JP3544062B2 - 磁気ブラシ帯電装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は被帯電体を帯電処理(除電処理も含む)するための帯電装置、及び該帯電装置を具備した画像形成装置に関するものである。
【0002】
特に、磁気ブラシ帯電部材を用いた磁気ブラシ帯電装置及び該帯電装置を具備した画像形成装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
被帯電体の帯電処理手段は「非接触系」と「接触系」の2系統に大別される。
【0004】
非接触系の代表例はコロナ帯電器である。これは該コロナ帯電器を被帯電体に非接触に対向させて配設し、高圧印加でコロナ帯電器にコロナ放電を生じさせ、該コロナ放電に被帯電体面を曝すことで被帯電体面を帯電させるものである。
【0005】
接触系には、摩擦帯電や、ローラ体・ブラシ体などの帯電部材を被帯電体に接触させ電圧を印加して被帯電体を帯電する接触帯電装置などがある。
【0006】
従来、例えば、電子写真方式や静電記録方式の画像形成装置においては、電子写真感光体・静電記録誘電体等の像担持体の帯電処理手段としては非接触系であるコロナ帯電器が多用されていたが、近年、エコロジーが注目されるにつれて、低オゾン・低電力等の利点を有することから、接触系の接触帯電装置が実用化されてきている。接触帯電部材としてはゴムローラ型、固定ブラシ型、ロール形状のファーブラシ型など、様々な形態部材がある。
【0007】
a)ローラ帯電方式
特に接触帯電部材として導電ローラを用いたローラ帯電方式の装置が帯電の安定性という点から好ましく用いられている。
【0008】
ローラ帯電方式の接触帯電装置では、帯電部材として導電性の弾性ローラ(帯電ローラ)を被帯電体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって被帯電体を帯電処理する。具体的には、帯電は帯電部材から被帯電体への放電によって行なわれるため、ある閾値電圧以上の電圧を印加することによって帯電が開始される。
【0009】
例を示すと、被帯電体として、厚さ25μmのOPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させて帯電処理を行なわせる場合には、帯電ローラに対して約640V以上の電圧を印加すれば感光体の表面電位が上昇し始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体表面電位が増加する。この閾値電圧を帯電開始電圧Vthと定義する。
【0010】
つまり、電子写真に必要とされる感光体表面電位Vdを得るためには帯電ローラにはVd+Vthという必要とされる以上のDC電圧が必要となる。このようにしてDC電圧のみを接触帯電部材に印加して帯電を行なう方法を「DC帯電方式」と称する。
【0011】
しかし、DC帯電方式においては環境変動等によって接触帯電部材の抵抗値が変動するため、また、被帯電体としての感光体が削れることによって膜厚が変化すると帯電開始電圧Vthが変動するため、感光体の電位を所望の値にすることが難しかった。
【0012】
このため、更なる帯電の均一化を図るために特開昭63−149669号公報に開示されるように、所望のVdに相当するDC電圧に、2×Vth以上のピーク間電圧を持つAC成分を重畳した電圧を接触帯電部材に印加して被帯電体の帯電を行なう「AC帯電方式」が用いられる。これは、ACによる電位のならし効果を目的としたものであり、被帯電体の電位はAC電圧のピークの中央であるVdに収束し、環境等の外乱には影響されることはない。
【0013】
しかしながら、このような接触帯電においても、その本質的な帯電機構は、帯電部材から感光体への放電現象を用いているため、先に述べたように帯電に必要とされる電圧は被帯電体表面電位以上の値が必要とされ、微量のオゾンは発生する。
【0014】
また、帯電均一化のためにAC帯電を行なった場合には、さらなるオゾン量の発生、AC電圧の電界による帯電部材と被帯電体の振動騒音(AC帯電音)の発生、また放電による被帯電体表面の劣化等が顕著になり、新たな問題点となっていた。
【0015】
ここで、帯電ローラに限らず接触帯電部材に必要とされる特性において、抵抗値の低い帯電部材を使用した場合、被帯電体上にキズやピンホール等の低耐圧欠陥部があると、帯電部材からその低耐圧欠陥部に過大なリーク電流が流れ込み、低耐圧欠陥部周辺の被帯電体部分に帯電不良やピンホールの拡大、帯電部材の通電破壊が生じる。これを防止するためには、帯電部材の抵抗値を1×104 Ω程度以上にする必要がある。一方1×107 Ω以上では抵抗値が高すぎて、帯電に必要な電流を流すことができない。従って、接触帯電部材の抵抗値は1×104 Ω〜1×107 Ωの範囲でなければならない。
【0016】
b)注入帯電方式
また、接触式であって、被帯電体への電荷の直接注入による帯電を行なわせる帯電方式が考案されている(特開平6−3921号公報,特願平5−66150号等)。
【0017】
この注入帯電方式は、ローラ型・ブラシ型・磁気ブラシ型等の接触導電部材に所望のVdに相当するDC電圧のみを印加し、被帯電体表面にあるトラップ準位に電荷を注入する、あるいは、導電粒子を分散した保護膜を有する被帯電体に電荷を充電する、といった方法で所望のVdを得るものである。
【0018】
特開平6−3921号公報には、表面に電荷注入層を設けた被帯電体(感光体)の電荷注入層のフロート電極に電荷を注入して接触帯電する方法を開示しており、電荷注入層として、感光体表面にアクリル樹脂に導電フィラーであるアンチモンドープで導電化したSnO2 (酸化錫)粒子を分散したものを塗工して用いることが可能であるとの記述がある。
【0019】
この注入帯電方式では、放電現象を用いないため、帯電に必要とされる電圧は所望する被帯電体表面電位分のみのDC電圧であり、オゾンの発生もない。さらに、AC電圧を印加しないので、帯電音の発生もなく、ローラ帯電方式と比べると、より低オゾン性、低電圧性に優れた帯電方式である。
【0020】
前述のCD帯電方式・AC帯電方式のような接触帯電方式では、帯電機構が放電によるものであるため、帯電部材と被帯電体表面の間に多少のギャップが生じても帯電はなされていたが、注入帯電方式では帯電部材と被帯電体とが直接接触して電荷を授受するため、両者が密に接触して微視的な帯電し残しがないような構成を取る必要がある。
【0021】
また、電荷の授受を妨げないように帯電部材の抵抗はより低い方が好ましいが、前述したように、接触帯電部材を用いた装置では、被帯電体上にキズやピンホール等の低耐圧欠陥部があった場合に、帯電部材の抵抗が低いとリークが生じ、電源電圧が降下して帯電不良となるため、実用上は帯電部材がある程度以上の抵抗を保持している必要がある。このように帯電部材の抵抗が高い場合には電荷の注入性が落ちてしまうので、帯電部材を早回しする等の手段を用いて、帯電部材と被帯電体との接触機会を増やしてやり、電荷の注入能力を確保する必要がある。
【0022】
以上述べてきたように注入帯電方式に用いる帯電部材としては、被帯電体と密に接触でき、かつ、被帯電体に対して周速差を持つことが可能な部材という観点から、磁気ブラシ、磁性流体などの磁気拘束系の帯電部材(磁気ブラシ帯電部材)が適している。
【0023】
c)磁気ブラシ帯電部材
磁気ブラシ帯電部材は、磁性粒子担持手段に磁性粒子を磁気力で拘束して磁気ブラシとして付着保持させたもので、該磁気ブラシを被帯電体に接触させ、電圧を印加して被帯電体の帯電を行なうものである。より具体的には、
1)磁性粒子担持手段が回転可能なスリーブであり、該スリーブ内に配設した固定のマグネットロール(磁石)の磁気力で磁性粒子がスリーブ外面に拘束されて磁気ブラシとして付着保持されている形態のもの(スリーブ型)、
2)磁性粒子担持手段が回転可能なマグネットロール(磁石)であり、該ロールの外面に直接に磁性粒子が磁気力で拘束されて磁気ブラシとして付着保持されている形態のもの(磁性ローラ型)
等である。
【0024】
図9の(a)は上記1)のスリーブ型の磁気ブラシ帯電部材2もしくは帯電装置の模式図である。
【0025】
21は磁性粒子担持手段としての、アルミニウム等の非磁性の導電性スリーブ(電極スリーブ、導電スリーブ、帯電スリーブなどと称される)である。22はこのスリーブ21内に挿入配設した磁界発生手段としてのマグネットロールである。N・Sは該ロールの着磁部である。このマグネットロール22は非回転の固定部材であり、このマグネットロール22の外周りをスリーブ21が同心に矢印の時計方向bに不図示の駆動機構にて所定の周速度にて回転駆動される。23は導電性の磁性粒子(以下、キャリアと称す)であり、スリーブ21の外周面にスリーブ内部のマグネットロール22の磁気力で拘束されて磁気ブラシ(導電性磁気ブラシ)24として付着保持されている。キャリア23はマグネットロール22の磁気拘束力によりスリーブ21の外面上で磁気的な穂立ちを形成し、これが集まってブラシ形状となっている。E1はスリーブ21に対する帯電バイアス印加電源である。
【0026】
1は被帯電体であり、例えば、矢印の時計方向aに所定のプロセススピードをもって回転駆動されるドラム型電子写真感光体である。磁気ブラシ帯電部材2は磁気ブラシ24を被帯電体1の面に接触させて接触ニップ部(帯電ニップ部)Dを形成させた状態にして配置される。磁気ブラシ24は、スリーブ21の回転に伴って同じ方向に回転搬送され、接触ニップ部Dにおいて回転感光体1面を摺擦し、電源E1からスリーブ21を介して磁気ブラシ24に印加された帯電バイアスにより、被帯電体としての回転感光体1面が接触方式で帯電処理される。
【0027】
接触ニップ部Dにおいて、スリーブ21の回転方向、それに伴う磁気ブラシ24の回転搬送方向は被帯電体としての回転感光体1の回転方向に対してカウンター方向としてある。
【0028】
スリーブ21は、磁気ブラシ24の担持機能、搬送機能、帯電バイアス印加電極機能を担っている。
【0029】
図9の(b)は前記2)の磁性ローラ型の磁気ブラシ帯電部材2Aもしくは帯電装置の模式図である。
【0030】
マグネットロール22は駆動及び給電を兼ねた中心芯金25を中心に矢印の時計方向bに不図示の駆動機構にて所定の周速度にて回転駆動される。このマグネットロール22の外周面は帯電バイアス印加電極(給電面)としての導電層22aで被覆してある。その導電層22aの外周面にキャリア23をマグネットロール22の磁気力で拘束して磁気ブラシ24として付着保持させたものである。磁気ブラシ24は、マグネットロール22の回転に伴って同方向に回転搬送され、接触ニップ部Dにおいて回転感光体1面を摺擦し、電源E1からマグネットロール22の中心芯金25に印加された帯電バイアスにより、被帯電体としての回転感光体1面が接触方式で帯電処理される。マグネットロール22の外周面に設けた導電層22aは磁気ブラシ24に帯電バイアスを安定して均一に給電する役目をする。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、磁気ブラシ帯電部材を用いた帯電装置及び該帯電装置を具備した画像形成装置は、帯電部材と被帯電体とを密に接触できる、被帯電体に対して周速差を持つことが可能なことから帯電部材と被帯電体との接触機会を多くすることができる等、帯電性に有利である。電荷注入帯電系においては電荷注入性に非常に有利である。
【0032】
図9の(a)のようなスリーブ型の磁気ブラシ帯電部材2と、(b)のような磁性ローラ型の磁気ブラシ帯電部材2Aとの対比において、磁性ローラ型はマグネットロール22の回転に伴い、接触ニップ部Dにおける磁気ブラシ24の穂立ち形状が変化することから、スリーブ型の磁気ブラシ帯電部材2と比較して帯電性が不均一となりやすく、帯電不良を生じる場合があった。
【0033】
スリーブ型の磁気ブラシ帯電部材2はスリーブ21の回転によって、磁気ブラシ24の穂立ち形状は基本的に変化しないことから、さらにキャリア23の入れ換わりが可能なことから、磁性ローラ型の磁気ブラシ帯電部材と比較して帯電均一性は有利である。
【0034】
スリーブ型の磁気ブラシ帯電部材2は、スリーブ21の回転方向として、上述例のように接触ニップ部Dにおいて被帯電体としての回転感光体1の回転方向に対してカウンター方向とする場合と、順方向とする場合の2種類がある。
【0035】
順方向の場合は、カウンター方向と比較して、接触ニップ部Dにおけるスリーブ21と感光体1との相対的な速度即ち周速差を大きくするにはスリーブ21の回転数を高くしなければならない。しかし、そうすると磁気ブラシ24を構成しているキャリア23の飛散を生じやすく、回転トルクも大きくなり、装置コストも高くなる。
【0036】
カウンター方向は、低速で周速差を大きくすることができ、従って磁気ブラシ24のキャリア23と感光体1の接触回数を多くできるので、帯電性が良好になるという利点がある。
【0037】
しかしながら、スリーブ21の回転方向をカウンター方向にすると、接触ニップ部Dのスリーブ回転方向上流側の磁気ブラシ部分が被帯電体である感光体1の回転によって引き戻されてこの部分に磁気ブラシが滞留し易くなる。そして磁気ブラシが過度に滞留すると、接触ニップD内でのキャリア23の円滑な移動が阻害され、キャリア23の搬送性が悪くなり、接触ニップDが不均一になったり、キャリアと感光体の接触機会が少なくなったりして、帯電能力が低下し、帯電不良が起こる場合があった。
【0038】
また、キャリアの円滑な移動が阻害され、感光体表面に接しているキャリアの動きが悪くなると、キャリア自身がチャージアップしてしまい、電荷注入帯電系においては電荷の注入を阻害して、帯電不良が起こるという問題もあった。ここでチャージアップとは、感光体表面に接しているキャリアが感光体へ電荷を与えることによって逆電荷を蓄電してしまい、実際の印加電圧が減少してしまう状態をいう。
【0039】
キャリアの搬送性を良くするために、スリーブ上の磁極位置、磁束密度及びその分布を工夫してきたが、しかし、キャリアの搬送性とは必ずしも対応しなかった。
【0040】
そこで本発明は、特に、スリーブ型の磁気ブラシ帯電部材を用いた磁気ブラシ帯電装置及び該帯電装置を具備した画像形成装置について、磁性粒子(キャリア)の搬送性を良くするようにして、帯電能力の低下を防ぎ、帯電不良を防止すること、画像形成装置にあっては帯電不良に起因する画像不良の発生等の問題を解消することを目的とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を特徴とする、磁気ブラシ帯電装置、及び画像形成装置である。
【0042】
(1)固定された磁石を内包する回転可能な導電性の磁性粒子担持手段に磁性粒子を磁気力で拘束して磁気ブラシとして付着保持させた磁気ブラシ帯電部材を有し、該磁気ブラシ帯電部材の磁気ブラシを被帯電体に接触させて磁性粒子担持手段の回転で搬送させ、電圧を印加して被帯電体を帯電する磁気ブラシ帯電装置において、
被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁性粒子担持手段の回転方向が被帯電体に対してカウンター方向であって、磁性粒子担持手段上の磁束密度をB、磁性粒子担持手段の回転方向の角度をθとすると、∂B2/∂θから求めた、磁性粒子に働く磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きが、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、すべて磁性粒子担持手段の回転方向下流側へ向いていることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置。
【0043】
(2)前記(1)に記載の磁気ブラシ帯電装置において、磁性粒子担持手段に内包させた固定の磁石の、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁極位置を、被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置より磁性粒子担持手段の回転方向に対して下流側にすることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置。
【0045】
(3)像担持体を帯電する工程を含む作像プロセスにより画像形成を実行する画像形成装置であり、像担持体の帯電手段が(1)または(2)に記載の磁気ブラシ帯電装置であることを特徴とする画像形成装置。
【0046】
〈作 用〉
1)即ち前記(1)のように、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁性粒子担持手段の回転方向が被帯電体に対してカウンター方向であって、磁性粒子担持手段上の磁束密度をB、磁性粒子担持手段の回転方向の角度を角度をθとすると、∂B2/∂θから求めた、磁性粒子に働く磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きが、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、すべて磁性粒子担持手段の回転方向下流側へ向いていることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置においては、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁性粒子担持手段の回転方向が被帯電体に対してカウンター方向であることで被帯電体に対して磁性粒子担持手段すなわち磁気ブラシの周速差を大きくすることが可能なことから、磁気ブラシを被帯電体に接触させる接触機会を多くすることができて帯電性を向上させることができる。電荷注入帯電系においては電荷注入性が向上し帯電性を向上させることができる。
【0047】
また、∂B2/∂θから求めた、磁性粒子に働く磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きが、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、すべて磁性粒子担持手段の回転方向下流側へ向いていることで、接触ニップにおける磁性粒子の搬送性を良くする適正な磁気力(磁気的な吸引力)を設定することができて、磁気ブラシ(もしくは磁性粒子)の滞留による帯電不良を防止することができる。電荷注入帯電系においては注入帯電能力の低下を防ぎ、帯電不良を防止することができる。
【0048】
2)前記(2)のように、更に、磁性粒子担持手段に内包させた固定の磁石の、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁極位置を、被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置より磁性粒子担持手段の回転方向に対して下流側にすることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置においては、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの、磁性粒子担持手段の回転移動方向上流側における磁気ブラシの過度の滞留を防止することができることから、磁気ブラシの滞留による帯電不良を防止することができる。
【0049】
3)前記(3)のように、また更に、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きがすべて磁性粒子担持手段の回転方向下流へ向いていることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置においては、磁性粒子の搬送性をさらに向上させることができることから、磁性ブラシの滞留による帯電不良を防止することができる。電荷注入帯電系においては注入帯電能力の低下を防ぎ、帯電不良を防止することができる。
【0050】
4)そして、上記の磁気ブラシ帯電装置を用いた画像形成装置にあっては、磁性粒子即ち磁気ブラシの搬送性が良くなることで、帯電能力の低下、帯電不良が防止され、帯電不良に起因する画像不良の発生等の問題が解消される。
【0051】
【発明の実施の形態】
〈実施形態例1〉(図1〜図7)
(1)画像形成装置例(図1)
図1は、本発明に従う、転写式電子写真プロセス利用、磁気ブラシ−接触帯電方式のレーザービームプリンタの一例の概略構成図である。
【0052】
1は被帯電体としての像担持体である回転感光ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムあるいはドラムと記す)である。本例では直径30mmのOPC感光体を用い、矢示aに示す時計方向に100mm/secのプロセススピード(周速度)をもって回転駆動される。感光体の層構成については(2)項で詳述する。
【0053】
2は感光ドラム1の周面を所定の極性・電位に一様に帯電処理するための、スリーブ型の磁気ブラシ帯電部材である。この磁気ブラシ帯電部材2については(3)項で詳述する。
【0054】
この磁気ブラシ帯電部材2のスリーブ21には帯電バイアス印加電源E1から−700VのDC帯電バイアスが印加されていて、電荷注入帯電によって回転感光ドラム1の外周面がほぼ−700Vに一様に帯電される。
【0055】
この回転感光ドラム1の帯電面に対してレーザーダイオード・ポリゴンミラー等を含むレーザービームスキャナ7から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザービーム7aによる走査露光がなされ、回転感光ドラム1の周面に対して目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0056】
その静電潜像は磁性一成分絶縁トナーを用いた反転現像装置3によりトナー画像として現像される。3aはマグネット3bを内包する直径16mmの非磁性現像スリーブであり、この現像スリーブに上記のネガトナーをコートし、感光ドラム表面との距離を300μmに固定した状態で、感光ドラム1と等速で回転させ、スリーブ3aに現像バイアス印加電源E2より現像バイアス電圧を印加する。本例では、−500VのDC電圧と、周波数1800Hz、ピーク間電圧1600Vの矩形のAC電圧を重畳したものを用い、スリーブ3aと感光ドラム1の間でジャンピング現像を行なわせる。即ち現像スリーブ3aで運ばれてくる負に帯電されたトナーを潜像の画像部に電界により付着させて現像する。
【0057】
一方、不図示の給紙部から記録材としての転写材30が供給されて、感光ドラム1と、これに所定の押圧力で当接させた接触転写手段としての、中抵抗の転写ローラ4との圧接ニップ部(転写部)Tに所定のタイミングにて導入される。
【0058】
転写ローラ4には転写バイアス印加電源E3から所定の転写バイアス電圧が印加される。本例では転写ローラ4にはローラ抵抗値5×108 Ωのものを用い、+2000VのDC電圧を印加して転写を行なった。
【0059】
転写部Tに導入された転写材30はこの転写部Tを挟持搬送されて、その表面側に回転感光ドラム1の表面に形成担持されているトナー画像が順次に静電気力と押し圧力にて転写されていく。
【0060】
トナー画像の転写を受けた転写材30は感光ドラム1の面から分離されて熱定着方式等の定着装置5へ導入されてトナー画像の定着を受け、画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。
【0061】
また転写材30に対するトナー画像転写後の感光ドラム1面はクリーニング装置6により残留トナー等の付着汚染物の除去を受けて清掃され繰り返して作像に供される。
【0062】
本例の画像形成装置は、感光ドラム1・磁気ブラシ帯電部材2・現像装置3・クリーニング装置6の4つのプロセス機器を一括して画像形成装置本体に対して着脱交換自在のプロセスカートリッジ10としてある。9は上記4つのプロセス機器1・2・3・6を所定に組み込んだカートリッジハウジングである。8・8は画像形成装置本体側のプロセスカートリッジ挿脱案内兼保持部である。
【0063】
画像形成装置本体に対して該プロセスカートリッジ10を所定に装着した状態において、プロセスカートリッジ10側と画像形成装置本体側とが機械的・電気的に相互カップリング状態となり、またプロセスカートリッジ10側の感光ドラム1の下面が画像形成装置本体側の転写ローラ4に所定に当接した状態となり、画像形成実行可能状態となる。
【0064】
なお、プロセスカートリッジ10とは、帯電手段、現像手段またはクリーニング手段と、電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。及び帯電手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つの電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするものである。更に、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱可能とするものをいう。
【0065】
(2)感光体1、注入帯電
a)感光体1について(図2)
図2は本例で用いた被帯電体としての感光体1の層構成模型図である。
【0066】
本例で用いた感光体1は表面に電荷注入機能を有する負帯電のOPC感光体である。φ30mmのアルミニウム製のドラム基体11上に下記の第1〜第5の5層の機能層12〜16を下から順に設けたものである。
【0067】
第1層は下引き層12であり、アルミニウムドラム基体11の外周面の欠陥等をならすため、またレーザー露光の反射によるモアレの発生を防止するために設けられている厚さ約20μmの導電層である。
【0068】
第2層は正電荷注入防止層13であり、アルミニウム基体11から注入された正電荷が感光体表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たし、アミラン樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって106 Ωcm程度に抵抗調整された厚さ約1μmの中抵抗層である。
【0069】
第3層は電荷発生層14であり、ジスアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、レーザー露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。
【0070】
第4層は電荷輸送層15であり、ポリカーボネート樹脂にヒドラゾンを分散した厚さ約20μmの層であり、P型半導体である。従って、感光体表面に帯電された負電荷はこの層を移動することはできず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光体表面に輸送することができる。
【0071】
第5層は電荷注入層16であり、光硬化性のアクリル樹脂に超微粒子の導電粒子(導電フィラー)16aとしてSnO2 を分散した材料の塗工層である。具体的には、アンチモンをドーピングし、低抵抗化した粒径約0.03μmのSnO2 粒子を樹脂に対して70重量パーセント分散した材料の塗工層である。このようにして調合した塗工液をディッピング塗工法にて、厚さ約3μmに塗工して電荷注入層とした。
【0072】
感光体の表面層である電荷注入層16の体積抵抗は電荷注入帯電を行なうために、109 〜1014Ω・cmの低抵抗層を持つことが好ましく、本例においては、電荷注入層16の体積抵抗は1×1013Ω・cmとした。
【0073】
電荷注入層16の体積抵抗率は、導電性シート(アルミニウムシート)上に電荷注入層を約6〜7μm塗布し、これを横河ヒューレット・パッカード社製の高抵抗計4329A にRESISTIVITY CELL 16008A を接続して印加電圧100Vにて測定したものである。
【0074】
電荷注入層16は磁気ブラシ帯電装置2から電荷を直接注入することで表面を均一に帯電するための注入サイトを意図的に作成したものであるが、潜像の電荷が表面を流れないよう電荷注入層16の表面抵抗は1×108 Ω以上である必要がある。
【0075】
電荷注入層16の表面抵抗は、絶縁性シート上に電荷注入層を塗布し、これを横河ヒューレット・パッカード社製の高抵抗計4329A で印加電圧100Vにて測定したものである。
【0076】
b)注入帯電について(図3)
上記の感光体1と、接触帯電部材を用いて帯電を行なう際の原理について述べる。
【0077】
本例における電荷注入帯電は、中抵抗の接触帯電部材(磁気ブラシ帯電部材)で、中抵抗の表面抵抗を持つ感光体表面に電荷注入を行なうものであり、感光体表面材質のもつトラップ電位に電荷を注入するものではなく、電荷注入層16の導電粒子16aに電荷を充電して帯電を行なう方式である。
【0078】
帯電時に磁気ブラシ帯電部材2に所望の電圧を印加することで電荷注入層16に電荷が注入されて被帯電体としての感光体表面は最終的に磁気ブラシ24と同電位に帯電(充電)される。
【0079】
具体的には図3の(a)と(b)の模型図と等価回路図に示すように、感光体1は、電荷輸送層15を誘電体とし、アルミニウムドラム基体11と電荷注入層16内の導電粒子16a(SnO2 )を両電極板とする微小なコンデンサーの並列集合体とみることができ、注入帯電は、その個々の微小なコンデンサーに接触帯電部材で電荷を充電する理論に基づくものである。
【0080】
この際、導電粒子16aは互いに電気的に独立であり、一種の微小なフロート電極を形成している。このため、マクロ的には感光体表面は均一電位に充電、帯電されているように見えるが、実際には微小な無数の充電された導電粒子16aが感光体表面を覆っているような状況となっている。このため、レーザーによって画像露光を行なってもそれぞれの導電粒子16aは電気的に独立なため、静電潜像を保持することが可能になる。
【0081】
(3)磁気ブラシ帯電装置(図4)
a)磁気ブラシ帯電部材2
図4の(a)は本例の磁気ブラシ帯電部材2ないしは磁気ブラシ帯電装置の構成模型図であり、前述図9の(a)のものと同様にスリーブ型のものである。
【0082】
即ち、21は磁性粒子担持手段としての、アルミニウム等の非磁性の導電性スリーブ(帯電スリーブ)である。
【0083】
22はこのスリーブ21内に挿入配設した磁界発生手段としてのマグネットロールである。N1・S1・N2・S2は該ロールの着磁部である。このマグネットロール22は非回転の固定部材であり、このマグネットロール22の外周りをスリーブ21が同心に矢印bに示す時計方向に不図示の駆動機構にて所定の周速度にて回転駆動される。
【0084】
23は導電性の磁性粒子(キャリア)であり、スリーブ21の外周面にスリーブ内部のマグネットロール22の磁気力で拘束されて磁気ブラシ(導電性磁気ブラシ)24として付着保持されている。キャリア23はマグネットロール22の磁気拘束力によりスリーブ21の外面上で磁気的な穂立ちを形成し、これが集まってブラシ形状となっている。
【0085】
スリーブ21に帯電バイアス印加電源E1(図1・図3)から帯電バイアスが印加される。帯電バイアスは、高すぎると磁気ブラシ24と感光ドラム1の間でリークを生じ、低すぎると帯電電位が低くなり、現像コントラストが小さくなることから、画像が貧弱になる。よって帯電電圧としては100V〜1500Vが望ましい。
【0086】
26はスリーブ21と小間隔を介して対向した磁気ブラシ層厚規制ブレード(規制ブレード)で、スリーブ21が帯電領域に支持搬送する磁気ブラシ層の厚みを規制する。
【0087】
Dは磁気ブラシ24を感光ドラム1表面に接触させて形成させた接触ニップ部(帯電ニップ部)である。
【0088】
感光ドラム1は矢印aに示す時計方向に不図示の駆動機構にて所定の周速度にて回転駆動されており、接触ニップ部Dにおいて、スリーブ21の回転方向、それに伴う磁気ブラシ24の回転搬送方向は感光ドラム1の回転方向に対してカウンター方向としてある。
【0089】
接触ニップ部Dにおける磁気ブラシ24の回転搬送方向について、感光ドラム1の回転方向に対して順方向の場合は、カウンター方向と比較して、磁気ブラシ24を構成するキャリア23が感光ドラム1に付着しやすい傾向がある。また、スリーブ21と感光ドラム1の相対的な速度、即ち周速差を大きくするには、スリーブ21の回転数が高くなってしまう。従って、キャリア23の飛散を生じやすく、回転トルクも大きくなり、装置コストも高くなる。
【0090】
カウンター方向は、感光ドラム1へのキャリア付着を抑制し、低速で周速差を大きくすることができ、従ってキャリアと感光ドラムの接触回数を多くできるので、帯電性が良好になる。
【0091】
カウンター方向の方が、感光ドラムへのキャリア付着に対して良好な理由はまだ解明がされていないが、磁気ブラシ24の摺擦により感光ドラム上のキャリアを剥ぎ取って引き戻す作用が働くと考えている。
【0092】
スリーブ21の回転を停止させると、磁気ブラシ24の形状がそのまま帯電不良となって画像に出てしまう。
【0093】
このような理由から磁気ブラシ24の回転搬送方向はカウンター方向が好ましい。
【0094】
しかし、スリーブ21の回転方向をカウンター方向にすると接触ニップ部Dのスリーブ回転方向上流側の磁気ブラシ部分が被帯電体としての感光ドラム1の回転によって引き戻されてこの部分に磁気ブラシが滞留し易くなる傾向がある。磁気ブラシが過度に滞留すると、接触ニップ部D内でのキャリアの円滑な移動が阻害され、キャリアの搬送性が悪くなり、接触ニップ部Dが不均一になったり、キャリアと感光体の接触機会が少なくなったりして注入帯電能力が低下し、帯電不良が起こる場合があるが、後述するように、適正な磁気力を設定することにより、キャリアの搬送性を良好にすることができる。
【0095】
また、電荷注入性を良くするには、接触ニップ部Dを大きくすることが好ましいが、スリーブ21の回転方向をカウンター方向にして、磁気ブラシが滞留し易いことを逆に利用して、接触ニップ部上流部に積極的に磁気ブラシの膨らみ層を作成して、即ち適度な磁気ブラシの溜まり部分(バンク)を積極的に作成して、接触ニップ部Dを大きくし、その上で、キャリアの搬送性を良好にすることで、電荷注入性が向上し、良好な帯電性を得ることができる。ここで、「適度な磁気ブラシの溜まり」とはキャリアはある程度溜まるが停滞することなく円滑に搬送する状態をいう。
【0096】
電荷注入性を良くするには、接触ニップ部Dの幅を2mm以上にすることが好ましく、4mm以上にすることがより好ましい。接触ニップ部Dが小さくなりすぎると、キャリアと感光体の接触機会が少なくなり、帯電が不均一になったり、注入帯電能力が低下したりして、帯電不良が生じやすい。
【0097】
本例では、帯電が均一で、注入帯電能力が十分で、帯電性を良好にするように、接触ニップ部Dを接触ニップ最近接位置よりスリーブ回転方向下流側に幅約2mm、上流側に幅約3mm、全体で幅約5mmに設定した。本例のように感光ドラム1及びスリーブ21が小径の場合、接触ニップ部Dを大きくすることは難しいが、スリーブ21の回転方向をカウンター方向にして、スリーブ回転方向上流側のニップ部を大きくすることにより全体のニップを大きくすることが可能となった。
【0098】
Lはスリーブ21の回転中心と感光ドラム1の回転中心を結んだ仮想直線であり、スリーブ21と感光ドラム1の対向中心を示すものであり、この部分でスリーブ21と感光ドラム1は最近接位置となっている。
【0099】
hはスリーブ21と感光ドラム1との最近接位置での距離である。スリーブ21と感光ドラム1間の最小間隔hは0.15〜2.0mmが好ましく、0.3〜1.0mmがより好ましい。間隔hが小さくなりすぎると、リークが生じやすくなり、規制ブレード26によって磁気ブラシ層の厚みを均一に規制することが困難になり、帯電ムラを生じやすくなり、また、十分なキャリア量を接触ニップ部Dへ供給できなくなり、帯電不良を生じやすくなる。逆に、間隔hが大きくなりすぎると、磁気ブラシ層の厚みを大きくしなければならず、磁気ブラシ24の表層部の磁気拘束力が弱くなることから、磁気ブラシ層が粗くなり、帯電ムラを生じやすく、また、電荷注入性も低下して、帯電不良を生じやすくなる。
【0100】
注入帯電では、感光体の帯電を、磁気ブラシ24を形成しているキャリア23と感光体との接触による電荷注入によって行なうので、接触ニップ部D内でキャリア23を円滑に移動させ、充分にキャリアと感光体を接触させる必要がある。
【0101】
電荷注入性を良くするには、接触ニップ部Dでのキャリアの体積比率Mc、即ち接触ニップ部空間でのキャリアの占める体積割合を30〜80%にすることが好ましい。
【0102】
ここで、上記体積比率Mcは、下記式に従うものとする。
【0103】
Mc=(M/h)×(1/ρ)×100
但し、Mはスリーブの単位面積当たりのキャリア量(非穂立ち状態での)[g/cm2 ]、hは帯電領域空間の高さ[cm]、ρはキャリアの真密度[g/cm3 ]である。
【0104】
上記体積比率Mcが小さくなりすぎると、キャリアと感光体との接触が不十分となりやすく、接触ニップ部Dが不均一になったり、キャリアと感光体の接触機会が少なくなったりして注入帯電能力が低下し、帯電不良が生じやすい。
【0105】
一方、体積比率Mcが大きくなりすぎると、接触ニップ部Dにキャリアが滞留する傾向が生じてきて、接触ニップ部D内でのキャリアの円滑な移動が阻害され、接触ニップ部が不均一になったり、キャリアと感光体の接触機会が少なくなったりして注入帯電能力が低下し、帯電不良が生じやすい。また、キャリアの円滑な移動が阻害され、感光体表面に接しているキャリアの動きが悪くなると、キャリア自身がチャージアップしてしまい、電荷の注入を阻害して、帯電不良が生じやすくなる。
【0106】
前述の体積比率Mcは、スリーブ21と規制ブレード26間の間隙、スリーブ21と感光ドラム1間の間隙h、キャリアの真密度等を相関的に設定することで所要の値に設定できる。
【0107】
b)キャリア23
磁気ブラシ24を構成させる磁性粒子であるキャリア23としては
・樹脂とマグネタイト等の磁性粉体を混練して粒子に成型したもの、もしくはこれに抵抗値調節のために導電カーボン等を混ぜたもの、
・焼結したマグネタイト、フェライト、もしくはこれらを還元または酸化処理して抵抗値を調節したもの、
・上記の磁性粒子を抵抗調整をしたコート材(フェノール樹脂にカーボンを分散したもの等)でコートまたはNi等の金属でメッキ処理して抵抗値を適当な値にしたもの
等が考えられる。感光ドラム1へのダメージを軽減するために、キャリア23は球形化処理をするのが望ましい。
【0108】
これらキャリア23の抵抗値としては、高すぎると感光ドラムに電荷が均一に注入できず、微小な帯電不良によるカブリ画像となってしまう。低すぎると感光ドラム表面にピンホールがあったとき、ピンホールに電流が集中して帯電電圧が降下し感光ドラム表面を帯電することができず、帯電ニップ状の帯電不良となる。
【0109】
よって、キャリア23の抵抗値としては、1×105 〜1×108 Ω・cmが望ましい。キャリアの抵抗値は、電圧が印加できる金属セル(底面積228mm2 )にキャリア23を2g入れた後6.6kg/cm2 で加重し、電圧を1〜1000V印加して測定した。例えば100V印加して、この系に流れる測定電流から算出し正規化したもので定義した。
【0110】
複数種のキャリアを混合して用いることで帯電性の向上を図ることも可能である。
【0111】
キャリアの粒径としては、あまり細かすぎると、磁気拘束力が小さくなり、感光ドラム面へのキャリア付着を起こす。また大きすぎると、感光ドラムへの接触面積が減り、帯電不良が増える。よってキャリアの平均粒径としては5〜50μm程度が帯電性と磁気保持の点で望ましい。キャリアの平均粒径は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡により、ランダムに100個以上抽出し、水平方向最大弦長をもって体積粒度分布を算出しその50%平均粒径をもって決定した。
【0112】
キャリア23の磁気特性としては、感光ドラムへのキャリア付着を防止するために磁気力を高くする方がよく、飽和磁化が30(A・m2 /kg)以上、より好ましくは50(A・m2 /kg)以上が望ましい。
【0113】
実際に、本例で用いたキャリア23は、平均粒径が30μmで、形状は球形、抵抗値が1×106 Ω・cm、飽和磁化が64(A・m2 /kg)であった。なお、キャリア23の真密度は約5.8g/cm3 で、透磁率は約5.0であった。
【0114】
飽和磁化及び透磁率の測定は、振動試料型磁力計(商品名:VSM−P−1−型東英工業社製)により、最大10000エルステッドの磁場中に置かれた磁性粒子の磁化を測定し、記録紙に描かれたヒステリシス曲線に基づいて求めた。
【0115】
c)マグネットロール22(図4〜図6)
本例で用いたマグネットロール22について図4〜図6を用いて詳述する。図4の(b)は接触ニップ部D及び磁極構成の位置を説明するための図である。
【0116】
Lは磁性粒子担持手段としてのスリーブ21の回転中心と被帯電体としての感光ドラム1の回転中心を結んだ仮想直線であり、スリーブ21と感光ドラム1の対向中心を示すものであり、この部分でスリーブ21と感光ドラム1は最近接位置となっている。
【0117】
hはスリーブ21と感光ドラム1との最近接位置での距離である。
【0118】
Pはスリーブ21上の感光ドラム1との最近接位置であり、Qは感光ドラム1上の最近接位置である。
【0119】
Sは帯電主極S1に対応するスリーブ21上の位置であり、θはスリーブ21の回転中心と帯電主極S1とを結んだ仮想直線と前記仮想直線Fとの成す角度である。即ち、帯電主極S1はスリーブ21の回転方向に対して感光ドラム1との最近接位置Pよりも下流側に位置している。
【0120】
Aは感光ドラム1と磁気ブラシ24の接触ニップ部Dの、感光ドラム1上での感光ドラム回転方向下流側端部位置である。
【0121】
L1は感光ドラム1上でのニップ部下流側端部位置Aとスリーブ21の回転中心を結んだ仮想直線である。
【0122】
Bはスリーブ21上における、感光ドラム1上でのニップ部下流側端部位置Aとの最近接位置であり、仮想直線L1とスリーブ21表面とが交差する位置である。
【0123】
帯電主極S1の位置について、感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して上流側にすると、ニップ部上流側で磁気ブラシが穂立ちしてスリーブの回転により搬送されたキャリアがニップ部最近接を通過しようとするのをせき止める作用が働き、ニップ部内にキャリアが滞留しやすくなる。ニップ部内にキャリアが滞留すると、ニップ部Dが不均一になったり、キャリアと感光体の接触機会が少なくなったりして注入帯電能力が低下し、帯電不良が生じやすい。また、キャリア自身がチャージアップしやすくなり、電荷の注入を阻害して、帯電不良が生じやすくなる。
【0124】
一方、帯電主極S1の位置を、感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して下流側にすると、スリーブ21と感光ドラム1の間隔が最も狭くキャリアの搬送が最も厳しい位置P・Qまでは磁気ブラシが穂立ちしていないので、キャリアが円滑に搬送され、ニップ部最近接位置P・Qを通過して空間が拡がってから磁気ブラシが穂立ちするので、磁気ブラシの穂立ちによりキャリアの搬送が阻害されない。
【0125】
従って、キャリアが滞留することがなく、ニップ部D中でのキャリアが円滑に移動することができるようになり、感光体とチャージアップしていないキャリアの接触回数が増加し、帯電不良の発生しなくなる。
【0126】
なお、帯電主極S1の位置が感光ドラム1との最近接位置Pよりも離れ過ぎると、ニップ部内のキャリアをニップ部出口方向に引き寄せる磁気力が弱くなるので、キャリアの搬送性がやや劣る場合がある。
【0127】
帯電主極S1の位置は感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して下流側0°〜30°(θ)が好ましく、0°〜15°がより好ましい。
【0128】
図5は磁性粒子担持手段としてのスリーブ21上の磁気力を説明するための図であり、Fはスリーブ21上の磁気力、Frはスリーブ21上のスリーブ表面の法線方向の磁気力、Fθはスリーブ21上のスリーブ表面の接線方向の磁気力を示している。
【0129】
ここで、磁気力Fθは下記比例式
Fr∝∂B2 /∂θ∝{B2 (θ+Δθ)−B2 (θ−Δθ)}/2Δθ
但し、
B2 (θ+Δθ)=B2 r(θ+Δθ)+B2 θ(θ+Δθ)
B2 (θ−Δθ)=B2 r(θ−Δθ)+B2 θ(θ−Δθ)
となる。
【0130】
従って、
{B2 (θ+Δθ)−B2 (θ−Δθ)}/2Δθ
を求めれば磁気力Fθの相対的な大きさを知ることができ、磁気力Fθの分布形態、磁気力Fθの向き等を知ることができる。
【0131】
磁性粒子担持手段(スリーブ)上の法線方向の磁束密度Brおよび接線方向の磁束密度Bθは、後述の如くベル社のガウスメータを用いて測定する。Br(θ)は磁性粒子担持手段上における法線方向の磁束密度[ガウス]、Bθ(θ)は磁性粒子担持手段上における接線方向の磁束密度[ガウス]である。
【0132】
ここで、θは基準位置θ0からの角度[ラジアン]であり、スリーブ回転方向に対して上流側ほど角度が大きくなる。
【0133】
∂B2 /∂θについて更に説明すると、θを+側から微分すると、
【0134】
【数1】
θを+側から微分すると、
【0135】
【数2】
これらは連続なので、どちらから微分しても等しいと仮定できるので、▲1▼式+▲2▼式より、
【0136】
【数3】
となる。従って、
∂B2 /∂θ={B2 (θ+Δθ)−B2 (θ−Δθ)}/2Δθ・・・・▲4▼
となる。
【0137】
例えば、Δθを3°毎に計算すると、単位はラジアンなので、
Δθ=3π/180[ラジアン]
となる。
【0138】
キャリアが接触ニップ部Dを円滑に移動できるかどうか、即ちキャリアの搬送性を良好にできるかどうかは、スリーブ21上の磁束密度に直接関係するのではなく、スリーブ21上のキャリアを接線方向へ移動させる磁気力の大きさに関係する。図4を用いて説明する。
【0139】
スリーブ21上のキャリアの搬送性は、キャリアをスリーブ上へ保持して、保持したキャリアをそのままスリーブの回転により搬送する等の搬送促進作用と、感光ドラム1がカウンター方向に回転することにより、接触ニップ部Dのキャリアをスリーブの上流方向に引き戻す等の搬送抑制作用とのバランスで決まる。また、接触ニップ部の間隔とキャリアの量により搬送のし易さが決まる。搬送促進作用と搬送抑制作用はスリーブおよび感光ドラムの回転による動的な作用だけでなく、磁気力による作用が関係する。つまり、接触ニップ部のキャリアに働く磁気力が搬送方向を向いていると搬送性が促進され、逆の方向を向いていると搬送性が抑制される。即ち、スリーブ上の接線方向の磁気力Fθの向きによって磁気力による搬送性が促進されるか抑制されるかが決まる。
【0140】
スリーブ21上のすべての位置において磁気力Fθをスリーブ回転下流側方向に向けることができれば、スリーブ上のすべての位置において磁気力による搬送性が促進される方向に作用されるので、非常に好ましいが、いくら磁束密度分布を工夫してもその様な構成にすることは不可能である。
【0141】
従って、スリーブ上の搬送性に対して重要度の高い箇所(接触ニップ部)において、磁気力Fθを搬送性促進方向に作用させる構成にすることが重要である。
【0142】
では、接触ニップ部Dのどの位置での磁気力Fθの向きが効果あるかというと、キャリアの搬送性が最も厳しい位置、即ちスリーブ21と感光ドラム1の間隔が小さい最近接位置Pの磁気力が深く関係すると考えられる。つまり、最近接位置Pの磁気力Fθの向きを搬送方向、即ちスリーブ回転下流側へ向けることが効果がある。また、最近接位置Pのスリーブ回転上流側のキャリアの搬送性が不十分であると、最近接位置Pへ向けてキャリアを押し込みパッキングさせる方向の作用が働くので、キャリアの滞留が生じやすくなる。従って、接触ニップ部上流側端部位置Bから最近接位置P迄の領域の磁気力の向きは搬送方向を向いていることがより好ましい。
【0143】
一方、最近接位置Pのスリーブ回転下流側のキャリアに関しては、スリーブとドラムの間隔が拡がっていくので、磁気力による搬送性が抑制される方向に作用しても通常の磁気力程度であれば、トータルバランスとして、十分な搬送性を得ることが可能である。
【0144】
以上に述べたように、スリーブ上のキャリアの搬送性を良好にするには、スリーブ上の感光ドラムとの最近接位置Pの磁気力Fθの向きをスリーブ回転下流側へ向けることが効果がある。さらにスリーブ上の接触ニップ部上流側端部位置Bから最近接位置P迄の磁気力の向きをすべてスリーブ回転下流側へ向けることがより好ましい。
【0145】
図6の(a)は「マグネットロールA」の帯電主極S1の磁束密度Brの分布形態および磁気力Fθの分布形態の説明するための図であり、横方向はスリーブ周方向の位置を(角度で)示しており、縦方向はスリーブ21上の磁気力Fθの大きさ、もしくはスリーブ21上の磁束密度Brの大きさを示している。
【0146】
磁気力Fθが正の場合は磁気力Fθの向きがスリーブ回転上流側へ向いていることを示し(図の右方向)、磁気力Fθが負の場合は磁気力Fθの向きがスリーブ回転下流側へ向いていることを示す(図の左方向)。Sは帯電主極S1の位置、Pはスリーブ21上の感光ドラム1との最近接位置、Bはスリーブ21上のニップ部上流側端部位置である。この例では位置Bから位置P迄、さらに位置S迄の領域すべてにおいて磁気力Fθが負であり、この部分で磁気力Fθの向きがすべてスリーブ回転下流側へ向いていることを示す。
【0147】
例えば、
スリーブ21の外径を16mm、
感光ドラム1の外径を30mm、
感光ドラム1とスリーブ21との間隔hを0.5mm
接触ニップ部Dの幅を感光ドラム1の上流側で2mm、下流側で3mm
とすると、
感光ドラム上位置Qと位置Aの角度は約21.5°、
スリーブ上位置Pと位置Bの角度は約18.7°
となる。
【0148】
そして、帯電主極S1の位置Sを感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して下流側6°に配置すると、スリーブ上位置Sと位置Bの角度は[18.7−(−6)=24.7°]となる。
【0149】
図6の(b)・(c)・(d)は、「マグネットロールB」、「マグネットロールC」、「マグネットロールD」の帯電主極S1の磁束密度Brの分布形態および磁気力Fθの分布形態の図である。記号は図6の(a)と同様である。
【0150】
図7で磁束密度の測定法を説明する。本図はスリーブ21上の法線方向の磁束密度Br及び接線方向の磁束密度Bθの測定法を説明するための図であり、ベル社のガウスメータモデル9903を用い測定した。スリーブ21は水平に固定され、スリーブ21内のマグネットロール22は回転自在に取付けられている。42は2軸型プローブ(ベル社製YOA99−1802)であり、スリーブ21とは若干の間隔を保ってスリーブ21の中心とプローブ42の中心が略同一水平面になるように固定され、ガウスメータ41と接続しており、スリーブ21上の法線方向及び接線方向の磁束密度を測定するものである。スリーブ21とマグネットロール22は略同心円であり、スリーブ21とマグネットロール22の間隔はどこでも等しいと考えてよい。従って、マグネットロール22を回転することにより、スリーブ21上の法線方向及び接線方向の磁束密度は周方向全てに対して測定することができる。
【0151】
マグネットロール22は矢印方向に回転させているので、例えば、帯電主極S1よりも規制極N1の角度は大きな値となる。即ち、図1や図4におけるスリーブの移動方向bに対して、上流側の方が角度が増える方向に測定している。
【0152】
(4)実験例
本例で、感光ドラム1の周速は100mm/sec、外径は30mm、帯電スリーブ21の周速は150mm/sec、スリーブ21の外径は16mmとした。スリーブ21の回転方向は感光ドラム1に対してカウンター方向とした。感光ドラム1とスリーブ21との間隔hは0.5mmとした。帯電主極S1の位置は感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して下流側6°(−6°)とした。このとき、スリーブ21内に固定する磁石である帯電主極S1のスリーブ表面上でのスリーブ表面に対する法線方向の磁束密度のピーク値は940×10−4T(テスラ)であった。磁気ブラシ24のキャリア量は約15gで、磁気ブラシ24の長手巾は210mmで、帯電スリーブ上の磁気ブラシ24のコート層の厚さは約1mmで、接触ニップ部Dの幅は上流側に幅約2mm、下流側に幅約3mm、全体で幅約5mmとした。このときのキャリア搬送性と帯電性について得られた結果を表1に示す。
【0153】
更に、マグネットロール22としては、図6の(a)に示した帯電主極S1の磁束密度が940×10−4T(テスラ)の「ロールA」と、帯電主極S1の磁束密度が950×10−4T(テスラ)の「ロールB」を用い、帯電主極位置について種々変化させたときのキャリアの搬送性と帯電性について得られた結果を表1に示す。
【0154】
【表1】
表1において、記号の意味は下記の通りである。
【0155】
「搬送性」の評価に関して
○:搬送性が非常に良好
×:搬送性が不良
「帯電性」の評価に関して
○:帯電性が非常に良好
×:帯電性が不良
表1をみればわかるように、実験例1−1〜1−3、1−6に示すように、位置Sの磁気力Fθが負で、位置B〜Sの磁気力Fθがすべて負の場合は、搬送性が非常に良好で、帯電性が非常に良好であったが、実験例1−4、1−5、1−7に示すように、位置Sの磁気力Fθが正で、位置B〜Sの磁気力Fθが正/負混在している場合は、搬送性が不良で、帯電性が不良であった。
【0156】
また、位置Sの磁気力Fθが負で、帯電主極の位置が、感光ドラム1との最近接位置Pよりもスリーブ回転方向に対して下流側にあるときは、キャリアの滞留がなく、搬送性が非常に良好で、帯電性も良好で、画像も良好であった。
【0157】
このように、スリーブ21上の感光ドラム1との最近接位置Pの磁気力Fθの向きをスリーブ回転下流側へ向けることにより、キャリアの搬送性を良好にすることができる。さらにスリーブ上の接触ニップ部上流側端部位置Bから最近接位置P迄の領域の磁気力の向きをすべてスリーブ回転下流側へ向けることがより好ましい。
【0158】
特に、本例のように磁気ブラシ帯電装置の小型化、低コスト化のために、帯電スリーブ21を小径化した場合には電荷注入性が不十分になりやすいが、スリーブの回転方向をカウンター方向にして、接触ニップ部上流部に積極的に磁気ブラシの膨らみ層を作成して、接触ニップ部を大きくすることにより、電荷注入性が向上し、良好な帯電性を得ることができる。そして、スリーブの回転方向をカウンター方向にすると、磁気ブラシが滞留し易くなることから搬送性が不十分になりやすいが、スリーブ上の磁気力Fθを適正に設定することは上述のように大きな効果がある。
【0159】
〈実施形態例2〉(図8)
本例は所謂クリーナレスシステムの画像形成装置に対する適用例である。図8はその画像形成装置例の概略構成図である。
【0160】
この画像形成装置は前述図1の画像形成装置との対比において、クリーニング装置6を省略した点、現像装置として2成分磁気ブラシ現像装置3Aを用いた点、磁気ブラシ帯電装置の設定が若干異なっている点、プロセスカートリッジ方式ではない点以外は図1の画像形成装置と同様の構成の、転写式電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタであるから再度の説明を省略する。
【0161】
このようなクリーナレスシステムの画像形成装置の場合は回転感光ドラム1から転写材30へのトナー画像転写後に感光ドラム1面に残留した転写残トナーは現像装置3Aへ至り、所謂現像同時クリーニング作用により該現像装置(クリーニング兼用の現像装置)に回収される。クリーナレスシステムの画像形成装置は専用のクリーニング装置を省略することで、画像形成装置の小型化・低コスト化等を図ることができる。
【0162】
a)現像装置3A
この画像形成装置における現像装置3Aは従来より広く用いられている2成分磁気ブラシ接触現像方法を用いた現像装置である。使用した現像剤は非磁性トナーと磁性キャリアからなる2成分現像剤であり、トナー粒子としては重合法によって生成した平均粒径6μmのネガ帯電トナーに対して平均粒径20nmの酸化チタンを重量比1%外添したものを用い、キャリアとしては飽和磁化が66(A・m2 /kg)で平均粒径が35μmの磁性キャリアを用いた。またこのトナーをキャリアを重量比6:94で混合したものを現像剤として用いた。
【0163】
31は内部に固定配置されたマグネットロール32を内包する直径16mmの非磁性現像スリーブであり、不図示の駆動機構にて感光ドラム1と等速で順方向に、即ち矢示cに示す反時計方向に回転駆動される。
【0164】
この現像スリーブ31に上記の現像剤をコートし、感光ドラム1表面との最近接距離が0.5mmになるように配置され、現像剤が感光ドラム1に対して接触する状態で現像できるように設定されている。
【0165】
スリーブ31には現像バイアス印加電源E2より現像バイアス電圧を印加する。本例では、−500Vの直流電圧と、周波数2000Hz、ピーク間電圧1500Vの矩形の交流電圧を重畳したものを印加した。
【0166】
b)磁気ブラシ帯電装置2
本例で用いた磁気ブラシ帯電装置2は、実施形態例1のものとの対比において磁気ブラシ帯電部材に対する帯電バイアスの印加条件が異なるだけで、他の構成は実施形態例1のものと同じであるから再度の説明を省略する。
【0167】
即ち、本例においては磁気ブラシ帯電部材に対する帯電バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いた。
【0168】
帯電バイアスとして直流電圧のみを用いた場合、初期的には良好な帯電性が得られるが、本例の画像形成装置のように、専用のクリーニング装置がないクリーナレスシステムの画像形成装置の場合には、画像形成を繰り返し行なったときに(耐久時)、転写残トナーを磁気ブラシ帯電部材に十分に回収することができず、帯電不良を生じたり、画像不良を生じたりする場合がある。
【0169】
ところが、帯電バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いると、転写残トナーを磁気ブラシ帯電部材に十分に回収することが可能となり、帯電性を良好にでき、画像性を良好にすることが可能である。
【0170】
交流電圧により転写残トナーを十分に回収できる理由として、正及び負の電圧をかけることになるので、正極性に帯電しているトナーと負極性に帯電しているトナーの両方を回収できるものと考えられる。また、交流電圧を重畳すると、磁気ブラシ帯電部材に転写残トナーが混入しても、帯電性を良好にできる。この理由としては、交流電圧の作用によりキャリアが振動して活発に動くことから、感光体との接触機会が増加することによるものと考えられる。
【0171】
交流電圧の周波数としては、低すぎると、周波数のムラが現われ帯電ムラを生じる。高すぎると、直流電圧に近づくため、効果が薄くなる。よって、周波数は、400ピークHz〜4000Hzが好ましい。交流電圧のピーク間電圧(Vpp、振幅)としては、低すぎると、直流電圧に近づくため、効果が薄くなる。高すぎると、感光ドラムとの間にリークを生じたり、キャリア付着を生じたりする。よって、ピーク間電圧は50〜5000Vが好ましい。
【0172】
本例では、帯電スリーブ21に−700Vの直流電圧と、周波数1000Hz、ピーク間電圧800Vの矩形の交流電圧を重畳したものを印加した。
【0173】
本例では、マグネットロール22としては、実施形態例1で用いた「ロールA」及び「ロールB」と、帯電主極S1の磁束密度が910×10−4T(テスラ)の「ロールC」と、帯電主極S1の磁束密度が890×10−4T(テスラ)の「ロールD」を用い、帯電主極位置位置について種々変化させたときのキャリア搬送性と帯電性について得られた結果を表2に示す。
【0174】
【表2】
表2において、記号の意味は下記の通りである。
「搬送性」の評価に関して
○:搬送性が非常に良好
△:搬送性が良好
×:搬送性が不良
「帯電性」の評価に関して
○:帯電性が非常に良好
△:帯電性が良好
×:帯電性が不良
「ゴースト」の評価に関して
○:ゴーストがなく、非常に良好
△:ゴーストがややあるが、実用上問題ない
×:ゴーストがあり、不良
注)「ゴースト」とは、ある履歴を持ったパターンで画像むらを生じる現象のことをいう。
【0175】
表2に示すように、実験例2−1〜3、2−6、2−8、2−10に示すように、位置Sの磁気力Fθが負の場合は、搬送性、帯電性が良好でゴーストが非常に良好であり、特に、位置B〜Sの磁気力Fθがすべて負である実験例2−1〜3、2−6、2−8は、搬送性が非常に良好で、帯電性が非常に良好であった。しかし、実験例2−4、2−5、2−7に示すように、位置Sの磁気力Fθが正で、位置B〜Sの磁気力Fθが正/負混在している場合は、搬送性が不良で、帯電性が不良であり、ゴーストがやや生じた。
【0176】
このように、スリーブ21上の感光ドラム1との最近接位置Pの磁気力Fθの向きをスリーブ回転下流側へ向けることにより、キャリアの搬送性を良好にすることができる。さらにスリーブ上の接触ニップ部上流側端部位置Bから最近接位置P迄の領域の磁気力の向きをすべてスリーブ回転下流側へ向けることがより好ましい。
【0177】
特に、本例のように磁気ブラシ帯電装置の小型化、低コスト化のために、帯電スリーブを小径化した場合には電荷注入性が不十分になりやすいが、スリーブの回転方向をカウンター方向にして、接触ニップ部上流部に積極的に磁気ブラシの膨らみ層を作成して、接触ニップ部を大きくすることにより、電荷注入性が向上し、良好な帯電性を得ることができる。そして、スリーブの回転方向をカウンター方向にすると、磁気ブラシが滞留し易くなることから搬送性が不十分になりやすいが、スリーブ上の磁気力Fθを適正に設定することは上述のように大きな効果がある。
【0178】
〈その他〉
1)本発明に係る磁気ブラシ帯電装置は、実施形態例の画像形成装置においける像担持体の帯電処理に限らず、広く被帯電体の接触帯電処理手段として有効であることは勿論である。
【0179】
2)被帯電体は、放電による帯電が支配的なものであってもよい。放電による接触帯電系であって、AC帯電方式の接触帯電手段として、本出願人の先の提案に係る特公平2−52058号公報に開示のように、接触帯電部材に所定の直流電圧成分と所定の交番電圧成分(接触帯電部材に直流電圧を印加したときの被帯電体の帯電開始電圧値の2倍以上のピーク間電圧を有する交番電圧)を有する振動電圧を印加する方式は均一帯電性に優れる。交番電圧成分(ACバイアス成分)は正弦波、方形波(矩形波)、三角波、鋸波等適宜の波形のものを使用可能である。直流電源を周期的にオン・オフすることによって形成された矩形波も含む。本発明はこのような接触帯電手段にも適用できる。
【0180】
3)画像形成装置に関して、作像プロセスは任意である。転写方式でも、感光紙(エレクトロファックス紙)や静電記録紙に直接に画像形成する、画像転写工程が無い直接方式でもよい。
【0181】
像担持体は静電記録誘電体などであってもよい。この場合は、該誘電体面を所定の極性・電位に一様に一次帯電した後、除電針ヘッド、電子銃等の除電手段で選択的に除電して目的の静電潜像を書き込み形成する。
【0182】
静電潜像の現像方式・手段は任意であり、反転現像方式でも、正規現像方式であってもよい。
【0183】
転写方法としては、実施形態例に示したローラ転写だけでなく、ブレード転写やその他の接触帯電方式、更に転写ドラムや転写ベルトや中間転写体などを用いて、単色画像形成ばかりでなく多重転写等により多色、フルカラー画像を形成する画像形成装置にも適応可能なことは言うまでもない。
【0184】
また、像担持体としての電子写真感光体や静電記録誘電体を回動ベルト型にし、これに帯電・潜像形成・現像の工程手段により所要の画像情報に対応したトナー像を形成させ、そのトナー像形成部を閲読表示部に位置させて画像表示させ、像担持体は繰り返して表示画像の形成に使用する画像表示装置もある。本発明の画像形成装置にはこのような画像表示装置も含む。
【0185】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁性粒子担持手段と被帯電体との相対移動方向をカウンター方向とすることにより被帯電体に対して磁性粒子担持手段すなわち磁気ブラシの周速差を大きくすることが可能なことから、磁気ブラシを被帯電体に接触させる接触機会を多くすることができて帯電性を向上させることができる。電荷注入帯電系においては電荷注入性が向上し帯電性を向上させることができる。さらに、磁性粒子担持手段の被帯電体との最近接位置における磁気ブラシ磁性粒子に働く磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きが、磁性粒子担持手段の回転方向下流側へ向いていることで、接触ニップにおける磁性粒子の搬送性を良くする適正な磁気力(磁気的な吸引力)を設定することができて、磁性ブラシの滞留による帯電不良を防止することができる。電荷注入帯電系においては注入帯電能力の低下を防ぎ、帯電不良を防止することができる。
【0186】
更にこれに加えて、磁性粒子担持手段に内包させた固定の磁石の、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁極位置を、被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置より磁性粒子担持手段の回転方向に対して下流側にすることにより、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの、磁性粒子担持手段の回転移動方向上流側における磁気ブラシの過度の滞留を防止することができることから、磁気ブラシの滞留による帯電不良を防止することができる。
【0187】
また更には、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きがすべて磁性粒子担持手段の回転方向下流へ向いていることにより、磁性粒子の搬送性をさらに向上させることができることから、磁性ブラシの滞留による帯電不良を防止することができる。電荷注入帯電系においては注入帯電能力の低下を防ぎ、帯電不良を防止することができる。
【0188】
そして、上記の磁気ブラシ帯電装置を用いた画像形成装置にあっては、磁性粒子即ち磁気ブラシの搬送性が良くなることで、帯電能力の低下、帯電不良が防止され、帯電不良に起因する画像不良の発生等の問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における画像形成装置例の概略構成図
【図2】被帯電体としての感光体の層構成模型図
【図3】注入帯電の原理を説明するための図
【図4】(a)は磁気ブラシ帯電装置の構成模型図、(b)は接触ニップ部及び磁極構成の位置を説明するための図
【図5】帯電スリーブ21上の磁気力Fθを説明するための図
【図6】帯電主極S1の磁束密度Brの分布形態および磁気力Fθの分布形態を説明するための図
【図7】帯電スリーブ21上の法線方向の磁束密度Brおよび接線方向の磁束密度Bθの測定法を説明するための図
【図8】実施形態例2におけるクリーナレスシステムの画像形成装置例の概略構成図
【図9】(a)はスリーブ型の磁気ブラシ帯電装置の概略構成模型図、(b)は磁性ローラ型の磁気ブラシ帯電装置の概略構成模型図
【符号の説明】
1 被帯電体(電子写真感光体、感光ドラム)
2 磁気ブラシ帯電部材
21 帯電スリーブ(磁性粒子担持体)
22 マグネットロール
23 磁性粒子(キャリア)
24 磁気ブラシ
25 規制ブレード
3 現像装置
4 転写ローラ
5 定着装置
6 クリーニング装置
10 プロセスカートリッジ
30 記録材(転写材)
E1 帯電バイアス印加電源
Claims (3)
- 固定された磁石を内包する回転可能な導電性の磁性粒子担持手段に磁性粒子を磁気力で拘束して磁気ブラシとして付着保持させた磁気ブラシ帯電部材を有し、該磁気ブラシ帯電部材の磁気ブラシを被帯電体に接触させて磁性粒子担持手段の回転で搬送させ、電圧を印加して被帯電体を帯電する磁気ブラシ帯電装置において、
被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁性粒子担持手段の回転方向が被帯電体に対してカウンター方向であって、磁性粒子担持手段上の磁束密度をB、磁性粒子担持手段の回転方向の角度をθとすると、∂B2/∂θから求めた、磁性粒子に働く磁性粒子担持手段上の接線方向の磁気力の向きが、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップの磁性粒子担持手段の回転方向上流側端部から被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置迄の範囲において、すべて磁性粒子担持手段の回転方向下流側へ向いていることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置。 - 請求項1に記載の磁気ブラシ帯電装置において、磁性粒子担持手段に内包させた固定の磁石の、被帯電体と磁気ブラシの接触ニップにおける磁極位置を、被帯電体と磁性粒子担持手段との最近接位置より磁性粒子担持手段の回転方向に対して下流側にすることを特徴とする磁気ブラシ帯電装置。
- 像担持体を帯電する工程を含む作像プロセスにより画像形成を実行する画像形成装置であり、像担持体の帯電手段が請求項1または2に記載の磁気ブラシ帯電装置であることを特徴とする画像形成装置。
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