JP3546565B2 - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下「エンジン」という)に発生する失火を回転速度低下量から検出する内燃機関の失火検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジン運転中に失火が発生すると、エンジン回転速度が低下することから、特開平3−275962号公報に示すように、爆発行程毎に所定クランク角度幅の失火判定区間を設定し、この失火判定区間内にクランク角センサから一定クランク角毎に出力されるクランク角信号のパルス間隔から失火判定区間の時間を積算し、それを前回の失火判定区間の時間と比較することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算し、回転速度低下量(時間の変動量)が失火判定値を越えたときに失火と判定するようにしている。従来の一般的な失火検出装置は、ある特定の決った失火判定区間(例えば4気筒エンジンではATDC145℃A〜235℃Aの90℃A間又はATDC175℃A〜295℃Aの120℃A間)を設定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5に示すように、低回転域と高回転域では、失火発生後のエンジン回転速度の低下具合が異なり、エンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が高回転域ほど後側にずれる傾向があり、また、最下点からのエンジン回転速度の戻り具合も高回転域ほど遅くなる傾向がある。従って、従来のように失火判定区間の位置(クランク角)を固定したのでは、回転域によって最下点の位置が失火判定区間から外れてしまったり、失火判定区間の境界付近にずれてしまうことがあり、これが回転速度低下量の検出精度を低下させて失火検出精度を低下させる原因となっている。
【0004】
ところで、失火判定区間のクランク角度幅を大きくすると、失火判定区間内に最下点が収まる回転域を拡大できるが、回転速度低下量は失火判定区間内の回転速度低下量の平均値として求められるため、失火判定区間が必要以上に大きくなると、相対的に回転速度低下量が少なく検出されてしまい、失火検出精度が低下してしまう(但し、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくするために失火判定区間の角度幅をある程度大きくする必要がある)。従って、理想的には、失火判定区間の中間付近に最下点が位置し、失火判定区間の角度幅を、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくしながら時間測定精度が低下しない範囲内で狭くすることが好ましいが、従来構成のものは、低回転域に合わせた設定(図5の従来技術1)又は高回転域に合わせた設定(図5の従来技術2)のいずれか一方に限定されてしまい、低回転域と高回転域のいずれか一方で失火検出精度が低下してしまう欠点があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、全回転域にわたって高い失火検出精度を確保することができる内燃機関の失火検出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の失火検出装置は、失火判定区間の位置(クランク角)を機関回転速度に応じて変化させるものにおいて、低回転域では高回転域と比較して、前記失火判定区間の位置を前側にずらことを特徴とするものである。これにより、低回転域と高回転域のいずれに対しても失火判定区間の位置が適切なものとなり、全回転域にわたって高い失火検出精度を確保することができる。
【0007】
更に、請求項2では、失火判定区間の角度幅も機関回転速度に応じて変化させる。つまり、図4及び図5に示すように、低回転域では、高回転域と比較して失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が速い。従って、低回転域では、失火判定区間の角度幅をある程度狭くした方が最下点付近で回転速度低下量を精度良く検出できる。
【0008】
これに対し、高回転域では、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって、最下点付近がほぼフラットになるため、失火判定区間の角度幅をある程度大きくしても、回転速度低下量を精度良く検出できる。更に、高回転域では、クランク角信号のパルス間隔(時間)も短くなるため、失火判定区間の角度幅を大きくした方が時間測定精度の点で有利であるばかりか、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくなる。請求項2は、このような回転域に応じた回転変動特性を考慮して失火判定区間をその位置と共に角度幅も回転域によって変化させるものである。
【0009】
最も好ましい本発明の態様は、請求項3のように、機関回転速度が所定値以上のときに、失火判定区間の位置を所定クランク角遅らせると共に該失火判定区間の角度幅を長くする構成である。この構成により、低回転域と高回転域のいずれに対しても失火判定区間の位置と角度幅の双方が最良のものとなり、全回転域にわたって失火検出精度を更に向上することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12には、スロットルバルブ13と吸気管圧力センサ14が設けられ、また、エンジン11の各気筒毎に燃料噴射弁15が設けられている。エンジン11には、イグナイタ16で発生した高電圧を各気筒の点火プラグ(図示せず)に順次分配するディストリビュータ17が取り付けられ、このディストリビュータ17には、エンジン11のクランク軸2回転に1回の割合でパルス信号を発生する気筒判別センサ18と、所定のクランク角(本実施形態では30℃A)回転する毎にパルス状のクランク角信号を出力するクランク角信号出力手段であるクランク角センサ19が設けられている。更に、エンジン11のウォータジャケット20には、エンジン冷却水温を検出する水温センサ21が取り付けられている。
【0011】
これら各センサからの検出信号は、エンジン制御回路22に入力される。このエンジン制御回路22は、CPU23,ROM24,RAM25,バックアップRAM26,入出力ポート27等を内蔵したマイクロコンピュータにより構成されている。このエンジン制御回路22は、ROM24に記憶された各種のエンジン制御プログラムに従って燃料噴射量や点火時期を演算してエンジン11の運転を制御すると共に、ROM24に記憶されている図3に示す失火判定プログラムに従って各気筒の失火の有無を判定し、失火検出時には警告ランプ28を点灯させて運転者に警告する。
【0012】
次に、図4(4気筒エンジンの例)に基づいて失火判定方式を説明する。本実施形態では、例えば5000rpmで低回転域と高回転域に分け、低回転域では失火判定区間をATDC145℃Aから開始し、その失火判定区間の角度幅を90℃Aとしている。一方、高回転域では、低回転域と比較して、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が後側にずれると共に、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって最下点付近がほぼフラットになるため、失火判定区間を低回転域より30℃A遅らせてATDC175℃Aから開始すると共に、その失火判定区間の角度幅を低回転域より30℃A拡大して120℃Aとしている。
【0013】
そして、エンジン運転中は、失火判定区間内に出力されるクランク角信号のパルス間隔から失火判定区間の時間TMF0を積算し、それを前回(4気筒エンジンでは180℃A前)の失火判定区間の時間TMF1と比較して両者の差DMFを算出することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算し、その回転速度低下量(時間変動量DMF)が失火判定値MFREFを越えたときに失火と判定するようになっている。
【0014】
この失火判定処理は、以下に説明する図2及び図3のプログラムに従って実行される。図2に示すT30割込みルーチンは、クランク角信号の立ち下がり入力毎に割込み処理にて実行される。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、前回のクランク角信号の立ち下がりから次のクランク角信号の立ち下がりまでの時間T30、つまりクランク軸が30℃A回転するのに要した時間(以下「30℃A時間」という)を算出する。
【0015】
そして、続くステップ102〜107の処理で、過去150℃A前からの30℃A時間データT305〜T300を順次更新する。ここで、T300は今回の30℃A時間であり、T301は前回(30℃A前)の30℃A時間であり、T302は前々回(60℃A前)の30℃A時間であり、T303は90℃A前の30℃A時間であり、T304は120℃A前の30℃A時間であり、T305は150℃A前の30℃A時間である。尚、T30□の□内の数字は図4のクランクNo.に対応している。
【0016】
一方、図3に示す失火検出ルーチンは、図4に示すクランクNo.0のクランク角信号の立ち下がり入力毎に割込み処理にて実行される。本ルーチンが起動されると、まずステップ201で、エンジン回転速度NEを読み込み、続くステップ202で、エンジン回転速度NEが5000rpmより低いか否か、つまり低回転域か高回転域かを判別する。もし、低回転域(NE<5000rpm)であれば、ステップ203に進み、低回転域での失火判定区間の時間TMF0を次式により算出する。
【0017】
TMF0=T304+T303+T302
ここで、低回転域での失火判定区間は、ATDC145℃Aから始まってATDC235℃Aで終了する角度幅90℃Aの区間であり、この区間内に図2のT30割込みルーチンで求められた30℃A時間であるT304,T303,T302を合算して、低回転域での失火判定区間の時間TMF0を算出するものである。
【0018】
また、上記ステップ202で、高回転域(NE≧5000rpm)と判定されれば、ステップ204に進み、高回転域での失火判定区間の時間TMF0を次式により算出する。
TMF0=T303+T302+T301+T300
ここで、高回転域での失火判定区間は、ATDC175℃Aから始まってATDC295℃Aで終了する角度幅120℃Aの区間であり、この区間内の30℃A時間であるT303,T302,T301,T300を合算して高回転域での失火判定区間の時間TMF0を算出するものである。
【0019】
以上のようにして回転領域に応じて失火判定区間の時間TMF0を算出した後、ステップ205に進み、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回(4気筒エンジンでは180℃A前)の失火判定区間の時間TMF1と比較して両者の差DMFを算出することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算する。これらステップ202〜205の処理が特許請求の範囲でいう回転速度変動量演算手段として機能する。
【0020】
この後、ステップ206で、時間変化量DMF(回転速度低下量)を失火判定値MFREFと比較し、DMF>MFREFであれば、失火と判定する。この際、失火判定値MFREFは、エンジン回転速度NEとエンジン負荷をパラメータとする二次元マップよりエンジン回転速度NEとエンジン負荷を基に算出する。もし、失火(DMF>MFREF)と判定されれば、ステップ207に進み、警告ランプ28を点灯させて運転者に警告すると共に、続くステップ208で、その失火の情報をバックアップRAM26に記憶した後、ステップ209で、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回の失火判定区間の時間TMF1として記憶し、次回の失火判定に用いる。尚、上記ステップ206で、失火と判定されない場合(DMF≦MFREF)には、直ちにステップ209へ移行し、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回の失火判定区間の時間TMF1として記憶し、本ルーチンを終了する。上記ステップ206の処理が特許請求の範囲でいう失火判定手段として機能する。
【0021】
以上説明した実施形態によれば、低回転域と高回転域との間で失火判定区間の位置と角度幅の双方を変化させる。つまり、図4及び図5に示すように、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が高回転域ほど後側にずれると共に、最下点からのエンジン回転速度の戻り具合も高回転域ほど遅くなる傾向がある。換言すれば、低回転域では、高回転域と比較して失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が速い。従って、低回転域では、高回転域と比較して、失火判定区間の位置を前側にずらし、失火判定区間の角度幅をある程度狭くすることで、最下点付近で回転速度低下量を精度良く検出できる。
【0022】
これに対し、高回転域では、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が後側にずれ、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって、最下点付近がほぼフラットになるため、高回転域では、失火判定区間の位置を後側にずらし、失火判定区間の角度幅をある程度大きくすることで、回転速度低下量を精度良く検出できる。更に、高回転域では、クランク角信号のパルス間隔(時間)も短くなるため、失火判定区間の角度幅を大きくした方が時間測定精度の点で有利であると共に、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくなる。
【0023】
本実施形態は、このような回転域に応じた回転変動特性を考慮して失火判定区間の位置と角度幅の双方を変化させることで、全回転域にわたって回転変動検出精度を向上させて失火検出精度を向上させるものであるが、失火判定区間の角度幅を変えずに失火判定区間の位置のみをエンジン回転速度に応じて変化させるようにしても良く、この場合でも本発明の所期の目的は達成できる。
【0024】
また、本実施形態では、高回転域と低回転域との境界を5000rpmに設定したが、例えば5500rpm、4500rpm、4000rpm、3500rpm、…のいずれかであっても良い。また、回転域を3領域以上に区分して各領域毎に失火判定区間の位置と角度幅(位置のみでも良い)を変化させるようにしても良い。
【0025】
また、図3のステップ205では、今回算出した失火判定区間の時間TMF0と前回の失火判定区間の時間TMF1との差DMFを算出して回転速度変動量を推定するようにしたが、次式により今回の失火判定区間の角速度K/TMF0と前回の失火判定区間の角速度K/TMF1との差DMFを算出して回転速度変動量を推定するようにしても良い。
DMF=K/TMF1−K/TMF0 (K:定数)
さらに、特開昭61−11440号公報や特開昭57−106834号公報等に記載されている回転変動量の算出方法を用いても良い。
【0026】
尚、本実施形態では、クランク角信号を30℃A毎に発生するようにしたが、これに限定されず、例えば15℃A毎に発生するようにしても良い。また、エンジンの気筒数も4気筒に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すシステム全体の概略構成図
【図2】T30割込みルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図3】失火検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図4】エンジン回転域と失火判定区間の位置・角度幅との関係を説明するタイムチャート
【図5】従来のエンジン回転域と失火判定区間の位置・角度幅との関係を説明するタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、14…吸気管圧力センサ、18…気筒判別センサ、19…クランク角センサ(クランク角信号出力手段)、22…エンジン制御回路(回転速度変動量演算手段,失火判定手段)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下「エンジン」という)に発生する失火を回転速度低下量から検出する内燃機関の失火検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジン運転中に失火が発生すると、エンジン回転速度が低下することから、特開平3−275962号公報に示すように、爆発行程毎に所定クランク角度幅の失火判定区間を設定し、この失火判定区間内にクランク角センサから一定クランク角毎に出力されるクランク角信号のパルス間隔から失火判定区間の時間を積算し、それを前回の失火判定区間の時間と比較することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算し、回転速度低下量(時間の変動量)が失火判定値を越えたときに失火と判定するようにしている。従来の一般的な失火検出装置は、ある特定の決った失火判定区間(例えば4気筒エンジンではATDC145℃A〜235℃Aの90℃A間又はATDC175℃A〜295℃Aの120℃A間)を設定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図5に示すように、低回転域と高回転域では、失火発生後のエンジン回転速度の低下具合が異なり、エンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が高回転域ほど後側にずれる傾向があり、また、最下点からのエンジン回転速度の戻り具合も高回転域ほど遅くなる傾向がある。従って、従来のように失火判定区間の位置(クランク角)を固定したのでは、回転域によって最下点の位置が失火判定区間から外れてしまったり、失火判定区間の境界付近にずれてしまうことがあり、これが回転速度低下量の検出精度を低下させて失火検出精度を低下させる原因となっている。
【0004】
ところで、失火判定区間のクランク角度幅を大きくすると、失火判定区間内に最下点が収まる回転域を拡大できるが、回転速度低下量は失火判定区間内の回転速度低下量の平均値として求められるため、失火判定区間が必要以上に大きくなると、相対的に回転速度低下量が少なく検出されてしまい、失火検出精度が低下してしまう(但し、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくするために失火判定区間の角度幅をある程度大きくする必要がある)。従って、理想的には、失火判定区間の中間付近に最下点が位置し、失火判定区間の角度幅を、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくしながら時間測定精度が低下しない範囲内で狭くすることが好ましいが、従来構成のものは、低回転域に合わせた設定(図5の従来技術1)又は高回転域に合わせた設定(図5の従来技術2)のいずれか一方に限定されてしまい、低回転域と高回転域のいずれか一方で失火検出精度が低下してしまう欠点があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、全回転域にわたって高い失火検出精度を確保することができる内燃機関の失火検出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の失火検出装置は、失火判定区間の位置(クランク角)を機関回転速度に応じて変化させるものにおいて、低回転域では高回転域と比較して、前記失火判定区間の位置を前側にずらことを特徴とするものである。これにより、低回転域と高回転域のいずれに対しても失火判定区間の位置が適切なものとなり、全回転域にわたって高い失火検出精度を確保することができる。
【0007】
更に、請求項2では、失火判定区間の角度幅も機関回転速度に応じて変化させる。つまり、図4及び図5に示すように、低回転域では、高回転域と比較して失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が速い。従って、低回転域では、失火判定区間の角度幅をある程度狭くした方が最下点付近で回転速度低下量を精度良く検出できる。
【0008】
これに対し、高回転域では、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって、最下点付近がほぼフラットになるため、失火判定区間の角度幅をある程度大きくしても、回転速度低下量を精度良く検出できる。更に、高回転域では、クランク角信号のパルス間隔(時間)も短くなるため、失火判定区間の角度幅を大きくした方が時間測定精度の点で有利であるばかりか、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくなる。請求項2は、このような回転域に応じた回転変動特性を考慮して失火判定区間をその位置と共に角度幅も回転域によって変化させるものである。
【0009】
最も好ましい本発明の態様は、請求項3のように、機関回転速度が所定値以上のときに、失火判定区間の位置を所定クランク角遅らせると共に該失火判定区間の角度幅を長くする構成である。この構成により、低回転域と高回転域のいずれに対しても失火判定区間の位置と角度幅の双方が最良のものとなり、全回転域にわたって失火検出精度を更に向上することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12には、スロットルバルブ13と吸気管圧力センサ14が設けられ、また、エンジン11の各気筒毎に燃料噴射弁15が設けられている。エンジン11には、イグナイタ16で発生した高電圧を各気筒の点火プラグ(図示せず)に順次分配するディストリビュータ17が取り付けられ、このディストリビュータ17には、エンジン11のクランク軸2回転に1回の割合でパルス信号を発生する気筒判別センサ18と、所定のクランク角(本実施形態では30℃A)回転する毎にパルス状のクランク角信号を出力するクランク角信号出力手段であるクランク角センサ19が設けられている。更に、エンジン11のウォータジャケット20には、エンジン冷却水温を検出する水温センサ21が取り付けられている。
【0011】
これら各センサからの検出信号は、エンジン制御回路22に入力される。このエンジン制御回路22は、CPU23,ROM24,RAM25,バックアップRAM26,入出力ポート27等を内蔵したマイクロコンピュータにより構成されている。このエンジン制御回路22は、ROM24に記憶された各種のエンジン制御プログラムに従って燃料噴射量や点火時期を演算してエンジン11の運転を制御すると共に、ROM24に記憶されている図3に示す失火判定プログラムに従って各気筒の失火の有無を判定し、失火検出時には警告ランプ28を点灯させて運転者に警告する。
【0012】
次に、図4(4気筒エンジンの例)に基づいて失火判定方式を説明する。本実施形態では、例えば5000rpmで低回転域と高回転域に分け、低回転域では失火判定区間をATDC145℃Aから開始し、その失火判定区間の角度幅を90℃Aとしている。一方、高回転域では、低回転域と比較して、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が後側にずれると共に、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって最下点付近がほぼフラットになるため、失火判定区間を低回転域より30℃A遅らせてATDC175℃Aから開始すると共に、その失火判定区間の角度幅を低回転域より30℃A拡大して120℃Aとしている。
【0013】
そして、エンジン運転中は、失火判定区間内に出力されるクランク角信号のパルス間隔から失火判定区間の時間TMF0を積算し、それを前回(4気筒エンジンでは180℃A前)の失火判定区間の時間TMF1と比較して両者の差DMFを算出することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算し、その回転速度低下量(時間変動量DMF)が失火判定値MFREFを越えたときに失火と判定するようになっている。
【0014】
この失火判定処理は、以下に説明する図2及び図3のプログラムに従って実行される。図2に示すT30割込みルーチンは、クランク角信号の立ち下がり入力毎に割込み処理にて実行される。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、前回のクランク角信号の立ち下がりから次のクランク角信号の立ち下がりまでの時間T30、つまりクランク軸が30℃A回転するのに要した時間(以下「30℃A時間」という)を算出する。
【0015】
そして、続くステップ102〜107の処理で、過去150℃A前からの30℃A時間データT305〜T300を順次更新する。ここで、T300は今回の30℃A時間であり、T301は前回(30℃A前)の30℃A時間であり、T302は前々回(60℃A前)の30℃A時間であり、T303は90℃A前の30℃A時間であり、T304は120℃A前の30℃A時間であり、T305は150℃A前の30℃A時間である。尚、T30□の□内の数字は図4のクランクNo.に対応している。
【0016】
一方、図3に示す失火検出ルーチンは、図4に示すクランクNo.0のクランク角信号の立ち下がり入力毎に割込み処理にて実行される。本ルーチンが起動されると、まずステップ201で、エンジン回転速度NEを読み込み、続くステップ202で、エンジン回転速度NEが5000rpmより低いか否か、つまり低回転域か高回転域かを判別する。もし、低回転域(NE<5000rpm)であれば、ステップ203に進み、低回転域での失火判定区間の時間TMF0を次式により算出する。
【0017】
TMF0=T304+T303+T302
ここで、低回転域での失火判定区間は、ATDC145℃Aから始まってATDC235℃Aで終了する角度幅90℃Aの区間であり、この区間内に図2のT30割込みルーチンで求められた30℃A時間であるT304,T303,T302を合算して、低回転域での失火判定区間の時間TMF0を算出するものである。
【0018】
また、上記ステップ202で、高回転域(NE≧5000rpm)と判定されれば、ステップ204に進み、高回転域での失火判定区間の時間TMF0を次式により算出する。
TMF0=T303+T302+T301+T300
ここで、高回転域での失火判定区間は、ATDC175℃Aから始まってATDC295℃Aで終了する角度幅120℃Aの区間であり、この区間内の30℃A時間であるT303,T302,T301,T300を合算して高回転域での失火判定区間の時間TMF0を算出するものである。
【0019】
以上のようにして回転領域に応じて失火判定区間の時間TMF0を算出した後、ステップ205に進み、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回(4気筒エンジンでは180℃A前)の失火判定区間の時間TMF1と比較して両者の差DMFを算出することで、失火判定区間の時間の変動量即ち回転速度変動量を演算する。これらステップ202〜205の処理が特許請求の範囲でいう回転速度変動量演算手段として機能する。
【0020】
この後、ステップ206で、時間変化量DMF(回転速度低下量)を失火判定値MFREFと比較し、DMF>MFREFであれば、失火と判定する。この際、失火判定値MFREFは、エンジン回転速度NEとエンジン負荷をパラメータとする二次元マップよりエンジン回転速度NEとエンジン負荷を基に算出する。もし、失火(DMF>MFREF)と判定されれば、ステップ207に進み、警告ランプ28を点灯させて運転者に警告すると共に、続くステップ208で、その失火の情報をバックアップRAM26に記憶した後、ステップ209で、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回の失火判定区間の時間TMF1として記憶し、次回の失火判定に用いる。尚、上記ステップ206で、失火と判定されない場合(DMF≦MFREF)には、直ちにステップ209へ移行し、今回算出した失火判定区間の時間TMF0を前回の失火判定区間の時間TMF1として記憶し、本ルーチンを終了する。上記ステップ206の処理が特許請求の範囲でいう失火判定手段として機能する。
【0021】
以上説明した実施形態によれば、低回転域と高回転域との間で失火判定区間の位置と角度幅の双方を変化させる。つまり、図4及び図5に示すように、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が高回転域ほど後側にずれると共に、最下点からのエンジン回転速度の戻り具合も高回転域ほど遅くなる傾向がある。換言すれば、低回転域では、高回転域と比較して失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が速い。従って、低回転域では、高回転域と比較して、失火判定区間の位置を前側にずらし、失火判定区間の角度幅をある程度狭くすることで、最下点付近で回転速度低下量を精度良く検出できる。
【0022】
これに対し、高回転域では、失火発生後のエンジン回転速度低下の最下点の位置(クランク角)が後側にずれ、失火発生後のクランク角に対するエンジン回転速度の下降・上昇が遅くなって、最下点付近がほぼフラットになるため、高回転域では、失火判定区間の位置を後側にずらし、失火判定区間の角度幅をある程度大きくすることで、回転速度低下量を精度良く検出できる。更に、高回転域では、クランク角信号のパルス間隔(時間)も短くなるため、失火判定区間の角度幅を大きくした方が時間測定精度の点で有利であると共に、外乱による瞬間的な回転変動の影響を受けにくくなる。
【0023】
本実施形態は、このような回転域に応じた回転変動特性を考慮して失火判定区間の位置と角度幅の双方を変化させることで、全回転域にわたって回転変動検出精度を向上させて失火検出精度を向上させるものであるが、失火判定区間の角度幅を変えずに失火判定区間の位置のみをエンジン回転速度に応じて変化させるようにしても良く、この場合でも本発明の所期の目的は達成できる。
【0024】
また、本実施形態では、高回転域と低回転域との境界を5000rpmに設定したが、例えば5500rpm、4500rpm、4000rpm、3500rpm、…のいずれかであっても良い。また、回転域を3領域以上に区分して各領域毎に失火判定区間の位置と角度幅(位置のみでも良い)を変化させるようにしても良い。
【0025】
また、図3のステップ205では、今回算出した失火判定区間の時間TMF0と前回の失火判定区間の時間TMF1との差DMFを算出して回転速度変動量を推定するようにしたが、次式により今回の失火判定区間の角速度K/TMF0と前回の失火判定区間の角速度K/TMF1との差DMFを算出して回転速度変動量を推定するようにしても良い。
DMF=K/TMF1−K/TMF0 (K:定数)
さらに、特開昭61−11440号公報や特開昭57−106834号公報等に記載されている回転変動量の算出方法を用いても良い。
【0026】
尚、本実施形態では、クランク角信号を30℃A毎に発生するようにしたが、これに限定されず、例えば15℃A毎に発生するようにしても良い。また、エンジンの気筒数も4気筒に限定されないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すシステム全体の概略構成図
【図2】T30割込みルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図3】失火検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図4】エンジン回転域と失火判定区間の位置・角度幅との関係を説明するタイムチャート
【図5】従来のエンジン回転域と失火判定区間の位置・角度幅との関係を説明するタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、14…吸気管圧力センサ、18…気筒判別センサ、19…クランク角センサ(クランク角信号出力手段)、22…エンジン制御回路(回転速度変動量演算手段,失火判定手段)。
Claims (3)
- 内燃機関の回転に伴ってクランク角信号を周期的に出力するクランク角信号出力手段と、
前記クランク角信号に基づいて所定クランク角度幅の失火判定区間の時間を求めて回転速度変動量を演算する回転速度変動量演算手段と、
前記回転速度変動量に基づいて失火の有無を判定する失火判定手段とを備え、
前記回転速度変動量演算手段は、低回転域では高回転域と比較して、前記失火判定区間の位置を前側にずらすことを特徴とする内燃機関の失火検出装置。 - 前記回転速度変動量演算手段は、前記失火判定区間の角度幅も機関回転速度に応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の失火検出装置。
- 前記回転速度変動量演算手段は、機関回転速度が所定値以上のときに、前記失火判定区間の位置を所定クランク角遅らせると共に該失火判定区間の角度幅を長くすることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の失火検出装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
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- 1995-10-16 JP JP26605895A patent/JP3546565B2/ja not_active Expired - Lifetime
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