JP3834604B2 - 柔軟な生分解性脂肪族ポリエステルシート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟で透明な生分解性脂肪族ポリエステルシート及びその製造方法
である。
【0002】
【従来の技術】
生分解性プラスチックとは、高分子材料であるプラスチックが、土壌、堆肥中、又は、海水、淡水などの水中などの、環境下で、微生物や酵素によって分解され、低分子化合物になる材料である。このような材料に対する社会的要望は高く、従来から、脂肪族ポリエステルの一部は生分解性を示すことが知られており、又、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリブチレンサクシネートは、このような材料の性質が顕著であることが知られている。また、ポリ(ε−カプロラクトン)は海水中での生分解が顕著で、ポリブチレンサクシネートは土壌中での生分解を生じることが知られている。また、ポリ(ε−カプロラクトン)は耐衝撃性を示すことが知られている。このように生分解性を有し、良好な特性を生かすために、ポリブチレンサクシネートにポリ(ε−カプロラクトン)をブレンドすることにより、お互いの性質を補完することを行うことが期待されている。
しかしながら、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリブチレンサクシネートは、本来、結晶性が高く、通常得られるシートは、白色不透明の状態にあり、透明性のある、厚手のシートを得ることは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートのブレンドからなる脂肪族ポリエステルシートからなり、柔軟で透明性を示すシート及びその製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとは、非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリブチレンサクシネート相とポリブチレンサクシネート相から相分離した、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)が独立に結晶化し、その結晶が可視光線を散乱させるため、通常白色不透明である。
これに対して、本発明者らは、以下のことを実験により見出したものである。ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートからなるブレンドを押出成形しシート状とし、得られたシートを、25℃以上であって、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下で、長手方向に4倍以上の延伸倍率の条件下にロール圧延を行うと、透明性のシートを得ることができる。ロール圧延により透明化する理由は、シート中に含まれていた不透明化の原因となっていた球晶粒子の微細化することによると考えられる。
【0005】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ポリ(ε−カプロラクトン) 98重量%から60重量% 及び ポリブチレンサクシネート 2 重量%から40重量%をブレンドし成形して得られるシートであって、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートらなる脂肪族ポリエステルシート。
(2) ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量% 及び ポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドし、シート状とした後に、押出成形したシートであって、25℃以上で、かつポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延して得られる、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とする ポリ(ε−カプロラクトン)及び ポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシート。
(3) ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量%とポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドして、シート状とした後に、押出成形し、25℃以上で、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延し、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であるポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートを製造することを特徴とするポリブチレンサクシネート及びポリ(ε−カプロラクトン)からなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
(4)前記記載の方法のシートを押出成形した後に、二軸押出機により、ポリブチレンサクシネートの融点以上の温度下に、溶融混練し、直接Tダイから押出し、冷却し、シートを製造することを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルブレンドは、ポリ(ε−カプロラクトン)が98重量%から60重量%であり、ポリブチレンサクシネートが2重量%から40重量%から構成される。
これらの範囲の中の、好ましい範囲は、ポリ(ε−カプロラクトン)は、95重量%から75重量%であり、ポリブチレンサクシネートは、5重量%から25重量%である。ポリ(ε−カプロラクトン)の含有量が 98重量%を超える場合及び60重量%に満たない場合には、得られるシートの特性は好ましいものではなく、柔軟であり、透明性のあるシートは得ることができない。
シートを製造する際には、これらの割合となるように原料を混合させる。混合に際し、原料物質は一般には粒状物で供給されるので、粒状物の状態で混合させるドライブレンドによる方法が一般的に用いられる。
【0007】
前記のブレンド操作を施したのちに、二軸押出機により、ポリブチレンサクシネートの融点以上の温度下に、溶融させて十分に混練し、その後、直接Tダイから押出し、冷却し、シート状とする。この操作は装置内の条件を、条件に適した値に設定する。
得られるシートの厚みは、フイルムに比べて厚みのあるものである。一般に、このシートの厚みは0.3mm 〜 2mm 、 好ましくは、0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
【0008】
このようにして得られたシートに、延伸操作を施す。この延伸操作の条件は以下の範囲の条件が用いられる。
▲1▼ 温度条件について
ポリブチレンサクシネート及びポリ(ε−カプロラクトン)からなるブレンド溶融物を、25℃(室温)以上の値であって、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度の条件下に行う。当然のことであるが、融点以上の条件では延伸操作を施すことができない。 Tm−5℃以下の条件下に行うことは、ポリ(ε−カプロラクトン)の融解と再結晶化をさけることができる。この温度を超えた温度とした場合には、ポリ(ε−カプロラクトン)が再結晶化することにより、白濁する結果となり、結果として、これを超えた温度は採用できない。
▲2▼ 延伸倍率について
延伸倍率は、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延することにより行う。
4倍に満たない条件下に延伸を行った場合には、強度や透明性の点で満足する結果が得られない。このような延伸条件は、従来から、ポリプロピレン等の高分子物の延伸に利用される公知の方法(たとえば、特開平7−164461号公報)において用いられている条件であるが、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)のブレンドに対して、このような条件が適用されたことはない。このような過酷な条件を採用した場合に、良好な結果を得られると言うことは予期できないことである。
延伸倍率の上限は、適宜定めることができるが、一般的には、10倍以下、通常、7倍程度である。
このようなことから、延伸倍率は4〜10、好ましくは4〜7の範囲である。従来知られているポリプロピレン等の延伸の条件を、本発明のブレンドのシートに対して前記の条件を施した場合には、物質の構造などの点から好ましくない結果が生ずるのではないかということが予見される。しかしながら、本発明の条件では満足することができる結果が得られるが、このような良好な結果が得られると言うことは予め予見できるというものではない。
本発明の場合には、前記の特定の温度下に特定の延伸操作を行ったところに特徴がある。特定の延伸操作を他の条件を組み合わせて始めて良好な結果が得られる。仮に、温度或いは延伸操作の条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0009】
前記の範囲にあるポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)のブレンドを、前記の条件下に延伸操作を施すことにより得られるシートは、一軸配向シートであり、このシートの物性値は以下の値を示している。
このシ−トの25℃でのシート方向への音波弾性率は、1.2GPa以下である。
音波弾性率は、シートの特性に関し、伸びに対する応力、弾性、剛直性や柔軟性等を評価する際に用いられる値である。
本発明の場合には、音波弾性率は1.2GPa以下の値の特性値のシートを得ることができる。この特性値のものは、伸びに対する応力が、1.2GPa以下であることを示しており、柔軟なシートであるということができる。音波弾性率を測定することにより、通常の伸びに対する応力を測定する方法が使用できない、或いは使用しにくい場合にも、弾性率を測定することができる測定方法である。
ヘイズ値は、プラスチックの内部又は表面の曇った状態の外観を評価する際に用いられる値である。この値の測定方法は、JIS K7105に記載されている。
本発明では、シートのヘイズ値は20%以下の値のものが得られる。
本来、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)は、相互に非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリブチレンサクシネート相とポリブチレンサクシネート相から相分離し、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)が独立に結晶化し、その結晶が可視光線を散乱させるため、通常白色不透明な状態である。
【0010】
本発明においては、シートとする際に、ロール圧延操作をほどこすことにより、シートを透明化することができる。透明化することができる理由は、シート中に含まれまれていた不透明化の原因となっていた球晶粒子の微細化することにより、可視光線の散乱を抑えることができるためであると考えられる。
【0011】
このような特性を有する本発明のシートは、分解性プラスチックの特性を有すると共に、透明性を有し、光透過性であり、包装されたときには被包装物を見ることができるし、農業施設等をこのシートで囲ったときには光が中に入り込むことができるので、包装用シート、農業用シートとして用いることができる。
本発明のシートが、25℃での音波弾性率が1.2以下であり、ヘイズ値が20%以下のシートであるが、このシートは、柔軟であり、かつ透明性にもすぐれたものであることを意味している。
【0012】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例中において、音波弾性率、ヘイズ値は以下のようにして測定されたものである。
音波弾性率の測定に当たっては、オリエンテック社製 レオバイブロンDDV−5Bを用いて測定した結果である。測定条件は、周波数は10kHzで、室温(25℃)で測定した結果である。
ヘイズ値の測定では、スガ試験機株式会社製のヘイズ値測定装置 「直読式へイズメータHGM−2DP」を用いて測定した結果である。
【0013】
実施例1
原料のポリ(ε−カプロラクトン)として、UCC社製TONE P787を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)は64℃であった。また、ポリブチレンサクシネートとして、昭和高分子製ビオノーレ#1010を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)114℃であった。両者を真空下で24時間以上乾燥したのち、室温度でポリ(ε−カプロラクトン)90重量%と、ポリブチレンサクシネート10重量%の割合でドライブレンドした。この混合物を二軸押出機内で160℃に加熱溶融、混練したのち、幅60mm、隙間1.0mmのTダイからシート状に押出し、室温に設定したチルロールで冷却固化して、巻き取った。こうして得られたシートを表面温度45℃に加熱した一対の鋼製ロールの間で圧延したところ、透明性が良く、表面状態の良好なシートを得ることができた。
【0014】
実施例2
実施例1において、ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとの組成比を変えた組成物から得られたシートを圧延した際のロールの温度Tr、圧延倍率λ、得られたシートの音波弾性率(25℃)、ヘイズ値との関係を次表に示す。
【0015】
【表ー1】
【0016】
【発明の効果】
本発明の生分解性脂肪族ポリエステルシートは、その主成分がポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとからなるものであり、透明性及び柔軟性を有するものである。本発明のシートは包装用シート、農業用シート等の多目的な方面の各種シートとして適用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟で透明な生分解性脂肪族ポリエステルシート及びその製造方法
である。
【0002】
【従来の技術】
生分解性プラスチックとは、高分子材料であるプラスチックが、土壌、堆肥中、又は、海水、淡水などの水中などの、環境下で、微生物や酵素によって分解され、低分子化合物になる材料である。このような材料に対する社会的要望は高く、従来から、脂肪族ポリエステルの一部は生分解性を示すことが知られており、又、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリブチレンサクシネートは、このような材料の性質が顕著であることが知られている。また、ポリ(ε−カプロラクトン)は海水中での生分解が顕著で、ポリブチレンサクシネートは土壌中での生分解を生じることが知られている。また、ポリ(ε−カプロラクトン)は耐衝撃性を示すことが知られている。このように生分解性を有し、良好な特性を生かすために、ポリブチレンサクシネートにポリ(ε−カプロラクトン)をブレンドすることにより、お互いの性質を補完することを行うことが期待されている。
しかしながら、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリブチレンサクシネートは、本来、結晶性が高く、通常得られるシートは、白色不透明の状態にあり、透明性のある、厚手のシートを得ることは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートのブレンドからなる脂肪族ポリエステルシートからなり、柔軟で透明性を示すシート及びその製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとは、非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリブチレンサクシネート相とポリブチレンサクシネート相から相分離した、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)が独立に結晶化し、その結晶が可視光線を散乱させるため、通常白色不透明である。
これに対して、本発明者らは、以下のことを実験により見出したものである。ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートからなるブレンドを押出成形しシート状とし、得られたシートを、25℃以上であって、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下で、長手方向に4倍以上の延伸倍率の条件下にロール圧延を行うと、透明性のシートを得ることができる。ロール圧延により透明化する理由は、シート中に含まれていた不透明化の原因となっていた球晶粒子の微細化することによると考えられる。
【0005】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)ポリ(ε−カプロラクトン) 98重量%から60重量% 及び ポリブチレンサクシネート 2 重量%から40重量%をブレンドし成形して得られるシートであって、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートらなる脂肪族ポリエステルシート。
(2) ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量% 及び ポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドし、シート状とした後に、押出成形したシートであって、25℃以上で、かつポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延して得られる、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とする ポリ(ε−カプロラクトン)及び ポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシート。
(3) ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量%とポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドして、シート状とした後に、押出成形し、25℃以上で、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延し、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であるポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートを製造することを特徴とするポリブチレンサクシネート及びポリ(ε−カプロラクトン)からなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
(4)前記記載の方法のシートを押出成形した後に、二軸押出機により、ポリブチレンサクシネートの融点以上の温度下に、溶融混練し、直接Tダイから押出し、冷却し、シートを製造することを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルブレンドは、ポリ(ε−カプロラクトン)が98重量%から60重量%であり、ポリブチレンサクシネートが2重量%から40重量%から構成される。
これらの範囲の中の、好ましい範囲は、ポリ(ε−カプロラクトン)は、95重量%から75重量%であり、ポリブチレンサクシネートは、5重量%から25重量%である。ポリ(ε−カプロラクトン)の含有量が 98重量%を超える場合及び60重量%に満たない場合には、得られるシートの特性は好ましいものではなく、柔軟であり、透明性のあるシートは得ることができない。
シートを製造する際には、これらの割合となるように原料を混合させる。混合に際し、原料物質は一般には粒状物で供給されるので、粒状物の状態で混合させるドライブレンドによる方法が一般的に用いられる。
【0007】
前記のブレンド操作を施したのちに、二軸押出機により、ポリブチレンサクシネートの融点以上の温度下に、溶融させて十分に混練し、その後、直接Tダイから押出し、冷却し、シート状とする。この操作は装置内の条件を、条件に適した値に設定する。
得られるシートの厚みは、フイルムに比べて厚みのあるものである。一般に、このシートの厚みは0.3mm 〜 2mm 、 好ましくは、0.5mm〜1.5mmの範囲にある。
【0008】
このようにして得られたシートに、延伸操作を施す。この延伸操作の条件は以下の範囲の条件が用いられる。
▲1▼ 温度条件について
ポリブチレンサクシネート及びポリ(ε−カプロラクトン)からなるブレンド溶融物を、25℃(室温)以上の値であって、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度の条件下に行う。当然のことであるが、融点以上の条件では延伸操作を施すことができない。 Tm−5℃以下の条件下に行うことは、ポリ(ε−カプロラクトン)の融解と再結晶化をさけることができる。この温度を超えた温度とした場合には、ポリ(ε−カプロラクトン)が再結晶化することにより、白濁する結果となり、結果として、これを超えた温度は採用できない。
▲2▼ 延伸倍率について
延伸倍率は、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延することにより行う。
4倍に満たない条件下に延伸を行った場合には、強度や透明性の点で満足する結果が得られない。このような延伸条件は、従来から、ポリプロピレン等の高分子物の延伸に利用される公知の方法(たとえば、特開平7−164461号公報)において用いられている条件であるが、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)のブレンドに対して、このような条件が適用されたことはない。このような過酷な条件を採用した場合に、良好な結果を得られると言うことは予期できないことである。
延伸倍率の上限は、適宜定めることができるが、一般的には、10倍以下、通常、7倍程度である。
このようなことから、延伸倍率は4〜10、好ましくは4〜7の範囲である。従来知られているポリプロピレン等の延伸の条件を、本発明のブレンドのシートに対して前記の条件を施した場合には、物質の構造などの点から好ましくない結果が生ずるのではないかということが予見される。しかしながら、本発明の条件では満足することができる結果が得られるが、このような良好な結果が得られると言うことは予め予見できるというものではない。
本発明の場合には、前記の特定の温度下に特定の延伸操作を行ったところに特徴がある。特定の延伸操作を他の条件を組み合わせて始めて良好な結果が得られる。仮に、温度或いは延伸操作の条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0009】
前記の範囲にあるポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)のブレンドを、前記の条件下に延伸操作を施すことにより得られるシートは、一軸配向シートであり、このシートの物性値は以下の値を示している。
このシ−トの25℃でのシート方向への音波弾性率は、1.2GPa以下である。
音波弾性率は、シートの特性に関し、伸びに対する応力、弾性、剛直性や柔軟性等を評価する際に用いられる値である。
本発明の場合には、音波弾性率は1.2GPa以下の値の特性値のシートを得ることができる。この特性値のものは、伸びに対する応力が、1.2GPa以下であることを示しており、柔軟なシートであるということができる。音波弾性率を測定することにより、通常の伸びに対する応力を測定する方法が使用できない、或いは使用しにくい場合にも、弾性率を測定することができる測定方法である。
ヘイズ値は、プラスチックの内部又は表面の曇った状態の外観を評価する際に用いられる値である。この値の測定方法は、JIS K7105に記載されている。
本発明では、シートのヘイズ値は20%以下の値のものが得られる。
本来、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)は、相互に非相溶性であり、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点以下、すなわち64℃以下の温度では、ポリブチレンサクシネート相とポリブチレンサクシネート相から相分離し、ポリブチレンサクシネートとポリ(ε−カプロラクトン)が独立に結晶化し、その結晶が可視光線を散乱させるため、通常白色不透明な状態である。
【0010】
本発明においては、シートとする際に、ロール圧延操作をほどこすことにより、シートを透明化することができる。透明化することができる理由は、シート中に含まれまれていた不透明化の原因となっていた球晶粒子の微細化することにより、可視光線の散乱を抑えることができるためであると考えられる。
【0011】
このような特性を有する本発明のシートは、分解性プラスチックの特性を有すると共に、透明性を有し、光透過性であり、包装されたときには被包装物を見ることができるし、農業施設等をこのシートで囲ったときには光が中に入り込むことができるので、包装用シート、農業用シートとして用いることができる。
本発明のシートが、25℃での音波弾性率が1.2以下であり、ヘイズ値が20%以下のシートであるが、このシートは、柔軟であり、かつ透明性にもすぐれたものであることを意味している。
【0012】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例中において、音波弾性率、ヘイズ値は以下のようにして測定されたものである。
音波弾性率の測定に当たっては、オリエンテック社製 レオバイブロンDDV−5Bを用いて測定した結果である。測定条件は、周波数は10kHzで、室温(25℃)で測定した結果である。
ヘイズ値の測定では、スガ試験機株式会社製のヘイズ値測定装置 「直読式へイズメータHGM−2DP」を用いて測定した結果である。
【0013】
実施例1
原料のポリ(ε−カプロラクトン)として、UCC社製TONE P787を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)は64℃であった。また、ポリブチレンサクシネートとして、昭和高分子製ビオノーレ#1010を用いた。このものの融点(DSCのピーク温度)114℃であった。両者を真空下で24時間以上乾燥したのち、室温度でポリ(ε−カプロラクトン)90重量%と、ポリブチレンサクシネート10重量%の割合でドライブレンドした。この混合物を二軸押出機内で160℃に加熱溶融、混練したのち、幅60mm、隙間1.0mmのTダイからシート状に押出し、室温に設定したチルロールで冷却固化して、巻き取った。こうして得られたシートを表面温度45℃に加熱した一対の鋼製ロールの間で圧延したところ、透明性が良く、表面状態の良好なシートを得ることができた。
【0014】
実施例2
実施例1において、ポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとの組成比を変えた組成物から得られたシートを圧延した際のロールの温度Tr、圧延倍率λ、得られたシートの音波弾性率(25℃)、ヘイズ値との関係を次表に示す。
【0015】
【表ー1】
【0016】
【発明の効果】
本発明の生分解性脂肪族ポリエステルシートは、その主成分がポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートとからなるものであり、透明性及び柔軟性を有するものである。本発明のシートは包装用シート、農業用シート等の多目的な方面の各種シートとして適用することができる。
Claims (4)
- ポリ(ε−カプロラクトン) 98重量%から60重量% 及び ポリブチレンサクシネート 2 重量%から40重量%をブレンドし成形して得られるシートであって、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシート。
- ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量% 及びポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドし、シート状とした後に、押出成形したシートであって、25℃以上で、かつポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延して得られる、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であることを特徴とする ポリ(ε−カプロラクトン)及び ポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシート。
- ポリ(ε−カプロラクトン)98重量%から60重量%とポリブチレンサクシネート 2重量%から40重量%をブレンドして、シート状とした後に、押出成形し、25℃以上で、ポリ(ε−カプロラクトン)の融点をTmとしたときTm−5℃以下の温度下に、長手方向に4倍以上の延伸倍率でロール圧延し、25℃での音波弾性率が1.2GPa以下で、且つそのヘイズ値が20%以下であるポリ(ε−カプロラクトン)とポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートを製造することを特徴とするポリブチレンサクシネート及びポリ(ε−カプロラクトン)からなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
- 請求項3記載の押出成形してシート状とする際に、二軸押出機により、ポリブチレンサクシネートの融点以上の温度で、溶融混練し、直接Tダイから押出し、冷却し、シートを製造することを特徴とするポリ(ε−カプロラクトン)及びポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステルシートの製造方法。
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JP2000253273A JP3834604B2 (ja) | 2000-08-24 | 2000-08-24 | 柔軟な生分解性脂肪族ポリエステルシート及びその製造方法 |
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