JP3545228B2 - 電力増幅回路の異常検出回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力増幅回路の入力端子が接地されたとき負荷への接続状態の異常を検出する異常検出回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
特にカー用オーディオ機器分野において、電力増幅回路の出力端子をスピーカに接続する作業中、電力増幅回路の出力端子を誤って電源ラインや接地ラインに接触することがある(以下、天絡及び地絡という)。このような場合、電力増幅回路の出力段トランジスタに過大電流が流れ、出力段トランジスタが破壊されることがあった。そこで、カー用電力増幅回路には、出力段トランジスタを天絡及び地絡から保護する保護回路が内蔵されている。図2はそのような天絡や地絡から出力トランジスタを保護する保護回路を示している。
【0003】
図2において、出力増幅回路は出力トランジスタ1乃至4がBTL接続されて成る。ここで出力端子5が天絡されると、出力端子5の電圧は電源電圧Vccになり、出力トランジスタ2に過大電流が流れる。前記過大電流により出力トランジスタ2のベース−エミッタ間電圧が増大すると、抵抗6及び7の接続中点が高くなるので、トランジスタ8がオンする。ここで出力端子5が電源電圧Vccになっているので、ツェナーダイオード9のカソード及びダイオード10aのカソード間の電位差が電源電圧Vccと略等しい電圧になり、ダイオード9、10a及び10bはオンする。その為、トランジスタ11のベース−エミッタ間電圧はダイオードのオン電圧の2個分となり、検出トランジスタ11がオンする。すると、検出トランジスタ11からコレクタ電流が発生し、コレクタ電流により検出回路12で天絡が検出され、停止信号SSが発生する。停止信号SSによって、バイアス回路13からのバイアス電流が停止され、その結果出力段トランジスタ2が不動作になり、破壊から保護される。
【0004】
また、出力端子5が地絡された場合も、原理的には天絡時と同一の動作を行う。つまり、出力段トランジスタ1に過大電流が流れると、出力段トランジスタ1のベース−エミッタ間電圧が増大し、その結果検出トランジスタ18がオンする。すると、停止信号SSが発生し、バイアスの供給が停止され、出力段トランジスタ1が保護される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図3の如き電力増幅回路において、入力コンデンサーCinから電流が漏れると、無入力信号時電力増幅回路の入力レベルは略0になり、電力増幅回路からは直流のオフセット信号が発生する。スピーカに直流オフセットが供給されると、スピーカは破壊されたり、最悪の場合には発火する恐れがあった。また、自動車に搭載された場合、エアコンから発生する水滴が電力増幅回路の入力端に付いてショートされても、上記の問題が発生する。
【0006】
電力増幅回路の入力端がショートされると、出力段トランジスタに流れる電流は大きくなるが、この電流を図2の回路で検出することはできなかった。つまり、前記入力端がショートされても、電力増幅回路からは通常動作時の最大電流が発生したに過ぎず、図2の保護回路では通常動作と見なされる。また、図2の保護回路の検出レベルを下げれば、電力増幅回路の入力端のショートを検出することが可能になるが、反面通常動作時に電力増幅回路の出力電流が大きくなっただけで、図2の保護動作が誤って作動していた。よって、前記検出レベルを不用意に変更することで、前記入力端のショートを検出することはできなかった。
【0007】
従って、電力増幅回路の入力端がショートされたことを検出するため何らかの対策を講じる必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも入力信号を同一とする2個のBTL増幅器を備える電力増幅回路の異常検出回路であって、一方のBTL増幅器を構成する出力段トランジスタの出力電流と、他方のBTL増幅器を構成する出力段トランジスタの出力電流とを合成し、その電流差を出力する合成回路と、前記電流差を、第1の値及びそれより大きい第2の値と比較し、前記電流差が第1の値より小さくまたは第2の値より大きい場合異常検出信号を発生する比較回路とから成ることを特徴とする。
【0009】
特に、前記合成回路は、一方のBTL増幅器の出力段トランジスタのうち第1及び第2出力段トランジスタに流れる出力電流、及び他方のBTL増幅器の出力段トランジスタのうち第3及び第4出力段トランジスタに流れる出力電流を合成することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記合成回路は、前記第1出力段トランジスタに流れる電流を反転する第1反転回路と、前記第3出力段トランジスタに流れる電流を反転する第2反転回路と、前記第2及び第4出力段トランジスタに流れる電流と、前記第1及び第2反転回路の出力電流を加算する加算手段とから成ることを特徴とする。
【0011】
また、前記合成回路は、一方のBTL出力増幅器の正側の出力段トランジスタと他方のBTL出力増幅器の正側の出力段トランジスタとの出力電流を比較する第1比較手段と、一方のBTL出力増幅器の負側の出力段トランジスタと他方のBTL出力増幅器の負側の出力段トランジスタとの出力電流を比較する第2比較手段と、前記第1及び第2比較手段の出力信号を合成する合成手段とから成ることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記第1及び第2比較手段の各々は、2つの入力電流のうち一方の入力電流を反転する反転手段を有することを特徴とする。
【0013】
またさらに、前記第1乃至第4出力段トランジスタは、すべて電源電圧側の出力段トランジスタであるか、またはすべて接地側の出力段トランジスタであることを特徴とする。
【0014】
さらに、第1乃至第4出力段トランジスタのサイズよりも小さいサイズのトランジスタを設け、このトランジスタで前記第1乃至第4トランジスタに流れる電流を検出することを特徴とする。
【0015】
本発明に依れば、BTL増幅器の出力に直流オフセットが発生すると、BTL増幅器の出力トランジスタに流れる電流の合成電流に差が生じ、この差を検出することで直流オフセットを検出する。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態を示す図であり、101は、負荷Rfに対してBTL接続された出力段トランジスタ102〜105と、出力段トランジスタ102〜105を駆動する駆動回路106及び107から成る第1BTL増幅器、108は、負荷Rrに対してBTL接続された出力段トランジスタ109〜112と、出力段トランジスタ109〜112を駆動する駆動回路113及び114とから成る第2BTL増幅器、115〜118は出力段トランジスタ101、103、109及び110に流れる電流を検出する検出トランジスタ、119及び120は検出トランジスタ115及び117のコレクタ電流を反転する反転手段としての電流ミラー回路、121は電流ミラー回路121a及び121bから成り、前記検出トランジスタの合成信号に重畳される基準電圧Vrefを生成する第1基準電圧発生回路、122は、3つの抵抗r1〜r3の抵抗分割で第1及び第2の基準電圧Vr1及びVr2を生成する第2基準電圧発生回路と、前記合成信号及び基準電圧Vr1を入力とする差動対123と、前記合成信号及び基準電圧Vr2を入力とする差動対124とから成るウインドコンパレータ、125はウインドコンパレータ122の出力に応じて、検出信号を発生する出力回路である。また、図1中の接続点Aでは検出トランジスタ115〜118の出力電流が合成されるので、接続点Aは合成回路の機能を有する。さらに、抵抗Rは検出トランジスタ115〜118の合成信号を抵抗に変換するための抵抗である。
【0017】
図1において2つのBTL出力増幅器101及び108は同一の入力オーディオ信号を増幅するものであって、図1のスピーカRf及びRrは、図5のような車載用4スピーカステレオのうちの、左側または右側のスピーカのうちさらに前後のスピーカを示すものである。
【0018】
まず、図3の如き電力増幅回路において、BTL増幅回路101の入力端がショートされたときの動作を説明する。ショートされると電力増幅回路の出力にオフセットが常に発生するようになる。ショートによりBTL増幅回路101にはあたかも負の過大入力信号が印加されたような状態となり、BTL増幅器101で出力電流が(−)出力端子から負荷を介して(+)出力端子に流れる。よって、BTL増幅器101において出力電流が出力段トランジスタ102、負荷Rf、出力段トランジスタ105の順に流れる。
【0019】
検出トランジスタ115及び116には、出力段トランジスタ102及び104に印加される駆動信号が分岐されて印加されており、その為出力段トランジスタに流れる電流に相当する電流が検出トランジスタから発生する。検出トランジスタのトランジスタサイズは、出力段トランジスタのトランジスタサイズと比べ、所定の割合で小さくなっている。従って、各々の検出トランジスタからは、出力段トランジスタに流れる電流を所定割合で小さくなった電流が発生する。
【0020】
この状態では、出力段トランジスタ102のみに出力電流が流れているので、検出トランジスタ115から検出電流が発生する。検出トランジスタ115の出力電流は抵抗Rに供給され、接続点Aで電圧に変換される。
【0021】
抵抗Rの一端には第1基準電圧発生回路121からの基準電圧Vrefが印加される。基準電圧Vrefは、同一の出力電流を発生する電流ミラー回路121a及び121bを縦列接続することによって、接続点Bに基準電圧Vref(=Vcc/2)を発生させる。抵抗Rにおいて、電流−電圧変換はこの基準電圧Vrefを基準にして行われる。検出トランジスタ115の出力電流が抵抗Rに供給されると、その電圧降下により電圧が発生する。出力電流の値をIaとすると、変換された電圧VaはVa=Vref+Ia×Rとなる。
【0022】
変換電圧Vaは、差動対123及び差動対124の一方のトランジスタに印加され、基準電圧Vr1及びVr2とそれぞれ比較される。基準電圧Vr1及びVr2は電源電圧Vccを抵抗r1〜r3の抵抗分割によって得られ、Vr1>Vr2の関係になる。変換電圧Vaが基準電圧Vr1より高くなると、差動対123のうち変換電圧Vaが印加されるトランジスタがオンし、差動対123の出力電流が出力回路125に供給される。出力回路125では、トランジスタ125a及び125bが順次オンすることにより、出力回路125からHレベル(=Vb)の検出信号が発生する。尚、少なくともVr1は、BTL増幅回路に過大入力信号が印加されたときに出力回路125から出力信号が正確に発生するようにレベルが設定される。
【0023】
また、BTL増幅回路108の入力端がショートされたときの動作を説明する。このときの基本動作はBTL増幅回路101の入力端がショートされたときと同様の動作が実行される。ショートにより電力増幅回路に負の過大入力信号が印加された如くなり、BTL増幅器108において出力電流が出力段トランジスタ111、負荷Rr、出力段トランジスタ110の順に流れる。
【0024】
検出トランジスタ117及び118には、出力段トランジスタ109及び111に印加される駆動信号が分岐されて印加されており、その為出力段トランジスタに流れる電流に相当する電流が検出トランジスタから発生する。BTL増幅回路108もBTL増幅回路101と同様に、検出トランジスタのトランジスタサイズは、出力段トランジスタのトランジスタサイズと比べ、所定の割合で小さくなっている。その為に、各々の検出トランジスタからは、出力段トランジスタに流れる電流を所定割合で小さくなった電流が発生する。
【0025】
この状態では、出力段トランジスタ111に出力電流が流れているので、検出トランジスタ118から検出電流が発生する。検出トランジスタ118の出力電流は抵抗Rで電圧に変換される。具体的に、検出トランジスタ118の出力電流Iaが抵抗Rに供給されると、その電圧降下により電圧が発生し、電圧Va(=Vref+Ia×R)に変換される。
【0026】
変換電圧Vaは、差動対123及び差動対124の一方のトランジスタに印加され、基準電圧Vr1及びVr2とそれぞれ比較される。変換電圧Vaは基準電圧Vr1より高くなるので、変換電圧Vaが印加されるトランジスタがオンし、差動対123の出力電流が出力回路125に供給される。出力回路125では、トランジスタ125a及び125bが順次オンすることにより、出力回路125からHレベル(=Vb)の検出信号が発生する。
【0027】
検出信号が発生すると、スピーカが破壊または焼損されない様に、駆動回路106、107、113及び114の動作を停止させる必要がある。その為の回路構成として、検出信号が発生すると、電力増幅回路の内部に構成された保護回路を動作させて、各駆動回路に印加されるバイアス供給を停止させ、その結果出力トランジスタの動作を停止させる構成や、検出信号を一度外部のマイクロコンピュータに印加させ、マイクロコンピュータの指示で駆動回路へのバイアス供給を停止させたり、またはマイクロコンピュータの指示で、音声やカーステレオの表示画面に表示させることにより知らせる構成が考えられる。
【0028】
次に通常動作時の検出動作について説明する。BTL増幅器101及び108に同一の入力信号が印加されるので、出力段トランジスタ102及び111に同一量の出力電流が流れ、出力段トランジスタ104及び109にも同一量の出力電流が流れる。その為、通常動作時、接続点Aでは検出トランジスタの出力電流が打ち消され、抵抗Rに加算電流は供給されなくなる。よって、基準電圧Vrefがそのまま差動対123及び124に印加される。基準電圧Vrefは、Vr1>Vref>Vr2となっているので、差動対123及び124から出力回路125に出力電流は供給されない。従って、トランジスタ125a及び125bはオンせず、出力回路125から検出信号は出力されない。
【0029】
ところで、一般にカーステレオにおいて、前後のスピーカの音量をバランス調整する為に、フェーダーボリュームが備え付けられている。通常動作時、フェーダーボリュームを回して、前後スピーカからの音量がアンバランスとなった場合、BTL増幅器101及び108の出力の大きさは異なってしまう。その為、接続点Aにおいては差電流が生じ、差動対123及び124にはVref±αの電圧が印加される。ここで、基準電圧は、Vr1>(Vref±α)>Vr2に設定されているので、差動対123及び124から出力信号は発生せず、検出信号も発生しない。つまり、ウインドコンパレータ112を設けることによって、フェーダーボリュームの調整による差電流が生じても検出信号が発生しないように構成されており、図1の異常検出回路は負荷への直流オフセットを確実に検出することができる。尚、基準電圧Vr1及びVr2は、BTL増幅回路にショートによる過大入力が印加されたことを確実に検出することと、さらに上記のようにフェーダーによる音量のアンバランス時に誤動作しないようにすることとを両立できるように設定される。
【0030】
【発明の効果】
本発明に依れば、BTL増幅回路の出力に直流オフセットが生じた場合のみ確実に検出することできるので、入力コンデンサーでの電流リークや水滴によるショートに起因するスピーカの破壊や焼損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す回路図である。
【図2】従来の増幅器の天絡及び地絡保護回路を示す回路図である。
【図3】オーディオ用電力増幅回路の全体構成を示すブロック図である。
【図4】図1に対応するオーディオ用電力増幅回路の全体構成を示すブロック図である。
【図5】自動車内のスピーカの配置を示す配置図である。
【符号の説明】
101、108 BTL増幅回路
121 第1基準電圧発生回路
122 ウィンドコンパレータ
123、124 差動対
125 出力回路
Claims (2)
- 少なくとも入力信号を同一とする2個のBTL増幅器を備える電力増幅回路の異常検出回路であって、
一方のBTL増幅器を構成する出力段トランジスタの出力電流と、他方のBTL増幅器を構成する出力段トランジスタの出力電流とを合成し、その電流差を出力する合成回路と、
前記電流差を、第1の値及びそれより大きい第2の値と比較し、前記電流差が第1の値より小さくまたは第2の値より大きい場合異常検出信号を発生する比較回路とから成り、
前記合成回路は、一方のBTL出力増幅器の正側の出力段トランジスタと他方のBTL出力増幅器の正側の出力段トランジスタとの出力電流を比較する第 1 比較手段と、一方のBTL出力増幅器の負側の出力段トランジスタと他方のBTL出力増幅器の負側の出力段トランジスタとの出力電流を比較する第2比較手段と、前記第1及び第2比較手段の出力信号を合成する合成手段とから成ることを特徴とする電力増幅回路の異常検出回路。 - 前記第1及び第2比較手段の各々は、2つの入力電流のうち一方の入力電流を反転する反転手段を有することを特徴とする請求項1記載の電力増幅回路の異常検出回路。
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