JP3543109B2 - ポリエチレンテレフタレートフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済みポリエチレンテレフタレート製ボトルを回収し、これを再利用して、例えば、包装用フィルム、農業用フィルム、文房具フィルム等の各種フィルムや、カード類、名刺、合成紙等、シート類として使用できるポリエチレンテレフタレートフィルム或いはシート及びそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの未配向フィルムは、熱処理されることにより
結晶化された状態となる。この結晶化操作により、透明なフイルムは、白色のフィルムとすることができる。しかしながら、この場合、結晶化によりフィルムがもろくなると言う欠点が指摘されている。また、ジュース、お茶等の飲料水や、ミネラルウオーター等のボトルとして使用後に、回収されたポリエチレンテレフタレート製ボトルの再利用が進められている。この再利用する際には、ポリエチレンテレフタレート製ボトルを一度フレークとして、加熱溶融させて、繊維、シャンプー用容器、各種成形品、卵用容器等として成型して利用されている。回収ポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるフレークを溶融し、フィルム、シート類に再成形するときには、この中に何らかの理由により劣化したフレークが混入されていることがあり、このようなフレークを含有する再生フイルムやシートは、その力学的性質が十分に発揮されない。このように力学的な性質が十分に発揮されない原因としては、成形時の分子量低下と使用後劣化した樹脂分が混入するために、平均的に分子量が低下したことによるものであると考えられる。また、厚いシートに成形した場合に、劣化した樹脂分が混入していると、わずかに黄ばんだシートとなることがある。こうしたフィルム自体は機械的強度において劣り、外観も劣るという問題もあり、回収利用するとこの問題点とされてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、使用後、回収されたポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるポリエチレンテレフタレートを主成分とする高分子フィルムを、再び成形し、白色化された不透明であり、かつ強度などの機械的性質に優れた特性を有するフイルムとして提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるポリエチレンテレフタレートのフレークに、重量比で2%から20%の割合でポリε−カプロラクトンのフレークを配合して得られるフィルムを、延伸比2.5以上の条件下に延伸すると、弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有するものが得られることを見出して、本発明を完成するにいたった。
【0005】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて得たフィルムであって、動的弾性率が3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
(2)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度範囲内で一軸あるいは、二軸延伸させることにより得られる、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
(3)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度で一軸あるいは、二軸延伸させて、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有するフィルムを得ることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
ポリエチレンテレフタレートは、その樹脂の性質上、樹脂原料物質或いは重合物質として再利用することが行われる。これは成形品とした後でも、同様に行うことができる。本発明では、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート製ボトルを原料として対象とすることができる。ポリエチレンテレフタレートの成形品は、ボトルを始め、シートとして多方面に利用されており、これらをリサイクルして用いるものを対象とすることができる。本発明では、これらの内のポリエチレンテレフタレート製ボトルを用いる。
始めに、ポリエチレンテレフタレート製ボトルは、切断され、フレークとする。フレークの大きさは、次の段階の、粒状ポリ(ε−カプロラクトン)との溶融処理において均一に混合されるものであればよく、粒状ポリ(ε−カプロラクトン)の粒径に合わせて、同様の大きさのものとするればよい。一般的には、押出機等の大きさにより定めれば、差し支えない。
【0007】
次に、前記のようにして得られるポリエチレンテレフタレートのフレークと、ポリ(ε−カプロラクトン)の粒状物をドライブレンドする。このようにして得られる混合物を、押出機、好ましくは、二軸押出機内に導入する。この混合割合を、ポリエチレンテレフタレートに対して重量比で2%から20%として、ポリ(ε−カプロラクトン)を配合する。この割合は、好ましくは5〜15%以下の範囲である。この範囲以下の場合には、カプロラクトンの効果が得られず、白色、及び隠蔽性に劣るものが得られるにすぎない。この範囲を超える場合には動的弾性率が低いものが得られるにすぎない。
次に、二軸押出機内において、前記混合物を加熱して融解混練する。加熱融解は、両者の融点(ポリエチレンテレフタレートの融点は264℃、ポリε−カプロラクトンでは、70℃)以上に、従って、264℃以上に加熱を行う必要がある。実際にサンプルで加熱融解させた状態を調べた結果を示した図1から明らかである。 264℃以上の温度では延伸比(Draw ratio)に関係なく、押出し操作を行うことができることが分かる。
本発明の、ポリエチレンテレフタレートに対して5%及び10%のポリε−カプロラクトンを含有する組成物を、70〜80℃で延伸を行う際の、融解熱(ΔHm−ΔHcc)と延伸比の関係を示すと、図2に示す通りである。延伸比が2.5を越えると融解熱が増加することを示している。
以上の結果から、ポリエチレンテレフタレートの融解点以上である264℃で融解させ、その後、押出比2.5以上の条件下であれば、良好な状態で押出すことができることが分かる。このようにして得られるポリエチレンテレフタレートとポリε−カプロラクトンの熱融解物を押出機に付設したT−ダイから押出してフィルム状に成形する。
【0008】
得られたフイルムに延伸操作を施す。
図3には、延伸比を1.0〜3.8まで変化させたときの延伸温度と動的弾性率の関係の実測結果を示した。この関係から以下のことが分かる。このフイルムに延伸操作をほどこす際の延伸操作は、フィルムをポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度(69℃)をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度が採用される。
延伸操作は、一軸あるいは、二軸延伸する。延伸の際の延伸比は、一軸方向に2.5倍以上で行うことが必要である。通常、この延伸比は、2.5以上の条件で行えばよい。
本発明のポリエチレンテレフタレート及びポリ(ε−カプロラクトン)組成物に、延伸操作を施すことにより、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖を高度に配向させることができる。その結果、動的弾性率3GPa以上のものとなり、白色を呈し、一方の面から他の面を見通すこができない隠蔽性を有する状態とすることができる。
延伸操作自体は、ポリエチレンテレフタレートの延伸方法として公知の方法である。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)からなる混合物を、フィルムとし延伸操作を行った報告例はない。
【0009】
前記したように、ポリエチレンテレフタレート及びポリ(ε−カプロラクトン)の混合物の一軸或いは二軸延伸処理生成物の性状は、以下の通りである。
本発明で得られるポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比10%、同5%)及びポリ(ε−カプロラクトン)を含まない場合の、示差走査熱量測定結果は、図4に示す通りである。
前記の材料の一部であるポリ(ε−カプロラクトン)5%を含有する場合について、延伸操作を変化させた場合の示差走査熱量測定結果は、図5(a)に示すとおりである。同じく、ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含有する場合について、同様の操作を行った結果は、図5(b)に示すとおりである。
本発明で得られる前記と同じポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%を含む場合、含まない場合)の動的弾性率(GPa)について、延伸比(λ)を変化させたときの変化は、図6に示すとおりである。この結果より、通常の延伸操作を行う温度(80℃)で、−150℃及び23℃に保たれているポリエステルシートを延伸比2.5以上の条件下で延伸して得られる前記のポリエステルフイルムの動的弾性率は3以上であることが分かる。そして、動的弾性率の値として3以上の値のものが得られると言うことは予期できないことである。
同じく、 延伸温度を70℃及び80℃の異なる温度で行ったときの、延伸比とMOR値の関係を示したものが、図7である。延伸比を2.5以上とすることによりMOR値を高い温度で行うことができることを示している。
ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ε−カプロラクトン)及びその組成物(ポリ(ε−カプロラクトン)の割合は10%)について分子配向パターンを図8に示した。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明の内容を詳細に説明する。本発明は、これに限定されるものではない。
測定操作に使用したものは以下の通りである。
(分子配向)測定装置としては、王子計測社製MOA3020Aを用いた。
(動的弾性率)測定装置としては、A&D社製 レオバイブロンDDV-25FPを用いた。
【0011】
実施例1
原料ポリエチレンテレフタレートとして、使用後、廃棄されたポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルして、得られるフレークを用いた。この融点(DSCのピーク温度)は、255℃であり、ガラス転移温度Tgは77.7℃であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)として、UCC社製Tone P787を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)は64℃であった。両者を真空下で24時間以上乾燥したのち、室温でポリエチレンテレフタレート95重量%とポリ(ε−カプロラクトン)5重量%の割合でドライブレンドした。この混合物を二軸押出機で290℃に加熱溶融、混練したのち、幅60mm、隙間0.3mmのT−ダイからシート状に押出し、80℃に設定したチルロールを介して冷却後に巻き取った。こうして得られた厚さ約0.25mmのシートを所定の温度(70℃)に加熱した恒温槽の中で、一軸方向に延伸比 3.5倍に延伸加工したところ、表面状態の良好な白色、隠蔽性のフィルムを得ることができた。このフィルムの23℃においての長手方向の動的弾性率は7.3GPaであった。
ポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比10%、及び5%)及びポリエチレンフタレートのみの場合の応力−歪み曲線の測定結果を図9に示した。
【0012】
実施例2〜5
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)の組成比を変えた組成物から得られたフィルムを延伸加工する際の、延伸温度、延伸比、得られたフィルムに付与された弾性率、及び着色、隠蔽性を、以下の表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【発明の効果】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、その主成分が使用後廃棄され、リサイクルされたフレークからなるポリエチレンテレフタレートであるにもかかわらず、弾性率が高く、白色、隠蔽性にすぐれたものである。その主成分がポリエチレンテレフタレートであるにもかかわらず、高い弾性率を有する理由は、ブレンドされた、ポリ(ε−カプロラクトン)が、延伸温度では、融解しており、フィルムの延伸に際して、ポリエチレンテレフタレートを可塑化して、容易に延伸効果を発揮することによると考えられる。また、本発明のフィルムは白色、隠蔽性にすぐれている理由は、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)とは、非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリエチレンテレフタレート相から分離したポリ(ε−カプロラクトン)の結晶が可視光線を散乱させるためと考えられる。本発明のポリエステルフィルムは、包装用フィルム、農業用フィルム、文房具フィルム等の各種フィルムや、カード類、名刺、合成紙等、各種フィルム、シートに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%含む)について、延伸比と融解温度及び結晶化温度の関係を示す図である。
【図2】ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%を含む)について、融解熱(ΔHm−ΔHcc)と延伸比の関係を示す図である。
【図3】測定周波数100Hzのときの、ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含む)について、 延伸比を変化させたときの、動的弾性率の温度変化を示す図である。
【図4】ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比5,及び10%)の示差走査熱量測定結果である。
【図5】 ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%を含有する場合)について、延伸操作を変化させた場合の示差走査熱量測定結果(5a)及び、ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含有する場合の同様の操作を行った結果は(5b)を示す。
【図6】測定周波数100Hzのときの、ポリエチレンフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%含有する場合、含まない場合)について、延伸比(λ)を変化させたときのポリエチレンテレフタレートの動的弾性率(GPa)の変化を示す。
【図7】延伸を70℃及び80℃の異なる温度で行ったときの、延伸比とMOR値の関係を示す図である。
【図8】ポリエチレンテレフタレート、ε−カプロラクトン及びその組成物(ε−カプロラクトンの割合は10%)の分子配向パターンである。
【図9】 ポリエチレンテレフタレート(ε−カプロラクトンとの混合比10%、同5%)及びε−カプロラクトンを含まない場合の応力−歪み曲線である。
前記と同じ材料を用いて示す通りである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用済みポリエチレンテレフタレート製ボトルを回収し、これを再利用して、例えば、包装用フィルム、農業用フィルム、文房具フィルム等の各種フィルムや、カード類、名刺、合成紙等、シート類として使用できるポリエチレンテレフタレートフィルム或いはシート及びそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの未配向フィルムは、熱処理されることにより
結晶化された状態となる。この結晶化操作により、透明なフイルムは、白色のフィルムとすることができる。しかしながら、この場合、結晶化によりフィルムがもろくなると言う欠点が指摘されている。また、ジュース、お茶等の飲料水や、ミネラルウオーター等のボトルとして使用後に、回収されたポリエチレンテレフタレート製ボトルの再利用が進められている。この再利用する際には、ポリエチレンテレフタレート製ボトルを一度フレークとして、加熱溶融させて、繊維、シャンプー用容器、各種成形品、卵用容器等として成型して利用されている。回収ポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるフレークを溶融し、フィルム、シート類に再成形するときには、この中に何らかの理由により劣化したフレークが混入されていることがあり、このようなフレークを含有する再生フイルムやシートは、その力学的性質が十分に発揮されない。このように力学的な性質が十分に発揮されない原因としては、成形時の分子量低下と使用後劣化した樹脂分が混入するために、平均的に分子量が低下したことによるものであると考えられる。また、厚いシートに成形した場合に、劣化した樹脂分が混入していると、わずかに黄ばんだシートとなることがある。こうしたフィルム自体は機械的強度において劣り、外観も劣るという問題もあり、回収利用するとこの問題点とされてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、使用後、回収されたポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるポリエチレンテレフタレートを主成分とする高分子フィルムを、再び成形し、白色化された不透明であり、かつ強度などの機械的性質に優れた特性を有するフイルムとして提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレンテレフタレート製ボトルから得られるポリエチレンテレフタレートのフレークに、重量比で2%から20%の割合でポリε−カプロラクトンのフレークを配合して得られるフィルムを、延伸比2.5以上の条件下に延伸すると、弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有するものが得られることを見出して、本発明を完成するにいたった。
【0005】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて得たフィルムであって、動的弾性率が3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
(2)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度範囲内で一軸あるいは、二軸延伸させることにより得られる、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
(3)ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度で一軸あるいは、二軸延伸させて、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有するフィルムを得ることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
ポリエチレンテレフタレートは、その樹脂の性質上、樹脂原料物質或いは重合物質として再利用することが行われる。これは成形品とした後でも、同様に行うことができる。本発明では、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート製ボトルを原料として対象とすることができる。ポリエチレンテレフタレートの成形品は、ボトルを始め、シートとして多方面に利用されており、これらをリサイクルして用いるものを対象とすることができる。本発明では、これらの内のポリエチレンテレフタレート製ボトルを用いる。
始めに、ポリエチレンテレフタレート製ボトルは、切断され、フレークとする。フレークの大きさは、次の段階の、粒状ポリ(ε−カプロラクトン)との溶融処理において均一に混合されるものであればよく、粒状ポリ(ε−カプロラクトン)の粒径に合わせて、同様の大きさのものとするればよい。一般的には、押出機等の大きさにより定めれば、差し支えない。
【0007】
次に、前記のようにして得られるポリエチレンテレフタレートのフレークと、ポリ(ε−カプロラクトン)の粒状物をドライブレンドする。このようにして得られる混合物を、押出機、好ましくは、二軸押出機内に導入する。この混合割合を、ポリエチレンテレフタレートに対して重量比で2%から20%として、ポリ(ε−カプロラクトン)を配合する。この割合は、好ましくは5〜15%以下の範囲である。この範囲以下の場合には、カプロラクトンの効果が得られず、白色、及び隠蔽性に劣るものが得られるにすぎない。この範囲を超える場合には動的弾性率が低いものが得られるにすぎない。
次に、二軸押出機内において、前記混合物を加熱して融解混練する。加熱融解は、両者の融点(ポリエチレンテレフタレートの融点は264℃、ポリε−カプロラクトンでは、70℃)以上に、従って、264℃以上に加熱を行う必要がある。実際にサンプルで加熱融解させた状態を調べた結果を示した図1から明らかである。 264℃以上の温度では延伸比(Draw ratio)に関係なく、押出し操作を行うことができることが分かる。
本発明の、ポリエチレンテレフタレートに対して5%及び10%のポリε−カプロラクトンを含有する組成物を、70〜80℃で延伸を行う際の、融解熱(ΔHm−ΔHcc)と延伸比の関係を示すと、図2に示す通りである。延伸比が2.5を越えると融解熱が増加することを示している。
以上の結果から、ポリエチレンテレフタレートの融解点以上である264℃で融解させ、その後、押出比2.5以上の条件下であれば、良好な状態で押出すことができることが分かる。このようにして得られるポリエチレンテレフタレートとポリε−カプロラクトンの熱融解物を押出機に付設したT−ダイから押出してフィルム状に成形する。
【0008】
得られたフイルムに延伸操作を施す。
図3には、延伸比を1.0〜3.8まで変化させたときの延伸温度と動的弾性率の関係の実測結果を示した。この関係から以下のことが分かる。このフイルムに延伸操作をほどこす際の延伸操作は、フィルムをポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度(69℃)をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度が採用される。
延伸操作は、一軸あるいは、二軸延伸する。延伸の際の延伸比は、一軸方向に2.5倍以上で行うことが必要である。通常、この延伸比は、2.5以上の条件で行えばよい。
本発明のポリエチレンテレフタレート及びポリ(ε−カプロラクトン)組成物に、延伸操作を施すことにより、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖を高度に配向させることができる。その結果、動的弾性率3GPa以上のものとなり、白色を呈し、一方の面から他の面を見通すこができない隠蔽性を有する状態とすることができる。
延伸操作自体は、ポリエチレンテレフタレートの延伸方法として公知の方法である。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)からなる混合物を、フィルムとし延伸操作を行った報告例はない。
【0009】
前記したように、ポリエチレンテレフタレート及びポリ(ε−カプロラクトン)の混合物の一軸或いは二軸延伸処理生成物の性状は、以下の通りである。
本発明で得られるポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比10%、同5%)及びポリ(ε−カプロラクトン)を含まない場合の、示差走査熱量測定結果は、図4に示す通りである。
前記の材料の一部であるポリ(ε−カプロラクトン)5%を含有する場合について、延伸操作を変化させた場合の示差走査熱量測定結果は、図5(a)に示すとおりである。同じく、ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含有する場合について、同様の操作を行った結果は、図5(b)に示すとおりである。
本発明で得られる前記と同じポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%を含む場合、含まない場合)の動的弾性率(GPa)について、延伸比(λ)を変化させたときの変化は、図6に示すとおりである。この結果より、通常の延伸操作を行う温度(80℃)で、−150℃及び23℃に保たれているポリエステルシートを延伸比2.5以上の条件下で延伸して得られる前記のポリエステルフイルムの動的弾性率は3以上であることが分かる。そして、動的弾性率の値として3以上の値のものが得られると言うことは予期できないことである。
同じく、 延伸温度を70℃及び80℃の異なる温度で行ったときの、延伸比とMOR値の関係を示したものが、図7である。延伸比を2.5以上とすることによりMOR値を高い温度で行うことができることを示している。
ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ε−カプロラクトン)及びその組成物(ポリ(ε−カプロラクトン)の割合は10%)について分子配向パターンを図8に示した。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明の内容を詳細に説明する。本発明は、これに限定されるものではない。
測定操作に使用したものは以下の通りである。
(分子配向)測定装置としては、王子計測社製MOA3020Aを用いた。
(動的弾性率)測定装置としては、A&D社製 レオバイブロンDDV-25FPを用いた。
【0011】
実施例1
原料ポリエチレンテレフタレートとして、使用後、廃棄されたポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルして、得られるフレークを用いた。この融点(DSCのピーク温度)は、255℃であり、ガラス転移温度Tgは77.7℃であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)として、UCC社製Tone P787を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)は64℃であった。両者を真空下で24時間以上乾燥したのち、室温でポリエチレンテレフタレート95重量%とポリ(ε−カプロラクトン)5重量%の割合でドライブレンドした。この混合物を二軸押出機で290℃に加熱溶融、混練したのち、幅60mm、隙間0.3mmのT−ダイからシート状に押出し、80℃に設定したチルロールを介して冷却後に巻き取った。こうして得られた厚さ約0.25mmのシートを所定の温度(70℃)に加熱した恒温槽の中で、一軸方向に延伸比 3.5倍に延伸加工したところ、表面状態の良好な白色、隠蔽性のフィルムを得ることができた。このフィルムの23℃においての長手方向の動的弾性率は7.3GPaであった。
ポリエチレンテレフタレートと(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比10%、及び5%)及びポリエチレンフタレートのみの場合の応力−歪み曲線の測定結果を図9に示した。
【0012】
実施例2〜5
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)の組成比を変えた組成物から得られたフィルムを延伸加工する際の、延伸温度、延伸比、得られたフィルムに付与された弾性率、及び着色、隠蔽性を、以下の表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【発明の効果】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、その主成分が使用後廃棄され、リサイクルされたフレークからなるポリエチレンテレフタレートであるにもかかわらず、弾性率が高く、白色、隠蔽性にすぐれたものである。その主成分がポリエチレンテレフタレートであるにもかかわらず、高い弾性率を有する理由は、ブレンドされた、ポリ(ε−カプロラクトン)が、延伸温度では、融解しており、フィルムの延伸に際して、ポリエチレンテレフタレートを可塑化して、容易に延伸効果を発揮することによると考えられる。また、本発明のフィルムは白色、隠蔽性にすぐれている理由は、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ε−カプロラクトン)とは、非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリエチレンテレフタレート相から分離したポリ(ε−カプロラクトン)の結晶が可視光線を散乱させるためと考えられる。本発明のポリエステルフィルムは、包装用フィルム、農業用フィルム、文房具フィルム等の各種フィルムや、カード類、名刺、合成紙等、各種フィルム、シートに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%含む)について、延伸比と融解温度及び結晶化温度の関係を示す図である。
【図2】ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%を含む)について、融解熱(ΔHm−ΔHcc)と延伸比の関係を示す図である。
【図3】測定周波数100Hzのときの、ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含む)について、 延伸比を変化させたときの、動的弾性率の温度変化を示す図である。
【図4】ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)との混合比5,及び10%)の示差走査熱量測定結果である。
【図5】 ポリエチレンテレフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%を含有する場合)について、延伸操作を変化させた場合の示差走査熱量測定結果(5a)及び、ポリ(ε−カプロラクトン)10%を含有する場合の同様の操作を行った結果は(5b)を示す。
【図6】測定周波数100Hzのときの、ポリエチレンフタレート(ポリ(ε−カプロラクトン)5%及び10%含有する場合、含まない場合)について、延伸比(λ)を変化させたときのポリエチレンテレフタレートの動的弾性率(GPa)の変化を示す。
【図7】延伸を70℃及び80℃の異なる温度で行ったときの、延伸比とMOR値の関係を示す図である。
【図8】ポリエチレンテレフタレート、ε−カプロラクトン及びその組成物(ε−カプロラクトンの割合は10%)の分子配向パターンである。
【図9】 ポリエチレンテレフタレート(ε−カプロラクトンとの混合比10%、同5%)及びε−カプロラクトンを含まない場合の応力−歪み曲線である。
前記と同じ材料を用いて示す通りである。
Claims (3)
- ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて得たフィルムであって、動的弾性率が3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
- ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、溶融させて、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度範囲内で一軸あるいは、二軸延伸させることにより得られる、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有することを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム。
- 「ポリエチレンテレフタレート製ボトルをリサイクルしたフレークに、ポリ(ε−カプロラクトン)を重量比で2%から20%配合後、フィルム状に押出成形し、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃以上で、(Tg+20)℃以下の温度で一軸あるいは、二軸延伸させて、動的弾性率 3GPa以上であり、白色、隠蔽性を有するフィルムを得ることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法。
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