。
【0035】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、酸化雰囲気中で加熱処理を行い、上記活性領域における結晶性ケイ素膜の表面を酸化することによって、当該結晶性ケイ素膜の結晶性をさらに向上させることが望ましい。
【0036】
上記構成によれば、上記結晶性ケイ素膜の第3領域に形成された活性領域の表面が酸化される。そうすると、この酸化作用によって生じた過飽和Si原子が、上記活性領域中の結晶欠陥に入り込んで欠陥を消滅させる。こうして、上記活性領域中の欠陥密度が大きく低減され、移動度が大幅に向上される。
【0037】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、上記活性領域における結晶性ケイ素膜に強光を照射することによって、当該結晶性ケイ素膜の結晶性をさらに向上させることが望ましい。
【0038】
上記構成によれば、上記活性領域の結晶性ケイ素膜に紫外レーザ光等の強光が照射される。その場合、上記結晶性ケイ素膜と非晶質ケイ素膜との融点の相違から、結晶粒界部や微小な残留非晶質領域(未結晶化領域)が集中的に処理される。ここで、上記結晶性ケイ素膜は触媒元素を導入して結晶化されており、柱状結晶で形成されてその内部は単結晶状態である。したがって、上記強光の照射によって上記結晶粒界部が処理されると、基板全面に亘って単結晶状態に近い良質の結晶性ケイ素膜が得られるのである。
【0039】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記活性領域のパターン形成を、上記結晶性ケイ素膜における第3領域内であって、且つ、上記第3領域の輪郭との間隔が1μm以上になるように行なうことが望ましい。
【0040】
上記構成によれば、上記結晶性ケイ素膜における活性領域は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)が導入される第2領域から1μm以上離れて、上記第2領域に重なることなく形成される。したがって、上記第2領域に導入された選択元素が上記活性領域に悪影響を及ぼすことが無く、得られる半導体装置の上記選択元素に起因する性能低下が防止される。
【0041】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の結晶性ケイ素膜への選択的導入を、イオンドーピング法によって行なうことが望ましい。
【0042】
上記構成によれば、上記結晶性ケイ素膜に対する上記選択元素の導入がイオンドーピングによって行われる。このように、上記結晶性ケイ素膜に対してイオンドーピングが行われることによって、上記結晶性ケイ素膜の結晶がある程度破壊されて非晶質化する。その結果、結晶性ケイ素膜から非晶質ケイ素膜へと移動する傾向が強い触媒元素は、上記第3領域から第2領域へさらに容易に移動することになる。こうして、上記第3領域における上記触媒元素濃度の更なる低下が図られる。
【0043】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)を結晶性ケイ素膜へ選択的に導入する際における当該元素の濃度を、上記導入された触媒元素の濃度の10倍以上とすることが望ましい。
【0044】
上記構成によれば、上記触媒元素の濃度の10倍以上の濃度で導入された上記選択元素によって、上記第1領域および上記境界部にある触媒元素は動かないようにトラップされる。こうして、十分なゲッタリング効果が得られる。
【0045】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における第2領域に上記触媒元素を移動させる際の加熱処理温度を、500℃以上且つ700℃以下にすることが望ましい。
【0046】
上記構成によれば、上記触媒元素のゲッタリングが、触媒元素が十分に移動させることができる500℃以上の加熱温度で行われる。こうして、十分なゲッタリング効果が得られる。また、上記ゲッタリングが700℃以下の加熱温度で行われる。こうして、上記触媒元素のランダムな拡散が抑制され、上記選択元素の導入領域(第2領域)外への触媒元素の移動が防止される。さらに、酸素の存在下での触媒元素シリサイドの酸化による結晶性ケイ素膜の穴開きが防止される。
【0047】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素として、ニッケル,コバルト,鉄,パラジウム,白金,銅および金から選択された少なくとも一つの元素を用いることが望ましい。
【0048】
上記構成によれば、微量で上記非晶質ケイ素膜の結晶化助長効果が得られる。特に、ニッケル元素が形成するシリサイドNiSi2は螢石型の結晶構造を示しており、その結晶構造は単結晶ケイ素のダイヤモンド構造と非常に類似している。しかも、シリサイドNiSi2の格子定数は結晶シリコン(ダイヤモンド構造)の格子定数に非常に近い。したがって、シリサイドNiSi2は、上記非晶質ケイ素膜を結晶化させるための最高の鋳型として機能して、上記非晶質ケイ素膜の結晶化が促される。
【0049】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)として、リン,窒素,ヒ素,アンチモンおよびビスマスから選択された少なくとも一つの元素を用いることが望ましい。
【0050】
上記構成によれば、上記選択元素として、リン,窒素,ヒ素,アンチモンおよびビスマスから選択された少なくとも一つの元素が用いられて、上記触媒元素が効果的に移動され、十分なゲッタリング効果が得られる。
【0051】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、最終的に得られる上記活性領域における上記触媒元素の濃度を、1×1016cm3以上且つ2×1017cm3以下にすることが望ましい。
【0052】
上記構成によれば、上記活性領域における触媒元素の濃度が2×1017cm3以下であるから、上記触媒元素が半導体装置の特性に及ぼす電気的な悪影響が防止される。尚、上記触媒元素を用いて上記非晶質ケイ素膜の結晶化を行う限り、最低限1×1016cm3の濃度の触媒元素が上記活性領域に残る。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
<第1実施の形態>
本実施の形態においては、ガラス基板上にN型TFTを作製する際の工程にこの発明を適用した場合について説明する。本実施の形態におけるTFTは、アクティブマトリックス型の液晶表示装置のドライバ回路や画素部分は勿論のこと、薄膜集積回路を構成する素子としても利用することができる。本実施の形態においては、それらの代表として、基板上に数十万から数百万のN型TFTを特に均一に作製する必要がある液晶表示装置用のアクティブマトリックス基板の画素駆動用TFTを例にとって説明を行う。
【0054】
図1は、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板上の画素TFTの製造工程の概要を示す平面図である。実際には前述のごとく数十万個以上のTFTによって構成されるのであるが、本実施の形態においては、3行×4列の12個のTFTに簡略して説明を行う。図2および図3は、図1(e)におけるA‐A’矢視断面に相当する製造工程断面図であり、図2(a)から図3(g)の順に従って画素TFTの作製工程が進行する。尚、触媒元素の導入部とTFTの活性領域との位置関係が、図1と図2および図3とで90゜異なっている。これは図面を分かり易くするためであり、実際にはどちらの配置を採っても構わない。
【0055】
先ず、図2(a)に示すように、ガラス基板1上に、例えばスパッタリング法によって厚さ300nm〜500nm程度の酸化ケイ素2からなる下地膜を形成する。この酸化ケイ素膜2は、ガラス基板1からの不純物の拡散を防ぐために設けられる。次に、プラズマCVD(化学蒸着)法あるいは減圧CVD法によって、厚さ20nm〜80nm(例えば30nm)の真性(I型)の非晶質ケイ素膜(a‐Si膜)3を成膜する。本実施の形態においては、平行平板式のプラズマCVD装置を用いて、SiH4ガスとH2ガスとを材料ガスとして用い、基板加熱温度を300℃とし、RF(高周波)パワーのパワー密度を10mW/cm2〜200mW/cm2(例えば80mW/cm2)として行った。次に、a‐Si膜3上に酸化ケイ素膜あるいは窒化ケイ素膜等の絶縁性薄膜を堆積し、パターニングを行って図2(a)に示すようなマスク4を形成する。本実施の形態においては、絶縁性薄膜として酸化ケイ素膜を用い、TEOS(テトラ・エトキシ・オルソ・シリケート)を原料とし、酸素と共にRFプラズマCVD法によって分解・堆積した。上記マスク4の厚さは、100nm〜400nmであることが望ましく、本実施の形態においては、上記酸化ケイ素膜の厚さを150nmとした。マスク4のスルーホール領域5においてスリット状にa−Si膜3が露呈される。即ち、図2(a)の状態を上面から見ると、図1(a)に示すようにスルーホール領域5においてa−Si膜3が露呈しており、他の部分は酸化ケイ素膜のマスク4によって覆われた状態になっている。その場合におけるa−Si膜3が露呈しているスルーホール領域5の幅W1は、2μm〜15μmであることが望ましく、本実施例においては10μmとした。
【0056】
次に、図2(a)に示すように、上記a−Si膜3およびマスク4の表面にニッケル6の微量添加を行う。このニッケル6の微量添加は、ニッケルを溶かした溶液をa−Si膜3およびマスク4上に保持し、スピナーによって溶液を半導体積層体上に均一に延ばして乾燥させることによって行った。本実施例においては、溶質として酢酸ニッケルを用い、溶媒としてエタノールを用い、溶液中のニッケル濃度が10ppmになるようにした。このようにして添加されたa−Si膜3およびマスク4の表面上のニッケル濃度を全反射蛍光X線分析(TRXRF)法によって測定すると、5ラ1013atoms/cm2程度であった。
【0057】
そして、この状態で、例えば窒素雰囲気下等の不活性雰囲気下において、加熱温度530℃〜600℃(例えば、580℃)で11時間アニールして結晶化させる。その際に、スルーホール領域5においては、a−Si膜3の表面に存在するニッケル6を核としてa−Si膜3の結晶化が起こり、先ず結晶性ケイ素膜3aが形成される。そして、引き続いてスルーホール領域5の周辺領域では、図1(a)および図2(b)において矢印(A)で示すように、スルーホール領域5から横方向(基板と平行な方向)に結晶成長が行われ、横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜3bが形成される。そして、互いに隣接するスルーホール領域5から成長してきた結晶性ケイ素膜3b,3b’同士がぶつかり合って結晶成長は終了し、そこに成長境界部3cが形成される。このとき、マスク4上に存在するニッケル6は、マスク4に阻まれるために下層のa−Si膜3には到達せず、スルーホール領域5において導入されたニッケル6のみによってa−Si膜3の結晶化が行われる。この横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜3b中のニッケル濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定したところ5×1017〜1×1018atoms/cm3程度であり、直接ニッケルを添加し結晶成長した結晶性ケイ素膜3a中のニッケル濃度は1×1019atoms/cm3程度であった。尚、上記結晶成長に際して、矢印(A)で示されるガラス基板1に平行な方向への結晶成長距離は、最長で130μm程度である。
【0058】
次に、図1(b)および図2(c)に示すように、上記酸化ケイ素膜で成るマスク4を再度パターニングし、開口部を広げてマスク4’のような形状にする。未だこの段階では活性領域は形成されていないが、図1(b)においては、マスク4’と後にTFTの活性領域となる領域との位置関係を説明するために、右端の列のみ活性領域9を示してある。すなわち、マスク4’は、後にTFTの活性領域9となる領域をすっぽりと覆うように形成される。また。マスク4’はTFT活性領域9よりも距離W2だけ一回り大きく形成されている。
【0059】
次に、この状態で、図2(c)に示すように、半導体積層体上方からリン7を全面にイオンドーピングする。その場合の上記リン7のドーピング条件としては、加速電圧を5kV〜10kVとし、ドーズ量を5×1015cm−2〜1×1016cm−2とする。この工程によって、露呈している領域の結晶性ケイ素膜3a,一部の結晶性ケイ素膜3bおよび成長境界部3cにリン7が注入され、リンドープされた結晶性ケイ素領域3dが形成される。一方、マスク4’によって覆われている領域の結晶性ケイ素膜3bには、リン7はドーピングされない。すなわち、図1(b)において斜線で示された部分にリン7がドーピングされる。尚、上記距離W2は、リンドープ結晶性ケイ素領域3dとTFT活性領域9との間隔を意味しており、最低1μm以上必要である。本実施の形態においては3μmとした。
【0060】
そして、この状態で、例えば窒素雰囲気等の不活性雰囲気下において500℃〜700℃の温度で数時間から数十時間の加熱処理を施す。本実施の形態においては、一例として600℃で12時間の加熱処理を行った。この加熱処理によって、結晶性ケイ素領域3dにドーピングされたリン7がその領域に存在するニッケルをまずトラップする。そして更に、図1(b)および図2(d)に示すように、マスク4’下の結晶性ケイ素膜3b中に存在しているニッケル6を、矢印(B)の方向(すなわち、周囲のリンドープ結晶性ケイ素領域3dの方向)へと全方向に向かって引き出す。その結果、マスク4’下の結晶性ケイ素膜3b中のニッケル濃度は大幅に低減する。その場合における結晶性ケイ素膜3b中のニッケル濃度をSIMSによって測定したところ、測定限界レベルの5×1016atoms/cm3程度にまで低減されていた。ちなみに、この工程の前における結晶性ケイ素膜3b中ニッケル濃度は、5×1017〜1×1018atoms/cm3程度であった。
【0061】
次に、上記マスク4’として用いた酸化ケイ素膜をエッチング除去する。エッチャントとしては、下層のケイ素膜3と十分に選択性のある1:10バッファードフッ酸(BHF)を用い、ウェットエッチングによって行う。
【0062】
その後、上記マスク4’に覆われていた領域の結晶性ケイ素膜3bを残し、その他の不要な部分のケイ素膜3を除去して素子間分離を行う。すなわち、この工程によって、図1(c)に示すような配置で、少なくとも結晶性ケイ素膜3bに、後にTFTの活性領域(ソース/ドレイン領域およびチャネル領域)となる島状の結晶性ケイ素膜9が形成され、図1(c)および図3(e)の状態が得られる。
【0063】
次に、図3(e)に示すように、レーザ光8を照射することによって結晶性ケイ素膜9の結晶性を助長する。このときのレーザ光8としては、XeClエキシマレーザ(波長308nm、パルス幅40nsec)を用いた。レーザ光8の照射条件は、照射時に半導体積層体を200℃〜450℃(例えば400℃)に加熱し、エネルギー密度250〜450mJ/cm2(例えば350mJ/cm2)で照射した。ビームサイズは、ガラス基板1の表面で150mm×1mmの長尺形状となるように成型されており、長尺方向に対して垂直方向に0.05mmのステップ幅で順次走査を行った。すなわち、結晶性ケイ素膜9の任意の一点において計20回のレーザ照射が行われることになる。
【0064】
次に、上記活性領域となる結晶性ケイ素膜9を覆うように、厚さ20nm〜150nm(ここでは100nm)の酸化ケイ素膜をゲート絶縁膜10として成膜する。上記酸化ケイ素膜の形成には、ここでは上記TEOSを原料とし、酸素と共に基板温度150℃〜600℃(好ましくは300℃〜450℃)で、RFプラズマCVD法で分解・堆積して行った。あるいは、上記TEOSを原料としてオゾンガスと共に減圧CVD法もしくは常圧CVD法によって、基板温度を350℃〜600℃(好ましくは400℃〜550℃)で形成しても差し支えない。ゲート絶縁膜10の成膜後、ゲート絶縁膜10自身のバルク特性および結晶性ケイ素膜/ゲート絶縁膜の界面特性を向上するために、不活性ガス雰囲気下で400℃〜600℃で1時間〜4時間のアニールを行う。
【0065】
引き続いて、スパッタリング法によって、厚さ400nm〜800nm(例えば600nm)のアルミニウムを成膜する。そして、アルミニウム膜をパターニングしてゲート電極11を形成する。さらに、このアルミニウムの電極の表面を陽極酸化して表面に酸化物層12を形成する。この状態が図3(f)に相当する。上記ゲート電極11は、平面的にはゲートバスライン22をも同時に構成しており、この状態を平面的に見ると、図1(d)に示すような状態になっている。上記陽極酸化は、酒石酸が1%〜5%含まれたエチレングリコール溶液中で行い、最初一定電流で220Vまで電圧を上げ、その状態で1時間保持した後に終了する。得られた酸化物層12の厚さは200nmである。尚、この酸化物層12は、後のイオンドーピング工程において、オフセットゲート領域を形成する厚さになるので、オフセットゲート領域の長さを上記陽極酸化工程で決めることができる。
【0066】
次に、イオンドーピング法によって、上記ゲート電極11とその周囲の酸化物層12とをマスクとして上記活性領域に不純物(リン)を注入する。ドーピングガスとしてフォスフィン(PH3)を用い、加速電圧を60kV〜90kV(例えば80kV)、ドーズ量を1×1015cm−2〜8×1015cm−2(例えば2×1015cm−2)とする。この工程によって、不純物が注入された領域13と領域14とは後にTFTのソース/ドレイン領域となり、ゲート電極11およびその周囲の酸化物層12にマスクされて不純物が注入されない領域15は、後にTFTのチャネル領域となる。
【0067】
その後、図3(f)に示すように、レーザ光16を照射してアニールを行い、イオン注入した不純物の活性化を行うと同時に、上記の不純物導入工程で結晶性が劣化した部分の結晶性を改善させる。その際に、使用するレーザとしてはXeClエキシマレーザ(波長308nm、パルス幅40nsec)を用い、エネルギー密度150〜400mJ/cm2(好ましくは200〜250mJ/cm2)で照射を行う。こうして形成されたN型不純物(リン)領域13,14のシート抵抗は、200Ω/□〜800Ω/□である。
【0068】
続いて、図3(g)に示すように、厚さ600nm程度の酸化ケイ素膜あるいは窒化ケイ素膜等の層間絶縁膜17を形成する。尚、上記酸化ケイ素膜を用いる場合には、TEOSを原料として、上記TEOSと酸素とのプラズマCVD法、若しくは、オゾンとの減圧CVD法や常圧CVD法によって形成すれば、段差被覆性に優れた良好な層間絶縁膜が得られる。また、SiH4とNH3とを原料ガスとしてプラズマCVD法で成膜された窒化ケイ素膜を用いれば、活性領域/ゲート絶縁膜の界面へ水素原子を供給し、TFT特性を劣化させる不対結合手を低減する効果がある。
【0069】
次に、上記層間絶縁膜17にコンタクトホールを形成して、金属材料(例えば窒化チタンとアルミニウムとの二層膜)によってTFTのソース電極・配線18を形成する。窒化チタン膜は、アルミニウムが半導体層に拡散するのを防止するのを目的としたバリア膜として設けられる。このTFT20は、画素電極をスイッチングする素子であるので、もう一方のドレイン電極にはITO(インジュウム錫酸化物)等の透明導電膜からなる画素電極19を設ける。すなわち、図1(e)において、ソースバスライン21およびソース電極・配線18を介してビデオ信号が供給され、ゲートバスライン22およびゲート電極11からのゲート信号に基づいて画素電極19に必要な電荷が書き込まれるのである。そして最後に、1気圧の水素雰囲気下において、350℃で1時間のァニールを行い、図1(e)および図3(g)に示すTFT20を完成させる。さらに、必要に応じて、TFT20を保護する目的で、TFT20上に窒化ケイ素膜等からなる保護膜を設けてもよい。
【0070】
本実施の形態に従って作製したTFTは、電界効果移動度が200cm2/Vs程度,閾値電圧が2V程度と非常に高性能であるにも拘らず、上記従来の技術においては頻繁に見られたTFTオフ動作時のリーク電流の異常な増大が全く無く、単位W当たり1pA以下と非常に低い値を安定して示した。この値は、触媒元素を用いることなく作成した従来のTFTと比べても全く遜色の無いものである。すなわち、本実施の形態を適用してTFTを作製した場合には、製造歩留まりを大きく向上することができるのである。また、繰り返し測定やバイアスあるいは温度ストレスによる耐久性試験を行っても殆ど特性劣化は見られず、触媒元素を用いずに作成した従来のTFTと比べて非常に信頼性が高いことが立証された。
【0071】
さらに、本実施の形態に基づいて作製された液晶表示用アクティブマトリックス基板を実際に点灯評価したところ、従来法によって作成したものに比べて表示むらが小さく、TFTリークによる画素欠陥も極めて少なく、コントラスト比の高い高表示品位の液晶パネルを得ることができた。
【0072】
上述のごとく、本実施の形態においては、ガラス基板1上に酸化ケイ素膜2およびa‐Si膜3を成膜する。そして、a‐Si膜3上に絶縁性薄膜でなるマスク4を形成し、ライン状のスルーホール領域5を介してa−Si膜3上にニッケル6を導入する。そうした後に、不活性雰囲気下において加熱温度530℃〜600℃でアニールを行なって、スルーホール領域5から横方向に結晶成長させる。次に、マスク4を再度パターニングし、TFTの活性領域9よりも一回り大きく、且つ、スルーホール領域5および成長境界部3cを開口するマスク4’を形成し、リン7を全面にイオンドーピングする。そして、不活性雰囲気下において500℃〜700℃の温度で加熱処理を行って、結晶性ケイ素領域3dにドーピングされたリン7によってその領域のニッケル6をトラップし、さらにマスク4’下の結晶性ケイ素膜3b中のニッケル6をリンドープ結晶性ケイ素領域3dの方向に引き出す。こうして、結晶性ケイ素膜3bにおけるニッケル濃度を大幅に低減するのである。さらに、レーザ光8を照射して活性領域9における結晶性ケイ素膜の結晶性を助長する。以後、得られた低ニッケル濃度の結晶性ケイ素膜を用いて半導体装置の能動(チャネル)領域を形成するのである。
【0073】
このように、本実施の形成においては、上記マスク4のスルーホール領域5を介してa−Si膜3上にニッケル6を導入して横方向に結晶成長させる。その後、マスク4を再度パターニングしてTFTの活性領域9よりも一回り大きなマスク4’を形成し、リン7をイオンドーピングしてマスク4’下の結晶性ケイ素膜3b中のニッケル6を四方にゲッタリングするようにしている。
【0074】
したがって、上記横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜3b中のニッケル濃度が5×1017〜1×1018atoms/cm3程度である場合は、上記リン7を用いたゲッタリングによって、マスク4’下の結晶性ケイ素膜3bにおけるニッケル濃度を5×1016atoms/cm3程度にまで大幅に低減することができるのである。
【0075】
すなわち、本実施の形態によれば、電界効果移動度が200cm2/Vs程度,閾値電圧が2V程度と非常に高性能であり、オフ動作時のリーク電流の異常な増大が全く無いTFTを、歩留りよく得ることができるのである。
【0076】
その場合に、先ず、上記スルーホール領域5を有するマスク4を用いてニッケル6の選択的導入を行なう。引き続いて、同じマスク4を再度パターニングしてスルーホール領域5および成長境界部3cを開口すると共にTFTの活性領域9よりも一回り大きなマスク4’を形成し、このマスク4’を用いてリン7の選択的導入を行なうようにしている。したがって、ニッケル6およびリン7の導入の際に、後に活性領域9となる結晶性ケイ素膜3bの領域を常にカバーすることができ、活性領域9に対するプロセス起因の汚染を最低限に抑えることができる。さらに、ニッケル6の濃度が高いスルーホール領域(ニッケル6の導入領域)5と成長境界部3cとのニッケル6をトラップし、且つ、その部分を避けて活性領域9を得ることができる。その結果、良品率の向上を図ることができるのである。
【0077】
尚、本実施の形態によるTFT製造工程は、アクティブマトリックス基板の画素電極を対象にしたものである。しかしながら、本半導体装置の製造方法は薄膜集積回路等にも簡単に応用でき、その場合には、ゲート電極11上にもコンタクトホールを形成し、必要とする配線を施せばよい。
【0078】
<第2実施の形態>
本実施の形態においては、アクティブマトリックス型の液晶表示装置の周辺駆動回路や一般の薄膜集積回路を形成するN型TFTとP型TFTとを相補型に構成したCMOS(相補型金属酸化膜半導体)構造のTFT回路を石英ガラス基板上に作製する際の工程に、この発明を適用した場合について説明する。
【0079】
図4は、本実施の形態に係るTFT製造方法を説明するための平面図である。また、図5および図6は、図4におけるB‐B’矢視断面に相当する製造工程断面図であり、図5(a)から図6(h)の順に従ってTFTの製造工程が進行する。
【0080】
先ず、石英ガラス基板31の表面を低濃度のフッ化水素酸で洗浄した後、石英ガラス基板31上に、減圧CVD法あるいはプラズマCVD法によって、厚さ40nm〜100nm(例えば55nm)の真性(I型)のa‐Si膜32を成膜する。
【0081】
次に、上記a‐Si膜32上に酸化ケイ素膜または窒化ケイ素膜等の絶縁性薄膜を堆積し、パターニングしてマスク33を形成する。本実施の形態におけるマスク33の形成は、酸化ケイ素膜を用い、TEOSを原料とし、酸素と共にRFプラズマCVD法で分解・堆積することによって行った。マスク33の厚さは、100nm〜400nmであることが望ましく、本実施の形態においては、上記酸化ケイ素膜の厚さを150nmとした。マスク33のスルーホール領域34においてスリット状にa‐Si膜32が露呈される。すなわち、図5(a)の状態を上方から見ると、図4に示すように領域34においてa‐Si膜32が露呈しており、他の部分はマスク33によって覆われた状態になっている。その場合におけるスルーホール領域34の幅W3は2μm〜15μmであることが望ましく、本実施の形態においては10μmとした。
【0082】
上記マスク33を形成した後、この上からニッケル35を微量だけ添加する。このニッケル35の微量添加は、純ニッケル(99.9%以上)のターゲットを用い、DCスパッタリングによって行う。具体的には、DCパワーが50W程度という極低パワーにおいて、基板搬送速度を2000mm/minにまで高めてスパッタリング処理を行う。スパッタリングガスとしてはアルゴンを用い、純ニッケルターゲットに対するスパッタリング時のガス圧力を10Pa以上に上げることで、ニッケルの極低濃度スパッタリングが可能となる。
【0083】
このようにしてスパッタリングされた上記ニッケル35は、図5(a)においては薄膜のように表現されてはいるが、実際には単原子層程度かそれ以下の状態であって、とても膜と呼べる状態ではない。具体的には、DCパワー60W,アルゴンガス圧18Paの条件下でスパッタリングを行ったところ、半導体積層体の表面上(マスク33および領域34で露呈しているa‐Si膜32)のニッケル濃度は6×1013atoms/cm2程度(TRXRF測定値)であった。
【0084】
そして、図5(a)の状態で不活性雰囲気下(例えば窒素雰囲気下)で、加熱温度530℃〜600℃(例えば580℃)で11時間アニールして結晶化させる。その際に、領域34においては、a‐Si膜32の表面に存在する微量のニッケル35を核としてa‐Si膜32の結晶化が起こり、図5(b)に示すように、結晶性ケイ素膜32aが形成される。そして、引き続いて、領域34の周辺領域においては、矢印(C)で示すように、領域34から横方向(基板と平行な方向)に結晶成長が行われ、横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜32bが形成される。それ以外の領域は、そのまま非晶質ケイ素膜領域32cとして残る。その境界が成長境界部32dである。レイアウト上、当該TFTの横にも別のTFTが作成される場合には、非晶質ケイ素膜領域32cは隣のパターンからの横成長領域となり、その境界が素子領域外に形成される。
【0085】
その際に、上記マスク33上に存在するニッケル35は、マスク33によって阻まれて下層のa−Si膜32には到達せず、領域34から導入されたニッケル35のみによってa−Si膜32の結晶化が行われる。この横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜32b中のニッケル濃度は5×1017〜1×1018atoms/cm3程度(SIMS測定値)であり、直接ニッケルを添加して結晶成長した結晶性ケイ素膜32a中のニッケル濃度は1×1019atoms/cm3程度であった。尚、上記結晶成長に際し、矢印(C)で示される基板と平行な方向への結晶成長の距離は130μm程度である。
【0086】
次に、図4および図5(c)に示すように、上記酸化ケイ素膜から成るマスク33を再度パターニングし、開口部を広げて、形状をマスク33’のごとく変更する。この段階では、未だ活性領域は形成されていないが、図4においては、マスク33’と後にTFTの活性領域になる領域との位置関係を説明するために、活性領域37を示してある。すなわち、マスク33’は、後のTFT活性領域37をすっぽりと覆うように形成されるのである。また。マスク33’はTFT活性領域37よりも距離W4だけ一回り大きく形成されている。
【0087】
次に、この状態で、図5(c)に示すように、半導体積層体上方からリン36を全面にイオンドーピングする。その場合のリン36のドーピング条件としては、加速電圧を5kV〜10kVとし、ドーズ量を5×1015cm−2〜1×1016cm−2とする。この工程によって、露呈している結晶性ケイ素膜32a,一部の結晶性ケイ素膜32b,非晶質ケイ素膜領域32cおよび成長境界部32dにリン36が注入され、リンドープ結晶性ケイ素領域32eが形成される。尚、上記マスク33’によって覆われている横方向結晶成長領域の結晶性ケイ素膜32bには、リンはドーピングされない。ここで、上記距離W4は、リンドープ結晶性ケイ素領域32eとTFT活性領域37との間隔を意味しており、1μm以上が必要である。本実施の形態においては3μmとした。
【0088】
そして、この状態で、例えば窒素雰囲気等の不活性雰囲気下において500℃〜700℃の温度で数時間から数十時間の加熱処理を施す。本実施の形態においては、一例として600℃で12時間の処理を行った。この加熱処理によって、結晶性ケイ素領域32eにドーピングされたリン36がその領域32eに存在するニッケルをまずトラップする。そして、図4及び図5(d)に示すように、更にマスク33’下の結晶性ケイ素膜32b中に存在しているニッケル35を矢印(D)の方向に(すなわち、周囲のリンドープ結晶性ケイ素領域32eの方向)へと全方向に向かって引き出す。その結果、マスク33’下の結晶性ケイ素膜32bのニッケル濃度は大幅に低減するのである。その場合における結晶性ケイ素膜32b中のニッケル濃度をSIMSによって測定したところ、5×1016atoms/cm3程度にまで低減されていた。ちなみに、上記工程の前における結晶性ケイ素膜32b中ニッケル濃度は5×1017〜1×1018atoms/cm3程度であった。
【0089】
次に、上記マスク33’として用いた酸化ケイ素膜をエッチング除去する。エッチャントとしては、下層のケイ素膜32と十分に選択性のある1:10バッファードフッ酸(BHF)を用い、ウェットエッチングによって行う。
【0090】
その後に、図6(e)に示すように、上記マスク33’下の結晶性ケイ素膜32bを用いて、後にTFTの活性領域(素子領域)となる領域37n,37pの結晶性ケイ素膜32bを残し、それ以外のケイ素膜をエッチング除去して素子間分離を行う。
【0091】
次に、図6(f)に示すように、上記TFTの活性領域となる結晶性ケイ素膜37n,37pを覆うように、ゲート絶縁膜としての厚さ60nmの酸化ケイ素膜38を成膜する。本実施の形態においては、SiH4ガスおよびN2Oガスを原料として、850℃の温度下において減圧CVD法によって酸化ケイ素膜38を成膜した。所謂、HTO膜である。
【0092】
次に、このような状態において、上記結晶性ケイ素膜37n,37pに対して酸化雰囲気中での熱処理を行う。雰囲気としては酸素や水蒸気,HCl等の酸化雰囲気であり、本実施の形態においては、1気圧の酸素雰囲気中で行った。温度は結晶化温度よりも高い850℃〜1100℃が好ましく、本実施の形態においては950℃で行った。上述のような条件下で2時間30分のアニールを行うことによって、酸化ケイ素膜38中を酸素が拡散移動し、下層の島状ケイ素膜37n,37pの表面が酸化されて約50nmの酸化ケイ素膜39n,39pが形成される。
【0093】
その結果、上記ケイ素膜37n,37pの膜厚は初期の55nmから30nmに減少する。また、TFTとしてのゲート絶縁膜は、CVDによって形成された酸化ケイ素膜38とケイ素膜37の熱酸化によって形成された酸化ケイ素膜39との二層で構成されて、トータル膜厚は110nmになる。また、チャネル界面は、活性領域のケイ素膜37とこのケイ素膜37の酸化による酸化ケイ素膜39とで構成されて、良好な界面特性が得られる。さらに、上記酸化工程によって、島状ケイ素膜37n,37pの膜中不対結合(ダングリングボンド)は大幅に低減され、その結晶性は大きく改善される。以上の結果、30nmに薄膜化された高品質結晶性ケイ素膜による活性領域37n’,37p’が得られるのである。
【0094】
引き続いて、図6(g)に示すように、スパッタリング法によって厚さ400nm〜800nm(例えば500nm)のアルミニウム(0.1%〜2%のシリコンを含む)を成膜し、アルミニウム膜をパターニングして、ゲート電極40n,40pを形成する。
【0095】
次に、イオンドーピング法によって、上記ゲート電極40n,40pをマスクとして活性領域37n’,37p’に不純物(リン及びホウ素)を注入する。その場合、ドーピングガスとしてフォスフィン(PH3)およびジボラン(B2H6)を用いる。そして、加速電圧を、前者の場合には60kV〜90kV(例えば80kV)、後者の場合は40kV〜80kV(例えば65kV)とし、ドーズ量を1×1015cm−2〜8×1015cm−2(例えば、リンを2×1015cm−2,ホウ素を5×1015cm−2)とする。この工程によって、ゲート電極40n,40pでマスクされて不純物が注入されない領域は、後にTFTのチャネル領域41n,41pとなる。上記ドーピングの際には、ドーピングが不要な領域をフォトレジストで覆うことによって、夫々の元素を選択的にドーピングを行う。その結果、N型の不純物領域42n,43nと、P型の不純物領域42p,43pとが形成され、図4に示すようにNチャネル型TFTとPチャネル型TFTとを形成することができる。
【0096】
その後、図6(g)に示すように、レーザ光44を照射してアニールを行い、イオン注入した不純物の活性化を行う。レーザ光44としては、XeClエキシマレーザ(波長308nm、パルス幅40nsec)を用い、エネルギー密度250mJ/cm2で一箇所につき20ショット照射した。
【0097】
続いて、図6(h)に示すように、厚さ900nmの酸化ケイ素膜をプラズマCVD法によって形成して層間絶縁膜45とする。そして、この層間絶縁膜45にコンタクトホールを形成して、金属材料(例えば窒化チタンとアルミニウムの二層膜)によってTFTの電極・配線46を形成する。そして最後に、1気圧の水素雰囲気下において、350℃で1時間のアニールを行い、Nチャネル型TFT47とPチャネル型TFT48とを完成させる。さらに、必要に応じて、TFT47,48を保護する目的で、TFT47,48上に窒化ケイ素膜等からなる保護膜を設けてもよい。
【0098】
本実施の形態に従って作製したCMOS構造TFTにおいては、夫々のTFTの電界効果移動度は、N型TFT47で250cm2/Vs〜300cm2/Vs,P型TFT48で120cm2/Vs〜150cm2/Vsと高く、閾値電圧はN型TFT47で1V程度,P型TFT48で−1.5V程度と非常に良好な特性を示した。しかも、上記従来の技術においては頻繁に見られたTFTオフ動作時のリーク電流の異常な増大が全く無く、リーク電流値自体も単位W当たり1pA以下と非常に低い値を安定して示した。この値は、触媒元素を用いることなく作成した従来のTFTと比べても全く遜色の無いものである。すなわち、本実施の形態を適用してTFTを作製した場合には、製造歩留まりを大きく向上することができるのである。また、繰り返し測定やバイアスあるいは温度ストレスによる耐久性試験を行っても殆ど特性劣化は見られず、触媒元素を用いずに作成した従来のTFTと比べて非常に信頼性が高く、安定した回路特性を示した。
【0099】
上述のごとく、本実施の形態においては、石英ガラス基板31上にa‐Si膜32を成膜し、a‐Si膜32上にマスク33を形成する。そして、マスク33のスルーホール領域34から露呈しているa‐Si膜32の表面に、極低パワーのDCスパッタリングによってa‐Si膜32に触媒元素としてのニッケル35を極低濃度で導入する。そうした後に、不活性雰囲気下で、加熱温度530℃〜600℃でアニールして結晶化させる。その結果、スルーホール領域34から横方向に結晶成長が行われて横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜32bが形成される。次に、マスク33を再度パターニングして、ニッケル導入領域34および成長境界部32dを開口し、且つ、TFT活性領域37よりも一回り大きなマスク33’を形成する。そして、リン36をイオンドーピングし、不活性雰囲気下において500℃〜700℃の温度で加熱処理を施す。その結果、結晶性ケイ素領域32eにドーピングされたリン36によってその領域のニッケル35がトラップされ、さらにマスク33’下の結晶性ケイ素膜32b中に存在しているニッケル35がリンドープ結晶性ケイ素領域32eの方向に引き出される。こうして、結晶性ケイ素膜32bのニッケル濃度は大幅に低減される。さらに、酸素雰囲気化で850℃〜1100℃で加熱処理を行って活性領域37における結晶性ケイ素膜の結晶性を助長する。以後、領域34の両側に得られた低ニッケル濃度の結晶性ケイ素膜37n,37pを用いてCMOS構造の能動(チャネル)領域を形成するのである。
【0100】
このように、本実施の形態によれば、上記第1実施の形態と同様に、ライン状のスルーホール領域34を有するマスク33を用いて、ニッケル35を導入して横方向に結晶成長させる。さらに、マスク33を再度パターニングしてTFTの活性領域37よりも一回り大きなマスク33’を形成し、リン36をイオンドーピングしてマスク33’下の結晶性ケイ素膜32b中のニッケル35を四方にゲッタリングするようにしている。
【0101】
したがって、上記横方向結晶成長した結晶性ケイ素膜32b中のニッケル濃度が5×1017〜1×1018atoms/cm3程度である場合は、上記リン36を用いたゲッタリングによって、マスク33’下の結晶性ケイ素膜32bにおけるニッケル濃度を5×1016atoms/cm3程度にまで大幅に低減することができるのである。
【0102】
すなわち、本実施の形態によれば、電界効果移動度がN型TFT47で250cm2/Vs〜300cm2/Vs,P型TFT48で120cm2/Vs〜150cm2/Vsであり、閾値電圧がN型TFT47で1V程度,P型TFT48で−1.5V程度と非常に高性能であり、オフ動作時のリーク電流の異常な増大が全く無いCMOS構造のTFTを、歩留りよく得ることができるのである。
【0103】
その場合に、先ず、上記スルーホール領域34を有するマスク33を用いてニッケル35の選択的導入を行なう。引き続いて、同じマスク33を再度パターニングしてスルーホール領域34および成長境界部32dを開口すると共にTFTの活性領域37n,37pよりも一回り大きなマスク33’を形成し、このマスク33’を用いてリン36の選択的導入を行なうようにしている。したがって、ニッケル35およびリン36の導入の際に、後に活性領域37n,37pとなる結晶性ケイ素膜32bの領域を常にカバーすることができ、活性領域37n,37pに対するプロセス起因の汚染を最低限に抑えることができる。さらに、ニッケル35の濃度が高いスルーホール領域(ニッケル35の導入領域)34と成長境界部32dとのニッケルをトラップし、且つ、その部分を避けて活性領域37n,37pを得ることができる。その結果、良品率の向上を図ることができるのである。
【0104】
ところで、上記各実施の形態においては、a−Si膜3,32の一部にその結晶化を促進する触媒元素としてニッケル6,35を選択的に導入し、加熱処理を行うことによって、a−Si膜3,32をニッケル6,35の導入領域5,34からその周辺領域へと、横方向(基板と平行)に結晶成長を行わせる。そして、上記ニッケル6,35が選択的に導入された領域より広い領域に、5族Bから選ばれた元素としてリン7,36を導入し、再度加熱処理を行って、リン7,36が導入された領域にニッケル6,35を移動させる。そして、上記リン7,36が導入された領域外の横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜3b,32bを用いて、半導体装置の活性領域を形成するようにしている。
【0105】
すなわち、上記従来の技術においては、上記ニッケルの導入領域と5族B元素の導入領域とは同一であったのに対し、上記各実施の形態の形態においては、ニッケル6,35が導入された領域よりもリン7,36の導入領域を大きく確保することがポイントである。ケイ素膜へのニッケル6,35の導入量をできる限り少なく抑え、逆にリン7,36の導入量をできる限り多くするのが好ましい。上記各実施の形態においては、このことを、夫々の元素の導入領域の大きさ(面積)によって実現するのであるが、この面積の効果は非常に大きい。すなわち、リン7,36の導入面積を2倍にすることによって、元の面積のままでリン7,36の導入量を10倍にするよりもより大きなゲッタリング効果を得ることができるのである。
【0106】
尚、この評価は、上記リン7,36を導入して加熱処理した後に、リン7,36導入領域以外の領域(素子形成領域)に対してフッ酸系のエッチャントによるライトエッチング処理を行い、残留しているニッケル6,35を顕在化させて評価した結果である。よりシビアな評価としては、さらに高温での熱処理を行って上記素子形成領域内に残存しているニッケル6,35が再凝集してシリサイド状態となって現われるようにする評価がある。この後者の評価を行っても、特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および特開平11−40816号公報において見られたようなニッケル6,35の再凝集は全く見られなかった。
【0107】
そして、上記各実施の形態を適用してTFTを作成したところ、特開平10−247735号公報,特開平11−40500号公報および特開平11−40816号公報によって同様にTFTを作成した場合には3%以上の確率で見られたTFTオフ時のリーク電流の異常な増大現象が、上記各実施の形態においては全く見られず正に0%であった。さらに、上記各実施の形態を適用して作成したTFTを用いた液晶表示装置においては、上記3公報に開示された従来の技術では頻発していた線状の表示むら(ドライバ部のサンプリングTFTに起因)やオフ時のリーク電流による画素欠陥も全く無く、表示品位を大きく向上でき、良品率を飛躍的に高めることができるのである。
【0108】
上記各実施の形態においては、半導体装置の活性(素子)領域を形成する際に、少なくともリン7,36が導入された領域外の横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜3b,32bを用いて形成する必要がある。そうしない場合には、リン7,36が活性(素子)領域に残留することになり、例え能動(チャネル)領域にリン7,36は存在しなくとも後の工程次第では温度によって拡散し、TFT等の閾値電圧を不安定化させる原因になる。さらには、ニッケル6,35の導入領域5,34から横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜同士がぶつかり合った成長境界部3c,32dを避けて、半導体装置の能動(チャネル)領域を形成することが望ましい。従来における横方向結晶成長時に生じた成長境界部は、触媒元素がシリサイド状態で高濃度に局在しており、到底能動(チャネル)領域として使える状態ではなかった。ところが、上記各実施の形態では、リン7,36によるニッケル6,35の移動(ゲッタリング)効率が非常に高いために、成長境界部3c,32dにおいてもニッケル6,35は略除去できており、濃度的には問題なく使用できる値にある。しかしながら、このような成長境界部3c,32dは結晶性が不安定であり、これらが能動(チャネル)領域中に存在すると、その点で素子特性のばらつきが大きくなる。本実施の形態は、半導体装置の高性能化に加え、高信頼性および高安定化を目指すものであるから、出来ることなら横成長の成長境界部3c,32dを避けて半導体装置の能動(チャネル)領域を形成することが望ましい。
【0109】
上記各実施の形態においては、上記リン7,36を結晶性ケイ素膜3b,32bに選択的に導入する際に、少なくともニッケル6,35が導入された領域よりも広い領域に対して導入を行うことが重要である。特に、リン7,36が導入される領域を、ニッケル6,35が選択的に導入された領域を含んで設定することが望ましい。すなわち、少なくともニッケル6,35が直接導入された領域にはさらにリン7,36を導入し、その領域よりさらに広い領域に渡ってリン7,36を導入するのである。横方向結晶成長過程において、導入されたニッケル6,35の全てが利用される訳ではなく、大部分のニッケル6,35はそのまま導入領域に残存する。横方向への結晶成長が終了した段階でのニッケル6,35の膜中濃度は、横方向結晶成長領域に比べて導入領域の方が一桁以上高い。このような高濃度領域を完全にゲッタリングするのは非常に困難であるだけでなく、リン7,36導入後の加熱処理でさらにこの領域から拡散移動することも考えられる。そこで、上述したように、このようなニッケル6,35の高濃度領域には重ねてリン7,36を導入することで、先ずその領域で高濃度のニッケル6,35が外に移動できないようにトラップする。そして更に、横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜3b,32b中の低濃度のニッケル6,35を効率良くリン7,36の導入領域に集めるのである。
【0110】
また、上記ケイ素膜の横方向への結晶成長に際しては、上記ニッケル6,35が結晶成長の先端部に局在し、ケイ素膜の結晶成長を引き起こしている。したがって、横方向への結晶成長が終了した段階では、横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜3b,32b同士がぶつかり合った成長境界部3c,32dも、ニッケル6,35が直接導入された領域と並んで非常に高濃度にニッケル6,35が存在している。この成長境界部3c,32dは、面積的にはニッケル6,35の導入領域5,34に比べてはるかに小さいが、ニッケル6,35の導入領域5,34と同様の理由から、成長境界部3c,32dを含み、その領域よりも広くリン7,36を導入することがより望ましい。
【0111】
その場合に、上記ニッケル6,35とリン7,36とを選択的に導入する方法としては、先ずa−Si膜3,32へのニッケル6,35の選択的な導入を、a−Si膜3,32上に設けられてスルーホール領域5,34を有する絶縁膜のマスク4,33を用いて行なう。引き続いてリン7,36の結晶性ケイ素膜3b,32bへの選択的な導入も、同じマスク4,33のスルーホール領域5,34をさらに広げて成るマスク4’,33’を用いておこなうのである。
【0112】
こうすることによって、上記ニッケル6,35とリン7,36との導入工程においてマスク膜を別々に成膜する必要が無く、マスク膜の堆積工程を一回省くことができるためにプロセスの簡略化を図ることができる。さらに、後に半導体装置の活性領域となる結晶性ケイ素膜3b,32bの領域は、ニッケル6,35およびリン7,36を導入する際に常にマスクでカバーされていることになり、露出することはない。その結果、上記活性領域に対するプロセス起因の汚染を最低限に抑えることができるのである。すなわち、ニッケル6,35およびリン7,36の導入の際に活性領域となる結晶性ケイ素膜3b,32bの領域を常にマスクでカバーする点と、ニッケル6,35およびリン7,36の導入を同じマスク膜を用いて行う点の2点によって、良品率の向上と低コスト化を図ることができるのである。
【0113】
さて、次に、上記ニッケル6,35およびリン7,36を選択的に導入する際のパターン(マスク)形状について述べる。先ず、ニッケル6,35をa−Si膜3,32に選択的に導入する工程においては、ライン&スペース形状のマスクを用い、ライン状にニッケル6,35を導入することが望ましい。このニッケル6,35の導入領域の形状は、横結晶成長領域すなわち半導体装置の活性領域の結晶性に大きく影響を与える。もし、ドット(点)状にニッケルを導入すると、導入面積を小さくして微量導入する観点からのメリットは大きいが、図7(b)に示すように、結晶の成長方向がその導入点51から矢印(E)で示すように四方八方に発散することになる。したがって、横方向結晶成長領域を構成する各柱状結晶成分の方向がばらばらとなり、曲がりや分岐なども多くなって、転位等の結晶欠陥が増加する。尚、52は、ニッケルの非導入領域(横方向結晶成長領域)である。これに対して、ライン状にニッケルを導入した場合には、図7(a)に示すように、結晶の成長方向は四方八方へ発散することがなく、導入領域61から矢印(F)で示すように一方向に一次元的に結晶成長が行われる。その結果、横方向結晶成長領域における各柱状結晶は成長方向に沿って並び、曲がりや分岐なども少なくなり、良好な結晶性が得られるのである。尚、図中、62はニッケルの非導入領域(横成長領域)、63は横結晶成長がぶつかり合った成長境界部である。
【0114】
上述のように、上記ニッケルのトータル的な導入量は、図7(a)における導入領域61のライン幅aによって制御され、この値が重要なパラメーターとなる。ライン幅aが大きい場合には、ニッケルの導入量が過剰になるだけではなく、横方向への結晶成長に寄与しないニッケルの残留が多くなる。導入領域61は、後にマスク膜をリン導入用のマスクとして再形成する際やマスク膜の除去工程において、マスク膜のエッチャントに常に曝される。このエッチャントとしては、通常フッ化水素(HF)酸(フッ酸)を使用するのであるが、このフッ酸は上記触媒元素の代表であるニッケル等のシリサイドを同時にエッチングする。したがって、ニッケルの導入領域61に横方向結晶成長に使用されないニッケルの残留量が非常に多い場合には、上記エッチング工程によって導入領域61に穴開きが生じ、最悪の場合には結晶性ケイ素膜の剥離が生ずる場合もある。
【0115】
図8に、上記導入領域61のライン幅aが、フッ酸によるエッチング穴の発生密度や結晶性長距離に及ぼす影響を示す。図8(a)は、ニッケルの導入領域61をフッ酸に曝した際に起こるエッチング穴の発生密度と、導入領域61のライン幅aとの関係を示す。導入領域61の穴開きの数は定量評価ができないが、ニッケルシリサイドの大きな塊がどの程度多量に存在しているかの目安とはなる。図8(a)から分るように、ライン幅aが15μm以下の場合には際立ったエッチングダメージは受けていない。したがって、導入領域61のニッケルが効率的に横方向結晶成長に使われて、導入領域61に残留しているニッケルは少ないことが分る。実際の工程においても、同様のエッチングダメージを受けることから、ライン幅aの値としては15μm以下であることが好ましい。また、図8(b)には、横方向への結晶成長距離と導入領域61のライン幅aとの関係を示す。ライン幅aが2μm以下になると結晶成長距離が急激に低下する。これは、単純に結晶成長に必要なニッケル量が不足しているためである。一方、ニッケル導入量そのものを大幅に増やすと、狭いライン幅aでもエッチングダメージが生じてしまうために、ライン幅aとしての下限は2μmである。したがって、両者を併せて、ライン状にニッケルを導入する際のライン幅(ニッケルのa−Siへの導入幅)aは、2μm以上且つ15μm以下の範囲内であることが望ましい。
【0116】
次に、上記リン7,36を選択的に導入する際のパターン(マスク4’,33’)の形状について述べる。図7(a)に示すように、少なくとも最終的に形成される半導体装置の活性(素子)領域71上を覆い、当該活性領域71を取り囲むように当該活性領域71の周辺に導入することが最も望ましい。ここで、領域72がマスクされる領域であり、それ以外の領域73はリンが導入される領域である。すなわち、図7(a)から分るように、リンを導入する際のマスクは、活性領域71を一回り大きく覆うような島状に形成するのである。尚、リンが導入される領域としては、活性領域71以外の領域にできるだけ広く導入することがゲッタリング効果を考えると良い。ところが、活性領域71と少しでも重なる領域ががある場合には、半導体装置の特性を大きく変動させて不良となる。そういった意味で、マスクと活性領域71との間にはある一定の距離bが必要であり、活性領域71と同じ大きさでは意味がない。また、上述のように活性領域71を取り囲むようにリンの導入を行なうことによって、活性領域71中のニッケルは、矢印(G)で示すように、周囲の全方向に向かってニッケルを移動させることができるため、非常に効率的に活性領域71内のニッケルを外部に移動させることができ、優れたゲッタリング効果を得ることができるのである。
【0117】
これに対して、上記従来の特開平10‐247735号公報,特開平11‐40500号公報においては、ニッケル導入領域にそのままリンを導入するため、結晶成長方向と全く逆方向に一次元的な一方向への移動しかしないため、上記各実施の形態に比べてゲッタリング効果が大きく低下するのである。また、特開平11‐40816号公報においては、活性領域外にリンを導入するためゲッタリング効果は上記各実施の形態の場合と同等ではあるが、リン導入用のマスクを用いてニッケルも導入するためにニッケルの濃度が高く、十分なゲッタリング効果が得られない。しかも、内側に二次元的に成長するために結晶性も悪く、活性領域内に横方向に成長した結晶性ケイ素膜同士がぶつかり合った境界が形成され、さらには同じマスクを用いて活性領域をパターンニングするために、どうしても活性領域端部にリンおよびニッケルが残り、安定した特性の高性能な半導体装置を得ることは到底望めないのである。
【0118】
ところで、上記第1実施の形態においては、上記ニッケル6によって結晶化された結晶性ケイ素膜3bの結晶性をより向上し、半導体装置の性能(特に電流駆動能力)をより向上させるために、リン7が導入された領域外の横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜3bを用いて半導体装置の活性領域9をパターンニングした後、上記活性領域9の結晶性ケイ素膜にレーザ光8を照射する工程を追加している。また、第2実施の形態においては、活性領域37n,37pの結晶性ケイ素膜を結晶化温度よりも更に高温の酸化雰囲気中において熱処理を行う工程を追加している。
【0119】
上記第1実施の形態のごとく、上記活性領域9の結晶性ケイ素膜にレーザ光8等の強光を照射した場合には、上記結晶性ケイ素膜と非晶質ケイ素膜との融点の相違から、結晶粒界部や微小な残留非晶質領域(未結晶化領域)が集中的に処理されることになる。通常の固相成長法で形成した結晶性ケイ素膜は、結晶構造が双晶状態であるために強光照射後も結晶粒内部は双晶欠陥として残る。それに比べて、第1実施の形態のごとく触媒元素を導入して結晶化した結晶性ケイ素膜は、柱状結晶で形成されており、その内部は単結晶状態である。そのために、強光の照射によって結晶粒界部が処理されると、基板全面に亘って単結晶状態に近い良質の結晶性ケイ素膜が得られ、結晶性の観点から、その有効性は非常に高い。また、元々結晶性を有するケイ素膜に対してレーザ照射を行うのであるから、非晶質ケイ素膜に直接レーザ照射して結晶化する方法とは異なり、レーザ照射のばらつきが大きく緩和されて均一性上の問題も生じない。
【0120】
また、上記第2実施の形態のごとく、上記加熱処理によって横方向への結晶成長を行った後、上記加熱処理温度より更に高温で酸化雰囲気中にて熱処理を行なう場合には、ニッケル35によって結晶化された結晶性ケイ素膜37n,37pに対して結晶化温度よりもさらに高温(800℃〜1100℃)で酸化処理を行う。そうすると、酸化作用によって生じる過飽和Si原子が結晶性ケイ素膜中へ供給されることになる。そして、この過飽和Si原子が、結晶性ケイ素膜37n,37p中の結晶欠陥(特に不対結合手:ダングリングボンド)に入り込んで、欠陥を消滅させるのである。こうして、ニッケル35によって結晶化された結晶性ケイ素膜37n,37p中の欠陥密度が大きく低減されて、移動度が大幅に向上する。その結果、半導体装置の性能が飛躍的に向上するのである。
【0121】
上述のような更に結晶性を向上させる2つの方法においては、実質的に活性領域9,37に対して結晶化やゲッタリングのための加熱処理以上の温度が加わるので、もし活性領域9,37中に上記触媒元素や5族B元素が含まれていると、大きな特性上の問題となって現れることになる。特に問題となるのは上記5族B元素であり、代表的なリンやヒ素等は、半導体中でドナーとして働き、半導体装置の特性に大きく影響を及ぼす。これには、図7(a)におけるリン導入領域73と活性領域71との間の距離bが大きく影響する。
【0122】
図9に、上記5族B元素導入領域とTFT活性領域との間の距離bと、TFTの閾値電圧Vthとの関係を示す。図9から、TFTの閾値電圧Vthは、距離bが1μm以下になると急激にマイナスにシフトする異常が現れるのが分る。その場合、同時にオフ時のリーク電流の増大等の異常も見られる。図9は、上記触媒元素としてニッケル、5族B元素としてリンを用い、活性領域形成後に高温酸化処理を行って結晶性の向上を図ったTFTに関するものであるが、上述のように、レーザ光照射によって結晶性の向上を図ったTFTおいても同様の結果が得られる。単純なリンの拡散を考えると、ゲッタリングのための加熱処理では1μmも拡散することは考えられないが、横方向に結晶成長した結晶粒界を介しての粒界拡散などが起こっているとも考えられる。ともかく、リンが導入された領域外の横方向に結晶成長した結晶性ケイ素膜を用いて半導体装置の活性領域をパターンニングする際には、上記リンが導入された領域と活性領域との間隔bを1μm以上にすることが必要なのである。
【0123】
さて、次に、上記リン7,36を上記結晶性ケイ素膜に選択的に導入する方法としては、イオンドーピング法が望ましい。その他の方法で導入しても効果は得られるが、イオンドーピング法を用いた場合の効果が特に顕著である。この理由は、イオンドーピングによって、リン7,36の導入領域における結晶性ケイ素膜の結晶がある程度破壊され、非晶質化した成分が現れることが原因と考えられる。ニッケル6,35は、その結晶成長過程から考えても結晶性ケイ素膜から非晶質ケイ素膜へと移動する傾向がある。すなわち、非晶質ケイ素膜中の方がエネルギー的に存在し易いのだと考えられる。すなわち、イオンドーピングによって非晶質化した成分が相乗効果を齎し、リン7,36のゲッタリング効果をさらに高めているものと考えられる。
【0124】
上記ニッケル6,35とリン7,36との導入量に関しては、ニッケル6,35の量は少なく、リン7,36の量が多い方が良いのは勿論である。最低限を考えると、十分なゲッタリング効果を得るには、少なくともニッケル6,35に対して10倍以上の濃度でリン7,36が導入される必要がある。面積的にはリン7,36導入領域の方がニッケル6,35導入領域よりも広いためリン7,36の導入量はもっと少なくてもように思われるが、導入領域5,34に存在する高濃度のニッケル6,35をその領域にトラップし、動かないようにするためには、上述のように少なくともニッケル6,35濃度の10倍以上の濃度でのリン7,36を導入する必要である。
【0125】
また、上記各実施の形態においては、上記リン7,36が導入された領域にニッケル6,35を移動させるために加熱処理を行うが、この加熱処理の温度が一つの重要なパラメータとなっている。具体的には、上記熱処理は、500℃〜700℃の範囲内で行われる必要がある。500℃よりも低いとニッケル6,35を十分に移動させることができずゲッタリング効果が得られない。また、700℃よりも高いと、ニッケル6,35のランダムな拡散が起こり、リン7,36の導入領域から外部へもニッケル6,35が移動するようになる。また、700℃よりも高い場合には、少しでも酸素が存在するとニッケル6,35のシリサイドが選択的に酸化され、結晶性ケイ素膜に穴が空いてしまうためである。
【0126】
さて、上記各実施の形態において使用できる触媒元素の種類としては、上述したニッケル(Ni)6,35の他に、コバルト(Co),鉄(Fe),パラジウム(Pd),白金(Pt),銅(Cu),金(Au)を利用することができる。これらの中から選択された一種あるいは複数種類の元素であれば微量で結晶化助長の効果があるが、それらの中でも、特にニッケル6,35を用いた場合に最も顕著な効果を得ることができる。その理由については、次のようなモデルを考えることができる。
【0127】
すなわち、上記触媒元素は単独では作用せず、上記a‐Si膜3,32中のケイ素原子と結合してシリサイド化することによって結晶成長に作用する。つまり、その場合における結晶構造がa‐Si膜3,32の結晶化時に一種の鋳型のように作用し、a‐Si膜3,32の結晶化を促すというモデルである。Niは、2つのSiとNiSi2なるシリサイドを形成する。NiSi2は螢石型の結晶構造を示し、その結晶構造は単結晶ケイ素のダイヤモンド構造と非常に類似したものである。しかも、NiSi2はその格子定数が5.406Åであり、結晶シリコンのダイヤモンド構造での格子定数5.430Åに非常に近い値を有している。したがって、NiSi2は、a‐Si膜3,32を結晶化させるための鋳型としては最高のものであり、上記各実施の形態における触媒元素としては、特にNiを用いるのが最も望ましい。
【0128】
次に、上記各実施の形態において使用できる上記5族B元素の種類としては、上述したリン(P)7,36の他に、窒素(N),ヒ素(As),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi)を利用することができる。これらの中から選択された一種または複数種類の元素であれば上記触媒元素を効率的に移動させることができ、十分なゲッタリング効果を得ることができる。尚、上記ゲッタリングのメカニズムについは、未だ詳しい知見は得られていない。しかしながら、これらの元素の中でも、最も効果が高いのはPであることは分っている。
【0129】
最後に、上記各実施の形態においては、半導体装置の活性領域内に残留する触媒元素量を出来る限り低減し、高性能で高信頼性、高安定性の半導体装置を実現することを目的としている。このためには、最終的に得られる半導体装置の活性(素子)領域における触媒元素の濃度が、1×1016cm3〜2×1017cm3の範囲内であればよい。すなわち、活性領域中の触媒元素濃度を2×1017cm3以下にすることによって、触媒元素が半導体素子特性に及ぼす電気的な悪影響は全く見られなくなる。そして、上記各実施の形態によれば、このような低濃度を実現することは可能である。また、触媒元素を用いて結晶化を行う限り最低限1×1016cm3の濃度の触媒元素は活性領域内に残り、これ以下に低減することは現状考えられるどのような方法をもってしても不可能である。したがって、触媒元素によって結晶化を行った結果として、少なくとも1×1016cm3以上の濃度の触媒元素が活性領域内に残存するのである。
【0130】
以上、この発明を2つの実施の形態によって具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0131】
例えば、上述した2つの実施の形態においては、上記ニッケル6,35を導入する方法として、非晶質ケイ素膜表面に、ニッケル塩を溶かしたエタノール溶液を塗布する方法、または、スパッタリング法によってニッケル薄膜を形成する方法を用いて選択的にニッケルを微量添加している。しかしながら、非晶質ケイ素膜成膜前に、下地膜表面に選択的にニッケルを導入し、非晶質ケイ素膜下層からニッケルを拡散させる方法であってもよい。すなわち、結晶成長は非晶質ケイ素膜の上面側から行ってもよいし、下面側から行ってもよいのである。また、上記ニッケルの導入方法としては、その他に様々な手法を用いることができる。例えば、ニッケル塩を溶かす溶媒として、単純に水を用いてもよいし、SOG(スピン・オン・グラス)材料を溶媒としてSiO2膜から拡散させる方法もある。また、蒸着法やメッキ法により薄膜形成する方法や、イオンドーピング法によって直接導入する方法等も利用できる。さらに、上述したように、結晶化を助長する不純物金属元素としては、ニッケル以外に、コバルト,鉄,パラジウム,白金,銅,金の中から選択された一種または複数種類の元素を用いても同様の効果が得られる。
【0132】
また、上述したように、上記ニッケルをゲッタリングするための5族B元素としては、リン以外に窒素,ヒ素,アンチモン,ビスマスを利用してもよい。また、5族B元素を導入する領域としては、TFT活性領域を囲むような配置で行ったが、触媒元素導入領域よりも少なくとも大きな面積であれば本発明の効果は得られる。
【0133】
また、上記第1実施の形態においては、上記ニッケルによって結晶化された結晶性ケイ素膜の結晶性をさらに助長する手段として、パルスレーザであるエキシマレーザ照射による加熱法を用いた。しかしながら、それ以外のレーザ(例えば連続発振Arレーザ等)でも同様の処理が可能である。また、レーザ光の代わりに赤外光やフラッシュランプを使用して短時間に1000℃〜1200℃(シリコンモニタの温度)まで上昇させて試料を加熱する所謂RTA(ラピッド・サーマル・アニール)(RTP:ラピッド・サーマル・プロセスとも言う)等のレーザ光と同等の強光を用いてもよい。
【0134】
さらに、この発明の応用としては、液晶表示用のアクティブマトリックス型基板以外に、例えば、密着型イメージセンサ,ドライバ内蔵型のサーマルヘッド,有機系EL(エレクトロ・ルミネッセンス)等を発光素子としたドライバ内蔵型の光書き込み素子や表示素子,三次元IC等が考えられる。何れの場合も、この発明を適用することによって、これらの素子の高速,高解像度化等の高性能化が実現できる。更にこの発明は、上述の実施の形態において説明したMOS(金属酸化膜半導体)型トランジスタに限らず、結晶性半導体を素子材としたバイポーラトランジスタや静電誘導トランジスタを始めとして、幅広く半導体プロセス全般に応用することが可能である。
【0135】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の半導体装置の製造方法は、絶縁表面を有する基板上に形成された非晶質ケイ素膜の一部に結晶化を促進する触媒元素を選択的に導入し、加熱処理を施して上記触媒元素が導入された第1領域からその周辺領域へ向って上記基板と平行に上記非晶質ケイ素膜を結晶化させ、結晶性ケイ素膜における上記第1領域よりも広い領域に5族Bから選ばれた元素(選択元素)を選択的に導入し、加熱処理を行なって上記選択元素が導入された第2領域にこの第2領域以外の第3領域中の上記触媒元素を移動させるので、上記従来の技術のごとく、上記第2領域と第1領域とが同一領域である場合に比して、上記触媒元素の導入量を少なくすると共に、上記選択元素の導入量を多くして、大きなゲッタリング効果を得ることできる。
【0136】
その結果、さらに高温での熱処理を行っても、残存している触媒元素が再凝集してシリサイド状態となって現われることは全く無い。
【0137】
したがって、この発明によれば、リーク電流の異常な増大等のない安定した特性の高性能半導体装置を実現でき、さらに集積度の高い高性能半導体装置を簡便な製造プロセスによって得ることができる。また、その製造工程において良品率を大きく向上でき、商品の低コスト化を図ることができる。特に、液晶表示装置のTFTに適用することによって、アクティブマトリクス基板に要求される画素スイッチングTFTのスイッチング特性の向上と周辺駆動回路部を構成するTFTに要求される高性能化・高集積化とを同時に満足することができる。したがって、同一基板上にアクティブマトリクス部と周辺駆動回路部とが構成されたドライバモノリシック型アクティブマトリクス基板を実現することができ、モジュールのコンパクト化,高性能化,低コスト化を図ることができる。
さらに、上記5族Bから選ばれた元素 ( 選択元素 ) の選択的導入を、上記触媒元素の残存量の多い導入領域 ( 第1領域 ) と、互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部とを含む領域に対しても行うので、上記選択元素によって上記第1領域中および上記境界部の多量の触媒元素をトラップし、さらに周囲の結晶性ケイ素膜中の触媒元素を上記第1領域および境界部に効率よく集めることができる。したがって、上記結晶性ケイ素膜における上記選択元素の非導入領域 ( 上記第3領域 ) の触媒元素濃度をより低減することができる。
【0138】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部を避けて上記活性領域を形成すれば、結晶化後においては上記触媒元素の濃度が高く、上記ゲッタリング後においては結晶性が不安定な領域を避けて上記活性領域を形成できる。したがって、信頼性が高く安定性も高い半導体装置を得ることができる。
【0141】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素の選択的導入を開口部が設けられた絶縁膜をマスクとして行い、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の選択的導入を上記絶縁膜の開口部を更に拡げて成るマスクを用いて行えば、上記選択元素導入用のマクス膜の堆積プロセスを省略して、コストダウンを図ることができる。さらに、後に上記活性領域が形成される領域を、上記触媒元素の導入から上記選択元素の導入に亘って常に上記マスクで覆うことができ。したがって、上記活性領域に対するプロセス起因の汚染を最低限に抑えて、良品率の向上を図ることができる。
【0142】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素を、ライン&スペース形状の開口部を有するマスクを用いて直線状に導入すれば、上記結晶成長の方向を上記直線状に対して略垂直な一方向にできる。したがって、横方向結晶成長領域における各柱状結晶成分が成長方向に沿って並び、曲がりや分岐等の少ない良好な結晶性を得ることができる。
【0143】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素導入用のマスクにおける直線状の開口部の幅を2μm以上且つ15μm以下にすれば、上記非晶質ケイ素膜に結晶成長に十分な触媒元素を導入して十分な結晶性長距離を確保できる。さらに、上記触媒元素の必要以上の導入を防止して、残留触媒元素のシリサイド化物が起因となって後のマスクの再パターニングやエッチングに際して結晶性ケイ素膜に穴開きや剥離が生ずることを防止できる。
【0144】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の選択的導入を、後に上記活性領域となる領域を含む領域上をマスクした状態で上記活性領域の周辺部に対して行えば、少なくとも上記活性領域中の触媒元素を周囲全方向に向かって効率的に移動させることができ、優れたゲッタリング効果を得ることができる。
【0145】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、酸化雰囲気中で加熱処理を行って上記活性領域の表面を酸化すれば、上記酸化作用によって生じた過飽和Si原子を上記活性領域中の結晶欠陥に入り込ませて上記欠陥を消滅させることができる。したがって、上記活性領域中の欠陥密度を大きく低減し、移動度を大幅に向上できる。
【0146】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、上記活性領域に紫外レーザ光等の強光を照射すれば、上記結晶性ケイ素膜と非晶質ケイ素膜との融点の相違から、結晶粒界部や微小な残留非晶質領域(未結晶化領域)が集中的に処理される。したがって、基板全面に亘って単結晶状態に近い良質の結晶性ケイ素膜を得ることができる。
【0147】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記活性領域のパターン形成を、上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域内であって、且つ、上記第3領域の輪郭との間隔が1μm以上になるように行えば、上記活性領域は、上記選択元素が導入される第2領域から1μm以上離れて、上記第2領域に重なることなく形成される。したがって、上記第2領域に導入された選択元素の上記活性領域への悪影響を無くし、得られる半導体装置の上記選択元素に起因する性能低下を防止できる。
【0148】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)の選択的導入をイオンドーピング法によって行えば、上記結晶性ケイ素膜へのイオンドーピングによって、上記結晶性ケイ素膜の結晶がある程度破壊されて非晶質化する。したがって、結晶性ケイ素膜から非晶質ケイ素膜へと移動する傾向が強い触媒元素を、上記第3領域から第2領域へ容易に移動させて、上記第3領域における上記触媒元素濃度の更なる低下を図ることができる。
【0149】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素(選択元素)を選択的に導入する際における当該元素の濃度を、上記導入された触媒元素の濃度の10倍以上とすれば、上記選択元素によって上記第1領域および境界部の高濃度触媒元素を動かないようにトラップできる。したがって、十分なゲッタリング効果を得ることができる。
【0150】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記結晶性ケイ素膜における第2領域に上記触媒元素を移動させる際の加熱処理温度を500℃以上且つ700℃以下にすれば、上記触媒元素を十分に移動させて高いゲッタリング効果を得ることができる。また、上記触媒元素のランダムな拡散を抑制して、上記選択元素の導入領域(第2領域)外への触媒元素の移動を防止できる。さらに、酸素の存在下における触媒元素シリサイド化物の酸化によるケイ素膜の穴開きを防止できる。
【0151】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記触媒元素として、ニッケル,コバルト,鉄,パラジウム,白金,銅及び金から選択された少なくとも一つの元素を用いれば、微量で上記非晶質ケイ素膜の結晶化助長効果を得ることができる。特にニッケル元素を用いた場合には、ニッケル元素が形成するシリサイドNiSi2を上記結晶化の際の最高の鋳型として機能させて、上記非晶質ケイ素膜の結晶化を促すことができる。
【0152】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、上記5族Bから選ばれた元素として、リン,窒素,ヒ素,アンチモンおよびビスマスから選択された少なくとも一つの元素を用いれば、上記触媒元素を効果的に移動させて十分なゲッタリング効果を得ることができる。
【0153】
また、この発明の半導体装置の製造方法は、最終的に得られる上記活性領域における触媒元素の濃度を1×1016cm3以上且つ2×1017cm3以下にすれば、上記触媒元素が半導体装置の特性に及ぼす電気的な悪影響を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の半導体装置の製造方法を適用したTFTの製造工程の概要を示す平面図である。
【図2】図1(e)におけるA‐A’矢視断面に相当する製造工程断面図である。
【図3】図2に続く製造工程断面図である。
【図4】この発明の半導体装置の製造方法を適用したCMOS構造TFTの製造方法を説明するための平面図である。
【図5】図4におけるB‐B’矢視断面に相当する製造工程の断面図である。
【図6】図5に続く製造工程の断面図である。
【図7】結晶成長方向およびゲッタリング方向の説明図である。
【図8】触媒元素導入領域のライン幅がエッチング穴の発生密度および結晶性長距離に及ぼす影響を示す図である。
【図9】5族B元素とTFT活性領域との間の距離がTFT閾値電圧に及ぼす影響を示す図である。
【符号の説明】1…ガラス基板、 2…酸化ケイ素膜(下地膜)、
3,32…a‐Si膜、 3a,32a…結晶性ケイ素膜、
3b,3b’,32b…横方向成長結晶性ケイ素膜、
3c,32d…成長境界部、
3d,32e…リンドープ結晶性ケイ素領域、
4,4’,33,33’…マスク、 5,34…スルーホール領域、
6,35…ニッケル、 7,36…リン、
9,37n,37p…TFT活性領域、 10…ゲート絶縁膜、
11,40n,40p…ゲート電極、
13,14…不純物領域(ソース/ドレイン領域)、
15,41n,41p…チャネル領域、 17,45…層間絶縁膜、
18…ソース電極・配線、 19…画素電極、
20…TFT、 31…石英ガラス基板、
32c…非晶質ケイ素膜領域、
38,39n,39p…酸化ケイ素膜(ゲート絶縁膜)、
42n,43n…N型不純物領域、 42p,43p…P型不純物領域、
46…電極・配線、 47…Nチャネル型TFT、
48…Pチャネル型TFT。
Claims (15)
- 絶縁表面を有する基板上に非晶質ケイ素膜を形成し、この非晶質ケイ素膜の一部に結晶化を促進する触媒元素を選択的に導入する工程と、
加熱処理を施して、上記触媒元素が導入された第1領域からその周辺領域へ向って上記基板と平行に上記非晶質ケイ素膜を結晶化させる工程と、
上記結晶化によって得られた結晶性ケイ素膜における上記第1領域よりも広い領域であって、且つ、互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部と上記第1領域とを含む第2領域に、5族Bから選ばれた元素を選択的に導入する工程と、
加熱処理を行なって、上記5族Bから選ばれた元素が導入された上記第2領域に、この第2領域以外の第3領域中の上記触媒元素を移動させる工程と、
上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて半導体装置の活性領域を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域を形成するに際して、互いに隣接する上記第1領域から成長した結晶性ケイ素膜の境界部を避けて形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
上記触媒元素の非晶質ケイ素膜への選択的導入は、上記非晶質ケイ素膜上に設けられると共に、開口部を有する絶縁膜をマスクとして行われ、
上記5族Bから選ばれた元素の結晶性ケイ素膜への選択的導入は、上記絶縁膜の開口部を更に拡げて成るマスクを用いて行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
上記触媒元素の非晶質ケイ素膜への選択的導入は、上記非晶質ケイ素膜上に設けられると共に、平行に配列された直線状の開口部を有するマスクを用い、直線状に上記触媒元素を導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
上記マスクにおける直線状の開口部の幅は、2μm以上且つ15μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記5族Bから選ばれた元素の結晶性ケイ素膜への選択的導入は、後に上記活性領域となる領域を含む領域上をマスクした状態で、上記活性領域の周辺部に対して行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、
酸化雰囲気中で加熱処理を行い、上記活性領域における結晶性ケイ素膜の表面を酸化することによって、当該結晶性ケイ素膜の結晶性をさらに向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記結晶性ケイ素膜における上記第3領域を用いて上記活性領域をパターン形成した後、
上記活性領域における結晶性ケイ素膜に強光を照射することによって、当該結晶性ケイ素膜の結晶性をさらに向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項7または請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
上記活性領域のパターン形成は、上記結晶性ケイ素膜における第3領域内であって、且つ、上記第3領域の輪郭との間隔が1μm以上になるように行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項3および請求項6の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記5族Bから選ばれた元素の結晶性ケイ素膜への選択的導入は、イオンドーピング法によって行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項10の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記5族Bから選ばれた元素を結晶性ケイ素膜へ選択的に導入する際における当該元素の濃度は、上記導入された触媒元素の濃度の10倍以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項11の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記結晶性ケイ素膜における第2領域に上記触媒元素を移動させる際の加熱処理温度は、500℃以上且つ700℃以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項12の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記触媒元素として、ニッケル,コバルト,鉄,パラジウム,白金,銅および金から選択された少なくとも一つの元素を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項13の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記5族Bから選ばれた元素として、リン,窒素,ヒ素,アンチモンおよびビスマスから選択された少なくとも一つの元素を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1乃至請求項14の何れか一つに記載の半導体装置の製造方法において、
最終的に得られた上記活性領域における触媒元素の濃度は、1×1016cm3以上且つ2×1017cm3以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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